説明

貯槽繰り制御方法及びそのシステム

【課題】複数の貯槽から並列運転でLNGを払出す場合に、ポンプのミニマムフロー運転及び過負荷運転や、吐出量を絞り込む非効率的な運転を避け、全体で効率の良い運転ができる貯槽繰り制御方法及びそのシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御方法であって、前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転するものである。また、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御システムであって、前記貯槽には複数台のポンプと、流量計と、液位検出計とが備えられ、前記流量計と液位検出計は制御部に接続され、前記制御部は、前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG(液化天然ガス)を受入れている複数のタンクからLNGを払出す場合に行われる貯槽繰り制御方法及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等にLNGを送出しているLNG基地においては、LNG船からLNGを産地別に貯槽に受入れ、発電所のLNG払出し要求量に合わせて貯槽からLNGを払出す。
【0003】
そして、LNG船の次の入船に合わせて、次回受入貯槽の液位を規定レベルまで低下させる貯槽繰りを行う必要がある。その際に、次回受入貯槽に設けられたポンプの吐出流量が不足する場合があるので、次回受入貯槽からだけでなく、高液位の次回受入以降の貯槽からもLNGが払出されるようになっている。
【0004】
上述した従来における貯槽繰りの方法は、受入貯槽順にポンプの台数、特にポンプの起動順位を制御することによって行われていた。
【0005】
しかしながら、ポンプの吐出ラインは互いに接続されているので、貯槽間のポンプは相互に影響し合い、サクションヘッドの差異によって吐出流量に変動が生じていた。
【0006】
すなわち、LNGを払出す受入貯槽におけるLNGの液位が高いと、この受入貯槽のポンプの吸い込み圧力が高くなり、ポンプによるLNGの払出し量が多くなる。これに対し、LNGを払出す受入貯槽におけるLNGの液位が低いと、この受入貯槽のポンプの吸い込み圧力が低くなり、ポンプによるLNGの払出し量が少なくなる。そして、ポンプの吐出ラインは互いに接続されているので、LNGの払出し量が多い受入貯槽に隣接してLNGの払出し量が少ない受入貯槽が存在すると、払出し量が多い受入貯槽のポンプの圧力の影響を受けて、払出し量が少ない受入貯槽において、よりLNGを払出し難い状況が生じていたのである。
【0007】
そのため、低液位の次回受入貯槽のポンプの吐出流量は、LNGの液位が下がれば下がるほど減少し、ポンプはミニマムフロー運転状態となる。このミニマムフロー運転状態は、例えば、LNGを払出す受入貯槽のポンプにおいて、最低毎時10トン以上のLNGを送り出さないとポンプが破損してしまうような場合において、他の払出し量が多い受入貯槽のポンプの圧力の影響を受けて、例えば、毎時5トンのLNGしか送り出せないときは、この受入貯槽内にミニマムフロー調節弁を設置し、ポンプにより毎時10トンのLNGを送りながら、ミニマムフロー調節弁を介して毎時5トンのLNGを受入貯槽内に戻すという、非常に効率の悪い運転状態である。
【0008】
一方、高液位の次回以降の受入貯槽のポンプにおいては、LNGの吐出流量が増加し、ポンプの通常仕様を超えた過負荷運転状態となっていた。
【0009】
そのため、このような一連の事態を回避しながら貯槽繰りを行う場合には、貯槽間の最大液位差を、所定値(例えば10m)以内に保ちながら、次回受入貯槽のポンプの吐出流量の変動を補正する必要があった。
【0010】
しかしながら、LNG船の入船に合わせてポンプの起動順位を何度も人為的に制御することにより、吐出流量の変動を補正することは極めて困難であった。
【0011】
そこで、この問題を解決するものとして、本件の出願人が先に提案した特開平11−304097号公報に示すような貯槽繰りの方法が存在する。
【0012】
この貯槽繰りの方法は、発電所等からのその都度の低温液体払出し要求量に基づいてポンプの稼働台数を決定し、次回受入貯槽の液位と次回受入開始までの時間とから、次回受入貯槽の液面降下速度を演算し、この液面降下速度に基づいて、高液位の貯槽のポンプの吐出側に設けた流量調節弁を制御し、これらの操作を所定の時間間隔をおいて繰り返すものである。
【特許文献1】特開平11−304097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した貯槽繰り制御方法においては、次回受入貯槽と次々回受入貯槽との間においては、非常に有効に作用するが、LNG基地には多数の貯槽が配置されているので、次回受入貯槽と次々回受入貯槽を決めて、両貯槽間のみこの貯槽繰り制御を行うことは、全体の効率からみると、必ずしも効率の良い貯槽繰りの方法ではなかった。
【0014】
すなわち、ポンプの吐出ラインは互いに接続されており、ポンプが稼働するにつれて次回受入貯槽と次々回受入貯槽の液位も変化するので、貯槽繰り制御が作用し、流量調節弁で吐出量を絞り込むので、効率の良い貯槽繰りができなくなるという問題が生じていた。また、この方法は、流量調節弁を設置しなければならないので、システムが複雑化していた。
【0015】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、複数の貯槽から並列運転でLNGを払出す場合に、ポンプのミニマムフロー運転及び過負荷運転や、吐出量を絞り込む非効率的な運転を避け、全体で効率の良い運転ができる貯槽繰り制御方法及びそのシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御方法であって、前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することにより、上述した課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御方法であって、前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値より大きければ、液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転し、前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値以内であれば、受入貯槽順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することにより、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
さらに、本発明は、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御システムであって、前記貯槽には複数台のポンプと、流量計と、液位検出計とが備えられ、前記流量計と液位検出計は制御部に接続され、前記制御部は、前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することにより、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、本発明は、複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御システムであって、前記貯槽には複数台のポンプと、流量計と、液位検出計とが備えられ、前記流量計と液位検出計は制御部に接続され、前記制御部は、前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値より大きければ、液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転し、前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値以内であれば、受入貯槽順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することにより、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上述のように構成されたので、ポンプのミニマムフロー運転及び過負荷運転状態となることを防止することができ、複数の貯槽の効率的な運転を図ることができる。
【0021】
また、複数の貯槽間で最大液位差が所定値以内であれば、受入貯槽順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することができるので、必要に応じてフレキシブルな運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る貯槽繰り制御方法及びそのシステムの最良の形態を、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係る貯槽繰り制御システムの構成を示す説明図、図2は本発明に係る貯槽繰り制御方法による工程を示す説明図、図3は図2の貯槽繰り制御方法を示すフローチャートである。
【0024】
図1は本発明の貯槽繰り制御システムの構成を示すもので、複数(10基)の貯槽1−1〜1−10には、それぞれLNGを払出すポンプ2が備えられている。このポンプ2は、図示では1台であるが、実際には複数台、通常は3台の遠心型のカンドポンプが設置されている。
【0025】
このポンプ2の吐出管には、それぞれ流量計3とミニマムフロー調節弁4が設置されており、図示しない気化器などを経由してパイプラインで要求先の発電所などに気化ガスが供給される。
【0026】
この流量計3とミニマムフロー調節弁4は、それぞれ制御部5に電気的に接続されている。さらに、それぞれの貯槽1−1〜1−10には、この貯槽1−1〜1−10に貯蔵されているLNGの液位を検出するための液位検出計6が設置されており、この液位検出計6も制御部5に接続されている。
【0027】
この制御部5は、図示しないコンピュータを備えたものであり、それぞれの貯槽1−1〜1−10に設置された各種のセンサ類から各種のデータを入力して演算を行い、その結果を図示しない制御回路に出力してポンプ2の起動・停止を行い、後述するように、最も効率的な貯槽繰り制御を行うことができるようになっている。
【0028】
この貯槽繰り制御システムにおいては、ポンプ2の運転台数と起動順位を優先的に決めるモードの他に、ミニマムフロー運転状態となるのを防止するために、貯槽1−1〜1−10における液位の高い順に払出しを行うようにモードを設定してある。
【0029】
次に、上述のように構成された貯槽繰り制御システムよる制御方法を、図2及び図3を参照して説明する。
【0030】
先ず、図2(a)に示すように、10基の貯槽1−1〜1−10の液位について、それぞれの液位検出計6により読込を行い(ステップS10)、その最大液位差が10m以上あるかどうかのチェックを行う(ステップS11)。
【0031】
この場合、貯槽1−1の液位が最高の25mであり、液位が最下位である貯槽1−10が11mなので、14mの液位差が生じている。そのため、最大液位差の所定値(10m)を超えているので、液位が最高の貯槽1−1を最優先順位の貯槽に決定する(ステップ12)。また、貯槽1−1の次に液位が高い貯槽1−2も、優先的に運転する。
【0032】
次に、ポンプ2を起動させて運転を行う(ステップS14)。この運転は、例えば、貯槽1−1のポンプ2を3台稼働させ、貯槽1−2のポンプ2は2台稼働させる。すると、図2(b)に示すように、貯槽1−1の液位と貯槽1−2の液位が逆転する。そこで、液位の逆転のチェックを行い、液位の逆転が生じたならば、ポンプ2の運転の切換えを行い、貯槽1−1のポンプ2を2台稼働させ、貯槽1−2のポンプ2は3台稼働させる。
【0033】
次に、これらのポンプ2の稼働により、図2(c)に示すように、貯槽1−1の液位と貯槽1−2の液位が低下して、次回受入貯槽(液位が一番低い貯槽1−10)との差が小さくなる。そして、最大液位差が10m以上あるかどうかのチェックを行い(ステップS11)、10m以下の場合の貯槽優先順位の決定を行い(ステップS13)、次回受入貯槽である貯槽1−9と貯槽1−10の運転を行うものである(ステップS14)。
【0034】
さらに、貯槽1−9と貯槽1−10の運転を行うと、図2(d)に示すように、貯槽1−9と貯槽1−10の液位が低下して、再び他の貯槽との液位差が10m以上になってしまう。
【0035】
そこで、最大液位差10mのチェックを行い(ステップS11)、貯槽優先順位の決定を行うものである(ステップS12,13)。この工程を繰り返すことにより、最大液位差が10m以下になれば、そのまま運転を継続して終了する。
【0036】
上述したように、本発明の貯槽繰り制御方法によれば、制御部5により複数の貯槽1−1〜1−10を組み合わせて運転することができるので、ポンプ2のミニマムフロー運転及び過負荷運転状態となることを防止することができ、複数の貯槽1−1〜1−10の効率的な運転を図ることができる。また、複数の貯槽1−1〜1−10間で最大液位差が所定値以内であれば、次回受入貯槽を優先させて運転することができるので、必要性に応じてフレキシブルな運転が可能となる。
【0037】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、様々な態様を採用できることは勿論である。例えば、貯槽1−1〜1−10内に備えられたポンプ2の台数や最大液位差の所定値は、必要に応じて適宜設定できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、LNG基地において、LNG船からLNGを産地別に貯槽に受入れ、発電所のLNG払出し要求量に合わせて貯槽からLNGを払出し、LNG船の次の入船に合わせて次回受入貯槽の液位を規定レベルまで低下させる貯槽繰りを行う貯槽繰り制御方法及びそのシステムとして、種々のLNG基地において広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明に係る貯槽繰り制御システムの構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係る貯槽繰り制御方法による工程を示す説明図である。
【図3】図2の貯槽繰り制御方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1(1−1〜1−10) 貯槽
2 ポンプ
3 流量計
4 ミニマムフロー調節弁
5 制御部
6 液位検出計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御方法であって、
前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することを特徴とする貯槽繰り制御方法。
【請求項2】
複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御方法であって、
前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値より大きければ、液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転し、
前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値以内であれば、受入貯槽順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することを特徴とする貯槽繰り制御方法。
【請求項3】
複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御システムであって、
前記貯槽には複数台のポンプと、流量計と、液位検出計とが備えられ、前記流量計と液位検出計は制御部に接続され、
前記制御部は、前記複数の貯槽の中で液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することを特徴とする貯槽繰り制御システム。
【請求項4】
複数の貯槽と、前記複数の貯槽に備えられたポンプにより貯槽内のLNGを合流させて払出す貯槽繰り制御システムであって、
前記貯槽には複数台のポンプと、流量計と、液位検出計とが備えられ、前記流量計と液位検出計は制御部に接続され、
前記制御部は、前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値より大きければ、液位の高い貯槽の順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転し、
前記複数の貯槽の中で最大液位差が所定値以内であれば、受入貯槽順にポンプの運転台数と起動順位を優先させて運転することを特徴とする貯槽繰り制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−78002(P2007−78002A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262822(P2005−262822)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】