説明

貯水装置

【課題】ベランダなどに設置したタンクに対し既存のカランからチューブを介し給水を受けるようにすることで、事業者による給水配管を必要とせず、タンクの水を災害時やその他の目的に使用できるようにする。
【解決手段】貯水タンクAと、この貯水タンクに給水を受けるように先端を接続すると共に、上記貯水タンクの設置以外の場所に存在するカランDに末端を接続した屈曲可能なチューブ1と、上記貯水タンクの低所に設けた給水カランEとからなる構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベランダやその他の場所に設置して、災害時に用いたり、或いは手洗いや洗浄は勿論、植物栽培のための給水や屋根の降温散水などに使用する貯水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭園芸などにおける鉢物、プランター、ボックスなどにて生育している植物の栽培には、水分の補給(水やり)が、日常の管理として欠かせない仕事の一つである。
【0003】
そのため、旅行などにより家を離れる場合、水分の補給ができないことが植物栽培、時に鉢物愛好家の最大の悩みの種であった。
【0004】
特に、如雨露などで給水しても、表土のみに水分が補給されて、土壌の内部に浸潤せず補給効果がない。
【0005】
また、補給場所がベランダなどで、水道水のカランがない場合、台所などの給水可能な場所で如雨露やビン、ペットボトルなどに水を入れて、水やり場所に運ぶので、著しく手数がかかる問題が発生した。
【0006】
さらに、給水容器やペットボトルの水を鉢に給水するようにした方式がある(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−299374号公報
【特許文献2】特開平11−318242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような特許文献1及び2のような方式の場合でも、上述のような容器への補水やペットボトルへの補水に手数がかかる。
【0009】
また、植栽などで汚れた手や道具などをベランダで洗浄することができないので、洗浄できる場所にその都度出向き、或いは運び込む不都合が発生した。
【0010】
そこで、ベランダなどの給水場所に水道管から分岐してカランを設置することで、上述の問題を解消することができる。
【0011】
しかしながら、水道管からの分岐工事は、素人ではできず、専業者を必要とするので、工事に大幅な出費をともなう問題があった。
そこで、この発明は、上記の各問題を解決する貯水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、この発明は、貯水タンクと、この貯水タンクに給水を受けるように先端を接続すると共に、上記貯水タンクの設置以外の場所に存在するカランに末端を接続した屈曲可能なチューブと、上記貯水タンクの低所に設けた給水カランとからなる構成を採用する。
【0013】
また、上記貯水タンクの低所に屈曲可能な、かつ流出量を極小にする内径が微細な散水チューブの末端を給水を受けるように接続した構成を採用する。
【0014】
さらに、貯水タンクと、この貯水タンクに給水を受けるように先端を接続すると共に、上記貯水タンクの設置以外の場所に存在するカランに末端を接続した屈曲可能なチューブと、予備貯水タンクと、上記貯水タンクに末端を、予備貯水タンクに先端をそれぞれ連通状に接続すると共に、前記貯水タンク内の水圧により前記予備貯水タンクに給水を受けるように設けた圧送チューブと、上記予備貯水タンクの低所に接続した屈曲可能な、かつ流出量を極小にする内径が微細な散水チューブとからなる構成を採用する。
また、上記予備貯水タンクの低所に給水カランを設けた構成を採用する。
【0015】
さらに、重ね合わせた通水性のない二枚のシートと、この両シートの一側縁部内に設けた流入中空部と、上記両シートの他側縁部内に設けた排出中空部と、上記シート内で上記流入中空部と上記排出中空部とを連通させるように設けた並列通路とからなり、上記流入中空部にカランに接続してあるチューブの流出端を、上記排出中空部に貯水タンクに接続してあるチューブの流入端を接続した構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明の貯水装置によれば、ベランダなどの貯水を必要とする場所に配置した貯水タンクと既存のカランとをチューブで接続してあるので、カランの存在しないベランダなどの設置貯水タンクに貯水することができる。
【0017】
このため、貯水タンクの設置場所で貯水タンクのカランを開弁して鉢物、プランター、ボックスなどで栽培している植物に水やりをすることができて、台所などから如雨露や容器などに水を入れて運ぶ手間のかかる作業が不要になると共に、汚れた手の洗浄は勿論、例えば靴の洗浄などもベランダで行うことができ、特に既存のカランと貯水タンクとを屈曲自在なチューブにより接続して給水するため、貯水タンクの設置場所、例えばベランダに専業者による高価な出費になるカランの設置が不要になると共に、いかなる場所への給水もチューブを屈曲して素人でも容易に、かつ割安におこなうことができる。
【0018】
特に貯水タンクに貯水した水は、例えば火災にともなう初期消火に使用したり、或いは災害にともなう飲料水として用いることができるので、災害により高騰した飲料水の購入や品不足による不都合をなくするすぐれた効果がある。
【0019】
また、貯水タンクの低所に給水用のチューブを設けてあるので、例えばベランダで植栽してある鉢物、プランター、ボックスなどへの給水(水やり)を行うことができると共に、流出量が極小にする内径の微細なチューブを使用しているため、給水量を抑制しながら長時間給水するため、土壌への浸潤がいきわたって効果的な給水ができて、鉢物愛好家には寄与できる。
【0020】
そして、屈曲可能なチューブを使用しているので、いかなる方向へも屈曲させることができる。
【0021】
また、貯水タンクと予備貯水タンクとを圧送チューブで接続し、貯水タンクにカランからチューブを介し給水するようにしてあるので、貯水タンクの水を水圧により圧送チューブを介し予備貯水タンクに給水することができる。
【0022】
このため、高所に設置した予備貯水タンクへの給水が可能になると共に、予備貯水タンクに設けてある散水チューブにより屋根に散水して夏場の降温効果を発揮し、又高所(上位階など)の鉢物などの栽培植物への灌水が可能になり、更に貯水タンクや予備タンクに設けてあるカランから給水が可能なため、前述のような火災にともなう初期消火や災害にともなう飲料水としても役立つなどのすぐれた効果がある。
【0023】
さらに、チューブのカラン側流出端を流入中空部に、チューブの貯水タンク側流入端を排出中空部にそれぞれ接続して、窓枠と戸枠との間にシートを介在しておくことで、チューブの配置場所に窓や出入口が存在していても何ら支障なくチューブを介してのカランから貯水タンクの給水を続行することができる。すなわち、カランからの給水は、チューブをへてシートの一側流入中空部、並列通路、シートの他側排出中空部、チューブをへて貯水タンクに向かい、窓枠と戸枠とによる挟圧に関係なく給水を持続することができると共に、壁にチューブを通す穴あけなどの工事が不要になって給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す一部切欠正面図である。
【図2】同上の要部を示す縦断拡大側面図である。
【図3】第2の実施形態を示す一部切欠正面図である。
【図4】第3の実施形態を示す正面図である。
【図5】同上の要部を示す縦断側面図である。
【図6】同要部を示す縦断側面図である。
【図7】同上の使用状態を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
第1の実施形態の図1に示すAは、カランの存在しない(給水を受けることができない場所)に設置した貯水タンクである。
【0026】
上記貯水タンクAの設置場所としては、例えば家庭園芸などの鉢物B、プランタン、ボックスなどの植物の栽培を行い、日常の管理として欠かせない給水(水やり)を必要とするベランダCが考えられるが、ベランダCに限定されず、その他の貯水を必要とする場所であっても良い。
【0027】
Dは台所やその他の場所に存在する(既存の)カランで、このカランDと貯水タンクAとは、屈曲可能なチューブ1により接続され、カランDを開弁することで、カランDからチューブ1をへて貯水タンクAに給水されて、貯水タンクAに貯水できるようになっている。
【0028】
上記カランD及び貯水タンクAに対するチューブ1の末端及び先端の接続は、ねじ込み方式や口筒に対するビス止め(周知の散水ホースのビス止め口金などによる)取付金具2を介し接続し、屈曲可能なチューブ1としては、壁面や窓枠に沿わせて素人でも容易に沿わせることができ、例えば水圧で膨張しない、かつ破損しない材質、例えば耐圧性にすぐれた軟質合成樹脂製などで、そしてカランDを少し開弁することでチューブ1から貯水タンクAに微量滴下などによる流入で、貯水タンクAに貯水するようにする。
【0029】
勿論、貯水タンクAに対するカランDからの流入量は、貯水タンクA内の減水(使用にともなう)残量に応じてカランDを開弁し、或いは閉弁して調整すればよい。
【0030】
また、貯水タンクAには、カランEが設けてある。
このカランEは、貯水タンクAの低所に設けてある。
【0031】
上記のように構成すると、ベランダCでの植栽作業にともなう汚れた手や作業具を洗浄する際、カランEを開弁して行う。
【0032】
勿論、カランEからの流出水は、上記使用に限定されず、例えば如雨露やペットボトルなどに流入して給水(水やり)に使用し、また靴などの洗浄水として使用する。
【0033】
すると、ベランダに台所などから水を運び込むことなく、貯水タンクAの設置場所で給水を受けることができる。
【0034】
貯水タンクAに貯水した水は、上述の使用に限定されず、例えば火災発生にともなう初期消火に用いたり、或いは災害にともなう飲料水として用いることができて、高騰した飲料水の購入や品不足による各種問題の解消に役立つ。
なお、貯水タンクAの貯水容量は、人員数や用途を考慮の上適宜決定すればよい。
【0035】
そして、図1及び図2に示すように、貯水タンクAの低所には、屈曲可能な、かつ流出量を極小になる内径が微細な散水チューブ11の末端が給水可能になるようにして設けてある。
【0036】
上記の散水チューブ11は、図示の場合、貯水タンクAに接続パイプ12を介し軸線が水平な両端閉鎖の分配パイプ13を設け、この分配パイプ13の点在位置に連通させて設けてある口筒14に第1の実施形態と同様の取付金具15により散水チューブ11の末端を接続しておく。
【0037】
なお、上記の散水チューブ11は、図示の多数本並設して、各鉢物Bに給水(水やり)できるようにしたが、本数は適宜決定すればよい。
【0038】
また、散水チューブ11の内径を微小にした要因は、貯水タンクAから散水チューブ11をへて鉢物Bへの給水が微量になって一度に大量の給水が行われないよう、すなわち土壌への浸潤がくまなく行われることを目的とする。
【0039】
なお、給水後や給水に使用しない散水チューブ11の先端を栓や散水チューブ11の先を折り曲げてクリップで(図示省略)止水しておく。図中15は台である。
【0040】
この発明の第2の実施形態では、図3に示すように、第1の実施形態と同様に貯水タンクAには、カランDからチューブ1をへて給水を受けるようにしてある。
【0041】
上記貯水タンクAの設置場所や、カランDと貯水タンクAと接続する取付金具2を介してのチューブ1の接続方式は、第1の実施形態と同様につき説明を省略する。
【0042】
Gは使用目的に応じた、例えば貯水タンクAの設置場所より高い上位階のベランダや例えば屋根の降温散水に適した位置に配置する予備貯水タンクである。
【0043】
そして、貯水タンクA内の充満した貯留水を水圧により予備貯水タンクGに圧送されるように上記貯水タンクAと予備貯水タンクGとに圧送チューブ21の両端が接続してある。
【0044】
上記圧送チューブ21の貯水タンクA及び予備貯水タンクGに対する所定位置への接続は、第1の実施形態と同様の取付金具2により行う。
【0045】
また、予備貯水タンクGの低所には、屈曲可能な、かつ流出量を極小にする内径が微細な散水チューブ22が接続してある。
【0046】
上記予備貯水タンクGに対する散水チューブ22の接続や、散水チューブ22は、第1の実施形態と同様につき詳細な説明を省略する。
【0047】
上記のように構成すると、夏場において散水チューブ22により屋根に散水することで、屋根の降温に効果を発揮する。
【0048】
勿論、カランDを開弁しておくことで、カランDからの給水は、チューブ1をへて貯水タンクAに、貯水タンクAから水圧により圧送チューブ21をへて予備貯水タンクGに給水が行われるため、散水チューブ22による散水を続行することができる。
【0049】
散水チューブ22による散水は、上記に限定されず、上位階のベランダなどの鉢物などへの給水にも行うことができる。
【0050】
また、貯水タンクAの低所や、予備貯水タンクGの低所にカランHを設けておく。
すると、植栽作業で汚れた手や作業具、その他の洗浄の際、カランHを開弁して給水を
受けることができる以外に、火災にともなう初期消火水とし、或いは災害時の飲料水などに使用することができる。
【0051】
この発明の第3の実施形態では、図4から図7に示すように、通水性のない、かつ(水道からの)水圧に耐える重ね合わせた横長な二枚のシート31と、この重なるシート31の一側縁部内に設けた流入中空部32と、重なるシート31の他側縁部内に設けた排出中空部33と、重なるシート31内で流入中空部32と排出中空部33とを連通させる並列通路34を形成する。
【0052】
上記流入中空部32、排出中空部33及び並列通路34は、重ね合わせたシート31、31の必要とする流入中空部32、排出中空部33及び並列通路34を構成する以外の重なる部分を熱溶着35させる手段などで設け、流入中空部32内にカランD側チューブ1の排出端が臨むようにして、シート31にチューブ1の端部を接続し、排出中空部33内に貯水タンクA側のチューブ1の流入端部が臨むようにしてシート31にチューブ1を接続しておく。
【0053】
そして、使用に際しては、図7に示すように、窓Xの窓枠Yと窓戸枠Zとの間にシート31を介在させて、窓枠Yと窓戸枠Zとでシート31を挟持する。
【0054】
すると、カランDからチューブ1に供給された水道水は、流入中空部32に流入して並列通路34から排出中空部33をへてチューブ1に向かう。
【0055】
上記並列通路34を複数条にする要因は、通路の口径を大きくして一条にすると、挟圧により口径が潰されて流量の減少による安定した水量が得られない不都合を、通路34の並列により総水量が多くなるようにして、安定した給水ができるように考慮するためである。
【0056】
勿論、直接チューブを挟圧することによる切断などの問題をシート31でなくすることもできる。
【0057】
なお、シート31は、チューブ1、21と同様に水圧により破損しないように耐圧性にすぐれた材質のものを使用する。
また、貯水タンクA、予備貯水タンクGは、水圧に耐えるものを使用する。
【0058】
さらに、散水チューブ11、22からの散水は、散水チューブ11、22の内径が微細なため、散水量が抑制されるので、余分な散水がない。
なお、散水チューブ22の止水は、第1の実施形態と同様の方法で行えばよい。勿論、散水チューブ11、22の元部にコック(図示省略)を設けて止水することもできる。
【符号の説明】
【0059】
A 貯水タンク
B 鉢物
C ベランダ
D カラン
E カラン
G 予備貯水タンク
H カラン
1 チューブ
2、15 取付金具
11 散水チューブ
12 接続パイプ
13 分岐パイプ
14 口筒
21 圧送チューブ
22 散水チューブ
31 シート
32 流入中空部
33 排出中空部
34 並列通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクと、この貯水タンクに給水を受けるように先端を接続すると共に、上記貯水タンクの設置以外の場所に存在するカランに末端を接続した屈曲可能なチューブと、上記貯水タンクの低所に設けた給水カランとからなることを特徴とする貯水装置。
【請求項2】
上記貯水タンクの低所に屈曲可能な、かつ流出量を極小にする内径が微細な散水チューブの末端を給水を受けるように接続したことを特徴とする請求項1に記載の貯水装置。
【請求項3】
貯水タンクと、この貯水タンクに給水を受けるように先端を接続すると共に、上記貯水タンクの設置以外の場所に存在するカランに末端を接続した屈曲可能なチューブと、予備貯水タンクと、上記貯水タンクに末端を、予備貯水タンクに先端をそれぞれ連通状に接続すると共に、前記貯水タンク内の水圧により前記予備貯水タンクに給水を受けるように設けた圧送チューブと、上記予備貯水タンクの低所に接続した屈曲可能な、かつ流出量を極小にする内径が微細な散水チューブとからなることを特徴とする貯水装置。
【請求項4】
上記貯水タンクの低所に給水カランを設けたことを特徴とする請求項3に記載の貯水装置。
【請求項5】
上記予備貯水タンクの低所に給水カランを設けたことを特徴とする請求項3に記載の貯水装置。
【請求項6】
重ね合わせた通水性のない二枚のシートと、この両シートの一側縁部内に設けた流入中空部と、上記両シートの他側縁部内に設けた排出中空部と、上記シート内で上記流入中空部と上記排出中空部とを連通させるように設けた並列通路とからなり、上記流入中空部にカランに接続してあるチューブの流出端を、上記排出中空部に貯水タンクに接続してあるチューブの流入端を接続したことを特徴とする請求項1又は3に記載の貯水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94087(P2013−94087A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238206(P2011−238206)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(510049562)