貯湯タンク及びその製造方法
【課題】長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供すること。
【解決手段】鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメント11,11´から構成されている。各セグメント11,11´は外側に向けて膨出した膨出部14,14´と膨出部14,14´の外周縁に形成された接合部15b,15b´を備えている。このセグメント11,11´は、溶接後に閉鎖部材12により閉鎖可能な溶接用の開口部17を備え、互いの膨出部14,14´が外側となって内部に貯留部13が形成できるように接合部15b,15b´を衝合させた状態で接合部15は貯留部13の内部側から溶接されている。
【解決手段】鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメント11,11´から構成されている。各セグメント11,11´は外側に向けて膨出した膨出部14,14´と膨出部14,14´の外周縁に形成された接合部15b,15b´を備えている。このセグメント11,11´は、溶接後に閉鎖部材12により閉鎖可能な溶接用の開口部17を備え、互いの膨出部14,14´が外側となって内部に貯留部13が形成できるように接合部15b,15b´を衝合させた状態で接合部15は貯留部13の内部側から溶接されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気温水器をはじめとする貯湯式温水器に用いられる貯湯タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器などの貯湯式温水器においては、コスト等の面から一般にステンレス鋼からなる薄板で形成された貯湯タンクが用いられている。
【0003】
そして、このような貯湯タンクにあっては、水道による水圧が加わるので、その水圧に対して過大な変形や応力集中等を生じずに十分な強度を確保する意味から、貯湯タンクは一般に円筒形状とされている。
【0004】
しかしながら、円筒形状の貯湯タンクでは、その設置に平面視正方形状のスペースが必要であり、奥行きの狭い場所への設置が行えない。これにより、このような円筒状の貯湯タンクでは、使用者が望む場所への設置の自由度が乏しいという課題がある。
【0005】
このような円筒形状の貯湯タンクであっても、二本並列に配設することにより奥行きの短い、平面視形状を長方形とすることができる。このような並列配設の貯湯タンクとして、例えば、150リットルの円筒形タンクを二本並列に配設して合計300リットルとしたタイプの貯湯式温水器が既に市販されており、その場合の奥行きは450mmである。
【0006】
しかしながら、一般に最も普及している貯湯タンクの容量は370リットルであり、この容量を満足させる貯湯タンクは市販されていない。
【0007】
本発明者等は、貯湯タンクの形状を楕円形とした貯湯タンクを既に提案している(例えば、特許文献1参照。)。この貯湯タンクでは、薄板を膨出させた膨出部と,その膨出部の外側に向けて延在させたフランジ部とを一体に有するセグメントをプレス加工により形成し、互いのフランジ部を衝合させ、その接合部をシーム溶接することにより貯湯タンクが形成されている。この貯湯タンクの正面視の形状は、円形又は小判型であり、円筒形の貯湯タンクに比べて奥行きを狭くすることが可能となる。
【0008】
また、このような貯湯タンクの周縁部に補強リブを成形し、この補強リブを挟んで周縁部同士を接合した貯湯タンクも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平08−271053号公報
【特許文献2】特開平09−229482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等のその後の検討によれば、正面視小判型の貯湯タンクでは、ステンレス鋼材の厚みを薄くすると、両側の直線部と円弧部との境界部で応力集中が発生するので、膨出部の一部が変形してしまうという課題が生じた。
【0010】
また、特許文献1又は2記載の貯湯タンクの実施例においては、図12に示すように、互いに衝合された一対のフランジ1、1´は、シーム溶接により接合されて、シーム溶接により生成した溶接凝固部(ナゲット)2により水密性が確保される。
【0011】
しかしながら、このような貯湯タンクでは、貯湯部3からタンク外部4に向けて内圧Fwが加わると、この内圧Fwにより一方のフランジ1の基部1aと他方のフランジ1´の基部1´aとは互いに離間するような引張力Fa、Fa´が荷重されることになる。このような引張力Fa、Fa´はナゲット2付近ではせん断応力となってナゲット2又はナゲット2付近のフランジ1、1´の損傷原因となる。また、場合によっては、この引張力Fa、Fa´の影響も受けてこの基部1a,1´a間に隙間が形成されると、この隙間からナゲット2に向けて水道水が滲入し、水道水中の塩素などが作用してナゲット2の腐食を引き起こす場合がある。
【0012】
それ故、シーム溶接により接合と水密を確保したのでは、長期間の使用に際しては、溶接部の水漏れの原因となる場合が想定され、実用化には至っていない。
【0013】
そこでこの発明の第1の目的は、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することである。
【0014】
また、本発明の更なる目的は、上述の目的を達成した上で、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、周囲に形成されたフランジ部をシーム溶接することに代えて接合部をタンクの内側から溶接すれば、接合部には引張力Fa、Fa´に基づくせん断応力が発生しないので、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供できるのではないかと考えた。
【0016】
そこで、タンクの内部から溶接を行うために、溶接後に閉鎖する溶接用の開口部を設けることを見出した。さらにその開口部を貯湯タンクの中央部とし、その中央部を凹所とすれば、薄型で、かつ、材料ステンレス鋼板の厚みを減じても耐圧が確保できる貯湯タンクを提供できることを見出した。
【0017】
すなわち、第1の発明は、鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメントから構成され、該セグメントは、外側に向けて膨出した膨出部と該膨出部の外周縁に形成された接合部を備え、該セグメントは、溶接後に閉鎖部材により閉鎖可能な溶接用の開口部を備え、互いの膨出部が外側となって内部に貯留部が形成できるように前記接合部を衝合させた状態で該接合部は貯留部の内部側から溶接されていることを特徴とする貯湯タンクである。
【0018】
このような貯湯タンクは、例えば、二枚の薄板を衝合させた場合にその間に所定の容積を有する貯留部が形成できるように、薄板を反対方向にプレス加工により膨出させて膨出部を形成させることにより、該膨出部の周縁を互いに衝合させた場合に同一平面を形成する接合部として形成させ、前記膨出部の中央に開口部を形成し、該開口部を利用して前記2枚の薄板を貯留部が形成できるように接合部を衝合させた状態で貯留部内部側から接合部を溶接した後、前記開口部を閉鎖部材で閉鎖することにより得ることができる。
【0019】
これにより、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0020】
また、この接合部の平面視は円形形状であり、該円形形状の接合部の中心軸を通る任意の平面で切断された前記膨出部の断面は、長軸が同一直線上にある一組の円又は楕円が組み合わされた形状であり、前記開口部は前記中心軸を同一軸とする円形に開口され、前記閉鎖部材は前記開口部の内周と略同一径の円筒部材であることが好ましい。
【0021】
これにより、貯留部は、略ドーナツ状に形成され、接合部を含む膨出部の内壁は円弧状に形成されるので、内圧は分散されて応力集中が起こりにくい。また、開口部は貯湯タンクの中央部に凹所として形成されるので、円筒部材とセグメント間の接合部(開口接合部という。)に向けて内圧が掛かっても、その開口接合部に作用する力は円筒部材を外側から圧縮する圧縮力として作用するので、閉鎖部材が変形することなく、かつ、開口接合部の液漏れ等の発生も少なくできる。
【0022】
これにより、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0023】
そして、このような貯湯タンクは、給水管接続部が重力方向下側となり、給湯接続部が重力方向上側に配設されることにより薄型が保持されて設置できる。また、このように配設された貯湯タンクは、垂直方向又は水平方向に並列して配列させることにより薄型を保持させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従えば、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0025】
また、本発明の好ましい実施態様によれば、長期間の使用に際しても影響を受けにくく、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
まず、図1は、本発明に係る貯湯タンクの平面図であり、図2はその正面図である。
【0028】
この貯湯タンク10は、薄板からプレスされて形成された一対のセグメント11、11´及びこれらのセグメント11、11´の正面中央部を貫通して溶接固定された円筒部材12とから大略構成され、これによりその内部には温水を貯留する貯湯部13が形成されている。
【0029】
この貯留部13は、図2に示すように、平面視は円形形状である。また、各セグメント11,11´との接合部14aは貯留部13側から溶接されているが、貯留部13の形状の説明と共に以下に製造工程にしたがって説明する。
【0030】
ここで、本明細書中の図面では、同一素材を対称に配設した場合の他方の素材については「´」を付した同一符号を付して詳細な説明は省略することがある。例えば、図1のセグメント11及びセグメント11´は互いに同一部材であるが、互いの配設が対称に配設されている。
【0031】
このようなセグメント11は、図3(a)、(b)に示すように、ステンレス鋼板などの薄板からプレス加工などにより外側にドーナツ状に膨出させた膨出部14を形成後に不要部分を切断することにより製造される。ここで、本実施例における内側及び外側とは、膨出部14の貯湯部13側を内側として、その反対側を外側として説明する。また、この実施例では、平面視の中央付近には中心軸Oに向けて漸次に窪んだ凹部16が形成されている。
【0032】
ついで、この凹部16の外周を矢印aに示すように円形に切断除去することにより、中心軸Oと同軸の円形の開口17が切り欠かれる。また、膨出部14の外周縁を延長した部分を、矢印bに示すように円形に切断することにより、余剰部15aが除去されて、外周縁から延在したフランジ部15が形成される。これにより、フランジ15の内側面は、プレス前の薄板の平面と同一平面がそのまま保持されており、一対のセグメント11,11´は互いに膨出部を外側にして配設することによりこのフランジの内側面で衝合される。以下、このフランジ1の内側面を衝合面15bと呼称する。
【0033】
これにより得られるセグメント11は、図3(b)に示すように、中心軸Oを通る平面で切断した膨出部14の端面が一組の楕円が長軸を同一直線上にして相互に隣接して組み合わされた形状であり、その中央の窪んだ凹部16は切りかかれて開口17が形成されている。また、セグメント11の平面視は、図2に示すように、大略円形形状である。
【0034】
このような一対のセグメント11、11´は、図4に示すように、膨出部14、14´を互いに外側に向けて衝合面15b、15b´を向き合わせて配置させる。ついで、図5に示すように、衝合面15b,15b´を衝合させて、フランジ15、15´を外側より仮固定した状態で開口17、17´を利用して貯留部13側から接合部14aの溶接を行う。
【0035】
この溶接方法は、特には限定されないが、例えば、溶接棒、溶接ワイヤなどの溶加材を用いた、手動又は自動溶接である。また、この場合の加熱源は、ガス溶接、テルミット溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接などを例示することができる。
【0036】
また、溶加材としては特には限定しないが、母材金属と融合凝固して母材と一体となり溶接金属を形成するものが好ましい。それ故、一般に溶接箇所であるフランジ15付近の母材金属と同種の金属か、またはそれに近い材質のもので、母材金属と容易に良質の合金を形成し得るものが選ばれるのが好ましい。
【0037】
このような溶融溶接によれば、図6に示すように、衝合される互いのフランジ部15,15´の貯留部13側の基部である接合部14aにナゲット18が充填される。このナゲット18は、接合すべき母材であるステンレス鋼板及び溶加材と共に加熱溶融され、局部的鋳造作用によって接合されるので、溶融金属自体が接合界面を構成するから、冶金的に完全な金属的密着が得られる。
【0038】
これにより、このような貯湯タンク10では、貯湯部13からタンク外部4に向けて内圧Fwが加わっても、接合部14a付近の貯留部13の形状は円弧状であるので内圧Fwは分散されて接合部14aに応力集中することがない。
【0039】
また、この接合部14aは、溶融溶接されているので、その接合部14a付近のフランジ15、15´間が離間して隙間を形成させることがない。また、これにより、シーム溶接の場合のような衝合面15b,15b´間に内圧Fwに基づくせん断応力が発生させることもない。
【0040】
ついで、この開口17、17´には図7に示す円筒部材12が挿入されて、外部4からそれらの接合部(開口接合部)が溶接される。ここで、この円筒部材12の長さL12(図7参照)を、開口17と開口17´の間隔L17(図5参照)と同等か又は間隔L17よりも僅かに長く設定すると、溶接凝固部であるナゲット12bは、この円筒部材12の外壁12aに形成できる。
【0041】
このように構成された貯湯タンク10では、図2に示すように、接合部15bの平面視は円形形状である。また、図1、3に示すように、円形形状の接合部15bの中心軸Oを通る任意の平面で切断された膨出部14,14´の断面は、長軸が同一直線上にある一組の楕円が組み合わされた形状である。また、この長軸は接合部15bと同一平面であって中心軸Oと直交している。また、開口部17,17´は中心軸Oを同一軸とする円形に開口されており、この開口部17,17´の全ては円筒部材12により閉鎖されている。
【0042】
これにより、貯留部13は、図1に示すように、略ドーナツ状に形成され、接合部15bを含む膨出部14,14´の内壁は円弧状に形成されるので、貯留部13に大きな内圧が掛かってもその内圧は分散されるので応力集中が起こりにくい。
【0043】
また、開口部17,17´は中心軸Oに向けて漸次に窪んだ凹部16に形成されているので、溶接凝固部であるナゲット12bに向けて内圧が掛かっても、そのナゲット12bに作用する力は円筒部材12を外側から圧縮する圧縮力として作用し、しかもその圧縮力は円筒部材12の中心軸Oに向けて周囲から均等に作用するので、円筒部材12は変形することなく、かつ、ナゲット12bからの液漏れ等の発生も少なくできる。
【0044】
これに対して、例えば、図13(a)に示すように、円形形状の接合部15bの中心軸Oを通る任意の平面で切断された膨出部14,14´の断面を小判型(又は楕円形状)とした貯湯タンクでは、図13(b)に示すように、接合部15bの平面視を円形形状とし、かつ、図13(a)に示すように、開口部17,17´の全てを円筒部材12により閉鎖して円筒部材12の外壁12aにナゲット12aを形成しても、貯留部13に大きな内圧がかかると、その内圧はナゲット12b付近で応力集中が発生し、所望する耐圧を確保することが困難となる。
【0045】
これにより、従来の円筒型の貯湯タンクと同様に、厚み1mmの板厚のステンレス鋼板を用いた場合にも、所定の耐圧試験を通過して規格値を満たすことができた。これにより長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0046】
つぎに、このように形成された貯湯タンク10を外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例について図8〜図11を参照して説明する。ここで、図8は、このような2つの貯湯タンク10A、10Bを水平方向に並列の配列して使用する一例である。また、図9は、2つの貯湯タンク10A、10Bを水平方向に直列に配列して使用する一例である。また、図10は、2つの貯湯タンク10A、10Bを鉛直方向に直列に配列する一例である。
【0047】
これらの図8〜10において、各貯湯タンク10は、図11に示すように、外方に突出したフランジ部15を利用して、箱型のケーシングなどの支持体としてのフレーム22にパンチングメタル23などを介してボルト・ナット24などにより挟持されて固定されている。これにより、フレーム22に固定された貯湯タンク10は、重力方向下側には給水接続部としての給水口19が配設され、重力方向上側には、給湯接続部としての給湯口21が配設されている。なお、図11においては重力方向下方にはドレン排出口20が配設されているが、このドレン排出口20は無くても本発明に包含される。
【0048】
これらの図8〜10において、符号30(30a,30b)は、給水設備(不図示)から貯湯タンク10へ水を供給する給水管であり、符号31(31a、31b)は、この給水管30への水の供給を遮断又は制御する給水弁である。
【0049】
また、符号32は、貯湯タンク10Aの給湯管21と貯湯タンク10Bの給水管19とを接続する接続管であり、符号33は給湯管、符号34は、給水管30及び貯湯タンク10に接続されて伝熱ヒータを内蔵して上部に感温開閉弁36を有する外部加熱装置35に水を循環供給する給水管であり、符号37は、外部加熱装置35により暖められた温水を貯湯タンク10又は必要な箇所へ温湯を供給する給湯管を示している。この感温開閉弁36としては、検出した温度に応じて開閉動作を行なう弁であって、例えば、いわゆるワックス弁と言われるものが好ましい一例として例示される。
【0050】
このような外部加熱方式の電気温水器では、公共水道などの水道管などに連通して接続された給水管30(30a、30b)により供給された水は貯湯タンク10A(10B)に供給される。また、この水は外部加熱装置35へ自然循環により給水管34を介して供給されて外部加熱装置35により加熱され、所定温度に上昇された温湯は開放された感熱開閉弁36,給湯管37を介して貯湯タンク10A、10Bへ貯湯される。給湯のニーズに応じて、貯湯タンク10A、10Bに貯湯された温水は給湯管33(33a、33B)を介して供給される。この場合、貯湯タンク10A(10B)へは絶えず下部から水道水が供給され、その水圧で貯湯タンク10A(10B)内の温度成層を維持したまま上部の温水から順に用途先に供給される。
【0051】
いずれの方式においても、各貯湯タンク10A、10Bは、互いに水平又は垂直に配設されることにより、平面視の奥行きを浅くできる。
【0052】
実施例の一例では、貯湯タンク本体の直径(フランジ部15を含まない)が略1000mm、膨出部の外寸が略300mmである貯湯タンク10では、断熱材などを含めた奥行きが略400mm程度で設計できる。このような貯湯タンク10では、膨出部の断面は長軸が約500mm、短軸が略300mmの楕円であり、円筒部材として直径が約50mmのものを用いた場合の貯湯部13のタンク容量は約185リットルとることができる。
【0053】
これにより、いずれの実施例の電気温水器においても、奥行きが約400mm程度で、370リットルの電気温水器を供給することが可能となる。
【0054】
これにより、図8及び図9の電気温水器では、特別のスペースを設けずに、出窓下に配設することが可能となる。また、図10の電気温水器では、壁面に沿って配設しても、従来の電気温水器に比べて大容量にも拘わらずに突出部を低減させることができる。
【0055】
なお、以上の実施例では、楕円形の長軸Yの長さを楕円形の短軸Xの長さで除した値(Y/X)が1.7程度の実施例を示したが、この長軸Yと短軸Xの比(Y/X)はこれに限定されずに、例えば、2.5程度までの範囲内の楕円形であってもよく、また、円形とすることもできる。
【0056】
このように貯湯タンクの断面形状を楕円形又は円形としたのは、応力集中が生じにくい形状であり、さらに、楕円形の長軸の長さを短軸の長さで除した値を考慮したのは、その値が2.5より大きい場合には内圧による貯湯タンク10の変形が増大することとなるからである。
【0057】
また、以上の実施例では、加熱手段として外部加熱方式の電気温水器を一例として説明したが、炭酸ガスヒートポンプとこの発明の貯湯タンクを組み合わせることも可能である。 これにより、本発明に従えば、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0058】
また、本発明の好ましい実施態様によれば、長期間の使用に際しても影響を受けにくく、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る貯湯タンクの平面図である。
【図2】図1に係る貯湯タンクの正面図である。
【図3】本発明に係る貯湯タンクの一部材であるセグメントの切り出し工程の一例を説明する断面模式図である。
【図4】本発明に係る貯湯タンクの組立工程を説明する図である。
【図5】本発明に係る貯湯タンクの組立工程を説明する図である。
【図6】本発明に係る貯湯タンクにおける溶接部を断面模式図により説明する図である。
【図7】閉鎖部材としての円筒部材を説明する斜視図である。
【図8】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図9】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図10】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図11】本発明に係る貯湯タンクを支持体としてのフレームに固定する一例を説明する図である。
【図12】従来の貯湯タンクにおけるシーム溶接による溶接部を断面模式図により説明する図である。
【図13】参考例に係る貯湯タンクを説明する図であり、図13(a)は平面図、図13(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0060】
4:外部
10(10A、10B):貯湯タンク
11,11´:セグメント
12:円筒部材
12a:外壁
12b:溶接箇所(開口接合部)
13:貯留部
14、14´:膨出部
14a:接合部
15,15´:フランジ
15a:余剰部
15b:接合部
16:凹部
17,17´:開口
19:給水口
20:ドレン排出口
21:給湯口
30(30a,30b):給水管
31(31a、31b):バルブ
32:接続管
33:(33a,33b):給湯管
34:給水管
35:外部加熱装置
36:感熱開閉弁
37:給湯管
O:中心軸
【技術分野】
【0001】
この発明は電気温水器をはじめとする貯湯式温水器に用いられる貯湯タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器などの貯湯式温水器においては、コスト等の面から一般にステンレス鋼からなる薄板で形成された貯湯タンクが用いられている。
【0003】
そして、このような貯湯タンクにあっては、水道による水圧が加わるので、その水圧に対して過大な変形や応力集中等を生じずに十分な強度を確保する意味から、貯湯タンクは一般に円筒形状とされている。
【0004】
しかしながら、円筒形状の貯湯タンクでは、その設置に平面視正方形状のスペースが必要であり、奥行きの狭い場所への設置が行えない。これにより、このような円筒状の貯湯タンクでは、使用者が望む場所への設置の自由度が乏しいという課題がある。
【0005】
このような円筒形状の貯湯タンクであっても、二本並列に配設することにより奥行きの短い、平面視形状を長方形とすることができる。このような並列配設の貯湯タンクとして、例えば、150リットルの円筒形タンクを二本並列に配設して合計300リットルとしたタイプの貯湯式温水器が既に市販されており、その場合の奥行きは450mmである。
【0006】
しかしながら、一般に最も普及している貯湯タンクの容量は370リットルであり、この容量を満足させる貯湯タンクは市販されていない。
【0007】
本発明者等は、貯湯タンクの形状を楕円形とした貯湯タンクを既に提案している(例えば、特許文献1参照。)。この貯湯タンクでは、薄板を膨出させた膨出部と,その膨出部の外側に向けて延在させたフランジ部とを一体に有するセグメントをプレス加工により形成し、互いのフランジ部を衝合させ、その接合部をシーム溶接することにより貯湯タンクが形成されている。この貯湯タンクの正面視の形状は、円形又は小判型であり、円筒形の貯湯タンクに比べて奥行きを狭くすることが可能となる。
【0008】
また、このような貯湯タンクの周縁部に補強リブを成形し、この補強リブを挟んで周縁部同士を接合した貯湯タンクも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平08−271053号公報
【特許文献2】特開平09−229482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等のその後の検討によれば、正面視小判型の貯湯タンクでは、ステンレス鋼材の厚みを薄くすると、両側の直線部と円弧部との境界部で応力集中が発生するので、膨出部の一部が変形してしまうという課題が生じた。
【0010】
また、特許文献1又は2記載の貯湯タンクの実施例においては、図12に示すように、互いに衝合された一対のフランジ1、1´は、シーム溶接により接合されて、シーム溶接により生成した溶接凝固部(ナゲット)2により水密性が確保される。
【0011】
しかしながら、このような貯湯タンクでは、貯湯部3からタンク外部4に向けて内圧Fwが加わると、この内圧Fwにより一方のフランジ1の基部1aと他方のフランジ1´の基部1´aとは互いに離間するような引張力Fa、Fa´が荷重されることになる。このような引張力Fa、Fa´はナゲット2付近ではせん断応力となってナゲット2又はナゲット2付近のフランジ1、1´の損傷原因となる。また、場合によっては、この引張力Fa、Fa´の影響も受けてこの基部1a,1´a間に隙間が形成されると、この隙間からナゲット2に向けて水道水が滲入し、水道水中の塩素などが作用してナゲット2の腐食を引き起こす場合がある。
【0012】
それ故、シーム溶接により接合と水密を確保したのでは、長期間の使用に際しては、溶接部の水漏れの原因となる場合が想定され、実用化には至っていない。
【0013】
そこでこの発明の第1の目的は、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することである。
【0014】
また、本発明の更なる目的は、上述の目的を達成した上で、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、周囲に形成されたフランジ部をシーム溶接することに代えて接合部をタンクの内側から溶接すれば、接合部には引張力Fa、Fa´に基づくせん断応力が発生しないので、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供できるのではないかと考えた。
【0016】
そこで、タンクの内部から溶接を行うために、溶接後に閉鎖する溶接用の開口部を設けることを見出した。さらにその開口部を貯湯タンクの中央部とし、その中央部を凹所とすれば、薄型で、かつ、材料ステンレス鋼板の厚みを減じても耐圧が確保できる貯湯タンクを提供できることを見出した。
【0017】
すなわち、第1の発明は、鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメントから構成され、該セグメントは、外側に向けて膨出した膨出部と該膨出部の外周縁に形成された接合部を備え、該セグメントは、溶接後に閉鎖部材により閉鎖可能な溶接用の開口部を備え、互いの膨出部が外側となって内部に貯留部が形成できるように前記接合部を衝合させた状態で該接合部は貯留部の内部側から溶接されていることを特徴とする貯湯タンクである。
【0018】
このような貯湯タンクは、例えば、二枚の薄板を衝合させた場合にその間に所定の容積を有する貯留部が形成できるように、薄板を反対方向にプレス加工により膨出させて膨出部を形成させることにより、該膨出部の周縁を互いに衝合させた場合に同一平面を形成する接合部として形成させ、前記膨出部の中央に開口部を形成し、該開口部を利用して前記2枚の薄板を貯留部が形成できるように接合部を衝合させた状態で貯留部内部側から接合部を溶接した後、前記開口部を閉鎖部材で閉鎖することにより得ることができる。
【0019】
これにより、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0020】
また、この接合部の平面視は円形形状であり、該円形形状の接合部の中心軸を通る任意の平面で切断された前記膨出部の断面は、長軸が同一直線上にある一組の円又は楕円が組み合わされた形状であり、前記開口部は前記中心軸を同一軸とする円形に開口され、前記閉鎖部材は前記開口部の内周と略同一径の円筒部材であることが好ましい。
【0021】
これにより、貯留部は、略ドーナツ状に形成され、接合部を含む膨出部の内壁は円弧状に形成されるので、内圧は分散されて応力集中が起こりにくい。また、開口部は貯湯タンクの中央部に凹所として形成されるので、円筒部材とセグメント間の接合部(開口接合部という。)に向けて内圧が掛かっても、その開口接合部に作用する力は円筒部材を外側から圧縮する圧縮力として作用するので、閉鎖部材が変形することなく、かつ、開口接合部の液漏れ等の発生も少なくできる。
【0022】
これにより、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0023】
そして、このような貯湯タンクは、給水管接続部が重力方向下側となり、給湯接続部が重力方向上側に配設されることにより薄型が保持されて設置できる。また、このように配設された貯湯タンクは、垂直方向又は水平方向に並列して配列させることにより薄型を保持させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従えば、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0025】
また、本発明の好ましい実施態様によれば、長期間の使用に際しても影響を受けにくく、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
まず、図1は、本発明に係る貯湯タンクの平面図であり、図2はその正面図である。
【0028】
この貯湯タンク10は、薄板からプレスされて形成された一対のセグメント11、11´及びこれらのセグメント11、11´の正面中央部を貫通して溶接固定された円筒部材12とから大略構成され、これによりその内部には温水を貯留する貯湯部13が形成されている。
【0029】
この貯留部13は、図2に示すように、平面視は円形形状である。また、各セグメント11,11´との接合部14aは貯留部13側から溶接されているが、貯留部13の形状の説明と共に以下に製造工程にしたがって説明する。
【0030】
ここで、本明細書中の図面では、同一素材を対称に配設した場合の他方の素材については「´」を付した同一符号を付して詳細な説明は省略することがある。例えば、図1のセグメント11及びセグメント11´は互いに同一部材であるが、互いの配設が対称に配設されている。
【0031】
このようなセグメント11は、図3(a)、(b)に示すように、ステンレス鋼板などの薄板からプレス加工などにより外側にドーナツ状に膨出させた膨出部14を形成後に不要部分を切断することにより製造される。ここで、本実施例における内側及び外側とは、膨出部14の貯湯部13側を内側として、その反対側を外側として説明する。また、この実施例では、平面視の中央付近には中心軸Oに向けて漸次に窪んだ凹部16が形成されている。
【0032】
ついで、この凹部16の外周を矢印aに示すように円形に切断除去することにより、中心軸Oと同軸の円形の開口17が切り欠かれる。また、膨出部14の外周縁を延長した部分を、矢印bに示すように円形に切断することにより、余剰部15aが除去されて、外周縁から延在したフランジ部15が形成される。これにより、フランジ15の内側面は、プレス前の薄板の平面と同一平面がそのまま保持されており、一対のセグメント11,11´は互いに膨出部を外側にして配設することによりこのフランジの内側面で衝合される。以下、このフランジ1の内側面を衝合面15bと呼称する。
【0033】
これにより得られるセグメント11は、図3(b)に示すように、中心軸Oを通る平面で切断した膨出部14の端面が一組の楕円が長軸を同一直線上にして相互に隣接して組み合わされた形状であり、その中央の窪んだ凹部16は切りかかれて開口17が形成されている。また、セグメント11の平面視は、図2に示すように、大略円形形状である。
【0034】
このような一対のセグメント11、11´は、図4に示すように、膨出部14、14´を互いに外側に向けて衝合面15b、15b´を向き合わせて配置させる。ついで、図5に示すように、衝合面15b,15b´を衝合させて、フランジ15、15´を外側より仮固定した状態で開口17、17´を利用して貯留部13側から接合部14aの溶接を行う。
【0035】
この溶接方法は、特には限定されないが、例えば、溶接棒、溶接ワイヤなどの溶加材を用いた、手動又は自動溶接である。また、この場合の加熱源は、ガス溶接、テルミット溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接などを例示することができる。
【0036】
また、溶加材としては特には限定しないが、母材金属と融合凝固して母材と一体となり溶接金属を形成するものが好ましい。それ故、一般に溶接箇所であるフランジ15付近の母材金属と同種の金属か、またはそれに近い材質のもので、母材金属と容易に良質の合金を形成し得るものが選ばれるのが好ましい。
【0037】
このような溶融溶接によれば、図6に示すように、衝合される互いのフランジ部15,15´の貯留部13側の基部である接合部14aにナゲット18が充填される。このナゲット18は、接合すべき母材であるステンレス鋼板及び溶加材と共に加熱溶融され、局部的鋳造作用によって接合されるので、溶融金属自体が接合界面を構成するから、冶金的に完全な金属的密着が得られる。
【0038】
これにより、このような貯湯タンク10では、貯湯部13からタンク外部4に向けて内圧Fwが加わっても、接合部14a付近の貯留部13の形状は円弧状であるので内圧Fwは分散されて接合部14aに応力集中することがない。
【0039】
また、この接合部14aは、溶融溶接されているので、その接合部14a付近のフランジ15、15´間が離間して隙間を形成させることがない。また、これにより、シーム溶接の場合のような衝合面15b,15b´間に内圧Fwに基づくせん断応力が発生させることもない。
【0040】
ついで、この開口17、17´には図7に示す円筒部材12が挿入されて、外部4からそれらの接合部(開口接合部)が溶接される。ここで、この円筒部材12の長さL12(図7参照)を、開口17と開口17´の間隔L17(図5参照)と同等か又は間隔L17よりも僅かに長く設定すると、溶接凝固部であるナゲット12bは、この円筒部材12の外壁12aに形成できる。
【0041】
このように構成された貯湯タンク10では、図2に示すように、接合部15bの平面視は円形形状である。また、図1、3に示すように、円形形状の接合部15bの中心軸Oを通る任意の平面で切断された膨出部14,14´の断面は、長軸が同一直線上にある一組の楕円が組み合わされた形状である。また、この長軸は接合部15bと同一平面であって中心軸Oと直交している。また、開口部17,17´は中心軸Oを同一軸とする円形に開口されており、この開口部17,17´の全ては円筒部材12により閉鎖されている。
【0042】
これにより、貯留部13は、図1に示すように、略ドーナツ状に形成され、接合部15bを含む膨出部14,14´の内壁は円弧状に形成されるので、貯留部13に大きな内圧が掛かってもその内圧は分散されるので応力集中が起こりにくい。
【0043】
また、開口部17,17´は中心軸Oに向けて漸次に窪んだ凹部16に形成されているので、溶接凝固部であるナゲット12bに向けて内圧が掛かっても、そのナゲット12bに作用する力は円筒部材12を外側から圧縮する圧縮力として作用し、しかもその圧縮力は円筒部材12の中心軸Oに向けて周囲から均等に作用するので、円筒部材12は変形することなく、かつ、ナゲット12bからの液漏れ等の発生も少なくできる。
【0044】
これに対して、例えば、図13(a)に示すように、円形形状の接合部15bの中心軸Oを通る任意の平面で切断された膨出部14,14´の断面を小判型(又は楕円形状)とした貯湯タンクでは、図13(b)に示すように、接合部15bの平面視を円形形状とし、かつ、図13(a)に示すように、開口部17,17´の全てを円筒部材12により閉鎖して円筒部材12の外壁12aにナゲット12aを形成しても、貯留部13に大きな内圧がかかると、その内圧はナゲット12b付近で応力集中が発生し、所望する耐圧を確保することが困難となる。
【0045】
これにより、従来の円筒型の貯湯タンクと同様に、厚み1mmの板厚のステンレス鋼板を用いた場合にも、所定の耐圧試験を通過して規格値を満たすことができた。これにより長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0046】
つぎに、このように形成された貯湯タンク10を外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例について図8〜図11を参照して説明する。ここで、図8は、このような2つの貯湯タンク10A、10Bを水平方向に並列の配列して使用する一例である。また、図9は、2つの貯湯タンク10A、10Bを水平方向に直列に配列して使用する一例である。また、図10は、2つの貯湯タンク10A、10Bを鉛直方向に直列に配列する一例である。
【0047】
これらの図8〜10において、各貯湯タンク10は、図11に示すように、外方に突出したフランジ部15を利用して、箱型のケーシングなどの支持体としてのフレーム22にパンチングメタル23などを介してボルト・ナット24などにより挟持されて固定されている。これにより、フレーム22に固定された貯湯タンク10は、重力方向下側には給水接続部としての給水口19が配設され、重力方向上側には、給湯接続部としての給湯口21が配設されている。なお、図11においては重力方向下方にはドレン排出口20が配設されているが、このドレン排出口20は無くても本発明に包含される。
【0048】
これらの図8〜10において、符号30(30a,30b)は、給水設備(不図示)から貯湯タンク10へ水を供給する給水管であり、符号31(31a、31b)は、この給水管30への水の供給を遮断又は制御する給水弁である。
【0049】
また、符号32は、貯湯タンク10Aの給湯管21と貯湯タンク10Bの給水管19とを接続する接続管であり、符号33は給湯管、符号34は、給水管30及び貯湯タンク10に接続されて伝熱ヒータを内蔵して上部に感温開閉弁36を有する外部加熱装置35に水を循環供給する給水管であり、符号37は、外部加熱装置35により暖められた温水を貯湯タンク10又は必要な箇所へ温湯を供給する給湯管を示している。この感温開閉弁36としては、検出した温度に応じて開閉動作を行なう弁であって、例えば、いわゆるワックス弁と言われるものが好ましい一例として例示される。
【0050】
このような外部加熱方式の電気温水器では、公共水道などの水道管などに連通して接続された給水管30(30a、30b)により供給された水は貯湯タンク10A(10B)に供給される。また、この水は外部加熱装置35へ自然循環により給水管34を介して供給されて外部加熱装置35により加熱され、所定温度に上昇された温湯は開放された感熱開閉弁36,給湯管37を介して貯湯タンク10A、10Bへ貯湯される。給湯のニーズに応じて、貯湯タンク10A、10Bに貯湯された温水は給湯管33(33a、33B)を介して供給される。この場合、貯湯タンク10A(10B)へは絶えず下部から水道水が供給され、その水圧で貯湯タンク10A(10B)内の温度成層を維持したまま上部の温水から順に用途先に供給される。
【0051】
いずれの方式においても、各貯湯タンク10A、10Bは、互いに水平又は垂直に配設されることにより、平面視の奥行きを浅くできる。
【0052】
実施例の一例では、貯湯タンク本体の直径(フランジ部15を含まない)が略1000mm、膨出部の外寸が略300mmである貯湯タンク10では、断熱材などを含めた奥行きが略400mm程度で設計できる。このような貯湯タンク10では、膨出部の断面は長軸が約500mm、短軸が略300mmの楕円であり、円筒部材として直径が約50mmのものを用いた場合の貯湯部13のタンク容量は約185リットルとることができる。
【0053】
これにより、いずれの実施例の電気温水器においても、奥行きが約400mm程度で、370リットルの電気温水器を供給することが可能となる。
【0054】
これにより、図8及び図9の電気温水器では、特別のスペースを設けずに、出窓下に配設することが可能となる。また、図10の電気温水器では、壁面に沿って配設しても、従来の電気温水器に比べて大容量にも拘わらずに突出部を低減させることができる。
【0055】
なお、以上の実施例では、楕円形の長軸Yの長さを楕円形の短軸Xの長さで除した値(Y/X)が1.7程度の実施例を示したが、この長軸Yと短軸Xの比(Y/X)はこれに限定されずに、例えば、2.5程度までの範囲内の楕円形であってもよく、また、円形とすることもできる。
【0056】
このように貯湯タンクの断面形状を楕円形又は円形としたのは、応力集中が生じにくい形状であり、さらに、楕円形の長軸の長さを短軸の長さで除した値を考慮したのは、その値が2.5より大きい場合には内圧による貯湯タンク10の変形が増大することとなるからである。
【0057】
また、以上の実施例では、加熱手段として外部加熱方式の電気温水器を一例として説明したが、炭酸ガスヒートポンプとこの発明の貯湯タンクを組み合わせることも可能である。 これにより、本発明に従えば、長期間の使用に際しても影響を受けにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【0058】
また、本発明の好ましい実施態様によれば、長期間の使用に際しても影響を受けにくく、更に鋼材の厚みを薄くしても変形などが起こりにくい薄型の貯湯タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る貯湯タンクの平面図である。
【図2】図1に係る貯湯タンクの正面図である。
【図3】本発明に係る貯湯タンクの一部材であるセグメントの切り出し工程の一例を説明する断面模式図である。
【図4】本発明に係る貯湯タンクの組立工程を説明する図である。
【図5】本発明に係る貯湯タンクの組立工程を説明する図である。
【図6】本発明に係る貯湯タンクにおける溶接部を断面模式図により説明する図である。
【図7】閉鎖部材としての円筒部材を説明する斜視図である。
【図8】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図9】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図10】本発明に係る貯湯タンクを外部加熱方式の貯湯式電気温水器に応用した一例の接続関係を説明する図である。
【図11】本発明に係る貯湯タンクを支持体としてのフレームに固定する一例を説明する図である。
【図12】従来の貯湯タンクにおけるシーム溶接による溶接部を断面模式図により説明する図である。
【図13】参考例に係る貯湯タンクを説明する図であり、図13(a)は平面図、図13(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0060】
4:外部
10(10A、10B):貯湯タンク
11,11´:セグメント
12:円筒部材
12a:外壁
12b:溶接箇所(開口接合部)
13:貯留部
14、14´:膨出部
14a:接合部
15,15´:フランジ
15a:余剰部
15b:接合部
16:凹部
17,17´:開口
19:給水口
20:ドレン排出口
21:給湯口
30(30a,30b):給水管
31(31a、31b):バルブ
32:接続管
33:(33a,33b):給湯管
34:給水管
35:外部加熱装置
36:感熱開閉弁
37:給湯管
O:中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメントから構成され、
該セグメントは、外側に向けて膨出した膨出部と該膨出部の外周縁に形成された接合部を備え、
該セグメントは、溶接後に閉鎖部材により閉鎖可能な溶接用の開口部を備え、
互いの膨出部が外側となって内部に貯留部が形成できるように前記接合部を衝合させた状態で該接合部は貯留部の内部側から溶接されていることを特徴とする貯湯タンク。
【請求項2】
前記接合部の平面視は円形形状であり、
該円形形状の接合部の中心軸を通る任意の平面で切断された前記膨出部の断面は、長軸が同一直線上にある一組の円又は楕円が組み合わされた形状であり、
前記開口部は前記中心軸を同一軸とする円形に開口され、
前記閉鎖部材は前記開口部の内周と略同一径の円筒部材であることを特徴とする請求項1記載の貯湯タンク。
【請求項3】
前記貯湯タンクは、給水管接続部が重力方向下側であり給湯接続部が重力方向上側になるようにして垂直方向又は水平方向に並列して複数個が配列させることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯タンク。
【請求項4】
二枚の薄板を衝合させた場合にその間に所定の容積を有する貯留部が形成できるように、薄板を反対方向にプレス加工により膨出させて膨出部を形成させることにより、該膨出部の周縁を互いに衝合させた場合に同一平面を形成する接合部として形成させ、
前記膨出部の中央に開口部を形成し、
該開口部を利用して前記2枚の薄板を貯留部が形成できるように接合部を衝合させた状態で貯留部内部側から接合部を溶接した後、前記開口部を閉鎖部材で閉鎖することを特徴とする貯湯タンクの製造方法。
【請求項1】
鋼板からなる薄板のプレス加工品からなる一対のセグメントから構成され、
該セグメントは、外側に向けて膨出した膨出部と該膨出部の外周縁に形成された接合部を備え、
該セグメントは、溶接後に閉鎖部材により閉鎖可能な溶接用の開口部を備え、
互いの膨出部が外側となって内部に貯留部が形成できるように前記接合部を衝合させた状態で該接合部は貯留部の内部側から溶接されていることを特徴とする貯湯タンク。
【請求項2】
前記接合部の平面視は円形形状であり、
該円形形状の接合部の中心軸を通る任意の平面で切断された前記膨出部の断面は、長軸が同一直線上にある一組の円又は楕円が組み合わされた形状であり、
前記開口部は前記中心軸を同一軸とする円形に開口され、
前記閉鎖部材は前記開口部の内周と略同一径の円筒部材であることを特徴とする請求項1記載の貯湯タンク。
【請求項3】
前記貯湯タンクは、給水管接続部が重力方向下側であり給湯接続部が重力方向上側になるようにして垂直方向又は水平方向に並列して複数個が配列させることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯タンク。
【請求項4】
二枚の薄板を衝合させた場合にその間に所定の容積を有する貯留部が形成できるように、薄板を反対方向にプレス加工により膨出させて膨出部を形成させることにより、該膨出部の周縁を互いに衝合させた場合に同一平面を形成する接合部として形成させ、
前記膨出部の中央に開口部を形成し、
該開口部を利用して前記2枚の薄板を貯留部が形成できるように接合部を衝合させた状態で貯留部内部側から接合部を溶接した後、前記開口部を閉鎖部材で閉鎖することを特徴とする貯湯タンクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−97926(P2006−97926A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282032(P2004−282032)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000148841)株式会社泰成工業所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000148841)株式会社泰成工業所 (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]