説明

貯湯式給湯機

【課題】耐震性能を向上させることのできる貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】外装筐体2に収容されて内部に湯水を貯留する貯湯タンク3と、貯湯タンク3の下部を覆う下部断熱材44と、貯湯タンク3を支持するタンク脚6と、外装筐体2の一部であって、タンク脚6が固定される底板25と、を備え、下部断熱材44の少なくとも一部が、底板25に当接している。好ましくは、底板25は略矩形の形状の各辺にそれぞれフランジ部25aを備えた構造を有し、下部断熱材44は、底板25の各辺のそれぞれに向かって張り出した複数の突起部44aを備え、突起部44aがフランジ部25aに当接している。また、更に好ましくは、下部断熱材44よりも高い強度を持つ耐震補強部材8を更に備え、耐震補強部材8は、下部断熱材44と一体に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貯湯式給湯機では、発泡断熱材と真空断熱材とを一体に成形して構成された複数の断熱材が外装筐体と貯湯タンクとの間の全ての隙間を埋めるように組み付けられており、貯湯タンクは板金等で構成された支持部材により設置面に支持固定されている(例えば、特許文献1参照)。また、断熱材の一部を樹脂材料で構成することで、断熱材に貯湯タンクの支持部材としての機能を持たせた例もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131329号公報
【特許文献2】特開2006−250393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された貯湯式給湯機では、外装筐体を構成する薄肉板金等で形成された底板、前板、後板、天板、側板の全ての面に断熱材が接触しており、側板に接触する断熱材と底板に接触する断熱材とが分割されている。このため、地震荷重によって重量が重い貯湯タンクが変位すると、貯湯タンクの側面に配置された断熱材を介して剛性が低い側板が貯湯タンクの変位荷重を受けてしまい、側板が大きく変形して貯湯式給湯機が転倒または破壊される可能性があるという課題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、貯湯式給湯機の耐震性能を向上させることのできる貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る貯湯式給湯機は、外装筐体に収容されて内部に湯水を貯留する貯湯タンクと、貯湯タンクの下部を覆う下部断熱材と、貯湯タンクを支持するタンク脚と、外装筐体の一部であって、タンク脚が固定される底板と、を備え、下部断熱材の少なくとも一部が、底板に当接しているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、貯湯式給湯機に地震荷重が付加された場合、貯湯タンクの変位に伴う荷重を、脚部と協調して断熱材を介して剛性の高い底板が受ける構造であるため、耐震性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の下部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における貯湯式給湯機の下部の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2における貯湯式給湯機の下部断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3における貯湯式給湯機の底板ユニットの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3における貯湯式給湯機の下部の下部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機1の分解斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機1の下部断面図である。以下、図1おおよび図2を参照して、本実施の形態の貯湯式給湯機1の構成について説明する。
【0011】
図1に示す貯湯式給湯機1は、直方体形状の外装筐体2を構成する板金製の天板21、前板22、後板23、右側面板24a、左側面板24b、および底板25を備えている。また、外装筐体2の内部には、温水を貯留する貯湯タンク3が配設されている。図示は省略するが、貯湯タンク3に貯留する温水は、ヒートポンプ式の加熱器や貯湯タンク3内に配置されるヒータなどで作られる。
【0012】
貯湯タンク3は、内部に貯留された温水の放熱を防ぐため、外郭のほぼ全面を断熱材4で覆われている。断熱材4は、発泡ポリスチレンの成形品で構成され、組立性を考慮して貯湯タンク3の上部を覆う上部断熱材41、中央部の左右を覆う中央左断熱材42と中央右断熱材43、および下部を覆う下部断熱材44に分割されている。各断熱材4は、貯湯タンク3に密着固定させるため、内側面が貯湯タンク3の外形と同形状になるように成形されており、各断熱材4が隙間なく勘合するように、それぞれの接続部には凹凸などによる勘合構造が設けられている。
【0013】
図1および図2に示すとおり、貯湯タンク3は、当該貯湯タンク3に溶接固定された脚固定金具5にボルト固定された3本のタンク脚6によって支持されている。タンク脚6は、底板25を介して貯湯式給湯機1を設置面に固定するための脚部である3本の器体脚7にボルトで固定されている。
【0014】
貯湯タンク3の下部を覆う下部断熱材44は、貯湯タンク3を支持する3本のタンク脚6の外側であって、底板25の各辺に向かって張り出した4つの突起部44aを有し、底板25の淵に形成されたフランジ部25aにそれぞれ接触している。
【0015】
次に、本実施の形態1の貯湯式給湯機1の特徴について説明する。側面板24やタンク脚6が組み付けられる底板25は、外装筐体2を構成する板金の中で、相対的に厚肉且つ剛性が高くなるように設計されている。したがって、上述した突起部44aを底板25の各フランジ部25aへ接触させることにより、貯湯タンク3の変位荷重をタンク脚6と協調して、下部断熱材44を介して剛性の高い底板25が受ける構造となる。これにより、貯湯式給湯機1に地震荷重が付加された場合に、従来の装置のように剛性の低い側面板24で荷重を受ける場合と比較して、外装筐体2の変形や、製品の転倒、破壊の可能性が低減され、貯湯式給湯機1の耐震性能が向上する。
【0016】
また、本実施の形態1の貯湯式給湯機1では、3本のタンク脚6が下部断熱材44を成形する際に事前に金型内に挿入されることにより、発泡ポリスチレンの成形過程で下部断熱材44と一体に成形される。従来の装置ように、下部断熱材44に相当する部品とタンク脚6に相当する部品とが別部品で構成されている場合においては、発泡ポリスチレンの成形精度および部品の組立精度の影響で、両部品の間に隙間が発生してしまう。この場合、係る隙間に生じる空気の対流によって貯湯タンク3の熱がタンク脚6を介して周囲空気に放熱されるため、貯湯式給湯機1の保温性能が低下してしまう。この点、本実施の形態1の貯湯式給湯機1の構成によれば、下部断熱材44とタンク脚6とが一体に成形されているため、両部品の間に隙間はなく空気の対流は生じない。このため、貯湯タンク3からタンク脚6を介して周囲空気に放出される熱量を低減することができるので、貯湯式給湯機1の保温性能を向上させることが可能となる。更に、3本のタンク脚6と下部断熱材44とが一体化されて1部品になるため、部品点数が削減されて製品の組立性が向上するという効果もある。
【0017】
ところで、本実施の形態1の貯湯式給湯機1では、下部断熱材44の突起部44aを底板25の各フランジ部25aへ接触させて、底板25に対する下部断熱材44の水平方向の相対移動を抑制することとしているが、両部品が接触する部位はこれに限られない。すなわち、下部断熱材44の何れかの部位が底板25に接触するのであれば、例えば、下部断熱材44の底面部と底板25とが接触する構成のみでもよいし、また、より耐震性能を向上させるために、例えば他の凹凸を利用した嵌合や、両部品の接着、一体成形などを施すこととしてもよい。
【0018】
また、本実施の形態1の貯湯式給湯機1では、突起部44aを有する下部断熱材44を使用することとしているが、当該突起部44aが別部品として構成されていてもよい。この場合、突起部44aの成形条件や材料を変更して、下部断熱材44よりも剛性を上げることができるので、下部断熱材44全体の成形条件等を変更するよりも効率的に耐震性能を向上させることができる。また、突起部44aの形状は、底板25のフランジ部25aに接触する形状であれば、本実施の形態1に示した形状に限定されない。但し、フランジ部25aの全体に突起部44aが接触するような形状とすると、下部断熱材44が無駄に大きくなることも想定されるため、これらを総合的に判断して最適な大きさおよび形状に設定することが好ましい。
【0019】
また、上述した実施の形態1の貯湯式給湯機1では、下部断熱材44とタンク脚6とを一体に成形することとしているが、下部断熱材44の何れかの部位が底板25に接触しているのであれば、これらが別部品で構成されていてもよく、この場合であっても少なくとも耐震性能の向上を図ることができる。
【0020】
また、上述した実施の形態1の貯湯式給湯機1では、断熱材4を構成する材料として発泡ポリスチレンを挙げているが、下部断熱材44以外の断熱材4は成形品である必要はなく、グラスウールやウレタンフォームなどを貯湯タンク3に巻きつける構成でも同様の効果を得ることができる。
【0021】
実施の形態2.
次に、図3および図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本発明の実施の形態2における貯湯式給湯機1の下部の分解斜視図である。また、図4は、本発明の実施の形態2における貯湯式給湯機1の下部断面図である。以下、図3および図4を参照して、本実施の形態2の貯湯式給湯機1の構成について説明する。
【0022】
図3および図4に示すとおり、本実施の形態2の貯湯式給湯機1には、耐震性能を向上させるための耐震補強部材8が配設されている。耐震補強部材8は、一枚の板金を所定の角度(例えば45°程度)に曲げた形状を有し、下部断熱材44を成形する際に事前に金型内に挿入されて、発泡ポリスチレンの成形過程で下部断熱材44と一体に成形されている。尚、3本の耐震補強部材8の配置は、貯湯タンク3と底板25の隙間を埋める位置であって、且つ、貯湯タンク3を上方から見て120°間隔で配置された3本のタンク脚6の間を埋める位置に配置されている。
【0023】
次に、本実施の形態2の貯湯式給湯機1の特徴について説明する。3本のタンク脚6で固定された貯湯式給湯機1において、貯湯タンク3の中心からタンク脚6とタンク脚6との間へ向かう水平な方向は、耐震強度が最も弱い方向となる。本実施の形態2の貯湯式給湯機1では、この方向を埋めるように3本の耐震補強部材が配置されているため、貯湯式給湯機1の耐震性能を効果的に向上させることができる。
【0024】
また、仮に耐震補強部材8がない場合を考えると、地震荷重に伴う貯湯タンク3の変位荷重を3本のタンク脚6だけで受けることとなる。この場合、耐震強度が最も弱くなる方向に対して所期の耐震性能を得られるように設計するため、タンク脚6には高い剛性が求められ、肉厚を厚くして大きな構造とする必要がある。この点、本実施の形態2の貯湯式給湯機1では、耐震強度が最も弱くなる方向を耐震補強部材8で補強したため、貯湯式給湯機1の耐震強度の荷重方向に対する異方性が低減され、タンク脚6の構造を簡素化することが可能になる。
【0025】
更に、耐震補強部材8がない場合において、大きな地震荷重が入力された場合、下部断熱材44が傾いた貯湯タンク3によって圧縮されて永久変形してしまう。このため、揺れがおさまり、タンク脚6の弾性により貯湯タンク3が元の位置に戻ると、貯湯タンク3と下部断熱材44の間に隙間が形成されてしまい、係る隙間の空気の対流によって貯湯式給湯機1の保温性能が低下してしまう。この点、本実施の形態2の貯湯式給湯機1では、下部断熱材44と耐震補強部材8とを一体に成形しているため、貯湯タンク3の変位荷重で圧縮変形された下部断熱材44が、耐震補強部材8の反力によって貯湯タンク3の復元に追従する。このため、下部断熱材44と貯湯タンク3の間に隙間が形成されにくくなり、保温性能の低下を抑制することができる。
【0026】
ところで、本実施の形態2の貯湯式給湯機1では、3本のタンク脚6の間に3本の耐震補強部材8を配設することとしているが、当該耐震補強部材8の形状、個数および配置はこれに限られず、所期の耐震性能を得られる形状、個数および配置を適宜設定することとしてもよい。また、図4に示すように3本の耐震補強部材8は、底面を底板25に当接させ、かつ上側は貯湯タンク3に直接接触しないように位置させ、貯湯タンク3からの放熱パスとなり難いように構成したが、例えば耐震補強部材8を熱伝導性の低い部材とし、貯湯タンク3に当接させ強度を確保するようにしてもよい。
【0027】
実施の形態3.
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、本発明の実施の形態3における貯湯式給湯機1の底板ユニット9の断面図である。また、図6は、本発明の実施の形態3における貯湯式給湯機1の下部の下部断面図である。図5および図6に示すとおり、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機1は、底板25が貯湯タンク3の底部の形状に近似した曲面形状に形成されている点、および底板25およびタンク脚6が下部断熱材44と一体に成形された底板ユニット9を構成している点を除き、上述した図1および図2に示す貯湯式給湯機1と同様である。
【0028】
実施の形態3の貯湯式給湯機1では、図5および図6に示すとおり、底板25が貯湯タンク3の底部の形状に近似した曲面形状を持つため、地震に伴い貯湯タンク3に負荷される荷重に対し、タンク脚6と協調して剛性の高い底板25が下部断熱材44を介して抗力を発揮する。このため、貯湯タンク3の傾きに伴う外装筐体2の変形や、製品の転倒、破壊の可能性が低減され、貯湯式給湯機の耐震性能が向上する。
【0029】
また、実施の形態3の貯湯式給湯機1では、底板ユニット9は、底板25、下部断熱材44、およびタンク脚6で構成されている。具体的には、下部断熱材44は、発泡ポリスチレンで形成され、底板25とタンク脚6とがボルト固定された状態で金型内に挿入され、発泡ポリスチレンの成形過程で下部断熱材44と一体成形される。このような底板ユニット9の構成によれば、貯湯タンク3に貯留された熱量を逃がす放熱パスとなるタンク脚6と下部断熱材44が密着しており、タンク脚6から周囲空気に放熱される熱量が低減されるため、貯湯式給湯機1の保温性能が向上する。
【0030】
ところで、本実施の形態3の貯湯式給湯機1では、下部断熱材44の突起部44aを底板25の曲面部へ接触させる構成としているが、両部品が接触する部位はこれに限られず、例えば、下部断熱材44の突起部44aと底板25のフランジ部25aとが接触する構成としてもよい。また、本実施の形態3の貯湯式給湯機1では、上述した実施の形態2の貯湯式給湯機1のように、耐震性能を向上させるための耐震補強部材8を配設することとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 貯湯式給湯機
2 外装筐体
25 底板
25a フランジ部
3 貯湯タンク
4 断熱材
44 下部断熱材
44a 突起部
6 タンク脚
8 耐震補強部材
9 底板ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装筐体に収容されて内部に湯水を貯留する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの底部を覆う下部断熱材と、
前記貯湯タンクを支持するタンク脚と、
前記外装筐体の一部であって、前記タンク脚が固定される底板と、を備え、
前記下部断熱材の少なくとも一部が、前記底板に当接していることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記底板は略矩形の形状の各辺にそれぞれフランジ部を備えた構造を有し、
前記下部断熱材は、前記底板の各辺のそれぞれに向かって張り出した複数の突起部を備え、前記突起部が前記フランジ部に当接していることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記突起部は、前記下部断熱材と別部品で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記タンク脚は、前記下部断熱材と一体に成形されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記下部断熱材よりも高い強度を持つ耐震補強部材を更に備え、
前記耐震補強部材は、前記下部断熱材と一体に成形されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記貯湯タンクは複数の前記タンク脚によって支持され、
前記耐震補強部材は、前記複数のタンク脚の間に配設されていることを特徴とする請求項5記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記底板は、前記下部断熱材と一体に成形されていることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記底板は曲面形状を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202660(P2012−202660A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69910(P2011−69910)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】