説明

貯湯式給湯機

【課題】加熱対象水を保温する保温運転において、ヒートポンプの機器効率の低下を抑制しつつ、保温運転における昇温時間の短縮を図ることの可能な貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】浴槽水を加熱する加熱手段と、浴槽水の温度低下時に、加熱手段を用いて浴槽水の温度を上昇させる保温手段と、を備え、加熱手段は、ヒートポンプユニット60の停止中に、貯湯タンク10内に貯留された高温水と浴槽水とを熱交換させる貯湯追い焚き運転と、ヒートポンプユニット60の動作中に、当該ヒートポンプユニット60を利用して加熱された高温水と浴槽水とを熱交換させるヒートポンプ直接追い焚き運転と、を含み、保温手段は、ヒートポンプ直接追い焚き運転によって浴槽水を保温上限時間内に所定の目標温度まで昇温させることができない場合に、貯湯追い焚き運転を用いて浴槽水の温度を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貯湯式給湯機では、ヒートポンプから出力される湯温が所定温度に達していない場合には貯湯追い焚き運転を行い、所定温度に達した場合にはヒートポンプ直接追い焚き運転を行なうものが知られている。また、従来の貯湯式給湯機では、追い焚き開始時の風呂設定温度、現在の湯温、湯量、および貯湯タンク内の湯温等から追い焚き時間を算出し、当該算出された追い焚き時間が、ヒートポンプが十分能力を出しうる時間以上か否かによって、貯湯追い焚き運転かヒートポンプ直接追い焚き運転のどちらか一方を選択するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の貯湯式給湯機において、貯湯追い焚き運転は、浴槽水の加熱能力が高いが貯湯タンク内に中温水が多量に生成されて機器効率が低下するとの課題を有している。また、ヒートポンプ直接追い焚き運転は、貯湯タンク内の中温水の生成がなく機器効率が高くなるが浴槽水の加熱能力が低いとの課題を有している。これらの課題の解決のため、従来の貯湯式給湯機では、ヒートポンプからの湯が所定温度以下か否か、または追い焚き開始時の風呂設定温度、現在の湯温、湯量、貯湯タンク内の湯温等から、追い焚き時間を算出し、ヒートポンプが十分能力を出しうる時間以上か否かを判断し、貯湯追い焚き運転かヒートポンプ直接追い焚き運転を切り替えて運転を行なっている。
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、ヒートポンプの効率の観点から実施する追い焚き運転を選択することとしている。このため、浴槽温度を所定時間保持する保温運転を行う場合に浴槽水の加熱能力の低いヒートポンプ直接追い焚き運転が選択された場合においては、浴室の温度が低く浴槽水の放熱が大きい、入浴により浴槽水の低下が大きい、或いは外気温度が低くヒートポンプ直接追い焚きが十分能力を発揮しない等によって所定時間内に目標温度とならないことが想定される。この場合、浴槽水を目標温度まで昇温させるために長時間を要する可能性があり、ユーザーの利便性が悪化するという問題点があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、加熱対象水を保温する保温運転において、ヒートポンプの機器効率の低下を抑制しつつ、保温運転における昇温時間の短縮を図ることの可能な貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る貯湯式給湯機は、ヒートポンプを利用して加熱された高温水を貯湯するための貯湯タンクと、加熱対象水が貯留された槽に接続された水循環回路を有し、当該水循環回路を用いて加熱対象水を循環させる加熱対象水循環手段と、水循環回路内を流れる加熱対象水を加熱する加熱手段と、加熱対象水の温度を検出する温度検出手段と、加熱対象水の温度低下時に、加熱手段を用いて加熱対象水の温度を上昇させる保温手段と、を備え、加熱手段は、ヒートポンプの停止中に、貯湯タンク内に貯留された高温水と水循環回路内を流れる加熱対象水とを熱交換させる貯湯追い焚き手段と、ヒートポンプの動作中に、当該ヒートポンプを利用して加熱された高温水と水循環回路内を流れる加熱対象水とを熱交換させるヒートポンプ直接追い焚き手段と、を含み、保温手段は、ヒートポンプ直接追い焚き手段によって加熱対象水を所定時間内に所定の目標温度まで昇温させることができない場合に、貯湯追い焚き手段を用いて加熱対象水の温度を上昇させるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、加熱対象水を保温する保温運転において、ヒートポンプの機器効率の低下を抑制しつつ、保温運転における昇温時間の短縮を図ることの可能な貯湯式給湯機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の沸き上げ単独運転時の回路構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機のヒートポンプ直接追い焚き運転時の回路構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の貯湯追い焚き運転時の回路構成図である。
【図5】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機のヒートポンプ直接追い焚き運転と貯湯追い焚き運転を切り替えるフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機のヒートポンプ直接追い焚き運転と貯湯追い焚き運転を切り替えるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の構成図である。図1に示す貯湯式給湯機100は、貯湯タンクユニット1と、ヒートポンプサイクルを利用するように構成されたヒートポンプユニット60とを備えている。2つのユニット1、60は、ヒートポンプ入口配管41とヒートポンプ出口配管42とによって接続されている。また、貯湯タンクユニット1には、制御部70が内蔵されている。貯湯タンクユニット1およびヒートポンプユニット60が備える各種の弁類、ポンプ類等の作動は、これらと電気的に接続された制御部70により制御される。以下、貯湯式給湯機100の各構成要素について説明する。
【0012】
ヒートポンプユニット60は、貯湯タンクユニット1から導かれた低温水を加熱する(沸き上げる)ための加熱手段として機能するものである。ヒートポンプユニット60は、圧縮機61、沸き上げ用熱交換器62、膨張弁63、空気熱交換器64を冷媒循環配管65にて環状に接続し、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を構成している。沸き上げ用熱交換器62は、ヒートポンプサイクルを構成する冷媒循環配管65を流れる冷媒と貯湯タンクユニット1から導かれた低温水との間で熱交換を行うためのものである。また、HP出口側サーミスタ66は、沸き上げ用熱交換器62で加熱した高温水の温度を検知するための温度センサーであり、ヒートポンプ出口配管42に設けられている。ヒートポンプユニット60で高温水を得るためには、ヒートポンプサイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。
【0013】
一方、貯湯タンクユニット1には、以下の各種部品や配管などが内蔵されている。貯湯タンク10は、湯水を貯留するためのものである。貯湯タンク10の下部には、市水を供給するための給水配管2が接続されており、貯湯タンク10の上部には、貯留した湯水を給湯機外部へ供給するための給湯配管3が接続されている。尚、貯湯タンク10には、ヒートポンプユニット60を用いて加熱された高温水がタンク上部から流入されるとともに、給水配管2を介して低温水をタンク下部から流入させることにより、タンク内の上部と下部で温度差が生じるように湯水が貯留される。また、貯湯タンク10の表面には、貯湯タンク10内の湯水の温度分布を検知するための残湯サーミスタ11、12が取付高さを変えて取り付けられている。これらの残湯サーミスタ11、12により取得された温度分布に基づいて、貯湯タンク10内の残湯量が把握され、ヒートポンプユニット60による貯湯タンク10内の湯水の沸き上げ運転の開始および停止などが制御される。
【0014】
また、貯湯タンクユニット1内には、循環ポンプ21および利用側熱交換器22が内蔵されている。循環ポンプ21は、貯湯タンクユニット1内の後述する各種配管に湯水を循環させるためのポンプである。利用側熱交換器22は、貯湯タンク10やヒートポンプユニット60から供給される高温水を利用して、2次側の加熱対象水(浴槽循環水や暖房用循環水など)を加熱するための熱交換器である。尚、本実施形態では、利用側熱交換器22の2次側の構成として、浴槽50内の湯水を循環させる浴槽水循環回路51を例に挙げて説明する。上記利用側熱交換器22は、浴槽水循環回路51の途中に設置されている。また、浴槽水循環回路51の途中には、浴槽水を循環させるための2次側循環ポンプ52と、浴槽50から出た浴槽水の温度を検知するための浴槽出口側サーミスタ53とが設置されている。
【0015】
次に、貯湯タンクユニット1が備える弁類および配管類について説明する。貯湯タンクユニット1は、三方弁31および四方弁32を有している。三方弁31は、湯水が流入する2つの入口(aポート、bポート)と、湯水が流出する1つの出口(cポート)とを有する流路切替手段であり、aポートもしくはbポートのどちらかから湯水が流入するように湯水の経路を切り替え可能に構成されている。四方弁32は、湯水が流入する2つの入口(bポート、cポート)と、湯水が流出する2つの出口(aポート、dポート)とを有する流路切替手段であり、3つの経路、すなわち、a−b経路、a−c経路、およびc−d経路の間で流路形態を切り替え可能に構成されている。
【0016】
また、貯湯タンクユニット1は、タンク下部配管40、上記ヒートポンプ入口配管41、上記ヒートポンプ出口配管42、タンク上部配管43、タンク戻し配管44、利用側熱交換器1次側(熱源側)入口配管45、利用側熱交換器1次側出口配管46およびバイパス配管47を有している。また、上記循環ポンプ21は、第1ヒートポンプ入口配管41上におけるバイパス配管47との接続部と三方弁31との間に設置されている。
【0017】
タンク下部配管40は、貯湯タンク10の第1下部と三方弁31のaポートとを接続する流路である。ヒートポンプ入口配管41は、三方弁31のcポートとヒートポンプユニット60の入口側とを接続する流路であり、ヒートポンプ出口配管42は、ヒートポンプユニット60の出口側と四方弁32のcポートとを接続する流路であり、タンク上部配管43は、四方弁32のdポートと貯湯タンク10上部とを接続する流路であり、タンク戻し配管44は、四方弁32のaポートと貯湯タンク10の中央部から下部の間に設けられた戻し口とを接続する流路である。また、利用側熱交換器1次側入口配管45は、タンク上部配管43における貯湯タンク上部と四方弁32との間から分岐し、利用側熱交換器22の1次側入口に接続される流路であり、利用側熱交換器1次側出口配管46は、利用側熱交換器22の1次側出口と三方弁31のbポートとを接続する流路である。更に、バイパス配管47は、ヒートポンプ入口配管41における循環ポンプ21の出口側とヒートポンプユニット60の入り口側との間から分岐し、四方弁32のbポートに接続される流路である。
【0018】
本実施の形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2〜図4に示す運転状態に応じて上記三方弁31を制御して、次の第1および第2の2つの流路形態の間で、貯湯タンクユニット1内の湯水の流路を切り替えて使用する。より具体的には、三方弁31により選択可能な「第1流路形態」とは、貯湯タンク10の第1下部と沸き上げ用熱交換器62とがタンク下部配管40およびヒートポンプ入口配管41を介して連通する流路形態のことであり、「第2流路形態」とは、利用側熱交換器1次側出口配管46と沸き上げ用熱交換器62とがヒートポンプ入口配管41を介して連通する流路形態のことである。
【0019】
更に、本実施の形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2〜図4に示す運転状態に応じて上記四方弁32を制御して、次の第1および第2の2つの流路形態の間を切り替えて使用する。より具体的には、四方弁32により選択可能な「第1流路形態」とは、沸き上げ用熱交換器62とタンク上部配管43とがヒートポンプ出口配管42を介して連通する流路形態のことであり、「第2流路形態」とは、バイパス配管47とタンク戻し配管44とが連通する流路形態のことである。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の沸き上げ単独運転時の回路構成図である。尚、ここでいう沸き上げ単独運転とは、ヒートポンプユニット60を利用して貯湯タンク10内の水を沸き上げる沸き上げ運転が単独で行われるもののことである。この沸き上げ単独運転時には、三方弁31は、上記第1流路形態が選択されるように制御される。これにより、タンク下部配管40とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、利用側熱交換器1次側出口配管46側を閉として利用側熱交換器22からの流路が遮断される。また、沸き上げ単独運転時には、四方弁32は、上記第1流路形態が選択されるように制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42とタンク上部配管43とが連通するとともに、タンク戻し配管44側およびバイパス配管47側の流路が閉状態となる。
【0021】
沸き上げ単独運転は、上記のように三方弁31および四方弁32が制御された状態で、循環ポンプ21とヒートポンプユニット60の運転を開始することにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第1下部から流出する低温水は、タンク下部配管40、三方弁31、循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62において加熱されて高温水となった後、ヒートポンプ出口配管42、四方弁32およびタンク上部配管43を経由して、貯湯タンク10の上部から当該貯湯タンク10内に流入し貯えられる。このような沸き上げ単独運転が実行されることで、貯湯タンク10の内部では、上層部から高温水が貯えられていき、この高温水層が徐々に厚くなる。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100のヒートポンプ直接追い焚き運転時の回路構成図である。尚、ここでいうヒートポンプ直接追い焚き運転とは、ヒートポンプユニット60を利用して沸き上げた高温水と浴槽水とを利用側熱交換器22にて熱交換し、浴槽水の加熱を実施する運転である。このヒートポンプ直接追い焚き運転時には、三方弁31の上記第2流路形態が選択されるように制御される。これにより、利用側熱交換器1次側出口配管46とヒートポンプ入口配管41が連通するとともに、タンク下部配管40側の流路が閉状態となる。また、ヒートポンプ直接追い焚き運転時には、四方弁32は、上記第1流路形態が選択されるように制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42とタンク上部配管43とが連通するとともに、タンク戻し配管44側およびバイパス配管47側の流路が閉状態となる。
【0023】
ヒートポンプ直接追い焚き運転は、上記のように三方弁31および四方弁32が制御された状態で、循環ポンプ21とヒートポンプユニット60の運転を開始することにより実行される。その結果、利用側熱交換器1次側出口配管46から流出する中温水は、三方弁31、循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62において加熱される。熱交換により高温となった高温水は、ヒートポンプ出口配管42、四方弁32およびタンク上部配管43を経由して、利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水となる。一方、浴槽50側の経路では、2次側循環ポンプ52を運転することで、浴槽50に張られた湯水が浴槽水循環回路51内を循環する。その結果、利用側熱交換器22の1次側を流れる高温水の熱が、利用側熱交換器22の2次側を流れる湯水に伝達し、浴槽50内に張られた湯水が温められる。このように、ヒートポンプ直接追い焚き運転では、貯湯タンク10に貯えた高温水を利用しないため、貯湯タンクに中温水が生成されることがない。尚、ヒートポンプ直接追い焚き運転は、浴槽50に張られた湯水の温度低下を浴槽出口側サーミスタ53で検知することで制御部70により自動的に実施される構成になっている。また、ユーザーがリモコン等に設置されたボタンを押下することにより、任意のタイミングで実施することもできる構成となっている。
【0024】
次に、図4は、本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機100の貯湯追い焚き運転時の回路構成図である。尚、ここでいう貯湯追い焚き運転とは、貯湯タンク10内に貯えた高温水と浴槽水とを利用側熱交換器22にて熱交換し、浴槽水の加熱を実施する運転である。この貯湯追い焚き運転時には、三方弁31は、上記第2流路形態が選択されるように制御される。これにより、利用側熱交換器1次側出口配管46とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉状態として貯湯タンク10の第1下部からの流路が遮断される。また、四方弁32は、上記第2流路形態が選択されるように制御される。これにより、循環ポンプ21とタンク戻し配管44とがバイパス配管47を介して連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側およびタンク上部配管43側の流路が閉状態となる。
【0025】
貯湯追い焚き運転は、上記のように三方弁31および四方弁32が制御された状態で、循環ポンプ21と2次側循環ポンプ52の運転を開始することにより実行される。尚、この貯湯追い焚き運転状態では、ヒートポンプユニット60の運転が停止されている。その結果、貯湯タンク10の上部から流出する高温水は、タンク上部配管43、利用側熱交換器1次側入口配管45を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水との間で熱交換が行われる。熱交換により低温となった低温水は、利用側熱交換器1次側出口配管46、三方弁31、ヒートポンプ入口配管41、循環ポンプ21、バイパス配管47、四方弁32およびタンク戻し配管44を経由して、貯湯タンク10の下部に設けられた戻し口から貯湯タンク10に戻される。このような循環経路によれば、貯湯タンク10内に貯えた高温水を利用するため、貯湯タンク10内に中温水が生成される。一方、浴槽50側の経路では、2次側循環ポンプ52を運転することで、浴槽50に張られた湯水が浴槽水循環回路51内を循環する。その結果、利用側熱交換器22の1次側を流れる高温水の熱が、利用側熱交換器22の2次側を流れる湯水に伝達し、浴槽50内に張られた湯水が温められる。尚、貯湯追い焚き運転は、浴槽50に張られた湯水の温度低下を浴槽出口側サーミスタ53で検知することで制御部70により自動的に実施される構成になっている。また、ユーザーがリモコン等に設置されたボタンを押下することにより、任意のタイミングで実施することもできる構成となっている。
【0026】
次に、図5を参照して、本実施の形態1における貯湯式給湯機100の特徴的制御の一例について説明する。図5は、本発明の実施の形態1におけるヒートポンプ直接追い焚き運転と貯湯追い焚き運転を切り替えるフローチャートである。先ず、ステップS1では、浴槽温度を設定された浴槽温度(例えば、42℃)に保つ浴槽水保温運転を実施し、ステップS2に進む。ステップS2では、2次側循環ポンプ52をOFFにしてから所定時間(例えば、10分間)経過したか否かを判定する。その結果、2次側循環ポンプをOFFにしてから10分間経過していない場合には、再度ステップS2にもどる。
【0027】
一方、上記ステップS2において、2次側循環ポンプをOFFにしてから10分間経過した場合には、次のステップS3に進む。ステップS3では、2次側循環ポンプ52をONにする。ステップS4では、浴槽出口側サーミスタ53によって検知された浴槽温度が、所定の加熱開始温度(例えば、設定された浴槽温度マイナス0.5℃)未満であるか否かを判定する。その結果、浴槽温度<設定された浴槽温度−0.5℃の成立が認められない場合には、後述するステップS8へ進む。一方、上記ステップS4において、浴槽温度<設定された浴槽温度−0.5℃の成立が認められた場合には、ステップS5に進む。ステップS5では、後述するヒートポンプ直接追い焚き禁止フラグがOFFであるか否かを判定する。その結果、ヒートポンプ直接追い焚き禁止フラグがOFFであった場合には、ステップS6に進む。ステップS6では、ヒートポンプ直接追い焚き運転を実施し、ステップS7に進む。ステップS7では、浴槽出口側サーミスタ53によって検知された浴槽温度が所定の目標温度(例えば、設定された浴槽温度プラス0.5℃)より大きいか否かを判定する。その結果、浴槽温度>設定された浴槽温度+0.5℃の成立が認められた場合にはステップS8に進む。ステップS8では、2次側循環ポンプ52をOFFにし、各々の追い焚き運転を停止させ、ENDに至る。一方、上記ステップS5において、ヒートポンプ直接追い焚き禁止フラグがONであった場合にはステップS9に進む、ステップS9では、貯湯追い焚き運転を実施し、上記ステップS7に進む。
【0028】
一方、上記ステップS7において、浴槽温度>設定された浴槽温度+0.5℃の成立が認められない場合にはステップS10に進む。ステップS10では、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間(例えば、15分)が経過したか否かを判定する。その結果、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間が経過していない場合には、再度ステップS7に戻る。一方、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間が経過した場合にはステップS11に進む。ステップS11では、ヒートポンプ直接追い焚き禁止フラグをONにし、ステップS8に進む。
【0029】
以上説明した本実施形態の貯湯式給湯機100によれば、ユーザーによって設定された浴槽温度を所定時間保つ浴槽水保温運転が実施された場合、先ず初めに浴槽水の加熱能力が低いヒートポンプ直接追い焚き運転が実施されるので、貯湯タンク10内に中温水が生成されることがなく、機器効率を高く維持することが可能となる。また、ヒートポンプ直接追い焚き運転によって保温上限時間以内に浴槽温度が所定の目標温度に到達できる間は、当該ヒートポンプ直接追い焚き運転を用いた浴槽水保温運転が行われるので、保温上限時間の要求を満たしつつ機器効率の高い運転を繰り返し行うことが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の貯湯式給湯機100によれば、ヒートポンプ直接追い焚き運転によって保温上限時間以内に浴槽温度が所定の目標温度に到達できない場合は、次回以降の浴槽水保温運転において浴槽水の加熱能力が高い貯湯追い焚き運転が選択される。これにより、貯湯タンク内に中温水が生成されることで機器効率の低下があるものの、保温上限時間の要求を満たすことが可能となる。
【0031】
尚、浴槽水保温運転中は、一度貯湯追い焚き運転が選択された以降はヒートポンプ直接追い焚きが再び選択されることはない。次回(例えば、翌日)の浴槽水保温運転が実施された場合は、浴槽水の状態が前回の浴槽水保温運転時(例えば、前日)とは異なるため、先ず初めに、ヒートポンプ直接追い焚き運転が選択され、上記動作が実施される。
【0032】
次に、図6を参照して、本実施の形態1における貯湯式給湯機100の特徴的制御の他の例について説明する。図6は、本発明の実施の形態1におけるヒートポンプ直接追い焚き運転と貯湯追い焚き運転を切り替えるフローチャートである。先ず、ステップS21〜S24では、上記ステップS1〜S4と同様の処理が行われる。ステップS24において、浴槽温度<設定された浴槽温度−0.5℃の成立が認められない場合には、後述するステップS28へ進む。一方、上記ステップS24において、浴槽温度<設定された浴槽温度−0.5℃の成立が認められた場合には、ステップS25に進む。ステップS25では、浴槽出口側サーミスタ53によって検知された浴槽温度が、所定の判定温度(例えば、
設定された浴槽温度マイナス1.0℃)未満であるか否かを判定する。その結果、浴槽温度<設定された浴槽温度−1.0℃の成立が認められた場合には、ステップS26に進む。ステップS26では、上記ステップS9と同様の貯湯追い焚き運転を実施し、ステップS27に進む。一方、浴槽温度<設定された浴槽温度−1.0℃の成立が認められない場合には、ステップS29に進む。ステップS29では、上記ステップS6と同様のヒートポンプ直接追い焚き運転を実施し、ステップS27に進む。
【0033】
ステップS27では、浴槽出口側サーミスタ53によって検知された浴槽温度が設定された浴槽温度プラス0.5℃より大きいか否かを判定する。その結果、浴槽温度>設定された浴槽温度+0.5℃の成立が認められた場合にはステップS28に進む。ステップS28では、2次側循環ポンプ52をOFFにし、各々の追い焚き運転を停止させ、ENDに至る。一方、上記ステップS27おいて、浴槽温度>設定された浴槽温度+0.5℃の成立が認められない場合にはステップS30に進む。ステップS30では、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間(例えば、15分)が経過したか否かを判定する。その結果、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間が経過していない場合には、再度ステップS27に戻る。一方、ヒートポンプ直接追い焚き運転または貯湯追い焚き運転から保温上限時間が経過した場合には、上記ステップS27に進む。
【0034】
以上説明した本実施形態の貯湯式給湯機100によれば、ユーザーによって設定された浴槽温度を所定時間保つ浴槽水保温運転が実施された場合において、浴槽温度が浴槽加熱能力が低くても所定の目標温度まで昇温可能な温度範囲(設定された浴槽温度−0.5℃から−1.0℃までの範囲)に属する場合には、浴槽水の加熱能力が低いヒートポンプ直接追い焚き運転が実施される。これにより、保温上限時間の要求を満たしつつ、機器効率を高く維持することが可能となる。一方、浴槽温度が浴槽加熱能力が高いことが要求される温度範囲(設定された浴槽温度−1.0℃未満の範囲)に属する場合には、浴槽水の加熱能力が高い貯湯追い焚き運転が実施される。これにより、貯湯タンク内に中温水が生成されることで機器効率の低下があるものの、保温上限時間の要求を満たすことができる。
【0035】
ところで、上述した実施の形態1においては、加熱対象水を加熱させる加熱運転の一例として、浴槽水を追い焚きする浴槽水追い焚き運転について説明した。しかしながら、本発明の加熱運転はこれに限定されるものではなく、例えば、暖房用循環水を加熱対象水とする暖房運転であってもよい。
【0036】
また、上述した実施の形態1においては、ヒートポンプサイクルを、冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルとしたが、もちろん一般の臨界圧力以下のヒートポンプサイクルでもよい。またこの場合、冷媒としてはフロンガス、アンモニアなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 貯湯タンク
22 利用側熱交換器
50 浴槽(槽)
51 浴槽水循環回路(水循環回路)
52 2次側循環ポンプ(水循環手段)
53 浴槽出口側サーミスタ(温度検出手段)
60 ヒートポンプユニット(加熱手段)
70 制御部(選択手段)
100 貯湯式給湯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプを利用して加熱された高温水を貯湯するための貯湯タンクと、
加熱対象水が貯留された槽に接続された水循環回路を有し、当該水循環回路を用いて加熱対象水を循環させる水循環手段と、
前記水循環回路内を流れる加熱対象水を加熱する加熱手段と、
加熱対象水の温度を検出する温度検出手段と、
加熱対象水の温度低下時に、前記加熱手段を用いて加熱対象水の温度を上昇させる保温手段と、を備え、
前記加熱手段は、
前記ヒートポンプの停止中に、前記貯湯タンク内に貯留された高温水と前記水循環回路内を流れる加熱対象水とを熱交換させる貯湯追い焚き手段と、
前記ヒートポンプの動作中に、当該ヒートポンプを利用して加熱された高温水と前記水循環回路内を流れる加熱対象水とを熱交換させるヒートポンプ直接追い焚き手段と、を含み、
前記保温手段は、前記ヒートポンプ直接追い焚き手段によって加熱対象水を所定時間内に所定の目標温度まで昇温させることができない場合に、前記貯湯追い焚き手段を用いて加熱対象水の温度を上昇させることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記保温手段は、
加熱対象水の温度が所定の加熱開始温度よりも低下しているかを、保温運転中の所定のタイミング毎に判定する判定手段と、
加熱対象水の温度が前記加熱開始温度よりも低下していると判定された場合に、前記ヒートポンプ直接追い焚き手段と前記貯湯追い焚き手段との何れか一方を選択する選択手段と、を含み、
前記選択手段は、前記ヒートポンプ直接追い焚き手段を優先して選択し、当該ヒートポンプ直接追い焚き手段を用いて加熱対象水を所定時間内に前記目標温度まで昇温させることができなかった場合に、前記保温運転中の次回以降の選択において前記貯湯追い焚き手段を選択することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記保温手段は、
加熱対象水の温度が所定の加熱開始温度よりも低下しているかを、保温運転中の所定のタイミング毎に判定する判定手段と、
加熱対象水の温度が前記加熱開始温度よりも低下していると判定された場合に、前記ヒートポンプ直接追い焚き手段と前記貯湯追い焚き手段との何れか一方を選択する選択手段と、を含み、
前記選択手段は、加熱対象水の温度が前記加熱開始温度から当該加熱開始温度よりも低温の所定の判定温度までの温度範囲に属する場合には前記ヒートポンプ直接追い焚き手段を選択し、加熱対象水の温度が前記判定温度よりも低い温度範囲に属する場合には前記貯湯追い焚き手段を選択することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237492(P2012−237492A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106408(P2011−106408)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】