説明

貯湯式給湯装置

【課題】施工時に行われるエア抜き作業が極めて容易に行える貯湯式給湯装置に関するものである。
【解決手段】加熱手段2で高温に加熱した湯水を貯湯する貯湯タンク7と、該貯湯タンク7下部には給水管9を接続すると共に上部には出湯管8を接続し、更に貯湯タンク7の頂部には自動エア抜き弁38を連通すると共に、給水管9には電動止水栓39を備えたもので、前記貯湯タンク7内のエアを抜きながら注水する試運転時、自動的に自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を開成及び閉成する試運転モードを設けたものであり、貯湯タンク7内のエア抜き及び水張りが器具側で自動的に行われるので、いちいち人が張り付いて確認する必要が無く、極めて便利であり、特にアパートやマンション等の一度に数多くの器具を設置する集合物件では、作業効率が良く最小限の作業員で行えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプ回路や電気ヒーターを利用して、貯湯水を加熱し給湯を行う貯湯式給湯装置の施工後の試運転に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の給湯装置では、施工後の試運転については、貯湯タンクの頂部に連通している圧力逃がし弁を手動で開口した後、給水を行って貯湯タンク内のエアを抜きながら該貯湯タンクを満水状態とする試運転を行うものであった。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2004−85060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、圧力逃がし弁から水が溢れ出すことで、貯湯タンクのエア抜き及び水張りの終了を確認し、圧力逃がし弁を手動で閉口しなければならない為、常に人が張り付いていなくてはならず、アパートやマンション等の一度に数多くの器具を設置する集合物件では、この確認だけで多くの作業員が必要であったり、多くの時間を費やすもので、極めて作業性が悪いと言う問題点を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明はこの点に着目し、上記問題点を解決する為、請求項1では、加熱手段で高温に加熱した湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク下部には給水管を接続すると共に上部には出湯管を接続し、更に貯湯タンクの頂部には自動エア抜き弁を連通すると共に、給水管には電動止水栓を備えたものに於いて、前記貯湯タンク内のエアを抜きながら注水する試運転時、自動的に自動エア抜き弁及び電動止水栓を開成及び閉成する試運転モードを設けたものである。
【0005】
又請求項2では、前記試運転モードを、リモコン或いは貯湯タンクユニットに備えられた試運転スイッチの操作で開始するようにしたものであり、請求項3では、前記試運転モードを、試運転開始からカウントを開始するタイマーの所定時間のカウントアップで終了させたものであり、請求項4では、前記試運転モードを、自動エア抜き弁に備えられた給水センサによる給水検知で終了させるものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の請求項1によれば、貯湯タンク内のエア抜き及び水張りが器具側で自動的に行われるので、いちいち人が張り付いて確認する必要が無く、極めて便利であり、特にアパートやマンション等の一度に数多くの器具を設置する集合物件では、作業効率が良く最小限の作業員で行えるものである。
【0007】
又請求項2では、リモコン或いは貯湯タンクユニットの試運転スイッチを操作すると言う簡単な操作のみで、試運転モードが開始され、極めて使用勝手が良いものであり、又請求項3では、予め設定されたタイマー時間で試運転モードを終了するので、時間が来れば自動的に終了され安心して使用出来るものであり、又請求項4では、試運転モードが給水センサによる給水検知で終了されるので、貯湯タンク内のエア抜き及び水張りが確実に終了したことを検知して終了出来、確実性があり安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、この発明の一実形態のヒートポンプ式給湯機を図面に基づいて説明する。
1は貯湯タンクユニット、2はヒートポンプ回路を構成した加熱手段、3は給湯栓、4はリモコン、5は浴槽、6は電源である。
【0009】
前記貯湯タンクユニット1は、湯水を貯湯する貯湯タンク7と、貯湯タンク7の上部に接続された出湯管8と、貯湯タンクの下部に接続された給水管9と、出湯管8からの高温水と給水管9から分岐されたバイパス管10からの低温水とを混合するミキシング弁11と、ミキシング弁11の下流に接続された給湯管12に設けられた給湯温度センサー13と、給湯管12に設けられた給湯フロセンサー14と、給水管9に設けられた給水温度センサー15と、給湯管12から分岐され浴槽5に接続された湯張り管16と、この湯張り管16の開閉を行う、湯張り弁17と、湯張り管16を流れる流量を積算する、湯張り流量センサー18と、出湯管8から分岐して、接続された貯湯タンク7の過圧を逃す過圧逃がし弁19と、給水管9に設けられた給水圧を減圧する減圧弁20と、貯湯タンク7の側面上下方向に複数設けられた貯湯温度センサー21と、この貯湯タンクユニット1の制御を行うマイクロコンピューターで主に構成される給湯制御部22と、貯湯タンク7と加熱手段2とを往き管23と戻り管24で接続して、湯水を循環させる加熱循環回路25を形成するものである。
【0010】
前記加熱手段2は、二酸化炭素冷媒を圧縮するコンプレッサー26と凝縮器としての水冷媒交換器27と膨張弁28と蒸発器としての空気熱交換器29よりなる、ヒートポンプ回路30と、空気熱交換器29に送風する室外ファン31と加熱循環回路25の往き管23途中に設けられた能力可変の循環ポンプ32と、水冷媒交換器27の加熱循環回路25を構成する一番細いパイプからな成る温水流路33の入り口側に設けられ、温水流路33に流水する湯水の温度を検出する熱交入口温度センサー34と、温水流路33の出口側に設けられ、温水流路33から流水する湯水の温度を検出する熱交出口温度センサー35と、外気の温度を検出する凍結防止温度センサー36と、この加熱手段2の制御を行うマイクロコンピューターで主に構成される加熱制御部37とを備えている。
【0011】
38は貯湯タンク7の頂部に連通した自動エア抜き弁で、試運転の開始信号を受けることにより、磁力を発生させて自動的に弁体(図示せず)を開成して、貯湯タンク7内のエアが抜け易い状態とするものであり、これと同時に給水管9に備えた電動止水栓39が開成されて貯湯タンク7への給水が行われるものである。
【0012】
40は貯湯タンクユニット1内の戻り管24途中に備えられた流路切替手段を構成する電動三方弁で、通常時は戻り管24を連通状態とし、施工後のエア抜き運転時のみ接続している排水管41と温水流路33の出口側の戻り管24を連通状態として、温水流路33及び加熱循環回路25内のエアを水道圧で回路外に押し出すものである。
【0013】
前記リモコン4には、給湯スイッチ42、給湯設定温度を設定する温度設定スイッチ43、浴槽5への湯張りを指示する湯張りスイッチ44、湯張り量を設定する湯張り量設定スイッチ45、試運転スイッチ46とを有した操作部47と、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部48と、これら操作部47及び表示部48を制御すると共に前記給湯制御部22とを通信を行うマイクロコンピューターで主に構成されたリモコン制御部49を備えており、通常運転時は、前記表示部48に操作部47で設定された給湯設定温度や時刻情報及び給湯温度センサー21で検知する残り貯湯量等が表示されるものであり、試運転スイッチ46を押圧することで、試運転開始の信号が給湯制御部22に出力され、この給湯制御部22では自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を開成し、貯湯タンク7内のエアを自動エア抜き弁38から抜きながら、電動止水栓39を介して貯湯タンク7内の水張りを行うもので、これは試運転開始の信号を受けて予め試験で実測した所定時間ここでは30分のカウントを行うタイマー50のカウントアップで、自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を閉成して試運転モードを終了するものであり、終了後には継続して加熱循環回路25のエア抜き運転が開始されるもので、給湯制御部22は電動三方弁40を戻り管24同士の連通から、排水管41と温水流路33の出口側の戻り管24を連通状態とすると共に、予め設定された所定時間ここでは30分のカウントを再びタイマー50が行い、カウントアップで電動三方弁40を元の状態に戻し、エア抜き運転を終了させるものである。
【0014】
次に図1〜図4に示すこの一実施形態の作動について説明する。
今器具を設置し、給湯回路や風呂回路、給水管9、給湯管12の回路をそれぞれ配管接続した後、電源6を接続して施工は終了するものであり、次にリモコン4の試運転スイッチ46を押圧すれば(ステップ51)、YESで試運転開始の信号が給湯制御部22に出力され、この給湯制御部22がステップ52で自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を開成すると共に、予め設定された所定時間ここでは30分のカウントをタイマー50に開始させる。
【0015】
これにより、給水管9から電動止水栓39を介して貯湯タンク7給水が開始され、この給水によって貯湯タンク7内のエアは順次押し上げられ、頂部に連通している自動エア抜き弁38から抜け出てゆくものであり、貯湯タンク7内のエア抜きと水張りとを自動的に且つ良好に行うことが出来るものである。
【0016】
そして、ステップ53に進みタイマー50が30分のカウントアップするすると、YESでステップ54に進んで自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を閉成して、試運転モードを終了させるものであり、このタイマー50による30分のカウントは、試験で予め貯湯タンク7が満水になる時間を設定しているもので、当然貯湯タンク7の容量が変わればこの所定時間も変更されるものである。
【0017】
更に試運転モード終了後、ステップ55でタイマー50が所定時間ここでは1〜2分経過したかを判断し、YESで継続して加熱循環回路25のエア抜きを行うべく、ステップ56に進み電動三方弁40を戻り管24同士の連通から、排水管41と温水流路33の出口側の戻り管24を連通状態とすると共に、予め設定された所定時間ここでは30分のカウントを再びタイマー50が開始する。
【0018】
これによって、給水管9よりの給水が貯湯タンク7の底部を介して往き管23通り、温水流路33から戻り管24、排水管41と流れることで、この間のエアを水道圧で押し出して抜くものであり、排水管41からの水は排水路へと流される。
【0019】
そしてステップ57で、30分が経過してタイマー50がタイムアップすることにより、YESでステップ58に進み電動三方弁40を元の状態に戻し、エア抜き運転を終了させるものであるが、この30分は実測値に余裕をプラスした時間であり、無駄な排水が行われる心配はなく、更に手動操作することなく配管のエア抜きも自動的に行われ、しかも水道圧をかけているので、確実に且つ素早く抜くことが出来、施工時の確認作業が効率良く手間をかけずに簡単に行われるものである。
【0020】
次に図4に示すように、この貯湯式給湯装置は、夜間時間帯になると、前記給湯制御部22が翌日に必要な貯湯熱量を演算し、この目標となる貯湯熱量を夜間時間帯の終了までに沸き上げるよう加熱制御部37に指示してヒートポンプ回路30を作動させ、加熱循環回路25の循環ポンプ32を駆動開始する。そして、循環ポンプ32駆動により貯湯タンク7下部から取り出された湯水が水冷媒熱交換器27の細い温水流路33に流入して加熱され、加熱循環回路25を介して貯湯タンク7の上部に戻されることにより、高温の湯が貯湯される。
【0021】
そして、貯湯タンク7の側面に設けられた貯湯温度センサー21が所定の量の高温水が貯湯されたことを検出するか、又は、熱項入口温度センサー34が所定温度以上を検出すると、給湯制御部22が加熱制御部37へ加熱動作の停止を指示し、ヒートポンプ回路30と循環ポンプ32の作動が停止され、夜間時間帯の終了時までに貯湯作業を終了するものである。
【0022】
この状態で給湯栓3を開口すると貯湯タンク7上部の高温水が出湯管8がらミキシング弁11で給水とミキシングされて設定温度の給湯となって給湯管12を介して供給され、貯湯タンク7にはこの給湯で減少した分の給水が給水管9から供給されて、温水を押し上げ順次これを繰り返して良好な給湯が行われるものである。
【0023】
次に図5〜図9に示す他の実施形態を説明するが、この一実施形態と同一部分は同一符号を付し説明を省略して相違点のみ説明する。
59は自動エア抜き弁38内に設けられた給水センサで、フロートや一対の電極方式で貯湯タンク7が満水で自動エア抜き弁38まで給水が達したことを検知し、給湯制御部22を介して自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を閉成し、試運転モードを終了させるものである。
【0024】
60は流路切替手段を構成する電動四方弁で、往き管23と戻り管24をバイパスするバイパス路61の該戻り管24との接続部分に設けられ、通常時は図8に示すように戻り管24同士を連通し、凍結防止時には図9に示すように温水流路33側の戻り管24とバイパス路54を連通して、貯湯タンク7上部へ戻るながれを中止して加熱循環回路25のみの流れとして凍結を防止するものである。
62は排水管41に備えられたフローセンサで、エア抜きの完了を流水の検知で行うものである。
【0025】
次にその作動を図7に示すフローチャートで説明すれば、リモコン4の試運転スイッチ46を押圧すれば(ステップ51)、YESで試運転開始の信号が給湯制御部22に出力され、この給湯制御部22がステップ63で自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を開成する。
【0026】
これにより、給水管9から電動止水栓39を介して貯湯タンク7給水が開始され、この給水によって貯湯タンク7内のエアは順次押し上げられ、頂部に連通している自動エア抜き弁38から抜け出てゆくものであり、貯湯タンク7内のエア抜きと水張りとを自動的に且つ良好に行うことが出来るものである。
【0027】
そして、ステップ64に進み給水センサ59による給水の検知を待ち、YESでステップ65に進んで自動エア抜き弁38及び電動止水栓39を閉成して、試運転モードを終了するものであり、タイマー50による所定時間でなく、給水センサ59による直接給水を検知しての貯湯タンク7の満水停止で、確実に満水を検知出来、例えば施工場所によって相違する給水圧や給水量に対応出来、安心して使用出来るものである。
【0028】
更に試運転モード終了後、ステップ55でタイマー50が所定時間ここでは1〜2分経過したかを判断し、YESで継続して加熱循環回路25のエア抜きを行うべく、ステップ66に進み電動四方弁60を戻り管24同士の連通から、排水管41と温水流路33の出口側の戻り管24を連通状態とする。
【0029】
これによって、給水管9よりの給水が貯湯タンク7の底部を介して往き管23通り、温水流路33から戻り管24、排水管41と流れることで、この間のエアを水道圧で押し出して抜くものであり、排水管41からの水は排水路へと流される。
【0030】
ステップ67でエア抜き完了時の流水をフローセンサ62で検知して、YESでステップ68に進んで電動四方弁60を通常の状態に戻して、エア抜きを終了させるものであり、タイマー50よりは確実にエア抜きの完了検知出来、水の無駄な排水も確実に防止出来るものである。
【0031】
尚、この一実施形態では加熱手段2をヒートポンプ回路30で構成しているが、これに限定されることなく、例えば加熱手段2として電気ヒーターを使用して貯湯タンク7内の湯水を加熱する電気温水器にも適用出来るものである。
【0032】
又貯湯タンク7内のエア抜きと水張りによる満水の検知としては、その他に貯湯タンク7の上部に取り付けられた貯湯温度センサー21による給水温度検知後、所定時間経過してから自動エア抜き弁38を閉成するようにしても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施形態を示す貯湯式給湯装置のエア抜き状態概略構成図。
【図2】同要部電気回路のブロック図。
【図3】同要部のフローチャート。
【図4】同通常運転状態を示す概略構成図。
【図5】他の実施形態のエア抜き運転状態を示す概略構成図。
【図6】同他の実施形態の要部電気回路のブロック図。
【図7】同他の実施形態の要部のフローチャート。
【図8】同他の実施形態の通常運転状態を示す概略構成図。
【図9】同他の実施形態の凍結防止運転状態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0034】
1 貯湯タンクユニット
2 加熱手段
4 リモコン
7 貯湯タンク
8 出湯管
9 給水管
38 自動エア抜き弁
39 電動止水栓
46 試運転スイッチ
50 タイマー
59 給水センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で高温に加熱した湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク下部には給水管を接続すると共に上部には出湯管を接続し、更に貯湯タンクの頂部には自動エア抜き弁を連通すると共に、給水管には電動止水栓を備えたものに於いて、前記貯湯タンク内のエアを抜きながら注水する試運転時、自動的に自動エア抜き弁及び電動止水栓を開成及び閉成する試運転モードを設けた事を特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記試運転モードは、リモコン或いは貯湯タンクユニットに備えられた試運転スイッチの操作で開始される事を特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記試運転モードは、試運転開始からカウントを開始するタイマーの所定時間のカウントアップで終了する事を特徴とする請求項1及び2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記試運転モードは、自動エア抜き弁に備えられた給水センサによる給水検知で終了する事を特徴とする請求項1及び2記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−250501(P2006−250501A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71508(P2005−71508)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)