説明

貯蔵倉庫

【課題】 簡易な構成で、火薬等を貯蔵する倉庫本体が遮水されると共に爆発時における爆発片の飛散や爆風圧の拡散が抑制される貯蔵倉庫を提供する。
【解決手段】 設置面7上に設置された、火薬類等が貯蔵される倉庫本体19の外面は第1土層31で覆われており、第1土層31の外面は第1シート体21で覆われている。更に、第1シート体21の外面は第2土層32で覆われており、第2土層32の外面が第2シート体22によって覆われている。そして、第1シート体21には遮水シートが使用されており、第2シート体22には爆発時における第2土層32の飛散を抑えるように強度等が決定された補強用シートが使用されている。このように、第1シート体21と第2シート体22とが遮水機能と爆発抑制機能とを分担しているため、これらの機能が一体化したシート体を1枚用いる貯蔵倉庫に比べて、各々が無駄の無い設置範囲となり、効率的な配置が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貯蔵倉庫に関し、特に、爆発危険性を有する火薬類等を貯蔵するための貯蔵倉庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火薬類等を貯蔵するための貯蔵倉庫は、コンクリート製の構造体で構成されているのが一般的である。
【0003】
又、特許文献1に示すように、一対の不透水性のシートの間に複数の密封式のチューブ群を配列して連続構造体を形成し、この連続構造体に発泡ウレタン等を充填して所定の形状に立ち上がらせて貯蔵倉庫を構築する方法が提案されている。これによって、施工が容易となり、トンネル内で大きな容積の倉庫を確保できるとされている。
更に、特許文献1と同様に複数の密封式のチューブ群等を用いて、底部となるベース枠、屋根構造及び端壁構造よりなるエヤテント型の貯蔵倉庫が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−23518号公報
【特許文献2】実公昭62−19794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のコンクリート製の構造体の貯蔵倉庫では、火薬類が爆発したとき、構造体の破片が飛散したり、爆風圧が拡散する虞がある。
【0006】
又、特許文献1及び特許文献2の貯蔵倉庫では、コンクリート片の飛散等は無いものの構造が複雑であり、施工性、汎用性が高いとは言えない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、火薬等を貯蔵する倉庫本体が遮水されると共に爆発時における爆発片の飛散や爆風圧の拡散が抑制される貯蔵倉庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う第1土層と、第1土層の外面を覆う、遮水性を有する第1シート体と、第1シート体の外面を覆う第2土層と、第2土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第2土層の飛散を抑えるための第2シート体と、第2シート体を設置面に固定する第1固定手段とを備えたものである。
【0009】
このように構成すると、第1シート体と第2シート体とが遮水機能と爆発抑制機能とを分担する。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えたものである。
【0011】
このように構成すると、第2シート体の設置状態が安定する。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、第3土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第3土層の飛散を抑えるための第3シート体と、第3シート体を設置面に固定する第2固定手段とを更に備えたものである。
【0013】
このように構成すると、爆発抑制機能を有するシート体が第3土層を介して重なり合う。
【0014】
請求項4記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う、遮水性を有する第1シート体と、第1シート体の外面を覆う第1土層と、第1土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第1土層の飛散を抑えるための第2シート体と、第2シート体を設置面に固定する固定手段とを備えたものである。
【0015】
このように構成すると、第1シート体で直接倉庫本体を遮水する。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、第2シート体の外面を覆う第2土層を更に備えたものである。
【0017】
このように構成すると、第2シート体の設置状態が安定する。
【0018】
請求項6記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う第1土層と、第1土層の上面において、少なくとも倉庫本体の平面視における範囲を覆うように平面状に設置された、遮水性を有する第1シート体と、第1シート体の上面を覆う第2土層と、第1土層及び第2土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第1土層及び第2土層の飛散を抑えるための第2シート体と、第2シート体を設置面に固定する固定手段とを備えたものである。
【0019】
このように構成すると、上方からの雨水の浸入が第1シート体で阻止される。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えたものである。
【0021】
このように構成すると、第2シート体の設置状態が安定する。
【0022】
請求項8記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う第1土層と、第1土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第1土層の飛散を抑えるための第1シート体と、第1シート体の外面を覆う第2土層と、第2土層の外面を覆う、遮水性を有する第2シート体とを備えたものである。
【0023】
このように構成すると、第1シート体と第2シート体とが爆発抑制機能と遮水機能とを分担する。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成において、第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えたものである。
【0025】
このように構成すると、第2シート体の設置状態が安定する。
【0026】
請求項10記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地面を掘削した掘削底面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う第1土層と、第1土層の上面において、少なくとも倉庫本体の平面視における範囲を覆うように平面状に設置された、遮水性を有する第1シート体と、第1シート体の上面を覆う第2土層と、第2土層の上面において、倉庫本体の爆発時における第2土層の上方への飛散を抑えるために、少なくとも飛散の範囲を覆うように平面状に設置された第2シート体と、第2シート体の上面を覆う第3土層とを備えたものである。
【0027】
このように構成すると、第2シート体によって爆発時の上方への飛散が抑制される。
【0028】
請求項11記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う土層と、土層の少なくとも一部に対して遮水効果を発揮する遮水シートと、倉庫本体の爆発時における土層の飛散を抑えるための補強用シートとを備えたものである。
【0029】
このように構成すると、遮水シートと補強用シートとが遮水機能と爆発抑制機能とを分担する。
【0030】
請求項12記載の発明は、火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、地上又は地下の設置面上に設置されると共に、その外面に防水加工が施された、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、倉庫本体の外面を覆う第1土層と、第1土層の外面を覆い、倉庫本体の爆発時における第1土層の飛散を抑えるためのシート体と、シート体を設置面に固定する固定手段とを備えたものである。
【0031】
このように構成すると、遮水性を有するシート体の設置が不要となる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の構成において、シート体の外面を覆う第2土層を更に備えたものである。
【0033】
このように構成すると、シート体の設置状態が安定する。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、第1シート体と第2シート体とが遮水機能と爆発抑制機能とを分担するため、これらの機能を一体化したシート体を用いるものに比べて、効率的な配置が可能となる。
【0035】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第2シート体の設置状態が安定するため、第2シート体の爆発抑制機能が更に向上する。
【0036】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、爆発抑制機能を有するシート体が第3土層を介して重なり合うため、全体の爆発抑制機能が向上する。
【0037】
請求項4記載の発明は、第1シート体で直接倉庫本体を遮水するため、第1シート体の使用量が抑えられ、コスト的に有利となる。
【0038】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、第2シート体の設置状態が安定するため、第2シート体の爆発抑制機能が更に向上する。
【0039】
請求項6記載の発明は、上方からの雨水の浸入が第1シート体で阻止されるため、第1土層の含水率が維持されるので爆発抑制効果が安定する。
【0040】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、第2シート体の設置状態が安定するため、第2シート体の爆発抑制機能が更に向上する。
【0041】
請求項8記載の発明は、第1シート体と第2シート体とが爆発抑制機能と遮水機能とを分担するため、これらの機能を一体化したシート体を用いるものに比べて、効率的な配置が可能となる。
【0042】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の効果に加えて、第2シート体の設置状態が安定するため、第2シート体の遮水機能が安定して発揮される。
【0043】
請求項10記載の発明は、第2シート体によって爆発時の上方への飛散が抑制されるため、第2シート体における効率的な配置が可能となる。
【0044】
請求項11記載の発明は、遮水シートと補強用シートとが遮水機能と爆発抑制機能とを分担するため、これらの機能を一体化したシート体を用いるものに比べて、効率的な配置が可能となる。
【0045】
請求項12記載の発明は、遮水性を有するシート体の設置が不要となるため、コスト的に有利な構造となる。
【0046】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の効果に加えて、シート体の設置状態が安定するため、シート体の爆発抑制機能が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1の実施の形態による貯蔵倉庫の外観形状を示す平面図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの断面図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図4】この発明の第3の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図5】この発明の第4の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図6】この発明の第5の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図7】この発明の第6の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図8】この発明の第7の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【図9】この発明の第8の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1はこの発明の第1の実施の形態による貯蔵倉庫の外観形状を示す平面図であり、図2は図1で示したII−IIラインの断面図である。
【0049】
これらの図を参照して、貯蔵倉庫11の中心となる、火薬類等が貯蔵されている倉庫本体19は、地面である設置面7上に設置されている。倉庫本体19は、その材質は限定しないが、以下に述べるようなその外面に設置する構造体等を保持できるような強度を有する構造であれば良い。
【0050】
倉庫本体19の外面であって設置面7より上の面が第1土層31で覆われており、その外面が第1シート体21によって覆われている。第1シート体21は総ゴム製の遮水シートが用いられており、第1シート体21の内方側に位置する倉庫本体19及び第1土層31への雨水等の浸入を阻止する遮水機能を有している。
【0051】
又、第1シート体21の外面は第2土層32で覆われており、その外面が第2シート体22によって覆われている。更に、第2シート体22の外面は第3土層33で覆われている。第2シート体22は織布よりなる補強用シートが用いられており、倉庫本体19の爆発時における第2土層32の飛散を抑えるように、その網目間隔及び繊維強度が決定されている。即ち、第2シート体22は爆発抑制機能を有している。尚、第2シート体22の繊維強度を変更することで、種々の条件に適した爆発抑制機能を有する貯蔵倉庫11を容易に施工することができる。
【0052】
又、第2シート体22の設置面7側の端部となる平坦部41a、41bの各々は、第1固定手段の一例となるアンカーボルト等の複数の固定部材42a、42bによって長手方向(図2の貫通方向)に連続的に設置面7に固定されている。平坦部41a、41bの幅や強度及び固定部材42a、42bの設置間隔は、爆風圧の大きさによって設定すれば良い。
【0053】
次に、この貯蔵倉庫11における安全性について説明する。
【0054】
倉庫本体19に収納されている火薬類がなんらかの原因で爆発すると、周囲にその破片が飛散したり爆風が拡散する。しかし、倉庫本体19の設置面7より上の周囲は第2シート体22で覆われているため、破片や爆風は第2シート体22により抑制される。又、第2シート体22は倉庫本体19の外方を覆うと共に、その平坦部41a、41bが設置面7に固定されているため、第2シート体22は爆風等によって捲りあがることが無い。その結果、第2シート体22が破損しない状態では、倉庫本体19を包囲した第2シート体22に伝達された爆風等の外部への拡散が抑制されるため、周囲の安全性が向上する。尚、設置面7の方向に拡散した爆風は地面に吸収され、設置面7より上の周囲に影響を与えることは無い。
【0055】
尚、第1シート体21も倉庫本体19を包囲するように設置されているが、第1シート体21はあくまで遮水機能としての役割を果たすものである。従って、倉庫本体19の爆発を抑制する機能を有する必要は無く、爆風等によって外部に拡散する虞がある強度であっても良い。
【0056】
このように、第1シート体21は遮水性を有しているため、第1シート体21の内方側に位置する倉庫本体19及び第1土層31に雨水等が浸透することは無い。従って、倉庫本体19内の火薬類の湿潤が防止される。更に、第1土層31内の含水率が維持される。即ち、第1土層31の粘性が保持されるため、第1土層31の崩壊が防止される。
【0057】
このように、貯蔵倉庫11においては、第1シート体21と第2シート体22とが遮水機能と爆発抑制機能とを分担している。従って、例えばゴムシートの内部に織布を埋設したような、遮水機能と爆発抑制機能とが一体化したシート体を1枚用いる貯蔵倉庫の場合に比べて、効率的な配置が可能となる。即ち、各々の機能を要する範囲に第1シート体21と第2シート体22とを設置すれば良いため、第1シート体21と第2シート体22との設置範囲に無駄が無くなる。
【0058】
又、第1シート体21と第2シート体22との2枚のシート体を使用することによって、1枚のシート体を使用する場合に比べ、貯蔵倉庫11が有する土層の数が増加する。従って、一体的な土層とはならず各土層が独立した状態となるため、土層全体の崩壊等が防止される。即ち、貯蔵倉庫11の土層全体の強度が向上することになる。
【0059】
又、第2シート体22の外面が第3土層33によって覆われているため、第2シート体22の設置状態が安定すると共に、倉庫本体19の爆発によって伝達された爆風等による第2シート体22の浮き上がりが、第3土層33によって確実に防止されることになる。従って、第2シート体22の爆発抑制機能が更に向上し、貯蔵倉庫11の信頼性が向上する。
【0060】
尚、第1土層31、第2土層32及び第3土層33の土の種類や施工厚さは、倉庫本体19内に貯蔵される火薬類の爆発力による第2シート体22への影響などに応じて、種々の構造に決定すれば良い。
【0061】
又、このような貯蔵倉庫11は、図2の二点鎖線で示すように、地下に設置される貯蔵倉庫11に対しても同様に適用することができる。以下に、上述した地上に設置される貯蔵倉庫11と相違する点を中心に説明する。
【0062】
図2を参照して、倉庫本体19は、地面5を掘削して形成された掘削底面である設置面7上に設置されている。又、第2シート体22の外面は、その上面が地面5に整列した第3土層33によって覆われている。即ち、掘削側面44a、44bを含め掘削部分の残りが全て第3土層33で埋められることになる。尚、このような第3土層33を第2シート体22の第1固定手段とし、第2シート体22の平坦部41a、41bを設置面7上に固定しても良い。その場合、上述したアンカーボルト等の固定部材42a、42bは無くても良い。又は、第3土層33と固定部材42a、42bとを併せて第1固定手段として使用しても良い。
【0063】
尚、このような地下に設置される貯蔵倉庫11における効果については、上述した地上に設置される貯蔵倉庫11と同様であることは言うまでも無い。
【0064】
図3はこの発明の第2の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0065】
図を参照して、基本的な構成は第1の実施の形態の貯蔵倉庫と同一であるので、ここではその相違点について主に説明する。
【0066】
この実施の形態による貯蔵倉庫12にあっては、第2シート体22の外面側の構造が大きく異なっている。即ち、貯蔵倉庫12は、図2で示した第2シート体22の外面を覆う第3土層33を備えておらず、第2シート体22の外面が露出した状態となっている。
【0067】
このような貯蔵倉庫12においては、図2で示した第3土層33を設置する必要が無くなるため、施工の手間を省くことができ、貯蔵倉庫12の設置工程をより簡略化することができる。
【0068】
尚、貯蔵倉庫12においても、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図の二点鎖線で示すように、貯蔵倉庫12が地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。その場合、第2シート体22の側面部分の各々と、掘削側面44a、44bの各々との間のスペースを埋めるように、第3土層33a、33bを形成する。第3土層33a、33bは、第2シート体22の平坦部41a、41bの上に形成されるため、第2シート体22の捲り上がりを阻止する効果を奏する。更に、第3土層33a、33bを第2シート体22の設置面7への第1固定手段として使用することも可能であり、その場合、固定部材42a、42bは無くても良い。
【0069】
図4はこの発明の第3の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0070】
この実施の形態による貯蔵倉庫13にあっては、第1シート体21の設置位置及び設置形状を除いては、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同一である。即ち、倉庫本体19の外面は、土層を介さずに直接第1シート体21に覆われている。
【0071】
このような貯蔵倉庫13においては、第1シート体21で直接倉庫本体19を遮水することになるため、第1の実施の形態による貯蔵倉庫に比べて、第1シート体21の使用量を抑えることができる。即ち、コスト的に有利な貯蔵倉庫13となる。
【0072】
尚、第1シート体21より外方側の構造については、第1の実施の形態によるものと同一であるため、同様の効果を発揮することは言うまでも無い。
【0073】
更に、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図で示す地上に設置される場合に限らず、貯蔵倉庫13は地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。
【0074】
図5はこの発明の第4の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0075】
この実施の形態による貯蔵倉庫14にあっては、特に第1シート体21の設置形状を除いては第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同一である。即ち、倉庫本体19の外面が第1土層31で覆われており、第1土層31の上面37において、少なくとも倉庫本体19の平面視における範囲を覆うように第1シート体21が平面状に設置されている。又、第1シート体21の上面が第2土層32で覆われており、第1土層31及び第2土層32の外面が第2シート体22で覆われている。
【0076】
このような貯蔵倉庫14においては、遮水機能を有する第1シート体21によって、第1シート体21の下方に位置する第1土層31の部分及び倉庫本体19への、上方からの雨水の浸入が阻止される。従って、第1土層31の含水率が維持されるため、第1土層31の崩壊が防止される。更に、倉庫本体19内の火薬類の湿潤が防止される。
【0077】
尚、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図で示す地上に設置される場合に限らず、貯蔵倉庫14は地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。
【0078】
図6はこの発明の第5の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0079】
この実施の形態による貯蔵倉庫15にあっては、第1の実施の形態による貯蔵倉庫の遮水機能を有する第1シート体を備えていない部分を除いては第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同一である。即ち、倉庫本体19の外面には、破線で示すように防水加工が施されている。そして、倉庫本体19の外面が第1土層31で覆われており、第1土層31の外面が、図2で示した第2シート体22と同一のシート体23で覆われている。即ち、シート体23は織布よりなる補強用シートで構成されており、爆発抑制機能を有している。
【0080】
このような貯蔵倉庫15においては、倉庫本体19の外面に防水加工が施されているため、これによって倉庫本体19内の火薬類の湿潤が防止される。従って、遮水性を有するシート体を設置する必要が無くなるため、コスト的に有利な貯蔵倉庫15となる。
【0081】
尚、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図で示す地上に設置される場合に限らず、貯蔵倉庫15は地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。
【0082】
図7はこの発明の第6の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0083】
図を参照して、基本的な構成は第1の実施の形態の貯蔵倉庫と同一であるので、ここではその相違点について主に説明する。
【0084】
この実施の形態による貯蔵倉庫16にあっては、爆発抑制機能を有する第1シート体24と遮水機能を有する第2シート体25との位置関係が大きく異なっている。即ち、第1土層31の外面が爆発抑制機能を有する第1シート体24で覆われている。又、第1シート体24の外面が第2土層32で覆われており、第2土層32の外面が遮水機能を有する第2シート体25で覆われている。
【0085】
このような貯蔵倉庫16においては、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様に、第1シート体24と第2シート体25とが、爆発抑制機能と遮水機能とを分担している。従って、第1の実施の形態による貯蔵倉庫におけるシート体の各々の位置関係に対して、第1シート体24と第2シート体25との位置を入れ替えた状態であっても、同様の効果を奏する。
【0086】
尚、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図で示す地上に設置される場合に限らず、貯蔵倉庫16は地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。
【0087】
図8はこの発明の第7の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0088】
図を参照して、基本的な構成は第1の実施の形態の貯蔵倉庫と同一であるので、ここではその相違点について主に説明する。
【0089】
この実施の形態による貯蔵倉庫17にあっては、爆発抑制機能を有する第3シート体27を更に備えている。即ち、第3土層33の外面が第2シート体22と同一機能を有する第3シート体27に覆われており、第3シート体27の外面が第4土層34に覆われている。尚、第3シート体27の設置面7側の端部となる平坦部46a、46bの各々は、第2シート体22と同様、第2固定手段であるアンカーボルト等の複数の固定部材47a、47bによって設置面7に固定されている。
【0090】
このような貯蔵倉庫17においては、第3土層33を介して重なり合う第2シート体22と第3シート体27とが爆発抑制機能を有することになる。従って、第1の実施の形態による貯蔵倉庫に比べ、貯蔵倉庫17全体の爆発抑制機能が向上する。更に、第4土層34によって、爆発による第3シート体27の捲り上がりが阻止されるため、第3シート体27の爆発抑制機能が更に向上する。
【0091】
尚、第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同様、図で示す地上に設置される場合に限らず、貯蔵倉庫17は地下に設置される場合であっても同様に適用することができる。
【0092】
図9はこの発明の第8の実施の形態による貯蔵倉庫の概略断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0093】
この実施の形態による貯蔵倉庫18にあっては、第2シート体22の設置形状を除いては、地下に設置される第1の実施の形態による貯蔵倉庫と同一である。即ち、第1シート体21の外面が第2土層32で覆われており、第2土層32の上面38には平面状に設置された第2シート体22が設置されている。そして、第2シート体22の上面が第3土層33によって覆われている。
【0094】
第2シート体22は、倉庫本体19における爆発中心点Aから上方に向かう垂直ライン51を基準として、爆発中心点Aを中心に幅方向(図の左右方向)の各々に角度θ、θ傾けたクレーター発生予測ライン52a、52bの範囲より大きくなるように設定されている。角度θ、θは、共に45°に設定するのが好ましい。
【0095】
そして、平面状に設置された第2シート体22は、その上面が第3土層33によって覆われているため、爆発時における捲り上がりが防止される。従って、爆発時の第2土層32の上方への飛散を抑制することができる。そして、第1シート体21と第2シート体22とが遮水機能と爆発抑制機能とを分担するため、第2シート体22における効率的な配置が可能となり、広範囲に亘る地表面での土層等の飛散を抑制することができる。又、上述した通り、第2シート体22は爆発によるクレーター発生予測ライン52a、52bの範囲より大きくなるように設定されているため、爆発による地表面でのクレーターの発生を効率的に抑制することができる。
【0096】
尚、上記の各実施の形態では、遮水機能を有するシート体は総ゴム製のシートを用いているが、例えば塩化ビニルやポリエチレン等よりなる合成樹脂製のシート、又は金属製のシート等、遮水性を有するものであれば、他の素材のシートであっても良い。
【0097】
又、上記の各実施の形態では、爆発抑制機能を有するシート体は織布よりなるシートを用いているが、例えば不織布よりなるシート、金網、又は補強土工法に用いられるジオテキスタイル(ジオテキスタイルは登録商標です)のような樹脂ネット等であっても良い。ジオテキスタイルを用いた場合、これを介して設置される土層の各々が一体化されるため、その強度が更に向上することになる。又は、例えば総ゴム製のシートや織布をゴムで被覆したもの等、爆発抑制機能を有するものであれば、遮水機能を同時に有するシートであっても良い。
【0098】
更に、上記の各実施の形態では、遮水機能を有するシート体の設置面への固定手段については触れていないが、爆発抑制機能を有するシート体と同様に、アンカーボルト等によって端部を設置面に固定しても良い。
【0099】
更に、上記の各実施の形態では、各シート体の設置形態については上面が平面状の特定形状としているが、各シート体の上面が平面状に形成されていなくても、例えば倉庫本体の外方を覆うアーチ状に形成する等、各シート体は他の設置形態であっても良い。その際、設置時にできるだけ角部等が現れないように設置すれば、シート体の破断を防止する意味で好ましい。
【0100】
更に、上記の各実施の形態では、倉庫本体はその外面が矩形断面形状を有する特定形状に形成されているが、例えば上部が半円状の断面形状を有するもの等、火薬等が貯蔵できるように形成されていれば、他の形状であっても良い。
【0101】
更に、上記の各実施の形態では、爆発抑制機能を有するシート体を1枚又は2枚設置しているが、より大きな爆発力に応じて、該シート体を3枚以上設置するように構成しても良い。
【0102】
更に、上記の第1〜第7の実施の形態では、爆発抑制機能を有するシート体はアンカーボルト等の固定手段によって設置面に固定されているが、該シート体の側面又は外面を覆う土層の圧力又は土層との摩擦抵抗によって、該シート体がその機能を確保できるような設置状態が保持される場合、アンカーボルト等は無くても良い。
【0103】
更に、上記の第1、第2、第4、第6及び第7の実施の形態では、各々が特定構造を有しているが、倉庫本体の外面を覆う土層の少なくとも一部に対して遮水効果を発揮する遮水シートと、倉庫本体の爆発時における土層の飛散を抑えるための補強用シートとを備えていれば、他の構造であっても良い。
【0104】
更に、上記の第3〜第7の実施の形態では、最外方に位置する爆発抑制機能を有するシート体の外面が土層によって覆われているが、このシート体の外面を覆う土層は無くても良い。
【0105】
更に、上記の第8の実施の形態では、第1シート体は第1土層の外面を覆うように設置されているが、第1シート体は、第4の実施の形態と同様に、第1土層の上面において少なくとも倉庫本体の平面視における範囲を覆うように平面状に設置されていても良い。
【0106】
更に、上記の第8の実施の形態では、第2シート体はクレーター発生予測ラインの範囲より大きくなるように設定されているが、第2シート体は少なくとも爆発時における第2土層の上方への飛散の範囲を覆うような大きさに設定されていれば良い。
【0107】
更に、上記の第8の実施の形態では、爆発抑制機能を有する第2シート体は1枚のみ設置されているが、例えば第2土層における第1シート体と第2シート体との間に、爆発抑制機能を有するシート体を更に設置する等、爆発抑制機能を有するシート体が複数枚設置される構造であっても良い。
【符号の説明】
【0108】
7…設置面
11〜18…貯蔵倉庫
19…倉庫本体
21、24…第1シート体
22、25…第2シート体
23…シート体
27…第3シート体
31…第1土層
32…第2土層
33…第3土層
37、38…上面
42、47…固定部材
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の外面を覆う、遮水性を有する第1シート体と、
前記第1シート体の外面を覆う第2土層と、
前記第2土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第2土層の飛散を抑えるための第2シート体と、
前記第2シート体を前記設置面に固定する第1固定手段とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項2】
前記第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えた、請求項1記載の貯蔵倉庫。
【請求項3】
前記第3土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第3土層の飛散を抑えるための第3シート体と、
前記第3シート体を前記設置面に固定する第2固定手段とを更に備えた、請求項2記載の貯蔵倉庫。
【請求項4】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う、遮水性を有する第1シート体と、
前記第1シート体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第1土層の飛散を抑えるための第2シート体と、
前記第2シート体を前記設置面に固定する固定手段とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項5】
前記第2シート体の外面を覆う第2土層を更に備えた、請求項4記載の貯蔵倉庫。
【請求項6】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の上面において、少なくとも前記倉庫本体の平面視における範囲を覆うように平面状に設置された、遮水性を有する第1シート体と、
前記第1シート体の上面を覆う第2土層と、
前記第1土層及び前記第2土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第1土層及び前記第2土層の飛散を抑えるための第2シート体と、
前記第2シート体を前記設置面に固定する固定手段とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項7】
前記第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えた、請求項6記載の貯蔵倉庫。
【請求項8】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第1土層の飛散を抑えるための第1シート体と、
前記第1シート体の外面を覆う第2土層と、
前記第2土層の外面を覆う、遮水性を有する第2シート体とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項9】
前記第2シート体の外面を覆う第3土層を更に備えた、請求項8記載の貯蔵倉庫。
【請求項10】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地面を掘削した掘削底面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の上面において、少なくとも前記倉庫本体の平面視における範囲を覆うように平面状に設置された、遮水性を有する第1シート体と、
前記第1シート体の上面を覆う第2土層と、
前記第2土層の上面において、前記倉庫本体の爆発時における前記第2土層の上方への飛散を抑えるために、少なくとも前記飛散の範囲を覆うように平面状に設置された第2シート体と、
前記第2シート体の上面を覆う第3土層とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項11】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置され、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う土層と、
前記土層の少なくとも一部に対して遮水効果を発揮する遮水シートと、
前記倉庫本体の爆発時における前記土層の飛散を抑えるための補強用シートとを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項12】
火薬等を貯蔵するための貯蔵倉庫であって、
地上又は地下の設置面上に設置されると共に、その外面に防水加工が施された、火薬等を貯蔵するための倉庫本体と、
前記倉庫本体の外面を覆う第1土層と、
前記第1土層の外面を覆い、前記倉庫本体の爆発時における前記第1土層の飛散を抑えるためのシート体と、
前記シート体を前記設置面に固定する固定手段とを備えた、貯蔵倉庫。
【請求項13】
前記シート体の外面を覆う第2土層を更に備えた、請求項12記載の貯蔵倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82027(P2012−82027A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227105(P2010−227105)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)