説明

貸付金利算出システム、方法およびプログラム

【課題】クレジットカードの加盟店に対してローンの貸出を行う場合に、自社のクレジットカード所有者による売上と、他者のクレジットカード所有者による売上の額に対応して回収リスクを算出して貸出金利を定めること。
【解決手段】クレジット決済処理システム110には、加盟店システム130から売上情報を受信してデータベース205に格納する売上登録部201、登録済みの取引について期間ごと、あるいは期間中に売上額を自社売上分および他社売上分に分けて集計する売上集計部202、集計された自社売上分および他社売上分の売上額に基づいて貸出金利を算出する本実施形態の特徴である貸出金利算出部203および加盟店へのローンの貸出しを指示する振込処理部204を備える。ここで、振込処理部204は、ローンの振込処理を実行するに当たって、加盟店システム130からの貸出申込を受信して申込内容に応じた処理なども実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸付金利算出システム、方法およびプログラムに関し、より詳細にはクレジット取引の加盟店に対してクレジット会社が行う貸付金利算出システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、クレジットカードなどの取引において、顧客がクレジット会社と契約している加盟店で物品を購入し、クレジット決済が行われると、クレジット会社では加盟店ごとに売上情報を記憶しておき、一定期間、例えば月に2回等に分けて加盟店ごとの売上を集計して各加盟店の口座に振込む等により提供している。すなわち、クレジットカード会社はクレジット決済後その売上に対応する額の送金をするまで、加盟店に対し対応する債務を有することとなる。一方、クレジットカード会社 の加盟店に無担保短期融資を可能にするため、クレジットカード会社で使用する情報処理装置と、クレジットカード会社の加盟店が使用する決済端末とが通信回線(クレジットカード決済ネットワークサービス提供会社)で接続されていて、クレジットカード会社の会員ユーザーが加盟店でカード決済を行うことができるようにしたシステムにおいて、加盟店に短期融資ができる金融機関が使用する金融情報処理装置と、通信回線から加盟店の取引情報を所定時間毎に取込み、加盟店別にクレジットカード等の取引情報を分類し、クレジット売上高情報及び所定の条件に応じて当該加盟店に短期融資を実行させる与信情報を形成し金融機関の金融情報処理装置に送出する信用供与情報処理装置とを備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−102476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般にクレジット決済システムではクレジットカード会社は、加盟店に支払った売上額をクレジットカード所有者から回収する際に、他のクレジットカード会社のクレジットカードの所有者の取引分を、その他のクレジットカード会社から間接的に回収する取引が行われており、従来の信用供与システムでは、このような場合を考慮に入れていないため、適切な信用を供与できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、クレジットカードの加盟店に対してローンの貸出を行う場合に、自社のクレジットカード所有者による売上と、他者のクレジットカード所有者による売上の額に対応して回収リスクを算出して貸出金利を定める貸付金利算出システム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本出願の請求項1に記載の発明は、加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに仲介企業について合計し仲介企業から回収する指示を送信するクレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定システムであって、記憶手段から、加盟店についての直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計手段と、記憶手段から、加盟店についての間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、仲介企業全体について集計して加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計手段と、加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の貸付金利算定システムにおいて、貸出金利算出手段は、加盟店について算出した自社売上債権額および他社売上債権額に、それぞれ自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率を乗算して加算した額を、自社売上債権額および他社売上債権額の加算した額で除算することにより回収リスク率を算出することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の貸付金利算定システムにおいて、他社回収リスク率は0であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の貸付金利算定システムにおいて、貸出金利算出手段は、算出した回収リスク率、事務コスト率、利潤率および調達金利を合計して貸出金利を定めることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の貸付金利算定システムにおいて、自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率は、加盟店ごとに定められることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに仲介企業について合計し仲介企業から回収する指示を送信するクレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定方法であって、記憶手段から、加盟店についての直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計ステップと、記憶手段から、加盟店についての間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、仲介企業全体について集計して加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計ステップと、加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出ステップとを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の貸付金利算定方法において、貸出金利算出ステップは、加盟店について算出した自社売上債権額および他社売上債権額に、それぞれ自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率を乗算して加算した額を、自社売上債権額および他社売上債権額の合計で除算することにより回収リスク率を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の貸付金利算定方法において、他社回収リスク率は0であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の貸付金利算定方法において、貸出金利算出ステップは、算出した回収リスク率、事務コスト率、利潤率および調達金利を合計して貸出金利を定めることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載の貸付金利算定方法において、自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率は、加盟店ごとに定められることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに仲介企業について合計し仲介企業から回収する指示を送信する貸付金利算定サーバに、クレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定方法を実行させるプログラムであって、貸付金利算定方法は、記憶手段から、加盟店についての直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計ステップと、記憶手段から、加盟店についての間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、仲介企業全体について集計して加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計ステップと、加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、記憶手段から、加盟店についての直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計手段と、記憶手段から、加盟店についての間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、仲介企業全体について集計して加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計手段と、加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出手段とを備えているので、クレジットカードの加盟店に対してローンの貸出を行う場合に、自社のクレジットカード所有者による売上と、他者のクレジットカード所有者による売上の額に対応して回収リスクを算出して貸出金利を定めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明にかかる一実施形態のシステム全体を示すブロック図である。本実施形態では、本発明の取引として特にクレジットカード決済システムを想定し、クレジットカードの利用によって取引される売上の処理が行われるが、これに限られず種々の取引形態においても本発明を実装することができる。
【0020】
従来、購入者が、クレジット会社の加盟店における取引をクレジットにより行う場合、購入者が所有するクレジットカードを提示しそのクレジットカードにより、例えばCAT端末などを利用してネットワークを介して決済を行う。この結果、クレジット会社にその加盟店の売上が計上され、その売上が定期的に集計されて加盟店へ提供される。一般に、この売上の集計期間は半月に一度程度であり、集計した売上の提供は加盟店の口座への振込により行われることが多い。したがって、売上登録がされてから振込みが行われるまでの売上は加盟店の一定の債権的なものと考えることもできるが、本願発明ではこの情報に基づいて加盟店へのローン貸出に伴う回収リスクの見積もりを行なう。
【0021】
(本実施形態のシステム構成)
本実施形態の全体システムでは、大きく分けてクレジット決済処理システム110および加盟店端末130がネットワーク120で接続されている。ここで、以上のシステムあるいはサーバは相互に何らかのネットワークにより接続されている。このネットワークにはインターネットを含むことができるが、一方で、専用回線により接続することもできるし、一部のやり取りをFAXやその他の従来の手続により行うこともできる。その他、接続のハードウェアあるいはソフトウェアについては特定の規格、製品を採用する必要はなく、本技術分野で知られたいずれの手法、構成によってもデータのやりとりが可能であれば本発明の目的を達することができる。なお、本明細書でシステムは端末、サーバおよびデータベースのいずれかを含むものであるが、本発明を実装するためにはこのようなものでなくても、データ通信、データ処理およびデータの管理が可能なものであれば、いずれの装置、機器を用いてシステムを構成することができる。
【0022】
クレジット決済処理システム110は、通常のクレジットカードによる決済処理およびこれに付随する売上集計などの種々の機能を有する決済処理サーバをはじめとする図示しない種々のサーバを備えるが、本願発明の目的が達成される限りいずれのサーバにいずれの機能を実装することも可能である。本明細書では、本願発明に関連する部分であるクレジット決済処理サーバ以外については詳述しないが、本システムは全体として本技術分野で知られたクレジット決済を行うためのシステムにおいて考えられる必要な機能がすべて含まれており、加えて本実施形態で変更あるいは追加された部分に対応するために必要な修正が、適宜加えられているものとする。
【0023】
決済処理サーバまたはシステムは本技術分野で広く知られているものであり、様々な方式や付加機能を有するものが多く知られているため、ここでは、本実施形態の説明上必要と考えられる部分だけに絞って説明するが、必要であればこのような既に知られている技術を考慮して理解することもできる。クレジット決済処理システムは、本実施形態で必要な基本処理を実行するモジュールとして、加盟店130からクレジット取引による売上情報をネットワーク120を介して受信して売上登録する機能を有し、および集計された売上のうち加盟店に支払っていない未払い売上に基づいて貸出金利を算出する他、顧客150に請求書を発行し、顧客150に金融機関140に振り込ませたり、引き落とさせたりする(192)請求発行機能、加盟店に売上情報に対応する振込(支払)指示を金融機関140に送信する振込処理機能および種々のデータ通信を行う送受信機能などを有する。ここで、クレジット決済処理システム110と金融機関140とは例えば専用のネットワークで接続され、一般に振込処理だけではなく、その後所定の口座から振込額を引き落としたり、振込を受け取ったり、場合によっては受取書を送信したりする処理により振込処理は完結する。本実施形態では、振込処理に伴う、あるいは引き続き必要となるこのような処理については特に説明しないが、本実施形態で振込処理と言った場合、これに伴う、あるいは引き続き必要な種々の本技術分野で知られた処理が行われるものとする。したがって、振込処理以外の処理を行うシステムも本発明の範囲に含まれるのはもちろん、そのような本実施形態で説明しない処理に、ここで言う振込処理がどのような形態で組み込まれていても、そのようなもの全体を指して振込処理と呼ぶことができるものとする。
【0024】
また、加盟店システム130は、本実施形態の加盟店側の処理を実装する部分であり、具体的には加盟店システム130に含まれるCAT端末やクレジットオーソリ機能付きPOSなどの専用端末(図示せず)にクレジットカードの磁気情報やICチップの情報を読み込ませ、さらに取引に関する情報特に支払い金額を入力してネットワークを介し送信するほか、同じく加盟店システム130に含まれる加盟店端末(図示せず)は、種々の照会機能など本技術分野で知られた機能などとともに、本実施形態で使用する貸付申込を加盟店からクレジット決済処理サーバ110に送信する貸付申込機能を有する。ここで、加盟店システム130の加盟店端末は所定のプロセッサおよびデータベースを備えるが、これに限られることなく1台の端末で処理を実行することもできるし、より多くの端末やデータベースに機能、データを分けて実装することもできる。貸付申込機能は、本明細書では詳細の説明を省くが、本技術分野で知られた情報受付、入力インタフェースを提供し入力させることができる。
【0025】
なお、本実施形態では図1に示す端末、サーバ間のやり取りは、各サーバまたは端末がソフトウェアによって処理されネットワークを介して通信するよう説明するが、本発明を実施するためにはこれに限られず、加盟店端末130とクレジット決済処理システム110等との間の情報の伝達をFAXやメール等の従来の通信手法により行うこともできる。
【0026】
(本実施形態のモジュール構成)
本システムの全体の構成は以上のようなものであるが、本実施形態の個別のシステムを構成する端末、サーバは少なくともネットワークに接続可能な通常のコンピュータの機能を有している必要がある。このようなハードウェアの条件の下、本実施形態の個別のシステムの処理の実行はソフトウェアプログラムがこのようなハードウェアにインストールされて行われる。各ソフトウェアは例えば図2に示すようなモジュール構成で示すことができるが、これは単なる例示であり、各モジュールの機能をさらにいくつかのモジュールで分担したり、いくつかのモジュールの機能を統合したモジュールを想定したりすることができるのはいうまでもない。以下に、クレジット決済処理システム110のモジュール構成を説明するが、これらのモジュールが相互に連携を取って実行され、後述する本実施形態の処理が達成されるのである。
【0027】
図2は、クレジット決済処理システム110のモジュール構成を示す図である。クレジット決済処理システム110には、加盟店システム130から売上情報を受信してデータベース205に格納する売上登録部201、登録済みの取引について期間ごと、あるいは期間中に売上額を自社売上分および他社売上分に分けて集計する売上集計部202、集計された自社売上分および他社売上分の売上額に基づいて貸出金利を算出する本実施形態の特徴である貸出金利算出部203および加盟店へのローンの貸出しを指示する振込処理部204を備え、本実施形態の特徴的な処理を実行する。ここで、振込処理部204は、ローンの振込処理を実行するに当たって、加盟店システム130からの貸出申込を受信して申込内容に応じた処理なども実行する。また、クレジットカード会社の発行するカードは一般に種々のものがあり、例えば他の企業と提携したカードなどが発行されている。
【0028】
このようなカードで取引が行われると、カード所有者からの支払金の回収は、元々契約した他社企業が行うものの、加盟店への支払いは自社が行う場合がある。すなわち、一定のクレジットカードについては発行元のクレジットカード会社または企業以外のクレジットカード会社または企業が加盟店への支払いを代行する。本実施形態のシステムは、このような自社に相当するクレジットカード会社のシステムを想定しており、他社に代わり自社であるクレジットカード会社が自社の加盟店へ支払いを行う。そして、加盟店に支払う分の他社売上は加盟店ではなく代行する自社である(主管の)クレジットカード会社に支払うこととなる。すなわち、自社のカードを所有する顧客の売上である自社売上分は、顧客から直接回収しなければならないが、他社売上分は他社の企業から支払われる。
【0029】
通常、ローンの貸出は、担保がある場合は担保の情報に基づいて、無担保の場合はその代わりになる各種債権の額に基づく等により、貸出限度額を定めて実行されるが、本実施形態では、あくまで貸出金利の決定のプロセスが特徴であるから、限度額や実際の貸出額の決定、その他ローン貸出あるいはキャッシングに関する金利決定以外の処理については説明を省略する。ただし、このような加盟店の種々の状況に応じて貸出額や貸出期間等の条件を定める方法は、本技術分野で知られたいずれの方法も用いることができる。
【0030】
(本実施形態の処理)
以上、本実施形態の構成について説明したが、図3および4を参照して以上の構成を持つシステムを用いた本実施形態の処理を説明する。図3は、本実施形態の全体のクレジット決済処理を説明するための処理フロー図である。本実施形態では、図3に示す全体の処理フローに沿って処理が行われるが、これはあくまで本実施形態のようなシステムの典型的な流れであって、常にこのような順序である必要はなく、一部順序を変更したり、一部の手順を入れ替えたり、異なる手順を加えることもできる。
【0031】
まず、加盟店130においてクレジットによる取引が行われ、売上情報がネットワーク120を介して送信されると売上登録部201では売上情報を受信して、データベース205に格納する(S301、S302)。このようにして、加盟店システム130からの売上情報を蓄積し、半月等の一定期間ごとに集計して売上の振込みを行うが、その一定期間中にローン貸出申込を受信した場合、本実施形態の特徴である貸出金利算出処理を実行する。すなわち、加盟店システム130からローン貸出申込を受信したか否かをチェックし(S303)、受信した場合には貸出金利算出部203は、図4を参照して後述するように、その時点における未集計の取引の売上情報をデータベース205から検索して売上集計部202により自社売上分と他社売上分とに分けて集計し、集計された売上額に基づいて貸出金利を算出する(S304)。
【0032】
ローン貸出申込が行われた場合、後述するように貸出金利を算出した後、振込処理部204は、申込まれた金額を金融機関140に加盟店が有する口座に振込むように振込指示を送信させる(S306)。基本的に申込まれた額が振込まれるが、上述した種々の条件で決定した限度額を超える場合は別途本技術分野で知られた処理を行う。ここでは詳述しないが振込指示を受信した金融機関システム140は、指定された金額を指定された加盟店の口座に振込む。
【0033】
次に、図4および5を参照して、貸出金利の算出処理について説明する。図4は、貸出金利を算出する処理の流れを示す図である。図5は、本実施形態の貸出金利算出方法を説明するための回収リスクテーブルの一例である。本実施形態では、上述のように先ず売上が登録され(ステップ(1))、図5のテーブルの加盟店売上(A)で示されるように、売上高はカード発行会社ごとに分類される(ステップ(2))。ここで、クレジットカード会社の発行するカードは一般に種々のものがあり、例えば他の企業と提携したカードなどが発行されている。このようなカードで取引が行われると、カード所有者からの支払金の回収は、元々契約した企業が行うものの、加盟店への支払いは特定のクレジットカード会社が行う場合がある。本実施形態のシステムは、このようなクレジットカード会社を想定しており、図5に示すテーブルの(A)項目の自社とはそのようなクレジットカード会社のことを意味している。したがって、a〜c社は、他のクレジットカード会社に加盟店への支払いを依頼する企業あるいはクレジットカード会社であり、加盟店に支払う分の売上は加盟店ではなく代行する(主管の)クレジットカード会社または企業に支払うこととなる。
【0034】
一般に、このような売上のうち他社売上分は個人から直接ではなく、他社である企業を介して売上金を回収するから、個人から回収する直接回収よりもはるかに回収リスクは低い。本願発明はこの点に着目したものであり、未払い売上金額を債権に見立てて、それに応じて貸出金利を変化させるものである。具体的は、他社売上分が多ければそれだけ、回収リスクが減少するから他社売上分が貸出のリスクに寄与する分と、自社売上分が貸出リスクに寄与する分とを割り出すことにより、より的確な貸出金利の算出を可能とする。すなわち、自社売上分にそれ用の回収リスク率を乗算し、他社売上分に別の回収リスク率を乗算して、加算しその結果を全体の売上額で除算する(ステップ(3))。本実施形態では、図5の(B)項目を参照すれば理解できるように、他社売上用の回収リスク率は、0に設定してある。これは、上述したように他社売上分のほうが自社売上分と比較して、個人ではなく企業から入金することができるから、はるかに回収リスクが低いためであり、貸出金利の算出も容易になるというメリットもある。
【0035】
その後ローン貸出を申込んだ加盟店の債権保全率を算出し(ステップ(4))、加盟店ごとの適用金利を算出する(ステップ(5))。より具体的には、図6を参照すると理解することができるが、一例としては貸出金利は、上述のように算出した回収リスク率に加え、通常の経費回収分の事務コスト率、貸出すクレジットカード会社の利益分の寄与を示す利潤率および短期プライムレートなどの調達金利を加算して導出することができるが、これに限られずさらに本技術分野で知られた様々な係数を加えることができ、逆により単純なものとすることができる。
【0036】
このように貸出金利を算出した後、本実施形態では次から適用になる貸出金利を加盟店に通知するが、その他種々のサービスを提供することもできる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態で加盟店の売上を自社売上分と他社売上分とに分けて集計し、これに基づいて回収リスク率を算出することによって、より的確な貸出金利を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる一実施形態のシステム全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態のクレジット決済処理サーバのモジュール構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の全体のクレジット決済処理を説明するための処理フロー図である。
【図4】本実施形態のクレジット売上情報を用いた貸出金利判定処理を説明するための処理フロー図である。
【図5】本実施形態のクレジット売上情報を用いた貸出の回収リスク算出処理を説明するための図である。
【図6】本実施形態のクレジット売上情報を用いた貸出の回収リスク算出処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
110 クレジット決済処理システム
120 ネットワーク
130 加盟店システム
140 金融機関システム
150 顧客
201 売上登録部
202 売上集計部
203 貸出金利算出部
204 振込処理部
205 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに前記記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して該直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに該仲介企業について合計し前記仲介企業から回収する指示を送信するクレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定システムであって、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して該加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計手段と、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、前記仲介企業全体について集計して該加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計手段と、
前記加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、前記算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出手段と
を備えたことを特徴とする貸付金利算定システム。
【請求項2】
前記貸出金利算出手段は、前記加盟店について算出した自社売上債権額および他社売上債権額に、それぞれ自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率を乗算して加算した額を、該自社売上債権額および該他社売上債権額の加算した額で除算することにより回収リスク率を算出することを特徴とする請求項1に記載の貸付金利算定システム。
【請求項3】
前記他社回収リスク率は0であることを特徴とする請求項1または2に記載の貸付金利算定システム。
【請求項4】
前記貸出金利算出手段は、前記算出した回収リスク率、事務コスト率、利潤率および調達金利を合計して貸出金利を定めることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の貸付金利算定システム。
【請求項5】
前記自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率は、前記加盟店ごとに定められることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の貸付金利算定システム。
【請求項6】
加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに前記記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して該直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに該仲介企業について合計し前記仲介企業から回収する指示を送信するクレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定方法であって、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して該加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計ステップと、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、前記仲介企業全体について集計して該加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計ステップと、
前記加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、前記算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出ステップと
を備えたことを特徴とする貸付金利算定方法。
【請求項7】
前記貸出金利算出ステップは、前記加盟店について算出した自社売上債権額および他社売上債権額に、それぞれ自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率を乗算して加算した額を、該自社売上債権額および該他社売上債権額の合計で除算することにより回収リスク率を算出することを特徴とする請求項6に記載の貸付金利算定方法。
【請求項8】
前記他社回収リスク率は0であることを特徴とする請求項6または7に記載の貸付金利算定方法。
【請求項9】
前記貸出金利算出ステップは、前記算出した回収リスク率、事務コスト率、利潤率および調達金利を合計して貸出金利を定めることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の貸付金利算定方法。
【請求項10】
前記自社売上回収リスク率および他社売上回収リスク率は、前記加盟店ごとに定められることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の貸付金利算定方法。
【請求項11】
加盟店からのクレジットカード決済取引による売上情報を受信すると、記憶手段に記憶し、所定の期間ごとに前記記憶手段に記憶された売上情報から直接売上金の回収を行う直接顧客ごとの売上金額を集計して該直接顧客から回収する指示を送信し、仲介企業を介して間接的に回収を行う間接顧客ごとの売上金額を集計しさらに該仲介企業について合計し前記仲介企業から回収する指示を送信する貸付金利算定サーバに、クレジット会社の加盟店に対する貸付金利算定方法を実行させるプログラムであって、該貸付金利算定方法は、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記直接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、集計して該加盟店についての自社売上債権額を算出する自社売上集計ステップと、
前記記憶手段から、前記加盟店についての前記間接顧客の未回収分の売上金額を読み出し、前記仲介企業全体について集計して該加盟店についての他社売上債権額を算出する他社売上集計ステップと、
前記加盟店への貸出金利を決定するための回収リスク率を、前記算出した自社売上債権額および他社売上債権額に基づいて算出して貸出金利を定める貸出金利算出ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−244935(P2009−244935A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87415(P2008−87415)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(594103301)三井住友カード株式会社 (39)