説明

貼付剤および貼付製剤

【課題】十分な凝集力を有し、剥離時に糊残りを生じることなく、かつ皮膚への接着性が良好で、皮膚に対する刺激が少なく、ソフトな貼付感を有するとともに、薬物等を含有させた場合に、その変性等を抑制することができる貼付剤および貼付製剤を提供する。
【解決手段】貼付剤等の粘着剤層を形成する組成物として、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有し、かつカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含む組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の保護、薬物の経皮投与等のために用いる貼付剤および貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の保護、薬物の経皮投与等の目的で皮膚に貼付して用いる貼付剤および貼付製剤には、皮膚に貼付する際には充分な粘着性を示し、使用後には皮膚表面を汚染する(例えば、糊残りやベタツキなどを生じる)ことなく剥離除去できることが求められる。また、貼付剤および貼付製剤は、皮膚に対し低刺激性であることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたは該エステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとの混合物と、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含有する単量体との共重合体の架橋体を粘着剤層に含む貼付剤が開示されている。しかし、上記貼付剤における粘着剤層は、カルボキシル基を有する共重合体を含有することから、薬物のような有効成分と、カルボキシル基との反応性を考慮する必要がある。
【0004】
また、特許文献2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能であり、かつカルボキシル基およびスルホ基のいずれも含有しない単量体とを重合して得られるアクリル系粘着剤を用いた貼付剤が開示されている。さらに、同文献の貼付剤は、その粘着剤層が有機液状成分を含み、また架橋され得るものである。上記貼付剤は、剥離時に糊残りを生じないような十分な凝集力を有しつつも、皮膚への刺激が少なく、ソフト感を有すると述べられている。しかし、特許文献2に開示された、カルボキシル基およびスルホ基を有しない粘着剤は、長時間皮膚面に貼付したり、動きの大きい皮膚面に貼付した場合には、皮膚から剥離することがあり、さらなる接着特性の改良が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−150865号公報
【特許文献2】特開2003−313122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑み、本発明は、次の特性を有する貼付剤または貼付製剤を提供することを課題とする。
(A)粘着剤層に薬物などを含有させた場合にも、そのような成分との反応による変性等を抑制することが可能である。
(B)十分な凝集力を有し、剥離時に糊残りを生じない。
(C)皮膚への接着性がよいが、皮膚に対する刺激か少なく、ソフトな貼付感を有する。
(D)皮膚の保護、薬物の経皮投与等の目的に特に適するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明者らは、貼付剤等の粘着剤層を形成する組成物として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有し、かつカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含む粘着剤を用いることにより、上記(A)〜(D)の特性をすべて満足する貼付剤等が得られることを見いだした。
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を備える貼付剤であって、該粘着剤層が、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含み、該単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量が50重量%〜90重量%であり、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が1重量%〜20重量%であり、かつ、該単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない。
好ましい実施形態においては、上記アクリル系共重合体が、(c)ビニル系単量体をさらに含有する単量体成分を共重合してなる。
好ましい実施形態においては、上記(c)ビニル系単量体の含有量が、単量体成分の全量に対し、1重量%〜40重量%である。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層が、架橋されている。
本発明の別の局面によれば貼付製剤が提供される。この貼付製剤は、上記貼付剤において、経皮的に投与可能な薬物を粘着剤層に含有してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貼付剤および貼付製剤においては、その粘着剤層に薬物などの有効成分を含有させた場合、上記有効成分と粘着剤層中の官能基とが反応して生じる上記有効成分の変性、粘着剤層における移動阻害等を抑制することができる。また、本発明の貼付剤および貼付製剤は、十分な凝集力を有し、剥離時に糊残りを生じないとともに、皮膚への接着力が良好であるが、皮膚に対する刺激が少なく、ソフトな貼付感を有する。従って、皮膚の保護等に用いる貼付剤、または薬物の経皮投与に用いる貼付製剤として、特に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例3および比較例4の貼付製剤について、プラミペキソールの皮膚透過性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の貼付剤は、支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を有し、上記粘着剤層は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含有する粘着剤を含む。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(単量体(a))は、代表的には下記式(I)で示される。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、炭素数が4〜18のアルキル基が好ましい。貼付剤等として用いるべく良好な接着性(タック)を得るには、ガラス転移温度の低い粘着剤を得る必要があるが、アルキル基の炭素数が4〜18である場合、充分に低いガラス転移温度を有する粘着剤を得ることが容易となる。
【0015】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル等の直鎖アルキル基、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソオクエチル、2−エチルヘキシル等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の環状アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記エステルのうちでも、常温で粘着性を与えるためにガラス転移温度を低下させる単量体成分の使用が好適であり、式(I)中、Rで示されるアルキル基の炭素数が4〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。具体的には、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロへキシルなどが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルが最も好ましい。重合させた場合に充分に低いガラス転移温度(−70℃)を有する重合体が得られ、しかも入手が容易だからである。
【0017】
本発明で使用する上記単量体(a)は、それにより形成されるホモ重合体のガラス転移温度が好ましくは−80℃〜−40℃、特に好ましくは−70℃〜−50℃となるように選択することが好ましい。
【0018】
上記単量体(a)の含有量は、単量体成分の全量に対して、50重量%以上である。単量体(a)の含有量が50重量%以上であると、粘着剤として用いる際の接着性(タック)が良好である。また、より良好なタックを得るためには、単量体(a)の含有量は60重量%以上であることが好ましい。一方、上記単量体成分における単量体(a)の含有量が多過ぎると、得られる共重合体の物性が上記単量体(a)のホモ重合体の物性に近くなり、粘着剤として適切な物性が得られにくくなる傾向がある。従って、単量体(a)の含有量は、単量体成分の全量に対し、90重量%以下であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。
【0019】
上記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(単量体(b))は、代表的には下記式(II)で表される。
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはヒドロキシアルキル基を示す。]
【0022】
式(II)において、上記ヒドロキシアルキル基としては、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基が好ましい。上記ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明における好ましい単量体(b)としては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが挙げられる。特に好ましい単量体(b)としては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。親水性と疎水性とのバランスがよく、粘着性のバランスに優れた粘着剤層を形成し得るからである。例えば、単量体(b)の好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは実質的にすべてがHEAAである。
【0023】
上記単量体(b)は、その分子間の相互作用によって、粘着剤の凝集性向上に寄与し得る。本発明においては、単量体(b)の含有量は、単量体成分の全重量に対し、1重量%〜20重量%である。単量体(b)の含有量が1重量%以上である場合、凝集力の十分な粘着剤が得られ、皮膚の動きによって貼付剤端面より外側に糊のはみ出しが発生して、衣服等の汚染を生じたり、剥離時に皮膚への糊残りを生じたりするおそれがない。一方、単量体(b)の含有量が20重量%を超えると、タックが低下し、皮膚のように表面が粗く伸縮性のある被着体では、貼付剤の浮きや端部の剥離などを引き起こす場合がある。
【0024】
本発明の好ましい一態様においては、単量体(b)の含有量は、単量体成分の全量に対し、2重量%〜20重量%であり、より好ましくは3重量%〜15重量%であり、特に好ましくは3重量%〜12重量%である。このような割合で単量体(b)を含む単量体成分より得られるアクリル系共重合体を含む粘着剤を用いることにより、例えば、共重合に供する単量体成分が、単量体(b)以外には、酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)を有する単量体を実質的に含有しない場合においても、皮膚面に接着した際に、より良好な凝集力および接着力を示す貼付剤が得られる。本明細書において、「ヘテロ原子を有する単量体を実質的に含有しない」とは、ヘテロ原子を有する単量体を全く含有しない場合のみならず、あるいはその含有量が単量体成分の全量に対して0.1重量%以下である場合を包含する。
【0025】
アクリル系共重合体を調製する際の単量体(a)と単量体(b)との重量比((a):(b))は、例えば、99.9:0.1〜71:29であり、好ましくは99:1〜75:25であり、より好ましくは98:2〜80:20であり、さらに好ましくは97:3〜85:15である。重量比((a):(b))がこのような範囲であれば、例えば、共重合に供する単量体成分が、単量体(b)以外には、酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)を有する単量体を実質的に含有しない(例えば、共重合に供する単量体成分が実質的に単量体(a)および単量体(b)のみからなる)場合においても、皮膚面に接着した際に、より良好な凝集力および接着力を有する貼付剤が得られる。
【0026】
上記単量体(a)と単量体(b)との合計の含有量は、単量体成分の全重量に対し、好ましくは約60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%である。本発明の好ましい一態様において、貼付剤の粘着剤層を形成する粘着剤は、実質的に単量体(a)および単量体(b)のみを共重合させてなるアクリル系共重合体(すなわち、単量体(a)と単量体(b)との合計の含有量が、全単量体成分に対し実質的に100重量%である)を含む。かかる粘着剤によれば、単純な組成でありながら、皮膚面に接着した際の凝集力および接着力が良好な貼付剤を得ることができる。
【0027】
本発明においては、上記共重合に供する単量体成分は、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しないことを特徴とする。ここで「カルボキシル基を有する単量体」としては、代表的には、一分子内に少なくとも一つのカルボキシル基(無水物を形成した形態であってもよい)を有するエチレン性不飽和単量体(代表的には、ビニル系単量体)が挙げられる。かかるカルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物などが挙げられる。なお、本明細書において「単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない」とは、共重合に供する単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を全く含有しない場合のみならず、その含有量が単量体成分の全量に対し0.1重量%以下である場合を包含する。
【0028】
さらに本発明においては、上記共重合に供する単量体成分は、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しないのみならず、カルボキシル基以外の酸性基(スルホ基、リン酸基等)を有する単量体についても、実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、上記単量体成分は、好ましくは、カルボキシル基を有する単量体とその他の酸性基を有する単量体とを全く含有しないか、単量体成分の全量に対してこれらの単量体を0.1重量%以下で含有する。上記単量体を共重合させてなる共重合体を含む粘着剤を用いて形成された粘着剤層に、薬物などの医療用有効成分を含有させた場合、上記有効成分の上記カルボキシル基等との反応による変性、粘着剤層における移動阻害等を未然に防ぐことができる。
【0029】
本発明においては、アクリル系共重合体を形成するための上記単量体成分には、上記の単量体(a)および単量体(b)に加えて、これらの単量体と共重合可能な(c)ビニル系単量体を含有させることができる。単量体(c)を加えることにより、貼付剤および貼付製剤の粘着力および凝集力を調整し、また薬物の溶解性および放出性を調整することができる。
【0030】
本発明において、共重合に供する単量体成分に単量体(c)を含有させる場合、その含有量は単量体成分の全量に対して、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは1重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは1重量%〜35重量%であり、特に好ましくは5重量%〜30重量%である。単量体(c)の含有量が1重量%以上であると、単量体(c)を含有させることによる効果が十分に発揮される。また、単量体(c)の含有量が40重量%を超えると、得られる添付剤および貼付製剤のタックや粘着力が低下する場合がある。
【0031】
(c)のビニル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニルカプロラクタム、2−ビニル−2−ピペリドン、1−ビニルイミダゾール等の窒素原子を含む複素環を有するビニル系単量体を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記ビニル系単量体の中では、窒素原子を含む複素環を有するビニル系単量体を用いることが好ましい。
【0032】
本発明において、上記組成の単量体成分よりアクリル系共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、任意の適切な重合方法を適宜採用し得る。例えば、熱重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等の熱重合法);光や放射線等の活性エネルギー線(高エネルギー線ともいう)を照射して行う重合方法などを採用することができる。
【0033】
上記の重合方法のうち、溶液重合法を好ましく採用することができる。作業性や品質安定性等に優れるからである。該溶液重合の態様は特に限定されず、任意の適切な態様が採用され得る。具体的には、任意の適切な単量体供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を採用することができる。上記単量体供給方法としては、単量体成分の全量を一度に反応容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれをも採用することができる。好ましい一態様として、単量体成分の全量および開始剤を溶媒に溶かした溶液を反応容器内に供給し、該単量体成分を一括して重合させる態様(一括重合)が例示される。このような一括重合は、重合操作および工程管理が容易であるので好ましい。他の好ましい一態様としては、反応容器内に開始剤(典型的には開始剤を溶媒に溶かした溶液)を用意し、単量体成分を溶媒に溶かした溶液を該反応容器に滴下しながら重合させる態様(滴下重合または連続重合)が例示される。単量体成分の一部(一部の成分および/または一部の分量)を、典型的には溶媒とともに反応容器内に入れ、その反応容器に残りの単量体成分を滴下してもよい。単量体(b)を15質量%以上含む単量体成分を重合させる場合には、重合反応を均一に進行させやすいという観点から、滴下重合を用いることがより好ましい。
【0034】
熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合剤等のレドックス系開始剤などが挙げられる。単量体成分を熱重合法により重合させる場合は、重合温度は、好ましくは約20℃〜約100℃であり、さらに好ましくは約40℃〜約80℃である。
【0035】
光(典型的には紫外線)を照射して行う重合方法は、典型的には光重合開始剤を使用して行われる。該光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。このような光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
ケタール系光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)]等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)等を使用することができる。α−ケトール系光重合開始剤としては、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としてはベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としてはベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0037】
上記の重合開始剤の使用量は特に限定されない。例えば、重合開始剤の使用量は、単量体成分の全量100重量部に対して、好ましくは約0.01重量部〜約2重量部、より好ましくは約0.01重量部〜約1重量部である。
【0038】
本発明においては、支持体の少なくとも一方の面に、上記アクリル系共重合体を含む組成物(以下、粘着剤層を形成する組成物、または粘着剤ともいう)により、粘着剤層を形成して貼付剤とする。
【0039】
本発明においては、所望により、上記アクリル系共重合体を含む粘着剤層を形成する組成物に、紫外線照射、電子線照射等の放射線照射などによる物理的架橋処理、または各種架橋剤を用いた化学的架橋処理を施してもよい。上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を適宜選択し得る。例えば、イソシアネート系化合物(イソシアネート系架橋剤)、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、尿素系架橋剤、アミノ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(例えばシランカップリング剤)等を用いることができる。これらのうち1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。かかる架橋剤を用いて粘着剤層を架橋(硬化)させることにより、粘着剤層に適度な凝集力および粘着力を付与するとともに、該粘着剤層の皮膚剥離時の糊残りを低減することができる。本発明において、粘着剤層の架橋に用いる架橋剤の添加量は、100重量部のアクリル系共重合体に対し、好ましくは約0.01重量部〜約5重量部であり、さらに好ましくは約0.01重量部〜約2重量部である。
【0040】
上記架橋剤によって架橋された粘着剤層のゲル分率は、50重量%〜95重量%であることが好ましく、60重量%〜92重量%であることがより好ましい。粘着剤層のゲル分率が50重量%〜95重量%である場合、粘着剤層に充分な凝集力が付与され、貼付剤の剥離時に、凝集破壊に起因する糊残りや強い皮膚刺激が発現するおそれがない。ただし、粘着剤層のゲル分率が95重量%を超えると、粘着剤層の凝集力は大きくなるが、充分な皮膚粘着力が得られなくなることがある。
【0041】
なお、上記の「ゲル分率」とは、粘着剤層を酢酸エチル等の有機溶媒に浸漬したときに得られる不溶分の重量の、粘着剤層の架橋に関与する成分の総重量に対する比率を意味する。ゲル分率は、粘着剤層を、酢酸エチル等の有機溶媒に常温(23℃)にて所定期間浸漬して得られる不溶分の重量により、次式を用いて求めることができる。
ゲル分率(重量%)=(W×100)/(W×A/B)
A:重合体及び架橋剤の重量
B:粘着剤層構成成分の総重量
:試料とした粘着剤層の重量
:試料とした粘着剤層を有機溶媒に浸漬して得られる不溶分の重量
【0042】
本発明の貼付剤においては、粘着剤層を形成する組成物には、上記アクリル系共重合体に対し相溶性を有する有機液状成分をさらに含有し得る。有機液状成分は、粘着剤層を可塑化させてソフト感を付与することができる。その結果、上記アクリル系共重合体を含む粘着剤を粘着剤層として用いた場合、粘着テープ、経皮吸収型製剤などの貼付剤または貼付製剤を皮膚から剥離する際に、皮膚接着力に起因して生じる痛みや皮膚刺激性を低減させ得る。従って有機液状成分としては、可塑化作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。なお、粘着剤層に薬物を含有させる場合には、経皮吸収性を向上させるため、吸収促進作用を有するものを用いることが好ましい。
【0043】
上記有機液状成分としては、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油等の植物性油脂;ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の液状の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸アルキルエステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;エトキシ化ステアリルアルコール;ピロリドンカルボン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明において、上記有機液状成分は、アクリル系共重合体に対し、好ましくは1:0.1〜2、皮膚刺激性の観点から、より好ましくは1:0.4〜2の重量比で含有させ得る。なお、粘着物性を損なわない範囲で、有機液状成分をなるべく多く含有させることが好ましい。
【0045】
また、本発明において、粘着剤層の形成に用いる組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、任意の他の成分をさらに含有し得る。このような任意成分としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアミン−ケトン系老化防止剤、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のモノフェノール系老化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系老化防止剤、2,5−tert−ブチルヒドロキノン等のポリフェノール系老化防止剤、カオリン、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン1000などの充填剤、プロピレングリコール、ポリブテン、マクロゴール1500等の軟化剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、カルミン、β−カロテン、銅クロロフィル、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、カンゾウエキス等の着色剤、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、ハッカ油、d−ボルネオール、l−メントール等の清涼化剤、スペアミント油、チョウジ油、バニリン、ベルガモット油、ラベンダー油等の香料などが挙げられる。
【0046】
本発明においては、支持体の少なくとも一方の面に、アクリル系共重合体を含む粘着剤により、粘着剤層を形成して貼付剤とする。本発明の貼付剤は、シート状、フィルム状、パッド状等の医療用又は衛生用貼付剤として提供することができ、絆創膏におけるガーゼの代替品や創傷被覆ドレッシングにおける不織布代替品など、皮膚の病変部位や創傷部位の保護といった用途に用いることができる。また、本発明の貼付剤において、粘着剤層に薬物を含有させて貼付製剤とすることができる。本発明の貼付製剤は、経皮吸収型製剤として提供されるものであり、マトリクス型貼付製剤、リザーバー型貼付製剤、パッチ型貼付製剤等として提供され、特に、経皮吸収用テープ剤として提供される。なお、上記粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0047】
本発明の貼付剤および貼付製剤において用いる支持体としては、特に限定されない。支持体としては、粘着剤層に含有される成分(例えば、薬物等の有効成分、添加剤)が支持体を透過して背面から失われ、含有量の低下を起こすことのないもの、すなわち粘着剤層含有成分を透過しない材質で構成されるものが好ましい。
【0048】
本発明の貼付剤および貼付製剤において用い得る支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、サーリン(登録商標)等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂;金属箔などの単独フィルム、およびこれらのラミネートフィルムなどが挙げられる。なお、支持体の厚さは、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは10μm〜200μmである。
【0049】
上記支持体は、好ましくは、上記材質からなる無孔シートと、多孔シートとのラミネートシートである。このような構成であれば、支持体と粘着剤層との間の接着性(投錨性)を向上させることができる。この場合、多孔シート側に粘着剤層を形成することが好ましい。上記多孔シートとしては、支持体と粘着剤層との間の投錨性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したシートなどが挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔シートの厚さは、好ましくは10μm〜500μmである。このような厚みであれば、投錨性が向上し、粘着剤層の柔軟性に優れる。また、多孔シートとして織布や不織布を用いる場合、当該多孔シートの目付量は、好ましく5g/m〜30g/m、さらに好ましくは8g/m〜20g/mである。投錨性が向上するからである。なお、支持体が上記ラミネートシートである場合には、無孔シートの厚さは、好ましくは1μm〜25μmである。
【0050】
上記支持体のうち、特に好適な支持体としては、1.5μm〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量8g/m〜20g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0051】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層に含有させる経皮的に投与可能な薬物は、所望の目的によって適宜選択される。含有させ得る薬物の例としては、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤、女性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤などの種類の薬物であって、経皮投与可能な薬物が挙げられる。なかでも、本発明の貼付製剤においては、その粘着剤層を形成する粘着剤の特徴から、カルボキシル基を含有する粘着剤層中で安定性が極端に低下してしまうような薬物を好適に含有させることができる。
【0052】
皮膚透過性の高い貼付製剤を得る観点から、本発明では、薬物として塩基性薬物を用いることが有利である。塩基性薬物とは、その分子中に塩基性基を有する薬物を意味する。粘着剤層に、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系共重合体を含む本発明の貼付製剤では、塩基性薬物の塩基性基とカルボキシル基の反応により生じる、粘着剤層における塩基性薬物の移動阻害等を抑制することが可能となる。かかる観点から、塩基性薬物としては、塩基性窒素原子を有する塩基性薬物が好ましく、第1級〜第3級アミノ基を有する薬物がより好ましい。
【0053】
本発明の貼付製剤における上記薬物の含有量は、薬物の種類や投与目的、患者の年齢、性別、症状等に応じて適宜設定することができるが、通常粘着剤層に0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%程度含有させる。選択した薬剤によっても異なるため一義的には言えないが、一般的に含有量が0.1重量%未満である場合には、治療に有効な量の薬物の放出が期待できず、また、40重量%を超えると治療効果に限界が生じるとともに、経済的に不利である。
【0054】
本発明の貼付剤および貼付製剤の製造方法は特に限定されず、当分野で慣用されている手法を用いることができる。次に、本発明の貼付製剤の一実施態様である経皮吸収テープ製剤を例に具体的に説明する。まず、上記のアクリル系共重合体、有機液状成分等、薬物の順で溶媒に溶解または分散させる。次いで、必要な場合には、上記溶液または分散液に架橋剤を添加して、粘着剤層を形成する組成物を得る。これを、支持体の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。さらに、以下に述べる剥離ライナーを圧着し、積層することもできる。また、架橋剤を添加した上記の溶液または分散液を剥離ライナー上に塗布し、乾燥して剥離ライナーの表面に粘着剤層を形成させ、その後支持体を粘着剤層上に圧着して貼り合わせることによっても製造することができる。
【0055】
上記剥離ライナーとしては、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アルミフィルム、発泡ポリエチレンフィルム又は発泡ポリプロピレンフィルム等、もしくはこれらから選ばれたものの積層物、さらにこれらにシリコーン加工したものや、エンボス加工を施したものなどが挙げられる。該剥離ライナーの厚さは、好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは25μm〜100μmである。
【0056】
上記剥離ライナーとしては、バリアー性、価格の点からポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂製剥離ライナーが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、厚みは好ましくは25μm〜100μm程度である。
【0057】
粘着剤層を形成する組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、上記組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。該組成物が塗布される支持体の種類にもよるが、乾燥温度は、例えば、約40℃〜約150℃である。
【0058】
本発明の貼付剤および貼付製剤において、支持体の少なくとも一方の面に形成する粘着剤層の厚さは、好ましくは10μm〜400μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmであり、より好ましくは30μm〜100μmである。
【0059】
また上記したような方法で貼付剤や貼付製剤を製造した後、架橋反応を完了させるため、また粘着剤層と支持体の投錨性を向上させる目的で、室温以上の温度でエージングを行ってもよい。エージング温度は好ましくは25℃〜80℃であり、さらに好ましくは40℃〜70℃である。
【0060】
次に、本発明について実施例により詳細に説明する。ただし、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
[実施例1]貼付剤
(1)冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル(以下「2−EHA」と表すことがある)70重量部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド(以下「HEAA」と表すことがある)10重量部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン(以下「N−VP」と表すことがある)20重量部、および溶媒として酢酸エチル333.3重量部を入れ、室温において窒素ガスバブリング(100mL/分)を行いながら1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物を加熱し、60℃に達した時点で、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を加えた。内容物の温度を60℃に保つよう制御し、窒素ガス流中で6時間重合を行わせ、次いで76℃に15時間保持した。上記方式の溶液重合により、アクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=70/10/20)の溶液を得た。
(2)上記で得られたアクリル系共重合体溶液に、有機液状成分としてミリスチン酸イソプロピル(IPM)を、アクリル系共重合体100重量部(固形分)あたり42.9重量部添加した。さらに、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアナート付加物(コロネートHL)を、アクリル系共重合体100重量部(固形分)あたり、0.5重量部添加した。このようにして粘着剤層を形成する組成物を調製した。
(3)厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離ライナーの剥離面に、上記組成物をアプリケータで塗布し、100℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層に、支持体の不織布面を圧着して貼り合せ、貼付剤を調製した。なお、支持体としては、厚さ2μmのPETフィルムと、目付け量14g/mのPET不織布の積層体を用いた。
【0062】
[実施例2]貼付剤
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル50重量部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド10重量部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン40重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=50/10/40)を得た。該アクリル系共重合体を用いて、実施例1と同様に粘着剤層を形成する組成物、次いで貼付剤を調製した。
【0063】
[比較例1]貼付剤
実施例1において、単量体(b)のN−ヒドロキシエチルアクルアミドの代わりに、アクリル酸ヒドロキシエチルエステル(以下「HEA」と表すことがある)を使用してアクリル系共重合体(2−EHA/HEA/N−VP=70/10/20)を得、該アクリル系共重合体を用いて、実施例1と同様に粘着剤層を形成する組成物、次いで貼付剤を調製した。
【0064】
[比較例2]貼付剤
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル50重量部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド30重量部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン20重量部を用い、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=50/30/20)を得た。該アクリル系共重合体を用いて、架橋剤としてアルミキレート架橋剤(ALCH)0.5重量部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤層を形成する組成物、次いで貼付剤を調製した。
【0065】
[比較例3]貼付剤
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル72重量部、単量体(b)に代えてアクリル酸(以下「AA」と表すことがある)3重量部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン25重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体(2−EHA/AA/N−VP=72/3/25)を得た。該アクリル系共重合体を用いて、実施例1と同様に粘着剤層を形成する組成物、次いで貼付剤を調製した。
【0066】
上記実施例1、2、および比較例1〜3の貼付剤について、それぞれの粘着剤層のゲル分率を求めた。また、各貼付剤について、粘着力、保持力、ボールタック値および定荷重剥離力の測定、ならびにチューブ固定性試験を行った。なお、「保持力」は粘着剤の凝集力の指標として測定し、「ボールタック値」は、貼付剤を皮膚へ貼付した当初に、支持体の露出面に外部から荷重がかかった場合において、貼付剤が皮膚から脱落しにくいかどうかの指標とした。また、「定荷重剥離力」は、貼付性の指標として測定した。上記評価は、医療用チューブなどを固定する場合の固定力や、皮膚に貼付した場合の固定性などの代替評価とされており、この評価結果が良好であるほど、医療用テープ等の貼付剤として優れる。上記ゲル分率の測定方法、粘着力等の測定および評価方法、チューブ固定性試験の方法について、次に示した。
【0067】
<ゲル分率>
(1)実施例および比較例の各貼付剤を9cmに裁断して試料とし、粘着剤層の重量(W)を測定した。次いで上記試料をテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)多孔質膜(日東電工株式会社製、商品名「テミッシュ」)に貼り付け、100mLの酢酸エチルに72時間浸漬した。
(2)試料を酢酸エチルから取り出し、乾燥して粘着剤層の重量(W)を測定し、下記式によってゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(W×100)/(W×A/B)
式中、A=(アクリル系共重合体+架橋剤)の重量、B=(アクリル系共重合体+可塑剤+架橋剤)の重量
【0068】
<粘着力>
(1)実施例および比較例の各貼付剤を幅12mmにカットして、試験片を作製した。被着体としては、アセトンを染み込ませたクリーンウェスで洗浄した清浄なベークライト板を使用した。
(2)上記の各試験片を、上記被着体に軽く貼り付け、試験片の上から2kgのローラを2度転がして、上記被着体に圧着した。これを23℃で30分保存した。
(3)23℃、相対湿度65%の測定環境下、引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離強度[N/12mm]を測定した。
(4)各試験片の粘着剤が充分な凝集力を有することを確認するため、剥離強度を測定した後、被着体における糊残りの有無を観察した。
【0069】
<保持力>
(1)実施例および比較例の各貼付剤を幅10mm、長さ50mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としては、アセトンを染み込ませたクリーンウェスで洗浄した清浄なベークライト板を使用した。
(2)上記各試験片から剥離ライナーをはがし、2kgのローラを一往復転がして、幅10mm、長さ20mmの接着面積で、上記被着体に圧着した。これを40℃で20分保存した。
(3)上記被着体を40℃の環境下に垂下し、上記試験片の自由端に300gの荷重を付与して静置した。上記荷重を付与してから、試験片が被着体から落下するまでの時間を計測した。
【0070】
<ボールタック値>
(1)ボールタック値は、日本工業規格(JIS)Z0237に従って測定した。ただし、本試験においては、試料の都合上、実施例及び比較例の各貼付剤を幅50mm×長さ50mmに打ち抜いたものを試験片とした。
(2)23℃、相対湿度65%の条件下に、試験片をその粘着面が露出されるように傾斜角30°の球転装置上に設置し、試験片と助走部との間に段差が生じないように固定した。次いで、試験片上を異なる球径のボールを転がし、5秒以上静止した際の最大球径(ボールNo.)を当該試験片のボールタック値とした。
【0071】
<定荷重剥離力>
(1)実施例および比較例の各貼付剤を幅12mm、長さ70mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としては、アセトンを染み込ませたクリーンウェスで洗浄した清浄なベークライト板に、脱脂して平坦にしたコラーゲン膜を両面テープで貼付した板を使用した。
(2)上記試験片から剥離ライナーをはがし、2kgのローラを一往復転がして、上記被着体に圧着した。貼付した試験片の片側末端を20mmの長さで剥離し、剥離した試験片の中心(末端から10mmの位置)に荷重吊り下げ用冶具を貼付した。該治具を折り線として剥離した試験片を折り曲げ、粘着層同士を貼り合せた。これを23℃で30分保存した後、被着体を地面と水平に、かつ、試験片が下側となるように測定装置にセットした。上記試験片の荷重吊り下げ用治具に15gの荷重を付与して、1時間後の移動距離を測定し、移動速度[mm/分]を算出した。
【0072】
<チューブ固定性試験>
(1)実施例および比較例の各貼付剤を、幅12mm×長さ55mmに打ち抜いて、試料とした。直径5mm、肉厚1mm、長さ70mmのゴム製チューブをU字型に曲げ、その2箇所を一枚の上記試料が横断するように覆いつつ、ボランティアパネラーの上腕部に固定した。固定後、ゴム製チューブが皮膚から脱落するまでの時間を測定した。
(2)ゴム製チューブが皮膚から脱落するまでの時間が8時間以上である場合は○、1時間以上8時間未満である場合は△、1時間未満である場合は×として評価した。
【0073】
上記の測定および評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示されるように、特定量の2−EHAおよびHEAAを含有する単量体成分から得られたアクリル系共重合体を粘着剤層に含む実施例1および実施例2の貼付剤は、HEAAに代えてHEAを含有する単量体成分から得られたアクリル系共重合体を粘着剤層に含む比較例1の貼付剤、またはHEAAの含有量が多い単量体成分から得られたアクリル系共重合体を粘着剤層に含む比較例2の貼付剤に比べて、粘着力、保持力、ボールタック値が高く、定荷重剥離力、チューブ固定性も優れていた。これらの特性は、AAを3重量部含有する単量体成分から得られたアクリル系共重合体を粘着剤層に含む比較例3の貼付剤に近いものであった。
【0076】
[実施例3]貼付製剤
(1)実施例1の貼付剤の調製に用いたアクリル系共重合体溶液に、薬物としてプラミペキソールを、アクリル系共重合体100重量部(固形分)あたり5.3重量部添加した。さらに、有機液状成分としてパルミチン酸イソプロピル(IPP)を、アクリル系共重合体100重量部(固形分)あたり72.7重量部添加し、粘着剤層を形成する組成物を調製した。なお、プラミペキソールは、下記式(III)の通り、その分子中に第1級アミノ基と第2級アミノ基を一つずつ有する。
【0077】
【化3】

【0078】
(2)厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離ライナーの剥離面に、上記粘着剤層を形成する組成物をアプリケータで塗布し、80℃で5分間乾燥した後、支持体として、厚さ25μmのPETフィルムを圧着し、貼り合せた。このようにして、貼付製剤を調製した(非架橋)。
【0079】
[比較例4]貼付製剤
(1)不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルへキシル72重量部、N−ビニル−2−ピロリドン25重量部、アクリル酸3重量部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチルに添加、混合し、60℃にて溶液重合させて、アクリル系共重合体(2−EHA/AA/N−VP=72/3/25)溶液(固形分:28重量%)を得た。
(2)上記アクリル系共重合体溶液を用いて、実施例3と同様に、薬物としてプラミペキソールを含有する貼付製剤を調製した(非架橋)。
【0080】
<薬物透過性評価>
実施例3および比較例4の貼付製剤について、薬物透過性の評価を行った。すなわち、ヘアレスマウス摘出皮膚を縦型拡散セルに装着し、ドナーセルには上記の各貼付製剤を、レシーバーセルには生理食塩液を適用し、所定時間毎にレシーバー液の一部を採取して、透過したプラミペキソール量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。HPLCは、次の条件で行った。
(HPLC測定条件)
カラム:TSK−gel ODS−80Ts QA(5μm、150×4.6mmI.D.;TOSOH)
移動相:1%トリエチルアミン水溶液(pH7.0)/メタノール(80:20)
カラム温度:40℃
流速:0.7mL/分
検出器:紫外吸光光度計(測定波長262nm)
【0081】
薬物透過性の評価結果を図1に示す。図1より明らかなように、実施例3の貼付製剤においては、プラミペキソールが十分に皮膚を透過することが認められた。これに対して、AAを3重量部含有する単量体成分から得られたアクリル系共重合体を粘着剤層に含む比較例4の貼付製剤においては、プラミペキソールの皮膚透過性は悪く、48時間後の累積透過量は、実施例3の貼付製剤の場合の約1/2であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上述したように、本発明は、十分な凝集力を有し、剥離時に糊残りを生じることなく、かつ皮膚への接着性が良好で、皮膚に対する刺激が少なく、ソフトな貼付感を有するとともに、薬物等を含有させた場合に、その変性等を抑制することができる貼付剤および貼付製剤を提供するものである。従って、本発明の貼付剤および貼付製剤は、皮膚の保護、薬物の経皮投与等の目的に特に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を備える貼付剤であって、
該粘着剤層が、
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含み、
該単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量が50重量%〜90重量%であり、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が1重量%〜20重量%であり、かつ、
該単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない、
貼付剤。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体が、(c)ビニル系単量体をさらに含有する単量体成分を共重合してなる、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記(c)ビニル系単量体の含有量が、単量体成分の全量に対し、1重量%〜40重量%である、請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層が、有機液状成分をさらに含む、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層が、架橋されている、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼付剤において、経皮的に投与可能な薬物を粘着剤層に含有してなる、貼付製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−126865(P2011−126865A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249330(P2010−249330)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】