貼付材
【課題】末梢動脈閉塞疾患の治療のために末梢動脈閉塞部位に貼付するためのものであって、上肢および下肢等貼付し、注射位置を明示する貼付材を提供する。
【解決手段】基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、粘着部の表面が剥離材6で覆われている、注射位置のガイド用貼付材1であって、貼付材1が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔2を有する。基材シート、基材シート4の粘着側の粘着部、粘着部を覆う剥離材6から構成され、基材シートの非粘着部側に基材シートの保護、或いは一定の強度を持たせるために支持体を備えることができる
【解決手段】基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、粘着部の表面が剥離材6で覆われている、注射位置のガイド用貼付材1であって、貼付材1が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔2を有する。基材シート、基材シート4の粘着側の粘着部、粘着部を覆う剥離材6から構成され、基材シートの非粘着部側に基材シートの保護、或いは一定の強度を持たせるために支持体を備えることができる
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材に関し、より詳細には、末梢血管疾患を治療するための貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢動脈閉塞疾患に対する治療としては、危険因子の除去、運動療法、抗血小板薬や血管拡張薬などによる薬物療法、さらには経皮血管形成術や外科的バイパス治療が行われている。しかし、血管のびまん性狭窄や膝下動脈以遠の病変を伴う場合は、再狭窄率が高く、血管内治療のみならず、外科治療の適応にもなりにくい。このような既存の治療に抵抗性を示す症例も増加傾向にあり、病変の進行に伴い潰瘍や感染から下肢切断術に至る例が多い。最近、患者本人の骨髄細胞や末梢血細胞を用いて血管新生を促すことにより、下肢の潰瘍消失や疼痛の軽快、消失が得られ、下肢切断を回避して患者の生活の質が大幅に改善することが示されている(非特許文献1〜2)。
【0003】
特許文献1は、ネックリフト手術用のテープテンプレートを開示しているが、末梢動脈閉塞疾患に対する治療では多数の位置に一定間隔で注射をする必要があり、このようなテープテンプレートは多数の注射位置を正確に決定するために使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-502549
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】的場聖明ら、京府医大誌 117(10), 783-792, 2008
【非特許文献2】Satoaki Matoba and Hiroaki Matsubara, Current Pharmaceutical Design, 2009, 15, 2769-2777
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者本人の骨髄細胞や末梢血細胞を下肢などの動脈閉塞部位に注入する場合、一定間隔で注入することが必要であり、その目印を示すことが必要である。
【0007】
従来、動脈閉塞部位にマジックで注入位置を書き込んだり、硬いプラスチックシートを動脈閉塞部位のまわりに巻き付けて、注入位置の目安にしていたが、マジックで記入する場合注入位置を適切に示すことは困難であり、シートを巻き付ける場合にも下肢や上肢などの動脈閉塞部位に適切にシートを巻き付けて固定することは困難であった。
【0008】
本発明は、骨髄細胞や末梢血細胞などの注入位置を容易に認識できる医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の貼付材を提供するものである。
項1. 基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、該粘着部の表面が剥離材で覆われている、注射位置のガイド用貼付材であって、前記貼付材が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔を有することを特徴とする、注射位置のガイド用貼付材。
項2. 隣接する注射用の前記孔の間に、縦方向及び/又は横方向の線を前記基材シートに形成してなる、項1に記載の貼付材。
項3. 前記基材シートが縦方向と横方向の線を格子状または略格子状に有し、注射用の前記孔が格子状の線の交点又は交点付近に位置する、項2に記載の貼付材。
項4. 前記基材シートが柔軟性である、項1〜3のいずれかに記載の貼付材。
項5. 前記基材シートの非粘着側に支持体をさらに有し、前記支持体と前記基材シートが剥離可能に接着されている、項1〜4のいずれかに記載の貼付材。
項6. 前記剥離材が、貼付材の外縁において少なくとも2方向に設けられている、項1〜5のいずれかに記載の貼付材。
項7. 前記剥離材が、貼付材の中心部とその両側に別々に剥離可能に設けられ、粘着部を段階的に露出することができる、項1〜6のいずれかに記載の貼付材。
項8. 基材シートの全面が剥離材で覆われ、かつ、基材シートの端部に非粘着部を縦方向及び/又は横方向に有し、前記非粘着部に対応する剥離材を持ちながら基材シートを貼付することができる、項1〜7のいずれかに記載の貼付材。
項9. 末梢動脈閉塞疾患を治療するための項1〜8のいずれかに記載の貼付材。
項10. 上肢または下肢の一部に巻き付けて使用される、項1〜9のいずれかに記載の貼付材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の貼付材は、注射位置に対応する孔を有するので、注射位置が容易に分かるとともに、注射時に基材シートや粘着剤の一部が体内に入り込むことはない。
【0011】
また、本発明の柔軟性の貼付材は、身体の表面の形状に応じて変形することができるので、容易に動脈閉塞部位に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図1B】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図1C】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図3】粘着剤が格子状に配置されている本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図4】周縁部に2方向に分割して剥離できる剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図5】中心部とその両側に3分割された剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図6】図5の貼付材において、中心部の剥離材をめくったときの状態を示す。
【図7】中心部の剥離材が大きな割合を占める本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図8】貼付材が、基材シート4、粘着部5、剥離材6、支持体7の4層構成である実施形態を示す図である。
【図9】貼付材が、基材シート4、粘着部5、剥離材6の3層構成である実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の貼付材1は、末梢動脈閉塞疾患の治療のために末梢動脈閉塞部位に貼付するためのものである。貼付剤を貼付する場所は、末梢動脈が閉塞した場所であり、上肢(上腕、前腕)、下肢(上腿、下腿)などが挙げられ、特に下腿(ふくらはぎ)の部分に巻き付けられることが多い。
【0014】
貼付材1に設けられた孔2は注射する位置を示し、かつ、孔2を開けることで注射針を刺したときに貼付材1に由来する破片もしくは粘着剤が体内に入らないようにしている(図1〜3)。図1において、(A)は格子状の線の交点に注射用の孔が形成された実施形態を示す。図1(B)は、さらに粘着部を網掛けで示したものであり、図1(C)は格子状の交点以外に注射用の孔をさらに形成した実施形態を示す。
【0015】
注射で注入されるのは、血管を再生可能な細胞であり、例えば患者本人の骨髄細胞、造血細胞、臍帯血細胞、動員された末梢血細胞が挙げられ、骨髄細胞が好ましい。骨髄細胞以外でも、血管の再生に有効な幹細胞、iPS細胞、ES細胞、或いはこれらから分化した細胞など、血管内皮細胞などに分化可能であり、血管の再生を行うことができる細胞であれば、末梢動脈閉塞部位に注入され得る。
【0016】
末梢動脈閉塞疾患の治療のためには、末梢動脈が閉塞したもしくは閉塞しつつある部分に対し広範囲にわたり血管を再生させることが必要である。そのため、注射は横方向及び縦方向に一定の間隔(等間隔又はほぼ等間隔)で行うことが必要である。注射部位が密な(注射の間隔が狭い)部分と疎な(注射の間隔が広い)部分がある場合、注射を狭い間隔で行った部分は血管が密に形成されるが、注射を広い間隔で行った部分は血管の密度が低くなり、その部分で血行障害を起こすことになるからである。このため、本発明の貼付材1では、注射用の孔2を縦方向及び横方向に一定間隔で開けている。
【0017】
注射用の孔2の間には線3を形成することが望ましい。これは、貼付材1を貼付した周辺にも注射を行うため、線3があるとその延長線上で等間隔の注射位置を予測しやすいためである。この線3は、全ての注射用の孔をつなぐ必要はない(図1C)。線は縦方向(例えば下腿の場合膝からくるぶしの方向)にあるのが貼付材の孔の延長線を認識するのに好ましく、横方向(例えば下腿に巻き付ける方向)の線3は孔2の間隔を認識するのに有効である。
【0018】
下腿に巻き付ける場合、くるぶしに近い部分は膝に近い部分に比べて細くなっているので、下腿全体を巻き付けると下側の細い部分は貼付材1が少し余る場合がある。このような場合、貼付材1の端部を適宜切断して使用すればよい。貼付材1を巻き付けるのはくるぶしの上あたりまでが通常であり、その下(くるぶしからかかと或いは足先)、或いはその上(貼付材の上端から膝まで、必要であればさらにその上)は、貼付材に規則的に並べられた注射用の孔2の位置から等間隔の注射位置を予測して骨髄細胞などの血管を形成可能な細胞を注射することができる。
【0019】
本発明の貼付材1は、基材シート4、基材シート4の粘着側の粘着部5、粘着部5を覆う剥離材6から構成され(図9)、基材シート4の非粘着部側に基材シートの保護、或いは一定の強度を持たせるために支持体7を備えることができる(図8)。支持体7は、基材シート4が柔軟性の薄いフィルムの場合、フィルムを補強して貼付を容易にすることができる。
【0020】
本発明の貼付材1の基材シート4は、粘着部5を有する粘着側の面と、非粘着側の面を有する。粘着部5は、粘着側の面の全面に形成されてもよく、基材シート4の周縁部又はその一部(周縁部以外の部分は粘着部がなくてもよく、一定間隔でもしくは周縁部に近い部分に粘着部を有してもよい)に部分的に形成されてもよい。孔2の周辺に粘着部を形成すると孔2の位置が固定されるので好ましい。この実施形態として、例えば図3に示すように、粘着部を格子状に設けることができる。本発明の貼付材1は、前腕、下肢(特に下腿)などに巻き付けて注射の位置を示すことができるように接着され得るので、粘着部を全面に形成すると粘着部同士が接着することがある。粘着部5を基材シート4の全面に形成する場合、粘着部5同士が接着するのを防止するために、剥離材6を分割して剥離できるようにするのが好ましい。あるいは、前腕、下肢などに巻き付ける際に粘着剤同士が接着しても剥離して再度接着できるような粘着剤を用いて粘着部を形成してもよい。
【0021】
図4は、周縁部に2方向に分割して剥離できる剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す。図4において、縦方向と横方向に剥離材6a、6bを設けたのは、貼付(注射)部位が上肢と下肢とで太さが違い、巻き付ける上肢または下肢の太さも個人差が大きいので、サイズに合わせて巻き付けるようにするためである。図4の実施形態では、縦又は横のいずれかの剥離材(6aまたは6b)を先に剥離して貼付材の端部を貼着固定し、その後残りの剥離材を剥離して全体を下肢もしくは上肢などに貼着すればよい。剥離材には把持部6cを形成するのが好ましい。なお、貼付材の貼着は、例えば2名で行うことができ、1名が下肢又は上肢などの貼付部位をもって巻き付けやすい位置に保持し、もう1名が貼付材の貼付(巻き付け)を行う。この場合、図4に示すような周縁部の一部を貼付して残りの部分を巻き付けてもよく、図5〜図7に示すように、貼付材の中央部を先に貼付して残りの部分を後で固定するのが好ましい実施形態の1つである。
【0022】
本発明の貼付材1は注射後に身体から剥離されるので、強力に粘着して剥離が困難な粘着剤よりも養生テープのように一時的に接着して注射の位置を示すことができるが、使用後は容易に剥離でき、皮膚に粘着剤が残らず、剥離するときに皮膚を傷めない粘着剤が好ましい。このような粘着剤を使用すると、貼付部位(下肢、上肢など)に貼付する際に貼付材の粘着部同士が接着した場合にもいったん剥がして、貼付部位に貼り付けることができる。
【0023】
基材シート4を形成する材料は、特に限定されず、従来、この分野で使用されているあらゆる材料を用いることができる。特に、末梢動脈閉塞部位への順応性、追従性の観点から、柔軟性、伸縮性を有する素材が好ましい。基材シート4、支持体7を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系重合体、オレフィン系共重合体等の合成樹脂で形成した合成樹脂フィルムを挙げることができる。
【0024】
基材シート4の厚さは、本発明の目的を損なわなければ特に限定されないが、柔軟性や伸縮性の観点から、1〜1000μm程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜300μm程度、特に5〜150μm程度の範囲が好ましい。
【0025】
粘着部5は、粘着性組成物を用いて形成することができる。例えば、粘着性組成物を、基材シート4の粘着側に塗工して、粘着部5を形成することができる。
【0026】
支持体7は、容易に剥離でき、糊残りしない粘着剤組成物を塗工して基材シートに貼り付けることができる。粘着剤組成物の塗工は、ナイフコーター、グラビアコーター等の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを目的に合わせて適宜、制御することができる。支持体7と基材シート4の粘着は全面に行うことができるが、支持体7は、貼付材1を貼着後に基材シート4から剥離することを考えて、支持体7に把持部7aを形成し、容易に剥離できるようにすることができる。
【0027】
粘着部5に用いることができる粘着性組成物は、この分野で使用されているあらゆる粘着性組成物を自由に選択して用いることが可能である。例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系等の感圧性粘着性基剤と、必要に応じて、油、多価アルコール、親水性高分子化合物、などを含有する粘着性組成物を挙げることができる。粘着部5の粘着剤層としてゲル粘着剤やハイドロコロイド粘着剤を使用することが好ましく、剥離刺激を軽減することができる。ゲル粘着剤としては、水を含むヒドロゲル粘着剤でも、有機溶媒を含むオルガノゲル粘着剤でもよく、シリコーンゲル粘着剤、アクリルゲル粘着剤が好ましい。
【0028】
粘着部5の粘着剤層或いはその表面にスフィンゴ脂質、尿素、グリコール酸、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ムコ多糖及びその誘導体、ビタミンB群、アスコルビン酸、レチノイド、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体、カロチノイド、酵素、補酵素、γ―オリザノール等の添加剤を配合してもよく、抗炎症剤、あるいは血管の再生を促進するサイトカイン(顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、bFGF、EGF、NGF、VEGF、LIF、肝細胞増殖因子およびマクロファージコロニー刺激因子など)を配合してもよい。
【0029】
粘着部5を構成する粘着剤層の厚さは、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、用途に応じて自由に設計することができる。粘着剤の凝集力と製造上の安定性を考慮すると、厚さ0.001〜1.5mmの範囲が好ましく、0.005〜0.5mmがより好ましく、0.01〜0.3mmがさらに好ましい。
【0030】
支持体7は、貼付材1を末梢動脈閉塞部位に貼付する際、前記粘着部5同士の付着や基材シート4の皺の発生等を防止するために、必要に応じて備えられる。本発明の貼付材1は注射位置が孔2によって示されていれば、貼付材1の基材シートが全面で接着される必要は必ずしもなく、基材シート4の柔軟性、追従性はそれほど高いレベルでは要求されていない。基材シート4がシワを防止し、粘着部5同士の付着を抑制するに十分な強度ないし厚みを有する場合には、支持体7は必要とされない。
【0031】
支持体7を形成する材料は、この分野で使用されている材料を適宜選択して用いることができる。例えば、合成樹脂フィルム、発泡シート、不織布、織布、編布、紙等の形態が挙げられる。本発明においては、これらの中でも特に、適度な支持性、透明性を備える合成樹脂フィルムが好ましい。支持体7を構成する合成樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂を挙げることができる。これらは、単一の材料により単一の形態とすることもできるが、2種以上の材料を用いて、複合的な形態に形成することも可能である。
【0032】
支持体7の形態は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、基材シート4と同一のサイズにしてもよく、支持体7を基材シート4より大きく形成し、基材シート4の外縁から基材シート4の外側へ延出させて把持部を形成することも可能である。
【0033】
本発明において、末梢閉塞性動脈疾患としては、例えば、炎症、糖尿病、冠状動脈疾患、心筋梗塞(MI)、心房細動、一過性虚血性発作、脳卒中、肢虚血および腎臓疾患などの結果として、末梢循環(すなわち、心臓および脳の血管の外側での血管)の障害から生じる状態を含む。具体的には、末梢血管疾患は、頸動脈または大腿動脈における閉塞、腸骨動脈における閉塞、あるいは、大腿動脈または頸動脈の遠位側にある動脈(例えば、下肢における脛骨動脈およびその分枝、ならびに、上肢における上腕動脈およびその分枝)における閉塞を伴う血管障害である。より小さい血管(例えば、閉塞部の遠位側にある組織の毛細血管床など)もまた冒される。末梢動脈における閉塞は、痛みおよび制限された動き、罹患組織の活力喪失および無酸素症を引き起こし、また、壊死および二次的感染をもたらす場合がある。閉塞性末梢血管疾患に関連する具体的な障害の1つが、多くの場合には足の切断を生じさせる、糖尿病患者を冒す糖尿病性足である。
【0034】
本発明の貼付材を用いて末梢閉塞性動脈疾患を治療する方法について以下に説明する。
先ず、本発明の貼付材1を前腕、下腿または上腿などの末梢動脈が閉塞した部位に巻き付ける。その場合、剥離材の一部を剥離して端部、中央部分などの一部を末梢動脈閉塞部位に貼付する。その後、剥離材を剥離しながら貼付材を少しずつ巻き付けていく。この巻き付け時に、基材シート4に皺がよらないように注意しながら貼付する。貼付材を少しずつ巻き付けるのは、貼付材1の粘着部5同士が粘着しないようにするためである。このようにして注射用の孔2が等間隔になるように、かつ、孔の間の線が縦方向(関節から先端の方向)及び横方向(巻き付ける方向)になるように、貼付材を末梢閉塞性動脈疾患部位に貼着する。次に、注射用の孔2に対し、患者本人の血管の再生可能な細胞(例えば骨髄細胞)を注入する。その際、骨の部分は血管の再生の必要性が乏しいので、骨に対応する孔には注射をせず、筋肉に対応する注射用の孔2に注射を行う。例えば下腿の場合、膝の下あたりからくるぶしの上あたりまで本発明の貼付材を巻き付け、その下(くるぶしのあたりから脚の先端)については、縦方向(膝からくるぶしの方向)の線の延長線上に、同様な間隔で注射を行う。この際、縦方向と横方向(巻き付ける方向)に線が付してあると、等間隔の注射位置を容易に決定できる。隣接する注射用の孔の間隔は、特に限定されないが、例えば10〜50mm程度、好ましくは12〜40mm程度、より好ましくは15〜35mm程度である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、注射で注入される血管を再生可能な細胞として骨髄細胞を用いる場合には、全身麻酔科で自家骨髄液約600mlを採取し、速やかに骨髄単核球を分離し、約20億個の細胞を虚血肢の筋肉内約120ヵ所に分割注入する。末梢血単核球細胞を用いる場合には、全身麻酔の必要はなく、覚醒下に末梢静脈や中心静脈から約3〜4時間かけて約100億個の単核球を採取し、虚血肢の筋肉内約120ヵ所に分割注入する。に分割注入する。これらの細胞数は単なる一例であり、細胞数やその内訳(血管内皮前駆細胞の指標となるCD34陽性細胞数など)、虚血肢の筋肉部位の大きさ、表面積などには個人差があり、患者の年齢や病態により細胞数、注入箇所の数は変動する。上記は骨髄細胞(骨髄単核球)、末梢血単核球細胞などの場合の例示であるが、これらの記載を参考にして、他の血管を再生可能な細胞(例えば造血細胞、臍帯血細胞、幹細胞、iPS細胞、ES細胞、或いはこれらから分化した細胞など)についても同様に虚血肢などの末梢閉塞性動脈疾患に注入し、血管を再生することができる。
【0036】
注射が終わった後は、本発明の貼付材を剥離して治療を終わる。貼付材は注射用の孔が注射の間だけ一定の位置に固定されていればよいので、強固に皮膚に接着する必要はなく、容易に剥離できる程度の弱い接着力を有する粘着剤(感圧性粘着剤、ゲル粘着剤、ハイドロコロイド粘着剤など)を好ましく使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に従い説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1Aに示される本発明の注射位置のガイド用貼付材を42歳男性閉塞性動脈硬化症右上肢と89歳の女性右下肢に使用し、多数の注射用の孔2に患者本人から分離した骨髄細胞を注入して血管の再生を行った。
【0038】
その結果、本発明の注射位置のガイド用貼付材は視認性、密着性に優れており、皮膚刺激も少なく、これまでの再生医療時の細胞移植に比べ時間の短縮効果も得られた。また、血管再生の経過も良好である。
【符号の説明】
【0039】
1 貼付材
2 注射用の孔
3 線
4 基材シート
5 粘着部
6 剥離材
6a 剥離材(縦方向の縁部)
6b 剥離材(横方向の縁部)
6c 把持部
7 支持体
7a 把持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材に関し、より詳細には、末梢血管疾患を治療するための貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢動脈閉塞疾患に対する治療としては、危険因子の除去、運動療法、抗血小板薬や血管拡張薬などによる薬物療法、さらには経皮血管形成術や外科的バイパス治療が行われている。しかし、血管のびまん性狭窄や膝下動脈以遠の病変を伴う場合は、再狭窄率が高く、血管内治療のみならず、外科治療の適応にもなりにくい。このような既存の治療に抵抗性を示す症例も増加傾向にあり、病変の進行に伴い潰瘍や感染から下肢切断術に至る例が多い。最近、患者本人の骨髄細胞や末梢血細胞を用いて血管新生を促すことにより、下肢の潰瘍消失や疼痛の軽快、消失が得られ、下肢切断を回避して患者の生活の質が大幅に改善することが示されている(非特許文献1〜2)。
【0003】
特許文献1は、ネックリフト手術用のテープテンプレートを開示しているが、末梢動脈閉塞疾患に対する治療では多数の位置に一定間隔で注射をする必要があり、このようなテープテンプレートは多数の注射位置を正確に決定するために使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-502549
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】的場聖明ら、京府医大誌 117(10), 783-792, 2008
【非特許文献2】Satoaki Matoba and Hiroaki Matsubara, Current Pharmaceutical Design, 2009, 15, 2769-2777
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者本人の骨髄細胞や末梢血細胞を下肢などの動脈閉塞部位に注入する場合、一定間隔で注入することが必要であり、その目印を示すことが必要である。
【0007】
従来、動脈閉塞部位にマジックで注入位置を書き込んだり、硬いプラスチックシートを動脈閉塞部位のまわりに巻き付けて、注入位置の目安にしていたが、マジックで記入する場合注入位置を適切に示すことは困難であり、シートを巻き付ける場合にも下肢や上肢などの動脈閉塞部位に適切にシートを巻き付けて固定することは困難であった。
【0008】
本発明は、骨髄細胞や末梢血細胞などの注入位置を容易に認識できる医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の貼付材を提供するものである。
項1. 基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、該粘着部の表面が剥離材で覆われている、注射位置のガイド用貼付材であって、前記貼付材が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔を有することを特徴とする、注射位置のガイド用貼付材。
項2. 隣接する注射用の前記孔の間に、縦方向及び/又は横方向の線を前記基材シートに形成してなる、項1に記載の貼付材。
項3. 前記基材シートが縦方向と横方向の線を格子状または略格子状に有し、注射用の前記孔が格子状の線の交点又は交点付近に位置する、項2に記載の貼付材。
項4. 前記基材シートが柔軟性である、項1〜3のいずれかに記載の貼付材。
項5. 前記基材シートの非粘着側に支持体をさらに有し、前記支持体と前記基材シートが剥離可能に接着されている、項1〜4のいずれかに記載の貼付材。
項6. 前記剥離材が、貼付材の外縁において少なくとも2方向に設けられている、項1〜5のいずれかに記載の貼付材。
項7. 前記剥離材が、貼付材の中心部とその両側に別々に剥離可能に設けられ、粘着部を段階的に露出することができる、項1〜6のいずれかに記載の貼付材。
項8. 基材シートの全面が剥離材で覆われ、かつ、基材シートの端部に非粘着部を縦方向及び/又は横方向に有し、前記非粘着部に対応する剥離材を持ちながら基材シートを貼付することができる、項1〜7のいずれかに記載の貼付材。
項9. 末梢動脈閉塞疾患を治療するための項1〜8のいずれかに記載の貼付材。
項10. 上肢または下肢の一部に巻き付けて使用される、項1〜9のいずれかに記載の貼付材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の貼付材は、注射位置に対応する孔を有するので、注射位置が容易に分かるとともに、注射時に基材シートや粘着剤の一部が体内に入り込むことはない。
【0011】
また、本発明の柔軟性の貼付材は、身体の表面の形状に応じて変形することができるので、容易に動脈閉塞部位に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図1B】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図1C】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図3】粘着剤が格子状に配置されている本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図4】周縁部に2方向に分割して剥離できる剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図5】中心部とその両側に3分割された剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図6】図5の貼付材において、中心部の剥離材をめくったときの状態を示す。
【図7】中心部の剥離材が大きな割合を占める本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す図である。
【図8】貼付材が、基材シート4、粘着部5、剥離材6、支持体7の4層構成である実施形態を示す図である。
【図9】貼付材が、基材シート4、粘着部5、剥離材6の3層構成である実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の貼付材1は、末梢動脈閉塞疾患の治療のために末梢動脈閉塞部位に貼付するためのものである。貼付剤を貼付する場所は、末梢動脈が閉塞した場所であり、上肢(上腕、前腕)、下肢(上腿、下腿)などが挙げられ、特に下腿(ふくらはぎ)の部分に巻き付けられることが多い。
【0014】
貼付材1に設けられた孔2は注射する位置を示し、かつ、孔2を開けることで注射針を刺したときに貼付材1に由来する破片もしくは粘着剤が体内に入らないようにしている(図1〜3)。図1において、(A)は格子状の線の交点に注射用の孔が形成された実施形態を示す。図1(B)は、さらに粘着部を網掛けで示したものであり、図1(C)は格子状の交点以外に注射用の孔をさらに形成した実施形態を示す。
【0015】
注射で注入されるのは、血管を再生可能な細胞であり、例えば患者本人の骨髄細胞、造血細胞、臍帯血細胞、動員された末梢血細胞が挙げられ、骨髄細胞が好ましい。骨髄細胞以外でも、血管の再生に有効な幹細胞、iPS細胞、ES細胞、或いはこれらから分化した細胞など、血管内皮細胞などに分化可能であり、血管の再生を行うことができる細胞であれば、末梢動脈閉塞部位に注入され得る。
【0016】
末梢動脈閉塞疾患の治療のためには、末梢動脈が閉塞したもしくは閉塞しつつある部分に対し広範囲にわたり血管を再生させることが必要である。そのため、注射は横方向及び縦方向に一定の間隔(等間隔又はほぼ等間隔)で行うことが必要である。注射部位が密な(注射の間隔が狭い)部分と疎な(注射の間隔が広い)部分がある場合、注射を狭い間隔で行った部分は血管が密に形成されるが、注射を広い間隔で行った部分は血管の密度が低くなり、その部分で血行障害を起こすことになるからである。このため、本発明の貼付材1では、注射用の孔2を縦方向及び横方向に一定間隔で開けている。
【0017】
注射用の孔2の間には線3を形成することが望ましい。これは、貼付材1を貼付した周辺にも注射を行うため、線3があるとその延長線上で等間隔の注射位置を予測しやすいためである。この線3は、全ての注射用の孔をつなぐ必要はない(図1C)。線は縦方向(例えば下腿の場合膝からくるぶしの方向)にあるのが貼付材の孔の延長線を認識するのに好ましく、横方向(例えば下腿に巻き付ける方向)の線3は孔2の間隔を認識するのに有効である。
【0018】
下腿に巻き付ける場合、くるぶしに近い部分は膝に近い部分に比べて細くなっているので、下腿全体を巻き付けると下側の細い部分は貼付材1が少し余る場合がある。このような場合、貼付材1の端部を適宜切断して使用すればよい。貼付材1を巻き付けるのはくるぶしの上あたりまでが通常であり、その下(くるぶしからかかと或いは足先)、或いはその上(貼付材の上端から膝まで、必要であればさらにその上)は、貼付材に規則的に並べられた注射用の孔2の位置から等間隔の注射位置を予測して骨髄細胞などの血管を形成可能な細胞を注射することができる。
【0019】
本発明の貼付材1は、基材シート4、基材シート4の粘着側の粘着部5、粘着部5を覆う剥離材6から構成され(図9)、基材シート4の非粘着部側に基材シートの保護、或いは一定の強度を持たせるために支持体7を備えることができる(図8)。支持体7は、基材シート4が柔軟性の薄いフィルムの場合、フィルムを補強して貼付を容易にすることができる。
【0020】
本発明の貼付材1の基材シート4は、粘着部5を有する粘着側の面と、非粘着側の面を有する。粘着部5は、粘着側の面の全面に形成されてもよく、基材シート4の周縁部又はその一部(周縁部以外の部分は粘着部がなくてもよく、一定間隔でもしくは周縁部に近い部分に粘着部を有してもよい)に部分的に形成されてもよい。孔2の周辺に粘着部を形成すると孔2の位置が固定されるので好ましい。この実施形態として、例えば図3に示すように、粘着部を格子状に設けることができる。本発明の貼付材1は、前腕、下肢(特に下腿)などに巻き付けて注射の位置を示すことができるように接着され得るので、粘着部を全面に形成すると粘着部同士が接着することがある。粘着部5を基材シート4の全面に形成する場合、粘着部5同士が接着するのを防止するために、剥離材6を分割して剥離できるようにするのが好ましい。あるいは、前腕、下肢などに巻き付ける際に粘着剤同士が接着しても剥離して再度接着できるような粘着剤を用いて粘着部を形成してもよい。
【0021】
図4は、周縁部に2方向に分割して剥離できる剥離材を設けた本発明の貼付材の好ましい実施形態を示す。図4において、縦方向と横方向に剥離材6a、6bを設けたのは、貼付(注射)部位が上肢と下肢とで太さが違い、巻き付ける上肢または下肢の太さも個人差が大きいので、サイズに合わせて巻き付けるようにするためである。図4の実施形態では、縦又は横のいずれかの剥離材(6aまたは6b)を先に剥離して貼付材の端部を貼着固定し、その後残りの剥離材を剥離して全体を下肢もしくは上肢などに貼着すればよい。剥離材には把持部6cを形成するのが好ましい。なお、貼付材の貼着は、例えば2名で行うことができ、1名が下肢又は上肢などの貼付部位をもって巻き付けやすい位置に保持し、もう1名が貼付材の貼付(巻き付け)を行う。この場合、図4に示すような周縁部の一部を貼付して残りの部分を巻き付けてもよく、図5〜図7に示すように、貼付材の中央部を先に貼付して残りの部分を後で固定するのが好ましい実施形態の1つである。
【0022】
本発明の貼付材1は注射後に身体から剥離されるので、強力に粘着して剥離が困難な粘着剤よりも養生テープのように一時的に接着して注射の位置を示すことができるが、使用後は容易に剥離でき、皮膚に粘着剤が残らず、剥離するときに皮膚を傷めない粘着剤が好ましい。このような粘着剤を使用すると、貼付部位(下肢、上肢など)に貼付する際に貼付材の粘着部同士が接着した場合にもいったん剥がして、貼付部位に貼り付けることができる。
【0023】
基材シート4を形成する材料は、特に限定されず、従来、この分野で使用されているあらゆる材料を用いることができる。特に、末梢動脈閉塞部位への順応性、追従性の観点から、柔軟性、伸縮性を有する素材が好ましい。基材シート4、支持体7を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系重合体、オレフィン系共重合体等の合成樹脂で形成した合成樹脂フィルムを挙げることができる。
【0024】
基材シート4の厚さは、本発明の目的を損なわなければ特に限定されないが、柔軟性や伸縮性の観点から、1〜1000μm程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜300μm程度、特に5〜150μm程度の範囲が好ましい。
【0025】
粘着部5は、粘着性組成物を用いて形成することができる。例えば、粘着性組成物を、基材シート4の粘着側に塗工して、粘着部5を形成することができる。
【0026】
支持体7は、容易に剥離でき、糊残りしない粘着剤組成物を塗工して基材シートに貼り付けることができる。粘着剤組成物の塗工は、ナイフコーター、グラビアコーター等の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを目的に合わせて適宜、制御することができる。支持体7と基材シート4の粘着は全面に行うことができるが、支持体7は、貼付材1を貼着後に基材シート4から剥離することを考えて、支持体7に把持部7aを形成し、容易に剥離できるようにすることができる。
【0027】
粘着部5に用いることができる粘着性組成物は、この分野で使用されているあらゆる粘着性組成物を自由に選択して用いることが可能である。例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系等の感圧性粘着性基剤と、必要に応じて、油、多価アルコール、親水性高分子化合物、などを含有する粘着性組成物を挙げることができる。粘着部5の粘着剤層としてゲル粘着剤やハイドロコロイド粘着剤を使用することが好ましく、剥離刺激を軽減することができる。ゲル粘着剤としては、水を含むヒドロゲル粘着剤でも、有機溶媒を含むオルガノゲル粘着剤でもよく、シリコーンゲル粘着剤、アクリルゲル粘着剤が好ましい。
【0028】
粘着部5の粘着剤層或いはその表面にスフィンゴ脂質、尿素、グリコール酸、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ムコ多糖及びその誘導体、ビタミンB群、アスコルビン酸、レチノイド、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体、カロチノイド、酵素、補酵素、γ―オリザノール等の添加剤を配合してもよく、抗炎症剤、あるいは血管の再生を促進するサイトカイン(顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポイエチン、bFGF、EGF、NGF、VEGF、LIF、肝細胞増殖因子およびマクロファージコロニー刺激因子など)を配合してもよい。
【0029】
粘着部5を構成する粘着剤層の厚さは、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、用途に応じて自由に設計することができる。粘着剤の凝集力と製造上の安定性を考慮すると、厚さ0.001〜1.5mmの範囲が好ましく、0.005〜0.5mmがより好ましく、0.01〜0.3mmがさらに好ましい。
【0030】
支持体7は、貼付材1を末梢動脈閉塞部位に貼付する際、前記粘着部5同士の付着や基材シート4の皺の発生等を防止するために、必要に応じて備えられる。本発明の貼付材1は注射位置が孔2によって示されていれば、貼付材1の基材シートが全面で接着される必要は必ずしもなく、基材シート4の柔軟性、追従性はそれほど高いレベルでは要求されていない。基材シート4がシワを防止し、粘着部5同士の付着を抑制するに十分な強度ないし厚みを有する場合には、支持体7は必要とされない。
【0031】
支持体7を形成する材料は、この分野で使用されている材料を適宜選択して用いることができる。例えば、合成樹脂フィルム、発泡シート、不織布、織布、編布、紙等の形態が挙げられる。本発明においては、これらの中でも特に、適度な支持性、透明性を備える合成樹脂フィルムが好ましい。支持体7を構成する合成樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂を挙げることができる。これらは、単一の材料により単一の形態とすることもできるが、2種以上の材料を用いて、複合的な形態に形成することも可能である。
【0032】
支持体7の形態は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、基材シート4と同一のサイズにしてもよく、支持体7を基材シート4より大きく形成し、基材シート4の外縁から基材シート4の外側へ延出させて把持部を形成することも可能である。
【0033】
本発明において、末梢閉塞性動脈疾患としては、例えば、炎症、糖尿病、冠状動脈疾患、心筋梗塞(MI)、心房細動、一過性虚血性発作、脳卒中、肢虚血および腎臓疾患などの結果として、末梢循環(すなわち、心臓および脳の血管の外側での血管)の障害から生じる状態を含む。具体的には、末梢血管疾患は、頸動脈または大腿動脈における閉塞、腸骨動脈における閉塞、あるいは、大腿動脈または頸動脈の遠位側にある動脈(例えば、下肢における脛骨動脈およびその分枝、ならびに、上肢における上腕動脈およびその分枝)における閉塞を伴う血管障害である。より小さい血管(例えば、閉塞部の遠位側にある組織の毛細血管床など)もまた冒される。末梢動脈における閉塞は、痛みおよび制限された動き、罹患組織の活力喪失および無酸素症を引き起こし、また、壊死および二次的感染をもたらす場合がある。閉塞性末梢血管疾患に関連する具体的な障害の1つが、多くの場合には足の切断を生じさせる、糖尿病患者を冒す糖尿病性足である。
【0034】
本発明の貼付材を用いて末梢閉塞性動脈疾患を治療する方法について以下に説明する。
先ず、本発明の貼付材1を前腕、下腿または上腿などの末梢動脈が閉塞した部位に巻き付ける。その場合、剥離材の一部を剥離して端部、中央部分などの一部を末梢動脈閉塞部位に貼付する。その後、剥離材を剥離しながら貼付材を少しずつ巻き付けていく。この巻き付け時に、基材シート4に皺がよらないように注意しながら貼付する。貼付材を少しずつ巻き付けるのは、貼付材1の粘着部5同士が粘着しないようにするためである。このようにして注射用の孔2が等間隔になるように、かつ、孔の間の線が縦方向(関節から先端の方向)及び横方向(巻き付ける方向)になるように、貼付材を末梢閉塞性動脈疾患部位に貼着する。次に、注射用の孔2に対し、患者本人の血管の再生可能な細胞(例えば骨髄細胞)を注入する。その際、骨の部分は血管の再生の必要性が乏しいので、骨に対応する孔には注射をせず、筋肉に対応する注射用の孔2に注射を行う。例えば下腿の場合、膝の下あたりからくるぶしの上あたりまで本発明の貼付材を巻き付け、その下(くるぶしのあたりから脚の先端)については、縦方向(膝からくるぶしの方向)の線の延長線上に、同様な間隔で注射を行う。この際、縦方向と横方向(巻き付ける方向)に線が付してあると、等間隔の注射位置を容易に決定できる。隣接する注射用の孔の間隔は、特に限定されないが、例えば10〜50mm程度、好ましくは12〜40mm程度、より好ましくは15〜35mm程度である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、注射で注入される血管を再生可能な細胞として骨髄細胞を用いる場合には、全身麻酔科で自家骨髄液約600mlを採取し、速やかに骨髄単核球を分離し、約20億個の細胞を虚血肢の筋肉内約120ヵ所に分割注入する。末梢血単核球細胞を用いる場合には、全身麻酔の必要はなく、覚醒下に末梢静脈や中心静脈から約3〜4時間かけて約100億個の単核球を採取し、虚血肢の筋肉内約120ヵ所に分割注入する。に分割注入する。これらの細胞数は単なる一例であり、細胞数やその内訳(血管内皮前駆細胞の指標となるCD34陽性細胞数など)、虚血肢の筋肉部位の大きさ、表面積などには個人差があり、患者の年齢や病態により細胞数、注入箇所の数は変動する。上記は骨髄細胞(骨髄単核球)、末梢血単核球細胞などの場合の例示であるが、これらの記載を参考にして、他の血管を再生可能な細胞(例えば造血細胞、臍帯血細胞、幹細胞、iPS細胞、ES細胞、或いはこれらから分化した細胞など)についても同様に虚血肢などの末梢閉塞性動脈疾患に注入し、血管を再生することができる。
【0036】
注射が終わった後は、本発明の貼付材を剥離して治療を終わる。貼付材は注射用の孔が注射の間だけ一定の位置に固定されていればよいので、強固に皮膚に接着する必要はなく、容易に剥離できる程度の弱い接着力を有する粘着剤(感圧性粘着剤、ゲル粘着剤、ハイドロコロイド粘着剤など)を好ましく使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に従い説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1Aに示される本発明の注射位置のガイド用貼付材を42歳男性閉塞性動脈硬化症右上肢と89歳の女性右下肢に使用し、多数の注射用の孔2に患者本人から分離した骨髄細胞を注入して血管の再生を行った。
【0038】
その結果、本発明の注射位置のガイド用貼付材は視認性、密着性に優れており、皮膚刺激も少なく、これまでの再生医療時の細胞移植に比べ時間の短縮効果も得られた。また、血管再生の経過も良好である。
【符号の説明】
【0039】
1 貼付材
2 注射用の孔
3 線
4 基材シート
5 粘着部
6 剥離材
6a 剥離材(縦方向の縁部)
6b 剥離材(横方向の縁部)
6c 把持部
7 支持体
7a 把持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、該粘着部の表面が剥離材で覆われている、注射位置のガイド用貼付材であって、前記貼付材が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔を有することを特徴とする、注射位置のガイド用貼付材。
【請求項2】
隣接する注射用の前記孔の間に、縦方向及び/又は横方向の線を前記基材シートに形成してなる、請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記基材シートが縦方向と横方向の線を格子状または略格子状に有し、注射用の前記孔が格子状の線の交点又は交点付近に位置する、請求項2に記載の貼付材。
【請求項4】
前記基材シートが柔軟性である、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付材。
【請求項5】
前記基材シートの非粘着側に支持体をさらに有し、前記支持体と前記基材シートが剥離可能に接着されている、請求項1〜4のいずれかに記載の貼付材。
【請求項6】
前記剥離材が、貼付材の外縁において少なくとも2方向に設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の貼付材。
【請求項7】
前記剥離材が、貼付材の中心部とその両側に別々に剥離可能に設けられ、粘着部を段階的に露出することができる、請求項1〜6のいずれかに記載の貼付材。
【請求項8】
基材シートの全面が剥離材で覆われ、かつ、基材シートの端部に非粘着部を縦方向及び/又は横方向に有し、前記非粘着部に対応する剥離材を持ちながら基材シートを貼付することができる、請求項1〜7のいずれかに記載の貼付材。
【請求項9】
末梢動脈閉塞疾患を治療するための請求項1〜8のいずれかに記載の貼付材。
【請求項10】
上肢または下肢の一部に巻き付けて使用される、請求項1〜9のいずれかに記載の貼付材。
【請求項1】
基材シートの片面の一部又は全面に粘着部を有し、該粘着部の表面が剥離材で覆われている、注射位置のガイド用貼付材であって、前記貼付材が縦方向と横方向に一定間隔で配置された複数の注射用の孔を有することを特徴とする、注射位置のガイド用貼付材。
【請求項2】
隣接する注射用の前記孔の間に、縦方向及び/又は横方向の線を前記基材シートに形成してなる、請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記基材シートが縦方向と横方向の線を格子状または略格子状に有し、注射用の前記孔が格子状の線の交点又は交点付近に位置する、請求項2に記載の貼付材。
【請求項4】
前記基材シートが柔軟性である、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付材。
【請求項5】
前記基材シートの非粘着側に支持体をさらに有し、前記支持体と前記基材シートが剥離可能に接着されている、請求項1〜4のいずれかに記載の貼付材。
【請求項6】
前記剥離材が、貼付材の外縁において少なくとも2方向に設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の貼付材。
【請求項7】
前記剥離材が、貼付材の中心部とその両側に別々に剥離可能に設けられ、粘着部を段階的に露出することができる、請求項1〜6のいずれかに記載の貼付材。
【請求項8】
基材シートの全面が剥離材で覆われ、かつ、基材シートの端部に非粘着部を縦方向及び/又は横方向に有し、前記非粘着部に対応する剥離材を持ちながら基材シートを貼付することができる、請求項1〜7のいずれかに記載の貼付材。
【請求項9】
末梢動脈閉塞疾患を治療するための請求項1〜8のいずれかに記載の貼付材。
【請求項10】
上肢または下肢の一部に巻き付けて使用される、請求項1〜9のいずれかに記載の貼付材。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−5945(P2013−5945A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141019(P2011−141019)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(509349141)京都府公立大学法人 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(509349141)京都府公立大学法人 (19)
【Fターム(参考)】
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