説明

赤外線撮像装置

【目的】 赤外線カメラより入力される映像のレベル変化が急しゅんな部分を細かい階調で表示できる赤外線撮像装置を得る。
【構成】 赤外線カメラ1で撮像された1画面分の映像信号を微分信号抽出部4にて微分し、その後プロセッサ14より設定される一定のしきい値によりタイミング検出部15にて二値化される。この二値化された信号によりタイミングゲート作成部6にてレベル変化の急しゅんな部分を含むゲート信号を作成し、これを信号サンプル部7に送る。信号サンプル部7ではこのタイミングゲート信号中の映像信号の最大値と最小値をサンプルする。プロセッサ14ではこの最大値と最小値の間が最大階調となるように入力ルックアップテーブルRAM8,9のデータを作成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は被写体から放射される赤外線をとらえ、映像化する赤外線撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図9は従来のこの種の赤外線撮像装置を示す図である。図9において、1は被写体の表面から放射される赤外線をとらえアナログ信号に変換する赤外線カメラ、2はこの赤外線カメラ1より出力されるアナログ映像信号の振幅の平均値をアナログ/ディジタル変換部3の入力ダイナミックレンジの中心に合致させるオートペデスタル部、3はこのオートペデスタル部2より出力されるアナログ信号をディジタル化するアナログ/ディジタル変換部、19はこのアナログ/ディジタル変換部3より出力されるディジタル映像信号の階調変換を行なう入力ルックアップテーブルROM、11はこの入力ルックアップテーブルROM19より出力される階調変換されたディジタル映像信号から赤外線カメラ1自身が与える影響(素子欠陥、シェーディング等)を補正するための画像補正部、12はこの画像補正部11より出力される補正後のディジタル映像信号をアナログ映像信号に変換するディジタル/アナログ変換部、13はこのディジタル/アナログ変換部12より出力されるアナログ映像信号を表示するディスプレイ、14は上記各部を制御するプロセッサ、15は人がこのプロセッサ14に対し指示を与えるための操作部、16はこの操作部15よりの指示をディジタル変換する操作部インタフェースである。
【0003】次に動作について説明する。従来の赤外線撮像装置においては、赤外線カメラ1より出力されるアナログ映像信号をオートペデスタル部2においてアナログ映像信号の振幅の平均値をアナログ/ディジタル変換部3の入力ダイナミックレンジの中心に合致させ、次にアナログ/ディジタル変換部3においてディジタル信号に変換される。この変換されたディジタル信号は入力ルックアップテーブルROM19により階調変換される。この入力ルックアップテーブルROM19には何種類かの階調パターンが記録されており、人が操作部15及び操作部インタフェース16を介してプロセッサ14に対し入力ルックアップテーブルROM19内の何種類かの階調パターンのどれを選ぶかを選択する。入力ルックアップテーブルROM19より出力されたディジタル映像信号は赤外線カメラ1自身が映像信号に与える影響(素子欠陥による出力レベルの変動、シェーディング等)を補正するための画像補正部11を介して補正され、ディジタル/アナログ変換部12にてアナログ映像信号に変換された後ディスプレイ13に映し出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の赤外線撮像装置は以上のように構成されているので映像中のレベル変化が急しゅんな部分の映像を解析したい場合、そのレベル変化が収まるように一番近い入力ルックアップテーブルを選択するしかなく、精密な解析、またはこの急しゅんな変化の途中にある微小なレベル変化には対応出来ないという問題点があった。
【0005】また、解析したいレベル変化の急しゅんな部分が画像の振幅平均から隔たっている場合はオートペデスタル部によって、振幅平均=アナログ/ディジタル変換部の入力ダイナミックレンジの中心とされてしまうため入力ルックアップテーブルをどう選択しても解析したい部分が表示画像中でレベルが高すぎるか(白っぽくなってしまう)、低すぎる(黒っぽくなってしまう)して最適な画像が得られないという問題点があった。
【0006】この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、レベル変化の急しゅんな部分の解析を効率良く行なう赤外線撮像装置を得ることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明に係る赤外線撮像装置は上記従来装置の構成に対し、アナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号のレベル変化を微分する微分信号抽出部と、この微分信号抽出部より出力される微分信号よりディジタル映像信号のレベル変化の急しゅんになるタイミング及びその持続時間幅を検出しその始まりと終りのタイミング信号を出力するタイミング検出部と、このタイミング検出部より出力されるタイミング信号より信号サンプル部に与えるゲート信号を作成するタイミングゲート作成部と、このタイミングゲート作成部より出力されるゲート信号に従ってレベル変化の急しゅんな部分の始まりと終りのディジタル映像信号レベルを検出し保持する信号サンプル部と、前記アナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号の階調変換を行なう2組の入力ルックアップテーブルRAMと、アナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号をプロセッサよりの指令により上記2組の入力ルックアップテーブルRAMのどちらを経由させるかを選択する入力ルックアップテーブル切換部を付加したものである。
【0008】また、この発明に係る赤外線撮像装置は前記構成に赤外線カメラよりのアナログ映像信号のどのレベルをアナログ/ディジタル変換部に与えるかを操作部よりプロセッサを介して設定出来るペデスタル設定部と、このペデスタル設定部とオートペデスタル部のどちらを使用するかを操作部よりプロセッサを介して設定出来るペデスタル切換部とを付加したものである。
【0009】
【作用】上記のように構成された赤外線撮像装置においては赤外線カメラで撮像された1画面分の映像信号は微分信号抽出部にて微分され、その後プロセッサより設定される一定のしきい値THH及びTHLによりタイミング検出部にて二値化される。この二値化後波形よりタイミングゲート作成部にてレベル変化の急しゅんな部分を含むゲート信号を作成し、これを信号サンプル部に送る。信号サンプル部ではこのタイミングゲート信号中の映像信号の最大値と最小値をサンプルし、プロセッサではこの最大値と最小値の間が最大階調となるように入力ルックアップテーブルRAMのデータを作成する。これによりレベル変化の急しゅんな部分が細かい階調で表示できる。
【0010】また、赤外線カメラで撮像された1画面分の映像信号中のレベル変化が急しゅんな部分がその1画面分の映像信号の平均値と隔たっている場合はペデスタル切換部にてオートペデスタル部よりペデスタル設定部にペデスタルの設定経路を切り換えてレベル変化の急しゅんな部分が映像信号の平均値近傍になるようペデスタルレベルを調整することで適正な画像を得ることができる。
【0011】
【実施例】
実施例1.図1はこの発明の一実施例を示す図である。図において、1は被写体の放射する赤外線をとらえ、アナログ映像信号に変換する赤外線カメラ、2はこの赤外線カメラ1より出力されるアナログ映像信号の振幅の平均値をアナログ/ディジタル変換部3の入力ダイナミックレンジの中心に合致させるオートペデスタル部、3はこのオートペデスタル部2から出力されるアナログ映像信号をディジタル映像信号に変換するアナログ/ディジタル変換部、4はこのアナログ/ディジタル変換部3より出力されるディジタル映像信号のレベル変化を微分する微分信号抽出部、5はこの微分信号抽出部4より出力される微分信号よりディジタル映像信号のレベル変化の急しゅんになるタイミング及びその持続時間幅を検出しその始まりと終りのタイミング信号を出力するタイミング検出部、6はこのタイミング検出部5より出力されるタイミング信号より信号サンプル部7に与えるゲート信号を作成するタイミングゲート作成部、7はこのタイミングゲート作成部6より出力されるゲート信号に従ってレベル変化の急しゅんな部分の始まりと終りのディジタル映像信号レベルを検出し保持する信号サンプル部、8及び9は前記アナログ/ディジタル変換部3より出力されるディジタル映像信号の階調変換を行なう2組の入力ルックアップテーブルRAM、10はアナログ/ディジタル変換部3より出力されるディジタル映像信号をプロセッサ14よりの指令により上記2組の入力ルックアップテーブルRAM8及び9のどちらを経由させるかを選択する入力ルックアップテーブル切換部、11はこの入力ルックアップテーブルRAMより出力されるディジタル映像信号に対し赤外線カメラ自身が与える影響(素子欠陥、シェーディング等)を補正するための画像補正部、12はこの画像補正部11より出力される補正後ディジタル映像信号をアナログ映像信号に変換するディジタル/アナログ変換部、13はこのディジタル/アナログ変換部12より出力されるアナログ映像信号を表示するディスプレイ、14は上記各機器を制御するプロセッサ、15は人がプロセッサ14に対し指示を与えるための操作部、16は操作部15よりの指示をディジタル信号に変換する操作部インタフェース、17は赤外線カメラ1よりのアナログ映像信号のどこのレベルをアナログ/ディジタル変換部3に与えるかを操作部15よりプロセッサ14を介して設定出来るペデスタル設定部、18はこのペデスタル設定部17とオートペデスタル部2のどちらを使用するかを操作部15よりプロセッサ14を介して設定出来るペデスタル切換部である。
【0012】上記のように構成された赤外線撮像装置において、赤外線カメラ1より出力されるアナログ映像信号(図2)をオートペデスタル部2においてアナログ映像信号の振幅の平均値をアナログ/ディジタル変換部3の入力ダイナミックレンジの中心に合致させ、次にアナログ/ディジタル変換部3においてディジタル信号に変換される。このディジタル化された1画面分の映像信号は微分信号抽出部4にて図3に示すように微分され、その後プロセッサ14より設定される一定のしきい値THH,THLによりタイミング検出部5にて図4に示すように二値化される。この二値化後波形よりタイミングゲート作成部6にてレベル変化の急しゅんな部分を含むゲート信号を図5に示すように作成し、これを信号サンプル部7に送る。信号サンプル部7では図6に示すようにこのタイミングゲート信号中の映像信号の最大値と最小値をサンプルし、プロセッサ14ではこの最大値と最小値の間が最大階調となるように入力ルックアップテーブルRAM8及び9のデータを作成し、入力ルックアップテーブル切換部10で選択されていない入力ルックアップテーブル8もしくは9にそのデータを書き込んだ後入力ルックアップテーブル切換部10を書き込み終った入力ルックアップテーブル8もしくは9に切り換える。一方、上記アナログ/ディジタル変換部3にてディジタル変換された映像信号は前記入力ルックアップテーブル8及び9のどちらかを入力ルックアップテーブル切換部10を介して通ることにより入力レベルが急しゅんに変化している部分が最大階調となるように階調変換される。この階調変換されたディジタル映像信号は赤外線カメラ1自身が映像信号に与える影響(素子欠陥による出力レベルの変動、シェーディング等)を補正するための画像補正部5を介して補正され、ディジタル/アナログ変換部6にてアナログ映像信号に変換された後ディスプレイ7に映し出される。
【0013】また、上記構成に赤外線カメラ1よりのアナログ映像信号のどこのレベルをアナログ/ディジタル変換部3に与えるかを操作部15よりプロセッサ14を介して設定出来るペデスタル設定部17、オートペデスタル部2よりペデスタル設定部17にペデスタルの設定経路を切り換えるペデスタル切換部18を備えた構成においては、図7に示すように赤外線カメラ1で撮像された1画面分の映像信号中のレベル変化が急しゅんな部分がその1画面分の映像信号の平均値PLと隔たっている場合はペデスタル切換部18にてオートペデスタル部2よりペデスタル設定部17にペデスタルの設定経路を切り換えてレベル変化の急しゅんな部分が映像信号の平均値近傍になるようペデスタルレベルを調整することで図8に示すように適正な画像を得ることができる。
【0014】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、入力信号に対し微分信号抽出部、タイミング検出部、タイミングゲート作成部、信号サンプル部、入力ルックアップテーブル切換部、2組の入力ルックアップテーブルにより構成したので、レベル変化の急しゅんな部分を階調細かく見ることが出来るという効果がある。
【0015】また、ペデスタル切換部、ペデスタル設定部とを設ける事により、レベル変化の急しゅんな部分がその1画面分の映像信号の平均値と隔たっている場合でも前記ペデスタル設定部にてレベル変化の急しゅんな部分が映像信号の平均値近傍になるように操作部にて調整することにより適正な画像が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による赤外線撮像装置を示す図である。
【図2】赤外線カメラで撮像された1画面分の映像信号の例をしめす図である。
【図3】微分信号抽出部より出力される信号の例を示す図である。
【図4】タイミング検出部より出力される信号の例を示す図である。
【図5】タイミングゲート作成部より出力される信号の例を示す図である。
【図6】信号サンプル部にてサンプルされる最大値と最小値の例を示す図である。
【図7】レベル変化の急しゅんな部分がその1画面分の映像信号の平均値と隔たっている入力信号の例を示す図である。
【図8】ペデスタル設定部により適度に調整された入力信号の例を示す図である。
【図9】従来の赤外線撮像装置を示す図である。
【符号の説明】
1 赤外線カメラ
2 オートペデスタル部
3 アナログ/ディジタル変換部
4 微分信号抽出部
5 タイミング検出部
6 タイミングゲート作成部
7 信号サンプル部
8 入力ルックアップテーブル1
9 入力ルックアップテーブル1
10 入力ルックアップテーブル切換部
11 画像補正部
12 ディジタル/アナログ変換部
13 ディスプレイ
14 プロセッサ
15 操作部
16 操作部インタフェース
17 ペデスタル設定部
18 ペデスタル切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被写体の放射する赤外線をとらえ、アナログ映像信号に変換する赤外線カメラと、この赤外線カメラより出力されるアナログ映像信号の振幅の平均値をアナログ/ディジタル変換部の入力ダイナミックレンジの中心に合致させるオートペデスタル部と、このオートペデスタル部から出力されるアナログ映像信号をディジタル映像信号に変換するアナログ/ディジタル変換部と、このアナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号のレベル変化を微分する微分信号抽出部と、この微分信号抽出部より出力される微分信号よりディジタル映像信号のレベル変化の急しゅんになるタイミング及びその持続時間幅を検出しその始まりと終りのタイミング信号を出力するタイミング検出部と、このタイミング検出部より出力されるタイミング信号より信号サンプル部に与えるゲート信号を作成するタイミングゲート作成部と、このタイミングゲート作成部より出力されるゲート信号に従ってレベル変化の急しゅんな部分の始まりと終りのディジタル映像信号レベルを検出し保持する信号サンプル部と、前記アナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号の階調変換を行なう2組の入力ルックアップテーブルRAMと、アナログ/ディジタル変換部より出力されるディジタル映像信号をプロセッサよりの指令により上記2組の入力ルックアップテーブルRAMのどちらを経由させるかを選択する入力ルックアップテーブル切換部と、この入力ルックアップテーブルRAMより出力されるディジタル映像信号に対し赤外線カメラ自身が与える影響(素子欠陥、シェーディング等)を補正するための画像補正部と、この画像補正部より出力される補正後ディジタル映像信号をアナログ映像信号に変換するディジタル/アナログ変換部と、このディジタル/アナログ変換部より出力されるアナログ映像信号を表示するディスプレイと、上記各機器を制御するプロセッサと、このプロセッサに対し指示を与えるための操作部と、この操作部よりの指示をディジタル信号に変換する操作部インタフェースとを備えたことを特徴とする赤外線撮像装置。
【請求項2】 赤外線カメラよりのアナログ映像信号のどこのレベルをアナログ/ディジタル変換部に与えるかを操作部よりプロセッサを介して設定出来るペデスタル設定部と、このペデスタル設定部とオートペデスタル部のどちらを使用するかを操作部よりプロセッサを介して設定出来るペデスタル切換部とを設けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の赤外線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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