説明

赤外線透過防止性に優れた編地

【課題】赤外線による透視撮影を防ぎ、ストレッチ性、風合いを損なわずに、高い赤外線遮蔽性を有し、かつ色採性豊かな編地を提供する。
【解決手段】無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含む編地であって、経緯の編み密度の積が5800〜14000/(2.54cm)2 であり、赤外線吸収剤0.1〜2重量%を均一に付着させてなる赤外線透過防止性に優れた編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線による透視撮影を防ぎ、安心して着用できるインナーウエア、スポーツウエア用編地、およびこれを用いたインナーウエア、スポーツウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラに特殊なフィルターを装着することにより、赤外線による透視撮影が可能になることを利用し、女性の裸体を盗撮する等の犯罪行為が行われることが多々あり、社会問題となっている。特に水着、スケートウエア、レオタード、など素肌に直接接触し、しかも体に密着するウエアにおいて被害にあうケースが多く、この犯罪行為の防衛策として赤外線を遮蔽する布帛の開発が必要であり、この目的で種々の繊維材料や衣服が検討されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には赤外線吸収特性を有する素材を使用した衣服が、特許文献2には赤外線吸収能または赤外線反射能を有する部分を偏在させてなる繊維材料が開示されている。しかしながら、特許文献1で開示の技術では効果を十分に出す為には繊維素材を高密度かつ高付着量にする必要があり、結果としてストレッチ性、風合いを阻害するという問題があり、また、特許文献2で開示の技術では風合いは改善されるが有効成分が偏在していることにより、赤外線遮蔽性は不十分であるという問題があった。
さらに特許文献3には、金属、炭化物等の薄膜を布帛面に形成させる技術が開示されているが金属、炭化物等による着色が起こり、外観が損なわれ、風合い、ストレッチ性も阻害されるという問題があった。また、いずれの文献に開示された技術も可視光や紫外線に対する透過は考慮されておらず、可視光での透けや紫外線で皮膚へのダメージが生じるという問題がある。又、従来特許の素材は赤外線吸収特性はあるものの、色相がダーク調になりファッション性に欠ける為に、下着用又は裏当て用途に限定される場合が多い。
【0004】
【特許文献1】特開2000−178809号公報
【特許文献2】特開2000−328441号公報
【特許文献3】特開2005−042252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決し、ストレッチ性、風合いを損なわずに、高い赤外線遮蔽性を有し、かつ色彩性豊かな編地を提供することにある。さらに、可視光、紫外線の透過も防ぎ、透けや皮膚へのダメージのない編地を提供することにある。これにより着用者が安心して着用でき、しかも運動の妨げにならないウエアが提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、透視撮影を防ぐ赤外線波長領域についてまず検討を行った。その結果、透視撮影を防ぐには赤外線の波長領域の中でも特に赤外線撮影時に使用される波長700〜900nmでの赤外線を透過させないことが必要であることをフィルターをつけたビデオでの実験により確かめた。この領域の赤外線遮蔽性を高めるには無機酸化物微粒子を含有する繊維を用い、かつ赤外線吸収剤の作用を加えることが有効であることを見出し、発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含む編地であって、経緯の編み密度の積が5600〜14000/(2.54cm)2 であり、赤外線吸収剤0.1〜2重量%を均一に付着させてなる赤外線透過防止性に優れた編地。
(2)赤外線吸収剤がアントラキノン系、インジゴ系、ベンゾキノン系、ナフトキノン系もしくはフタルシアニン系から選ばれる一種以上であり、バインダーを使用しないことを特徴とする上記(1)に記載の編地。
(3)赤外線吸収剤がアントラキノン系の分散染料または建染染料であることを特徴とする上記(2)に記載の編地。
(4)700〜900nmにおける赤外線平均透過率が10%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の編地。
(5)経または緯方向のストレッチ性が80%以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の編地。
(6)ポリウレタン繊維を15〜40重量%含むトリコット編地である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の編地。
(7)可視光での防透け性が8以下である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の編地。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の編地が少なくとも一部に用いられていることを特徴とするインナーウエアもしくはスポーツウエア。
(9)アントラキノン系、インジゴ系、ベンゾキノン系、ナフトキノン系もしくはフタルシアニン系から選ばれる一種以上の赤外線吸収剤を、染料に混合して染色することにより編地に付着させることを特徴とする上記(1)記載の編地の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の編地は高濃度の無機酸化物微粒子を芯部に含んだ芯鞘型合成繊維を40重量%以上含み、かつ、特定の編み密度である編地に通常の染料以外に赤外線吸収剤0.1〜2重量%を均一に付着させているために、任意の色相にて赤外線の透過、特に赤外線透過撮影時に問題となる波長700〜900nmの赤外線の透過をストレッチ性や風合いを阻害せずに防ぐことができる。また、高濃度の無機酸化物微粒子を芯部に含んだ芯鞘型合成繊維を40重量%以上含んでいるために、可視光、紫外線の反射が大きく、透けや皮膚への紫外線によるダメージを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の編地は、無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含んでいることを特徴としている。
該無機酸化物微粒子を含有する合成繊維は、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系等の合成繊維を用いることができるが、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系等の溶融紡糸によって製造される合成繊維が製造工程上好ましい。
【0010】
含有する無機酸化物微粒子は、原糸製造が可能であれば、その種類は特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。これらの無機酸化物微粒子は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。
使用される無機酸化物微粒子の平均粒径は、2ミクロン以下であることが好ましい。2ミクロン以上の粗大粒子になると、紡糸時の糸切れにつながり好ましくない。より好ましくは1ミクロン以下、特に好ましくは0.5ミクロン以下である。
本発明の編地に含まれる芯鞘型合成繊維は、芯部の無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%であることが必要である。含有量が3重量%未満では紫外線、特にA波の遮蔽性が劣るものとなり、可視光線、赤外線の遮蔽性も劣る。20重量%を越えると微粒子の均一な分散が困難となり、紡糸時の糸切れなどの問題が生じる。好ましい含有量は5〜15重量%の範囲である。
【0011】
鞘部の無機酸化物微粒子の含有量は2重量%以下であることを特徴としている。鞘部の含有量を芯部に対比して小さくすることで赤外線、可視光線、紫外線の反射特性に優れ、かつ、糸強度を保持し、加工性の高い糸となる。鞘部の無機酸化物微粒子の含有量が2重量%を超えると糸強度が小さくなり、糸加工や編成などの加工時に無機酸化物微粒子がガイド等を削るという問題も生じやすく好ましくない。
芯部と鞘部は同一のポリマー組成であっても、異なるポリマー組成であってもよい。例えばポリエステル芯鞘型合成繊維の場合には、鞘部のみが共重合ポリエステルであってもよい。また、ポリアミド芯鞘型合成繊維の場合には、芯部がナイロン66で鞘部がナイロン6であってもよい。
【0012】
また、芯部と鞘部は同心円状に複合されていてもよいし、偏心して複合されていてもよい。芯成分の鞘成分に対する重量比は1/4〜4/1の範囲が好ましい。芯成分の重量比が1/4未満であると紫外線遮蔽効果が劣るものとなり、4/1を越えると紡糸時に芯成分がフィラメントの表面に露出し、安定した芯鞘形状の形成が難しくなる。好ましい芯鞘比は1/2〜2/1であり、さらに好ましくは1/1である。
鞘芯型合成繊維の断面形状は特に限定されるものでなく、丸形、三角、Y型、L型、W型、扁平、ドッグボーン型、多葉型等何れの形状であっても良い。また、繊維の形態は長繊維でも短繊維でも良く、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。また、仮撚等の捲縮加工、流体噴射加工、撚糸等の加工が施されたものでもよい。
本発明で使用する合成繊維の繊度は、特に限定されるものではないが、ウエアとして用いることを考慮するとトータルデシテックスは20〜200dtex、単糸デニールは0.5〜10dtex程度が好ましい。
特に過酷な使用条件となるスポーツウエア用編地の場合には、1〜5dtexがより好ましく、柔らかな肌触りや風合いを重視するインナーウエア用編地の場合には、0.5〜3dtexがより好ましい。
【0013】
本発明の編地赤外線透過防止性に優れた編地において、該鞘芯型合成繊維の混率は40重量%以上であることが必要である。混率を40重量%以上とすることで本発明の目的である可視光線、紫外線の反射が大きくなり、透けや皮膚への紫外線によるダメージを防ぐことが可能となる。混用する他の繊維には、任意の繊維を用いることができるが、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル等の合成繊維や、綿、麻、ウール等の天然繊維等が好ましく用いられる。鞘芯型合成繊維の混率が40%未満では本発明の目的である赤外線、可視光線、紫外線の反射が十分でなく、透けや皮膚への紫外線によるダメージも大きくなってしまうので好ましくない。
混用の方法としては、混紡、エアー混繊、交撚、伸度差仮撚等の複合仮撚などの手段で糸複合で混用したり、交編により混用することができる。
交編の場合には、1本交互や2本交互等で配置したり、2層、3層等で配置する方法等で混用することができるが1本交互や2本交互等の如く周期的に配置されているか、1層全面に配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の編地は、天竺編、フライス、スムース、ポンチローマ等の緯編や、トリコットハーフ、アトラス等の経編などの任意の組織を用いることができるが、本発明の目的、特に赤外線の透過を防ぐためには、経緯の編み密度の積が5600〜14000/(2.54cm)2 にする必要がある。ここで、経緯の編み密度とは、編地の単位面積(2.54cm四方)あたりのコース数およびウエル数の積であり、経緯の編み密度の積が5600未満では赤外線の透過防止性能に劣り、本発明の目的を達成するのは困難である。経緯の編み密度の積が14000を超える場合は密度が大きすぎるために風合いが硬く、着用快適感が損なわれるという問題がある。経緯の編み密度の積が5600〜14000/(2.54cm)2 にするには28GG以上のハイゲージの編み機で編成するのが好ましく、ポリウレタン等の弾性繊維と混用することは編み密度が大きくなりしかもストレッチ性が大きくなるため好ましい。ポリウレタン繊維を15〜40重量%含むトリコット編地とするのが極めて好ましい。
【0015】
本発明の編地は、赤外線吸収剤を編地に0.1〜2重量%となるように均一に付着させてなることを特徴としている。赤外線吸収剤としては、アントラキノン系、インジゴ系、ベンゾキノン系、ナフトキノン系もしくはフタルシアニン系等の分散染料または建染染料が好適に用いられ、特にアントラキノン系の赤外線吸収剤は赤外線透過撮影時に問題となる波長700〜900nmの赤外線の透過を遮蔽する効果に極めて優れていて好ましい。従来用いられるジイモニウム系等の赤外線吸収剤は、本発明の合成繊維との親和性がないため本発明で用いられる赤外線吸収剤として好ましくない。また、アントラキノン系の赤外線吸収剤の中でも繊維との親和性に優れる分散染料または建染染料であれば、バインダーを使用せずに編地に付着させることができるため、特に好ましい。
【0016】
本発明で用いられる具体的な赤外線吸収剤として、例えば、Deeper NR(日本化薬製、アントラキノン系)は非常に赤外線吸収能が大きいがやや耐光堅牢度に劣り、Turq Blue GLS(日本化薬製、アントラキノン系)はDeeper NRに対比して赤外線吸収能はやや劣るが耐光堅牢度は良好である。これらの染料を併用することにより、淡色でも耐光性能を維持しながら赤外線吸収能を確保することが出来る。
これらの赤外線吸収剤は、編地の染色工程で他の染料と併用して用いる方法や編地のプリント剤に併用して用いることで編地に付与することが可能であり、いずれの方法で用いる場合でも、任意の色相を、洗濯耐久性に極めて優れた赤外線遮蔽効果を付与することが可能である。特にバインダーを使用せずに付着させれば、風合いがソフトでストレッチ性が阻害されない編地となるため好ましい。
【0017】
赤外線吸収剤の付着量は0.1〜2重量%が好ましく、0.2〜1重量%が特に好ましい。0.1重量%未満では赤外線の透過防止性能に劣り、2重量%を超えると、赤外線吸収特性は飛躍的に向上するが、色相が制限され、所望の色出しが困難になる。
赤外線吸収剤は、編地に均一に付着させることが赤外線透過防止性能の観点から好ましく、付着むらがあると赤外線透過性能に劣り好ましくない。本発明は通常の染色あるいはプリントの処方に特定の赤外線吸収剤を加えるだけで編地に均一に付着させることができるため従来方法に比べて優れた効果を発現できる。また加工工程、温度等も通常の条件でよい。ただし、本発明で用いる赤外線吸収剤の中には着色しているものもあるため、所望の色にするには他の通常の染料と配合して色目を調整するなどの工夫が必要である。編地の裏全面にプリントし、表は自由な色使いにすることも可能である。
本発明によって、赤外線の遮蔽性に優れ、特に波長700〜900nmの赤外線の平均透過率が10%以下である編地が好適に得られる。該平均透過率が6%以下であれば特に好ましい。
【0018】
本発明の編地は、先に述べたように無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含む編地であるため、赤外線だけでなく紫外線の反射特性にも優れる。紫外線の反射特性は、編地のUPF値で計測することが可能であり、UPF値が20以上、より好ましくはUPF値が30以上、さらに好ましくは50以上であることが好ましい。UPF値が20以上であることにより、紫外線から皮膚を保護し、ダメージを防ぐ編地となる。
さらに本発明の編地は無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含む編地であることにより、赤外線だけでなく可視光線の反射特性にも優れる。可視光線の反射特性は、色によっても異なるが、防透け性が8以下であることが好ましい。ここでいう防透け性は、編地の裏に白板を敷いた場合と黒板を敷いた場合との明度の差(ΔL)で表される。
【0019】
本発明の編地は、スポーツウエアやインナーウエアに用いるため、経または緯方向のストレッチ性が80%以上であることが好ましい。ここでいうストレッチ性は、2.5cm幅の試料をつかみ間隔10cmで22.5Nの荷重で引張った場合の伸び率(%)をいう。ストレッチ性を高める方法としては、スパンデックス繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等の伸縮力に優れた繊維を混用する方法、スムース、フライス、天竺など伸度の比較的大きな編組織にする方法などが好適に用いられる。
【実施例】
【0020】
本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例などにおける布帛の性量、物性は下記の方法を用いて測定、評価した。
(1)赤外線平均透過率
分光光度計を用い700〜900nmにおける透過率を5nmごとに測定し、平均値を求める。
(2)ストレッチ性
2.5cm幅、15cm長さの試料をつかみ間隔10cmで22.5Nの荷重でテンシロンを用いて引張った場合の伸び率(%)を測定する。
【0021】
(3)防透け性
測色計を用いて編地の裏に白板を置いた場合と黒板を置いた場合との明度の差(△L)を測定する。数値が8以下であれば防透け性の効果を有する。
(4)紫外線遮蔽性
オーストラリアニュージーランド規格(AS/NZS;4399:1996)に従い、290〜400nmの紫外線透過率に所定のダメージ係数を考慮し、UPF値を算出する。UPFの数値が大きいほど紫外線遮蔽性能が大きく、20以上で効果を有し、30以上で効果が高く、50以上で著しく効果が高い。
(5)風合い
編地の手触りにて以下の評価基準で評価した。
○:風合いが柔らかく良好
△:風合いがやや硬い
×:風合いが硬く不良
【0022】
[実施例1]
酸化チタンを10重量%含有する芯部と、酸化チタンを0.02重量%含有する鞘部からなり、芯鞘重量比率が1/1である同心円状のポリエステル芯鞘型合成繊維(56dtex、36フィラメント)をフロント筬に、44dtexのスパンデックス繊維をバック筬に入れ、トリコットハーフ編地を得た。拡布状の連続精練機で精練した後、190℃でプレセットし、染色は次の処方で130℃で30分処理した。
KP DEEPER NR(日本化薬製、アントラキノン系) 0.5%owf
ニッカサンソルト RM−340 0.5g/l
酢酸80% 0.5cc/l
引き続き、常法に基づいて還元ソーピング後、水洗し、脱水した後、170℃にてファイナルセットした。編地の密度は116コース/2.54cm、90ウエル/2.54cm(以下「116C90W」の如く記載)であった。機能評価結果を表1に示す。
【0023】
[実施例2]
染色処方を次の処方とした他は実施例1と同様の方法で加工を行った。編地の密度は116C90Wであった。機能評価結果を表1に示す。
KP DEEPER NR 0.4%owf
Kayalon Roly Turq Blue GL−S200
0.1%owf
ニッカサンソルト RM−340 0.5g/l
酢酸80% 0.5cc/l
【0024】
[実施例3]
実施例1の編地を用いて常法に基づいてプリント下生地を作成し、下記の色糊を使用して、通常の方法にて印捺した後、高圧蒸熱機にて、130℃で20分間蒸熱し、水洗し、乾燥した。編地の密度は112C88Wであった。機能評価結果を表1に示す。
KP DEEPER NR 1部
Dianix Yellow UN−SE(ダイスター製) 0.2部
Dianix Carmine UN−SE(ダイスター製) 0.5部
尿素 2部
メタニトロベンゼンスルホン酸塩 1部
元糊 (アルギン酸ソーダ60%含有) 70部
酒石酸にて、PH3.5〜5.0に調製
水 X部
合計 100部
【0025】
[実施例4]
酸化チタンを10重量%含有する芯部と、酸化チタンを0.02重量%含有する鞘部からなり、芯鞘重量比率が1/1である同心円状のポリエステル芯鞘型合成繊維(56dtex、36フィラメント)と20dtexのスパンデックス繊維を用いてベア天竺の編地を作成し、実施例1と同様の処方で加工を行った。編地の密度は90C64Wであった。機能評価結果を表1に示す。
【0026】
[実施例5]
加工処方を次のように変更した他は実施例3と同様に編地を作成した。編地の密度は112C88Wであった。機能評価結果を表1に示す。得られた編地は赤外線透過防止効果に優れるが、用いた赤外線吸収剤に繊維との親和性がなく、付着させるためにバインダーを使用したことにより、得られた編地の風合いが低下した。
Kayasorb IRG−023(日本化薬製、ジイモニウム系赤外線吸収剤)
1部
Dexcel Clear 3308(大日本インキ製、アクリル系バインダー)
2部
尿素 2部
元糊(アルギン酸ソーダ60%含有) 70部
酒石酸にて、PH3.5〜5.0に調整
水 X部
合計 100部
【0027】
[比較例1]
染色処方を次の処方とした他は実施例1と同様の方法で加工を行った。編地の密度は116C90Wであった。機能評価結果を表1に示す。
Foron Navy S−2GL(クラリアント製、アゾ系) 0.5%owf
ニッカノンソルト RM−340 0.5g/l
酢酸80% 0.5cc/l
[比較例2]
酸化チタンを0.1重量%含有するポリエステル繊維(56dtex、36フィラメント)を用いた他は実施例1と同様の方法で編地を作成した。ただし編地の密度は116C72Wであった。機能評価結果を表1に示す。
【0028】
[比較例3]
実施例4の編地のセット条件を変更し密度を変えたほかは実施例4と同様に編地を仕上げた。編地の密度は70C66Wであった。機能評価結果を表1に示す。
[比較例4]
染色処方を次の処方とした他は実施例1と同様の方法で加工を行った。編地の密度は116C90Wであった。機能評価結果を表1に示す。
KP DEEPER NR(日本化薬製、アントラキノン系) 0.05%owf
ニッカサンソルト RM−340 0.5g/l
酢酸80% 0.5cc/l
【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の編地は、高濃度の無機酸化物微粒子を芯部に含んだ芯鞘型合成繊維を40重量%以上含み、かつ、特定の編み密度である編地に通常の染料以外に赤外線吸収剤0.1〜2重量%を均一に付着させているために任意の色相にて赤外線の透過、特に赤外線透過撮影時に問題となる波長700〜900nmの赤外線の透過をストレッチ性や風合いを阻害せずに防ぐことができる。また、高濃度の無機酸化物微粒子を芯部に含んだ芯鞘型合成繊維を40重量%以上含んでいるために、可視光線、紫外線の反射が大きく、透け、皮膚への紫外線によるダメージを防ぐため、インナーウエアやスポーツウエア等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物微粒子の含有量が3〜20重量%の芯部と、無機酸化物微粒子の含有量が2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型合成繊維を40重量%以上含む編地であって、経緯の編み密度の積が5600〜14000/(2.54cm)2 であり、赤外線吸収剤0.1〜2重量%を均一に付着させてなる赤外線透過防止性に優れた編地。
【請求項2】
赤外線吸収剤がアントラキノン系、インジゴ系、ベンゾキノン系、ナフトキノン系もしくはフタルシアニン系から選ばれる一種以上であり、バインダーを使用しないことを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項3】
赤外線吸収剤がアントラキノン系の分散染料または建染染料であることを特徴とする請求項2に記載の編地。
【請求項4】
700〜900nmにおける赤外線平均透過率が10%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の編地。
【請求項5】
経または緯方向のストレッチ性が80%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の編地。
【請求項6】
ポリウレタン繊維を15〜40重量%含むトリコット編地である請求項1〜5のいずれかに記載の編地。
【請求項7】
可視光での防透け性が8以下である請求項1〜6のいずれかに記載の編地。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の編地が少なくとも一部に用いられていることを特徴とするインナーウエアもしくはスポーツウエア。
【請求項9】
アントラキノン系、インジゴ系、ベンゾキノン系、ナフトキノン系もしくはフタルシアニン系から選ばれる一種以上の赤外線吸収剤を、染料に混合して染色することにより編地に付着させることを特徴とする請求項1記載の編地の製造方法。