説明

赤潮プランクトン防除剤およびそれを用いた赤潮プランクトンの駆除方法

【課題】低コスト、取り扱いが容易であり、かつ環境負担の小さい赤潮プランクトン防除剤およびそれを用いた赤潮プランクトンの駆除方法を提供する。
【解決手段】アオサ類の抽出物を有効成分とする赤潮プランクトン防除剤およびそれを使用する赤潮プランクトンの駆除方法である。前記アオサ類がリボンアオサまたはアナアオサであるものが好適であり、前記抽出物が不飽和度2以上、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含有するものが好ましく、n−3系の不飽和脂肪酸を含有するものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤潮プランクトン防除剤およびそれを用いた赤潮プランクトンの駆除方法に関し、詳しくは、低濃度で効果が現れ、環境に対する負荷が小さい赤潮プランクトン防除剤およびそれを用いた赤潮プランクトンの駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏場の気温の上昇や河川からの生活排水の流入などによる富栄養化等が原因で起こるプランクトンの大量発生がよく見られる。プランクトンの大量発生による赤潮、青潮は海中の生態系に影響を及ぼし、特に毒性を持つ有害プランクトンの大量発生は養殖漁業において養殖魚、貝の大量死を引き起こし、深刻な問題となっている。
【0003】
現在までに有害プランクトンの大量発生防止のために、様々な方法が用いられている。例えば、非特許文献1には硫酸銅などの化学物質を使用する方法、非特許文献2等には粘土を使用する方法、非特許文献3には赤潮プランクトンの堆積物である黄土(yellow loess)を使用する方法、非特許文献4および5等にはウィルスやバクテリア等の微生物による方法が知られている。
【0004】
また、非特許文献6には、オキナワモズク(Cladosiphon akamuranus)のアレロパシー物質を単離し、オクタデカ−6Z,9Z,12Z,15Z−テトラエン酸と同定し、赤潮プランクトンに対して活性があることが報告されている。
【非特許文献1】Han, F.X. et.al., J.Env.Qual., 30, 912-919(2001)
【非特許文献2】Bae, H.M. et.al., Control of HABs by yellow loess dispersion: abstract and presentation to the 1st Annual Conference on Harmful Algal Management and Mitigation, 10-14 May 1999, Subic Bay, Philippines, pp.1-28(1999)
【非特許文献3】Choi, H.G. et.al., J. Korean Fish. Soc., 31,109-113(1998)
【非特許文献4】Lovejoy, C., et.al., J. App. Env. Microbiol., 64, 2806-2813(1998)
【非特許文献5】Imai, I., et.al., Fish. Sci., 61, 624-632(1995)
【非特許文献6】Kakisawa, H., et.al., Phytochemistry, 27, 731-735(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1〜5記載の方法は、高コストである、取り扱いが難しく熟練者が必要である、難分解性である、環境汚染等の二次的な悪影響を与える恐れがある等の問題がある。また、非特許文献6記載の海藻類を使用した方法は、赤潮の原因となる植物プランクトンに対して強い毒性を示すことが確認されているものの、実際の赤潮プランクトンの駆除に関しては検討されていない。
【0006】
そこで本発明の目的は、低コストで、取り扱いが容易であり、かつ環境負担の小さい赤潮プランクトン防除剤およびそれを用いた赤潮プランクトンの駆除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リボンアオサやアナアオサなどのアオサ類が、赤潮の原因となるラフィド藻や渦鞭毛藻に対して殺藻効果がある物質を含有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の赤潮プランクトン防除剤は、アオサ類の抽出物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の赤潮プランクトンの駆除方法は、上記本発明の赤潮プランクトン防除剤を使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の赤潮プランクトン防除剤は、極低濃度で効果が現れ、低コストかつ取り扱いが容易であり、また、それを用いた本発明の赤潮プランクトンの駆除方法は、天然素材であるアオサの成分を有効成分としており、環境に対する負荷が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を好適実施形態に基づき、詳細に説明する。
本発明の赤潮プランクトン防除剤は、アオサ類の抽出物を有効成分とすることを特徴とするものであるが、本発明に係る「アオサ類」とは、緑藻植物アオサ科に属する海藻アオサ類であり、リボンアオサ、アナアオサ、アミアオサ、オオアオサ、ボタンアオサなどが挙げられ、リボンアオサまたはアナアオサを好適に使用することができ、リボンアオサがより好ましい。アオサ類は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
本発明の赤潮プランクトン防除剤の有効成分であるアオサ類の抽出物を得るための抽出方法は特に制限されるものではなく、抽出溶媒としては、通常天然物成分の抽出に用いられるものを使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ジクロロエタン、クロロホルム等が挙げられる。エタノールおよびメタノールを好適に用いることができ、より好ましくはメタノールである。
【0013】
得られた抽出物はそのまま使用することも可能であるが、精製したものを好適に用いることができる。精製することにより、有効成分を高濃度とすることができる。精製方法は特に制限されるものではないが、不溶物を除去後、ゲルクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)または液体クロマトグラフィー(HPLC)等を好適に用いることができる。各種クロマトグラフィーは市販のものにより、定法に従い精製することができる。なお、精製物を高純度にするためには、上記クロマトグラフィーを上記記載順に順次使用し、精製することが好ましい。
【0014】
抽出物は、効果の観点から、不飽和度2以上、炭素数16以上の不飽和脂肪酸を含有するものが好ましく、不飽和脂肪酸がn−3系であるものを好適に使用することができる。特に不飽和脂肪酸が、α−リノレン酸、オクタデカ−6Z,9Z,12Z,15Z−テトラエン酸(ODTA)およびヘキサデカ−4Z,7Z,10Z,13Z−テトラエン酸(HDTA)ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種であるものが更に好ましい。なお、不飽和脂肪酸はナトリウム等により塩を形成していてもよい。
【0015】
本発明の赤潮プランクトンの駆除方法は、上記本発明の赤潮プランクトン防除剤を使用することを特徴とするものであるが、防除剤の濃度、散布方法等は特に制限されるものではない。例えば、リボンアオサから抽出、精製したα−リノレン酸のナトリウム塩10グラムを2リットルの水に溶解させた溶液を作製し、赤潮プランクトンを含む海水1トンに加える。これによりサンプル濃度は約10ppmとなる。1〜2時間後に赤潮の原因となるラフィド藻や渦鞭毛藻に効果が現れる。また、カプセル化等、施与方法に工夫を凝らすことにより、持続性が高くより効果的な駆除方法へとなる
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
殺藻活性のスクリーニング
まず、下記表1および2に示す各種海藻の抽出物を下記方法により得た。乾燥した各種海藻100mgを5mLのメタノールに室温下、一日、浸漬した後、減圧下、ろ過した。この抽出工程を三回繰り返し、得られたものを混合させた(メタノール抽出物)。残渣は乾燥させ、室温下、一日、水により抽出した(水抽出物)。得られた各種抽出物の殺藻活性をアカシオモ(Heterosigma akashiwo)等に対する毒性試験を用い、検討した。バイオアッセイの方法としてKakisawa等の方法を参考にした。約1週間EV培地でアカシオモを培養し、細胞密度が約0.3×105cell/mLになるように海水で希釈した。この値は、Thomaの血球計算盤上にて計算した。マイクロプレート(Iwaki製:24穴、径16mm、平底)にアカシオモ培養液1mLとサンプルを加え、20℃、2670lxで4時間培養した後、顕微鏡視野内(×400)で20細胞中の死細胞数をランダムに計数し、死細胞率を求めた(下記式)。
死細胞率(%)=(サンプル区の死細胞数)/(サンプル区の計数全細胞数)×100
得られた結果を下記表1および2に併せて示す。なお、サンプルの濃度は表1記載の結果においては、メタノール抽出液は5μL/mLまたは10μL/mL、水抽出物は20μL/mLまたは40μL/mLであり、表2記載の結果においては、メタノール抽出液は10μL/mL、水抽出物は40μL/mLである。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
リボンアオサのメタノール抽出物の調製
7月上旬に長崎県牧島で採取したリボンアオサを水洗後、室温で風乾した(風乾重量:4.36kg)。得られたリボンアオサを10.5Lのメタノール中で、ミキサーにより細かく砕き、4日間攪拌、抽出した。4日後、抽出液とアオサ残渣をろ紙によりろ別し、抽出液はロータリーエバポレーターで濃縮、アオサ残渣には再び12.5Lのメタノールを加え、2日間再抽出した。再抽出後も同様にろ別し、抽出液を濃縮し1度目の抽出物と混ぜ、抽出分(以下、「リボンアオサメタノール抽出物」という)を得た。
【0020】
リボンアオサメタノール抽出物の液−液溶媒分配
リボンアオサメタノール抽出物(含水)を減圧下でセライトろ過した後、ヘキサン800mL、水700mLになるようにろ液にヘキサンと水を加え、分液漏斗により分配した。水層をヘキサンにより2回(200mL×2)再度抽出し、ヘキサン層を混ぜ濃縮し、ヘキサン抽出物(以下、「リボンアオサメタノール抽出ヘキサン可溶部」という)を得た。
【0021】
リボンアオサメタノール抽出ヘキサン可溶部をヘキサン350mLに溶解させ、4M塩酸で3回(100mL×3)抽出した。HCl層を8M水酸化ナトリウム水溶液でpH9付近となるように調整し、ジクロロメタンで3回(100mL×3)抽出し、ジクロロメタン層を濃縮し、塩基性画分(以下、「M−RHB」という)を0.016g得た。ヘキサン層は、再度セライトろ過し、600mLになるようにフィルアップした後、50%メタノール約600mLにより抽出し、ヘキサン層はそのまま濃縮し中性画分(以下、「M−RHN」という)を12.950g得た。50%メタノール層はメタノールを濃縮した後、酢酸エチルで3回(200mL×3)抽出し、酢酸エチル層を濃縮し50%メタノール可溶画分(以下、「M−RHM」という)を0.457g得た。
【0022】
メタノール抽出物の殺藻活性試験
得られたM−RHN、M−RHM、M−RHBをサンプル濃度20μg/mLに調整し、4時間後の細胞数を計数し、殺藻活性値を求めた。なお、殺藻活性値は、上記スクリーニングの際と同様の方法により、死細胞率を求め、この値からコントロールの死細胞率を差し引いたものを殺藻活性値として表した(下記式)。
殺藻活性値(%)=(4時間後のサンプル区の死細胞率)−(4時間後の対照区の死細胞率)
その結果、殺藻活性値は、M−RHNが92%、M−RHMが91%、M−RHBが58%であった。
【0023】
各種クロマトグラフィーによるM−RHNの分離および殺藻活性評価
(1)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるM−RHNの分離
溶媒分配で得られた中性画分M−RHNを湿式法で作成したシリカゲルカラム(担体:240g、関東化学株式会社製、Silica Gel 60、63〜210μm、カラム:直径5.5cm、高さ30cm、bed容積約350mL)によってクロマトグラフィーを行った。移動層として、ヘキサン:酢酸エチル=9:1、ヘキサン:酢酸エチル=5:1、ヘキサン:酢酸エチル=1:1、100%酢酸エチルを使用し、順次1Lずつ流し、約1Lずつ分画した。溶出液をそれぞれ濃縮し、M−RHNから4つのフラクション(M−RHN1〜4)を得た。重量はM−RHN1が1.8396g、M−RHN2が4.2475g、M−RHN3が2.3480g、M−RHN4が0.4896gであった。濃縮途中でM−RHN2は結晶となったので再結晶化し、結晶M−RHN2(cry)を0.0219g得た。M−RHN2(cry)は1H−NMRにより、パルミチン酸(不飽和結合0個、炭素16の飽和脂肪酸)と同定した。
【0024】
(2)中性画分の殺藻活性試験
M−RHN1〜4およびM−RHN2(cry)をサンプル濃度10μg/mLに調整し、4時間後の細胞数を計数し殺藻活性値を求めた。なお、コントロール、サンプル溶解溶媒としてアカシオモに対して影響が少ないメタノールを用い、その濃度はアカシオモ培養液の0.2%以下とした。その結果、殺藻活性値は、M−RHN1が3%、M−RHN2が100%、M−RHN3が100%、M−RHN4が68%、M−RHN2(cry)が1%であった。M−RHN2および3が高い殺層活性を示したが、結晶が析出しなかったM−RHN3の分離を以降、行うこととした。
【0025】
(3)ODSカラムクロマトグラフィーによるM−RHN3の分離
M−RHN3(2.35g)をアセトンに溶解させ、少量のODSを加え濃縮し吸着させた後、湿式法で調整したODSカラム(担体:山善株式会社製、ODS−S−50W−M、size M、50μm、38g)に供しクロマトグラフィーを行った。90%メタノール溶液で溶出し、初流100mLを分取し、次のフラクションから60mLずつ分取し、8つのフラクションを得た(それぞれフラクション1〜8とする)。その後、ODS TLC(展開溶媒=90%メタノール)により分画を分析し、類似したプロフィールを示したフラクションをまとめ、濃縮した(フラクション1を濃縮したものを「M−RHN3−1」と称し、フラクション2〜5を濃縮したものを「M−RHN3−2」と称する)。得られた重量はM−RHN3−1が319.4mg、M−RHN3−2が548.8mgであった。
【0026】
(4)M−RHN3の殺藻活性試験
M−RHN3−1および3−2をサンプル濃度10μg/mLに調整し、4時間後の細胞数を計数し殺藻活性値を求めた。その結果、殺藻活性値は、ともに100%であり、高い殺層活性がみられた。
【0027】
(5)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるM−RHN3−2の分離
ODS TLCにより複数のスポットが確認されたため、M−RHN3−2について次の分離を行うこととした。M−RHN3−2(548.8mg)を80%アセトニトリル5mLに溶解させ、そのうちの0.75mLをHPLCに供与した。即ち、約82mgのサンプルをHPLCで分離を行ったことになる。HPLCカラムにはナカライテスク製、Cosmosil 5C18−MS−II(20×250mm)を用い、溶出溶媒には80%アセトニトリル、流速5mL/minで分離した。フラクションコレクターを用い1分(5mL)ずつ、合計66フラクションに分画した。すべてのフラクションをODS TLCで分析し、そのプロフィールにより、M−RHN3−2−1〜3−2−4の4つの画分に精製した。得られた重量はM−RHN3−2−1(フラクション19〜26)が13.1mg、M−RHN3−2−2(フラクション34〜43)が21.4mg、M−RHN3−2−3(フラクション46〜50)が4.8mg、M−RHN3−2−4(フラクション52〜66)が22.1mgであった。
【0028】
(6)M−RHN3−2の殺藻活性試験
M−RHN3−2−1〜3−2−4をサンプル濃度0.125、0.25、0.5、1.0、2.0μg/mLに調整し、1時間毎に4時間後まで細胞数を計数し殺藻活性値を求め、LT50とLC50値を算出した。得られた結果を、下記表3に示す。すべての画分に高い殺藻活性がみられた。
【0029】
【表3】

【0030】
活性物質の構造決定
それぞれの画分の化合物に関し、HR−MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置: JEOL JMS-700N)、FT−IR(赤外吸収スペクトル装置: Perkin Elmer System 2000)、13C−NMR、1H−NMR、1H−1HCOSYスペクトル(超伝導多核種磁気共鳴装置: JOEL JNM-AL400、超伝導核磁気共鳴装置: Varian UNITY plus 500)を測定し構造解析を行った。なお、M−RHN3−2−3に関しては、ODS TLCにより非常に近い場所にいくつかのスポットがみられ複数の物質が混入していることが分かったため、これ以上の精製、機器分析による構造解析は行わなかった。
【0031】
(1)M−RHN3−2−1の各種機器分析による構造解析
得られた結果を下記する。
1H‐NMR (400 MHz, CDCl3) δ:0.97 (t, 3H, J = 7.6 Hz, -CH3), 2.08 (m, 2H, -CH2-CH3), 2.41 (m, 4H, -CH=CH-CH2-CH2-COOH), 2.80-2.85 (m, 6H, -CH=CH-CH2-CH=CH- x 3), 5.32-5.43 (m, 8H, -CH=CH- x 4), 6.10-6.33 (br, 1H, COOH).
13C‐NMR (125 MHz, CDCl3)δ:14.3 (CH3CH2-), 20.6 (CH3CH2-), 22.5 (CH=CH-CH2-), 25.5 (CH=CH-CH2-CH=CH), 25.6 (CH=CH-CH2-CH=CH), 25.6 (CH=CH-CH2-CH=CH), 33.8 (-CH2-COOH), 127.1 (_CH=CH-), 127.5 (_CH=CH-) , 127.9 (_CH=CH-), 127.9(_CH=CH-) , 128.4 (_CH=CH-), 128.6 (-CH=CH-), 129.6 (_CH=CH-), 132.1(_CH=CH-), 178.3 (-COOH ).
IR νmax (KBr) cm-1: 3200-3400 (OH), 1713 (C=O), 712 (C=C).
EIMS m/z:248 (M+), 226, 219, 205, 119, 108, 105, 93, 91, 79 (base), 67, 55.
HRMS m/z (M+): Calcd. for C16H24O2: 248.1776, Found: 248.1768.
【0032】
また、1H−1HCOSYスペクトル(500MHz,CDCl3)の測定結果は、ケミカルシフトδ:0.974ppmと2.075ppmのピークがカップリングしており、更に2.075ppmのメチレン(CH2)のピークは5.322−5.426ppmの二重結合のプロトンともカップリングしており末端のエチル基が二重結合に隣接していることが明らかとなった。また、2.410ppm付近の2つのメチレンについても二重結合のピークとカップリングしており、二重結合のもう1端に−CH2−CH2−COOHが結合していることは明らかである。
【0033】
以上の結果より、M−RHN3−2−1は不飽和結合4個、炭素16の不飽和脂肪酸ヘキサデカ−4,7,10,13−テトラエン酸(HDTA)であると決定された。機器分析では二重結合の幾何に関する情報は得られなかった。この物質は市販品がないため、アルキンのクロスカップリング反応鍵反応とする合成反応により合成し、1H−NMRスペクトルを比較し、立体構造を確認することにした。なお、合成法の確立は今後これらの化学物質を赤潮防除剤の開発へと展開する上でも重要である。HDTAはアルキンのクロスカップリング反応を鍵反応として次のようなスキムで合成した。
【0034】
まず、下記反応式に示すように、M−RHN3−2−1のメチルエステル化を行った。塩化アセチル(CH3COCl)とメタノール(CH3OH)より、HClメタノール溶液を調製し、この溶液中にヘキサデカ−4,7,10,13−テトラエン酸メタノール溶液(HDTA6.7mg)を滴下し、一晩冷蔵庫中で反応させた。溶液の色は黄色から茶褐色に変化した。反応物を5%炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、ジエチルエーテルで抽出、濃縮し、HDTAメチルエステル(天然物由来)6.3mgを得た。

【0035】
次に、下記手順によりHDTAのメチルエステルを合成した。
まず、下記反応式に従い、2,5−オクタジイン−1−オール(ODOH)を合成した。DMF200mL中にCuI(46.43g,0.2438mol)、NaI(36.54g,0.2438mol)、K2CO3(25.27g,0.1829mol)を加え、スターラーで激しく攪拌した。得られた溶液中に1−クロロ−2−ペンチン(12.50g,0.1219mol)1、プロパルギルアルコール(l6.83g,0.1219mol)2を順次滴下し、アルゴン雰囲気下、20時間攪拌した。得られた反応溶液を、10%NH4Cl溶液800mLでクエンチした後、不溶性の物質をろ過し、ジエチルエーテルにより不溶性物質を洗浄した。ろ液をエーテルで3回抽出し、エーテル層を飽和食塩水により2回洗浄、Na2SO4による脱水を行った後、濃縮し、粗ODOHを得た。得られた粗ODOHを蒸留(18mmHg/112℃)によって精製し、茶褐色の油状ODOH7.52g(収率50%)3を得た。

【0036】
1H‐NMR(300 MHz, CD2Cl2)δ:1.125 (t, 3H, J=7.5 Hz, -CH2-CH3), 2.179(triple quartet, 2H, J=2.0 Hz,7.6 Hz, -CH2-CH3), 2.121-2.532(br, 1H, -OH), 3.167-3.215(m, 2H, C三C-CH2- C三C), 4.270(triple doublet, 2H, -CH2-OH)
【0037】
次に下記反応式に従い、ブロモ−2,5−オクタジイン(BOD)の合成を行った。3口フラスコにCBr4(30.54g,92.1mmol)入れ、ジクロロメタン100mLに溶解させたODOH(7.50g,61.4mmol)3を加え、スターラーで攪拌した。ジクロロメタン100mLに溶解させたPPh3(24.16g,92.1mmol)を10℃以下で、攪拌しながら滴下した。滴下2時間後、メタノール30mLを滴下し、クエンチした。濃縮後、シリカゲル吸着クロマトグラフィー(湿式,packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状,溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により高極性物質を取り除いた後、蒸留(64℃/300Pa)による精製を行い、茶褐色の油状BOD7.8884g(収率69%)4を得た。

【0038】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:1.125 (t, 3H, J=7.6 Hz, -CH2-CH3), 2.119(triple quartet, 2H, J=2.0 Hz,7.6 Hz, -CH2-CH3), 3.118-3.168(m, 2H, C三C-CH2- C三C), 3.878(t, 2H, -CH2-Br)
13C‐NMR(400 MHz, CD2CL2)δ:10.287(-CH2-), 12.564(-CH2-), 14.082(-CH3), 72.348(-C三C-), 75.425(-C三C-), 82.165(-C三C-), 82.742(-C三C-)
【0039】
次に、下記反応式に従い、2,5,8−ウンデカトリイン−1−オール(UDTOH)を合成した。DMF50mL中にCuI(8.38g,44mmol)、NaI(6.60g,44mmol)、K2CO3(4.56g,33mmol)を加え、スターラーで激しく攪拌した。得られた溶液中にBOD(4.07g,21.99mmol)4、プロパルギルアルコール(1.23g,22mmol)2を順次滴下し、アルゴン雰囲気下、40時間攪拌した。10%NH4Cl溶液200mlでクエンチ後、不溶性の物質をろ過し、ジエチルエーテルで不溶性物質を洗浄し、ろ液をエーテルにより3回抽出した。エーテル層を飽和食塩水で2回洗浄し、Na2SO4により脱水した後、濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲル吸着クロマトグラフィー(湿式,packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状,溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製し、茶褐色の油状UDTOH2.1460g(収率61%)5を得た。

【0040】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:1.121 (t, 3H, J=7.6 Hz, -CH2-CH3), 1.645-1.844(br, 1H, -OH), 2.174(triple quartet, 2H, J=2.0 Hz,7.6 Hz, -CH2-CH3), 3.138(quintet, 2H, J=2.0 Hz, C三C-CH2- C三C), 3.210(quintet, 2H, J=2.0 Hz, C三C-CH2- C三C), 4.262(t, 2H, -CH2-OH)
【0041】
次に、下記反応式に従い、ブロモ−2,5,8−ウンデカトリイン(BUDT)を合成した。丸底フラスコ(100mL)にCBr4(2.9847g,9mmol)入れ、ジクロロメタン10mLに溶解させたUDTOH(0.9613g,6mmol)6を加え、スターラーで攪拌した。その後、ジクロロメタン15mLに溶解させたPPh3(2.3606g,9mmol)を10℃以下で、攪拌しながら滴下した。滴下1時間後、メタノール5mLを滴下し、クエンチした。濃縮後、シリカゲル吸着クロマトグラフィー(乾式,packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状, 溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=5:1)によって高極性物質を取り除いた後、シリカゲル吸着クロマトグラフィー(湿式, packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状, 溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=9:1→5:1)によって精製し、茶褐色の油状BUDT0.7862g(収率59%)6を得た。

【0042】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:1.123 (t, 3H, J=7.6 Hz, -CH2-CH3), 2.175(triple quartet, 2H, J=2.4 Hz,7.6 Hz, -CH2-CH3), 3.135(quintet, 2H, J=2.0 Hz, C三C-CH2- C三C), 3.234(quintet, 2H, J=2.0 Hz, C三C-CH2- C三C), 3.907(t, 2H, -CH2-Br)
【0043】
次に、下記反応式に従い、ジメチル−2−プロパルギルマロネート(D2PM)を合成した。3口フラスコに乾燥メタノール(84mL,約84.1mmol)とナトリウム(1.93g,84.1mmol)を細かく徐々に入れスターラーで攪拌しナトリウムメチラートを生成させた後、マロン酸ジメチル(11.11g,84.1mmol)7、プロパルギルブロミド(12.5g,84.1mmol)8を順次滴下し、4時間加熱還流した。反応後、放冷、濃縮し濃縮物に蒸留水、飽和食塩水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル層を再度塩水で洗浄し、エーテル層をNa2SO4により脱水した後、濃縮した。濃縮物を蒸留による精製を行ったが、途中で結晶が析出(モノアルキル体とジアルキル体が混在)した。97〜112℃/25mmHgにて得られた5.39gはモノアルキル体:ジアルキル体=84:16であり、D2PMとして精製せずそのまま使用した。112℃/22mmHgにて得られた5.95gは、モノアルキル体:ジアルキル体=70:30であり、モノアルキル体の比率が高いので再結晶(エーテル:ヘキサン=1:1)によって結晶性のジアルキル体を取り除くことによりモノアルキル体4.17g(モノアルキル体:ジアルキル体=91:9)を精製し、茶褐色の油状D2PM9.56g(収率67%)9を得た。

【0044】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:2.028(t, 1H, J=2.6 Hz, -CH2-C三CH), 2.795(double doublet, 2H, J=2.6 Hz,7.6 Hz, , -CH2-C三CH), 3.618(t, 1H, J=7.6 Hz, C2-CH-CH2-C三CH), 3.777(s, 6H, -CO2-CH3)
【0045】
次に、下記反応式に従い、2−(プロプ−2−イニル)マロン酸(2PMA)を合成した。D2MP(9.56g,56.02mmol)9を少量のエタノールに溶解させ、100mLの水に溶解させた水酸化ナトリウム(6.56g,169mmol)水溶液も加え、1晩スターラーにより攪拌した。エタノールを濃縮した後、ジカルボン酸ナトリウム塩に12M HCl(16mL,200mmol)を加えた。中和熱がおさまったら酢酸エチルで3回(150mL×3)抽出し、Na2SO4により脱水した後、濃縮し、白い結晶2PMAを得た。

【0046】
次に、下記反応式に従い、2−ペンチン酸(2PA)を合成した。白い結晶2PMAが入ったナス型フラスコをオイルバスで、160〜170℃で1.5時間加熱し脱炭酸させ、CO2の発生がなくなるまで反応させた。放冷後、白い結晶2PAが析出した。

【0047】
次に、下記反応式に従い、得られた2PAのメチルエステル化、即ち、メチル4−ペンチル酸エステル(M4P)を合成した。2PAにメタノール(50mL,1eq)を入れ、ClCH2CH2Cl(150mL,3eq)、濃硫酸を一滴加え、83℃付近で8時間加熱還流した。冷却後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液にてpH8付近に調整し、溶媒を少量残し濃縮した。5%炭酸水素ナトリウム水溶液を100mL加え1度抽出した。その後、ジクロロメタン(100mL×2)で抽出し、有機層をNa2SO4により脱水し、濃縮した。濃縮物をシリカゲル吸着クロマトグラフィー(湿式,packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状, 溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=9:1)によって精製し、無色の油状M4P1.00g(収率16%)10を得た。

【0048】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:1.606(s, 1H, -CH2-C三CH), 2.004(triple doublet, 2H, J=2.4 Hz,17.2 Hz, , -CH2-C三CH), 2.551(t, 2H, J=7.6 Hz, -C-CH2-CH2-C三CH), 3.710(s, 3H, -CO2-CH3)
【0049】
次に、下記反応式に従い、メチル4,7,10,13−ヘキサデカテトライノエート(MHDTY)を合成した。DMF10mL中にCuI(1142.7mg,6mmol)、NaI(899.3mg,6mmol)、K2CO3(622.0mg,4.5mmol)を加え、スターラーで激しく攪拌した。その溶液中にM4P(297.9mg,2.66mmol)10、BUDT(669.3mg,3mmol)6を加え(DMF5mLで洗い)、アルゴン雰囲気下、24時間攪拌した。10%NH4Cl溶液20mLでクエンチ後、不溶性の物質をろ過しジエチルエーテルにより不溶性物質を洗浄した。ろ液をエーテルで3回抽出し、エーテル層を飽和食塩水で2回洗浄し、Na2SO4により脱水した後、濃縮した。シリカゲル吸着クロマトグラフィー(乾式,packing→Silica Gel60:63〜210μm 球状, 溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により高極性物質を取り除いた後、中圧液体クロマトグラフィー(packing→Silica Gel60:40〜50μm 球状,UV→254μm, 流速→7.5mL/min,pressure→0.1Mpa,溶出溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製し、黄色の油状MHDTY93.7mg(収率14%)11を得た。

【0050】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ: 1.119 (t, 3H, J=7.6 Hz, -CH2-CH3), 1.516-1.734(br, 1H, -OH), 2.171(triple quartet, 2H, J=2.0 Hz,7.6 Hz, -CH2-CH3), 2.443-2.553(m, 4H, -C三C-CH2-CH2-COOCH3), 3.094-3.164 (m, 6H, C三C-CH2-C三C×3), 3.698 (s, 3H, -COOCH3)
13C‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:9.710(-C三C -CH2- C三C-), 9.734(-C三C -CH2- C三C-), 9.800(-C三C -CH2- C三C-), 12.349(-CH2-CH3), 13.826 (-CH2-CH3), 14.618(-C三C -CH2- CH2-), 33.311(-C三C -CH2- CH2-), 51.732(-COO-CH3), 72.942(-C三C-), 73.981(-C三C-), 74.245(-C三C-), 74.575(-C三C-), 74.707(-C三C-), 75.128(-C三C-), 78.617(-C三C-), 82.099 (-C三C-), 172.274(-COO-CH3)
【0051】
次に、下記反応式に従い、HDTAメチルエステル(MHDTE)を合成した。Lindlar試薬200mg、乾燥ベンゼン6mLを入れ、50mLの三角フラスコにセットし、H2で飽和し、Lindlar試薬にH2を吸収させた。H2吸収後、三角フラスコ内にMHDTY溶液(MHDTY:92.7mg,0.3645mmol11、乾燥ベンゼン10mL、キノリン0.2mL)を加え、再びH2で飽和させ、1時間スターラーで攪拌し4つの三重結合にH2を付加させた。Lindlar試薬をろ過し、ベンゼンで洗い、2MHClにより2回(15mL×2)抽出し、HCl層をエーテルで1回抽出した。有機層をNa2SO4により脱水した後、濃縮した。TLCプレート(TLCplate→シリカゲルTLCプレート(Silica Gel60 :F254,0.5mm)×3, 展開溶媒→ヘキサン:酢酸エチル=3:1,UV,ヨウ素にて分析)により精製し、黄色の油状MHDTE7.3mg(収率8%)12を得た。

【0052】
1H‐NMR(400 MHz, CD2Cl2)δ:0.976 (t, 3H, J=7.6 Hz, -CH2-CH3), 2.024-2.123(m, 2H, -CH2-COOH), 2.333-2.440(m, 4H, -C=C-CH2-CH2- or -C=C-CH2-CH3), 2.786-2.869 (m, 6H, C=C-CH2- C=C×3), 3.673 (s, 3H, -COOCH3), 5.273-5.452(m, 8H, -CH=CH-)
【0053】
反応させた天然物由来のHDTAメチルエステルは1H‐NMR、13C‐NMRスペクトルを測定し、合成したHDTAメチルエステル(MHDTE)の1H‐NMRスペクトルデータと比較し、単離したHDTAの二重結合がオールシス体であることが確認された。
【0054】
(2)M−RHN3−2−2の各種機器分析による構造解析
得られた結果を下記する。
1H‐NMR (400MHz, CDCl3)δ:0.97 (t, 3H, J = 7.6 Hz, -CH2CH3), 1.42 (quint., 2H, J = 7.6 Hz, 4-H), 1.61-1.71 (m, 2H, 3-H), 2.03-2.12 (m, 4H, -CH=CH-CH2- x 2), 2.35 (t, 2H, J = 7.6 Hz, -CH2-COOH), 2.77-2.87 (m, 6H, -CH=CH-CH2-CH=CH- x 3), 5.28-5.43 (m, 8H, -CH=CH- x 4), 6.65-7.59 (br, 1H, COOH).
13C‐NMR (75MHz, CDCl3)δ:14.4 (-CH3), 20.6 (-CH2-CH3), 24.4 (-CH2-CH2COOH), 25.6 (CH=CH-CH2-CH=CH), 25.7 (CH=CH-CH2-CH=CH), 25.7 (CH=CH-CH2-CH=CH), 26.9 (CH=CH-CH2-CH2-), 29.0 (CH=CH-CH2-CH2-), 33.8 (-CH2-COOH), 127.0 (-CH=CH-), 127.8 (-CH=CH-), 128.0 (-CH=CH-), 128.2 (-CH=CH-), 128.2 (-CH=CH-), 128.5 (-CH=CH-), 129.5(-CH=CH-), 132.0 (-CH=CH-), 178.8 (COOH).
EIMS m/z: 276 (M+, base), 247, 220, 207, 180, 161, 147, 135, 119, 108, 93, 79, 67, 55, 41.
HRMS m/z (M+): Calcd. for C18H28O2: 276.2089, Found: 276.2082.
【0055】
以上の結果より、M−RHN3−2−2は、不飽和結合4個、炭素18の不飽和脂肪酸オクタデカ−6,9,12,15−テトラデカトリエン酸(ODTA)と決定した。なお、この物質は前記したように、Kakisawaらにより1988年オキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)のアレロパシー物質として既に単離が報告されている。
【0056】
(3)M−RHN3−2−3の各種機器分析による構造解析
得られた結果を下記する。
1H‐NMR (400MHz, CDCl3)δ:0.98 (t, 3H, J = 7.6 Hz , -CH2CH3), 1.27-1.37 (m, 8H , _CH2- x 4), 1.59-1.67 (m, 2H, -CH2-CH2-COOH), 2.01-2.11 (m , 4H , CH=CH-CH2- x 2), 2.35 (t, 2H, J = 7.2 Hz, -CH2-COOH), 2.77-2.85 (m, 4H, CH=CH-CH2-CH=CH x 2), 5.28-5.43 (m, 6H, -CH=CH- x 3), 7.26 (br. s, 1H, -COOH).
13C‐NMR (100 MHz, CDCl3): 14.3 (-CH3), 20.6 (-CH2-CH3), 24.8 (CH=CH-CH2-CH=CH), 25.6 (CH=CH-CH2-CH=CH), 27.2 (-CH2-CH=CH), 29.1 (-CH2-CH2COOH), 29.1 (-CH2-), 29.2 (-CH2-), 29.6 (-CH2-), 29.7 (-CH2-), 34.0 (-CH2-COOH), 127.0 (-CH=CH-), 127.6 (-CH=CH-), 128.1(-CH=CH-), 128.2 (-CH=CH-), 130.1 (-CH=CH-), 131.9 (-CH=CH-), 180.6 (COOH).
EIMS m/z: 278 (M+, base), 228, 222, 108, 95, 79, 75, 67, 55.
HRMS m/z (M+): Calcd. for C18H30O2: 278.2246, Found: 278.2229.
【0057】
以上の結果より、M−RHN3−2−4は、不飽和結合3個、炭素18の不飽和脂肪酸オクタデカ−9,12,15−トリエン酸(α−リノレン酸)と決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオサ類の抽出物を有効成分とすることを特徴とする赤潮プランクトン防除剤。
【請求項2】
前記アオサ類がリボンアオサまたはアナアオサである請求項1記載の赤潮プランクトン防除剤。
【請求項3】
前記抽出物が不飽和度2以上、炭素数16以上の不飽和脂肪酸を含有する請求項1または2記載の赤潮プランクトン防除剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸がn−3系である請求項3記載の赤潮プランクトン防除剤。
【請求項5】
前記不飽和脂肪酸が、α−リノレン酸、オクタデカ−6Z,9Z,12Z,15Z−テトラエン酸およびヘキサデカ−4Z,7Z,10Z,13Z−テトラエン酸ならびにそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項4記載の赤潮プランクトン防除剤。
【請求項6】
請求項1〜5記載の赤潮プランクトン防除剤を使用することを特徴とする赤潮プランクトンの駆除方法。

【公開番号】特開2007−145737(P2007−145737A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340061(P2005−340061)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年5月28日 第8回マリンバイオテクノロジー学会大会大会実行委員会発行の「第8回マリンバイオテクノロジー学会大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】