説明

赤色シードル及びその製造方法

【課題】 ロゼタイプのような淡いピンク色のシードルではなく、赤色乃至濃赤色をした、真っ赤なタイプのシードルとその製造方法とを提供することを目的とする。
【解決手段】 赤色品種リンゴの破砕物に、その破砕前後のいずれかの際に酸化防止剤を添加した後、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁を添加すると共に、この添加前後のいずれかの際に酸化防止剤を加え、次いで静置した後、発酵させることを特徴とする赤色シードルの製造方法、並びに前記方法により得られた赤色シードルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色シードル及びその製造方法に関し、ロゼタイプのような淡いピンク色のシードルではなく、赤色乃至濃赤色をした、真っ赤なタイプのシードルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は既にリンゴ果実酒の製造方法を提案しており(例えば、特許文献1参照)、また色調整用保存リンゴジュースの製造方法を提案している(例えば、特許文献2、3参照)。
しかしながら、これらはいずれも淡いピンク色、即ちロゼタイプのリンゴ果実酒(シードル)を製造するための技術であって、濃い赤色のシードルを製造することはできなかった。このため、濃い赤色のシードルが存在せず、商品のバラエティが乏しいものとなっており、改善が要望されていた。
【0003】
【特許文献1】特開平3−251165号公報
【特許文献2】特開平3−251166号公報
【特許文献3】特開平3−251167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解消し、ロゼタイプのような淡いピンク色のシードルではなく、赤色乃至濃赤色をした、真っ赤なタイプのシードルとその製造方法とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
通常のリンゴの果皮は緑色や黄色であるが、紅玉種やスターキング・デリシャス(Starking Delicious)種などのように果皮が赤い品種も知られている。しかしながら、これら果皮が赤い品種のリンゴの果肉は白く、得られるリンゴジュースの色調は白色にしかならなかった。
前記した如き従来技術(特許文献1〜3)に示されているような特別な方法を用いて果皮の色素をできるだけ抽出しても、搾汁してできる果汁の色調はピンク色であり、その果汁から発酵させたシードルの色調もピンク色であり、濃い赤色の果汁及びシードルを得ることはできなかった。
本発明者らは、研究を重ねる過程で、赤色品種リンゴに着目した。赤色品種リンゴとは、果皮及び果肉に赤色色素を所定以上に多く含有していて、果皮のみでなく果肉も赤いリンゴ品種である。
赤色品種リンゴは一般にはほとんど利用されていないが、果皮だけでなく果肉も赤色であるため、濃赤色の果汁やシードルを製造することができる可能性がある。しかしながら、この赤色品種リンゴは、1個あたりの重量が小さい上に搾汁率が低く、少量の果汁しか得られないため効率が悪く、コストがかかり、実際的ではなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた。その結果、赤色品種リンゴの破砕物と、赤色品種リンゴ以外のリンゴ果実を搾汁した果汁(醸し用果汁)とを混合し、亜硫酸を添加して漬け込むことによって、驚くべきことに、赤色品種リンゴの持つ色素を充分に抽出することができ、その後搾汁して濃い赤色の果汁を得ることができることが分かった。このようにして得られた濃赤色の果汁を発酵させることにより、色調が濃い赤色を有し、しかも他のシードルよりもポリフェノールを高度に含有する赤色シードルが得られることが分かった。
【0006】
即ち、本発明者らは上記従来の問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、果皮のみでなく果肉も赤いリンゴ品種である赤色品種リンゴを用い、この赤色品種リンゴの破砕物に、その破砕前後のいずれかの際に亜硫酸を添加した後、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁を添加すると共に、この添加前後のいずれかの際に亜硫酸とペクチン分解酵素を加え、静置して漬け込むことにより、赤色色素を充分に抽出して、濃い赤色のリンゴ果汁を得ることができ、さらにこの濃い赤色のリンゴ果汁を発酵させることにより、赤色乃至濃赤色をした、真っ赤なタイプのシードルが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、請求項1に係る本発明は、赤色品種リンゴの破砕物に、その破砕前後のいずれかの際に酸化防止剤を添加した後、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁を添加すると共に、この添加前後のいずれかの際に酸化防止剤とペクチン分解酵素を加え、次いで静置し、搾汁した後、発酵させることを特徴とする赤色シードルの製造方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、赤色品種リンゴが、ジェネバ(Geneva)種のリンゴである請求項1記載の方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、酸化防止剤が、亜硫酸である請求項1記載の方法を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により得られた赤色シードルを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロゼタイプのような淡いピンク色のシードルではなく、赤色乃至濃赤色をした、真っ赤なタイプの赤色シードルが得られる。
また、この赤色シードルは、赤色色素に由来するポリフェノールが高度に含有されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、赤色シードルの製造方法に関し、赤色品種リンゴの破砕物に、その破砕前後のいずれかの際に亜流酸を添加した後、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁を添加すると共に、この添加前後のいずれかの際に亜流酸を加え、次いで静置し、搾汁した後、発酵させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1に係る本発明においては、赤色品種リンゴを用いる。赤色品種リンゴとは、果皮及び果肉に赤色色素を所定以上に多く含有していて、果皮のみでなく果肉も赤いリンゴ品種である。具体的には、アダムス・クラブ(Adamus Crab)種、エリー・パープル・クラブ(Eley Purple Crab)種、エレイー(Eleyi)種、ジョージアス(Georgeous)種、ジェネバ(Geneva)種、ジャイ・ダーリン(Jay Darling)種、マカミック・クラブ(Makamic Crab)種、マルス・ロブスタ・ベイル(Malse Robusta BAIL)種、マルス・ロブスタ・リード(Malse Robusta READ)種、ピンク・パール(Pink Pearl)種、プロフュージョン(Profusion)種、パープル・ウェイブ(Purple Wave)種、レッド・フィールド(Red Field)種、レッド・フック(Red Hook)種、ローヤルティ(Royalty)種、ウィンター・タウベン(Winter Touben)種、リンキ青リ試?種を挙げることができ、これらの1種を単独で、或いは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0011】
赤色品種リンゴとしては、請求項2に記載したように、これらの中でも特にジェネバ(Geneva)種のリンゴを用いることが、赤色色素量、1個当り重量、加工適性、リンゴの収穫の容易さなどの点を総合すると最も好ましい。
【0012】
以下、請求項1に係る本発明について、その1例を示す図1のフロー図に基づいて説明する。
請求項1に係る本発明においては、この赤色品種リンゴを選果・洗浄した後、破砕する。破砕は、ミキサーなどを用いて行えばよく、特に制限はない。なお、破砕するにあたっては、予めリンゴの芯を除去しておいてもよい。
【0013】
この赤色品種リンゴの破砕物(以下、果醪と称することがある。)に、その破砕前後のいずれかの際(つまり破砕前、破砕中、破砕後のいずれかの際)に酸化防止剤を添加する。従って、酸化防止剤を加えてから破砕してもよいし、酸化防止剤を加えながら赤色品種リンゴを破砕してもよいし、或いは赤色品種リンゴを破砕した後に酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤、中でも請求項3に記載したように好ましくは亜硫酸の添加により、赤色品種リンゴに含まれる赤色色素を抽出する。
なお、用いる酸化防止剤の種類としては特に限定されないが、例えばメタ重亜硫酸カリウム(以下、メタカリと称することがある。)、無水亜硫酸、ビタミンCが挙げられ、特に亜硫酸(メタ重亜硫酸カリウム、無水亜硫酸)を使用することが好ましい。
酸化防止剤の添加量は、一般に果実重量当り約10〜350ppm程度であり、好ましくは約100〜200ppm程度である。
酸化防止剤の添加量が少な過ぎると、赤色の発現が悪くなるため好ましくない。一方、酸化防止剤の添加量が多過ぎると、酵母の活性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0014】
次いで、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴ果実を搾汁した果汁(醸し用果汁)を添加する。
請求項1に係る本発明においては、このように赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁(醸し用果汁)を用いるが、必要に応じて赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの破砕物を用いることもできる。

ここでの赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴとしては、文字通り赤色品種リンゴ以外の品種リンゴであればよく、特に制限はない。一般に用いられているもの、例えばふじ種、スターキング・デリシャス(Starking Delicious)種などを用いればよい。
赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁(醸し用果汁)の添加量、換言すると赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁(醸し用果汁)による希釈倍率は、用いた赤色品種リンゴの種類や、希望する発酵時の発色色度などによって異なり、一義的に決定することは困難であるが、通常、5倍以下、好ましくは3倍以下である。
なお、赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの種類等にもより異なるが、醸し用果汁による希釈倍率を3.0〜3.5倍とすることで、濃い赤色のシードルを最も効率的に製造できる。
【0015】
請求項1に係る本発明においては、この赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁(醸し用果汁)の添加前後のいずれかの際に酸化防止剤を加え、次いで静置して赤色色素を抽出する(図1では、この静置して赤色色素を抽出する工程を「醸し」工程と表示した。)。
このように赤色品種リンゴの破砕物と、赤色品種リンゴ以外のリンゴ果実を搾汁した果汁(醸し用果汁)とを混合し、酸化防止剤を添加し静置する(漬け込む)ことによって赤色品種リンゴの持つ色素(果皮及び果肉に含まれている赤色色素)を充分に抽出することができる。酸化防止剤の添加は、赤色品種リンゴの破砕物と赤色品種リンゴ以外のリンゴ果実を搾汁した果汁(醸し用果汁)とを混合する前にこの醸し用果汁に対して行ってもよいし、或いは混合した後にその混合物に対して行ってもよい。
このときの酸化防止剤の種類は、上記したと同様である。
また、酸化防止剤の添加量は、一般に醸し用果汁の重量当り約10〜350ppm程度であり、好ましくは約100〜200ppm程度である。
酸化防止剤の添加量が少な過ぎると、赤色の発現が悪くなるため好ましくない。一方、酸化防止剤の添加量が多過ぎると、酵母の活性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
なお、前記の醸し用果汁を添加する際に、これに色素抽出量を増加させる為にペクチン分解酵素を添加することができる。
静置して赤色色素を抽出する(漬け込む)ときの条件は特に制限されないが、通常、0〜20℃程度の温度にて、10〜24時間、好ましくは0〜10℃前後の温度にて15〜20時間程度である。
【0016】
このように静置して充分に赤色色素を抽出した後、搾汁し、果汁を得る。
このようにして得られた果汁に、ペクチン分解酵素を添加して酵素処理する。酵素処理は、常法により行えばよい。このペクチン分解酵素の添加は、前記した醸し用果汁への亜硫酸の添加時にも行うことができる。
また、これまでの工程のいずれかの時点において、必要に応じて、リンゴ酸、酒石酸などの酸を添加して、酸度とpHの調整を行うことができる。
また、搾汁した果醪の搾り粕を用いて、いわゆる2番搾りを行って、赤色シードルを製造することもできる。
【0017】
次いで酵母を添加して発酵させる。酵母としては、一般にサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が用いられる。
発酵は常法により行えばよい。
発酵が充分に行われたところで、発酵を停止させ、目的とする赤色シードルを得ることができる。
このようにして得られた赤色シードルを提供するのが、請求項4に係る本発明である。
即ち、請求項4に係る本発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により得られた赤色シードルである。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0019】
実験例1(赤色品種リンゴの果汁成分分析)
表1に示す各種赤色品種リンゴを洗浄後、果実重量当り約200ppmの亜硫酸(メタカリ)を加えながらミキサー破砕し、得られた破砕物(果醪)に、ペクチン分解酵素を50ppmになるように加え、10℃で一晩(16時間)放置し、赤色色素を抽出した。これを搾汁し、清澄化処理して、清澄果汁を得た。
【0020】
得られた清澄果汁について、赤色色素量、アントシアニン(cyanidin-3-galactoside)量を測定した。清澄果汁中の赤色色素量は、C18Sep-pakカートリッジを用いて吸着させ、果汁と同量の1%塩酸−メタノール溶液で溶出、希釈し、色度(Abs.520nm)を測定した。結果を図2に示す。
また、表1に赤色品種リンゴの1個当り重量(g)、搾汁率(%)、単位重量(g)当りの赤色色素量、果汁5ml当りの平均赤色色素量及び総ポリフェノール量(CHA μg/ml)を示す。総ポリフェノール量の算出には、クロロゲン酸を標準に用いた。
図2及び表1には、比較のために、従来のスターキング・デリシャス(Starking Delicious)種を用いた結果を併せて示した。
なお、清澄果汁中の赤色色素量は、発酵によりその色素の約5割が発色することが分かっている。つまり、清澄果汁中の赤色色素量を測定することで、発酵後の赤色の発色量を予測することができる。従って、赤色色素を多く抽出した果汁をつくることができれば、必然的に色の濃い赤色シードルをつくることができる。
【0021】
その結果、表1及び図2に示すように、赤色品種リンゴは個体重量が小さいにもかかわらず、総ポリフェノール及びアントシアニンを多く含むことが分かった。リンゴの収穫の容易さ、1個あたりの赤色色素量、加工適性などの点から、ジェネバ(Geneva)種のリンゴが最も有効であることが分かった。
【0022】
【表1】

【0023】
実験例2(ジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)と醸し用果汁の比率の検討)
ジェネバ(Geneva)種のリンゴを洗浄後、果実重量当り約150ppmの亜硫酸(メタカリ)を加えながらミキサー破砕し、ジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)を得た。
得られたジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)に、亜硫酸(メタカリ)を果実重量当り約150ppm及びペクチン分解酵素を果実重量当り約20ppm加えた醸し用果汁(ふじ種の果汁)を、ジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)の重量当り1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍量添加し、10℃で一晩(20時間)静置し、赤色色素を抽出した。
次いで、これを搾汁し、清澄化処理して、清澄果汁と搾り粕を得た。
得られた清澄果汁については、実験例1と同様にして赤色色素量を測定した。
この清澄果汁に、酵母(サッカロミセス・セレビシエ)を菌濃度が1×10個/mlとなるように接種し、8℃で発酵を行った。発酵終了後、得られた果実酒(シードル)について、波長520nmで赤色の吸光度を測定した。
結果を表2に示す。
【0024】
表2に示されるように、醸し果汁を添加しない場合は、発酵液は濃い赤色である。しかし、発酵液量が少なく量産には適していない。一方、醸し果汁が多すぎると、発酵終了後の果実酒の赤色発色色度が低いため、濃い赤色になっていない。見た目にも濃い赤色を示し(Abs.520nmで0.300以上)、量的に十分な発酵果実酒が効率的に得られるのは、醸し果汁添加量が4倍以下であると考えられる。
【0025】
このように、その年の赤色品種リンゴの着色度合いにもよるが、希釈倍率を4倍以下とすることで、濃い赤色のシードルを効率的に製造できることが判明した。
【0026】
【表2】


*1:Geneva種のみで製造したときと比較した製造数量の増加倍率
【0027】
実験例3(搾り粕による2番搾りの検討)
実験例2で得られた、各種希釈倍率の搾り粕の色素残存量を測定し、各種希釈倍率での抽出効率の確認と搾り粕からの赤色果汁(赤色シードル)製造の可能性を検討した。
即ち、実験例2で得られた、各種希釈倍率の搾り粕100gに対して、2倍量の醸し用果汁200mlを添加し、10℃で一晩(20時間)静置し、赤色色素を抽出した。
次いで、これを搾汁し、清澄化処理して、搾り粕からの清澄果汁を得た。
得られた搾り粕からの清澄果汁について、実験例1と同様にして赤色色素量を測定した。
結果を図3に示す。
【0028】
その結果、図3より、希釈倍率3.0倍以下のものについて、搾り粕を回収した後、醸し用果汁に漬け込み2番搾りすることで、赤色色素がAbs.520nmで0.6以上含む果汁が得られたことが分かる。
これらを発酵させることで、色度Abs.520nmで0.3以上の赤色シードルが製造できた。このように、一度醸し果汁を添加して赤色色素を抽出した後の搾り粕に、再度醸し果汁を添加することで赤色色素の抽出が可能であることが示され、この方法は生産性の向上に役立つと思われる。
【0029】
実験例4
ジェネバ(Geneva)種のリンゴ3.87トンを洗浄後、果実重量当り約150ppmの亜硫酸(メタカリ)を加えながらミキサー破砕し、ジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)を得た。
得られた破砕物(果醪)に、亜硫酸(メタカリ)を果実重量当り約150ppm及びペクチン分解酵素を果実重量当り約20ppm加えた醸し用果汁(ふじ種の果汁)を、ジェネバ(Geneva)種のリンゴの破砕物(果醪)の重量当り3.5倍量添加し、10℃で一晩(16時間)静置し、赤色色素を抽出した。
次いで、これを搾汁し、16.563KLの果汁を得た。得られた果汁に、ペクチン分解酵素を果汁重量当り約50ppm添加し、25℃で一晩(16時間)静置することで、清澄果汁を得た。
得られた清澄果汁については、実験例1と同様にして赤色色素量を測定した。
得られた清澄果汁に、酵母(サッカロミセス・セレビシエ)を菌濃度が1×10個/mlとなるように接種し、8℃で発酵を行った。
発酵終了後、得られた果実酒(シードル)について、波長520nmで赤色の吸光度を測定した。
また、比較のために、ジェネバ(Geneva)種のリンゴを従来のスターキング・デリシャス(Starking Delicious)種のリンゴに代えたことと醸し用果汁を添加したこと以外は、上記と同様にして行った。
これらの結果を表3に示す。
【0030】
その結果、表3に示したように、従来のスターキング・デリシャス(Starking Delicious)種のリンゴを用いて製造したシードルに比べ、ジェネバ(Geneva)種のリンゴを用いて製造したシードルは、発色した色素量が約1.79倍となり、色度Abs.520nmで0.467の濃い赤色シードルが得られた。
【0031】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】請求項1に係る本発明の1例を示すフロー図である。
【図2】実験例1で得られた各種清澄果汁についての赤色色素量とアントシアニン(cyanidin-3-galactoside)量の測定結果を示すグラフである。
【図3】実験例3で得られた、各種希釈倍率の搾り粕果汁の赤色色素抽出量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色品種リンゴの破砕物に、その破砕前後のいずれかの際に酸化防止剤を添加した後、これに赤色品種リンゴ以外の品種のリンゴの果汁を添加すると共に、この添加前後のいずれかの際に酸化防止剤を加え、次いで静置し、搾汁した後、発酵させることを特徴とする赤色シードルの製造方法。
【請求項2】
赤色品種リンゴが、ジェネバ(Geneva)種のリンゴである請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸化防止剤が、亜硫酸である請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により得られた赤色シードル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−197845(P2006−197845A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12536(P2005−12536)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000110918)ニッカウヰスキー株式会社 (21)
【Fターム(参考)】