説明

走行レールの連結要素及び走行レールシステム

【課題】本発明は、走行レール(2、2’)を受領する縣吊軌道の走行レールの連結要素と、空胴部領域(H、H’)からの抜き出しに抵抗して走行レール(2、2’)を固定する固定具と、複数の走行レール(2、2’)を含んだ走行レールシステムとに関する。
【解決手段】走行レール(2、2’)は連結要素(1、11)で連結できる。本発明は走行レールシステムの走行レールの同時的で確実な連結を簡単迅速に、工具を用いないで提供する。連結要素の固定具は少なくとも1体の爪部(8、12、15)を有している。爪部は、空胴部領域(H)内への第1走行レール(2)の挿入方向(E)に対して斜めに弛緩状態で突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前置部分に記載した縣吊軌道の走行レール用連結要素に関する。また、請求項17の前置部分に記載した走行レールシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
このような連結要素はDE4317498A1において紹介されている。その縣吊軌道用の走行レールは基本的にU形状であり、その脚部端は対面状に曲げられており、その中央部を走行面としている。2本の走行レールを端部同士で連結するため、走行レールと略同一の断面形状を有し、両走行レールを包囲する連結具が使用される。連結された走行レールの外れ、または引き離れに対抗する固定連結具が提供される。この連結具システムでは、走行レールの端部付近にボアホールが提供されており、そのボアホールが、同様にボアホールを有する連結具のボアホールと整合される。その後に、それら整合状態のボアホールには機械ネジが螺合され、連結状態となっている走行レール同士のズレや抜落ちが防止される。実際、この種の連結は確実な連結を提供するが、連結構造は複雑である。すなわち、走行レールのボアホールと連結具のボアホールとは連結の都度整合されなければならず、機械ネジが特殊工具によって締め付けられなければならない。機械ネジ自体は連結具の製造時に予めボアホールに嵌合させておくことも可能ではあろうが、連結具の運搬の際に、突出したネジへの衝撃によってネジが落下する可能性や、ネジあるいはボアホールのネジ山が破損する可能性がある。また、別途、工具がネジの締め付けのために必要である。
【0003】
同様に、予めC型レール上に適当に螺合され、ロックナットで固定された状態で機械ネジを連結具に取り付けておくこともできる。すなわち、この場合には、レールは連結具のネジが係合するボアホールを有していない。このC型レールは締め付け処理されているだけである。この連結システムの弱点は、もしネジが固く締め付けられ過ぎるとC型レールの脚部は内側に歪曲し、レール上を走行する車両の走行空間が狭くなり過ぎて車両が走行不能になることである。またネジが緩いと運行中に連結が緩む可能性が生じる。また、連結のためには特殊工具が必要である。
【0004】
別途に締め付け工具を必要としないタイプの走行レールの連結のためにWO2007/068897A1は別形態の連結具および別形態の走行レールによるシステムを開示する。この走行レールの端部には、端から多少離れた位置で、凹部によって非連続的に形成されている隆起部が提供されている。走行レールは対応する断面形状を有した連結具内に押し込まれる。連結具には複数のスロットが提供されている。これらスロットはその凹部に対応しており、プラグ要素の2つの連結ブラケットがそれらスロットを介して連結状態を提供する。このプラグ要素はバネブラケットを有している。このバネブラケットは連結具の形状に合わせた形状を有しており、連結具の外側に設置される。プラグ要素が連結具に完全に挿入され、凹部を介して走行レール内に差し込まれると、プラグ要素のバネブラケットは連結具の外側にスナップ式に嵌合し、プラグ要素の脱出が防止される。これで工具を必要としない走行レールシステムが提供されるが、弱点もある。すなわち、連結具に加えて、連結具の形状に可能な限り正確に合致されなければならない別プラグ要素が必要となることである。さらに、走行レールの凹部は、走行レール構築時に連結具のスロットに正確に嵌合するように位置調整が必要であり、プラグ要素が連結具のスロットと同様に走行レールの凹部も通って差し込むことができなければならない。
【0005】
WO2005/089691は縣吊レール軌道のレール間の圧締連結器に関する。この目的を達成するため、2本のレールの端部には、2本のレールが一列整列状態であるときに互いに連結する第1連結部材または第2連結部材が提供されている。それぞれの連結部材はヒンジ式圧締部材を有しており、第1連結部材は、第2連結部材の圧締部材から突起するピンと係合するように移動できるベベル形状の端部を備えた圧締ボルト部材を有している。この圧締ボルト部材は圧締部材の凹部と係合するように設計されている。これら両方の圧締部材は圧締ボルト部材のシフトによって起動されるが、不都合である。なぜならこのように2本のレールの安定的、確実および着脱可能な連結は、複雑であって高価であり、しかも作業が面倒な圧締連結器によってのみ可能となるからである。
【0006】
DE2741096A1はレールシステムに関する。特に乗客運搬用の2軌道型縣吊レール車両のためのレールシステムに関する。この車両は本質的には箱型軌道キャリアで成る。このキャリアは、キャリア内で作動する走行ギヤの荷重支持輪またはガイドローラの軌道の縦方向に伸縮継手を備えている。この軌道キャリアには、走行ギヤをキャリアに連結している縣吊装置の通路としてスロットが提供されている。このシステムを最も単純構造で小型化する目的において、軌道キャリア間に提供された伸縮継手を架橋するため(この架橋は自動的および継続的にキャリアの長さの変動を補整)、これら2つの軌道キャリア間の伸縮継手は、荷重支持輪またはガイドローラの軌道領域で架橋される。この架橋は三角形の間座により提供される。この間座はそれぞれの軌道に挿入され、その傾斜面は、軌道キャリア上に形成されている対応する傾斜面にバネ作用によって押し付けられる。
【0007】
DE3343075C2は縣吊レール軌道に関する。特に、縣吊取り付け手段で縣吊可能な走行レールと、縣吊取り付け手段を保持する長形中空体と長形スロットで成る車両とで構成された縣吊型モノレール軌道に関する。この縣吊取り付け手段は挿入ポイントを備えた金属ブラケットを含んでおり、ブラケット面から横方向に突出し、両方とも走行レールとして使用されるT形状の長形中空体内で構成される隣接挿入管も備えている。これら挿入管は走行レールのT型シャフト末端側の長形スロットの側部に設置されたウェブの背後に係合する。カバー側にすでに取り付けられている縣吊取り付け手段上での走行レールの構築は、縣吊取り付け手段の挿入ポイントを、走行レールの長形スロット内へ挿入し、走行レールをさらに上方に押圧することによってのみ実現される。このT型シャフトの2側面は外側に傾斜しており、挿入管の外面を越えてスライドし、両方ともスナップ式に再結合させることが可能であり、ウェブを挿入管の背後で係合させることができる。挿入ポイントを走行レールの長形スロットから再び抜き取ることは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、前述の弱点を克服した連結要素または走行レールシステムを提供することである。特に、走行レール同士の確実な連結を提供し、簡単迅速に作業させ、特殊工具を必要としない連結要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1の特徴を備えた連結要素と、請求項17の特徴を備えた走行レールシステムとの提供によりこの目的を達成する。本発明の利点と細部の改良点および実施態様は従属クレームにおいて記載されている。
【0010】
本発明によれば、前述の連結要素の固定装置は、第1走行レールの挿入方向に対して斜めに弛緩状態で空胴部内に突出するバネ弾性的な第1爪部(“爪形状部”)を有している。好適にはこの構造によって、追加の部品あるいは工具を利用せずに連結要素での走行レールの確実な連結が提供される。なぜなら、この連結は連結要素自身で提供されるからである。従って、走行レールシステムの迅速で簡単な構築も同時に提供される。
【0011】
1好適実施形態により、この確実な連結は保証される。すなわち、その少なくとも1個の爪部は走行レールが挿入されると、弛緩状態で走行レールによって空胴部から外部方向に押圧され、第1走行レールが引き抜かれるとき順応的に走行レールに食込むように設計されている。この食込み作用はレール引き抜き時に発生する。すなわち、爪部は押し込まれた走行レール上に順応的に提供され、引き抜き時にレールが爪部の傾斜姿勢に対抗して引っ張られると食込み現象を発生させる。走行レールに作用する引張力が強力であればあるほど、爪部の走行レールへの食込み力は強力になり、食込み程度は大きくなる。しかしながら、一定の引張力を超えると(臨界引張力)、走行レールは連結要素から引き抜き可能になる。この臨界引張力は、通常の使用においては走行レールの引き抜きが不可能である程度に設定される。
【0012】
本発明の1好適実施態様では、爪部は、斜めに空胴部内に突出するバネ弾性タブを有している。このバネ弾性タブは、走行レールの挿入時に、爪部を空胴部から押し出させるものであり、挿入された走行レールに対して作用するバネ応力を受ける。
【0013】
連結要素と走行レールとの間の連結を確実なものとするため、空胴部内に突出する爪部の前端を走行レールへの食込み手段として作用するように構成できる。特定の好適実施態様では、爪部はカットエッジ(刃型)またはカットポイント(尖頭型)の形態で形成できる。走行レール引き抜き中の、走行レール内への食込み手段の食込み機能を確実に改善するため、食込み手段は空胴部に走行レールを押し込む方向に対して斜めに提供される。
【0014】
2本の走行レールを簡単および迅速に連結するため、本発明の1好適実施態様においては第1爪部に対応する第2のバネ弾性爪部が提供される。この爪部は第2走行レールの挿入方向に対して斜めに空胴部内に突出する。この態様は、特に2本の走行レールが反対挿入方向から押し込まれるような連結要素の場合に好適である。
【0015】
挿入を容易にすることで走行レールの組み立てを容易にするため、好適にはバネ弾性である第1挿入制限ブラケットを連結要素に提供できる。この挿入制限ブラケットは、連結要素上に第1走行レール用に提供された空胴部内への挿入方向にて第1走行レールの挿入を制限するように設計されており、第2走行レールのために提供された他方の空胴内に突出する。好適には、この挿入制限ブラケットは第1走行レールの挿入方向とは直角である平面に存在するストッパを有することができる。
【0016】
第2走行レールが挿入されると、その第2走行レールによって第2走行レール用の空胴部から押圧されるように、好適には第1挿入制限ブラケットは弛緩状態で斜めに第2走行レール用の空胴部内に突出することができる。特に、挿入方向が互いに反対である実施形態では、バネ弾性である第2挿入制限ブラケットは、その挿入方向にて、連結要素上の空胴部内への第2走行レールの挿入を制限するために提供される。このブラケットは弛緩状態にて第1走行レールのために提供されている空胴部内に斜めに突出し、第1走行レールがその空胴部内に挿入されると第1走行レールによって空胴部から押出されるよう設計される。好適には、挿入制限ブラケットは、他方の走行レールのための空胴部領域に、ストッパの対象である走行レールの挿入方向に対して斜めに突出する。特に、互いに反対方向から挿入される2本の走行レールのための連結要素においては、対象走行レールの空胴部領域内への挿入時に、最初に挿入される走行レールが、内部に設置されている挿入制限ブラケットを空胴部領域から外側に押圧し、他方の挿入制限ブラケットは他方の走行レール用の空胴部領域に設置されており、まだ挿入されていない走行レールが最初に挿入された走行レールのストッパとして利用される。オプションでは、最初に挿入された走行レールは、爪部の作用で連結要素により確実に保持されるので、この走行レールは後で挿入される他方の走行レールのストッパとして利用される。このように走行レールは両レール間に分断部を発生させずに端部同士で連結される。よって走行レールで導かれる車両の良好で円滑な走行が提供される。
【0017】
1好適実施態様においては、それら爪部及び/又は挿入制限ブラケットは連結要素から一体的に形成できる。特に打抜製法または切出製法にて一体的に形成できる。本発明によれば、このような迅速で簡単な製造並びに単純な構築が達成できる。一体的な連結要素の場合には、爪部及び/又は食込み手段が硬化加工されるなら、連結状態に悪影響を及ぼすことなく、走行レールと同程度か、少々それよりさらに硬い材料で連結要素を製造できる。
【0018】
別な好適特定例の同様な実施態様では、連結要素はバネプレートが挿入されている連結体を有する。爪部及び/又は挿入制限ブラケットはこのバネプレート上に形成されている。この場合、爪部及び/又は挿入制限ブラケットは走行レールと比較してさらに硬質な材料から製造できる。例えば、バネ鋼から製造できる。一方、連結体は加工が容易な別材料から製造できる。
【0019】
バネプレートを連結体に容易および確実に接続させるため、バネプレートは連結体の対応凹部と係合する固定ブラケットを有している。特に好適には、連結ブラケットの一部はスナップ式連結具として設計することができ、連結体上にバネプレートを確実に保持させる。他の固定ブラケットは、走行レールが挿入方向に挿入されるときバネプレートのずれを防止するストッパの形態で設計される。
【0020】
前述の走行レールシステムのために本発明の連結要素が使用されるなら、走行レールシステムは追加の部品や工具を必要とせずに非常に迅速で簡単に構築できる。好適には走行レールは爪部よりも軟質である材料から製造される。例えば、400N/mm2までの引張強度の鋼材が使用される。一方、好適な爪部の材料は走行レールの少なくとも2倍の硬度のものであり、例えば、1700N/mm2の引張強度のものであり、連結体と挿入されたバネプレートを備えた連結要素のために使用される。一体型連結要素の場合には、好適には連結要素のためのものと同一程度またはそれよりほんの少々軟質である材料が使用できる。特に食込み作用のための爪部または食込み手段が硬化加工されるときに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明を添付図面で表される実施例を利用して説明する。
【図1】図1は分解状態である2本の走行レールと1体の連結要素とで成る走行レールシステムを図示する。
【図2】図2は構築状態である図1の走行レールシステムを図示する。
【図3】図3は本発明の第1実施例による連結要素の斜視図である。
【図4】図4は図3で示す連結要素の縦断面図である。
【図5】図5は図3で示す連結要素のバネプレートの斜視図である。
【図6】図6は図5で示すバネプレートの縦断面図である。
【図7】図7は図6で示すバネプレートの一部の拡大図である。
【図8】図8は図3で示す連結要素の縦断面図と挿入された走行レールを図示する。
【図9】図9は図8で示す連結要素の一部の拡大図である。
【図10】図10は図9で示す連結要素の一部の拡大図である。
【図11】図11は図8で示す連結要素の別斜視図である。
【図12】図12は本発明の別実施例による連結要素の斜視図である。
【図13】図13は図12で示す連結要素の爪部の拡大図である。
【図14】図14は図12で示す連結要素の挿入制限ブラケットの拡大図である。
【図15】図15は図12で示す連結要素のための爪部の別実施例である。
【図16】図16は図15で示す爪部の別斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1で示す実施例による走行レールシステムは連結要素1を有している。この中に2本の走行レール2、2’が互いに反対の挿入方向E、E’から押し込まれる。図2はそれらの連結状態を示す。連結要素1は走行レール2また2’と同様に基本的には対称形状であり、対応する部品には同一番号が付されている。しかし、連結要素1の中央部で分かれる図面の左側の部品には番号と符号に「’」(アポストロフィー)が付されている。
【0023】
連結要素1および走行レール2、2’の両方共、1側部の一部が切り取られている(開いている)長形中空鋼材から作成されている。このような走行レール2、2’はC型レールとも呼称される。この切取部は走行レール2、2’に縣吊されるレール車両の走行輪の保持に使用される。特に図2に示すように、走行レールシステムの構築状態にて連結要素1は、連結要素の空胴部領域H、H’に挿入されている走行レール2、2’の周囲と係合している。
【0024】
図4と図8で明瞭に図示するように、連結要素1の空胴部領域H、H’は、第1走行レール2のための空胴部領域Hと、第2走行レール2’のための空胴部領域H’とに分割できる。この実施例では、空胴部領域Hと空胴部領域H’の境界は連結要素1の長手方向における中央部に存在する。しかし別実施形態では、空胴部領域Hと空胴部領域H’は異なるサイズを有することができる。
【0025】
図3と図4で詳細に図示する連結要素1は連結体3を有している。これは図3で示す垂直側壁上にガイドブラケット4、4’を有している。走行レール2、2’が挿入状態にあるとき、これらガイドブラケットは走行レール2、2’を両側から押圧し、連結要素1の垂直側壁に対して走行レールを中央に寄せる。切取側の反対側で、連結体3は複数の凹部(開口部)を有している。それら凹部の作用は後述する。
【0026】
図3で示すようにバネプレート5は連結体3の上側部の内側に提供されている。図5から図7で明瞭に図示するバネプレート5は1700N/mm2の引張強度を有したバネ鋼で造られている。この引張強度は400N/mm2の引張強度の鋼材で造られる走行レールよりもずっと大きい。その長手方向端部にバネプレート5は固定ブラケット6、6’を有しており、これらはバネプレート5のバネ弾性によって連結体3の上側部の外側凹部にスナップ式に嵌合でき、連結体3の内部でバネプレート5を保持する。連結体3の長手方向でのバネプレート5のずれ防止のため、追加の固定ブラケット7、7’が連結体3の上側部の中央凹部と係合しており、そこでそれらの端エッジ上に直に接触する。よって固定ブラケット6、6’および7、7’は連結体3内におけるバネプレート5の確実な保持を提供し、連結体3の長手方向と、この方向に対する直角方向とのずれを防止するために利用される。
【0027】
空胴部領域H、H’のそれぞれに完全に挿入された走行レール2、2’が連結要素1から引き抜けないようにする、あるいは容易には引き抜けないようにするため、固定装置がバネプレート上の爪部8、8’により構成される。バネプレート5が挿入された状態で、爪部8、8’は、それぞれ空胴部領域H、H’内への斜め下方の挿入方向E、E’にて連結体3の本体内に突出している。爪部8、8’はバネ弾性タブ8a’により作製されている。タブ8a’は空胴部領域H、H’内に突出する前端部にフロントエッジ8b、8b’を有している。図7で示す弛緩状態では、フロントエッジ8b、8b’は連結体3の長手方向軸に対して直角に配向されている。
【0028】
爪部8、8’の弾性特性により、走行レール2、2’は大きな抵抗もなく対応する空胴部領域H、H’内に挿入可能である。挿入時に爪部8、8’は連結体3の方向に上方へ空胴部領域H、H’から押圧される。一方、もし走行レール2、2’を連結要素1から引き戻す方向に引き出そうとするなら、フロントエッジ8b、8b’はタブ8a、8a’の弾性作用によって対面する走行レール2、2’の表面上に押圧され、大きな引張強度あるいは硬度のため、走行レール2また2’内に食込む。走行レール2、2’を引き戻す力が大きければ大きいほど、爪部8、8’の食込み作用力は大きくなり、空胴部領域H、H’に対するその傾斜姿勢は大きくなって、フロントエッジ8b、8b’はさらに強力に走行レール2、2’の壁部内に食込む。
【0029】
所定の引張強度以上のときだけ、爪部8、8’の接触抵抗力は克服され、走行レール2、2’は連結要素1から引き出されてシステムは分解される。引き抜きプロセスをさらに簡単にするため、2つの凹部を連結体3に提供することができる。これらの凹部を介して爪部8、8’のフロントエッジ8b、8b’が顔を出し、走行レール2、2’から持ち上げ可能になる。さらに連結体3において、これら凹部は、フロントエッジ8b、8b’が走行レール2、2’の材料内に十分深く食込むことができたか否かを検査させる。この状態は確認が容易である。特に図8から図10は挿入された走行レール2、2’を備えた連結要素1を図示する。
【0030】
走行レール2、2’が挿入されたとき、これら走行レールが連結要素1の中央部分を越えずに挿入され、対応する空胴部領域H、H’内にだけ進入することを確実にするため、挿入制限ブラケット9、9’がバネプレート5に提供される。この挿入制限ブラケット9、9’は空胴部領域HまたはH’内に突出するバネプレート5の一部によって形成される。挿入制限ブラケット9、9’の各ストッパエッジ10または10’は走行レール2、2’のストッパとして使用される。ストッパエッジ10、10’は挿入方向EまたはE’に直角である平面に存在する。すなわち本実施例では空胴部領域HとH’の間に存在する連結体3の中央面を通過する。挿入制限ブラケット9とそのストッパエッジ10は空胴部領域H’内に図11の左側から挿入される走行レール2’のためのストッパとして利用される。挿入制限ブラケット9’とそのストッパエッジ10’は空胴部領域H内に図11の右側から挿入される走行レール2のストッパとして利用される。
【0031】
図1で明瞭に示すように、まず走行レール2は図11の右側から空胴部領域H内に挿入制限ブラケット9’のストッパエッジ10’と接触するまで押し込まれる。そのとき爪部8が走行レール2の表面と係合して係止するため、走行レール2が再び連結要素1から意図に反して引き抜かれるリスクはなくなる。挿入制限ブラケット9’により走行レール2が中央部分にまでしか挿入されないことが確実になる。すなわち走行レール2は連結要素1の空胴部領域H内にのみ挿入される。続いて走行レール2’が図11の左側から空胴部領域H’に挿入される。このように挿入プロセスの終了時に、挿入制限ブラケット9’は連結体3の方向に空胴部領域H’から上方に押圧される。これはバネプレート5のバネ弾性特性により容易に実行できる。従ってバネ爪部8によって固定された既挿入走行レール2が、走行レール2’のためのストッパとして機能する。図11では図示しないが、挿入制限ブラケット9は、第1走行レール2が挿入されたとき空胴部領域Hによって図11の右側から既に上方に押圧されており、走行レール2、2’のこの挿入手順により不活性状態にある。しかし、簡単な構築を可能にするため、挿入制限ブラケット9、9’は両方の挿入方向E、E’に対して提供される。走行レール2、2’のこの挿入手順により、それぞれのブラケットはこれら方向では不活性状態のままである。
【0032】
前述したように、本発明の連結要素は走行レールシステムの特に簡単な構築を可能にし、確実な連結を提供する。
【0033】
バネプレート5を利用することで、少ない材料消費により、爪部に対して高硬度と高引張強度とを同時的に提供するのに必要なバネ弾性特性が容易に提供される。またこの実施態様においては、連結体3は加工が容易な軟質材料から製造できる。
【0034】
図12と図13は本発明の別な連結要素11を示す。これは図1から図11にかけて図示した連結要素1とは本質的に異なるものである。連結要素11は一体型であり、別方法で提供されたバネ爪部と挿入制限ブラケットとを有する。しかし、連結要素、バネ爪部および挿入制限ブラケットの基本的機能は前述のものと同様であるため、以下の説明は主としてそれらの相違点に関する。
【0035】
連結要素1とは異なり、連結要素11は単材料から一体式に製造されている。良好な連結を保証するため、図12に図示するように、連結要素11の横側面と上側面とに複数の爪部が連結要素11から直接的に形成されている。説明を簡潔にするため、爪部12のみを説明する。しかし、ここでの説明は連結要素11の他の爪部にも同様に適用できる。一体的材料により製造はさらに単純化される。なぜなら追加のバネプレート5が不要だからである。
【0036】
図13で詳細に図示する爪部12により理解されようが、この爪部は連結要素1の空胴部領域H内に突出している。内部に延びている連結要素11のバネ弾性タブ12aは、走行レール2が挿入されている場合には、爪部12のカットポイント12bが走行レール2側に少々傾斜しており、走行レール2と接触する。走行レール2が引き抜かれるとき、タブ12aはカットポイント12bを走行レール2側に押圧し、それによりカットポイント12bは走行レール2内に食込む。実際には、大きな力が作用すると走行レール2は引き抜かれるが、その力で走行レール2から削り屑が出る。カットポイント12bの形状によっては本発明では連結要素11は走行レール2と同じ材料で製造できる。よって異なる硬度の材料は不要となる。しかし、走行レール2が数度にわたって引き抜かれると爪部12のカットポイント12bは磨耗する。従って、カットポイント12bを硬化することでこの弱点は克服できる。この硬化は誘導硬化処理により可能である。重要な点はカットポイント12bが走行レール2の材料よりも硬いことである。
【0037】
同様に連結要素11から形成され挿入制限ブラケット13、13’は図14で詳細に図示されている。原理的には、これらは前述の第1実施例の挿入制限ブラケット9、9’と同様に作用する。挿入制限ブラケット13、13’は、対応する他方の走行レール2’または2のためのストッパとして提供され、空胴部領域H、H’内に傾斜状態で突出し、挿入方向EまたはE’と直角である平面に存在するストッパエッジ14、14’も有している。ストッパエッジ14は空胴部領域H’への走行レール2’の挿入を制限する。走行レール2、2’が挿入されると、挿入制限ブラケット13、13’が対応する空胴部領域H、H’に弾性的に進入するので、走行レールはこれらの領域から押し出されるように動作する。よって走行レール2、2’は端部同士で押し合うことになる。連結要素1に関して詳細に前述たように、挿入制限ブラケット13’のストッパエッジ14’で最初に進入制限された走行レール2は、続いて挿入される走行レール2’のストッパとして作用する。
【0038】
図15と図16では、連結要素11は、爪部15に関した実施例として解説したような別構造の爪部を有している。爪部12のように、爪部15は連結要素11から形成されるが、傾斜したカットポイント13bは有していない。その代わりに、ここでは食込み手段は、空胴部領域H内に進入するバネ弾性タブ15aの前端部に提供されたカットエッジ15aによって形成されている。この実施例においては、爪部15は連結要素11から打抜形成されており、打抜加工で発生した爪部15のフロントエッジは自然に(通常では不都合である)打抜き形状の鋭利な切口を有する。一般的な場合とは異なり、この鋭利な切口は除去されず、走行レール2が引き抜かれる際に走行レール2を削るか、走行レール2に食い込む好都合なカットエッジ15bを提供する。このような金属切口は爪部15の切断加工(例えばレーザカット加工)で提供される。連結要素11は走行レール2と同じ材料からか、さらに硬質な材料から製造が可能である。有利には、カットエッジ15bも硬化加工することができる。
【0039】
別な実施形態では、対称的形状とする代わりに、連結要素は走行レールのために異なるサイズの連結領域を有することができる。同様に、連結要素は異なる連結システムのための結合要素として形成することができる。例えば、一方側に従来の連結要素(例:ネジ)を装備させ、他方側に本発明の爪部を有するように設計することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レール(2、2’)用の連結要素(1、11)であって、走行レール(2、2’)を保持する空胴部領域(H、H’)と、該空胴部領域からの該走行レール(2、2’)の引き抜きに抵抗して該走行レール(2、2’)を固定する固定具とを含んでおり、該固定具は、第1の走行レール(2)の挿入方向(E)に対して斜めに前記空胴部領域(H)内に弛緩状態で突出する少なくとも1体のバネ弾性である第1の爪部(8、12、15)を有していることを特徴とする連結要素(1、11)。
【請求項2】
少なくとも1体の爪部は、弛緩状態にあるとき、第1走行レール(2)が空胴部領域(H)内に押し込まれる際に該走行レールによって空胴部領域から押し出され、該第1走行レールが該空胴部領域から引き抜かれようとする際には弾性的に該第1走行レールに食い込むように提供されていることを特徴とする請求項1記載の連結要素(1、11)。
【請求項3】
爪部は挿入方向(E)に対して斜めに空胴部(H)内に突出するバネ弾性タブ(8a、12a、15a)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の連結要素(1、11)。
【請求項4】
空胴部(H)に突出する爪部の先端は走行レール(2)内への食込み手段(8b、12b、15b)として作用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の連結要素(1、11)。
【請求項5】
食込み手段はカットエッジ(8b、15b)あるいはカットポイント(12b)であることを特徴とする請求項4記載の連結要素(1、11)。
【請求項6】
食込み手段(8b、12b)は走行レール(2)の空胴部への挿入方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項5記載の連結要素(1、11)。
【請求項7】
固定具は、第2の走行レール(2’)の空胴部領域(H’)内への挿入方向(E’)に対して斜めに該空胴部領域(H’)内に弛緩状態で突出する第2のバネ弾性爪部(8’、12’、15’)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の連結要素(1、11)。
【請求項8】
空胴部領域(H)内への挿入方向(E)での第1走行レール(2)の挿入を制限するために、本連結要素(1、11)上に提供され、第2の走行レール(2’)のための空胴部領域(H’)内に突出するバネ弾性挿入制限ブラケット(9’、13’)が提供されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか、あるいは請求項1の前置部に記載の連結要素(1、11)。
【請求項9】
第1の挿入制限ブラケット(9’、13’)のストッパ(10’、14’)は、第1走行レール(2)の挿入方向(E)に対して直角である平面に存在することを特徴とする請求項8記載の連結要素(1、11)。
【請求項10】
少なくとも1体の第1挿入制限ブラケット(9’、13’)は、弛緩状態で斜めに第2走行レール(2’)の空胴部領域(H’)内に突出し、該第2走行レールが該空胴部領域内に挿入されると該第2走行レールによって該空胴部領域から押し出されるように設計されていることを特徴とする請求項8または9に記載の連結要素(1、11)。
【請求項11】
空胴部領域(H’)内への挿入方向(E’)で第2走行レール(2’)の挿入を制限するために、本連結要素(1、11)上に提供され、第1の走行レール(2)のための空胴部領域(H)内に弛緩状態で斜めに突出し、該第1走行レール(2)が挿入されると、該第1走行レールによって前記空胴部領域(H)から押し出されるバネ弾性挿入制限ブラケット(9、13)が提供されていることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の連結要素(1、11)。
【請求項12】
爪部(12、12’、15)及び/又は挿入制限ブラケット(13、13’)は、打ち抜き加工または切り出し加工によって本連結要素(11)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の連結要素(11)。
【請求項13】
爪部(8、8’)及び/又は挿入制限ブラケット(9、9’)は、本連結要素(1)の連結体(3)内に提供されているバネプレート(5)から形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の連結要素(1)。
【請求項14】
連結体(3)上の固定用のバネプレート(5)は、該連結体(3)の対応する凹部に係合する固定ブラケット(6、6’、7、7’)を有していることを特徴とする請求項13記載の連結要素(1)。
【請求項15】
爪部(8、8’、12、12’、15)及び/又は挿入制限ブラケット(9、9’、13、13’)及び/又は固定ブラケット(6、6’、7、7’)及び/又はバネプレート(5)は、走行レール(2、2’)よりも硬質であるバネ鋼等の材料で製造されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の連結要素(1、11)。
【請求項16】
爪部(12、12’、15)及び/又は食込み手段(8b、12b、15b)は硬化処理されていることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の連結要素(11)。
【請求項17】
連結要素(1、11)で連結可能な複数の走行レール(2、2’)を含んだ走行レールシステムであって、該連結要素(1、11)は請求項1から16のいずれかに記載のものであることを特徴とする走行レールシステム。
【請求項18】
走行レール(2、2’)は連結要素(1、11)の爪部(8、8’、12、12’、15)よりも軟質である材料で製造されていることを特徴とする請求項17記載の走行レールシステム。
【請求項19】
走行レール(2、2’)は400N/mm2までの引張強度を有した鋼材で製造されていることを特徴とする請求項17または18に記載の走行レールシステム。
【請求項20】
爪部(8、8’、12、12’、15)の引張強度は走行レール(2、2’)の引張強度の少なくとも2倍であることを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の走行レールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−508115(P2011−508115A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538550(P2010−538550)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066792
【国際公開番号】WO2009/080460
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(508237443)コンダクティクス−バンプフラー アーゲー (13)