説明

走行具

【課題】特に走行開始時の踏み台の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができる走行具を提供する。
【解決手段】フレーム2,3と、踏み台1と、該踏み台1が下降する過程で圧縮され、当該踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側に復元するスプリング36から成るエネルギ蓄積手段6と、踏み台1の下降動作をエネルギ蓄積手段6を介して後輪10に伝達する伝達機構とを具備し、乗手の両足にそれぞれ装着され、踏み台を交互に踏み込むことにより走行可能な走行具において、踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で、踏み台1をフレームに係止して当該踏み台1の上昇側への動作を規制するロック手段40と、スプリング36が引っ張り側に復元する過程でロック手段40の係止を解除し、踏み台1の上昇側への動作を許容させるロック解除用ピン45とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗手の両足にそれぞれ装着され、踏み台を交互に踏み込むことにより走行可能な走行具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ローラースケート等の走行具は、乗手の足を載置するための踏み台と、該踏み台下に回動自在に配設されたローラとを具備しており、乗手が床面を蹴って推進力を得て前進するものと、別途の推進手段で推進力を得て前進するものの主に2つのタイプがある。然るに、本出願人は、歩行時と同様の筋力を使って足踏み動作し推進力を得ることができる走行具について提案している(特許文献1参照)。
【0003】
かかる走行具は、フレームを介して前輪及び後輪と連結され、乗手の左右それぞれの足踏み動作で上下動する一対の踏み台と、各踏み台の下降動作を後輪に伝達しつつ上昇動作を伝達しない伝達機構と、踏み台が下降する過程で圧縮され、当該踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側に復元し、その復元力を後輪に伝達して当該後輪を回転させるスプリングとを具備していた。
【特許文献1】特開2004−73659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の走行具においては、スプリングにて、踏み台が上昇端又はその近傍から下降する過程で生じるエネルギを蓄積し、その蓄積手段により後輪を回転させていたので、走行時における速度の起伏を抑制し、より安定した走行を図ることができるものの、以下の如き問題があった。
【0005】
1回の踏み台の踏み込み力に対する走行具のより大きな推進力を得ようとした場合、復元力(スプリング力)の大きなスプリングを使用するのが好ましいが、あまり復元力が大きいと、当該スプリングを圧縮させるべく走行時に過大な踏み込み力が必要となってしまう不具合がある。そこで、乗手の体重と略等しい復元力のスプリングを用いれば、左右の足に交互に体重をかけて踏み台を踏み込めば足りるため、適度な踏み込み力で大きな推進力を得ることができる。
【0006】
しかし、乗手の体重と略等しい復元力のスプリングを用いた場合、走行開始時においては、加速抵抗により1回の踏み込みによる前進距離が小さいため、先に踏み込んだ踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で他方の踏み台を踏み込もうとすると、体重が両足のそれぞれの踏み台に分散されて一方の踏み台に付与される体重(押さえ付け力)が小さくなるとともに、先に踏み込んだ側のスプリングが十分に伸長していない状態となってしまう。
【0007】
然るに、先に踏み込んだ側のスプリングによる復元力が後輪の回転力に伝達されず比較的大きいまま残存した状態となるので、当該復元力が上述の如く小さくなった踏み台に対する体重より大きくなってしまい、踏み台を上昇させてしまう。従って、従来の走行具においては、走行開始時、踏み台が上昇して乗手の重心が高くなってしまい、不安定となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に走行開始時の踏み台の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができる走行具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、前輪及び後輪を有するフレームと、該フレームに対して上昇又は下降可能とされ、乗手の足を載置可能な踏み台と、該踏み台が下降する過程で圧縮され、当該踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側に復元するスプリングから成り、その復元力を前記後輪に伝達して当該後輪を回転させることにより前記踏み台及びフレームを前進させるエネルギ蓄積手段と、前記踏み台の下降動作を前記エネルギ蓄積手段を介して前記後輪に伝達して回転させ、当該踏み台を前進させるとともに、前記踏み台の上昇動作が前記後輪に伝達されるのを遮断する伝達機構とを具備し、乗手の両足にそれぞれ装着され、踏み台を交互に踏み込むことにより走行可能な走行具において、前記踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で、前記踏み台をフレームに係止して当該踏み台の上昇側への動作を規制するロック手段と、前記エネルギ蓄積手段が引っ張り側に復元する過程で前記ロック手段の係止を解除し、前記踏み台の上昇側への動作を許容させるロック解除手段とを備えたことを特徴とする走行具。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の走行具において、前記ロック解除手段は、前記エネルギ蓄積手段の圧縮及び復元と共に変位するロック解除用ピンから成り、且つ、前記ロック手段は、前記踏み台に形成されたストッパ部に係止可能な爪部と、前記ロック解除用ピンの変位の過程で当該ロック解除用ピンと当接し得るアーム部とを有する揺動部材から成るとともに、当該ロック解除用ピンがアーム部に当接して揺動部材を揺動させることにより前記爪部をストッパ部から離間させて係止を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で当該踏み台の上昇側への動作をロック手段にて規制するとともに、エネルギ蓄積手段が引っ張り側に復元する過程で、踏み台の上昇側への動作をロック解除手段にて許容させるので、特に走行開始時の踏み台の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ロック解除用ピンがアーム部に当接して揺動部材を揺動させることにより爪部をストッパ部から離間させて係止を解除するので、走行開始時の踏み台の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができるとともに、その後の連続した踏み台に対する踏み込みを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る走行具は、乗手の両足にそれぞれ装着され、踏み台を交互に踏み込むことにより走行可能なもので、図1及び図2に示すように、踏み台1と、後輪10を具備する第1フレーム2と、前輪11を具備する第2フレーム3と、揺動ピン4と、ワンウェイクラッチ5と、エネルギ蓄積手段6と、操舵手段26とから一方の走行具が構成されている。
【0014】
踏み台1は、その上面に乗手が履く靴7を固定するための固定具7aが形成されており、乗手の足を載置可能としたものである。かかる踏み台1の下面には、その前端側(図1左側)に第1フレーム2の一端を支持する支持金具8が形成されるとともに、後端には第2フレーム3の一端を揺動軸9を中心として揺動自在に支持する支持金具1aがそれぞれ取り付けられている。また、支持金具8には、水平方向(同図左右方向)に延びる長孔8aが形成されており、該長孔8a内に第1フレーム2の一端に突出形成された一端ピン2aを挿通させて支持しているので、第1フレーム2の同方向への変位が許容されている。
【0015】
第1フレーム2は、前述した支持金具8から後側(後退方向)へ延設され、その先端に後輪10を有するものであり、図2に示すように、略平行に配置された2つの棒状フレーム2bと、該2つの棒状フレーム2bを連結する連結軸48bとから主に成る。かかる第1フレーム2には、当該第1フレーム2の揺動ピン4を中心とした揺動動作を後輪10に伝達するための伝達機構が取り付けられている。ここで、揺動ピン4は、第1フレーム2と第2フレーム3との交差位置で両フレームを揺動自在に支持し、踏み台1の上下動と連動して上下するものである。
【0016】
伝達機構は、踏み台1の下降動作を後述するエネルギ蓄積手段6を介して後輪10に伝達して回転させ、当該踏み台1を前進させるとともに、踏み台1の上昇動作が後輪10に伝達されるのを遮断するためのものである。より具体的には、伝達機構は、ワンウェイクラッチ5と、スプロケット16及び17に懸架されたチェーン14と、スプロケット15及び21に懸架されたチェーン18と、固定具19とから主に構成されている。尚、スプロケット16は、スプロケット15の回転軸を中心に回転可能とされており、ワンウェイクラッチ5を介してスプロケット16の正転方向の回転がスプロケット15に伝達され得るよう構成されているとともに、各スプロケットにはベアリングが介装されている。
【0017】
固定具19には所定寸法離間した一対のローラ19aが配設されており、このローラ19a間に第2フレーム3の先端(より具体的には、後述するエネルギ蓄積手段6におけるピン状部材39の先端)が挟持されている(図3参照)。尚、ピン状部材39は、可動ブッシュ13を介して支持部材38と連結されており、該支持部材38が第2フレーム3の先端と連結されているので、当該第2フレーム3が揺動すると、チェーン14が動作し得るよう構成されている。
【0018】
ワンウェイクラッチ5は、後輪を前進方向に回転させる力の伝達を行う一方、その逆方向の力の伝達は行わないもので、自転車等の後輪に汎用的に用いられているものを使用することができる。このワンウェイクラッチ5は、図2に示すように、その外周面がハウジング22で支持されるとともに、該ハウジング22の端部をスプロケット15に押圧すべく押え板24を介して皿バネ23が配設されており、これらハウジング22、スプロケット15、押え板24及び皿バネ23により過大な踏み込み荷重や後輪の逆回転の際装置が破壊しないようにするためのトルクリミッタの機能が発揮される。尚、同図中の符号25は、皿バネ23による押圧力を調整するための調整ナットを示している。
【0019】
一方、エネルギ蓄積手段6は、踏み台1が上昇端又はその近傍から下降する過程で生じるエネルギを蓄積し、当該踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で、蓄積したエネルギを放出して後輪10を回転させるもので、スプリング36と、該スプリング36の受座としての可動ブッシュ13及びブッシュ12と、スプリング36に挿通されたロッド37と、第2フレーム3の先端に固定された支持部材38とから主に構成されている。
【0020】
ロッド37の両端のうち、一方の端部は支持部材38に固定されるとともに、他端にはブッシュ12が固定されている。可動ブッシュ13は、ピン状部材39を介してチェーン14と連結されるとともに、ブッシュ12と支持部材38との間を移動可能とされている。これにより、踏み台1の下降に伴い第2フレーム3の先端が下降すると、図8に示すように、スプリング36を圧縮させつつピン状部材39を介して固定具19を押し下げることとなる。
【0021】
然るに、図8に示したように、踏み台1が下降端又はその近傍に達すると、スプリング36の圧縮量が最大とされる。この状態においては、スプリング36に弾性エネルギが蓄積された状態とされている。即ち、スプリング36は、踏み台1が下降する過程で圧縮され、当該踏み台1の位置エネルギを当該スプリング36の弾性エネルギとして蓄積しているのである。
【0022】
その後、スプリング36は、踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側(即ち、スプリングが伸長する側)に復元するので、可動ブッシュ13が支持部材38と当接するまで押し下げられる。それに伴って、ピン状部材39の先端がチェーン14を回動させつつ弧状に移動し、該チェーン14の回動によりスプロケット16(及びスプロケット17)が回転するので、その回転がワンウェイクラッチ5を介してスプロケット15に伝達される。尚、かかる回転力が過大であると、ハウジング22とスプロケット15との間ですべりが生じ、回転力の伝達が制限される。
【0023】
そして、スプロケット15の回転により、チェーン18を介してスプロケット21が回転され、その回転力で回転軸10aが後輪10とともに回転し、走行具を前進させるべき推進力となる。一方、踏み台1が下死点に達した後上昇する際には、上記と同様に第1フレーム2及び第2フレーム3が揺動し、チェーン14を介してスプロケット16が上記とは逆方向に回転されるが、ワンウェイクラッチ5によりそれ以後の力の伝達が遮断されるので、後輪10に対する逆方向への回転は回避される。
【0024】
第2フレーム3は、前述した揺動軸9から前側(前進方向)へ延設され、その先端に前輪11を有するものであり、この第2フレーム3の先端には、図1及び図4に示すように、踏み台1の傾斜に伴い当該第2フレーム3が傾斜すると、その方向に前輪を操舵する操舵手段26が配設されている。
【0025】
かかる操舵手段26は、第2フレーム3の延設方向に対し所定量オフセットして当該第2フレーム3の先端に固定された連結軸27と、該連結軸27をその軸方向に回動自在に支持する上フレーム28と、2つの前輪11が車軸11aを介して互いに並行して取り付けられ、床面に対し平行な面内で回動自在に上フレーム28下に取り付けられた下フレーム29と、第2フレーム3先端から下フレーム29まで延設され、当該第2フレーム3の傾きを下フレーム29の傾き方向へ変更させるアームピン30とから主に構成されている。
【0026】
尚、上フレーム28は固定座金31により連結軸27先端に対し回動自在に取り付けられており、下フレーム29はその下面から挿通されたピン32により上フレーム28に取り付けられて床面に対し平行方向で回動自在とされている。また、アームピン30は、第2フレーム3の先端に固定された回転金具35と嵌合し、下フレーム29に取り付けられている。
【0027】
上記構成により、ターンをすべく乗手が足を傾けると、踏み台1を介して第1フレーム2及び第2フレーム3等も傾斜するのであるが、このとき、第2フレーム3は上フレーム28との接続部を中心に回動することとなり、その回動に伴ってアームピン30も下フレーム29を押しながら回動する。その結果、押された下フレーム29は、乗手の足が傾斜された方向、即ちターン内側を向くよう操舵されるのである。従って、ターンの際に乗手が足を傾ければその向きに前輪11が操舵するので、よりスムーズなターンを実現することができる。
【0028】
更に、上フレーム28の下フレーム29との接続面には、スプリング33で付勢されたボール34が配設されており、該ボール34は、前輪11が直進方向を向いている状態で下フレーム29上面に形成された凹部29aに嵌入された状態とされている。これにより、前輪11の向きを変えるべく下フレーム29が回動すると、ボール34が凹部29a内に収まろうとする力が働くため、ターン終了後に前輪11の向きがスムーズに通常方向(直進の方向)に戻されるのである。
【0029】
また更に、図5及び図6に示すように、第1フレーム2における後輪10近傍には、第2フレーム2に固定された連結軸48bが配設されている。そして、この該連結軸48bの外周には、回動自在にカラー48aが支持され、このカラー48aにブレーキ手段47が溶接されている。該ブレーキ手段47は、連結軸48bを中心にカラー48aと共に回動して後輪10に当接(図5の状態)又は離間(図6の状態)自在とされ、当接することにより後輪10の制動が可能なものであり、ワイヤ49を介して操作レバー50と連結されている。
【0030】
この操作レバー50は、把持バー51と対に構成されて当該把持バー51に対し揺動自在とされており、乗手が把持バー51を把持しつつ操作レバー50を揺動させると、ワイヤ49を介してブレーキ手段47の後輪10に対する当接動作が行われるよう構成されている。一方、乗手が操作レバー50から手を離すと、スプリング52の付勢力でブレーキ手段47が後輪10から離間する方向に回動し、当該後輪10のブレーキが解除される。
【0031】
また、操作レバー50の先端には、該操作レバー50を揺動状態のまま把持バー51に連結させる保持手段53が形成されている。即ち、保持手段53が把持バー51に連結された状態では、操作レバー50を作動状態に保持して、ブレーキ手段47による後輪10に対する当接状態を維持することができるのである。これにより、走行具の装着時に操作レバー50を把持していなくても当該走行具が動かないようにすることができ、安全性を更に向上することができる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る走行具には、図3に示すように、踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で踏み台1を第1フレーム2に係止して当該踏み台1の上昇側への動作を規制するロック手段40と、エネルギ蓄積手段6のスプリング36が引っ張り側に復元する過程でロック手段40の係止を解除し、踏み台1の上昇側への動作を許容させるロック解除手段としてのロック解除用ピン45とが配設されている。尚、踏み台1の後端からは同図紙面に対して垂直方向にストッパ部46が延設されている。
【0033】
具体的には、ロック手段40は、第1フレーム2に形成された揺動軸42を中心に揺動可能とされた揺動部材41から成り、この揺動部材41には、アーム部41aと、爪部41cと、R部41dとを有している。また、揺動部材41には、リターンスプリング44の一端を係止する係止部41bが形成されるとともに、かかるリターンスプリング44の他端は第1フレーム2に形成された係止部2dに係止されている。これにより、揺動部材41は、揺動軸42を中心に同図中左回りに常時付勢されつつ、第1フレーム2に形成されたストッパピン43と当接することにより同方向への更なる揺動が規制されている。
【0034】
ところで、揺動部材41の爪部41cは、図8に示すように、踏み台1が下降端又はその近傍に達すると、踏み台1に形成されたストッパ部46に係止可能とされた部位であり、かかる係止により当該踏み台1の上昇側への動作が規制されるようになっている。これにより、例えばスプリング36が、乗手の体重と略等しい復元力のものとし、走行開始時に左右の足に交互に体重をかけて踏み台1を踏み込んだ場合であっても、従来の如き先に踏み込んだ踏み台1が上昇してしまうのを回避することができる。
【0035】
ロック解除用ピン45は、エネルギ蓄積手段6における可動ブッシュ13の壁面から水平方向に延設されたものであり、エネルギ蓄積手段6におけるスプリング36の圧縮及び復元と共に変位(上昇及び下降)し、その変位(下降動作)の過程で係止状態の揺動部材41のアーム部41aに当接して当該揺動部材41を揺動させ得るものである。しかして、揺動部材41が揺動すると、図9及び図10に示すように、爪部41cがストッパ部46から離間させて係止が解除され得るよう構成されている。
【0036】
すなわち、踏み台1が下降端又はその近傍に達すると、爪部41cによる係止がなされ、当該踏み台1の上昇動作を規制するとともに、エネルギ蓄積手段6のスプリング36が所定寸法伸長すると、ロック解除用ピン45がアーム部41aに当接して揺動部材41が揺動し、爪部41cによる係止が解除されて踏み台1の上昇が許容されるよう構成されているのである。よって、走行開始時の踏み台1の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができるとともに、その後の連続した踏み台1に対する踏み込みを可能とすることができる。
【0037】
次に、上記走行具における作用について説明する。
まず、図1に示す状態から乗手が踏み台1を踏み込むと、図7に示すように、エネルギ蓄積手段6のスプリング36が圧縮されるとともに、揺動部材41のR部41dがストッパ部46に当接することとなる。この状態から更に踏み台1を下降させて下降端又はその近傍に達すると、R部41dの形状により揺動部材41が揺動軸42を中心に僅かに右回りに揺動した後、リターンスプリング44の付勢力により戻り、その過程で爪部41cがストッパ部46に係止することとなる(図8参照)。
【0038】
こうして、踏み台1の上昇動作が規制された状態となると、エネルギ蓄積手段6のスプリング36が引っ張り側に復元するので、その復元力にてピン状部材39を動作させ、既述の如く後輪10を回転させて走行具を前進させる。そして、スプリング36が所定寸法伸長して復元力が次第に小さくなった時点で、図9に示すように、ロック解除用ピン45が下降して揺動部材41のアーム部41aに当接し、図10に示すように、更なる下降により揺動部材42を揺動させる。しかして、揺動部材41の揺動により、爪部41cがストッパ部46から離間し、係止が解除されるので、図11に示すように、踏み台1の上昇側への動作が許容されることとなる。
【0039】
本実施形態によれば、踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で当該踏み台1の上昇側への動作をロック手段40にて規制するとともに、エネルギ蓄積手段6のスプリング36が引っ張り側に復元する過程で、踏み台1の上昇側への動作をロック解除手段にて許容させるので、特に走行開始時の踏み台の上昇を回避して安定した走行を可能とすることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、後輪10の制動が可能なブレーキ手段47を具備しているので、例えば当該ブレーキ手段47にて後輪10を停止させた状態のまま踏み台1を踏み込み、下降端又はその近傍に至らせることにより、揺動部材41により当該踏み台1の上昇側への動作を規制させておけば、後輪10を停止させつつ重心が低い状態にて移動することができる。従って、走行具の旋回半径では回れない所などで移動を可能とでき、制動とは別の目的でも使用できる。
【0041】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図12に示すように、前側に前輪11及び後側に後輪10を有したフレームFと、乗手の足を載置可能な踏み台1と、フレームFに対する踏み台1の上昇又は下降を可能とするロッドRと、踏み台1が下降する過程で圧縮され当該踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側に復元するスプリング36から成るエネルギ蓄積手段6とを有した走行具にも適用することができる。
【0042】
この場合、フレームFに先の実施形態と同様の揺動部材41を配設し、踏み台1側に形成されたストッパ部46と係止可能とすることにより、踏み台1が下降端又はその近傍に達した時点で、当該踏み台1の上昇側への動作を規制するとともに、先の実施形態と同様のロック解除用ピン45にてスプリング36が引っ張り側に復元する過程で爪部41cによる係止を解除し、踏み台1の上昇側への動作を許容させれば、先の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で、踏み台をフレームに係止して当該踏み台の上昇側への動作を規制するロック手段と、エネルギ蓄積手段が引っ張り側に復元する過程でロック手段の係止を解除し、踏み台の上昇側への動作を許容させるロック解除手段とを具備した走行具であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付与されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る走行具を示す側面模式図
【図2】同走行具を示す平面模式図
【図3】同走行具におけるロック手段及びロック解除手段が配設された近傍を示す拡大模式図
【図4】同走行具における操舵手段を示す正面模式図
【図5】同走行具におけるブレーキ手段及び操作レバーを示す模式図であって、ブレーキ手段を後輪に当接させた状態を示す図
【図6】同走行具におけるブレーキ手段及び操作レバーを示す模式図であって、ブレーキ手段を後輪から離間させた状態を示す図
【図7】同走行具における踏み台に対する踏み込み動作過程を示す側面模式図
【図8】同走行具における踏み台に対する踏み込み動作過程を示す側面模式図
【図9】同走行具における踏み台に対する踏み込み動作過程を示す側面模式図
【図10】同走行具における踏み台に対する踏み込み動作過程を示す側面模式図
【図11】同走行具における踏み台に対する踏み込み動作過程を示す側面模式図
【図12】本発明の他の実施形態に係る走行具を示す側面模式図
【符号の説明】
【0045】
1 踏み台
2 第1フレーム
3 第2フレーム
4 揺動ピン
5 ワンウェイクラッチ
6 エネルギ蓄積手段
7 靴
8 支持金具
9 揺動軸
10 後輪
11 前輪
12 ブッシュ
13 可動ブッシュ
14、18 チェーン
15、16、17、21 スプロケット
19 固定具
22 ハウジング
23 皿バネ
24 押え板
25 調整ナット
26 操舵手段
27 連結軸
28 上フレーム
29 下フレーム
30 アームピン
31 固定座金
32 ピン
33 スプリング
34 ボール
35 回転金具
36 スプリング
37 ロッド
38 支持部材
39 ピン状部材
40 ロック手段
41 揺動部材
41a アーム部
41b 係止部
41c 爪部
42 揺動軸
43 ストッパピン
44 リターンスプリング
45 ロック解除用ピン(ロック解除手段)
46 ストッパ部
47 ブレーキ手段
48a カラー
48b 連結軸
49 ワイヤ
50 操作レバー
51 把持バー
52 スプリング
53 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪を有するフレームと、
該フレームに対して上昇又は下降可能とされ、乗手の足を載置可能な踏み台と、
該踏み台が下降する過程で圧縮され、当該踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で引っ張り側に復元するスプリングから成り、その復元力を前記後輪に伝達して当該後輪を回転させることにより前記踏み台及びフレームを前進させるエネルギ蓄積手段と、
前記踏み台の下降動作を前記エネルギ蓄積手段を介して前記後輪に伝達して回転させ、当該踏み台を前進させるとともに、前記踏み台の上昇動作が前記後輪に伝達されるのを遮断する伝達機構と、
を具備し、乗手の両足にそれぞれ装着され、踏み台を交互に踏み込むことにより走行可能な走行具において、
前記踏み台が下降端又はその近傍に達した時点で、前記踏み台をフレームに係止して当該踏み台の上昇側への動作を規制するロック手段と、
前記エネルギ蓄積手段が引っ張り側に復元する過程で前記ロック手段の係止を解除し、前記踏み台の上昇側への動作を許容させるロック解除手段と、
を備えたことを特徴とする走行具。
【請求項2】
前記ロック解除手段は、前記エネルギ蓄積手段の圧縮及び復元と共に変位するロック解除用ピンから成り、且つ、前記ロック手段は、前記踏み台に形成されたストッパ部に係止可能な爪部と、前記ロック解除用ピンの変位の過程で当該ロック解除用ピンと当接し得るアーム部とを有する揺動部材から成るとともに、当該ロック解除用ピンがアーム部に当接して揺動部材を揺動させることにより前記爪部をストッパ部から離間させて係止を解除することを特徴とする請求項1記載の走行具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−111406(P2007−111406A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308092(P2005−308092)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(301045344)クライムツーワン有限会社 (1)