説明

走行車に連結される農作業機の操作レバー

【課題】 走行車に乗車した作業者が運転席から操作する走行車に連結される農作業機の操作レバーが、農作業機を昇降させたときに運転席のキャビン等に干渉しても自動的に回避し走行車側や農作業機側の破損等を防止する。
【解決手段】 先端操作レバー20が前後方向に回動可能な折れ曲り支点22を設け、該先端操作レバー20の後方向に作用する回動力においては、前記折れ曲り支点22部が回動自在であるとともに、バネ24で前方に付勢されていて、キャビン等に干渉した場合バネ24の付勢力に抗して後方に折れ曲るとともに元の状態に自動復帰する。先端操作レバー20握り部で操作できる回動固定機構21により回動を固定可能に設けた。また、回動固定機構21は、作業者が先端操作レバー握り部で操作している間のみ回動を固定可能な構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターなどの走行車に連結される農作業機の操作レバーであって、走行車に乗車した作業者が運転席から操作できる操作レバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来知られた走行車に連結される農作業機において、運転席から操作できる操作レバーを有する農作業機は、特開2003−210013号公報(従来技術1)が公知である。
【0003】
従来技術1の「肥料散布機」は、操作レバーであるシャッターレバー52が図1に図示されていることから推察できるように、長さ調節や前後の傾倒角調節が可能である。
【0004】
また、特開2004−267150号公報に「肥料散布機」(従来技術2)が開示されている。従来技術2は、「右及び左開閉レバー37,39の上端部には接続パイプ40がそれぞれ取り付けられ、両接続パイプ40のどちらか一方の上端に操作バー41が着脱自在に取り付けられる」構造となっている。
【特許文献1】特開2003−210013号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開2004−267150号公報(従来技術2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術における農作業機である肥料散布機のシャッター操作レバーは、長さ調節や前後の傾倒角調節が可能であるものや、先端部が着脱自在に取り付けられるものは知られていた。しかし、近年走行車であるトラクターにおいては、作業者が乗車する運転席周囲をガラス等で覆ったキャビン仕様のものが多く使用されるようになってきているとともに、作業機を上昇させた時に作業機の操作レバーがキャビンに干渉しガラスを破損する事故や、運転席後方部分に干渉し双方の部品を破損する等の事故が発生する問題があった。本発明は、これらの事故を防止すべく農作業機の操作レバーの構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、走行車に乗車した作業者が運転席から操作する操作レバーを有する走行車に連結されて作業する農作業機において、前記操作レバーは、該操作レバーが機能する回動とは別に先端部が前後方向に回動自在な折れ曲り支点を有し、該折れ曲り支点部は、操作レバー先端握り部からの操作が可能な折れ曲り支点回動固定機構により回動を固定または解除可能に設けているとともに、操作レバー先端握り部が走行車側である前方に折れ曲り支点部を中心に回動するようにバネで付勢されていて、折れ曲り支点回動固定機構が解除時において操作レバー先端が後方に回動された後は自動的に前方の元の位置に前記バネの付勢力により復帰することを特徴とする走行車に装着される農作業機の操作レバーを提案する。
【0007】
また、折れ曲り支点回動固定機構は、作業者が操作レバー先端握り部で操作している間のみ後方への回動を固定可能な構造である0006欄記載の走行車に装着される農作業機の操作レバーを提案する。
【発明の効果】
【0008】
前記のような構成にすることにより、作業機を上昇させた時に操作レバーがキャビンや運転席回りに干渉した場合、折れ曲り支点部を中心にバネの付勢力に抗して後方に回動し逃げる為、キャビンのガラスを破損する事故や運転席回りに干渉し双方の部品を破損する等の事故が発生することを回避することができる。
【0009】
また、操作レバー先端握り部で操作できる回動固定機構により折れ曲り支点部の回動を固定可能としているため、本来の操作レバーの機能を少しも損なうことがなく、折れ曲り支点回動固定機構を操作し回動を固定すると同時に通常の操作レバーの機能を簡単に持たせることができる。
【0010】
さらに、回動固定機構は、作業者が操作レバー先端握り部で操作している間のみ回動を固定可能な構造であるため、作業者が操作レバーから手を放すと自動的に回動固定機構が解除され固定解除を忘れることがなく、これによる事故を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した肥料散布機の側面図、図2は本発明を実施した操作レバーの横断面図、図3は本発明を実施した操作レバーの回動固定時の横断面図、図4は操作レバーの後方視断面図、図5は別実施例の操作レバーの横断面図、図6は本発明実施例の肥料散布機の斜視図、図7は走行車に連結した肥料散布機を昇降した場合の側面説明図、図8は本発明を実施したスピンナータイプ肥料散布機の実施例側面図である。
【0012】
図1、図6に示した農作業機1は幅広の肥料タンクの底部より肥料を落下させ散布する肥料散布機を示したもので、フレーム10前方下部にはロアリンクピン15が、フレーム10前方上部にはトップブラケット16を備え、図7に示すように走行車Aのトラクター三点リンク機構に装着される。11は肥料タンクで、この上面には上面カバー12が開閉自在に設けられて、散布する肥料は上面カバー12を開けて肥料タンク11内に投入される。
【0013】
肥料タンク11内には、肥料を攪拌繰出しするアジテータ14があり、走行車Aの動力により駆動される。駆動力は図示されていないが、走行車PTO軸とユニバーサルジョイントで入力軸13と連結され、入力軸13が設けられている減速機で減速されるとともに入力軸13と直交する方向に回転するアジテータ14に伝達される。
【0014】
幅広の肥料タンク11の底面には、数多の肥料繰出口が設けてあり、それぞれの肥料繰出口をスライド開閉可能に設けたシャッター18の操作により肥料を散布可能である。シャッター18の開閉は、レバー回動支点20hを支点にシャッター操作レバー2を前後方向回動操作すると、シャッターロット18b及びシャッターアーム18aを介してシャッター18を肥料タンク長手方向にスライド作動させ開閉する。
【0015】
レバーガイド17に表示されたシャッター開度目盛を目処に、シャッター操作レバー2を前後に回動させて希望する位置に合わせると、シャッターが開度目盛に比例して開き所定量の肥料が落下し散布される。
【0016】
図2,図3、図4において操作レバー2の先端側の構造を説明する。操作レバー2の操作部側先端には、先端操作レバー20が機体幅方向略水平に設けた支点ピン26により連結されて上方先端部が前後方向に回動可能に設けられている。
【0017】
操作レバー2の前記連結部には、支点ピン26で形成される折れ曲り支点22の先端操作レバー20側に凹状の係合溝23が設けてあり、この係合溝23に先端操作レバー20側のプッシュロット20bの先端が係合し、操作レバー2と先端操作レバー20の回動が固定されるように回動固定機構21が構成されている。
【0018】
先端操作レバー20は、丸パイプの一方端に下方が開放したコ字状のアームが設けられ、該コ字状部で操作レバー2の先端部をネジリバネ24とともに挟むように支点ピン26で連結されている。支点ピン26の一方端にはロックナット25が螺入され保持される。ネジリバネ24は、一方端を操作レバー2と先端操作レバー20に夫々係止させ、先端操作レバー20上方先端がトラクター側である前方向に回動するように付勢されている。
【0019】
プッシュロット20bは丸棒材または角棒材で構成され、中間部にはバネ受け用の座金が固設されている。プッシュロット20bは先端操作レバー20の丸パイプ内部に上方より下方に挿入されるとともに、一方端のコ字状のアーム部に貫通し先端部側がコ字状アーム内の操作レバー2側に突設している。また、コ字状のアームとプッシュロット20bの中間部バネ受け用座金との間に挿入した圧縮バネ20cにより上方に付勢されるとともに、プッシュロット20bの下方先端部側に直交して挿通されたガイドピン20dがコ字状アーム部材外面に当接して上方への抜けを阻止している。
【0020】
ガイドピン20dの一端はコ字状アーム部に上下方向に設けた長孔にガイドされプッシュロット20bの下方先端部が操作レバー2上端部の凹状係合溝23に係合されるように構成されている。プッシュロット20bの上方側は、先端操作レバー20上端部に挿入された握り部であるグリップ20aを貫通して突設していて、突設部を押すと下方先端部が操作レバー2上端部凹状係合溝23と係合する。
【0021】
レバーを操作する場合は、先端操作レバー20上端部に挿入された握り部であるグリップ20aを握ると共にグリップ20a上方より突設したプッシュロット20b先端を押すことで、プッシュロット20bの下方他端部が操作レバー2上端部の凹状係合溝23と係合し折れ曲り支点22よりの回動を阻止し、本来操作レバー2が機能するレバー回動支点20hを中心に回動しシャッター18を開閉できる。また、プッシュロット20bから手を離すと、圧縮バネ20cにより上方に付勢されているためプッシュロット20bが上昇し係合が解除され、先端操作レバー20はネジリバネ24の付勢力に抗した力で折れ曲り支点22部において後方へ回動自在となる。
【0022】
図5は、プッシュロット20bの操作をグリップ20a部に設けたレバー20eを握ることで作動するように構成した別実施例を示したものである。レバー20eは側面視L字状に形成されていて、握り部の他方側は連結ピン20gにより前記プッシュロット20bに連結されているとともに、グリップ20a下方端部に設けたレバー支点20fに中間部を前後回動自在に取付けられている。また、先端操作レバー20の先端部に挿入されたグリップ20aに付設して取付けられグリップ20aを握るとともにレバー20eを握れるように構成されている。
【0023】
連結ピン20gは先端操作レバー20のパイプを機幅方向に貫通して設けた上下方向の長孔に挿通されるとともに、レバー20eとプッシュロット20bに嵌通している。このため、レバー20eを握るとレバー支点20fを中心に回動し、連結ピン20gが下方に押されプッシュロッド20bが下降しプッシュロット20bの下方端部が操作レバー2側係合溝23と係合することで折れ曲り支点22よりの回動を阻止する。さらに握りを放すと圧縮バネ20cによりプッシュロッド20bが上昇し係合が解除され折れ曲り支点22部において回動自在となる。
【0024】
図7は、操作レバーを有する農作業機1を走行車Aの三点リンク機構に連結して矢印K方向に上昇させたときの状態を示したもので、農作業機1の先端操作レバー20の上端部が走行車Aの後面に干渉すると、従来のものであれば後面部のガラス等を破損する事故に至るが、本発明においては折れ曲り支点22において回動自在としているため、矢印R方向に先端操作レバー20が回動し前記事故等を回避することができる。回動した先端操作レバー20は折れ曲り支点22部のネジリバネ24により自動復帰する。操作レバー先端部のグリップ20aは、前記干渉した場合の走行車A側のダメージをできるだけ緩和できるように、樹脂やゴム材およびプラスチック材等の比較的柔らかい材質で成形されているとよい。
【0025】
図8は別実施例の農作業機を示したもので、垂直方向の羽根を有する水平方向に回転する円盤であるスピンナー31に、上方に設けた逆円錐状のホッパー33内に投入された肥料を、ホッパー33底部のシャッター32を開閉し落下させ拡散散布する肥料散布機である。
【0026】
フレーム10前方のロワリンクピン15とトップブラケット16により図示していないトラクターの三点リンク機構に連結され、ギヤケース30前方に突設して設けた入力軸13と図示していないトラクターのPTO軸とをユニバーサルジョイントで連結し動力が入力されて、スピンナー31およびホッパー33内の肥料攪拌供給装置であるアジテータを駆動する。シャッター32は、操作レバー2をレバーガイド17の目盛に合わせて前後に回動すると連結ロット34を介して水平方向に回動し落下口を開閉するように構成されている。
【0027】
操作レバー2先端側は、先端操作レバー20が折れ曲り支点22部で前後方向に回動自在に連結されているとともに前記回動固定機構21が内装されている。先端操作レバー20上端部に挿入された握り部であるグリップ20aを握ると共にグリップ20a上方より突設したプッシュロット20b先端を押すことで、プッシュロット20bの下方他端部が操作レバー2側先端部凹状係合溝23と係合し折れ曲り支点22よりの回動を阻止し、操作レバー2が回動しシャッター32を開閉できる。また、プッシュロット20bから手を離すと、圧縮バネ20cにより上方に付勢されているため上昇し係合が解除され、先端操作レバー20は折れ曲り支点22部において回動自在となる。本実施例においての農作業機は肥料散布機の実施例を示したが、走行車側に操作レバーが突設したその他の農作業機においても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施した肥料散布機の側面図
【図2】本発明を実施した操作レバーの横断面図
【図3】本発明を実施した操作レバーの回動固定時の横断面図
【図4】操作レバーの後方視断面図
【図5】別実施例の操作レバーの横断面図
【図6】本発明実施例の肥料散布機の斜視図
【図7】走行車に連結した肥料散布機を昇降した場合の側面説明図
【図8】本発明を実施したスピンナータイプ肥料散布機の実施例側面図
【符号の説明】
【0029】
1 農作業機
10 フレーム
11 肥料タンク
12 上面カバー
13 入力軸
14 アジテータ
15 ロワリンクピン
16 トップブラケット
17 レバーガイド
18 シャッター
18a シャッターアーム
18b シャッターロット
2 操作レバー
20 先端操作レバー
20a グリップ
20b プッシュロット
20c 圧縮バネ
20d ガイドピン
20e レバー
20f レバー支点
20g 連結ピン
20h レバー回動支点
21 回動固定機構
22 折れ曲り支点
23 係合溝
24 ネジリバネ
25 ロックナット
26 支点ピン
30 ギヤケース
31 スピンナー
32 シャッター
33 ホッパー
34 連結ロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に乗車した作業者が運転席から操作する操作レバーを有する走行車に連結されて作業する農作業機において、前記操作レバーは、該操作レバーが機能する回動とは別に先端部が前後方向に回動自在な折れ曲り支点を有し、該折れ曲り支点部は、操作レバー先端握り部からの操作が可能な折れ曲り支点回動固定機構により回動を固定または解除可能に設けているとともに、操作レバー先端握り部が走行車側である前方に折れ曲り支点部を中心に回動するようにバネで付勢されていて、折れ曲り支点回動固定機構が解除時において操作レバー先端が後方に回動された後は自動的に前方の元の位置に前記バネの付勢力により復帰することを特徴とする走行車に装着される農作業機の操作レバー。
【請求項2】
折れ曲り支点回動固定機構は、作業者が操作レバー先端握り部で操作している間のみ後方への回動を固定可能な構造である請求項1記載の走行車に装着される農作業機の操作レバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−129950(P2007−129950A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325871(P2005−325871)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】