説明

起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置

【課題】操作ハンドルを固定ケースに対して再錠止することなくキーを抜きとることができる起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置を提供する。
【解決手段】ロック本体10が対面する操作ハンドル8の先端部の貫通孔13を通過不能なキー14を有し、ロックレバー21に逆止レバー26を枢着し、先端フック部23がフック受部18に係合するように第1バネ部材24でロックレバー21を回転付勢し、爪部28が爪受部19に係合するように第2バネ部材29で逆止レバー26を回転付勢し、キー14によってロータ11を回転させて、ロックレバー21の先端フック部23を錠止アーム17のフック受部18から離脱させるとともに、逆止レバー26の爪部28を錠止アーム17の爪受部19に係合させてロックレバー21を無効化位置に留置し、無効化位置にロックレバー21を保持したままキー14を施錠位置まで逆回転させて前記貫通孔から抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機器類の収納ボックスなどの扉の施錠と開閉操作に使用される起伏回転操作型の扉用ロックハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定ケースに対して操作ハンドルを起伏回転可能に枢着し、固定ケース側に内蔵したロック本体又は操作ハンドル側に内蔵したロック本体によって操作ハンドルを倒伏位置に錠止するようにした扉用ロックハンドル装置は、既に知られている(ロック本体を固定ケース側に内蔵したものとしては、特許文献1及び特許文献2参照、ロック本体を操作ハンドル側に内蔵したものとしては、特許文献3及び特許文献参照)。
【0003】
ロック本体を固定ケース側に内蔵させる方式の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置では、これまでは操作ハンドルの長さが固定ケースの長さよりも短く設定され、ロック本体は操作ハンドルが覆われない余長部分に内蔵されているため、操作ハンドルとキーとの干渉問題等は生じていなかった。
ところが、操作ハンドルの長さを固定ケースの長さとほぼ同等に設定し、操作ハンドルの先端部分に前後方向に形成した貫通孔を通してキーの抜き差しを行なうようにした新型の扉用ロックハンドル装置では、2つの点で問題が生じた。
【0004】
第1の問題は、キー主体部の横幅寸法が前記貫通孔の直径よりも大きい場合、キーを解錠位置に回して固定ケースに対する操作ハンドルの錠止を解除した後、キーをロータ本体に挿入したまま放置したときには、キーが前記貫通孔の縁部が引っ掛かるため、操作ハンドルを起立回転させることができないことである。
第2の問題は、キーを施錠位置に逆回転させてからキーをロック本体から抜き取って置けば、前記貫通孔とキーとの干渉問題自体は解決することはできるが、前記キーの抜き取りのためには前記ロック本体のロータを施錠位置まで逆回転させる必要があるのであるが、ロータをそのように逆回転させたときには、ロータに連動する錠止機構が作動して操作ハンドルが固定ケースに対して再び錠止されてしまうことである。
【0005】
特許第4188691号公報に開示されているように、キーとロック本体にCPUを内蔵することで開錠スケジュール、アクセスの可否、アクセスログの収集などを可能にした新型の電子ロックを適用したキーとロック本体を扉用ロックハンドル装置に組み込む場合には、CPU等の内蔵によってキーが大型化しているため、キーと操作ハンドルの貫通孔との第1の干渉の問題を回避できず、また、この電子ロックではキーを施錠位置に戻してからロック本体より抜きとる構造であるため、第2の再錠止の問題も回避できない。
【0006】
【特許文献1】特開平8−109762号公報
【特許文献1】特開平7−034737号公報
【特許文献1】特開平8−246723号公報
【特許文献1】特開平8−105251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、操作ハンドルを固定ケースに対して再錠止することなくキーを抜きとることができ、大型キーを使用するロック本体の組み込みも容易である起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置は、固定ケースに対して操作ハンドルを起伏回転可能に枢着し、前記固定ケース側にロック本体を内蔵させ、前記固定ケース側に枢着したロックレバーの先端フック部を前記操作ハンドルの背面側に形成した錠止アームのフック受部に係合させることによって、前記操作ハンドルを倒伏位置に拘束する一方、前記ロック本体に挿入したキーによって前記ロック本体のロータを解錠方向に回転させ、前記ロータに連結した駆動カム板によって前記ロックレバーを駆動して、前記先端フック部を前記フック受部から離脱させることによって、前記操作ハンドルを起立回転させるようにしてあり、
前記操作ハンドルの先端部に前記ロック本体が対面する貫通孔を前後方向に形成し、施錠位置においてのみ前記ロック本体に抜き差しされるキーを、前記貫通孔を通過可能な挿入端部と前記貫通孔を通過不能なキー主体部とで構成し、前記錠止アームに前記フック受部よりも後方にずらした位置に爪受部を形成し、前記ロックレバーの中間部に逆止レバーを枢着し、前記逆止レバーの先端部に前記爪受部に係合する爪部を形成し、前記先端フック部が前記フック受部に係合するように第1バネ部材によって前記ロックレバーを回転付勢し、前記爪部が前記爪受部に係合するように第2バネ部材によって前記逆止レバーを回転付勢してあり、
施錠位置において前記キーの挿入端部を前記ロック本体に挿入して前記ロータを所定方向に回転させることによって、前記駆動カム板により前記ロックレバーのカム従動部を押し、前記ロックレバーの前記先端フック部を前記錠止アームの前記フック受部から離脱させるとともに、前記逆止レバーの前記爪部を前記錠止アームの前記爪受部に係合させることによって、前記ロックレバーを前記先端フック部が前記フック受部から離脱した無効化位置に留置し、この無効化位置に前記ロックレバーを保持した状態において、前記キーを施錠位置まで逆回転させ、前記挿入端部を前記ロック本体の頭部及び前記操作ハンドルの前記貫通孔から抜き取るようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成された本発明の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置では、施錠位置においてのみ前記ロック本体に抜き差しされる前記キーを、前記操作ハンドルの前記貫通孔を通過可能な挿入端部と前記貫通孔を通過不能なキー主体部とで構成し、操作ハンドル背面側の前記錠止アームに前記フック受部よりも後方にずらした位置に爪受部を形成し、前記ロックレバーの中間部に枢着した前記逆止レバーの先端部に前記爪受部に係合する爪部を形成し、前記先端フック部が前記フック受部に係合するように第1バネ部材によって前記ロックレバーを回転付勢し、前記爪部が前記爪受部に係合するように第2バネ部材によって前記逆止レバーを回転付勢し、施錠位置において前記キーの挿入端部を前記ロック本体に挿入して前記ロータを所定方向に回転させることによって、前記駆動カム板により前記ロックレバーのカム従動部を押し、前記ロックレバーの前記先端フック部を前記錠止アームの前記フック受部から離脱させたときに、前記逆止レバーの前記爪部を前記錠止アームの前記爪受部に係合させることによって、前記ロックレバーを前記先端フック部が前記フック受部から離脱した無効化位置に留置し、この無効化位置に前記ロックレバーを保持した状態において、前記キーを施錠位置まで逆回転させ、前記挿入端部を前記ロック本体の頭部及び前記操作ハンドルの前記貫通孔から抜き取るようにしたものであるから、前記操作ハンドルが前記固定ケースに再錠止される事態を生じさせることなく、前記操作ハンドルの起立回転操作に先行して、前記キーを前記ロック本体から抜き取ることができ、操作ハンドルの長大化、キーの大型化に的確に対応することができる。
【実施例】
【0010】
図示の実施例では、扉1に固着される固定ケース2の端部背面側に軸受筒部3を突設し、軸受筒部3に回転可能に嵌め入れた主軸4の後端部に固定枠体側の受金部(図示していない)に係脱する錠止板5を連結し、主軸4の前端部に接合ボス部6を突設し、扉1と平行な横断枢軸7によって接合ボス部6に操作ハンドル8の基端部を枢着して、操作ハンドル8を固定ケース2に対して起伏回転可能に装着してある。
【0011】
固定ケース2の軸受筒部3とは反対の端部にロック収容部9を突設し、ロック収容部9に収容固定したロック本体10のロータ11の後端部に駆動カム板12を連結してある。操作ハンドル8の先端部には、ロック本体10の頭部に対面した位置に前後方向の貫通孔13を形成してあり、操作ハンドル8の倒伏状態では、貫通孔13内にロック本体10の頭部が入り込んでいる。
【0012】
キー14は、操作ハンドル8を固定ケース2に起立不能に錠止した施錠位置においてのみロック本体10に抜き差しされるものであり、キー14は、貫通孔13を通過してロック本体10の頭部に抜き差しされる挿入端部15と貫通孔13を通過不能なキー主体部16とで構成されている。キー及びロック本体としては従来型のシリンダー錠の他に前記した新型の電子ロック装置を使用することもできる。
【0013】
錠止アーム17は操作ハンドル8の中間部背面に突設され、操作ハンドル8の倒伏状態では錠止アーム17は固定ケース2に入り込む。錠止アーム17の先端部には、フック受部18及び爪受部19を前後に位置をずらして形成してある。固定ケース2の内底壁20には、錠止アーム17に対面した位置にロックレバー21を配置し、横断枢軸7と平行な第1支軸22によってロックレバー21を固定ケース2に枢着してある。第1支軸22より前方に形成した先端フック部23が錠止アーム17のフック受部18に係合するようにコイルバネよりなる第1バネ部材24によってロックレバー21が回転付勢されている。
【0014】
第1支軸22より後方に形成したロックレバー21のカム従動部25は、駆動カム板12の回転軌跡上に配置されている。錠止アーム17に対面した位置に逆止レバー26を配置し、逆止レバー26の基端部を横断枢軸7と平行な第2支軸27によってロックレバー21の中間部に枢着してあり、逆止レバー26の爪部28が錠止アーム17の爪受部19に係合するようにコイルバネよりなる第2バネ部材29によって逆止レバー26が回転付勢されている。逆止レバー26は、ロックレバー21の中間部に上下方向に貫通して形成した角型の透孔35に基端部を挿入され、透孔35の内面35a、35bとの接触によって回転角度を一定範囲に規制されている。
【0015】
本実施例では、バネ板30を中央透孔31にて主軸4の接合ボス部6に相対回転不能に嵌め合わせてあり、操作ハンドル8の基端部背面には鈍角に交差している2つの斜面32,33が形成されている。操作ハンドル8が倒伏位置にあるとき、両斜面32、33の交叉する稜線部34が主軸4の長さ方向軸線の上側においてバネ板30に圧接しているため、図2において操作ハンドル8は横断枢軸7を中心に反時計回り方向に回転付勢されており、操作ハンドル8は当該倒伏位置に保持されている。
【0016】
操作ハンドル8の先端部背面に指先を掛けて操作ハンドル8を起立回転させたとき、上記稜線部34とバネ板30との圧接点が下側に移動する。稜線部34とバネ板30との圧接点が主軸4の長さ方向軸線を下側に越えた瞬間に、バネ板30による付勢方向が逆転し、操作ハンドルは図2において時計回り方向に回転付勢され、操作ハンドル8は斜めに起立した状態に保持される。この起立状態において操作ハンドルが軸受筒部3を中心に回されると、主軸4が一体に回され、錠止板5が固定枠体側の受金部(図示していない)に係脱する。
【0017】
操作ハンドル8が固定ケース2に対して拘束されている施錠位置において、キー14の挿入端部15をロック本体10の頭部に挿入して、ロック本体10に対するロータ11の回転拘束を解除し、ロータ11を所定方向に回転させると、駆動カム板12がロックレバー21のカム従動部25を押す。カム従動部25が押されることによって、ロックレバー21が第1支軸22を中心に第1バネ部材24の付勢によって回転するため、ロックレバー21の先端フック部23が錠止アーム17のフック受部18から離脱する。これとほぼ同時に、逆止レバー26が第2支軸27を中心に第2バネ部材29の付勢によって回転するため、逆止レバー26の爪部28が錠止アーム17の爪受部19に係合することになる。この一連の作動によって、ロックレバー21は先端フック部23がフック受部18から離脱した無効化位置に留置される。
【0018】
この無効化位置にロックレバー21を保持した状態において、キー14を施錠位置まで逆回転させ、挿入端部15をロック本体10の頭部及び操作ハンドル8の貫通孔13から抜き取るのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置の背面図である。
【図4】図1の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置に組み込んだロックレバーの右側面図である。
【図5】図4のロックレバーの背面図である。
【図6】図4のロックレバーの平面図である。
【図7】図1の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置に組み込んだ逆止レバーの右側面図である。
【図8】図1の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置においてロックレバーが有効に機能している状態を示した要部拡大断面図である。
【図9】図1の起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置においてロックレバーが無効化位置に保持されている状態を示した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 扉
2 固定ケース
3 固定ケースの軸受筒部
4 主軸
5 錠止板
6 主軸の接合ボス部
7 横断枢軸
8 操作ハンドル
9 固定ケースのロック収容部
10 ロック本体
11 ロック本体のロータ
12 駆動カム板
13 操作ハンドルの貫通孔
14 キー
15 キーの挿入端部
16 キー主体部
17 操作ハンドルの錠止アーム
18 錠止アームのフック受部
19 錠止アームの爪受部
20 固定ケースの内底壁
21 ロックレバー
22 第1支軸
23 ロックレバーの先端フック部
24 第1バネ部材
25 ロックレバーのカム従動部
26 逆止レバー
27 第2支軸
28 逆止レバーの爪部
29 第2バネ部材
30 バネ板
31 バネ板の中央透
32 操作ハンドルの基端部背面の斜面
33 操作ハンドルの基端部背面の斜面
34 稜線部
35 ロックレバーの透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ケースに対して操作ハンドルを起伏回転可能に枢着し、前記固定ケース側にロック本体を内蔵させ、前記固定ケース側に枢着したロックレバーの先端フック部を前記操作ハンドルの背面側に形成した錠止アームのフック受部に係合させることによって、前記操作ハンドルを倒伏位置に拘束する一方、前記ロック本体に挿入したキーによって前記ロック本体のロータを解錠方向に回転させ、前記ロータに連結した駆動カム板によって前記ロックレバーを駆動して、前記先端フック部を前記フック受部から離脱させることによって、前記操作ハンドルを起立回転させるようにしてあり、
前記操作ハンドルの先端部に前記ロック本体が対面する貫通孔を前後方向に形成し、施錠位置においてのみ前記ロック本体に抜き差しされるキーを、前記貫通孔を通過可能な挿入端部と前記貫通孔を通過不能なキー主体部とで構成し、前記錠止アームに前記フック受部よりも後方にずらした位置に爪受部を形成し、前記ロックレバーの中間部に逆止レバーを枢着し、前記逆止レバーの先端部に前記爪受部に係合する爪部を形成し、前記先端フック部が前記フック受部に係合するように第1バネ部材によって前記ロックレバーを回転付勢し、前記爪部が前記爪受部に係合するように第2バネ部材によって前記逆止レバーを回転付勢してあり、
施錠位置において前記キーの挿入端部を前記ロック本体に挿入して前記ロータを所定方向に回転させることによって、前記駆動カム板により前記ロックレバーのカム従動部を押し、前記ロックレバーの前記先端フック部を前記錠止アームの前記フック受部から離脱させるとともに、前記逆止レバーの前記爪部を前記錠止アームの前記爪受部に係合させることによって、前記ロックレバーを前記先端フック部が前記フック受部から離脱した無効化位置に留置し、この無効化位置に前記ロックレバーを保持した状態において、前記キーを施錠位置まで逆回転させ、前記挿入端部を前記ロック本体の頭部及び前記操作ハンドルの前記貫通孔から抜き取るようにした起伏回転操作型扉用ロックハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144464(P2010−144464A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325039(P2008−325039)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)