説明

超吸収性重合体の製造のための連続的重合方法

【課題】吸水性・水不溶性重合体を製造するための改良された方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも3つの帯域を含む反応器系で単量体を連続的に重合することからなる吸水性・水不溶性重合体の製造方法であって、第一の帯域は、単量体、開始剤および水が、単量体の重合が開始されるような条件下で、連続的に供給される開始帯域であり、第二の帯域はゲル相帯域であり、第三の帯域は造粒帯域であり、反応器系は第二および第三の帯域中に少なくとも2つの回転軸を有し、第二および第三の帯域の中の最高点温度は50〜100℃であり、かつ第一の帯域に供給される水の少なくとも一部が、随意に、蒸気の形態であることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超吸収性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収性重合体は、おむつのようなパーソナルケア用品に普通に使用されているよく知られた物質である。これらの重合体は、例えば水、食塩水、尿、血液および漿液状の体液を、その質量の数倍吸収することが知られている。
【0003】
超吸収性重合体を製造するいくつかの方法が知られており、その中には撹拌式および非撹拌式の回分式および連続式の方法がある。例えば、米国特許第4,857,610号明細書(特許文献1)は、コンベヤベルトの上で水溶性重合体を重合するための撹拌しない回分式または連続式方法を開示している。特開昭57−34101号公報(特許文献2)は、複数の回転するアームがある反応器を使用する回分式重合方法を開示している。欧州特許第0303440号明細書(特許文献3)は、各々に撹拌羽根が取り付けられた複数の回転軸がある反応槽中でのバッチ重合を教示しており、その方法は連続的にも行うことができると述べられている。特開昭56−32514号公報(特許文献4)では、反応物が栓流反応器に入るときに、反応物を混合するために、静的混合器が使用されている。米国特許第4,769,427号明細書(特許文献5)は一つの回転軸がある容器中での連続重合方法を教示している。複数の回転軸がある容器中での連続重合方法は米国特許第4,625,001号明細書(特許文献6)に教示されている。これらの方法にはすべて様々な欠点や欠陥がある。したがって、超吸収性重合体を製造するための改良された連続方法を持つことは望ましいであろう。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,857,610号明細書
【特許文献2】特開昭57−34101号公報
【特許文献3】欧州特許第0303440号明細書
【特許文献4】特開昭56−32514号公報
【特許文献5】米国特許第4,769,427号明細書
【特許文献6】米国特許第4,625,001号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は吸水性・水不溶性重合体を製造するための改良された方法を含む。その方法は、少なくとも3つの帯域を含む反応器系で単量体を連続的に重合することからなり、第一の帯域は、単量体、開始剤および水が、単量体の重合が開始されるような条件下で、連続的に供給される開始帯域であり、第二の帯域はゲル相帯域であり、第三の帯域は造粒帯域であり、反応器系は第二および第三の帯域のそれぞれに少なくとも2つの回転軸を有し、第二および第三の帯域の中の最高点温度は50〜100℃であり、かつ第一の帯域に供給される水の少なくとも一部が、随意に、蒸気の形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の方法においては、超吸収性重合体は少なくとも3つの帯域を含む反応系で連続的に製造される。第一の帯域は開始帯域である。第二の帯域は粘性ゲル帯域であり、第三の帯域は粒状ゲル帯域である。随意に、乾燥のようなさらなる処理の前に、重合を終了し、重合体を保持するための第四の帯域を使用してもよい。本発明の好ましい方法は、共有結合架橋剤および開始剤の存在下で適当な単量体を重合することを含む。
【0007】
本発明の方法によって適切に調製された水で膨潤するまたは軽く架橋した親水性の重合体は、大量の液体を吸収することができるいかなる既知の親水性の重合体であってもよい。特に、好ましい吸水性重合体はカルボキシル基を含む吸水性重合体である。好ましくは、100グラムの吸水性重合体につき少なくとも約0.01当量のカルボキシル基が存在する。好ましいカルボキシル含有吸水性重合体の中には、デンプン・アクリル酸またはポリビニルアルコールグラフト共重合体の部分的中和生成物、アクリルアミド共重合体の水解物の架橋生成物、ポリアクリル酸の部分的中和生成物および部分的中和ポリアクリル酸の架橋生成物がある。
【0008】
適当なα,β−エチレン性不飽和単量体には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびそれらのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドならびに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびその塩がある。好ましい単量体には、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびにそれらのそれぞれの塩(たとえばアルカリ金属塩またはアンモニウム塩)がある。好ましくは、単量体は水溶性である。水溶性単量体は、単量体水溶液の全質量を基準にして10〜80質量%の範囲の量の水溶液で用いることができる。好ましくは、単量体の量は、単量体水溶液の全質量を基準にして15〜60%の範囲である。随意に、例えばアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルを含む酸単量体のアルキルエステルのような他の水溶性不飽和単量体が少量、吸水性重合体の中に存在してもよい。さらに、例えばポリビニルアルコール、デンプンおよび水溶性または膨潤性セルロースエーテルのようなある種のグラフト重合体が製品を製造するために用いられてもよい。そのようなグラフト重合体を用いるときは、グラフト重合体はα,β−エチレン性不飽和単量体を基準にして約10質量%までの量で使用される。単量体の混合物を用いてもよい。
【0009】
重合は、中和されていない、または重合に先立って完全にもしくは部分的に中和された酸単量体を使用して実行してもよい。中和は、好都合には、酸単量体中に存在する酸性団の20〜95%を中和するのに十分な量の塩基に単量体水溶液を接触させることによって達成される。塩基の量は、好ましくは、酸単量体中に存在する酸性団の40〜85%、最も好ましくは55〜75%を中和するのに十分な量である。
【0010】
単量体の酸性団を中和するのに有用な適当な化合物には、重合方法に有害な影響を与えることなしに、酸性団を十分に中和する塩基がある。そのような化合物の具体例としては、アルカリ金属水酸化物ならびにアルカリ金属炭酸塩および重炭酸塩が挙げられる。塩基の混合物を用いてもよい。好ましくは、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩が単量体を中和するために用いられる。所望の中和度を決定する際には、吸収される水溶性液体と接触されるかまたはその水溶性液体中に分散されるであろう、結果として生じる架橋吸収性重合体のpHが、重合体の予定された用途に適した範囲に維持されることを確認するよう注意しなければならない。代わりに、当技術分野において知られているように、重合は、中和されていない単量体を用い、その後中和して行ってもよい。
【0011】
従来のビニル付加重合開始剤が、水溶性単量体と架橋剤の重合に好都合に使用される。重合を開始するのに十分単量体溶液に溶ける遊離基重合開始剤が好ましい。例えば過硫酸カリウム、加硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよびその他のアルカリ金属過硫酸塩のような水溶性過硫酸塩、過酸化水素、ならびに2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)塩酸塩のような水溶性アゾ化合物を使用してもよい。過酸化水素のようなこれらの開始剤のうちのいくつかは、既知のレドックス型開始剤を形成するために、亜硫酸塩、アミンまたはアスコルビン酸のような還元剤物質と組み合わせることができる。使用される開始剤の合計量は、α,β−エチレン性不飽和単量体の全質量を基準にして、0.01〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲であってもよい。
【0012】
吸水性重合体は、それを水不溶性および水膨潤性にするために、好ましくは軽く共有結合架橋される。所望の架橋構造は、選択された水溶性単量体と、分子単位に少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋剤の共重合によって得ることができる。架橋剤は、水溶性重合体を共有結合架橋するのに効果的な量で使用される。架橋剤の好ましい量は、所望の吸収能力の程度および吸収された液体を保持するために必要な強さすなわち所望の荷重下吸収(AUL)によって決定される。架橋剤は、使用されるα,β−エチレン性不飽和単量体100質量部につき0.0005〜5質量部の範囲の量で好都合に使用される。より好ましくは、その量は、α,β−エチレン性不飽和単量体100質量部につき0.1〜1質量部の範囲である。通常、単量体100質量部当たり約5質量部を超える量の架橋剤を使用すると、生じる重合体は高すぎる架橋密度を持ち、吸収能力の低下およびAULの増加を示すであろう。架橋剤を単量体100質量部当たり0.0005質量部未満の量で使用すると、重合体は通常低すぎる架橋密度を持ち、吸収される液体と接触したとき粘稠になり、より低い初期吸収速度を示す。
【0013】
共有結合架橋剤はα,β−エチレン性不飽和単量体の水溶液に溶けるのが好ましいが、架橋剤はそのような溶液に単に分散されていてもよい。適当な分散剤の使用は米国特許第4,833,222号明細書に開示されており、その教示は引用によってここに含まれる。適当な分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース沈殿防止剤、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルアルコールが挙げられる。そのような分散剤は、好都合には、α,β−エチレン性不飽和単量体の全質量を基準にして0.005〜0.1質量%の濃度で供給される。
【0014】
適当な共有結合架橋剤には、CH2=CHCO−、CH2=C(CH3)CO−およびCH2=CH−CH2−からなる群から選択された基を1分子中に2〜4個有する化合物がある。典型的な共有結合架橋剤としては、ジアリルアミン;トリアリルアミン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールのジアクリル酸エステルおよびジメタクリル酸エステル;トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールのトリアクリル酸エステルおよびトリメタクリル酸エステル;ペンタエリトリトールのテトラアクリル酸エステルおよびテトラメタクリル酸エステル;メタクリル酸アリル;およびテトラアリルオキシエタン;およびトリアクリル酸高エトキシ化トリメチロールプロパンのような、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールのテトラアクリル酸エステルおよびテトラメタクリル酸エステルおよびメタクリル酸アリルの高エトキシ化誘導体が挙げられる。共有結合架橋剤の混合物を用いてもよい。
【0015】
重合体を本発明の実施に有用にするための好ましい実施態様においては、部分的に中和された形のα,β−エチレン性不飽和単量体、共有結合架橋剤、開始剤、およびもし望まれればグラフト重合体基質の水溶液が調製される。その混合物の重合は、開始剤を含む混合物の温度を上げることによって、または上述したようなレドックス型開始剤を使用することによって開始することができる。連続操作における開始温度は、以下に記述されるように、第一の帯域の温度になるであろう。当業者によって理解されるように、重合が行なわれる温度は、使用される単量体のタイプおよび用いられる特定の開始剤系に大いに依存する。重合の最高温度は、好ましくは50〜100℃であり、最も好ましくは60〜85℃である。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1つの単量体、水および少なくとも1つの開始剤を含む供給原料混合物が、反応系の第一の帯域に連続的に供給される。もし望むならば、供給原料混合物の温度は外界温度より高くてもよい。供給原料混合物の温度は、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜35℃である。供給原料混合物は、好ましくは液相である。
【0017】
反応系の第一の帯域は開始帯域である。この帯域は、1つの比較的粘性のある液相を含んでいてもよいし、好ましくは液体供給原料流れと部分的に重合した重合体固体の比較的低粘度の二相混合物を含んでいてもよい。この二相混合物は、粘性のある相より高い混合度を可能にし、この帯域に適用される任意の温度制御手段の改善された効率を促進するので、この二相混合物は有利である。二相状態においては、新しい単量体は、第一の帯域において部分的に重合された物質と容易に混合される。高い混合度が第一の帯域において達成される。したがって、反応物の内部の良好な熱交換がこの帯域において観察される。好都合には、第一の帯域への供給原料は、単量体濃度が、第一の帯域への供給原料の質量を基準にして少なくとも35質量%、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも45質量%である。第一の帯域の温度は好ましくは30〜100℃である。より好ましくは、第一の帯域の温度は40〜85℃である。本発明の1つの実施態様において、水蒸気が、水と熱の両方の供給源として第一の帯域に供給される。好ましくは、第一の帯域に供給される水の0.5〜5質量%が水蒸気の形である。この帯域の転化率は約40%まででもよい。好ましくは、第一の帯域の転化率は10〜40%である。第一の帯域の滞留時間は、すべての反応帯域の全滞留時間の20〜50%である。
【0018】
第一の帯域中の比較的自由に流れる物質とは対照的に、第二の帯域中の物質は非常に粘稠なゲルである。第二の帯域中の高い粘度を考慮して、この帯域を通り抜ける物質は、大部分は栓流状態で通り抜ける。第二の帯域の末端における重合体への単量体の転化率は、好ましくは50〜75%である。概して言えば、第二の帯域の中のゲル物質の温度は、それがその帯域を通って移動するにつれて、徐々に増加する。第二の帯域中の温度は、好ましくは50〜85℃である。この帯域中の重合体の滞留時間は、すべての反応帯域の全滞留時間の20〜50%である。
【0019】
第三の帯域の機能はゲルの塊を自由に流動する粒状の物質に変えることである。第二の帯域から第三の帯域へ、反応系中の重合体は非常に粘稠なゲルから比較的自由に流動する粒状のゲルに変化する。生産工程のこの段階では、重合反応はほとんど完了しており、転化率は、好ましくは、重合体が反応器を出る時までに少なくとも90%であり、99.9%まででも、それより高くてもよい。この帯域中の温度は比較的安定している。この帯域における重合体の滞留時間は、すべての反応帯域における物質の全滞留時間の10〜60%である。全滞留時間が100%を越える滞留時間にはなり得ないことは当業者によって理解されるであろう。
【0020】
少なくとも第二の帯域と第三の帯域は減圧下で操作されることが好ましい。操作圧は好ましくは100〜800mbar、より好ましくは200〜600mbarである。しかし、操作圧は第一の帯域中の液体が沸騰しないようなものであることも好ましい。正圧に対し、減圧下で操作することに関連した利点の中には、より低い操作温度があり、抽出物の減少および吸収特性の向上につながる。真空配管路に含まれているいかなる水も凝縮され第三の帯域へ戻されることもまた好ましい。第三の帯域に戻された凝縮液は、第三の帯域中の重合体ゲルの流動性を高める。望まれるときは、種々の添加物を、ここに述べるように、第二の帯域もしくは第三の帯域またはその両方において反応系に加えてもよい。
【0021】
本発明の方法の主要な利点の1つは、それが3つの反応帯域の形成と、各帯域における反応のための最も適正な温度に従って3つの帯域の各々の別個の分離した温度制御を可能にすることである。供給原料流れの温度と供給原料の単量体濃度のような他の温度制御手段の中で、最も適切な手段は、ジャケットとシャフトによる加熱または冷却、反応物質中への蒸気噴射、および減圧下での蒸発冷却である。反応器の大きさに依存するが、関連するセグメントのジャケットとシャフトを介しての温度制御は、特に実験室サイズやパイロットサイズの反応器には十分かもしれない。しかしながら、工業規模の反応器にとっては、その熱交換器表面は十分な熱交換には小さすぎることがある。この場合、ジャケットによる加熱および/または冷却と組み合わせた蒸気噴射および蒸発冷却は、種々の帯域において適切な温度制御を提供するであろう。
【0022】
本発明の1つの実施態様においては、反応系の3つの帯域はすべて1つの反応容器に含まれている。例えば、重合は、リスト社(List AG)から入手可能なORP型反応器に行うことができる。本発明のもう一つの実施態様においては、第一の帯域が1つの容器に含まれ、第二および第三の帯域が別の容器に含まれている。それぞれの実施態様は、他方に比べて長所を持っている。少なくとも第二および第三の帯域のための好ましい反応容器は、容器の軸に沿って容器内容物を少なくとも一部は運ぶ機能を有する2つのスクリューまたは混練アームを含む容器である。好ましい実施態様において、アームの1つは混練するアームの役割をし、他方は掃除するアームの役割をする。2つのアームの回転速度は同じであってもよいが、2つのアームの回転速度は異なることが好ましい。好ましくは、これらのアームは反対方向に回転し、アームの半径の描く範囲は重なり合っている。好ましい実施態様において、2つのアームはお互いに少なくとも実質的に平行である。しかしながら、3つ以上のアームを有する容器や、同一の方向に回転するアームを有する容器や、アームの半径の描く範囲が重ならない容器や、アームが少なくとも実質的に平行でない容器や、これらの任意の組合わせを用いることも可能である。随意に、容器の内側面は、容器の壁への反応器内容物の付着度を低下する目的で、例えばポリテトラフルオロエチレンで被覆してもよい。好ましい実施態様においては、容器のシャフトは追加の熱交換能力を提供するために冷却される。
【0023】
結果として生ずる重合体は、典型的には、当技術分野においてよく知られた手段を使用して、あらかじめ分粒され乾燥される。適当な乾燥手段には、流動床乾燥機、回転乾燥機、熱風乾燥機およびスルー・サーキュレーション・バンド乾燥機がある。ある場合には、乾燥は2つまたはそれ以上の段階起こるであろう、すなわち多段階乾燥であろう。乾燥の完了に続いて、重合体は好ましくは2mm未満、より好ましくは1mm未満の平均直径を有する粒子を形成するためにさらに分粒される。好ましくは、最終重合体生成物は、少なくとも160ミクロン、より好ましくは少なくとも200ミクロンの平均粒度を有する。
【0024】
もし望むならば、乾燥粒子は、国際公開公報第93/05080号パンフレットおよび/または米国特許第5,629,377号明細書に示された手法に従って熱処理してもよく、それらの教示は引用によってここに含まれる。そのような熱処理は、好ましくは少なくとも170℃、より好ましくは少なくとも180℃、最も好ましくは少なくとも190℃の温度で行なわれる。そのような熱処理は、好ましくは250℃未満、より好ましくは240℃未満の温度で行なわれる。熱処理の方法は重要ではない。例えば、熱風乾燥機、流動床加熱器および加熱したスクリューコンベヤーが、成功裡に用いることができる。もし望むならば、加熱された重合体は取り扱いを容易にするために再度加湿してもよい。
【0025】
重合体粒子の吸収特性を向上させる方法は重合体粒子を表面架橋することかもしれない。表面架橋のための手法は当技術分野においてよく知られており、例えば米国特許第4,734,478号明細書および米国特許第4,666,983号明細書に記述されている。これらの手法は重合体粒子のモジュラスおよび/または荷重下吸収性を増加するかもしれない。
【0026】
本発明によって製造された重合体は、随意に例えば固化防止剤および低粉塵添加物のような既知の添加物を含んでもよい。本発明の1つの実施態様においては、重合体微粉を第一の帯域へ導入することによって、重合体微粉は再利用される。重合体微粉の再利用は当技術分野において知られている。例えば、米国特許第5,342,899号明細書参照。
【0027】
超吸収性重合体は、薄いおよび極めて薄い使い捨てのおむつ、生理用ナプキン、失禁用衣服および包帯を含む使い捨てのおむつのような吸水性物品の製造に有用である。
【0028】
吸収性物品は、超吸収性重合体を5〜95質量%含むことができる。典型的な吸収性物品においては、超吸収性重合体は繊維マトリックス中に分散することができ、そのような物品においては、好都合には、超吸収性重合体は物品の質量を基準にして30〜70質量%の量で存在し、繊維マトリックスは物品の質量を基準にして70〜30質量%の量で存在する。別の形態の吸収性物品においては、超吸収性重合体は封じ込め組織体の中に存在してもよく、その中に超吸収性重合体は30〜95質量%の量で存在する。分散した超吸収性重合体と封じ込められた超吸収性重合体の組合わせも知られている。
【実施例】
【0029】
以下の実施例と比較実験は発明を例証するために挙げられ、発明の範囲を制限するものとして解釈されてはならない。特に断らない限り、部とパーセントはすべて質量基準である。
【0030】
吸収能力(AC)は、エフ・エル・ブーフホルツ(Buchholz, F.L.)およびエー・ティー・グレアム(Graham, A.T.)、「現代の超吸収性重合体技術(Modern Superabsorbent Polymer Technology)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)(1998)、153頁に述べられた方法に従って測定される。
【0031】
配合表
異なる3つの配合表を使用した。略語「AA基準で」は「アクリル酸を基準にして」を表し、これは中和される前のアクリル酸の質量を指す。用語「固形分」は、配合表に使用されるときは、配合表の成分のうち水でないものを指す。したがって、配合表1Aは、固形分45%なので、水が55%である。PEGはポリエチレングリコールを表わす。HE−TMPTAは高度にエトキシ化されたトリアクリル酸トリメチロールプロパンを表わす。VERSENEX 80は、ジエチレントリアミン五酢酸の五ナトリウム塩の水溶液で、ダウ・ケミカル社から入手可能である。略語「n.m.」は「測定されなかった」を表す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
反応器の組み立て
すべての試作について、リストORP25反応器(全容積30.6リットル)を用いた。反応器は3つのセグメントからなる概して円筒状の容器であり、各セグメントはそれ自身のジャケットを有している。撹拌機システムと3つのジャケットの各々の中の温度は、個々に制御することができる。取り出しセグメントはその端に垂直な導管を有し、その導管を通って重合体生成物は付属の生成物容器まで落ちることができる。もし望まれれば、強制的に生成物を放出するために、取り出しダブルスクリューを垂直な導管の中に挿入してもよい。
【0036】
大気圧で行なわれた重合実験のために、二方弁が反応器出口に備え付けられた。弁の一方の出口は、連続的に取り出された生成物を集める生成物容器につながれ、他方の弁出口はプラスチックホースにつながれ、そのホースは窒素パージされ、その遠い端はヒートシールされた。このプラスチックホースは、酸素排除下の操作中に試料を採取することを可能にした。反応器は13.5kWの駆動装置を装備していた。減圧下で行なわれる重合実験については、生成物容器の真空気密性の高い密封のために真っすぐな出口管路が取り付けられた。この管路は、反応器中の所望の減圧を維持しながら生成物容器を交換することができるように配管され弁が設けられた。その装置はまた、反応器に容器を通ずるようにする前に、容器から酸素を除去し容器を脱気することができるようにするシステムを含んでいた。
【0037】
各セグメント中の固体または固体/液体物質の温度(第一セグメントのためのT1、中央セグメントのためのT2および取り出しセグメントのためのT3)を測定するために、セグメントの各々に熱電対が装備された。熱電対はまた各セグメントの入口および出口の熱交換液体(水)の温度を測定する場所にもあった。供給端のフランジと、反応器の取り出し端に連結された通気孔システムは、反応器を窒素でパージするのを可能にした。反応器の上に取り付けた通気孔管路中の凝縮器が通気孔管路中の水蒸気を凝縮し、凝縮液は反応器の第三の帯域へ還流された。
【0038】
蠕動ポンプは、反応器の供給端に単量体混合物と開始剤を連続的に供給した。主開始剤(過硫酸ナトリウム)は、単量体供給管路の中に直接注入され、インラインの混合器で単量体と混合された。助開始剤は、ちょうど単量体混合物が前部フランジの穿孔を介して反応器に入る所の単量体供給原料に注入された。前部フランジの第二の穿孔は、開始帯域の反応物集合体へ水蒸気を直接噴射するための弁を支えた。
【0039】
上記の配合表に従って調製された単量体混合物は、蓋を閉めることができる150リットルのプラスチックドラム缶の中に装填された。蓋は、不活性ガスの浸った管、通気孔管路、酸素が除去された単量体混合物を取り出すための浸った管および新しく準備した混合物の供給に適した開口を有していた。この設備は、十分な脱酸素のための窒素流れによる気泡塔として操作された。
【0040】
乾燥SAP熱処理の方法
ゲル試料を、バンド乾燥機で20分間、または熱風乾燥機で2時間、170℃で乾燥した。乾燥した吸水性重合体粒子を以下のように熱処理した。帯域は、ホットエアーガンで予熱した。一旦目標温度に到達し安定したならば、重合体試料をその帯域に入れ、温度計を試料に接するように置いた。試料の温度が目標温度で安定するまで、試料の温度を監視し、試料を所望の時間目標温度に維持した。
【0041】
遠心分離吸収能力(CC)
吸水性重合体粒子の試料200mgを、よく売れるティーバッグ(63.5×76.2mm)に入れ、0.9%の食塩水(塩化ナトリウム)に30分間浸し、それから、1400rpmで3分間遠心分離した。乾燥した吸水性重合体粒子の最初の質量に対する、吸収された食塩水からブランク(ティーバッグの組織に吸収された食塩水)を引いた質量の比を決定し、遠心分離吸収能力(CC)として報告した。
【0042】
荷重下吸収(AUL)
ナイロン製ふるい(50×50mm、100メッシュ)を多孔性金属板の上に置き、続いて濾紙を、最後に内径26mm、外径37mm、高さ50mmの両端が開いたステンレス鋼円筒を置いた。吸水性重合体粒子167mgを円筒の中に入れ、均一に分布させた。直径26mmの不織布で重合体を覆い、おもりを載せた直径20mmのプラスチックピストンで下へ押しつけた。ピストンとピストンの上のおもりの総質量は109.4グラムであり、0.3psiの荷重を与えた。比例してより重いおもりをピストン上に置き、0.6psiおよび0.9psiの荷重を付加した。上部の円筒中の生成物と一緒に金属板を、0.9%食塩水に浸し、ナイロン製ふるいと溶液表面が同一の高さになるようにし、そして濾紙および吸水性重合体粒子が静水圧のない液体を吸収することができるようにした。粒子を1時間浸漬した。板を水槽から取り出し、金属板の穴の中とナイロン製ふるいの中の過剰液体をティッシュペーパーで吸い取った。その後、おもりを膨潤したゲルから取り除き、ゲルの重さを量った。吸水性重合体粒子に対する荷重下で吸収された食塩水の質量比を、荷重下吸収(AUL)として報告した。
【0043】
抽出物
吸水性重合体粒子1グラムと0.9%食塩水185グラムを250mlの瓶に入れ、蓋をして、16時間振動機上に置いた。抽出溶液の一部をろ過した。メトローム(Metrohm)製滴定装置(Titroprocesser)の助けを借りて、確定した体積の濾液のpHを、0.1N NaOHでpH10に調整し、最後に塩酸でpH2.7まで滴定して、濾液の中の抽出物の量を決定した。これから、吸水性重合体の中の抽出物の量を計算した。
【0044】
残留単量体
吸水性重合体粒子1グラムと0.9%食塩水185グラムを250mlの瓶に入れ、蓋をして、16時間振動機上に置いた。抽出溶液の一部をろ過し、ODSカラムと約205nmでのUV検出を利用する液体クロマトグラフに濾液の試料を注入した。残留単量体は、アクリル酸のピークのピーク面積を標準試料のそれと比較することによって計算した。
【0045】
実施例1
単量体混合物を配合表1Aに従って調製し、上記のプラスチックドラム缶の中に導入し、窒素でパージすることによって少なくとも30分間脱酸素した。10%過硫酸ナトリウム水溶液および1%アスコルビン酸水溶液は、別々の2リットル容器の中で調製し、その容器を脱酸素し、供給管路に取り付けた。すべてのジャケットセグメントおよび撹拌機システムの温度を60℃に設定し、不活性ガス雰囲気を維持するために500リットル/時間の窒素流を反応器に吹き込み、混練軸の速度を12rpmに設定した。反応器のすべてのセグメントについて熱交換液体の温度が設定点温度に達した後、単量体混合物の供給を開始し、供給流量を90kg/h(反応器容積全体の1リットル当たり毎時2.9kg)に設定した。単量体混合物は温度が22℃であった。開始剤は単量体供給原料と同時に供給した。過硫酸ナトリウムは45.25g/時間(アクリル酸基準で1350ppm)の流量で供給し、アスコルビン酸は4.68g/時間(アクリル酸基準で145ppm)の流量で供給した。約30分後、重合は定常状態に達した。これは、以下のように、反応器に沿って比較的一定な温度プロフィールを示した。T1(開始帯域)=54±3℃、T2(ゲル相)=81±3℃、T3=82℃、そして生成物が回収容器に入るときの生成物温度は約100℃であった。生成物容器は、生成物が比較的迅速に冷却することができるように、断熱されていなかった。
【0046】
この重合運転は中断なしで10時間行なった。ゲルの試料は、二方弁の第二の出口に固定されたプラスチックホースの中にゲルを約1kg充填することによって、連続操作の間に採取した。その後、ゲルの試料をホースの遠い端に移動し、試料と反応器の間でホースはヒートシールし、試料を含む部分をホースから切り取った。不活性なガス雰囲気下でそのように得られたゲルの試料を、単量体転化率を完結させるために、70℃で60分間乾燥器中に置いた。その後、ゲルの直径が1〜5mmになるようにゲルは分粒し、次に170℃で2時間熱風乾燥機で乾燥した。乾燥した重合体を家庭用器具(肉挽き機)で粉砕し、ふるいにかけた。すべての分析法のために、30〜50のメッシュ画分を用いた。
【0047】
これらの試料の評価データを表1において報告する。9つの試料の平均値も記載する。「RAA」は残留アクリル酸を表わす。
【0048】
【表4】

【0049】
粉砕され、ふるいにかけられた材料の試料は熱処理も受けた。この熱処理の間、生成物試料の温度が20分間220℃の温度で維持されるように重合体粒子を熱風流れと接触させた。試料評価から得られたデータを表2に報告する。
【0050】
【表5】

【0051】
この実施例は、与えられた条件の下で、連続重合が超吸収性重合体の製造に信頼して適用できることを示す。
【0052】
実施例2〜6
この系列においては、供給流量変更の影響を調べた。表3に示されるように変数を変更した点を除いて、実施例1で述べた実験と同一の手順および配合表を適用した。
【0053】
【表6】

【0054】
実施例1で述べたように、採取した試料を処理し、評価した。結果を表4にまとめた。
【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
実施例2〜6は供給流量が120kg/時間まで(全反応器容積1リットル当たり毎時約4kgまで)適用できることを示す。供給流量が増加するとともに、滞留時間は低下し、それ故、生成物の冷却が不十分になる。これは最高点温度の増加を引き起こすが、それが抽出物のわずかな増加および残留単量体値の増加の理由かもしれない。
【0058】
実施例7
配合表1Aは使用し、反応器にダブルスクリュー取り出しコンベヤーを装備した。反応器の加熱設備一式は、取り出しセグメントのジャケットを除き、すべて60℃に設定した。取り出しセグメントのジャケットは20℃に設定した。単量体混合物は60kg/時間の流量で供給され、混練スクリューの回転速度は12rpmであった。過硫酸ナトリウムは45.25グラム/時間(アクリル酸基準で1350ppm)の流量で供給され、アスコルビン酸は4.68グラム/時間(アクリル酸基準で145ppm)の流量で供給された。ゲルの試料を70℃で90分間乾燥器の中に保持した点以外は、実施例1と同一の手順を適用して、ゲルの試料を採取し、処理した。乾燥し、ふるいにかけられた生成物は以下の特性を有していた。CC=32.1g/g、AUL(0.3psi)=21.2g/g、抽出物8.6%、残留アクリル酸=603ppm。
【0059】
実施例8
配合表1B(固形物36%)を適用し、反応器の取り出しセグメントのジャケット温度を60℃で維持した点以外は、実施例7の手順を繰り返した。乾燥し、ふるいにかけられた生成物は以下の特性を有していた。CC=36.9g/g、AUL(0.3psi)=12.0g/g、抽出物9.7%、残留アクリル酸=458ppm。
【0060】
実施例9
ダブルスクリュー取り出しコンベヤーの代わりに、反応器の取り出し端に調整可能な堰を装備した点以外は、実施例7の手順を繰り返した。運転の間、堰は、次の程度に反応器取り出し口を閉じるように設定された。堰高さ0%、すなわち取り出し口は完全に開いている。堰高さ33%、すなわち取り出し口は33%閉じている。堰高さ66%、すなわち取り出し口は66%閉じている。
【0061】
ゲル試料を反応器の出口で採取し、さらなる処理をしないで粒度分布分析に供した。反応器から取り出されたゲルの粒度分布を決定するために、100gのゲルを採取し、粒状重合体ゲルの流動性を向上させるために、ゲルの全質量を基準にして3000ppmの界面活性剤Atlas G 1425(アイ・シー・アイ・サーファクタンツ(ICI Surfactants)から入手可能なポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体)と注意深く混合した。この処理されたゲルを、レッチェ(Retsch)AS200篩分機を使用して、表6に掲載したようなふるいで組み立てられたふるい塔を通してふるい分けた。以下の調節が選択された。振幅1mm、永久篩、およびふるい時間10分。分析の結果は、ゲル全体のうち、指定されたふるいの上に保持されたゲルの%で表6にまとめた。
【0062】
【表9】

【0063】
結果は、堰高さの増加とともに、充填度および同時に反応器内部の剪断が増加することを示す。その結果、反応器から取り出されるゲルの粒度が小さくなる。これらの実験における平均粒度は7〜12mmであった。
【0064】
実施例10
反応器の中の反応物集合体の温度プロフィールに影響を及ぼす選択肢を研究するために実験を行なった。
配合表1Aを使用した。反応器にダブルスクリュー取り出しコンベヤーを装備し、撹拌機の主軸は12rpmで操作した。反応器の加熱/冷却を止めた。単量体混合物供給流量は60kg/時間、開始剤濃度は、過硫酸ナトリウムを1350ppm(アクリル酸基準)およびアスコルビン酸を145ppm(アクリル酸基準)に設定した。
【0065】
実施例10A
温度がT1=71℃、T2=62℃およびT3=47℃に到達するまで、直接水蒸気噴射(2kg/時間)で反応器を加熱した。その後、水蒸気噴射は1kg/時間に減らされ、全運転時間中(この時点から7時間)、この水準に維持した。反応器圧力は約600mbarに調節した。原料供給は目標流量よりもゆっくりと開始し、所望の供給流量に到達するまで徐々に加速した。20〜30分後、反応器は定常状態になり、温度はT1=603℃、T2=85℃およびT3=82℃の水準で一定を維持した。実施例1とは対照的に、生成物は、反応器を出た後、87℃の温度であった。反応器出口での転化率は94.8%であった。
【0066】
実施例10B
反応器を水蒸気加熱しなかった点を除いて、実施例10Aの手順を繰り返した。代わりに、第一のセグメント(開始帯域)は60℃にジャケット加熱した。温度は、T1=62±1℃、T2=84℃、T3=80℃で安定した。温度が安定した後、単量体混合物中のFe3+イオンの濃度が3ppm(アクリル酸基準)になるような濃度で、Fe2(SO43を過硫酸塩溶液に加えた。温度は20〜30分後にT1=65±1℃、T2=84℃およびT3=80℃で安定した。反応器出口での転化率は97.6%であった。
【0067】
実施例10C
実施例10Aの最初の手順に従い、本質的に同一の温度に到達した。その後、鉄イオン5ppm(アクリル酸基準)を開始剤系に添加した。これは温度の変化をもたらし、次の温度が約1時間記録された。T1=70±1℃、T2=85℃、T3=82℃。水蒸気のスイッチを切り、セグメント1のジャケットを77℃に加熱した。重合は中断せずに継続され、温度はT3が約79℃に落ちた以外は、変化しなかった。反応器出口での転化率は98%であった。
【0068】
実施例10A〜Cの結果は、反応器内部温度が容易に調節され、重合の特定の段階のために望まれるように制御できることを示す。水蒸気噴射および/または金属イオン添加は、高い初期の重合速度に必要とされる水準で開始帯域内の温度を効率的に維持するであろう。ジャケット加熱が所望の熱交換の水準を提供するのに十分ではないようなより大きな規模ではこれが重要になるであろう。還流凝縮と組み合わせた減圧蒸発冷却もまた、最高点温度の制御に効果的であることが分かった。生成物温度は決して87℃を越えなかった。
【0069】
実施例11(反応器水平、60kg/h)
単量体混合物を配合表2Aにしたがって調製し、60kg/時間の流量で供給した点を除いて、実施例1の手順を繰り返した。重合実験を開始し、安定した一定の状態に到達するまで継続した。その後、単量体混合物供給原料を、標準供給原料から、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムによって酸を中和した点を除いて同一の配合物の供給原料に切り替えた。このカリウムを含む混合物は30秒間供給され、その後、供給原料は標準混合物に戻された。供給原料を標準供給原料へ戻した時点を、ゼロ滞留時間と定義する。ゲルの試料を、不活性気体雰囲気下で、時間2分から16分までは毎分、その後、時間30分まで2分毎に採取した。試料は、カリウムの蛍光の強度を決定するために、蛍光X線分析によって相対的カリウム濃度を分析した。値をプロットし、累積的なプロットから約5分の平均滞留時間が得られた。
【0070】
実施例12(反応器傾斜、60kg/h)
反応器の取り出し端を1.83°高くした点を除いて、実施例11の方法を繰り返した。約6.2分の平均滞留時間が求められた。
【0071】
実施例13(反応器水平、90kg/h)
供給流量を90kg/時間にした点を除いて、実施例11の方法を繰り返した。約4分の平均滞留時間が求められた。
結果はまた、供給原料のうちの80%が、条件によって、8分未満から12分の滞留時間を持ち、供給原料のうちの残りの20%がより長い滞留時間を持っていることも示す。
以下の4つの実験は、重合中の最高点温度制御の利点を実証する。
【0072】
実施例14
反応器の中の圧力を600mbarに設定し、単量体混合物を配合表2Aにし、60kg/h(反応器容積1リットル当たり毎時1.93kg)の流量で供給した点を除いて、実施例1の手順を繰り返した。確実で迅速な開始のために、1.2kgの水蒸気を開始帯域に注入した。反応物の温度は決して85℃を超えなかった。採取したゲル試料は、70℃で1時間保持し、その後さらに処理し評価した。得られた特性は、以下の表に報告する。
【0073】
実験14A(本発明の実施態様ではない)
反応器を大気圧に維持し、供給流量を90kg/時間(反応器容積1リットル当たり毎時2.9kgに増やした以外は、実験14を繰り返した。水蒸気は注入しなかった。得られたゲル試料は、温度が100℃であった。
【0074】
実施例15
重合反応が終了するまで生成物温度を80℃以下に維持するために、ジャケットのセグメント3を20℃(T3)に冷却した点以外は、実施例3(供給流量60kg/時間)を繰り返した。採取したゲル試料は、90分間100℃で保持し、その後、さらに処理した。
【0075】
実験15A(本発明の実施態様ではない)
供給流量を90kg/時間、すべてのセグメントのジャケットと軸の温度を60℃にして、実施例15を繰り返した。この設定は、生成物温度が取り出し端で100℃に上昇することを許した。
【0076】
【表10】

【0077】
前表中のデータは、85℃より高い最高点温度がより高い抽出物含量につながることを示す。実施例14においては温度制御のために減圧を適用した。実施例15においては、冷却は、ジャケット冷却法によって十分に達成された。実施例14および15ならびに比較実験14Aおよび15Aの結果の比較は、重合中の温度制御が重要であることを実証している。重合後に材料に適用された高い保持温度は、生成物の劣化にずっと少ない影響を及ぼす。生産規模においては、伝導性熱伝達に役に立つ低い表面/体積比のために、減圧が最も好ましい温度制御の選択肢になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の方法に使用される反応器の好ましい実施態様における3つの帯域を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの帯域を含む反応器系で単量体を連続的に重合することからなる吸水性・水不溶性重合体の製造方法であって、第一の帯域は、単量体、開始剤および水が、単量体の重合が開始されるような条件下で、連続的に供給される開始帯域であり、第二の帯域はゲル相帯域であり、第三の帯域は造粒帯域であり、反応器系は第二および第三の帯域中に少なくとも2つの回転軸を有し、第二および第三の帯域の中の最高点温度は50〜100℃であり、かつ第一の帯域に供給される水の少なくとも一部が、随意に、蒸気の形態であることを特徴とする方法。
【請求項2】
単量体が中和度50〜80モル%の部分的に中和したアクリル酸を25〜50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始帯域の温度が40〜85℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応器の中の最高点温度が、圧力を減らし、水を蒸発させ、凝縮液が第三の帯域へ戻されるような還流条件下で水を凝縮することにより、60〜85℃の温度範囲に維持されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
3つの帯域の合計平均滞留時間が4〜80分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一の帯域への全エネルギー供給量の50〜90%が重合反応の熱によって供給され、10〜40%が注入される蒸気によって供給され、0〜15%が反応器の壁を加熱することによって供給されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
反応器から取り出された重合体が0.2〜50mmの質量平均粒度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第一の帯域への原料供給流量が反応器容積1リットル当たり毎時0.5〜5kgであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第一の帯域への原料供給速度が反応器容積1リットル当たり毎時1.3〜3.3kgであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第三の帯域、取り出し流れ、またはその両方に過硫酸塩を導入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
単量体が水溶性混合物の中にあり、該混合物は第一の帯域に供給される前に向流の不活性気体によって脱酸素されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
3つの帯域の合計滞留時間が7〜20分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
3つの帯域が1つの反応器の中に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも第二および第三の帯域が1つの反応器の中に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第一の帯域は、第二および第三の帯域とは別の容器の中にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第一の帯域への供給原料の中の単量体濃度は、供給原料の質量を基準にして少なくとも45質量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
反応器系の中の軸の少なくとも2つは、半径の描く範囲が重なり合い、反対方向に回転することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも2つの軸が異なる速度で回転することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第一の帯域への供給原料が、単量体、開始剤および水の溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
単量体はアクリル酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
重合体微粉が再利用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも3つの帯域を含む反応器系で単量体を連続的に重合することからなる吸水性・水不溶性重合体の製造方法であって、第一の帯域は、単量体、開始剤および水が、単量体の重合が開始されるような条件下で、連続的に供給される開始帯域であり、第二の帯域は高粘性のゲル相帯域であり、第三の帯域は造粒帯域であり、反応器系は第二および第三の帯域中に少なくとも2つの回転軸を有し、反応器系の少なくとも第二および第三の帯域の圧力が大気中より低く、かつ第一の帯域に供給される水の少なくとも一部が、随意に、蒸気の形態であることを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−255366(P2008−255366A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−173508(P2008−173508)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願2003−526967(P2003−526967)の分割
【原出願日】平成14年8月26日(2002.8.26)
【出願人】(500001596)シュトックハウゼン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Stockhausen GmbH
【住所又は居所原語表記】Baekerpfad 25, D−47805 Krefeld, Germany
【Fターム(参考)】