説明

超純水中の微粒子数測定方法及び測定装置

【課題】超純水中に含まれる微粒子数を測定する方法及び装置を提供する。
【解決手段】一端に測定対象の超純水の流入口を有し、他端に流出口を有する筒状の装置本体と、装置本体の中空部を2分する水密隔壁と、水密隔壁を水密的に貫通し流出口側端部が封止された有効ろ過面積が8.8mm2〜37.7mm2で内表面がスキン層とされた中空糸膜を有する装置で、測定対象の超純水を内圧ろ過し、中空糸膜の内表面に捕捉された微粒子数を計測する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水中に含まれる微粒子数を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超純水製造設備等において要求水質が維持されていることを確認するための検査が行われている。水質管理項目の一つとして超純水1ml中の微粒子数が挙げられており、微粒子の管理方法としては、通常パーティクルカウンターでの測定や直接検鏡法による計測が用いられている。一般的な管理方法としては、オンラインモニターであるパーティクルカウンターにて日常の微粒子管理を行い、定期的、もしくはトラブル時などに直接検鏡法にて詳細な微粒子数を計測することが多い。
【0003】
直接検鏡法による計測では、例えば、超純水製造装置の出口水が流れる配管からサンプリング配管を分岐させ、超純水の一部を微粒子数測定用のろ過膜でろ過して超純水中の微粒子を膜表面で捕捉し計数している。微粒子数は、微粒子を捕捉したろ過膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、画像処理して計数している(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、ろ過膜は直径25mm程度で、電子顕微鏡の視野からすれば非常に広いため、全膜面を走査型電子顕微鏡等で直接観察して微粒子を計数することは困難である。
このため、膜面の一部について捕捉された微粒子数を電子顕微鏡の視野内で計数し、計算により超純水中に存在する微粒子数を求めている。
JIS K0554(1995)(超純水の微粒子測定方法)は、顕微鏡で微粒子数を計数して検査する場合、視野率を0.01%以上確保すべきものとしている。
視野率は、次式で示される。
視野率(%)=(SEMで確認した面積(mm))/(有効ろ過面積(mm))×100
ただし、
(SEMで確認した面積(mm))=(視野面積(mm))×(計数視野数)
(有効ろ過面積(mm))=(フィルタのろ過に用いられる領域の面積(mm))
である。
【0005】
近年、特に、半導体装置の製造分野では、超純水の水質のさらなる向上が求められており、微粒子数についても、例えば超純水1ml当たりに粒径0.05μm以上の微粒子が0.1〜1個以下、あるいは粒径0.03μm以上の微粒子が0.1〜10個以下という高いレベルが要求されている。
【0006】
このように超純水の微粒子数についての管理基準が高くなるにつれ、従来の直接検鏡法では以下のような問題が生じた。
例えばろ過膜として平膜を用いる場合、膜表面が剥き出しになっているため、平膜表面には、製膜工程や取扱工程等で測定対象の超純水に由来しないブランク粒子(汚染微粒子)が不可避的に付着し易い。新品であっても、粒径0.05μm以上の粒子が10〜10個/cm、粒径0.03μm以上の粒子では10〜10個/cmがブランク粒子(汚染微粒子)として付着している。
【0007】
したがって、分析精度を確保し分析下限値を引き下げるためには、捕捉粒子数がブランク粒子数(汚染微粒子)と同数又はそれ以上となるまで通水しなければならないという問題がある。例えば粒径0.05μm以上の粒子を、ブランクの粒子数が10〜10個/cmのとき、1個/mlのレベルで測定するためには、10ml=1mのろ過水量が必要となり、粒径0.03μm以上の粒子を、ブランクの粒子数が10〜10個/cmのとき、10個/mlのレベルで測定するためにも、10ml=1mのろ過水量が必要となり、通常のろ過速度ではろ過に長時間を要することになる。
【0008】
そして、このような微細粒径の微粒子をろ過膜で捕捉するためには、孔径がこれより小さいろ過膜を用いる必要があるが、ろ過膜の孔径を小さくするとろ過速度を大きくすることができないという問題がある。
例えば孔径0.1μmの平膜メンブレンフィルター(MF膜)のろ過速度は4.0ml/分(25℃、0.75kgf/cm)であるのに対して、孔径0.03μmの平膜MF膜の場合には、0.1ml/分(25℃、0.75kgf/cm)であり、10ml(10m)の超純水をろ過するには、10分、すなわち、166,667時間もかかることになり、事実上不可能である。
【0009】
このような点に対処して、超純水中の微粒子を捕捉可能なスキン層を少なくとも内表面に有する中空糸膜で超純水を内圧ろ過し、この中空糸膜の内表面を露出させて、その露出した内表面の微粒子数を測定する超純水中の微粒子数測定方法が提案された(特許文献2参照)。
この方法は、スキン層を内表面に有する中空糸膜を用いて超純水を内圧ろ過するので、ブランク粒子が少なくなり、分析精度が向上するとともに測定可能粒径が極小化し、さらに、ろ過時間が短縮し、計数作業も簡便化される、など多くの利点がある。
しかし、標準粒子を用いて、この方法の検証を進めたところ、この方法にもいくつかの改善すべき点があることが判明した。
すなわち、濃度既知の0.02μm〜0.5μmの標準粒子分散液を用いて、この中空糸膜による微粒子の視野率0.01%以上での回収率を測定したところ、回収率が予想値よりも非常に低く、スキン層表面での捕捉粒子の分布が不均一の場合があることが判明した。
【0010】
ここで回収率は、
回収率(%)=(検出濃度(個/ml)/チャージ液濃度(個/ml))×100
であり、検出濃度は、
(検出濃度(個/ml))=[(計数視野中にカウントされた粒子(個)の総数)×(有効ろ過面積(mm))]/[(SEMで確認した面積(mm))×(ろ過量(ml))]
である。
【0011】
視野率0.01%以上での検出濃度から、超純水中の微粒子濃度を計算で求めるためには、前提として、標準粒子がほぼ均一にろ過面に捕捉されている必要があり、回収率が低いということは、中空糸膜のある領域に偏って捕捉されていることを意味し、チャージ液の標準粒子濃度よりも検出粒子濃度が低い数値になってしまう。
このようなろ過面の領域による捕捉粒子の偏りは、計数視野を大きくとることによりある程度小さくすることはできる。しかし、粒子径の小さい微粒子まで計数するためには電子顕微鏡の倍率が高くなって視野面積が小さくなるため、計数する視野の数が非常に大きくなって、事実上不可能になってしまう。
【0012】
たとえば、粒子径0.5μmの粒子は2000倍の倍率の電子顕微鏡で計数可能であり、一視野あたりの視野面積は3.5×10−3mmとなる。この倍率で内径0.6mmの中空糸膜の有効ろ過長10mm当たりの有効ろ過面積は、18.8mmとなり、この有効ろ過面積に対して視野率0.01%を得るための視野数は1視野、視野率2%を得るための視野数は110視野となる。この程度の視野数であれば視野率を2%に上げたとしても計測期間は1〜2時間程度であるため、視野数を大きくとることで偏りを小さくすることは可能である。
しかし、粒子径0.02μmの粒子の計数には60000倍の倍率の電子顕微鏡が必要であり、この倍率では一視野あたりの視野面積は3.1×10−6mmまで小さくなる。この倍率で、上記の2000倍の倍率の場合と同じ有効ろ過面積18.8mmに対して視野率0.01%を得るための視野数は610視野、視野率2%を得るための視野数は121,290視野となる。
すなわち、粒子径0.02μmの粒子の計数では視野率0.01%を得るために要する計測期間は9〜10時間程度となり、これ以上の視野率を得るために視野数を増やすことは、非常に困難であり、実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭59−83036号公報
【特許文献2】国際公開WO2006−080211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、内面にスキン層を有する中空糸膜を用いた超純水中の微粒子数測定方法において、計数視野数をさほど多くすることなく測定結果の信頼性を高めた超純水中の微粒子数の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、超純水中の微粒子数をスキン層を少なくとも内表面に有する中空糸膜を用いて測定するに際し、中空糸膜の有効ろ過面積(有効透過長さ)と透過する超純水の流量を所定の範囲内として測定を行うことにより、微粒子の回収率が80%以上になり、高い精度で微粒子の計数を行うことができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち、本発明の超純水中の微粒子数測定方法は、超純水中の微粒子を捕捉可能なスキン層を少なくとも内表面に有し有効ろ過面積が8.8mm〜37.7mmの中空糸膜により、ろ過流量0.2ml/分〜1.5ml/分で、測定対象の超純水を全透過で内圧ろ過する工程と、前記中空糸膜の内表面を露出させる工程と、前記露出させた内表面に付着する微粒子数を測定する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の超純水中の微粒子数測定装置は、一端に測定対象の超純水の流入口を有し、他端に前記超純水の流出口を有する筒状の装置本体と、前記装置本体の中空部を2分する水密隔壁と、前記水密隔壁を水密的に貫通する前記流入口側端部が開放され前記流出口側端部が封止されて有効ろ過面積が8.8mm〜37.7mmとされた内表面がスキン層の中空糸膜を有し、前記装置本体の超純水の流入口に全透過で測定対象の超純水を供給する給水手段と、前記中空糸膜のろ過流量0.2ml/分〜1.5ml/分とする流量制御手段を備えたことを特徴とする。
本発明において、有効ろ過面積を8.8mm〜37.7mm、ろ過流量を0.2ml/分〜1.5ml/分としたのは、中空糸膜の有効ろ過面積又はろ過流量がこの範囲を超えると中空糸膜内面における微粒子の捕捉の分布が不均一になり測定誤差が大きくなるためである。
【0018】
本発明の有効ろ過面積は、13.2mm〜28.3mmがより好ましい。また、前記中空糸膜の有効ろ過長、すなわち、水密隔壁から流出口側に露出する中空糸膜の長さは、7mm〜15mmであることが好ましい。
また、本発明の前記中空糸膜の内径は、0.4mm〜0.8mmであることが好ましい。
このような中空糸膜としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「OLT-6036」等が適しているが、これに限定されるものではない。
本願発明における中空糸膜のろ過温度は、15℃〜80℃が好ましく、実用的には15℃〜50℃の範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超純水中の微粒子濃度を高い精度で測定することができる。また、近年の超純水に求められているような高いレベルでの粒子の微量分析を、実用的な時間で測定可能とすることができ、したがって、本発明によれば、次世代の超純水装置の運転管理、水質管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の微粒子数測定用のろ過装置の断面図。
【図2】本発明の超純水中の微粒子数測定方法を説明するための構成図。
【図3】本発明の実施例における試験ラインを模式的に示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の第1の実施形態を図1及び図2を参照して説明する。
【0023】
本発明の微粒子数測定用ろ過装置1は、中空糸膜ユニット2を有している。中空糸膜ユニット2は中空糸膜3を有し、中空糸膜3は一方の端部が封止樹脂4(エポキシ樹脂)で封止され、他方の端部は開放状態である。この開放端部は、測定直前まで、封止樹脂4で封止しておき、測定時に封止部を切断して開口させるようにする。
本発明の実施形態の中空糸膜3は、少なくとも内表面にスキン層を有している。スキン層は、捕捉された微粒子数を後工程で計測するため、ろ過通水した際にその表面で対象粒径の微粒子を捕捉する構造とされている。中空糸膜3は、少なくとも内表面にスキン層を備えていればよい。
【0024】
スキン層は、粒径10nm以上、好ましくは5nm以上の超純水中の微粒子を捕捉可能とされている。その孔径は、測定対象微粒子の粒径以下であればよく、10nm以下、好ましくは5nm以下である。スキン層の厚さは、薄いほど透過速度が大きくなるため性能面からは好ましい。中空糸膜3の膜厚は、強度や耐久性の点から、0.1〜0.3mmが好ましい。なお、捕捉可能な微粒子の粒径は、例えば既知粒径の微粒子を所定の濃度で含む試料液を、この中空糸膜ユニット2をセットした微粒子数測定用のろ過装置に供給し、捕捉粒子数を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察、計測する方法で知ることができる。
【0025】
中空糸膜3の内径は0.4mm〜0.8mmであることが好ましい。
また、捕捉微粒子の計数時の作業性を高めるため、中空糸膜3の外径は1.0mm以上、特に1.0〜mm1.4mmであることが好ましい。その膜構造は、対称膜(均質膜)であっても非対称膜(不均質膜)であってもよく、スキン層とコア層が同一材質からなるローブ型非対称膜でも、スキン層とコア層が異なる材質からなる複合膜であってもよい。また、中空糸膜3の材質は、特に限定されるものではないが、例えばポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。なかでも微小な孔径を有する中空糸膜を製造し易く、ろ過時間を短縮し易い点から、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリフッ化ビニリデン等の破裂強度、圧縮強度が高く、0.5MPa以上の耐圧性を有する材質がより好ましい。なお、ろ過時間短縮のため0.35ml/分/cm以上(0.1MPa、25℃)のろ過能力を有することが好ましい。
【0026】
ろ過方向は、内圧ろ過が好ましい。ブランク粒子が少ない中空糸内面を使用することによって計数に必要なろ過量を低減することができ、ろ過時間を短縮することができる。また、ろ過方式は、供給された超純水中の全ての微粒子を捕捉するためデッドエンド(全量ろ過)が好ましい。
中空糸膜ユニット2には、中空糸膜3の封止部分と開口部分との間に設けられたエポキシ樹脂等の樹脂モールド部5(接着剤)を介してニップル6等の固定部材が固定されている。このニップル6には、排水部外筒7が接続されている。排水部外筒7は、中空糸膜3の覆いとして機能するものであり、排水部外筒7には排水口8を有する排水部継手9が接続されている。また、ニップル6の他方には給水口10を有する給水部外筒11が接続され、給水部外筒11には、給水口10側から超純水を供給した際に、前記超純水を装置1外へ排水するブロー水排水口12が設けられている。
【0027】
上記中空糸膜ユニット2、排水部外筒7、給水部外筒11及び排水部継手9は、それぞれ着脱自在に取付けることが可能である。これらの部材は、例えばねじ構造の嵌合方法で嵌合され、給水部外筒11の給水口10及びブロー水排水口12、排水部継手9の排水口8以外の部分で装置1内の密封性が確保されるようになっている。排水部外筒7、給水部外筒11及び排水部継手9の材質は、発塵、溶出がなければよく、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PFA(テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の合成樹脂が適している。
【0028】
微粒子数測定用ろ過装置1は、ニップル6等により、中空糸膜3の開口端を介して中空糸膜3の内表面側と連通する1次側13と、中空糸膜3の外表面側と接する2次側14とに区分けされる。1次側13と2次側14との間での超純水の移動は、中空糸膜3の膜面のみを介して行われる。
【0029】
中空糸膜3は、その一端が封止され他方の端部を開口した状態で固定されている。
この実施形態の中空糸膜3の有効ろ過面積、すなわち、2次側の内表面の有効ろ過面の面積は、8.8mm〜37.7mmとされている。好ましくは、13.2mm〜28.3mmとされる。この有効ろ過面積は、内径が0.4mm〜0.8mmの中空糸膜3を用いて、2次側の有効ろ過長を7mm〜15mmの範囲とした場合の有効ろ過面積に相当している。
【0030】
超純水中の微粒子数測定は、このろ過装置1を用いて次のように行われる。
まず、超純水中の微粒子を捕捉する中空糸膜3の内表面側が外部から汚染されることを防止するため、中空糸膜3の両端をエポキシ樹脂等で封止しておく。中空糸膜3の本数は1〜10本が好ましく、中空糸膜3の長さはろ過装置1の組立完了時で有効ろ過長が7mm〜15mmであることが好ましい。
【0031】
両端が封止された中空糸膜3をSUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)製又はPEEK製のニップル6等に通し、エポキシ樹脂等で中空糸膜3とニップル6とを密着固定して中空糸膜ユニット2を作製する。このとき、ニップル6等の固定部材は超音波照射等で予め洗浄処理しておく。
【0032】
続いて、作製した中空糸膜ユニット2の親水化処理、制菌剤による逆洗を行い、制菌剤を封入させた状態で排水口8及び給水口10にキャップをして密封状態にする。
【0033】
次に、本実施形態の超純水中の微粒子数測定方法の一例について図2を用いて説明する。
【0034】
まず、検査対象となる超純水製造装置の供給配管15に取付けられたサンプリングバルブ16から超純水をサンプル導入チューブを介して、制菌剤が封入されたろ過装置1の排水部継手9(図1)から供給配管15の圧力を利用して逆通水する。
【0035】
超純水によって逆洗した後、排水部継手9にキャップをし、給水部外筒11のブロー水排水口12に流量調整用バルブ17を取付け、給水口10に超純水を供給し、ブロー水排水口12から排出させる。
【0036】
次に、超純水のサンプリングを行う。すなわち、超純水を中空糸膜ユニット2が装填されたろ過装置1に通水して内圧ろ過し、超純水中の微粒子を中空糸膜3の内表面に捕捉する。このとき、ブロー水排水口12に取付けた流量調整用バルブ17でブロー量を調整し、ブロー量とろ過流量との比(流量比)を3:1〜500:1とする。
サンプリングは、ろ液である超純水が計数に必要な水量に達するまで行う。水量の計測は、例えばろ過液計量槽に一定量を蓄えることにより行ったり、流量と時間を計測することにより行う。
【0037】
サンプリングを終了した後、剃刀等によって中空糸膜3を長手方向に裁断して、超純水中の微粒子が捕捉されている内表面側を露出させ露出させた内表面側を走査型電子顕微鏡で観察し計数視野内の微粒子数を計数する。
上述した顕微鏡により、視野を移動させて有効ろ過面積の0.01%前後を実観察して捕捉微粒子数を計数し、次式により単位体積あたりの超純水中の微粒子数を算出する。
超純水中の微粒子数(個/ml)=
[((計数粒子数(個)-ブランクフィルターの粒子数(個))×有効ろ過面積(mm2))/(視野面積(mm2)×視野数))]×[1/ろ過量(ml)]
【0038】
次に実施例及び比較例について説明する。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
純度18MΩ・cm以上の超純水に既知濃度の0.5μm標準粒子分散液(ポリスチレン真球状微粒子:Thermo Fisher(旧Duke)社製 製品名:3500A)の原液を添加して350倍に希釈し(1次希釈)、この希釈液の一部を分取し、さらに超純水で250倍に希釈して(2次希釈)0.5μm標準粒子微粒子を含む試験用の0.5μm標準粒子希釈液(以下、単に0.5μm標準粒子希釈液と称する。)を調製した。
なお、固体濃度、粒子径、粒子密度、容量から算出した標準粒子分散液の原液中の粒子数は、約1.5×1011個/mlであり、2次希釈後の0.5μm標準粒子希釈液の計算で求めた粒子数は、1.7×10個/mlである。
【0039】
図3は、実施例に使用した試験ラインを概略的に示す図である。
同図において、超純水製造装置19の出口水を供給する超純水供給配管20には、0.5μm標準粒子希釈液を供給する試料供給配管21が接続され、微量薬注ポンプにより、0.5μm標準粒子希釈液が超純水で1.4×10倍に希釈される割合で供給される(以下、ここで、最終的に超純水で希釈された試料液を、単に試料液と称する。)。
その下流の超純水供給配管20には、第1、第2、第3の試料供給配管22,23,24が接続され、第1の試料供給配管22には、図1に示したろ過装置1の給水口10が接続され、第2の試料供給配管23には、平膜タイプ(孔径0.1μm)の微粒子数測定装置の給水口が接続され、第3の試料供給配管24にはオンライン微粒子モニター(リオン社製 商品名KS−40BF)が接続されている。
平膜タイプの微粒子数測定装置の平膜はポリカーボネート製の均一な円筒状の直孔があいているニュークリポアー・メンブレン(直径25mmφ、孔径0.1μm)をフィルターユニットにセットしたものを使用。
ろ過装置1に装着されるUF中空糸膜3の種類、寸法等と通水条件を表1に示す。
【表1】

ろ過装置1には、以下の方法で中空糸膜ユニット2をセットし、それぞれ実施例、比較例の試験を行った。
まず、UF中空糸膜(旭化成ケミカルズ社製、商品名OLT-6036)3を1本、1/8SUSニップル6に挿入し、樹脂モールド部5(エポキシ樹脂)で固定した。また、中空糸膜3の両端をエポキシ樹脂4で封止して(図1では、1次側13の封止部を切断した後の状態が示されている。)、両端封止の中空糸膜ユニットを作製した。両端が封止された中空糸膜ユニット2を界面活性剤に浸漬して親水化した。
【0040】
この後、排水部外筒7と排水部継手9とを接続して構成される2次側14内に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を満たし、親水化された両端封止の中空糸膜ユニット2を挿入し、排水部継手9から亜硫酸水素ナトリウムを供給した。
中空糸膜3の上部から、亜硫酸水素ナトリウム水溶液が滲むことを確認した後、清浄な剃刀で中空糸膜3の上部(ニップル6より5〜10mm上部)を切断した。
さらに、亜硫酸水素ナトリウム水溶液の逆通液を行い、中空糸膜内のエアを抜いた。続けて、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加圧した状態で逆通水しながら、給水部外筒11を取付けた。給水部外筒11の給水口10より、亜硫酸水素ナトリウムが溢れることを確認した後、給水口10にキャップを閉めた。排水部継手9の排水口8にキャップを閉めて、ろ過装置1を密封状態にした。
【0041】
次に、試料液をろ過装置1へ導入しブローしブロー量を表1の透過流量となるよう調整して、排水部継手9の排水口8のキャップを外した。
【0042】
この後、試料液のサンプリングを開始し、UF中空糸膜3で試料液をろ過圧力0.3MPa、温度25℃で内圧ろ過した。所定のろ過期間経過後、流量調整バルブを取外しブロー水排水口12にキャップを閉めて、サンプリングバルブより給水部外筒11の給水口10にキャップをした後、密封状態でクリーンルームにろ過装置1を搬送した。
【0043】
クリーンルーム内において、装置1から中空糸膜ユニット2を取出し、剃刀で中空糸膜3を長手方向に切断して内表面を露出させ、スッパタリングを行った。
次に、中空糸膜3の有効ろ過部を長さ方向に42の計数区画(No.1〜No.42)に区分し、それぞれの計数区画に計数視野を1個設定し、各計数視野における中空糸膜3の内表面を走査型電子顕微鏡にて2000倍で観察し、内表面に付着している粒子数を計数した。これら42計数区画における計数視野は、有効ろ過面積の約1%に相当する。
次にこの各領域を有効ろ過部の長さ方向に6計数区画ずつのポイントに区分し(P1〜P7)各ポイント内の各区画の計数値の平均値(各ポイント内における各計数区画で計数された粒子の合計数を当該ポイント内の計数区画の数で割った値。以下、同じ。)を求めた。
実施例1〜3、比較例1〜3におけるポイント1〜7(P1〜7)の計数粒子数の平均値を表2に示す。
表3は、実施形態1の各計数区画(No.1〜No.42)における計数粒子数の計数結果を参考のため示したものである。
【0044】
なお、表中の「平均値N」は、以下の式により求めたものである。
平均値N=(計数ポイント1で計数された粒子数+計数ポイント2で計数された粒子数+…計数ポイントNで計数された粒子数)/計数ポイント数N
また、表中の「想定値」は、ろ過がろ過膜面で均一に行われたものと想定して求めた計数される粒子の数であり、表3の「想定値」は、その各ポイントにおける平均値である。
【表2】

【表3】

【0045】
(実施例4〜5、比較例4)
既知濃度の0.1μm標準粒子(ポリスチレン真球状微粒子:JSR社製 商品名:STADEX SC-0100-D)を用いて、実施例1〜3と同様の方法で試験用の0.1μm標準粒子希釈液(以下、単に0.1μm標準粒子希釈液と称する。)を調製した。
純度18MΩ・cm以上の超純水に既知濃度の0.1μm標準粒子分散液(ポリスチレン真球状微粒子:JSR社製STADEX SC-0100-D)の原液を添加して1000倍に希釈し(1次希釈)、この希釈液の一部を分取し、さらに超純水で2500倍に希釈して(2次希釈)0.1μm標準粒子微粒子を含む試験用の0.1μm標準粒子希釈液(以下、単に0.1μm標準粒子希釈液と称する。)を調製した。
固体濃度、粒子径、粒子密度、容量から算出した0.1μm標準粒子分散液の原液中の粒子数は、約1.8×1013個/mlであり、2次希釈後の0.1μm標準粒子希釈液の計算から求めた粒子数は、7.2×10個/mlである。
次に、図1に示す微粒子数測定用ろ過装置1(中空糸膜(旭化成ケミカルズ社製、商品名「OLT-6036」)1本)を、図3に示した試験ラインにセットし、実施例1〜3と同様に、微量薬注ポンプ22から超純水供給配管20に注入される0.1μm標準粒子希釈液を超純水で1.4×10倍に希釈される割合にして、微粒子を含む超純水の微粒子数を測定した。
なお、オンライン微粒子モニターとして実施例1〜3で使用した「リオン社製 商品名KS−40BF」に代えて「PMS社製 商品名Ultra DI-50」を用い、平膜タイプの微粒子数測定装置25として、孔径0.05μmのものを使用した点を除いて、実施例1〜3と同一装置、同一条件で測定した。
次に中空糸膜の有効ろ過部を長さ方向に224の計数区画(No.1〜No.22)に区分し、それぞれの計数区画に計数視野を1個設定し、各計数視野における中空糸膜3の内表面を走査型電子顕微鏡にて10000倍で観察し、内表面に付着している粒子数を計数した。これら224計数区画における計数視野は、有効ろ過面積の約0.2%に相当する。
次にこの各領域を有効ろ過部の長さ方向に32計数区画ずつのポイントに区分し(P1〜P7)各ポイント内の各区画の計数値の平均値を求めた。
実施例4,5、比較例4に用いたろ過装置1に装着されるUF中空糸膜3の種類、寸法等と通水条件を表4に、ポイント1〜7(P1〜7)の計数粒子数の平均値を表5に示す。
【表4】

【表5】

【0046】
(実施例6)
既知濃度の0.048μm標準粒子(ポリスチレン真球状微粒子:JSR社製 製品名:STADEX SC-0050-D)を用いて、実施例1〜3と同様の方法で試験用の0.048μm標準粒子希釈液(以下、単に0.048μm標準粒子希釈液と称する。)を調製した。
純度18MΩ・cm以上の超純水に既知濃度の0.048μm標準粒子分散液(ポリスチレン真球状微粒子:JSR社製STADEX SC-0050-D)の原液を添加して1000倍に希釈し(1次希釈)、この希釈液の一部を分取し、さらに超純水で3300倍に希釈して(2次希釈)0.048μm標準粒子微粒子を含む試験用の0.048μm標準粒子希釈液(以下、単に0.048μm標準粒子希釈液と称する。)を調製した。
固体濃度、粒子径、粒子密度、容量から算出した0.048μm標準粒子分散液の原液中の粒子数は、約1.6×1014個/mlであり、2次希釈後の0.048μm標準粒子希釈液の計算から求めた粒子数は、4.9×10個/mlである。
次に、図1に示す微粒子数測定用ろ過装置1(中空糸膜(旭化成ケミカルズ社製、商品名「OLT-6036」)1本)を、図3に示した試験ラインにセットし、実施例1〜3と同様に、微量薬注ポンプ22から超純水供給配管20に注入される0.048μm標準粒子希釈液を超純水で1.4×10倍に希釈される割合にして、微粒子を含む超純水の微粒子数を測定した。
なお、オンライン微粒子モニターを使用しなかった点、平膜タイプの微粒子数測定装置25に分画分子量200000のUFをフィルターユニットにセットしたものを使用した点を除いて、実施例1〜3と同一装置、同一条件で測定した。
次に、中空糸膜の有効ろ過部を長さ方向に112の計数区画(No.1〜No.112)に区分し、それぞれの計数区画に計数視野を1個設定し、各計数視野における中空糸膜3の内表面を走査型電子顕微鏡にて20000倍で観察し、内表面に付着している粒子数を計数した。これら112計数区画における計数視野は、有効ろ過面積の約0.02%に相当する。
次にこの各領域を有効ろ過部の長さ方向に6計数区画ずつのポイントに区分し(P1〜P7)各ポイント内の各区画の計数値の平均値を求めた。
実施例6用いたろ過装置1に装着されるUF中空糸膜3の種類、寸法等と通水条件を表6に、ポイント1〜7(P1〜7)の計数粒子数の平均値を表7に示す。
【表6】

【表7】

【符号の説明】
【0047】
1……ろ過装置、2……中空糸膜ユニット、3……中空糸膜、4……封止樹脂、5……樹脂モールド部、6……ニップル、7……排水部外筒、8……排水口、9……排水部継手、10……給水口、11……給水部外筒、12……ブロー水排水口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水中の微粒子を捕捉可能なスキン層を少なくとも内表面に有し有効ろ過面積が8.8mm2〜37.7mm2の中空糸膜により、透過流量0.2ml/分〜1.5ml/分で、する工程と、
前記中空糸膜の内表面を露出させる工程と、
前記露出させた内表面の微粒子数を測定する工程と、
を有することを特徴とする超純水中の微粒子数測定方法。
【請求項2】
前記中空糸膜の有効ろ過長が7mm〜15mmであることを特徴とする請求項1記載の超純水中の微粒子数測定方法。
【請求項3】
前記中空糸膜の内径が、0.4mm〜0.8mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の超純水中の微粒子数測定方法。
【請求項4】
一端に測定対象の超純水の流入口を有し、他端に前記超純水の流出口を有する筒状の装置本体と、前記装置本体の中空部を2分する水密隔壁と、前記水密隔壁を水密的に貫通する前記流入口側端部が開放され前記流出口側端部が封止されて有効ろ過面積が8.8mm2〜37.7mm2とされた内表面がスキン層の中空糸膜を有し、前記中空糸膜の透過流量を0.2ml/分〜1.5ml/分とする流量制御手段を備えたことを特徴とする超純水中の微粒子数測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−154648(P2012−154648A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11395(P2011−11395)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)