説明

超臨界抽出装置及び該装置を利用した超臨界抽出方法

【課題】 原料の充填・交換作業に時間をとられず、充分な量の抽出物を抽出することができる、超臨界抽出装置及び該装置を用いた超臨界抽出方法の提供。

【解決手段】 二酸化炭素供給ユニットと、この二酸化炭素供給ユニットに接続された二酸化炭素流路と、溶剤を添加した原料を収容する原料供給ユニットと、この原料供給ユニットに接続された原料流路と、作用チャンバとを含み、該二酸化炭素流路上に加圧ユニットと温度制御ユニットを設け、該原料が溶液の形態で該原料供給ユニットから該作用チャンバに送られ、該原料流路上に加圧ユニットを設け、該二酸化炭素流路と該原料流路を該作用チャンバにそれぞれ接続し、該作用チャンバは抽出物流路と処理後流体流路を備え、内部に複数の独立した物体である吸着物を含み、該吸着物が二酸化炭素の流動速度を減速すると同時に抽出物を吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界抽出装置及び該装置を利用した超臨界抽出方法に関し、詳細には、超臨界流体技術を利用し、溶液状原料の中の特定物質を抽出し、且つ、作用チャンバの吸着物を利用してその特定物質を吸着し、抽出能力と抽出物の安定性を向上する超臨界抽出装置及び該装置を利用した超臨界抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体技術を利用して原料中の物質を抽出する過程においては、まず固体原料をロット式に作用チャンバ内に入れ、二酸化炭素を加圧した後、原料を入れた作用チャンバ内に入れ、二酸化炭素が超臨界状態に入るとき、原料中の特定物質を取り出して原料と分離させ、原料中の特定の成分を抽出し、抽出物と二酸化炭素を排除した処理後流体を集め、さらに抽出後の原料を取り出した後、作用チャンバを空にする方法がとられる。
【0003】
上述の超臨界流体技術を利用して特定物質を抽出する方法は、主に原料中の特定成分を抽出するために用いられるため、一般に抽出の動作を終えた後、原料を取り除き作用チャンバを空にし、再度新しい固体原料を入れ次の抽出を行う必要がある。しかし、その操作過程において、繰り返し原料の充填と取り除きを行う必要があるため、作業時間が長くかかり、抽出効率が低くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、上述のような従来の抽出装置の抽出操作手順において原料の充填と交換の作業に時間を割かれるという問題を解決し、且つ、従来の抽出装置が充分な量の抽出物を抽出することができないという問題を解決する、超臨界抽出装置及び該装置を利用した超臨界抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の超臨界抽出装置は、二酸化炭素を供給するための二酸化炭素供給ユニットと、上述の二酸化炭素供給ユニットに接続された二酸化炭素流路と、溶剤を添加した原料を収容する原料供給ユニットと、上述の原料供給ユニットに接続された原料流路と、作用チャンバと、を含み、そのうち、該二酸化炭素流路上に加圧ユニットと温度制御ユニットが設置され、該原料が溶液の形態で該原料供給ユニットから該作用チャンバに送られ、該原料流路上に加圧ユニットが設置され、該二酸化炭素流路と該原料流路は該作用チャンバにそれぞれ接続され、該作用チャンバは抽出物流路と処理後流体流路を備え、該抽出物流路にバルブが設置され、さらに該作用チャンバは内部に吸着物を含み、該吸着物は顆粒状物体、棒状物体、片状物体等の複数の独立した物体であり、大きな面積を備え、二酸化炭素の流動速度を緩慢にすると共に抽出物を吸着することができる。
【0006】
上述作用チャンバ内の吸着物は、多数の孔を備えた物体、多数の分岐を備えた物体、連続して湾曲した物体のいずれかとすることもできる。
【0007】
上述の作用チャンバは吸着物の超臨界抽出装置を備え、溶液形態の原料が該作用チャンバ内に一定時間滞留し、この滯留時間は特定成分を抽出するのに必要な時間であり、抽出後、溶液形態の原料と二酸化炭素が迅速に該作用チャンバから導出され、該作用チャンバが迅速に空になり、次の抽出手順に使用することができる。
【0008】
本発明の超臨界抽出方法は、次の手順を含む。
1. 作用チャンバに超臨界の二酸化炭素を入れておく。
2. 加圧を経た溶液形態の原料を同一の作用チャンバに輸送する。
3. 原料中の特定物質を作用チャンバ内で抽出する。
4. 抽出物を作用チャンバ内の吸着物上に吸着させる。
5. 抽出物を集める。
6. 超臨界処理後の流体を取り出す。
上述の作用チャンバ内の吸着物は、大きな表面積を有するものとし、抽出物の吸着効果を向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は次のような効果を得ることができる。
1.
本発明は作用チャンバ内に大面積の吸着物を設けているため、二酸化炭素の作用チャンバ内での流動速度を緩慢にし、且つ、加圧を経た後に送り込まれる二酸化炭素が作用チャンバ内ではっきりとした撹拌現象を形成し、抽出を行う原料と充分に混合され、抽出効率を向上することができる。
2.
本発明は作用チャンバ内に吸着物を設けており、抽出物の作用チャンバ内での吸着面積を増加し、抽出物を安定させることができ、收集に有利である。
【実施例1】
【0010】
図1に示すように、本発明は、二酸化炭素供給ユニット1、二酸化炭素流路2、原料供給ユニット3、原料流路4及び作用チャンバ5を含む。
【0011】
そのうち、二酸化炭素供給ユニット1は、二酸化炭素気体を供給する気体貯蔵チャンバとすることができる。
【0012】
二酸化炭素流路2は、上述の二酸化炭素供給ユニット1に接続され、その流路上に加圧ユニット21と温度制御ユニット22が設置される。該二酸化炭素流路2は作用チャンバ5に接続されており、二酸化炭素の温度と圧力を制御するために用いられる。
【0013】
原料供給ユニット3は、溶剤を添加した原料を収容し、該原料を溶液形態にする。
【0014】
原料流路4は、一端が上述の原料供給ユニット3に接続され、原料流路4上に進入原料加圧ユニット41及び進入原料速度制御弁42が設置され、該原料流路4の別の一端は作用チャンバ5に接続される。
【0015】
作用チャンバ5はその内部に大面積の吸着物51を含み、該吸着物51は、顆粒状物体、棒状物体、片状物体等の複数の独立した物体であり、本実施例においては、吸着物は複数のガラス玉とする。作用チャンバ5の下方には抽出物流路52が設置され、この抽出物流路52の出口前にバルブ53を設け、該抽出物流路52と貯蔵チャンバ54が接続される。作用チャンバ5上方には処理後流体流路55が設置される。
【0016】
操作時には、二酸化炭素流路2及び原料流路4上の進入原料速度制御弁23、42を開き、そのうち二酸化炭素供給ユニット1から二酸化炭素が二酸化炭素流路2上の加圧ユニット21及び温度制御ユニット22の加圧と温度制御を経て作用チャンバ5に送られ、作用チャンバ5内の二酸化炭素は特定の圧力と温度状態で超臨界状態となる。原料供給ユニット3は溶液状の原料を供給し、この原料は進入原料加圧ユニット41による加圧を経て作用チャンバ5内に送られ、上述の超臨界状態の二酸化炭素が溶液状の原料から特定の物質を抽出する。
【0017】
該作用チャンバ5内には吸着物51が設けられ、吸着物51は二酸化炭素の作用チャンバ5内における流動速度を緩慢にすると共に、加圧を経て送り込まれる二酸化炭素が作用チャンバ5内ではっきりとした撹拌現象を形成し、抽出を行う原料と充分に混合され、抽出効率が向上される。同時に、作用チャンバ5内の吸着物51が抽出物の作用チャンバ5内における吸着面積を増加し、より安定した超臨界抽出環境が形成される。
【0018】
抽出された後の抽出物は、作用チャンバ5の底部に集められ、バルブ53の制御により、抽出物を抽出物流路52から外部の貯蔵チャンバ54へと導出し、二酸化炭素と抽出後の原料が混合されて形成された処理後流体は、作用チャンバ5上方の処理後流体流路55から排出される。
【0019】
上述の作用チャンバ5の操作において用いる温度制御方法は、図2に示すように、作用チャンバ5の内周縁上に温度制御管路7を設け(図中では吸着物51を省略)、温度制御管路7は、入口71を作用チャンバ5底部に設け、そこから上方向に螺旋状に設置され上部に出口72を設ける。調節温度を調節するために用いる液体が温度制御管路7の入口71から送り込まれ、作用チャンバ5内を螺旋状に進行し、熱交換を行った後、出口72から送り出されて温度制御効果が形成される。作用チャンバ5の作業温度は、抽出する物質の特性に合わせ、30℃-60℃の間に制御する。
【実施例2】
【0020】
図3に吸着物51aの実施例2を示す。作用チャンバ5内の吸着物51aは、1つまたは複数の多数の孔を備えた物体とすることができる。
【実施例3】
【0021】
図4に吸着物51bの実施例3を示す。作用チャンバ5内の吸着物51bは、1つまたは複数の、多数の分岐を備えた物体とすることができ、この図は複数の分岐を備えた物体を1つ設置した例を示している。
【実施例4】
【0022】
図5に吸着物51cの実施例4を示す。作用チャンバ5内の吸着物51cは、1つまたは複数の連続して湾曲した物体とすることができ、その湾曲の形態は螺旋形、歯形または波形等とすることができ、この図では歯形の連続して湾曲した物体を設置した例を示している。
【0023】
以上の説明は、本発明の最良の実施例に基づくものであり、本発明の実施の範囲を制限するものではなく、本発明の特許の請求の範囲及び明細書の内容の基づく簡単な同等効果を得る変化や修飾はすべて本発明の特許の範囲に含まれるものとみなす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の装置の模式図である。
【図2】本発明の作用チャンバの温度制御構造を示す断面図である。
【図3】本発明の作用チャンバの実施例2の吸着物を示す断面図である。
【図4】本発明の作用チャンバの実施例3の吸着物を示す断面図である。
【図5】本発明の作用チャンバの実施例4の吸着物を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 二酸化炭素供給ユニット
2 二酸化炭素流路
21 加圧ユニット
22 温度制御ユニット
23 制御弁
3 原料供給ユニット
4 原料流路
41 進入原料加圧ユニット
42 進入原料速度制御弁
5 作用チャンバ
51、51a、51b、51c 吸着物
52 抽出物流路
53 バルブ
54 貯蔵チャンバ
55 処理後流体流路
7 温度制御管路
71 入口
72 出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素供給ユニットと、二酸化炭素流路と、原料供給ユニットと、原料流路と、作用チャンバと、を含み、そのうち、該二酸化炭素供給ユニットは二酸化炭素を供給するために用いられ、該二酸化炭素流路は該二酸化炭素供給ユニットに接続され、流路上に加圧ユニットと温度制御ユニットが設置され、該原料供給ユニットは溶剤を添加した溶液状原料を収容するために用いられ、該原料流路は該原料供給ユニットに接続され、該原料流路上に加圧ユニットが設置されると共に、該二酸化炭素流路と該原料流路は該作用チャンバにそれぞれ接続され、該作用チャンバはその内部に吸着物を含み、該吸着物は大きな面積を備え、二酸化炭素の流動速度を緩慢にし、抽出物を吸着し、該作用チャンバにさらに抽出物流路と処理後流体流路が設けられることを特徴とする、超臨界抽出装置。
【請求項2】
前記作用チャンバ内の吸着物が、複数の独立した物体である、請求項1に記載の超臨界抽出装置。
【請求項3】
前記複数の独立した物体が顆粒状の物体である、請求項2に記載の超臨界抽出装置。
【請求項4】
前記複数の独立した物体が棒状の物体である、請求項2に記載の超臨界抽出装置。
【請求項5】
前記複数の独立した物体が片状の物体である、請求項2に記載の超臨界抽出装置。
【請求項6】
前記作用チャンバ内の吸着物が多数の孔を備えた物体である、請求項1に記載の超臨界抽出装置。
【請求項7】
前記作用チャンバ内の吸着物が、複数の分岐を備えた物体である、請求項1に記載の超臨界抽出装置。
【請求項8】
前記作用チャンバ内の吸着物が、連続した湾曲を備えた物体である、請求項1に記載の超臨界抽出装置。
【請求項9】
超臨界抽出方法であって、
1、作用チャンバに超臨界の二酸化炭素を備えさせ、
2、加圧を経た溶液形態の原料を同一の作用チャンバに輸送し、
3、原料中の特定の物質を作用チャンバ内で抽出し、
4、抽出物を作用チャンバ内の吸着物上に吸着させ、
5、抽出物を収集し、
6、超臨界処理後の流体を導出する、
という手順を含む、超臨界抽出方法。
【請求項10】
前記作用チャンバ内の吸着物が、大きな表面積を備え、抽出物の吸着効果を向上する、請求項9に記載の超臨界抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−75717(P2007−75717A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266273(P2005−266273)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(503352279)
【Fターム(参考)】