説明

超臨界流体による連続処理装置

【課題】 安全でかつ酵素失活処理効率、殺菌処理効率の高い連続処理装置を提供する。
【解決手段】 連続供給流路(C)により送られる液状原料を処理槽(13)に導入するための導入口(22)と、超臨界流体供給流路(B)により送られる超臨界流体を処理槽(13)内に導入するとともに、超臨界流体を微小泡にして液状原料中に放出する超臨界流体微小化導入手段(16)と、処理槽(13)上部側の液状原料を排出する液体取出口(26)に接続された製品回収流路(E)と、処理槽(13)上部に設けられた超臨界流体排出口(27)から超臨界流体を排出する超臨界流体回収流路(F)と、超臨界流体回収流路(F)により回収された超臨界流体をリサイクルタンク(31)を介して二酸化炭素供給源(1)に供給するリサイクル流路(G)とを備えて、液状原料と微小泡の超臨界流体とを並流で接触させることにより、失活処理効率を向上させるとともに、超臨界流体を回収してリサイクル利用することにより、二酸化炭素の消費を低減する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超臨界流体を用いた液状食品・液状薬品等の酵素、胞子の失活処理、殺菌処理、あるいは液状食品等の脱臭処理を連続的に行う連続処理装置に関し、さらに詳細には液状食品等の超臨界流体による酵素失活、殺菌、脱臭処理を、従来にないような優れた失活効率、殺菌効率、脱臭効率で、しかも安全に、連続的に行うことが可能な連続処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】酵素を含有する液状食品には種々のものがあるが、たとえば清酒やビールがその代表的なものである。清酒の製造工程を見ると、発酵終了後に圧搾・濾過して新酒を得る第1工程、新酒を加熱殺菌して貯蔵する第2工程、得られた原酒を調合して酒質を決定するとともにアルコール分を規格に調整する第3工程、調整した酒を再び加熱殺菌して充填する第4工程を経て製造される。このように清酒は2回の加熱処理を受けて、酵素の失活と殺菌がなされ、これにより流通中の清酒の質の悪変を防止するようにしている。しかしながら、このような加熱処理を受けることにより、新酒のフレッシュな香味は著しく減少することにもなっている。そのため、味や香りを新鮮に保つために加熱処理を行なっていない生酒が要望されており、たとえば低温で生酒を流通させるようなことが行われている。しかし、このような加熱処理を行っていない生酒はα−アミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素により、品質が劣化しやすいうえに、冷温流通のためのコストの増大などの問題がある。
【0003】また、オレンジ果汁の様な混濁果汁の安定性を保つためにはペクチンエステラーゼ(PE)の不活性化が必要であるが、PEは熱に安定な酵素であるために、加熱による失活を行おうとすれば高温条件での熱処理(88〜99℃又は120℃)が必要とされている。しかしながら高温条件での熱処理を行うと果汁の風味が劣化するという問題がある。
【0004】そこで、本出願の発明者はこのような熱処理による酵素失活に伴う問題を解決するための画期的な方法を見いだし、先に、これを特願平6−180844号において開示している。この出願に記載した「液状食品の失活法」は、酵素含有液状食品に超臨界状態の二酸化炭素を接触させることにより、酵素を失活させるようにしたものであり、処理槽内に酵素含有液状食品を入れ、密閉した状態で処理槽内を所定の温度、圧力条件に保つとともに、処理槽内に超臨界流体をフィルタを介してミクロな大きさにして供給することにより、酵素を失活させるものである。この方法によれば、効率よく失活ができるだけではなく、食品に触れるのは二酸化炭素だけなので、安全性が高いという特徴がある。さらに、この方法によれば乳酸菌などの微生物の殺菌処理をも同時に行える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この出願に記載されている方法あるいはその方法を用いる装置は、連続的に失活処理、殺菌処理を行う装置ではない。すなわち、先の出願に記載したものは、いわゆるバッチ処理による失活処理、殺菌処理を行う装置であり、処理槽内に液体食品を貯めた状態で失活処理を行い、処理後に装置を大気解放して液体食品を取り出すものである。 このようなバッチ処理装置は、処理能率が悪いという欠点があるともに、処理槽を大気に解放することにより、処理槽内に空気分子が侵入するために処理中あるいはその後の製品の品質劣化が問題となる。したがって空気分子を除去するための無駄な手順を踏まなければならないという問題があり、かかる問題を解決するためにバッチ処理ではなく、連続処理による失活、殺菌処理装置を用いることが望ましい。
【0006】一方、液状食品に関する連続処理装置としては、超臨界流体を用いて抽出を行うための連続超臨界抽出処理装置が特開平4−222576号に開示されている。この装置は、醤油の香気成分を超臨界流体に接触させて抽出するものであり、原料となる液状食品と超臨界状態の二酸化炭素とを処理槽内で向流接触させるようにして香気成分を醤油から除去しようとするものである。
【0007】そこで、このような向流接触を連続酵素失活、殺菌処理の装置にも適用することが考えられるが、向流接触法による酵素の失活処理を行ってみたところ、失活効率は著しく低いものであった。そのため、量産に適した、酵素失活効率の優れた連続処理装置の開発が望まれていた。したがって、本発明の第1の目的は、従来からの向流接触法の連続処理装置に比べて、失活処理効率や殺菌処理効率の優れた超臨界流体による連続処理装置を提供することを目的とする。
【0008】また、先の出願のようなバッチ処理による酵素失活処理装置においても同様であるが、処理槽内での超臨界流体と液状食品との接触により、液状食品の酵素失活および殺菌が行われるだけではなく、液状食品中に含まれる一部の香気成分等が超臨界流体とともに気体となって超臨界流体の排出系から処理槽外へ排出されることがある。前述の醤油のように除去したい香気成分である場合はよいが、新酒や果汁等のように液状食品中に含まれるフレッシュな香味の場合は液状食品から除去されることはたとえ少量であったとしても好ましくない。そこで、本発明の第2の目的は超臨界流体を用いた連続酵素失活処理中、殺菌処理中に、超臨界流体とともに液状食品から抽出される香気成分を回収することにより、失活処理を行っても好ましい成分を含んだ状態で液状食品、あるいは液状食品中に含まれていた香気成分自身を取り出すことができる装置を提供することを目的とする。
【0009】また、本発明の第3の目的は、超臨界流体を用いた連続酵素失活及び殺菌処理装置において使用される二酸化炭素を効率よく回収し、連続処理装置としての運転コストの低減を図った装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するために、本発明者等は、先の出願において開示したバッチ式の失活処理法をどのような構成の連続処理装置にすれば、より酵素失活処理効率や殺菌処理効率が優れた連続処理装置が実現できるかの工夫を重ねた結果、処理槽への超臨界流体の導入と液状食品の処理槽への導入の仕方を工夫することにより、従来の向流接触法に比べてはるかに処理効率に優れた連続処理装置を実現することができた。
【0011】すなわち、本発明の連続処理装置は、液状原料となる液状食品や液状薬品を処理槽内で超臨界流体により連続処理する連続処理装置であって、液状原料を連続的に供給する液状原料の連続供給流路と、処理槽底部側に設けられ、連続供給流路により送られる液状原料を処理槽に導入するための導入口と、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素を超臨界流体にならしめ連続的に供給する超臨界流体供給流路と、処理槽底部側に設けられ、超臨界流体供給流路により送られる超臨界流体を処理槽内に導入するとともに、超臨界流体を微小泡にして液状原料中に放出する超臨界流体微小化導入手段と、処理槽上部側の液状原料を排出する液体取出口に接続された製品回収流路と、処理槽上部に設けられた超臨界流体排出口から超臨界流体を排出する超臨界流体回収流路と、超臨界流体回収流路により回収された超臨界流体を、直接あるいは超臨界流体をガス化あるいは液化するためのリサイクルタンクを介して二酸化炭素供給源に供給するリサイクル流路とを備え、前記処理槽内において微小化超臨界流体と液状原料とを並流連続処理させたことを特徴とする。
【0012】さらに、酵素失活処理や殺菌処理とともに香気成分の回収をも行い得るようにした本発明の他の連続処理装置は、液状原料となる液状食品や液状薬品を処理槽内で超臨界流体により連続処理する連続処理装置であって、液状原料を連続的に供給する液状原料の連続供給流路と、処理槽底部側に設けられ、連続供給流路により送られる液状原料を処理槽に導入するための導入口と、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素を超臨界流体にならしめ連続的に供給する超臨界流体供給流路と、処理槽底部側に設けられ、超臨界流体供給流路により送られる超臨界流体を処理槽内に導入するとともに、超臨界流体を微小泡にして液状原料中に放出する超臨界流体微小化導入手段と、処理槽上部側の液状原料を排出する液体取出口に接続された製品回収流路と、処理槽上部に設けられた超臨界流体排出口から超臨界流体を排出する超臨界流体回収流路と、超臨界流体回収流路の途中に設けられ、圧力制御手段又は温度制御手段を用いて超臨界流体中に含有される揮発性成分を分離する少なくとも1つの分離槽と、分離槽に抽出された成分を、製品回収流路に接続し、または外部取出口から回収する揮発性成分回収流路と、超臨界流体回収流路により回収された超臨界流体を、直接あるいは超臨界流体をガス化あるいは液化するためのリサイクルタンクを介して二酸化炭素供給源に供給するリサイクル流路とを備え、前記処理槽内において微小化超臨界流体と液状原料とを並流連続処理させるとともに、超臨界流体回収流路を流れる超臨界流体中の揮発性成分を回収しうるようにしたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の連続処理装置が適用される液状食品としては生酒、ビール、ワイン、醤油等の発酵・醸造液状食品、各種果汁類、清涼飲料水等が代表的である。果汁類は、通常リンゴ、ブドウ、各種の柑橘類などを原料として得られるが、トマトやその他の野菜を原料として得られる搾汁液であってもよい。また本発明の連続処理装置が適用される液状薬品としては各種輸液、血液製剤、栄養ドリンク剤などがある。また、純水にも適用される。
【0014】これら液状食品等は原料タンクに貯蔵される。このタンクの下部から処理槽底部の導入口に向けて原料を連続的に供給するための配管が接続される。この配管途中には加圧しつつ送液を行うための送液ポンプが設けられており、ポンプを適当な運転条件に設定することにより、液状原料を処理槽に所望の流速にて連続的に供給できるようになっている。なお、配管途中にヒータを取り付けることにより、原料を予備加熱するようにしておいてもよい。
【0015】本発明において、二酸化炭素は超臨界状態の微小気泡として液体原料の処理に使用される。かかる状態としては圧力が70〜400atm、好ましくは100〜300atm、特に好ましくは150〜300atm、温度が30〜70℃、好ましくは30〜50℃の条件下に達成することにより得られる。本発明において超臨界流体は液状原料よりも密度が小さいことが必要であるが、上記条件内で適当な条件を選べば容易に超臨界流体の密度を液状原料より小さい密度にすることができる。 二酸化炭素は液化炭酸ガスが充填されたボンベを供給源とし、処理槽底部の導入部に向けて配管により流路接続される。流路途中には、(必要に応じて二酸化炭素がガス化している場合にこれを液化するための冷却器が設けられ)液化炭酸ガスを加圧送液するためのポンプと、液化炭酸ガスを昇温するための加温器とが設けられ、ポンプおよび加温器を適当な条件に設定することにより二酸化炭素(液化炭酸ガス)を超臨界流体の状態にして処理槽へ供給できるようになっている。
【0016】液状原料と二酸化炭素とは十分に接触させることが必要であり、本発明では超臨界流体の二酸化炭素を微小な泡状態として液状原料中に供給することにしている。そのため、処理槽底部の超臨界流体導入部に超臨界流体の微小化手段としてのフィルタを取り付け、フィルタを通して超臨界流体を導入することにより、微小な泡として超臨界流体を液状原料内に放出している。また必要に応じて超音波振動装置を用いて微小化を促進してもよい。あるいは、フィルタの代わりに導入口に超音波振動装置を取り付け、超音波エネルギーを加えることにより微小な泡状態を作り出すようにしてもよい。これら超臨界流体の微小化手段により泡状態となった超臨界流体が液状原料中に供給される。
【0017】処理槽は耐圧容器で構成され、処理槽内の温度、圧力を調整するために必要な温度計、圧力センサ、処理槽加温器、圧力制御弁(後述する超臨界流体回収流路途中に設けることが多い)が設けられている。これらの調整により、処理槽内では、二酸化炭素は確実に超臨界状態で存在させることができる。
【0018】処理槽内の液状原料を取り出す液体取出口は、処理槽の上部側の液面近傍に設けられる。すなわち、処理槽底部から導入された液状原料が処理槽内を上昇するように流れ、液面近傍まで到達したときに取り出されるようにする。
【0019】上記のように、液状原料についても処理槽底部側すなわち超臨界流体の導入側から導入するとともに、処理槽上部から液状原料を取り出すようにすることにより、向流接触ではなく、泡状の超臨界流体と液状原料とが同方向の流れ(並流)の中で接触しつつ移動することを図っている。
【0020】このように並流方式で液状原料と微小気泡超臨界流体とを接触させることにより、より酵素失活、殺菌、脱臭能力の高い新鮮な泡状の超臨界流体が、処理槽内に導入した直後の液状原料に接触して溶け込むこととなり、酵素失活、殺菌、脱臭効率が格段に向上することとなる。すなわち、ミクロな泡となった超臨界流体が酵素、微生物と接触することにより、酵素の高次構造を崩壊させることができるようになり、酵素の失活や微生物の殺菌、脱臭が促進される。そして、液状原料と泡状の超臨界流体は同方向の流れの中で十分接触された後、処理槽上部に至った液状原料と泡状の超臨界流体は二相に分離され、それぞれの取出口より取り出され、酵素失活処理、殺菌処理が施された製品として製品タンクに回収される。
【0021】処理槽内の液状原料の液面レベルより上部の壁面には超臨界流体排出口が設けられ、ここからリサイクルタンクまでの配管接続により超臨界流体(揮発性成分を含むこともある)を回収するための超臨界流体回収流路が形成される。超臨界流体回収流路上には圧力制御弁(減圧時の断熱冷却防止のための加熱機構付き)が設けてあり、必要に応じて圧力を減圧することにより、超臨界状態を解除してガス化あるいは液化させリサイクルタンクに回収する。リサイクルタンク中には超臨界流体をガス化するため加温器が設けられ、ここで再利用のためのガス化が行われる。このとき必要に応じて不要な揮発性成分を分離して排出するようにしてもよい。なお、ガス化せずに超臨界流体のままあるいは液体状態でリサイクルすることもできる。すなわち、圧力制御弁や加温器をガス化しない条件に設定しておくことで、超臨界流体あるいは液体状態として再利用することもできる。
【0022】リサイクルタンクからは回収されたガス、液体あるいは超臨界流体を二酸化炭素供給源に戻すためのリサイクル流路が接続されており、二酸化炭素の再利用ができるようになっている。なお、製品回収流路に減圧タンクを設け、回収されるガス(製品中にとけ込んでいた二酸化炭素ガス)をリサイクル流路に回収するようにして二酸化炭素の回収率を高めてもよい。
【0023】また、本発明の第2の実施の形態として、超臨界流体回収流路の途中に、処理槽とは圧力制御弁を介して接続される分離槽を設ける。分離槽には温度の調整を行うための分離槽加温器が取り付けられ、分離槽加温器と直前の圧力制御弁とを操作することにより、超臨界流体中の揮発性成分を回収する。このような分離槽を複数段連続的に設けて(圧力を変更するときには途中に圧力制御弁も設ける)、それぞれの設定圧力、設定温度を調整することにより、揮発性成分を個別に抽出して回収することもできる。このようにして回収した成分は製品回収流路につながる揮発性成分回収流路を介して製品内に再び戻すことができる。あるいは製品とは別に揮発性成分のみ分離してこれを外部取出口から独立して製品として取り出すこともできる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図を用いて更に詳細に説明する。
【0025】実施例1図1は本発明の一実施例を示す連続酵素失活処理装置を示す説明図である。
【0026】(A)処理槽図において、処理槽(13)は耐圧容器で構成されている。処理槽内(13)の温度、圧力は温度計(24)、圧力計(25)によりモニタされるとともに、処理槽加温器(14)、圧力制御弁(15)(後述する超臨界流体回収流路上に設置してある)により一定に調整できるようになされている。処理槽(13)の底部にはフィルタ(16)が設置されている。フィルタのメッシュは100μm以下を使用するのが好ましく特に20μm以下のものを使用するのが最も好適である。処理槽(13)内には液面計(24)が設けられており、液面計(24)の出力信号をポンプ(4)にフィードバック信号として送ることにより、一定の液面レベルを維持できるようにしている。なお、液面計(24)を用いずに、製品として取り出す液量と供給する液量とを等しくするように制御してもよい。さらには、圧力制御弁(15)の他に圧力制御弁(15’)を設けて差動操作することにより、一定の液面レベルを維持できるようにしてもよい。このように液面レベルが一定になるように制御することにより、液状原料の処理時間をさらに均等にすることができ、これにより製品の品質の安定化を図っている。液体取出口(26)は、処理槽(13)の上部に到達した液状原料が取り出せる位置に設けられる。一方、液状原料の導入口(22)は、処理槽(13)の底部に設けられる。そして、導入口(22)から導入された液状原料が処理槽(13)内を上昇するように流れ、液面まで到達したときに液体取出口(26)から取り出されるようにしてある。処理槽(13)の最上部にある蓋部には、超臨界流体排出口(27)が設けられている。この超臨界流体排出口(27)は、液面レベルより上部になるようにしてあり、しかも超臨界流体の密度が液体密度よりも小さいので、ここからは液状原料は排出されず、超臨界流体だけが排出されることになる。なお、処理槽(13)内部に螺旋状の仕切板等を設けるなどして液状原料の流れる通路を設けることにより、さらに処理の均一化を図るようにしてもよい。
【0027】(B)超臨界流体供給流路二酸化炭素は液化炭酸ガスボンベ(1)からバルブ(9)、ラインフィルタ(5)を通り、(ガス化している場合は冷却器6により冷却、液化され)ポンプ(3)により、加温器(7)を経てフィルタ(16)から処理槽(13)内に導入される。ポンプ(3)と加温器(7)とにより超臨界流体の状態にして処理槽(13)に導入するのが処理の安定性などの点からはより望ましいが、超臨界流体となる前の亜臨界流体として供給しても、処理槽内で確実に超臨界流体状態にすれば本発明は実施可能である。その意味で、この超臨界流体供給流路内の「超臨界流体」には亜臨界流体をも含むものである。
【0028】(C)連続供給流路液状原料は原料タンク(2)に貯蔵され、このタンク下部から処理槽(13)底部の導入口(22)に向けて配管接続され、この配管途中には加圧しつつ送液を行うためのポンプ(4)が設けられており、ポンプ(4)を適当な運転条件に設定することにより、液状原料を処理槽(13)に所望の流速にて連続的に供給できるようになっている。配管途中には加温器(23)を取り付けることにより、連続的に供給される原料を予め処理槽温度と同程度の温度となるように予備加熱できるようにしてある。
【0029】(D)超臨界流体微小化導入手段処理槽(13)底部にフィルタ(16)が設置される。そして、超臨界流体供給流路から送られてきた超臨界流体がフィルタ(16)を通って処理槽(13)内に導入される。その際、超臨界流体はフィルタ(16)穴径(孔径)によって決定される大きさのミクロな泡となって導入口(22)から処理槽(13)内に導入された液状原料に放出される。すなわち、フィルタ(16)から導入されるミクロな超臨界流体と導入直後の液状原料とがすぐに接触、混合できるようにしてある。なお、この導入部分にフィルタとともに超音波振動装置を設置してミクロ化を促進するようにしてもよい。
【0030】(E)製品回収流路液体取出口(26)には製品タンク(28)に接続される製品回収流路が接続される。流路の途中に減圧タンク(29)を設け、製品中にとけ込んでいる二酸化炭素をガス化して取り出し、取り出されたガスをバルブ(30)を介して後述するリサイクル流路に戻すことができるようにしてある。
【0031】(F)超臨界流体回収流路超臨界流体排出口(27)には圧力制御弁(15)を介してリサイクルタンク(31)に接続される超臨界流体回収流路が接続される。この流路を流れる超臨界流体は、圧力制御弁(15)により減圧されることによって超臨界流体が解除され、ガス化する。ガス化した流体はリサイクルタンクに回収される。なお、圧力制御弁の設定によっては液体あるいは超臨界流体のままで回収することもできる。
【0032】(G)リサイクル流路リサイクルタンク(31)には逆止弁(32)、バルブ(9)を介して超臨界流体供給流路に接続されるリサイクル流路が設けられ、液化炭酸ガスボンベ(1)に代替する二酸化炭素供給源として機能するようになっている。すなわち、リサイクル流路を介して供給する二酸化炭素量で足りない分だけを液化炭酸ガスボンベ(1)から供給するようにして二酸化炭素の消費量を低減するようにしている。
【0033】実施例2図2は本発明の他の一実施例を示す連続酵素失活処理装置を示す説明図である。なお、実施例1で説明した(A)から(G)の部分については基本的に同じであるため、これらは同符号を付することにより説明を省略する。
【0034】(H)分離槽超臨界流体回収流路(F)の途中に、処理槽(13)からは圧力制御弁(34)を経て2つの分離槽(33)が直列的に接続される。分離槽(33)も耐圧容器で構成される。必要に応じて2つの分離槽の間の流路上に別の圧力制御弁を設けてもよい。分離槽(33)には温度調整用の加温器(35)が取り付けてあり、圧力制御弁(34)と加温器(35)を適当な値に設定することにより超臨界流体中に含有する揮発性成分を抽出することができる。
【0035】(I)揮発性成分回収流路分離槽(33)からは、バルブ(36)を経て製品回収流路に接続される揮発性成分回収流路が接続され、分離槽(33)にて抽出された揮発性成分が製品回収流路を流れる製品中に戻される。揮発性成分回収流路にはバルブ(37)への分岐流路が設けられており、揮発性成分のみを取り出すこともできる。
【0036】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、液状原料とミクロな泡状態にした超臨界流体とを並流させて処理をしたことにより酵素失活効率、殺菌効率、脱臭効率の優れた連続処理装置を作ることができた。また処理槽内での超臨界流体と液状原料との接触により、液状原料が失活、殺菌されるだけではなく、液状原料中に含まれる揮発性成分等が超臨界流体とともに気体となって超臨界流体の排出系から処理槽外へ排出される。この揮発性成分が製品の品質に効果的に寄与する場合には、回収して製品に戻すことができ、あるいは好ましい香気成分を単独で取り出して製品とすることができる。逆に製品の品質を低下させる場合には製品に戻すことはしない(脱臭の場合等)。
【0037】さらに、二酸化炭素を超臨界流体のままあるいはガス化あるいは液化してリサイクル利用することにより、二酸化炭素の消費を低減することができる。特に、超臨界流体のままリサイクルする場合には、冷却、加熱、液化に伴うエレルギー消費をも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である連続失活処理装置の構成図。
【図2】本発明の他の一実施例である連続失活処理装置の構成図。
【符号の説明】
1:液化炭酸ガスボンベ
2:原料タンク
3、4:ポンプ
6:冷却器
7:加温器
13:処理槽(A)
14:処理槽加温器
15:圧力制御弁
16:フィルタ(微小化導入手段(D))
22:導入口
26:液体取出口
27:超臨界流体取出口
28:製品タンク
29:減圧タンク
31:リサイクルタンク
33:分離槽(H)
34:圧力制御弁
35:加温器
(B):超臨界流体供給流路
(C):連続供給流路
(E):製品回収流路
(F):超臨界流体回収流路
(G):リサイクル流路
(I):揮発性成分回収流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 液状原料となる液状食品や液状薬品を処理槽内で超臨界流体により連続処理する連続処理装置であって、液状原料を連続的に供給する液状原料の連続供給流路と、処理槽底部側に設けられ、連続供給流路により送られる液状原料を処理槽に導入するための導入口と、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素を超臨界流体にならしめ連続的に供給する超臨界流体供給流路と、処理槽底部側に設けられ、超臨界流体供給流路により送られる超臨界流体を処理槽内に導入するとともに、超臨界流体を微小泡にして液状原料中に放出する超臨界流体微小化導入手段と、処理槽上部側の液状原料を排出する液体取出口に接続された製品回収流路と、処理槽上部に設けられた超臨界流体排出口から超臨界流体を排出する超臨界流体回収流路と、超臨界流体回収流路により回収された超臨界流体を、直接あるいは超臨界流体をガス化あるいは液化するためのリサイクルタンクを介して二酸化炭素供給源に供給するリサイクル流路とを備え、前記処理槽内において微小化超臨界流体と液状原料とを並流連続処理させたことを特徴とする連続処理装置。
【請求項2】 超臨界流体回収流路の途中に設けられ、圧力制御手段又は温度制御手段を用いて超臨界流体中に含有される揮発性成分を分離する少なくとも1つの分離槽と、分離槽に分離された成分を、製品回収流路に接続し、または外部取出口から回収する揮発性成分回収流路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の連続処理装置。

【図1】
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【図2】
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