説明

超軟質発泡体の切断方法

【課題】 簡便な操作により、厚みのある超軟質発泡体を安定した寸法・形状に切断し、平滑で美麗な切断面を得る、超軟質発泡体の切断方法を提供すること。
【解決手段】 短辺の先端が下方に向き、且つ構造材の短辺の外面が対面するように断面がL字型の構造材2個からなる簡単な構造体を切断ガイドとして超軟質発泡体に押し付けて圧縮し、刃物で切断することを特徴とするASKER−FP硬度が15度以下の超軟質発泡体の切断方法により超軟質発泡体の切断に際して平滑で美麗な切断面を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超軟質発泡体の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状樹脂を発泡成形してなる軟質発泡体は、柔軟性、緩衝性、軽量性等に優れていることや、製品に対する原料樹脂の使用量を減らすことができるという経済性の高さから、様々な分野で広く使用されている。
特に、半ゲル化したポリウレタンエラストマーフォームのような超軟質発泡体は、極めて柔軟で、応力追従性、衝撃や振動の吸収、緩和、分散性に優れることからベッド、マット、枕、クッション、パッドのように人体各部に当てて使用する製品や、床材や緩衝材等の衝撃吸収材への需要が増加している。
【0003】
しかし、超軟質発泡体は柔軟性が高い為、特に厚みのあるの発泡体を切断する際に、発泡体の変形が大きくなり、安定した寸法・形状に切断するのが困難であるという問題がある。厚物発泡体を安定した寸法・形状に切断する方法として、様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、シート状成形体の周縁部の切断において、先端が鋸刃状をなす支持部材がシートに食い込むことにより、シートに緊張状態を保持して、シートの端縁部の変形を抑制しながら、切断刃による押し切り切断することにより、平滑な切断面を得る切断方法が開示されている。但し、この方法では、特殊な刃物・冶具が必要であり、操作も煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡便な方法で、超軟質発泡体を安定した寸法・形状に切断し、平滑で美麗な切断面を得る、超軟質発泡体の切断方法の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、以下の構成を有するものである。
【0008】
1).短辺の先端が下方に向き、且つ構造材の短辺の外面が対面するように断面がL字型の構造材2個を配した切断ガイドを用い、この切断ガイドを超軟質発泡体に押し付けて圧縮し、刃物で切断することを特徴とするASKER−FP硬度が15度以下の超軟質発泡体の切断方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば簡便な操作により、肉厚の超軟質発泡体を安定した寸法・形状に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】断面がL字型の構造材1の概略図である。
【図2】切断ガイド2の概略図である。
【図3】ヒンジを使用した切断ガイドの押し付け形態の説明図である。
【図4】切断ガイドを用いて超軟質発泡体を切断する形態の説明図である。
【図5】実施例および比較例の発泡体成形品切断面をデジタルカメラで撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、詳細に説明する。
本発明の特徴である切断ガイド2は、図1で示す断面がL字型の構造材1を2個用いて構成される。構造材1の材質としては、強度・耐久性に問題が無ければ特に制限はなく、ステンレスやアルミニウムのような金属や、一般的なプラスチック材料を用いることができる。
【0012】
図2で示すように、切断ガイド2の構造は、2個の構造材1を、短辺の先端が下方に向き、且つ2個の構造材1の短辺の外面が対面するように配した構成である。2個の構造材1を対面配置することにより形成される隙間3は、切断刃物が円滑に通過する寸法を有している。
【0013】
以下に、本発明の超軟質発泡体の切断方法の実施形態を説明する。
【0014】
まず、超軟質発泡体4の切断位置に沿って、切断ガイド2を超軟質発泡体4に押し付ける。この時、切断ガイド2の隙間3の中心線が前記の切断位置に一致するように、切断ガイド2の位置を合わせる。
【0015】
切断ガイド2を超軟質発泡体4に押し付ける方法は、切断ガイド2を超軟質発泡体4に対して単独で押し付けても、又ヒンジを支点として切断ガイド2を回転させることにより、押し付けても良い。
【0016】
ヒンジを用いた切断ガイド2の押し付け形態としては、図3(a)に示すように、切断ガイド2をヒンジ7を支点にして上昇させた状態で超軟質発泡体4を基盤5に設置した後、図3(b)に示すように、切断ガイド2をヒンジ7を支点にして下降させて超軟質発泡体4の表面に切断ガイド2を押し付けるという方法を用いることができる。
超軟質発泡体4に切断ガイド2を押し付けることで、図4(a)に示すように、切断ガイド2の水平な長辺部分と鉛直な短辺部分が発泡体表面に密着する。
【0017】
次に、切断ガイド2を更に下降させて超軟質発泡体4を圧縮する。この時、図4(b)に示すように、切断ガイド2の水平な長辺部分で超軟質発泡体4の上下方向の変形が制約され、鉛直な短辺部分で超軟質発泡体4の左右方向の変形が制約されるため、切断ガイド2が押しつけられた部分については、超軟質発泡体4が鉛直方向にのみ圧縮される。
【0018】
切断ガイド2の下降は長辺部分が水平を維持し、短辺部分が鉛直を維持した状態で行われるのが望ましい。切断ガイド2が超軟質発泡体4に斜めに押し付けられると、上下左右方向の発泡体の変形を制約できなくなり、平滑な切断が出来なくなる為、望ましくない。
次に、図4(c)に示すように、切断ガイド2の隙間3に刃物6を沿わせて切断することで、切断面が平滑な切断が行われる。
【0019】
超軟質発泡体4の切断完了後、刃物6と切断ガイド2を外すと、図4(d)に示すような、垂直で平滑に切断された超軟質発泡体4が得られる。
【0020】
本発明の方法で切断できる超軟質発泡体4は、ASKER−FP硬度が15度以下の超軟質発泡体に適用することが出来る。その発泡体としてはポリウレタン、ポリオレフィン、シリコン樹脂の発泡体を用いることができる。超軟質発泡体としてはより柔らかいASKER−FP硬度で13度以下、さらには10度以下の発泡体にも適用できる。ASKER−FP硬度の下限値としては、発泡体が切断面が保持できていれば特に限定はないが、強いて下限値に言及すればASKER FP型硬度計で測定できる範囲であれば特に問題ない。
【0021】
好適な例としては、これら樹脂の中でも、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する有機重合体を主成分とするものが挙げられる。好ましい実施形態では、前記有機重合体の主鎖を構成する繰り返し単位が、飽和炭化水素系又はオキシアルキレン系単位からなる。この好ましい実施形態における樹脂原料の詳細は、例えば国際公開2008/117734号公報等に記載されている。
【0022】
具体例を挙げると、(A)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系又はオキシアルキレン系単位からなる重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロキシル基を有する発泡剤、(D)ヒドロシリル化触媒、を主成分とする発泡性組成物が、本実施形態における液状樹脂原料として使用できる。
【0023】
本発明の切断ガイド2の構成材として使用する断面がL字型の構造材1の寸法は、長辺が10mm以上、短辺が3mmから7mm、厚さが2mm未満のものを用いることができる。
【0024】
長辺の長さが短すぎると、上下方向の変形抑制が不十分である為、好ましくない。短辺の長さが短すぎると左右の変形抑制が弱く、長すぎると超軟質発泡体4の表面とL字型の構造材1との密着が弱くなり、長辺の上下の変形抑制が弱くなる為、好ましくない。
【0025】
L字型の構造材1の厚さは厚すぎると、超軟質発泡体4を圧縮する切断ガイド2の短辺の先端において、左右方向への超軟質発泡体4の変形が生じ、垂直方向のみの圧縮が達成されなくなり、好ましくない。
【0026】
本発明の切断には刃物を使用することが好ましい。使用する刃物6の形状や材質に特に制約はなく、回転歯、押し切り、市販のカッター等が使用できる。簡便な方法としては、押し切り、市販カッターを用いることができ、特にはNTカッター等市販のカッターを用いることができる。
【0027】
刃物6が通過する切断ガイド2の隙間3の寸法は、刃物6が隙間3に沿って超軟質発泡体4を切断する際に刃物6のガタツキがなく、円滑に切断できる寸法が好適である。切断ガイド2の長さは、超軟質発泡体4を切断する長さ以上であれば、特に制約はない。
【0028】
本発明によれば簡便な操作により、厚みのある超軟質発泡体を安定した寸法・形状に切断することができる。以下に、本発明の非限定的な実施例について説明する。
【実施例】
【0029】
1.発泡体成形品の作製
本発明の実施例および比較例に用いる発泡体成形品を、以下の手順で作製した。
【0030】
まず、(A)アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名:カネカサイリルACS003、(株)カネカ製):100重量部と、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名:CR100、(株)カネカ製):25重量部と、(C)エタノール:10重量部と、(D)ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有率3wt%、イソプロピルアルコール溶液):0.06重量部、とを攪拌混合して、発泡体原料を調合した。
【0031】
この発泡体原料を、内寸法が100mm×50mm×高さ50mmである、ステンレス製の発泡体原料が漏れない閉鎖容器に50g注入し、このステンレス容器をファンが設けられた加熱炉内に置き、70℃で60分間加熱して発泡体原料を発泡、硬化させた。
【0032】
加熱終了後、ステンレス容器を加熱炉から取り出し、離型して発泡体成形品を得た。
この発泡体成形品の硬さをASKER FP型硬度計で測定したところ、硬度は10度であった。
【0033】
2.発泡体成形品の切断
(実施例)
前記の発泡体成形品を、図2の形状の切断ガイドを用いて切断した。切断ガイドを構成する断面がL字型の構造材は、長辺が10mm、短辺が5mm、厚さ1mm、長さ200mmのステンレス製のL字材を使用した。2個のL字材の隙間は1mmにした。
【0034】
前記の発泡体成形品の長手方向端部から50mmの位置で、前記切断ガイドを鉛直方向上部から発泡体成形品に押し付け、そのまま鉛直方向に下降させて発泡体成形品を圧縮した。 圧縮時の発泡体の厚さは、切断ガイド2に用いたL字型構造材1の寸法とヒンジ7の設置位置調整により5mmとした。 次に、切断ガイドの隙間にオルファ製 L-2型カッターを沿わせて発泡体成形品を切断した。
【0035】
(比較例)
前記の発泡体成形品の長手方向端部から50mmの位置にステンレス製の定規の一辺を押し当て、 実施例と同じ5mm程度まで圧縮し、この定規の一辺にオルファ製 L-2型カッターを沿わせて発泡体成形品を切断した。
【0036】
3.発泡体成形品の切断面の評価
実施例と比較例の発泡体切断状態を比較した。図2の形状の切断ガイドを用いて発泡体を切断した実施例では、図5(a)に示すように、歪みのない切断面が得られた。
【0037】
一方、ステンレス製の定規を用いて発泡体を切断した比較例では、図5(b)のように、湾曲した切断面となった。
【0038】
以上のように、図2の形状の切断ガイドを用いることで、超軟質発泡体を安定した寸法・形状に切断することができることがわかった。
【符号の説明】
【0039】
1・・・断面がL字型の構造材
2・・・切断ガイド
3・・・切断ガイド2の隙間
4・・・超軟質発泡体
5・・・超軟質発泡体を設置する基盤
6・・・切断刃物
7・・・ヒンジ
8・・・実施例および比較例の発泡体成形品
9・・・実施例および比較例の発泡体成形品の切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺の先端が下方に向き、且つ構造材の短辺の外面が対面するように断面がL字型の構造材2個を配した切断ガイドを用い、この切断ガイドを超軟質発泡体に押し付けて圧縮し、刃物で切断することを特徴とするASKER−FP硬度が15度以下の超軟質発泡体の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81552(P2012−81552A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229634(P2010−229634)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】