説明

超電導ケーブルの中間接続構造

【課題】超電導薄膜をコアの内周側に向けた超電導導体層を備える超電導ケーブル同士を接続する場合に、接続箇所の抵抗を低減できる超電導ケーブルの中間接続構造を提供する。
【解決手段】この中間接続構造は、フォーマ111A,111Bの外周に超電導導体層113A,113Bを備える一対の超電導ケーブル同士を接続する。超電導導体層113A,113Bは、基板22A,22B上に形成された超電導薄膜26A,26Bを有する超電導線材2A,2Bを、超電導薄膜26A,26Bが内周側、基板22A,22Bが外周側となるように螺旋状に巻回して構成される。さらに、両ケーブルの超電導導体層の間に介在される架設用超電導接続部材5と、超電導薄膜26A,26Bと架設用超電導接続部材5の双方の内周面に対面する接合用超電導接続部材6A,6Bを備える。超電導導体層113A,113B及び架設用超電導接続部材5の端部は、導電接合材7A,7Bを解して接合用超電導接続部材6A,6Bと接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの中間接続構造に関するものである。特に、超電導線材の超電導薄膜をケーブルの内周側に向けて螺旋状に巻回された超電導導体層を備える超電導ケーブルの中間接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、常電導ケーブルと比較して大容量の電流を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実用化に向けて超電導ケーブルの実証試験が実施されている。
【0003】
一般に、この超電導ケーブルは、図2に示すように、外管10Aの内部に内管10Bを有する断熱管10を備え、その内管10Bに1本以上のコア11を収納した構造である。このコア11は、中心から外周側に向かって順に、フォーマ111、超電導導体層113、絶縁層115、超電導シールド層117、保護層119を備える。
【0004】
このような超電導ケーブルを用いて長距離の送電線路を構築するには、ケーブル同士を接続する中間接続構造が必要になる。従来、この中間接続を構築する技術として、特許文献1に記載のものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、まず接続される一対の超電導ケーブルの各端部を段剥ぎして、コアを構成する各層を段階的に露出させる。次に、フォーマの端部同士を接続スリーブに挿入して突き合わせ、そのスリーブを圧縮してフォーマ同士を接続する。一方、予め複数本の超電導線材を並列状態に仮固定した接続部材を用意しておく。この接続部材の両端部には、半田ペーストなどの導電性接着材層が形成されている。この接続部材を前記フォーマ同士の接続箇所の外周に巻きつけ、両端部の導電性接着剤層を各コアの超電導導体層の上に被せる。そして、接続部材における導電性接着材層の設けられた箇所の外周をヒータで加熱して、両ケーブルの超電導導体層同士が接続部材を介して接続されるようにする。ここで用いる接続部材には、パウダーインチューブ法で製造されたBi系酸化物超電導線材が用いられている。
【0005】
一方、超電導ケーブルの超電導導体層を構成する線材として、図3に示す薄膜超電導線材がある。この超電導線材2は、常電導の基板22上に超電導薄膜26が形成されている。超電導導体層は、超電導線材2を、基板22が外周側、超電導薄膜26が内周側となるように螺旋状に巻回して構成される(特許文献2参照)。超電導薄膜26をコアの内周側に向けた超電導導体層(以下、内巻導体構造という)とすれば、曲げの内側となる超電導薄膜26に圧縮歪が作用し、曲げの外側となる基板22に引張歪が作用するため、臨界電流が低下し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−245477号公報
【特許文献2】特開2007−188844号公報 段落番号0007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術では、内巻導体構造の超電導ケーブル同士を接続するのに適した中間接続構造を開示していない。
【0008】
内巻導体構造の超電導導体層に対して、特許文献1に記載の技術を適用することを想定する。その場合、内巻導体構造の超電導導体層の外周に上述した接続部材を被せて導電接着材層の加熱を行い、両ケーブルの超電導導体層同士を、接続部材を介して接続することになる。
【0009】
ところが、このような接続構造の場合、超電導薄膜は超電導導体層の外周側に位置する常電導の基板を介して接続部材と接続されることになる。その結果、接続箇所での抵抗が大きくなることが予想される。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、内巻導体構造の超電導ケーブル同士を低抵抗にて接続することができる超電導ケーブルの中間接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造は、フォーマの外周に超電導導体層を備える一対の超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続構造に係る。前記超電導導体層は、基板の片面側に超電導薄膜を有する超電導線材を、超電導薄膜が内周側、基板が外周側となるように螺旋状に巻回して構成されると共に、内周側に面する導体接合面を有する。この中間接続構造は、架設用超電導接続部材と、接合用超電導接続部材と、導電接合材とを備える。架設用超電導接続部材は、前記各ケーブルの超電導導体層の間に介在される部材で、前記導体接合面と隣り合う第一接合面を有する。接合用超電導接続部材は、前記導体接合面と前記第一接合面とに跨るように対面される第二接合面を有する。導電接合材は、前記導体接合面と前記第二接合面との間及び前記第一接合面と第二接合面との間を接合する。そして、前記超電導薄膜と接合用超電導接続部材との間、及び前記接合用超電導接続部材と架設用超電導接続部材との間に形成される電流路の途中に、前記基板の材料以上の電気抵抗を有する材料が介在されないように構成したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、超電導薄膜と接合用超電導接続部材との間、及び接合用超電導接続部材と架設用超電導接続部材との間に形成される電流路の途中に、基板の材料以上の電気抵抗を有する材料が介在されていない。そのため、内巻導体構造の超電導ケーブル同士を接続する場合、低抵抗の接続構造を構築できる。
【0013】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、前記架設用超電導接続部材は、基板の片面に超電導層を備え、その超電導層が内周側、基板が外周側となるようにフォーマの外周に巻き付けられてなることが挙げられる。
【0014】
この構成によれば、架設用超電導接続部材の超電導層は、接合用超電導接続部材の側に向けて配置され、架設用超電導接続部材の基板よりも内周側に配置されることになる。そのため、架設用超電導接続部材と接合用超電導接続部材との間に高抵抗の基板が介在されることがない。
【0015】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、前記接合用超電導接続部材は、基板の片面に超電導層を備え、その超電導層が外周側、基板が内周側となるようにフォーマの外周に巻き付けられてなることが挙げられる。
【0016】
この構成によれば、接合用超電導接続部材の超電導層は、超電導導体層及び架設用超電導接続部材の側に向けて配置され、接合用超電導接続部材の基板よりも外周側に配置される。そのため、超電導導体層と接合用超電導接続部材との間及び架設用超電導接続部材と接合用超電導接続部材との間に高抵抗の基板が介在されることがない。
【0017】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、前記架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の双方が、安定化材中に埋設された超電導フィラメントを有する超電導線材を備えることが挙げられる。
【0018】
この構成によれば、安定化材中に超電導フィラメントが埋設された超電導線材を用いているので、架設用・接合用のいずれの超電導接続部材においても片面側に高抵抗の基板がない。そのため、架設用・接合用の超電導接続部材は、その裏表を区別することなく、接続構造の組立に利用することができる。
【0019】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、前記架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の一方が基板の片面側に超電導薄膜を有する超電導線材を備え、他方が安定化材中に埋設された超電導フィラメントを有する超電導線材を備えてもよい。その場合、一方の接続部材の超電導薄膜を他方の接続部材の接合面に近接する側とし、基板を他方の接続部材の接合面から離間する側となるように構成する。
【0020】
この構成によれば、架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の超電導薄膜及び超電導フィラメントの間に高抵抗の基板が介在されることがない。そのため、超電導ケーブルの中間接続構造を低抵抗にて構築できる。また、架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の片方に、安定化材中に埋設された超電導フィラメントを有する超電導線材を用いているため、その接続部材は表裏を区別することなく接続構造の組立に利用することができる。
【0021】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、前記超電導導体層が複数の超電導線材が径方向に積層されている場合、この超電導導体層の端部は、内層側の超電導線材の端部を外層側の超電導線材の端部よりもケーブル軸端方向に長くして、各層の超電導薄膜を段階状に構成することが挙げられる。その場合、架設用超電導接続部材も、前記超電導導体層の各層に対応した積層構造とする。そして、各層の架設用超電導接続部材を、内層側に配置されるものほど短く構成すればよい。
【0022】
この構成によれば、接続される各超電導ケーブルが積層構造の超電導導体層を備える場合に、各ケーブルの各層の超電導導体層同士を適切に接続することができる。特に、超電導導体層の各層と架設用超電導接続部材の各層とが重ならないように中間接続部を構築できるため、接続箇所での抵抗の増大を防止できる。
【0023】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造において、さらに、前記各ケーブルのフォーマ同士を圧縮接続する常電導接続部材を備えることが挙げられる。
【0024】
この構成によれば、常電導接続部材による圧縮接続で、フォーマ同士を簡易かつ強固に接続できる。それに伴って、フォーマで超電導ケーブルに生じる張力を負担し、超電導導体層、架設用超電導接続部材、接合用超電導接続部材に張力が作用することを回避できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造によれば、超電導導体層の超電導薄膜と接合用超電導接続部材との間及び接合用超電導接続部材と架設用超電導接続部材との間に基板を介することなく接続でき、接続箇所での抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係る超電導ケーブルの中間接続構造の要部縦断面図である。
【図2】超電導ケーブルの横断面図である。
【図3】薄膜超電導線材の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0028】
[実施形態1]
〔全体構成〕
本発明の実施形態に係る中間接続構造を図1〜図3に基づいて説明する。各図において、同一部材には同一符号を付している。本例の中間接続構造は、図1に示すように、突き合わされた一対の超電導ケーブルの端部と、常電導接続部材4と、架設用超電導接続部材5と、接合用超電導接続部材6と、導電接合材7とを備える。この接続構造では、順に、一方の超電導ケーブルの超電導導体層113A、一方の接合用超電導接続部材6A、架設用超電導接続部材5、他方の接合用超電導接続部材6B、他方の超電導ケーブルの超電導導体層113Bという電流路が形成される。以下の説明では、先に超電導ケーブルとその超電導導体層の構成を説明し、その後に中間接続構造を説明する。
【0029】
〔各部の構成〕
<超電導ケーブルとその端部>
超電導ケーブル1は、図2に示すように、断熱管内10に3心のコア11を収納した構造である。断熱管10は、外管10A・内管10Bの間を真空引きした断熱二重管で構成され、外管10Aと内管10Bとの間には輻射断熱材(図示略)が配置される。一方、コア11は、中心から外周側に向かって順に、フォーマ111、超電導導体層113、絶縁層115、超電導シールド層117、保護層119を備える。
【0030】
このうち、超電導導体層113は、複数の超電導線材をフォーマ111の外周に螺旋状に巻回して単層を構成し、その単層をコア11の径方向に複数積層した構成である。この超電導線材は、図3に示すように、超電導薄膜26を有するものとする。例えば、基板22の片面上に、中間層24、超電導薄膜26、安定化層28を順次成膜した積層構造の超電導線材2を用いる。但し、基板22と超電導薄膜26とがあればよく、他の層は必要に応じて設けてもよい。そして、各超電導線材2は、超電導薄膜26がコア11(図2)の内周側、基板22が外周側になるように螺旋状に巻回されている。
【0031】
このような超電導ケーブルの端部では、コア11を構成するフォーマ111から超電導シールド層117までの各層が段階的に露出される。フォーマ111には複数の銅素線からなる撚り線を、超電導導体層113と超電導シールド層117を構成する超電導線材2にはRE123系線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)を、絶縁層115にはポリプロピレンとクラフト紙がラミネートされたPPLP(登録商標)を利用できる。特に、超電導導体層113には、超電導薄膜26(図3)をコアの内側に向けて螺旋状に巻回した超電導線材2を用いているため、例えば10mm以下といった小さい外径のフォーマ111に対して超電導線材2を巻回することができる。さらに、超電導線材2の基板22にはハステロイなど、中間層24にはYSZなど、安定化層28にはAgやCuなどが利用できる。
【0032】
そのうち、各ケーブルにおける積層構造の超電導導体層113A、113Bの各層は、図1に示すように、順次、外層から内層に向かってケーブル軸端方向(図1の中央側)に長くなるように構成される。つまり、超電導導体層113A、113Bの各層の端部は、超電導薄膜26A、26Bが基板22A、22Bよりもコアの内周側に向いた状態で、内層側の超電導線材の基板22A、22Bが外層側の超電導線材2A、2Bの端部から段階的に露出するように形成される。そして、この各超電導導体層113A、113Bの端部の内周面が導体接合面となる。この超電導導体層113A、113Bの端部を段階状に形成する処理は、ケーブルの端部で一般に行われるいわゆる段剥ぎと同様な処理でよいため、格別のスキルを必要としない。必要に応じて、超電導導体層113A、113Bの各層の端部において、超電導薄膜26A、26B上の安定化層28(図3参照)を機械的又は化学的に除去して超電導薄膜26A、26Bを超電導導体層113A、113Bの内周側に露出させてもよい。それにより、一層低抵抗の接続構造を構成できる。
【0033】
なお、図1では、説明の便宜上、超電導導体層113A、113Bの端部における超電導線材2A、2Bの段階状態を誇張して示している。一般に、1本の超電導線材2A、2Bの厚さは100〜200μm程度である。また、図1では省略しているが、超電導導体層113A(113B)の各層の間には層間絶縁が施され、その厚さは140μm程度である。一方、本例ではコアの径方向に隣接する一対の超電導線材113A(113B)のうち、外層よりもケーブル軸端方向に突出する内層の寸法(突出量)を20〜30mm程度としている。そのため、実際の超電導導体層113A、113Bの端部では、1層の超電導線材2A、2Bの厚さに対して、ほぼ100倍以上の突出量となり、1段の段差が240〜340μm程度の段階状態が形成される。
【0034】
<常電導接続部材>
常電導接続部材4は、各ケーブルのフォーマ同士を接続するための部材である。本例では、銅製のスリーブ材を常電導接続部材4としている。各ケーブルのフォーマ111A、111Bは、常電導接続部材4の両端部から内部に差し込まれて突き合わせた状態とされ、その状態で常電導接続部材4を圧縮して接続される。
【0035】
この常電導接続部材4の外周面は、両端部側が細く中間部が太い段階状に形成されている。本例では、後述する接合用超電導接続部材6A、6Bの厚さにほぼ対応した段差としている。この段差により、(1)最内層の超電導導体層に接合される接合用超電導接続部材6A、6Bの位置決め、(2)その接合用超電導接続部材6A、6Bが常電導接続部材4の外周に乗り上げて、常電導接続部材4の端部で過度に押圧されることの抑制、(3)その乗り上げ箇所の外径サイズの増大防止、といったことを実現できる。この常電導接続部材4の両端部の形状は、端部に向かうに従って外径が小さくなるテーパ状としてもよい。
【0036】
<架設用超電導接続部材>
架設用超電導接続部材5は、両ケーブルの超電導導体層113A、113B同士を接続するための部材の一つであり、両ケーブルにおける各層の超電導導体層113A、113Bの間に介在されて常電導接続部材4の外周を覆う。この架設用超電導接続部材5は、基板52と超電導層56とを備える。代表的には、超電導導体層113A、113Bを構成する超電導線材2A、2Bと同様に4層の積層構造のものを架設用超電導接続部材5として利用できる。
【0037】
通常、超電導線材は、まず基板上に順次中間層、超電導薄膜、安定化層を形成した長尺シートを製造し、その長尺シートを細く切断して所定の線材幅とすることで作製されている。そのため、長尺シートの切断幅を調整することで、架設用超電導接続部材5を容易に得ることができる。その場合、長尺シートの基板が架設用超電導接続部材の基板52となり、長尺シートの超電導薄膜が架設用超電導接続部材の超電導層56となる。
【0038】
この架設用超電導接続部材5は、各ケーブルにおける超電導導体層113A、113Bの各層同士の間隔にほぼ相当する幅と、超電導導体層113A、113Bの各層の周長に相当する長さを持つシートで構成してもよいし、各ケーブルにおける超電導導体層113A、113Bの各層同士の間隔にほぼ相当する長さの超電導線材を複数本並列し、その並列方向の全長が各層の超電導導体層113A、113Bの周長に相当する長さとなるように構成してもよい。その場合、並列された各超電導線材は、各線材と交差する方向に掛け渡される仮固定部材で一体化することが好ましい。これにより、架設用超電導接続部材5を中間接続構造の所定位置に配置する際に、各超電導線材がバラけることを防止できる。さらに、架設用超電導接続部材5を複数本の超電導線材で構成する場合、超電導線材の幅は、超電導導体層113A、113Bを構成する超電導線材2A、2Bと同一でもよいし異なってもよい。本例では、超電導導体層113A、113Bを構成する超電導線材2A、2Bよりも幅広の超電導線材を並列して架設用超電導接続部材5を構成している。これにより、各層の架設用超電導接続部材5を構成する超電導線材の本数を各層の超電導導体層を構成する超電導線材2A、2Bの本数よりも少なくし、架設用超電導接続部材5と接合用超電導接続部材6A、6Bとの導電接合材7A、7Bによる接合箇所数を低減できる。
【0039】
このようなサイズの架設用超電導接続部材5を用いることで、内層側の架設用超電導接続部材5ほどコアの軸方向の長さが短くなる。それにより、各層の架設用超電導接続部材5が各層の超電導導体層113A、113Bに重なることを回避できる。
【0040】
そして、架設用超電導接続部材5は、その超電導層56をコアの内周側に、基板52をコアの外周側に向けて配置される。この配置により、各層の架設用超電導接続部材5におけるコア軸方向の両端部では、その内周面が第一接合面となる。その結果、超電導導体層113A、113Bの各層における導体接合面と架設用超電導接続部材5の各層における第一接合面とがコア軸方向に隣接されることになる。
【0041】
<接合用超電導接続部材>
接合用超電導接続部材6A、6Bは、各層の超電導導体層113A、113Bと各層の架設用超電導接続部材5を電気的に接続するための部材である。この接合用超電導接続部材6A、6Bは、各層の超電導導体層113A、113B及び架設用超電導接続部材5の内周側において、導体接合面と第一接合面に跨るように配置される。この接合用超電導接続部材6も、基板62と超電導層66とを備える。代表的には、超電導導体層113A、113Bを構成する超電導線材2A、2Bと同様に4層構造のものを接合用超電導接続部材6A、6Bとして利用できる。本例では、基板上に順次中間層、超電導薄膜、安定化層を形成した長尺シートを製造し、その長尺シートを約30mmの幅に切断して接合用超電導接続部材6としている。また、この接合用超電導接続部材6A、6Bの長さは、各層の超電導導体層113A、113Bの周長にほぼ相当する長さとしている。
【0042】
このような接合用超電導接続部材6A、6Bは、その基板62A、62Bをコアの内周側に向け、超電導層66A、66Bをコアの外周側に向けるようにして、コアの周方向に沿って一周巻き付けられている。その際、接合用超電導接続部材6A、6Bの外周面を第二接合面とし、第二接合面の幅方向のほぼ半分が超電導導体層113A、113B の各層の導体接合面に対面され、残りの半分が架設用超電導接続部材5の第一接合面に対面されるようにする。この接合用超電導接続部材6A、6Bの配置により、超電導導体層の超電導薄膜26A、26Bと接合用超電導接続部材の超電導層66A、66Bとの間及び架設用超電導接続部材の超電導層56と接合用超電導接続部材の超電導層66A、66Bとの間のいずれにも基板22A、22B、52、62A、62Bが介在されることがない。このような接合用超電導接続部材6A、6Bの配置により、超電導導体層の超電導薄膜26A、26Bと架設用超電導接続部材の超電導層56とは、接合用超電導接続部材の超電導層66A、66Bを介して電気的に接続される。
【0043】
<導電接合材>
導電接合材7A、7Bは、超電導導体層113A、113Bの各層の導体接合面と接合用超電導接続部材の第二接合面との間及び架設用超電導接続部材の各層の第一接合面と接合用超電導接続部材6A、6Bの第二接合面との間の接合に用いられる。具体的には半田が利用できる。低融点半田を利用してもよい。この導電接合材7A、7Bでの接合により、超電導導体層の超電導薄膜26A、26Bと接合用超電導接続部材の超電導層66A、66Bとの間及び架設用超電導接続部材の超電導層56と接合用超電導接続部材の超電導層66A、66Bとの間には、半田や安定化層28(図3)だけが介在され、高抵抗の基板22A、22B、52、62A、62Bが介在されることはない。半田以外の材料であっても、これらの接合箇所を低抵抗で接続でき、かつ機械的にも適切な接合強度が得られる材料であれば導電接合材7A、7B として利用できる。
【0044】
〔組立方法〕
以上の本発明中間接続構造は、次のようにして組み立てられる。
【0045】
まず、一対の超電導ケーブル1(図2参照)の各端部を段剥ぎし、コア11を構成するフォーマ111から超電導シールド層117までの各層を段階的に露出させる。この段階では、超電導導体層113の各層の端部は、いずれも同じ長さに揃えられている。
【0046】
次に、超電導導体層113A、113B(図1)の端部から、螺旋状に巻回されている各層の超電導線材2A、2Bを一旦広げて解きほぐす。
【0047】
一方、常電導接続部材4の一端側から一方のケーブルのフォーマ111Aを挿入し、他端側から他方のケーブルのフォーマ111Bを挿入して、両フォーマ111A、111Bの端面同士を常電導接続部材4内で突き合わせる(図1)。その状態で常電導接続部材4を圧縮機で圧縮する。この圧縮は、常電導接続部材4の中間部に対して行う。この圧縮により、両フォーマ111A、111Bは常電導接続部材4により圧縮接続される。
【0048】
続いて、解きほぐしておいた各層の超電導線材の端部を切断する。具体的には、外層側の超電導導体層113A、113Bほど切断代を多くとって各層の超電導線材2A、2Bを切断する。その際、コアの径方向に隣接する一対の超電導導体層113A、113Bのうち、外層よりもコア軸端方向に突出する内層の突出量は、接合用超電導接続部材6A、6Bの幅の約半分に対応するように切断代を選択する。この切断により、超電導導体層113A、113B の各層は、順次、外層から内層に向かってケーブル軸端方向に長くなるように構成される。
【0049】
この切断を終えたら、各超電導導体層113A、113Bにおける端部の内周側に接合用超電導接続部材を配置する。この接合用超電導接続部材の配置は、超電導層66がコアの外周側に向けられ、基板62がコアの内周側に向けられるように、接合用超電導接続部材6A、6Bをコアの周方向に沿って一周させることで行う。
【0050】
まず、内層側の接合用超電導接続部材6A、6Bを、フォーマ111A、111Bと常電導接続部材4との境界付近の外周に巻回する。その際、接合用超電導接続部材6A、6Bの幅方向の一部が常電導接続部材4の端部に形成された段差にはめ込まれるようにする。その後、解きほぐしておいた内層側の超電導線材2A、2Bを元に戻す。それにより、同線材2A、2Bの導体接合面を接合用超電導接続部材6A、6Bの外周面(第二接合面)の約半分の領域に対面させる。
【0051】
次に、両ケーブルにおける内層側の超電導層体層113A、113Bの間に、架設用超電導接続部材5を介在させる。この架設用超電導接続部材5は、基板52をコアの外周側に向け、超電導層56をコアの内周側に向けて、常電導接続部材4の外周を一周するように配置される。そして、架設用超電導接続部材5の両端部における内周面、つまり第一接合面を接合用超電導接続部材6A、6Bの第二接合面のうち、超電導線材2A、2Bで覆われていない領域に対面させる。
【0052】
続いて、導体接合面と第二接合面との間及び第一接合面と第二接合面との間を導電接合部材7A、7Bで接合する。「導体接合面と第二接合面との間」と「第一接合面と第二接合面との間」のいずれを先に導電接合部材7A、7Bで接合してもよい。
【0053】
同様に、外層側の超電導導体層113A、113Bに関しても、接合用超電導接続部材6A、6Bの配置、架設用超電導接続部材5の配置、導体接合面及び第一接合面と第二接合面との導電接合部材7A、7Bによる接合を順次行う。その際、内層側の架設用超電導接続部材5と外層側の架設用超電導接続部材5との間には層間絶縁を施すことが好ましい。
【0054】
その後、全ての超電導導体層113A、113Bについて同様の接続を終えたら、一方のケーブルの超電導導体層113Aから架設用超電導接続部材5を介して他方のケーブルの超電導導体層113Bに至る領域に、図示しない補強絶縁層を形成する。
【0055】
〔作用効果〕
このような本発明中間接続構造によれば、内巻導体構造の超電導導体層を有するケーブル同士を接続する場合に、超電導導体層の超電導薄膜と架設用超電導接続部材の超電導層との間の電流路に高抵抗の基板が介在されることはない。そのため、この接合箇所での抵抗を低減できる。
【0056】
また、超電導導体層の各層の導体接合面と架設用超電導接続部材の第一接合面とが隣り合って配置されるため、各層の超電導線材を殆ど屈曲することなく中間接続構造を構成できる。そのため、各超電導線材の端部に屈曲に伴う歪が作用し難く、かつ超電導導体層と架設用超電導接続部材との接続箇所におけるコア径方向のサイズが大型化することもない。
【0057】
〔その他〕
以上の実施形態では、超電導導体層を2層しか示していないが、この層数が特に限定されるわけではなく、単層や3層以上などであってもよい。また、フォーマの接続は、常電導接続部材を用いた圧縮接続の代わりにフォーマ同士の溶接としてもよい。中間接続構造の組立方法も上記の手順に限定されるものではない。例えば、常電導接続部材の圧縮を行う前に、予め超電導導体層の各層を所定の長さに切断しておいてもよい。さらに、予め架設用超電導接続部材の両端部に接合用超電導接続部材を導電接合材で接合した複合体を用意し、その複合体を両ケーブルの超電導導体層の間に介在させてもよい。その他、予め第二接合面に半田ペーストを塗布した接合用超電導接続部材を用いてもよい。その場合、超電導導体層が多層であっても、全ての層の超電導導体層に関して、接合用超電導接続部材の第二接合面を導体接合面と第一接合面の双方に対面するように配置する。その後、架設用超電導接続部材の外周から加熱することで、全層の超電導導体層・接合用超電導接続部材・架設用超電導接続部材を一括して接合することができる。
【0058】
[実施形態2]
実施形態1では、架設用超電導接続部材5と接合用超電導接続部材6A、6Bの双方にいわゆる薄膜超電導線材(シート)を用いたが、その代わりにパウダーインチューブ法で製造されたBi系超電導線材を用いてもよい。通常、Bi系超電導線材は、AgやAg合金などの安定化材中に複数本の超電導フィラメントが埋設された構造であり、薄膜超電導線材が持つ基板を備えず、表裏の区別が存在しない。そのため、複数本のBi系超電導線材を並列して架設用超電導接続部材5及び接合用超電導接続部材6A、6Bを構成すれば(図1)、超電導導体層113A、113B・接合用超電導接続部材6A、6B・架設用超電導接続部材5を通る電流路の途中に基板22A、22B、52、62A、62Bが介在されることがなく、低抵抗の中間接続構造を構築できる。また、Bi系超電導線材で架設用超電導接続部材5と接合用超電導接続部材6A、6Bを構成すれば、これら接続部材5、6A、6Bの表裏を確認することなく中間接続構造の組み立てを行うことができる。必要に応じて、並列された複数本のBi系超電導線材は、これら線材と交差する方向に掛け渡される線状又はシート状の仮固定部材で一体化してもよい。
【0059】
[実施形態3]
実施形態1では、架設用超電導接続部材5と接合用超電導接続部材6A、6Bの双方にいわゆる薄膜超電導線材(シート)を用いたが、架設用超電導接続部材5と接合用超電導接続部材6A、6Bのいずれか一方を、前記Bi系超電導線材を用いた接続部材に代えてもよい。例えば、架設用超電導接続部材5に薄膜超電導線材を用い、接合用超電導接続部材6A、6BにBi系超電導線材を用いた場合、架設用超電導接続部材5の超電導薄膜を接続構造の内周側、基板を外周側となるようにする。また、架設用超電導接続部材5にBi系超電導線材を用い、接合用超電導接続部材6A、6Bに薄膜超電導線材を用いた場合、接合用超電導接続部材6A、6Bの超電導薄膜を接続構造の外周側、基板を内周側となるようにする。これらの場合も、架設用超電導接続部材5又は接合用超電導接続部材6A、6Bは、複数本のBi系超電導線材を並列して構成する。この実施形態3によっても、Bi系超電導線材で構成した接続部材5(6A、6B)は、中間接続構造の組立時に、その表裏を確認する必要がない。
【0060】
なお、本発明の範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造は、内巻導体構造の超電導導体層を有する超電導ケーブル同士の接続において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 超電導ケーブル
10 断熱管
10A 外管 10B 内管
11 コア
111、111A、111B フォーマ 113、113A、113B 超電導導体層
115 絶縁層
117 超電導シールド層 119 保護層
2、2A、2B 超電導線材
22、22A、22B 基板 24 中間層 26、26A、26B 超電導薄膜
28 安定化層
4 常電導接続部材
5 架設用超電導接続部材
52 基板 56 超電導層
6、6A、6B 接合用超電導接続部材
62、62A、62B 基板 66、66A、66B 超電導層
7、7A、7B 導電接合材(半田)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマの外周に超電導導体層を備える一対の超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続構造であって、
前記超電導導体層は、基板の片面側に超電導薄膜を有する超電導線材を、超電導薄膜が内周側、基板が外周側となるように螺旋状に巻回して構成されると共に、内周側に面する導体接合面を有し、
この中間接続構造は、
前記各ケーブルの超電導導体層の間に介在される部材で、前記導体接合面と隣り合う第一接合面を有する架設用超電導接続部材と、
前記導体接合面と前記第一接合面とに跨るように対面される第二接合面を有する接合用超電導接続部材と、
前記導体接合面と前記第二接合面との間及び前記第一接合面と第二接合面との間を接合する導電接合材とを備え、
前記超電導薄膜と接合用超電導接続部材との間、及び前記接合用超電導接続部材と架設用超電導接続部材との間に形成される電流路の途中に、前記基板の材料以上の電気抵抗を有する材料が介在されないように構成したことを特徴とする超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項2】
前記架設用超電導接続部材は、基板の片面に超電導層を備え、その超電導層が内周側、基板が外周側となるようにフォーマの外周に巻き付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項3】
前記接合用超電導接続部材は、基板の片面に超電導層を備え、その超電導層が外周側、基板が内周側となるようにフォーマの外周に巻き付けられてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項4】
前記架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の双方が、安定化材中に埋設された超電導フィラメントを有する超電導線材を備えることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項5】
前記架設用超電導接続部材及び接合用超電導接続部材の一方が基板の片面側に超電導薄膜を有する超電導線材を備え、他方が安定化材中に埋設された超電導フィラメントを有する超電導線材を備え、
一方の接続部材の超電導薄膜を他方の接続部材の接合面に近接する側とし、基板を他方の接続部材の接合面から離間する側となるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項6】
前記超電導導体層は、複数の超電導線材が径方向に積層され、
この超電導導体層の端部は、内層側の超電導線材の端部を外層側の超電導線材の端部よりもケーブル軸端方向に長くして、各層の超電導薄膜が段階状に構成され、
前記架設用超電導接続部材は、前記超電導導体層の各層に対応した積層構造で、
各層の架設用超電導接続部材は、内層側に配置されるものほど短く構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項7】
さらに、前記各ケーブルのフォーマ同士を圧縮接続する常電導接続部材を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−287350(P2010−287350A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138633(P2009−138633)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器技術開発」に関する委託研究、産業技術力法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)