超電導回転機
【課題】ステータを間に挟んで半径方向に2つのロータ部分を配置する構成を備える超電導回転機において、2つのロータ部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制する。
【解決手段】ステータ2aを間に挟んで半径方向に2つのロータ部分3を配置する構成を備える超電導回転機1aにおいて、半径方向の外周側に設けたロータ3bを片持ち支持に代えて、ロータの両端を支持する両持ち支持とすることによって、2つのロータ部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制する。ローター3bを両持ち支持とする構成として、ローター3bの自由端と回転軸3eとの間に、ステータ3の一部を挟んで半径方向に2重のラジアル軸受け9a、9bを設け、内側のラジアル軸受け9aはステータ3に対して回転軸3eを回転自在に支持し、外側のラジアル軸受け9bはステータ3に対して自由端を有するローター3bを回転自在に支持する。
【解決手段】ステータ2aを間に挟んで半径方向に2つのロータ部分3を配置する構成を備える超電導回転機1aにおいて、半径方向の外周側に設けたロータ3bを片持ち支持に代えて、ロータの両端を支持する両持ち支持とすることによって、2つのロータ部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制する。ローター3bを両持ち支持とする構成として、ローター3bの自由端と回転軸3eとの間に、ステータ3の一部を挟んで半径方向に2重のラジアル軸受け9a、9bを設け、内側のラジアル軸受け9aはステータ3に対して回転軸3eを回転自在に支持し、外側のラジアル軸受け9bはステータ3に対して自由端を有するローター3bを回転自在に支持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材を用いた巻線を備える超電導回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー源の多様化の観点から、自然エネルギーの利用促進が注目されている。特に、風力発電は発電サイト単位面積から取り出せる電力が回転機の単機容量が増大するとともに増大することが知られている。そのスケールメリットを生かすべく、欧州では単機容量5MW以上の大規模風力発電の開発が進められている。
【0003】
一般に、現用の交流回転機の出力Pと磁気装荷φ・電気装荷A・周波数fの関係は、以下の式で表される。なお、磁気装荷は磁束総量であり、電気装荷はアンペア導体数である。
P∝A・φ・f …(1)
【0004】
風力発電機は出力が大きくなるに従い風車の径は大きくなる。風車の翼端の速度は騒音の関係から一定の値以下に抑える必要があり、出力が大きくなるに従って風車の回転数は低くなる。出力が5MWを超える大型風力発電では20rpm以下になる。この低速の回転数では、風車に発電機を直結する場合、例えば48極の発電機出力の周波数は8Hz程度となる。
【0005】
増速機を用いずに直結駆動によって発電する場合には周波数が低く、一定の出力を得るために磁気装荷および電気装荷ともに大きくする必要がある。さらに、出力が大きくなるのに比例する以上に磁気装荷および電気装荷ともに大きくする必要がある。従って、出力が大きくなるにともない、風力発電のタワー頭部の重量が過大になり、土木コストの増大につながる。他方、増速機を用いる場合には、大出力の風力発電では大トルクに耐える増速機コストと信頼性が問題となる。
【0006】
従って、大型風力発電では、直結、低回転・高トルクで、かつ、高効率・軽量な同期回転機の開発が求められる。
【0007】
一方、近年の高温超電導の線材技術の進歩は著しく、高電流密度・高磁界という超電導の特徴を生かすことによって、風力回転機の軽量・高出力・高効率化の可能性が検討されている。
【0008】
風力タービン発電や船用推進電動機等の、小型で、低速かつ高トルクの回転機として、超電導電気機器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
図17は、上記した特許文献1に示される超電導電気機器の概略を説明するための断面図である。
【0010】
図17において、超電導電気機器101はステータ102とローター103を備える。ステータ102は固定され、ベアリング108を介して回転軸107を回転自在に支持する。ローター103は回転軸107と共に回転する。ローター103は、環状の低温真空容器104a、104b内にそれぞれ収納された2つの界磁巻線105a、105bを備える。
【0011】
また、ステータ102は電機子巻線106を備える。この電機子巻線106は、ローター103が半径方向に所定のギャップを設けて配置された2つの界磁巻線105a、105bの間に配置される。
【0012】
ローター103が回転すると、ローターの界磁巻線105a、105bが形成する界磁磁束はステータ102に対して回転して電機子巻線106と鎖交する。電機子巻線106に鎖交する界磁磁束が変化することによって電機子巻線106に電流が流れ、発電が行われる。
【0013】
2つの界磁巻線105a、105bを半径方向に分離して配置する構成は、ステータ側の電機子巻線との間で鎖交する界磁磁束を増加させ、これによって発電出力を増加させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/016134号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記した超電導電気機器の構成では、ローター103において、界磁巻線105aが設けられるローター部分は回転軸107に対して片持ち状態で保持され、この保持端と反対側の端部は自由端となっている。このローター103の自由端側は、自重による撓みや、回転時の振動等によって、半径方向の位置が変動する。
【0016】
2つの界磁巻線105a、105bを設けたローター部分の間には、半径方向に所定のギャップが設けられているが、このギャップ内には電機子巻線106を設けたステータ102が配置されているため、ローター103の自由端の半径方向の位置が変動すると、ステータ102に設けた電機子巻線106と鎖交する界磁磁束の変化に歪みが生じ、発電機では発生する電圧や電流に歪みが生じるという問題が発生し、また、電動機では回転速度や発生トルクに変動が生じるという問題が発生する。さらに、ローター103の自由端の半径方向の位置変動が大きい場合には、ローター103の自由端がステータ102と接触し、ローターやステータが機械的に損傷するという問題が発生する。
【0017】
上記したように、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置することによって、電機子巻線で鎖交する界磁磁束を増加させる構成では、ローターの一端が自由端となって片持ちで支持されるため、ローターの自由端の半径方向の位置が変動し、発電機では発生する電圧や電流が変動し、電動機では回転速度やトルクが変動するといった問題があり、さらには、機械的な損傷が生じるという問題もある。
【0018】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することによって、ローターとステータとの半径方向のクリアランスの変動を抑制して、発電機においては発生する電圧や電流の歪みの発生を抑制し、電動機においては回転速度や発生トルクの変動を抑制することを目的とし、また、ローターとステータとの接触による機械的損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、半径方向の外周側に設けたローターを片持ち支持に代えて、ローターの両端を支持する両持ち支持とすることによって、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制する。
【0021】
また、ローターを両持ち支持とする構成として、ローターの自由端と回転軸との間に、ステータの一部を挟んで半径方向に2重のラジアル軸受けを設けた構成とする。2重のラジアル軸受けの内で、内側のラジアル軸受けはステータに対して回転軸を回転自在に支持し、外側のラジアル軸受けはステータに対して自由端を有するローターを回転自在に支持する。
【0022】
ローターの自由端側が外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転支持されるため、ローターは両持ち支持される。
【0023】
また、ローターを両持ち支持とする構成は外側のラジアル軸受けのみによっても可能であるが、内側のラジアル軸受けを設けることによって、ステータに対する回転軸の回転支持を行うことができる。
【0024】
したがって、本発明に用いる2重のラジアル軸受けは、回転軸の軸方向において必ずしも同一位置である必要はなく、軸方向の異なる位置に配置してもよい。
【0025】
本発明の超電導回転機は、ステータとローターを備える。ローターは、軸部と、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部とを備える。軸部とローター外周部は、互いに半径方向にギャップを有して配置される。
【0026】
ステータは、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のステータ内周部とステータ外周部を備える。ステータ内周部とステータ外周部は、互いに半径方向にギャップを有して配置される。ステータ内周部は、ローターの軸部とローター外周部との間で形成されるギャップ内に非接触の状態で配置される。
【0027】
一方、ローターは、そのローター外周部において、軸方向の一端をローターの軸部と半径方向で連接し、軸方向の他端をステータに対して回転自在に支持することによって両持ち機構とする。両持ち機構は、ローター外周部の他端において、この端部とローターの軸部との間にステータの一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受けを備える。2重のラジアル軸受けにおいて、内側のラジアル軸受けはステータに対して回転軸を回転自在に支持し、外側のラジアル軸受けはステータに対して自由端を有するローターを回転自在に支持する。
【0028】
また、ステータ又はローターは超電導線材を用いた巻線を備え、超電導化した巻線を界磁巻線として界磁磁束を形成する。超電導線材は、冷媒によって超電導化される。巻線を超電導化することによって、高電流密度、高磁界、直流において損失を零とするといった超電導の特徴を利用することができる。
【0029】
本発明の2重のラジアル軸受けにおいて、内側のラジアル軸受けと外側のラジアル軸受けとの間に、ステータ外周部とステータ内周部とを連結する連結部を通すことによって、内側ラジアル軸受けと外側ラジアル軸受けとをステータに対して支持させ、また、ローター外周部の端部の半径方向に加重を、内側ラジアル軸受け、連結部、および外側ラジアル軸受けを介して、軸部に支持させる。
【0030】
本発明の2重のラジアル軸受けは、ベアリングによる機械的軸受けとする他、磁気力による非接触軸受けとすることができる。
【0031】
本発明の超電導回転機は、ローターとステータ、および界磁巻線と電機子巻線との関係において2つの態様とすることができる。第1の態様は、ローターに界磁巻線を設けステータに電機子巻線を設ける構成であり、第2の態様は、ステータに界磁巻線を設けローターに電機子巻線を設ける構成である。
【0032】
本発明の超電導回転機の第1の態様は、ローターに界磁磁束を形成する界磁巻線を設け、ステータに界磁磁束と鎖交する電機子巻線を設ける構成とする。
【0033】
ローターは、界磁巻線を超電導化するために、内部に冷媒を収容する低温容器を備える。低温容器は、中心軸側の円筒状部と、外周側の半径方向の断面が環状の環状部と、円筒状部および環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを備える。環状部の軸方向の他端は、2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転自在に支持される。低温容器は、少なくとも環状部内に超電導の界磁巻線を備える。
【0034】
一方、ステータは、少なくともステータ内周部に電機子巻線を備え、超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交する。
【0035】
界磁巻線又は電機子巻線は半径方向に2分割した構成とし、この2分割構成によって、ステータ側の電機子巻線において鎖交する界磁磁束を増加させ、発電の効率又はトルクの出力効率を高めることができる。
【0036】
界磁巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の界磁巻線を軸部に配置し、分割した他方の界磁巻線をローター外周部に配置する。
【0037】
また、電機子巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の電機子巻線をステータ内周部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をステータ外周部内に配置する。
【0038】
本発明の超電導回転機の第2の態様は、ステータに界磁磁束を形成する界磁巻線を設け、ローターに界磁磁束と鎖交する電機子巻線を設ける構成とする。
【0039】
ステータは、界磁巻線を超電導化するために、内部に冷媒を収容する低温容器を備える。低温容器は、中心軸側の半径方向の断面が環状の内周側環状部と、外周側の半径方向の断面が環状の外周側環状部と、内周側環状部および外周側環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを備える。低温容器は、少なくとも何れか一方の環状部内に超電導の界磁巻線を備える。
【0040】
ローターは外周側環状部を備え、その環状部の軸方向の一端は回転軸に連結され、他端は2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転自在に支持される。ローターには電機子巻線が設けられ、超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交する。
【0041】
界磁巻線又は電機子巻線は半径方向に2分割した構成とし、この2分割構成によって、ステータ側の電機子巻線において鎖交する界磁磁束を増加させ、発電の効率又はトルクの出力効率を高めることができる。
【0042】
界磁巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の界磁巻線をステータ内周部に配置し、分割した他方の界磁巻線をステータ外周部に配置する。
【0043】
また、電機子巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の電機子巻線を軸部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をローター外周部内に配置する。
【0044】
本発明の超電導回転機は、発電機又は電動機とすることができる。
【0045】
超電導回転機を発電機として構成する場合には、ローターを回転駆動してローターとステータとを相対移動させ、相対移動によって界磁巻線が形成する界磁磁束を変化させ、界磁磁束の磁束変化を電機子巻線によって電流に変換する。
【0046】
超電導回転機を電動機として構成する場合には、電機子巻線に電流を印加して磁界を形成し、磁界と界磁巻線が形成する界磁磁束との鎖交によって、電流を回転力に変換する。
【0047】
本願の超電導回転機は、増速ギアを用いずに、回転軸の回転によってローターを直接に回転させる直接駆動の構成とすることによって軽量化することができ、大容量の風力発電に好適な構成とすることができる。
【0048】
本発明の超電導回転機は、同期発電/電力変換とすることによって出力制御を容易とすることができる。
【0049】
電機子を回転機させる構成の場合には、発電出力を摺動で取り出す構成が必要であるが、本発明の超電導回転機は、界磁を回転させる態様とすることで発電出力の取り出しが容易とすることができる。
【0050】
本発明の超電導回転機は、発電領域に鉄心を導入しない空心構造とすることによって、軽量化することができる。
【発明の効果】
【0051】
以上説明したように、本発明の超電導回転機によれば、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することができる。
【0052】
また、本発明の超電導回転機によれば、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することによって、ローターとステータとの半径方向のクリアランスの変動を抑制して、発電機においては発生する電圧や電流の歪みの発生を抑制し、電動機においては回転速度や発生トルクの変動を抑制することができる。
【0053】
また、本発明の超電導回転機によれば、ローターとステータとの接触による機械的損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の態様の第1の形態を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1の態様の第1の形態を説明するための一部を断面で示した斜視図である。
【図3】本発明の第1の態様の第2の形態を説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1の態様の第3の形態を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第1の態様の第4の形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明の第2の態様の第1の形態を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2の態様の第2の形態を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第2の態様の第3の形態を説明するための断面図である。
【図9】本発明の第2の態様の第4の形態を説明するための断面図である。
【図10】本発明の超電導回転機の構成例の界磁巻線と電機子巻線を示す図である。
【図11】本発明の超電導回転機の構成例のギャップ磁束密度の分布を示す図である。
【図12】本発明の超電導回転機の構成例の電機子導体/スロットの寸法を説明するための図である。
【図13】本発明の超電導回転機の構成例の界磁巻線、電機子巻線の配置および寸法を説明するための図である。
【図14】本発明の超電導回転機の構成例の誘導起電力の瞬時波形を説明するための図である。
【図15】本発明の超電導回転機の構成例の負荷解析に用いた回路を説明するための図である。
【図16】本発明の超電導回転機の構成例の電流・相電圧波形の解析結果を説明するための図である。
【図17】従来の超電導電気機器の概略を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明の超電導回転機の構成例について、図1〜図16を用いて説明する。
【0056】
図1〜図5は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける第1の態様を説明するための図であり、図6〜図9は、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける第2の態様を説明するための図であり、第1の態様および第2の態様ではそれぞれ4つの形態について示している。また、図10〜図16は、図1,2に示す第1の態様の一形態の構成例を説明するための図である。
【0057】
[超電導回転機の基本構造]
はじめに、大容量風力発電機を想定した場合の超電導回転機に適した基本構造について示す。なお、ここでは、10MW級の大容量風力発電機を想定するものとする。
【0058】
10MW級の風力発電機は、ローター直径150m程度となり、翼端速度の騒音上の制約からローター回転数は10rpm程度となり、ロータートルクは107Nm程度と巨大となる。発電機は100mを越えるタワー上に載せる必要があるため、軽量でコンパクトであることが求められる。
【0059】
以上のような前提条件を考慮すると、以下に示すように、超電導回転機を用いた風力発電システムとして、(a)増速ギアを用いない直接駆動、(b)同期発電/電力変換、(c)回転界磁、(d)発電領域に鉄心を導入しない空心構造等が適している。
【0060】
(a)従来の常電導型風力発電機の主流は、増速ギアを用いた誘導発電機方式である。しかし、10MW級の大容量風力発電では、大きなロータートルクに耐える信頼性の高い増速ギアの実現が困難であるという問題がある。また、重量も非常に大きくなるため、増速ギアを用いる構造は実現が難しい。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、増速ギアを用いない直接駆動が適している。
【0061】
(b)誘導発電機による電力変換は、10MW級の大容量では事故時の短絡電流が大きい、出力制御の自由度が少ない等の点で、電力系統の連系上で問題が大きい。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、出力制御が容易な半導体電力変換装置を用いた同期発電/電力変換方式が適している。
【0062】
(c)電機子を回転子とした構成の場合には、回転する電機子から固定側に電力を取り出すために、摺動機構が必要となる。このような、摺動によって大電力を取り出す機構は、保守性や信頼性の観点から好ましくない。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、実用機としては回転界磁が適当である。
【0063】
(d)発電領域に鉄心を導入する構成は、磁束を有効に利用することができることから、発電機のコンパクト化や超電導線材の節約の点で空心機と比較して検討する価値があるが、重量の点を考慮すると、発電領域に鉄心を導入する構成は超電導化の利点を利用する点で有効であるとは云えない。
【0064】
また、高電流密度、高磁界、直流における無損失等の超電導が有する特徴を十分に生かすには、界磁巻線のみを超電導化して少なくとも3T以上の高磁界化を図ることが有効と考えられる。この場合、鉄心を用いることはできないため空心機となる。一般に空心機では、界磁巻線外部に大きな磁束を飛散させることが難しい。そこで、本発明では、界磁磁束を有効に電機子巻線に鎖交させるために、界磁巻線を半径方向に2分割したスプリット構造とし、2分割した界磁巻線のギャップ間に電機子巻線を配置する構造を採用する。
【0065】
次に、本発明の超電導回転機の構成の種類について、他の構成種と比較して示す。本発明の超電導回転機は、界磁巻線として超電導巻線を用いると共に電機子として銅巻線を用いる部分超電導巻線とする。
【0066】
電機子巻線までも超電導化する全超電導発電機と界磁巻線のみを超電導化する部分超電導発電機とを比較すると、以下に示すように、電力損失の点から部分超電導が好適である。
【0067】
電機子巻線までも超電導化した全超電導発電機では、機器の大幅なコンパクト化が可能となるが、空心型では電機子巻線に交流磁界が加わるため交流損失が発生し、その大きさは機器の効率・実現可能性に大きく作用する。
【0068】
カップ型の構成について全超電導化した場合の界磁巻線の交流損失を試算した例を示す。
【0069】
界磁巻線総交流損失Wd[w]は下式で与えられる.
Wd=p・n・Qm・Ls
ただし,p:極対数,n:ローター回転数,Ls:素線総延長である。
【0070】
テープ導体の磁化損失特性の一例では、Bm=2Tにおける磁化損失はQm=10J/m/cycleとなり、このときの界磁巻線総交流損失Wd[w]は、
Wd=0.1MW (at 20K)
となる。
【0071】
20Kでの冷凍機のCOP(冷却効率:冷凍能力/消費電力)=1/140を考慮すると冷凍電力は14MWとなる。この値は、交流損失の冷凍電力が10MW級の発電出力を上回るか同等のレベルとなるため現実的とは云えない。線材を10分割し、仮に鉄心を使い線材に印加される磁界を0.1Tに抑えることができれば、損失はほぼ300分の1になり、効率的には問題の無いレベルに収まるが、発電機の重量を抑えつつ鉄心を導入して印加磁界を低減する現実的な方法を見つけるのはかなり困難である。したがって、全超電導化は界磁方式の種類に関わらず,永久磁石方式も含めて適当とは云えない。
【0072】
超電導回転機において、界磁として超電導巻線型、超電導バルク型、永久磁石型が考えられ、また、電機子巻線として銅コイル型と交流超電導型とが考えられる。ここで、界磁のみが超電導のものを部分超電導型と呼び、界磁および電機子ともに超電導のものを全超電導型と呼ぶことにする。
【0073】
さらに、巻線界磁型の部分超電導発電機は、円筒回転子方式、横方向磁束型方式、カップ型方式等、構造によりいくつかに分類することができる。
【0074】
超電導巻線型と超電導バルク型とを比較すると、超電導バルク型は電流供給が不要である、回転子構造が簡易であるといった長所がある一方、着磁および再着磁が必要であり、また、界磁分布の調整が困難であるという短所がある。これに対して、超電導巻線型は、電流供給が必要であるものの、空隙磁束分布形状の設計の自由度が高く、空隙界磁の制御が容易であるという長所があるため、実用性の観点から超電導回転機を用いた風力発電システムには超電導巻線型が好適である。
【0075】
上記比較から、超電導界磁巻線型の部分超電導発電機が好適な構造である。この部分超電導発電機の構成例として、従来から知られる円筒回転子型の他、横方向磁束型やカップ型と呼ばれる構成が提案されている。
【0076】
円筒回転子方式は、超電導界磁巻線が円筒形のクライオスタットに収納される構造である。この構成はシンプルな構造であるが、回転子巻線の外周に電機子を置くため、電機子巻線領域の磁束密度が界磁巻線内の磁束密度に比べ大きく低下し、機器のコンパクト軽量化の観点からは不利である。特に、この傾向は極数が大きくなると著しくなる。
【0077】
上記課題に対して、電機子巻線領域の磁束密度を高く保ち、回転機のコンパクト化を図る構成として横方向磁束型やカップ型方式と呼ばれる構成が提案されている。
【0078】
横方向磁束型は、円形のモジュールコイルを周方向に並べることによって回転軸方向の磁界を形成する構成であり、電機子巻線領域の磁界を円筒回転子型より3倍程度大きくすることができる。
【0079】
また、カップ型は,界磁コイルを2分割して軸方向の一端で結合すると共に他端を開放し、この開放端側から2分割した界磁コイルの間に電機子巻線を挿入する構成であり、円筒回転子型に比較し電機子巻線領域の磁束密度をやはり3倍程度大きくすることができる。したがって、横方向磁束型やカップ型では、円筒回転子方式と比較してよりコンパクトで軽量化が可能となる。
【0080】
超電導回転機として、カップ型は横方向磁束型よりも発電機外径が小さいが、カップ型は鉄心の磁気シールド用バックヨークで回転部を覆う必要があり、その分外径が増す。また、電機子巻線および界磁巻線いずれも片持ち支持構造であるため、機械強度の観点からの補強する必要があり、発電機体格がより大きくなる可能性がある。
【0081】
また、横方向磁束型は、カップ型と比較して外部漏れ磁束は少ないものの磁気シールドは必要であり、発電機体格がより大きくなる可能性は同様にある。
【0082】
本発明は、カップ型の構成において、巻線が片持ち支持構造であることに起因する機械強度の問題を解消するものであり、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、半径方向の外周側に設けたローターを片持ち支持構造に代えて、ローターの両端を支持する両持ち支持構造とする。この両持ち支持構造とすることによって、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制し、ギャップ間隔変動に伴い磁束変動を低減して、電流や電圧の変動を低減し、また、ステータとローターとの機械的な接触を防ぐ。
【0083】
次に、本発明の超電導回転機の第1の態様および第2の態様について説明する。各態様では、4つの形態例について説明する。
【0084】
[第1の態様]
はじめに、本発明の第1の態様について、図1〜図5を用いて説明する。本発明の第1の態様は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様である。以下、この第1の態様の4つの形態例について説明する。
【0085】
なお、以下では、超電導回転機は発電機を構成する場合について説明しているが、電動機としても同様に構成することができる。
【0086】
[第1の態様の第1の形態]
はじめに、第1の態様の第1の形態について図1の断面図および図2の一部を断面で示した斜視図を用いて説明する。図1(a)の断面図は軸方向の断面を示し、図1(b)の断面図は径方向の断面を示している。
【0087】
第1の態様の第1の形態は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側では界磁巻線を2分割してスプリット構造とし、ステータ側では2分割した界磁巻線の間に電機子巻線を配置し、外側界磁巻線の外側にバックヨークを設ける構成である。
【0088】
第1の態様の第1の形態の超電導回転機1Aは、ステータ2とローター3を備え、ステータ2又はローター3は超電導線材を用いた巻線を備える。図1、2では、内側界磁巻線5a、外側界磁巻線5bを超電導線材によって形成する。
【0089】
ローター3は、軸部3aと、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部3bとを備える。軸部3aとローター外周部3bとは互いに半径方向に間隔を開けて配置され、この間にギャップ3dを形成している。また、ローター外周部3bの一方の端部は連結部3cによって軸部3aに連結し、他方の端部はギャップ3dによって環状の開放端を形成している。
【0090】
軸部3aは回転軸3eと連結され、ローター外周部3bは連結部3cを介して軸部3aに連結されており、軸部3aとローター外周部3bとは回転軸3eの回転と共に回転する。また、ローター外周部3bは、軸方向の一端をローター3の軸部3aと半径方向で連接し、軸方向の他端をステータ2に対して回転自在に支持することによって両持ち機構によって支持される。両持ち機構は、ローター外周部3bの他端において、この端部とローター3の軸部3aとの間にステータ2の一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受け9を備える。2重ラジアル軸受け9は、内側ラジアル軸受け9aと外側ラジアル軸受け9bとからなる。
【0091】
2重ラジアル軸受け9は、ローター外周部3bを両持ち機構で支持すると共に、軸部3aとローター外周部3bとの間に挟まれたギャップ3dに配置されたステータ内周部2aに干渉されることなく、ローター外周部3bを回転支持することができる。2重ラジアル軸受け9は、ベアリング等の機械的軸受けで構成する他、磁気軸受け等の非接触軸受けで構成することもできる。また、磁気軸受けを超電導巻線により発生する磁束を用いて構成してもよい。
【0092】
ステータ2は、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状の、それぞれ半径を異にするステータ内周部2aとステータ外周部2bとを備える。ステータ内周部2aとステータ外周部2bとは、互いに半径方向に間隔を開けて配置され、これらの間にギャップ2dを形成している。
【0093】
ステータ内周部2aは、ローター3の軸部3aとローター外周部3bとの間で形成されるギャップ3d内に非接触状態で配置される。ステータ内周部2aの一端は、ラジアル軸受け8bによって軸部3aを回転自在に支持し、ステータ外周部2bの一端は、ラジアル軸受け8aによって軸部3aを回転自在に支持する。また、ステータ外周部2bは、バックヨーク7を構成し、外側界磁巻線5bの界磁磁束の磁路を形成している。
【0094】
ローター外周部3bは、ステータ内周部2aとステータ外周部2bが形成するギャップ2d内において、2重ラジアル軸受け9によって回転自在に支持される。ローター外周部3bの開放側の端部は半径方向に延びた支持部3fが設けられ、支持部3fの先端は、2重ラジアル軸受け9の外側ラジアル軸受け9bを介してステータ2によって回転自在に支持される。
【0095】
2重ラジアル軸受け9では、内側ラジアル軸受け9aと外側ラジアル軸受け9bとの間に、ステータ内周部2aとステータ外周部2bとを連結する連結部2cが通される。したがって、2重ラジアル軸受け9の位置では、軸中心から放射方向の外側に向かって軸部3a、内側ラジアル軸受け9a、連結部2c、外側ラジアル軸受け9b、支持部3fが配置されることになる。
【0096】
間にステータの連結部2cを挟む構成とすることによって、2重ラジアル軸受け9の外側ラジアル軸受け9bは、ローター外周部3bをステータに対して回転自在に支持し、ローター外周部3bを両持ち機構で支持する。また、2重ラジアル軸受け9の内側ラジアル軸受け9aは、ステータに支持された状態でローター3の軸部3aを回転自在に支持する。
【0097】
図1,2において、ローター3は界磁巻線5を備え、ステータ2は電機子巻線6を備える。界磁巻線5は、半径方向に2分割したスプリット構造を成し、一方の内側界磁巻線5aを軸部3aに設け、他方の外側界磁巻線5bをローター外周部3bに設ける。
【0098】
スプリット構造とした2つの界磁巻線は、2つの界磁巻線に挟まれる部分の磁束を集中させて形成する。電機子巻線6は、内側界磁巻線5aと外側界磁巻線5bとの間に配置されるため、電機子巻線6には集中した界磁磁束が鎖交することになる。
【0099】
超電導回転機1Aは、ローターに設けた内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを超電導化するために、ローターを低温容器4で構成し、低温容器4内に内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを配置する。低温容器4はクライオスタットを構成し、内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを超電導状態に保持する。低温容器4は、軸部3aに相当する円筒状部4a、ローター外周部3bに相当する環状部4b、円筒状部4aと環状部4bとを連通する連通部4cを備え、内部に冷媒を通す空間を形成している。
【0100】
また、低温容器4の内部空間には、導出入部4dを通って外部から内部に冷媒を導入すると共に、内部から外部に冷媒を導出する。図2中の矢印は、冷媒の移動を示している。導出入部4dから導入された冷媒は、円筒状部4aに設けられた内側界磁巻線5aを冷却する。また、冷媒は、連通部4cを通ってローター外周部3b側の環状部4b内に導入され、環状部4b内に設けられた界磁巻線5bを冷却する。冷却後の冷媒は、連通部4cを通って円筒状部4a内に戻り、導出入部4dを通って外部に導出される。
【0101】
この導出入部4dは、ステータ側に固定されているため、回転軸3eと共に回転する低温容器4との間には磁性流体シール4eを設けることによって、互いに相対的に回転移動を許容すると共に、冷媒が低温容器4から漏れ出すことを防いでいる。なお、内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bに電流を流す電源機構は、低温容器4内に設けることができる。
【0102】
[第1の態様の第2の形態]
次に、第1の態様の第2の形態について図3の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0103】
第2の形態の超電導回転機1Bは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側において界磁巻線を2分割してスプリット構造とすると共に、ステータ側においても電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、それぞれ分割した界磁巻線および電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第1の形態の構成との相違は、バックヨーク7の部分に外側電機子巻線6bを設ける点である。
【0104】
電機子巻線についても2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0105】
[第1の態様の第3の形態]
次に、第1の態様の第3の形態について図4の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0106】
第3の形態の超電導回転機1Cは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第2の形態の構成との相違は、軸部3a側の設けた内側界磁巻線5aを省く点である。
【0107】
電機子巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させる。
【0108】
[第1の態様の第4の形態]
次に、第1の態様の第4の形態について図5の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0109】
第4の形態の超電導回転機1Dは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側およびステータ側の何れも巻線を2分割するスプリット構造を有しない構成であり、ローター側に界磁巻線5を、また、ステータ側に電機子巻線6をそれぞれ分割することなく設ける。この際、界磁巻線5の内側に電機子巻線6を配置する。この配置とすることで、電機子巻線6において界磁磁束が鎖交する量を多くとることができる。
【0110】
[第2の態様]
次に、本発明の第2の態様について、図6〜図9を用いて説明する。本発明の第2の態様は、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様である。以下、この第2の態様の4つの形態例について説明する。以下では、第1の態様と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0111】
[第2の態様の第1の形態]
第2の態様の第1の形態について図6の断面図を用いて説明する。
第1の形態の超電導回転機1Eは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ローター側においてのみ電気機巻線を2分割してスプリット構造とし、半径方向において分割した電気機巻線の間に界磁巻線を配置する構成である。
【0112】
電機子巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0113】
また、この形態では、ステータに低温容器を設ける。この構成では、低温容器はステータに固定されているため、磁性流体シール等を不要とすることができる。
【0114】
[第2の態様の第2の形態]
次に、第2態様の第2の形態について図7の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0115】
第2の形態の超電導回転機1Fは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電気機巻線を2分割してスプリット構造とすると共に、ローター側においても電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、それぞれ分割した界磁巻線および電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第1の形態の構成との相違は、バックヨーク7の部分に外側電機子巻線6bを設ける点である。
【0116】
電機子巻線についても2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0117】
[第2の態様の第3の形態]
次に、第2の態様の第3の形態について図8の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0118】
第3の形態の超電導回転機1Gは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第2の形態の構成との相違は、軸部3a側の設けた内側電機子巻線6aを省く点である。
【0119】
界磁巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、電機子巻線が界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させる。
【0120】
[第2の態様の第4の形態]
次に、第2の態様の第4の形態について図9の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0121】
第4のローター超電導回転機1Hは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ローター側およびステータ側の何れも巻線を2分割するスプリット構造を有しない構成であり、ステータ側に界磁巻線5を、また、ローター側に電機子巻線6をそれぞれ分割することなく設ける。
【0122】
[構成例]
次に、本発明の第1の態様の第1の形態の一構成例について図10〜図16を用いて説明する。なお、ここでは、20K冷却でY系高温超電導線材を適用することを想定して、電流密度=1.6〜2.0×108A/m2で検討を行なう。
【0123】
Y系高温超電導線材は、ハステロイの基板にIBAD−MgOの中間層を備える構成で、幅4mm、厚さ0.1mm、超電導層の厚さ0.001mm、基板の厚さ0.05mm、銅安定化層の厚さ0.02mmである。また、膜構造は、20μmのCu層上に、50μmのHastelloy基板、〜10μmのIBAD MgO層、〜30μmのHomo−epiMgO層、〜30μmのLMO層、1μmのHTS層、2μmのAg層を積層して形成される。
【0124】
このY系高温超電導線材は、温度20K垂直磁界10T下での臨界電流は77Kの自己磁界下での臨界電流と同程度であるとされており、ここでは、臨界電流密度を2.0×108A/m2程度に設定する。
【0125】
図10に界磁巻線と電機子巻線の構成例を示す。図10において、スプリット構造とした界磁巻線5の内側界磁巻線5aと外側界磁巻線5bの半径をそれぞれ、Rfi [mm]及びRfo [mm]とする。機械的な支持やクライオスタット等のスペースを考慮して、界磁巻線間のギャップを300mm以上としている。電機子巻線6を配置する電機子巻線スロットの中心位置の半径をRa [mm]とする。各界磁巻線の断面寸法は、内側界磁巻線5aをWfi [mm]×dfi [mm]とし,外側界磁巻線5bをWfo [mm]×dfo [mm]とする。
【0126】
はじめに、界磁巻線の中心部分に集中電流が流れていると仮定して簡単な解析的計算によりギャップ中心位置に3Tの磁束密度が発生できるように、Wfi [mm]×dfi [mm]およびWfo [mm]×dfo [mm]の値を見積もる。
【0127】
これにより得られた界磁巻線の諸元を以下の表1に示す。
【表1】
【0128】
表1に示すCase I〜IIIについてFEM解析を行うことで以下の結果が得られた。
Case IとIIの比較から極数を大きくしても1極当りの断面積はあまり小さくならず、超電導線材量は16極の場合には大きくなる。
【0129】
巻線部分の最大磁界は、Case Iでは約12T、Case IIIでは約10Tとなる。したがって、極数が小さい場合は高電流密度で設計を行うよりも,電流密度を若干抑えて巻線断面積を増やす設計の方が有効である。
【0130】
図11は、ギャップ磁束密度の分布を示している。r=2050mmはギャップ中心線(すなわち,電機子スロット中央)を表し、r=2110mmは電機子スロット外端付近を表し、r=1990mmは電機子スロット内端付近を表している。図11から明らかなように、rの平均値として考えても、ギャップにおいて磁束密度は3Tを確保することができる。
【0131】
高電流密度、高磁界、直流での無損失という超電導の特徴を十分に生かすには、界磁巻線のみを超電導化して少なくとも3T以上の高磁界化を図ることが望ましい。
【0132】
空心機では、界磁巻線外部に大きな磁束を飛散させることが難しいため、界磁磁束を有効に電機子巻線に鎖交させるために界磁巻線を半径方向に2分割したスプリット構造とし、その界磁巻線のギャップ間に電機子巻線を配置する。
【0133】
ここでは、大規模風力発電の容量として10MW/電圧3.3kVを想定する。
【0134】
以下の表2に定格容量,定格電圧,極数,定格回転数等回転機の基本仕様を示し、図3に、Y系高温超電導線材を適用した10MW級風力発電用カップ型回転機の界磁巻線の寸法設計例を示す。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
前記した図10から平均値として考えてもギャップ磁束密度は3Tを確保することができるため、以下の電機子寸法の設計においては,ギャップ磁束密度を3Tとして設計を行なう。
【0138】
電機子巻線は、短節・分布巻の2層巻構成とする。毎相・毎極のスロット数をq=3.5とする。1相当たりのスロット数はQ=P・q=28、全スロット数は3Q=84となる。
【0139】
まず、電機子巻線の直列導線数を見積もる。相電圧は、
Ea=3300/√3=1905[V] …(2)
となる。
【0140】
一方、ギャップ磁束分布を正弦波と仮定した場合の1相当りの誘導起電力から相電圧を計算すると、
E0=(1/√2)・vBl・n0・Q
=(1/√2)・2τf・Bl・n0・Q …(3)
と書ける。
【0141】
ここで、n0: 1スロット当りの導体数、τ: 極ピッチ,f : 周波数,l : 有効長である。
【0142】
また、
v=2πra・N/60
N=120f/P
τ=2πra/P …(4)
の関係を用いた。
【0143】
この式に、ra=2.05[m]、P=8,B=3[T]、l=1.5[m]、Q=28を代入すると、
E0=286.8・n0・f …(5)
【0144】
N=10rpmの場合、f=0.667Hzなので、
n0=1905/(286.8×0.667)≒10[本] …(6)
となるが、電機子巻線を2層巻にすることを考えてn0=12 [本]とすると、
E0=286.8×12×0.667=2295[V] …(7)
となる。この値は、目標値である1905[V](3300[V])よりも大きいが、増加分は目標値に対するマージン分とする。
【0145】
次に、電機子導体/スロットの寸法を見積もる。
電機子電流(線電流)は、
Ia=(10×106/3300)/√3=1750[A] …(8)
となるので、銅線の電流密度を5 [A/mm2]として、1スロット当りの銅線の必要断面積は、
Scu=1750/5=350[mm2] …(9)
となる。
【0146】
スロット内の占積率を0.5、スロットの深さを120 [mm]とすると、必要なスロット断面積は、
Sslot=350[mm2]×12[本]/0.5
=8400[mm2]
=120[mm]×70[mm] …(10)
となる。
【0147】
また、導体断面寸法は、
dc=120[mm]/6[本]×√0.5=14.14[mm]
Wc=70[mm] /2[列]×√0.5=24.75[mm] …(11)
となる。
【0148】
図12は、電機子導体/スロットの寸法を説明するための図であり、式(10)、(11)で示したスロットの断面寸法、および電機子導体の断面寸法を示している。
【0149】
スロットピッチは、1極当りのスロット数が3q=10.5であるので、
τ/3q=2πra/P・3q=149.6[mm]
π/4.3q=0.0748[rad.]=4.2857[deg.] …(12)
となる。
【0150】
図13は、上記で求めた界磁巻線、電機子巻線の配置および寸法を説明するための図であり、外側界磁巻線半径2210[mm]、内側界磁巻線半径1760[mm]、界磁巻線のギャップ間中心半径(電機子巻線のスロット半径)2050[mm]、式(12)で示したスロットピッチ4.2857[deg.]、各はスロットの断面寸法、スロットサイズ120[mm]×70 [mm]、外側巻線幅165[mm]、外側巻線厚さ160[mm]、内側巻線幅160[mm]、内側巻線厚さ130[mm]の各寸法を示している。
【0151】
なお、電機子巻線は、U相巻線を黒地で示し、V相巻線を斜線で示し、W相巻線を白地で示して、界磁巻線は、界磁電流の方向を×印と点印で示している。
【0152】
電機子導体全長は、3Q・n0・l=84×12×1.5=1.512[km]
である。以上の設計数値を表4に示す。
【0153】
【表4】
【0154】
次に、上記した設計例についてのFEM解析を示す。
はじめに、無負荷時の誘導起電力(相電圧)をFEM解析を示す。誘導起電力の瞬時波形を図14に示す。図14により、基本波成分(f=0.667Hz)に対する誘導起電力(相電圧)の実効値は2721[V]であり、設計値の2295[V]よりも大きな値となった。これは、ギャップ磁束の分布が矩形波に近いためと考えられる。
【0155】
振幅±Aの矩形波の基本正弦波成分のフーリエ係数が4A/πであり、A=vBl・n0・Q=3170[V]と考えると、4A/π=4036[V]なので、実効値は4036/√2=2857[V]となる。つまり、ギャップ磁束分布が矩形波に近くなると、ギャップ磁束分布を正弦波として見積もった電圧値よりも大きくなる。
【0156】
DCリンク方式の風力回転機を想定した場合には、電圧波形は正弦波にこだわる必要は無く、むしろ、コンバータによって全波整流することを考えると、矩形波に近い程効率的であると考えられる。
【0157】
次に、線電流の基本波成分が定格電流値(1750 [Arms])になるような抵抗負荷を接続した場合の負荷解析を示す。
【0158】
図15は負荷解析に用いた回路を示している。図15に示す回路は、本発明の超電導回転機を発電機として出力した三相出力を、スター結線してなる抵抗負荷に供給した場合の等価回路を示している。ここでは、抵抗としてR=1.55Ωとしている。
【0159】
ここでは、回転機部分のFEM解析と外部回路の電気回路解析を連成させて解き、得られた線電流・相電圧波形の解析結果を図16に示す。図16(a)はU相を示し、図16(b)はV相を示し、図16(c)はW相を示している。
【0160】
図16に示す解析結果のデータをフーリエ解析し、相電圧・相電流の基本波成分の実効値を求めると、それぞれ2710 [V]および1750 [A]となる。
【0161】
これより、負荷に供給される電力は14.2 [MW]となる。このことから、前記したCase IIIの寸法から約8%程度体格を小さくした場合であっても10 [MW]は確保できることを示している。
【0162】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の超電導回転機は、発電機に限らず、電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1A 超電導回転機
1B 超電導回転機
1C 超電導回転機
1D 超電導回転機
1E 超電導回転機
1F 超電導回転機
1G 超電導回転機
1H 超電導回転機
2 ステータ
2a ステータ内周部
2b ステータ外周部
2c 連結部
2d ギャップ
3 ローター
3a 軸部
3b ローター外周部
3c 連結部
3d ギャップ
3e 回転軸
3f 支持部
4 低温容器
4a 円筒状部
4b 環状部
4c 連通部
4d 導出入部
4e 磁性流体シール
5 界磁巻線
5a 内側界磁巻線
5b 外側界磁巻線
6 電機子巻線
6a 内側電機子巻線
6b 外側電機子巻線
7 バックヨーク
101 超電導電気機器
102 ステータ
103 ローター
104a 低温真空容器
105a 界磁巻線
106 電機子巻線
107 回転軸
108 ベアリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材を用いた巻線を備える超電導回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー源の多様化の観点から、自然エネルギーの利用促進が注目されている。特に、風力発電は発電サイト単位面積から取り出せる電力が回転機の単機容量が増大するとともに増大することが知られている。そのスケールメリットを生かすべく、欧州では単機容量5MW以上の大規模風力発電の開発が進められている。
【0003】
一般に、現用の交流回転機の出力Pと磁気装荷φ・電気装荷A・周波数fの関係は、以下の式で表される。なお、磁気装荷は磁束総量であり、電気装荷はアンペア導体数である。
P∝A・φ・f …(1)
【0004】
風力発電機は出力が大きくなるに従い風車の径は大きくなる。風車の翼端の速度は騒音の関係から一定の値以下に抑える必要があり、出力が大きくなるに従って風車の回転数は低くなる。出力が5MWを超える大型風力発電では20rpm以下になる。この低速の回転数では、風車に発電機を直結する場合、例えば48極の発電機出力の周波数は8Hz程度となる。
【0005】
増速機を用いずに直結駆動によって発電する場合には周波数が低く、一定の出力を得るために磁気装荷および電気装荷ともに大きくする必要がある。さらに、出力が大きくなるのに比例する以上に磁気装荷および電気装荷ともに大きくする必要がある。従って、出力が大きくなるにともない、風力発電のタワー頭部の重量が過大になり、土木コストの増大につながる。他方、増速機を用いる場合には、大出力の風力発電では大トルクに耐える増速機コストと信頼性が問題となる。
【0006】
従って、大型風力発電では、直結、低回転・高トルクで、かつ、高効率・軽量な同期回転機の開発が求められる。
【0007】
一方、近年の高温超電導の線材技術の進歩は著しく、高電流密度・高磁界という超電導の特徴を生かすことによって、風力回転機の軽量・高出力・高効率化の可能性が検討されている。
【0008】
風力タービン発電や船用推進電動機等の、小型で、低速かつ高トルクの回転機として、超電導電気機器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
図17は、上記した特許文献1に示される超電導電気機器の概略を説明するための断面図である。
【0010】
図17において、超電導電気機器101はステータ102とローター103を備える。ステータ102は固定され、ベアリング108を介して回転軸107を回転自在に支持する。ローター103は回転軸107と共に回転する。ローター103は、環状の低温真空容器104a、104b内にそれぞれ収納された2つの界磁巻線105a、105bを備える。
【0011】
また、ステータ102は電機子巻線106を備える。この電機子巻線106は、ローター103が半径方向に所定のギャップを設けて配置された2つの界磁巻線105a、105bの間に配置される。
【0012】
ローター103が回転すると、ローターの界磁巻線105a、105bが形成する界磁磁束はステータ102に対して回転して電機子巻線106と鎖交する。電機子巻線106に鎖交する界磁磁束が変化することによって電機子巻線106に電流が流れ、発電が行われる。
【0013】
2つの界磁巻線105a、105bを半径方向に分離して配置する構成は、ステータ側の電機子巻線との間で鎖交する界磁磁束を増加させ、これによって発電出力を増加させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/016134号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記した超電導電気機器の構成では、ローター103において、界磁巻線105aが設けられるローター部分は回転軸107に対して片持ち状態で保持され、この保持端と反対側の端部は自由端となっている。このローター103の自由端側は、自重による撓みや、回転時の振動等によって、半径方向の位置が変動する。
【0016】
2つの界磁巻線105a、105bを設けたローター部分の間には、半径方向に所定のギャップが設けられているが、このギャップ内には電機子巻線106を設けたステータ102が配置されているため、ローター103の自由端の半径方向の位置が変動すると、ステータ102に設けた電機子巻線106と鎖交する界磁磁束の変化に歪みが生じ、発電機では発生する電圧や電流に歪みが生じるという問題が発生し、また、電動機では回転速度や発生トルクに変動が生じるという問題が発生する。さらに、ローター103の自由端の半径方向の位置変動が大きい場合には、ローター103の自由端がステータ102と接触し、ローターやステータが機械的に損傷するという問題が発生する。
【0017】
上記したように、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置することによって、電機子巻線で鎖交する界磁磁束を増加させる構成では、ローターの一端が自由端となって片持ちで支持されるため、ローターの自由端の半径方向の位置が変動し、発電機では発生する電圧や電流が変動し、電動機では回転速度やトルクが変動するといった問題があり、さらには、機械的な損傷が生じるという問題もある。
【0018】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することによって、ローターとステータとの半径方向のクリアランスの変動を抑制して、発電機においては発生する電圧や電流の歪みの発生を抑制し、電動機においては回転速度や発生トルクの変動を抑制することを目的とし、また、ローターとステータとの接触による機械的損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、半径方向の外周側に設けたローターを片持ち支持に代えて、ローターの両端を支持する両持ち支持とすることによって、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制する。
【0021】
また、ローターを両持ち支持とする構成として、ローターの自由端と回転軸との間に、ステータの一部を挟んで半径方向に2重のラジアル軸受けを設けた構成とする。2重のラジアル軸受けの内で、内側のラジアル軸受けはステータに対して回転軸を回転自在に支持し、外側のラジアル軸受けはステータに対して自由端を有するローターを回転自在に支持する。
【0022】
ローターの自由端側が外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転支持されるため、ローターは両持ち支持される。
【0023】
また、ローターを両持ち支持とする構成は外側のラジアル軸受けのみによっても可能であるが、内側のラジアル軸受けを設けることによって、ステータに対する回転軸の回転支持を行うことができる。
【0024】
したがって、本発明に用いる2重のラジアル軸受けは、回転軸の軸方向において必ずしも同一位置である必要はなく、軸方向の異なる位置に配置してもよい。
【0025】
本発明の超電導回転機は、ステータとローターを備える。ローターは、軸部と、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部とを備える。軸部とローター外周部は、互いに半径方向にギャップを有して配置される。
【0026】
ステータは、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のステータ内周部とステータ外周部を備える。ステータ内周部とステータ外周部は、互いに半径方向にギャップを有して配置される。ステータ内周部は、ローターの軸部とローター外周部との間で形成されるギャップ内に非接触の状態で配置される。
【0027】
一方、ローターは、そのローター外周部において、軸方向の一端をローターの軸部と半径方向で連接し、軸方向の他端をステータに対して回転自在に支持することによって両持ち機構とする。両持ち機構は、ローター外周部の他端において、この端部とローターの軸部との間にステータの一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受けを備える。2重のラジアル軸受けにおいて、内側のラジアル軸受けはステータに対して回転軸を回転自在に支持し、外側のラジアル軸受けはステータに対して自由端を有するローターを回転自在に支持する。
【0028】
また、ステータ又はローターは超電導線材を用いた巻線を備え、超電導化した巻線を界磁巻線として界磁磁束を形成する。超電導線材は、冷媒によって超電導化される。巻線を超電導化することによって、高電流密度、高磁界、直流において損失を零とするといった超電導の特徴を利用することができる。
【0029】
本発明の2重のラジアル軸受けにおいて、内側のラジアル軸受けと外側のラジアル軸受けとの間に、ステータ外周部とステータ内周部とを連結する連結部を通すことによって、内側ラジアル軸受けと外側ラジアル軸受けとをステータに対して支持させ、また、ローター外周部の端部の半径方向に加重を、内側ラジアル軸受け、連結部、および外側ラジアル軸受けを介して、軸部に支持させる。
【0030】
本発明の2重のラジアル軸受けは、ベアリングによる機械的軸受けとする他、磁気力による非接触軸受けとすることができる。
【0031】
本発明の超電導回転機は、ローターとステータ、および界磁巻線と電機子巻線との関係において2つの態様とすることができる。第1の態様は、ローターに界磁巻線を設けステータに電機子巻線を設ける構成であり、第2の態様は、ステータに界磁巻線を設けローターに電機子巻線を設ける構成である。
【0032】
本発明の超電導回転機の第1の態様は、ローターに界磁磁束を形成する界磁巻線を設け、ステータに界磁磁束と鎖交する電機子巻線を設ける構成とする。
【0033】
ローターは、界磁巻線を超電導化するために、内部に冷媒を収容する低温容器を備える。低温容器は、中心軸側の円筒状部と、外周側の半径方向の断面が環状の環状部と、円筒状部および環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを備える。環状部の軸方向の他端は、2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転自在に支持される。低温容器は、少なくとも環状部内に超電導の界磁巻線を備える。
【0034】
一方、ステータは、少なくともステータ内周部に電機子巻線を備え、超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交する。
【0035】
界磁巻線又は電機子巻線は半径方向に2分割した構成とし、この2分割構成によって、ステータ側の電機子巻線において鎖交する界磁磁束を増加させ、発電の効率又はトルクの出力効率を高めることができる。
【0036】
界磁巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の界磁巻線を軸部に配置し、分割した他方の界磁巻線をローター外周部に配置する。
【0037】
また、電機子巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の電機子巻線をステータ内周部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をステータ外周部内に配置する。
【0038】
本発明の超電導回転機の第2の態様は、ステータに界磁磁束を形成する界磁巻線を設け、ローターに界磁磁束と鎖交する電機子巻線を設ける構成とする。
【0039】
ステータは、界磁巻線を超電導化するために、内部に冷媒を収容する低温容器を備える。低温容器は、中心軸側の半径方向の断面が環状の内周側環状部と、外周側の半径方向の断面が環状の外周側環状部と、内周側環状部および外周側環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを備える。低温容器は、少なくとも何れか一方の環状部内に超電導の界磁巻線を備える。
【0040】
ローターは外周側環状部を備え、その環状部の軸方向の一端は回転軸に連結され、他端は2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによってステータに対して回転自在に支持される。ローターには電機子巻線が設けられ、超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交する。
【0041】
界磁巻線又は電機子巻線は半径方向に2分割した構成とし、この2分割構成によって、ステータ側の電機子巻線において鎖交する界磁磁束を増加させ、発電の効率又はトルクの出力効率を高めることができる。
【0042】
界磁巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の界磁巻線をステータ内周部に配置し、分割した他方の界磁巻線をステータ外周部に配置する。
【0043】
また、電機子巻線を半径方向に2分割する構成では、分割した一方の電機子巻線を軸部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をローター外周部内に配置する。
【0044】
本発明の超電導回転機は、発電機又は電動機とすることができる。
【0045】
超電導回転機を発電機として構成する場合には、ローターを回転駆動してローターとステータとを相対移動させ、相対移動によって界磁巻線が形成する界磁磁束を変化させ、界磁磁束の磁束変化を電機子巻線によって電流に変換する。
【0046】
超電導回転機を電動機として構成する場合には、電機子巻線に電流を印加して磁界を形成し、磁界と界磁巻線が形成する界磁磁束との鎖交によって、電流を回転力に変換する。
【0047】
本願の超電導回転機は、増速ギアを用いずに、回転軸の回転によってローターを直接に回転させる直接駆動の構成とすることによって軽量化することができ、大容量の風力発電に好適な構成とすることができる。
【0048】
本発明の超電導回転機は、同期発電/電力変換とすることによって出力制御を容易とすることができる。
【0049】
電機子を回転機させる構成の場合には、発電出力を摺動で取り出す構成が必要であるが、本発明の超電導回転機は、界磁を回転させる態様とすることで発電出力の取り出しが容易とすることができる。
【0050】
本発明の超電導回転機は、発電領域に鉄心を導入しない空心構造とすることによって、軽量化することができる。
【発明の効果】
【0051】
以上説明したように、本発明の超電導回転機によれば、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することができる。
【0052】
また、本発明の超電導回転機によれば、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制することによって、ローターとステータとの半径方向のクリアランスの変動を抑制して、発電機においては発生する電圧や電流の歪みの発生を抑制し、電動機においては回転速度や発生トルクの変動を抑制することができる。
【0053】
また、本発明の超電導回転機によれば、ローターとステータとの接触による機械的損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の態様の第1の形態を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1の態様の第1の形態を説明するための一部を断面で示した斜視図である。
【図3】本発明の第1の態様の第2の形態を説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1の態様の第3の形態を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第1の態様の第4の形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明の第2の態様の第1の形態を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2の態様の第2の形態を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第2の態様の第3の形態を説明するための断面図である。
【図9】本発明の第2の態様の第4の形態を説明するための断面図である。
【図10】本発明の超電導回転機の構成例の界磁巻線と電機子巻線を示す図である。
【図11】本発明の超電導回転機の構成例のギャップ磁束密度の分布を示す図である。
【図12】本発明の超電導回転機の構成例の電機子導体/スロットの寸法を説明するための図である。
【図13】本発明の超電導回転機の構成例の界磁巻線、電機子巻線の配置および寸法を説明するための図である。
【図14】本発明の超電導回転機の構成例の誘導起電力の瞬時波形を説明するための図である。
【図15】本発明の超電導回転機の構成例の負荷解析に用いた回路を説明するための図である。
【図16】本発明の超電導回転機の構成例の電流・相電圧波形の解析結果を説明するための図である。
【図17】従来の超電導電気機器の概略を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明の超電導回転機の構成例について、図1〜図16を用いて説明する。
【0056】
図1〜図5は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける第1の態様を説明するための図であり、図6〜図9は、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける第2の態様を説明するための図であり、第1の態様および第2の態様ではそれぞれ4つの形態について示している。また、図10〜図16は、図1,2に示す第1の態様の一形態の構成例を説明するための図である。
【0057】
[超電導回転機の基本構造]
はじめに、大容量風力発電機を想定した場合の超電導回転機に適した基本構造について示す。なお、ここでは、10MW級の大容量風力発電機を想定するものとする。
【0058】
10MW級の風力発電機は、ローター直径150m程度となり、翼端速度の騒音上の制約からローター回転数は10rpm程度となり、ロータートルクは107Nm程度と巨大となる。発電機は100mを越えるタワー上に載せる必要があるため、軽量でコンパクトであることが求められる。
【0059】
以上のような前提条件を考慮すると、以下に示すように、超電導回転機を用いた風力発電システムとして、(a)増速ギアを用いない直接駆動、(b)同期発電/電力変換、(c)回転界磁、(d)発電領域に鉄心を導入しない空心構造等が適している。
【0060】
(a)従来の常電導型風力発電機の主流は、増速ギアを用いた誘導発電機方式である。しかし、10MW級の大容量風力発電では、大きなロータートルクに耐える信頼性の高い増速ギアの実現が困難であるという問題がある。また、重量も非常に大きくなるため、増速ギアを用いる構造は実現が難しい。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、増速ギアを用いない直接駆動が適している。
【0061】
(b)誘導発電機による電力変換は、10MW級の大容量では事故時の短絡電流が大きい、出力制御の自由度が少ない等の点で、電力系統の連系上で問題が大きい。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、出力制御が容易な半導体電力変換装置を用いた同期発電/電力変換方式が適している。
【0062】
(c)電機子を回転子とした構成の場合には、回転する電機子から固定側に電力を取り出すために、摺動機構が必要となる。このような、摺動によって大電力を取り出す機構は、保守性や信頼性の観点から好ましくない。したがって、超電導回転機を用いた風力発電システムでは、実用機としては回転界磁が適当である。
【0063】
(d)発電領域に鉄心を導入する構成は、磁束を有効に利用することができることから、発電機のコンパクト化や超電導線材の節約の点で空心機と比較して検討する価値があるが、重量の点を考慮すると、発電領域に鉄心を導入する構成は超電導化の利点を利用する点で有効であるとは云えない。
【0064】
また、高電流密度、高磁界、直流における無損失等の超電導が有する特徴を十分に生かすには、界磁巻線のみを超電導化して少なくとも3T以上の高磁界化を図ることが有効と考えられる。この場合、鉄心を用いることはできないため空心機となる。一般に空心機では、界磁巻線外部に大きな磁束を飛散させることが難しい。そこで、本発明では、界磁磁束を有効に電機子巻線に鎖交させるために、界磁巻線を半径方向に2分割したスプリット構造とし、2分割した界磁巻線のギャップ間に電機子巻線を配置する構造を採用する。
【0065】
次に、本発明の超電導回転機の構成の種類について、他の構成種と比較して示す。本発明の超電導回転機は、界磁巻線として超電導巻線を用いると共に電機子として銅巻線を用いる部分超電導巻線とする。
【0066】
電機子巻線までも超電導化する全超電導発電機と界磁巻線のみを超電導化する部分超電導発電機とを比較すると、以下に示すように、電力損失の点から部分超電導が好適である。
【0067】
電機子巻線までも超電導化した全超電導発電機では、機器の大幅なコンパクト化が可能となるが、空心型では電機子巻線に交流磁界が加わるため交流損失が発生し、その大きさは機器の効率・実現可能性に大きく作用する。
【0068】
カップ型の構成について全超電導化した場合の界磁巻線の交流損失を試算した例を示す。
【0069】
界磁巻線総交流損失Wd[w]は下式で与えられる.
Wd=p・n・Qm・Ls
ただし,p:極対数,n:ローター回転数,Ls:素線総延長である。
【0070】
テープ導体の磁化損失特性の一例では、Bm=2Tにおける磁化損失はQm=10J/m/cycleとなり、このときの界磁巻線総交流損失Wd[w]は、
Wd=0.1MW (at 20K)
となる。
【0071】
20Kでの冷凍機のCOP(冷却効率:冷凍能力/消費電力)=1/140を考慮すると冷凍電力は14MWとなる。この値は、交流損失の冷凍電力が10MW級の発電出力を上回るか同等のレベルとなるため現実的とは云えない。線材を10分割し、仮に鉄心を使い線材に印加される磁界を0.1Tに抑えることができれば、損失はほぼ300分の1になり、効率的には問題の無いレベルに収まるが、発電機の重量を抑えつつ鉄心を導入して印加磁界を低減する現実的な方法を見つけるのはかなり困難である。したがって、全超電導化は界磁方式の種類に関わらず,永久磁石方式も含めて適当とは云えない。
【0072】
超電導回転機において、界磁として超電導巻線型、超電導バルク型、永久磁石型が考えられ、また、電機子巻線として銅コイル型と交流超電導型とが考えられる。ここで、界磁のみが超電導のものを部分超電導型と呼び、界磁および電機子ともに超電導のものを全超電導型と呼ぶことにする。
【0073】
さらに、巻線界磁型の部分超電導発電機は、円筒回転子方式、横方向磁束型方式、カップ型方式等、構造によりいくつかに分類することができる。
【0074】
超電導巻線型と超電導バルク型とを比較すると、超電導バルク型は電流供給が不要である、回転子構造が簡易であるといった長所がある一方、着磁および再着磁が必要であり、また、界磁分布の調整が困難であるという短所がある。これに対して、超電導巻線型は、電流供給が必要であるものの、空隙磁束分布形状の設計の自由度が高く、空隙界磁の制御が容易であるという長所があるため、実用性の観点から超電導回転機を用いた風力発電システムには超電導巻線型が好適である。
【0075】
上記比較から、超電導界磁巻線型の部分超電導発電機が好適な構造である。この部分超電導発電機の構成例として、従来から知られる円筒回転子型の他、横方向磁束型やカップ型と呼ばれる構成が提案されている。
【0076】
円筒回転子方式は、超電導界磁巻線が円筒形のクライオスタットに収納される構造である。この構成はシンプルな構造であるが、回転子巻線の外周に電機子を置くため、電機子巻線領域の磁束密度が界磁巻線内の磁束密度に比べ大きく低下し、機器のコンパクト軽量化の観点からは不利である。特に、この傾向は極数が大きくなると著しくなる。
【0077】
上記課題に対して、電機子巻線領域の磁束密度を高く保ち、回転機のコンパクト化を図る構成として横方向磁束型やカップ型方式と呼ばれる構成が提案されている。
【0078】
横方向磁束型は、円形のモジュールコイルを周方向に並べることによって回転軸方向の磁界を形成する構成であり、電機子巻線領域の磁界を円筒回転子型より3倍程度大きくすることができる。
【0079】
また、カップ型は,界磁コイルを2分割して軸方向の一端で結合すると共に他端を開放し、この開放端側から2分割した界磁コイルの間に電機子巻線を挿入する構成であり、円筒回転子型に比較し電機子巻線領域の磁束密度をやはり3倍程度大きくすることができる。したがって、横方向磁束型やカップ型では、円筒回転子方式と比較してよりコンパクトで軽量化が可能となる。
【0080】
超電導回転機として、カップ型は横方向磁束型よりも発電機外径が小さいが、カップ型は鉄心の磁気シールド用バックヨークで回転部を覆う必要があり、その分外径が増す。また、電機子巻線および界磁巻線いずれも片持ち支持構造であるため、機械強度の観点からの補強する必要があり、発電機体格がより大きくなる可能性がある。
【0081】
また、横方向磁束型は、カップ型と比較して外部漏れ磁束は少ないものの磁気シールドは必要であり、発電機体格がより大きくなる可能性は同様にある。
【0082】
本発明は、カップ型の構成において、巻線が片持ち支持構造であることに起因する機械強度の問題を解消するものであり、ステータを間に挟んで半径方向に2つのローター部分を配置する構成を備える超電導回転機において、半径方向の外周側に設けたローターを片持ち支持構造に代えて、ローターの両端を支持する両持ち支持構造とする。この両持ち支持構造とすることによって、2つのローター部分の半径方向のギャップ間隔の変動を抑制し、ギャップ間隔変動に伴い磁束変動を低減して、電流や電圧の変動を低減し、また、ステータとローターとの機械的な接触を防ぐ。
【0083】
次に、本発明の超電導回転機の第1の態様および第2の態様について説明する。各態様では、4つの形態例について説明する。
【0084】
[第1の態様]
はじめに、本発明の第1の態様について、図1〜図5を用いて説明する。本発明の第1の態様は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様である。以下、この第1の態様の4つの形態例について説明する。
【0085】
なお、以下では、超電導回転機は発電機を構成する場合について説明しているが、電動機としても同様に構成することができる。
【0086】
[第1の態様の第1の形態]
はじめに、第1の態様の第1の形態について図1の断面図および図2の一部を断面で示した斜視図を用いて説明する。図1(a)の断面図は軸方向の断面を示し、図1(b)の断面図は径方向の断面を示している。
【0087】
第1の態様の第1の形態は、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側では界磁巻線を2分割してスプリット構造とし、ステータ側では2分割した界磁巻線の間に電機子巻線を配置し、外側界磁巻線の外側にバックヨークを設ける構成である。
【0088】
第1の態様の第1の形態の超電導回転機1Aは、ステータ2とローター3を備え、ステータ2又はローター3は超電導線材を用いた巻線を備える。図1、2では、内側界磁巻線5a、外側界磁巻線5bを超電導線材によって形成する。
【0089】
ローター3は、軸部3aと、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部3bとを備える。軸部3aとローター外周部3bとは互いに半径方向に間隔を開けて配置され、この間にギャップ3dを形成している。また、ローター外周部3bの一方の端部は連結部3cによって軸部3aに連結し、他方の端部はギャップ3dによって環状の開放端を形成している。
【0090】
軸部3aは回転軸3eと連結され、ローター外周部3bは連結部3cを介して軸部3aに連結されており、軸部3aとローター外周部3bとは回転軸3eの回転と共に回転する。また、ローター外周部3bは、軸方向の一端をローター3の軸部3aと半径方向で連接し、軸方向の他端をステータ2に対して回転自在に支持することによって両持ち機構によって支持される。両持ち機構は、ローター外周部3bの他端において、この端部とローター3の軸部3aとの間にステータ2の一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受け9を備える。2重ラジアル軸受け9は、内側ラジアル軸受け9aと外側ラジアル軸受け9bとからなる。
【0091】
2重ラジアル軸受け9は、ローター外周部3bを両持ち機構で支持すると共に、軸部3aとローター外周部3bとの間に挟まれたギャップ3dに配置されたステータ内周部2aに干渉されることなく、ローター外周部3bを回転支持することができる。2重ラジアル軸受け9は、ベアリング等の機械的軸受けで構成する他、磁気軸受け等の非接触軸受けで構成することもできる。また、磁気軸受けを超電導巻線により発生する磁束を用いて構成してもよい。
【0092】
ステータ2は、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状の、それぞれ半径を異にするステータ内周部2aとステータ外周部2bとを備える。ステータ内周部2aとステータ外周部2bとは、互いに半径方向に間隔を開けて配置され、これらの間にギャップ2dを形成している。
【0093】
ステータ内周部2aは、ローター3の軸部3aとローター外周部3bとの間で形成されるギャップ3d内に非接触状態で配置される。ステータ内周部2aの一端は、ラジアル軸受け8bによって軸部3aを回転自在に支持し、ステータ外周部2bの一端は、ラジアル軸受け8aによって軸部3aを回転自在に支持する。また、ステータ外周部2bは、バックヨーク7を構成し、外側界磁巻線5bの界磁磁束の磁路を形成している。
【0094】
ローター外周部3bは、ステータ内周部2aとステータ外周部2bが形成するギャップ2d内において、2重ラジアル軸受け9によって回転自在に支持される。ローター外周部3bの開放側の端部は半径方向に延びた支持部3fが設けられ、支持部3fの先端は、2重ラジアル軸受け9の外側ラジアル軸受け9bを介してステータ2によって回転自在に支持される。
【0095】
2重ラジアル軸受け9では、内側ラジアル軸受け9aと外側ラジアル軸受け9bとの間に、ステータ内周部2aとステータ外周部2bとを連結する連結部2cが通される。したがって、2重ラジアル軸受け9の位置では、軸中心から放射方向の外側に向かって軸部3a、内側ラジアル軸受け9a、連結部2c、外側ラジアル軸受け9b、支持部3fが配置されることになる。
【0096】
間にステータの連結部2cを挟む構成とすることによって、2重ラジアル軸受け9の外側ラジアル軸受け9bは、ローター外周部3bをステータに対して回転自在に支持し、ローター外周部3bを両持ち機構で支持する。また、2重ラジアル軸受け9の内側ラジアル軸受け9aは、ステータに支持された状態でローター3の軸部3aを回転自在に支持する。
【0097】
図1,2において、ローター3は界磁巻線5を備え、ステータ2は電機子巻線6を備える。界磁巻線5は、半径方向に2分割したスプリット構造を成し、一方の内側界磁巻線5aを軸部3aに設け、他方の外側界磁巻線5bをローター外周部3bに設ける。
【0098】
スプリット構造とした2つの界磁巻線は、2つの界磁巻線に挟まれる部分の磁束を集中させて形成する。電機子巻線6は、内側界磁巻線5aと外側界磁巻線5bとの間に配置されるため、電機子巻線6には集中した界磁磁束が鎖交することになる。
【0099】
超電導回転機1Aは、ローターに設けた内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを超電導化するために、ローターを低温容器4で構成し、低温容器4内に内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを配置する。低温容器4はクライオスタットを構成し、内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bを超電導状態に保持する。低温容器4は、軸部3aに相当する円筒状部4a、ローター外周部3bに相当する環状部4b、円筒状部4aと環状部4bとを連通する連通部4cを備え、内部に冷媒を通す空間を形成している。
【0100】
また、低温容器4の内部空間には、導出入部4dを通って外部から内部に冷媒を導入すると共に、内部から外部に冷媒を導出する。図2中の矢印は、冷媒の移動を示している。導出入部4dから導入された冷媒は、円筒状部4aに設けられた内側界磁巻線5aを冷却する。また、冷媒は、連通部4cを通ってローター外周部3b側の環状部4b内に導入され、環状部4b内に設けられた界磁巻線5bを冷却する。冷却後の冷媒は、連通部4cを通って円筒状部4a内に戻り、導出入部4dを通って外部に導出される。
【0101】
この導出入部4dは、ステータ側に固定されているため、回転軸3eと共に回転する低温容器4との間には磁性流体シール4eを設けることによって、互いに相対的に回転移動を許容すると共に、冷媒が低温容器4から漏れ出すことを防いでいる。なお、内側界磁巻線5a,外側界磁巻線5bに電流を流す電源機構は、低温容器4内に設けることができる。
【0102】
[第1の態様の第2の形態]
次に、第1の態様の第2の形態について図3の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0103】
第2の形態の超電導回転機1Bは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側において界磁巻線を2分割してスプリット構造とすると共に、ステータ側においても電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、それぞれ分割した界磁巻線および電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第1の形態の構成との相違は、バックヨーク7の部分に外側電機子巻線6bを設ける点である。
【0104】
電機子巻線についても2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0105】
[第1の態様の第3の形態]
次に、第1の態様の第3の形態について図4の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0106】
第3の形態の超電導回転機1Cは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第2の形態の構成との相違は、軸部3a側の設けた内側界磁巻線5aを省く点である。
【0107】
電機子巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させる。
【0108】
[第1の態様の第4の形態]
次に、第1の態様の第4の形態について図5の断面図を用いて説明する。以下では、第1の形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0109】
第4の形態の超電導回転機1Dは、ローターに界磁巻線を設け、ステータに電機子巻線を設ける態様において、ローター側およびステータ側の何れも巻線を2分割するスプリット構造を有しない構成であり、ローター側に界磁巻線5を、また、ステータ側に電機子巻線6をそれぞれ分割することなく設ける。この際、界磁巻線5の内側に電機子巻線6を配置する。この配置とすることで、電機子巻線6において界磁磁束が鎖交する量を多くとることができる。
【0110】
[第2の態様]
次に、本発明の第2の態様について、図6〜図9を用いて説明する。本発明の第2の態様は、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様である。以下、この第2の態様の4つの形態例について説明する。以下では、第1の態様と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0111】
[第2の態様の第1の形態]
第2の態様の第1の形態について図6の断面図を用いて説明する。
第1の形態の超電導回転機1Eは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ローター側においてのみ電気機巻線を2分割してスプリット構造とし、半径方向において分割した電気機巻線の間に界磁巻線を配置する構成である。
【0112】
電機子巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0113】
また、この形態では、ステータに低温容器を設ける。この構成では、低温容器はステータに固定されているため、磁性流体シール等を不要とすることができる。
【0114】
[第2の態様の第2の形態]
次に、第2態様の第2の形態について図7の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0115】
第2の形態の超電導回転機1Fは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電気機巻線を2分割してスプリット構造とすると共に、ローター側においても電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、それぞれ分割した界磁巻線および電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第1の形態の構成との相違は、バックヨーク7の部分に外側電機子巻線6bを設ける点である。
【0116】
電機子巻線についても2分割したスプリット構造とすることによって、界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させることができる。
【0117】
[第2の態様の第3の形態]
次に、第2の態様の第3の形態について図8の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0118】
第3の形態の超電導回転機1Gは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ステータ側において電機子巻線を2分割してスプリット構造とし、電機子巻線を、半径方向に交互に配置する構成である。前記した第2の形態の構成との相違は、軸部3a側の設けた内側電機子巻線6aを省く点である。
【0119】
界磁巻線について2分割したスプリット構造とすることによって、電機子巻線が界磁磁束と鎖交する量を増加させ、変換効率を向上させる。
【0120】
[第2の態様の第4の形態]
次に、第2の態様の第4の形態について図9の断面図を用いて説明する。以下では、前記した形態と相違する部分のみ示し、共通する部分の説明は省略する。
【0121】
第4のローター超電導回転機1Hは、ステータに界磁巻線を設け、ローターに電機子巻線を設ける態様において、ローター側およびステータ側の何れも巻線を2分割するスプリット構造を有しない構成であり、ステータ側に界磁巻線5を、また、ローター側に電機子巻線6をそれぞれ分割することなく設ける。
【0122】
[構成例]
次に、本発明の第1の態様の第1の形態の一構成例について図10〜図16を用いて説明する。なお、ここでは、20K冷却でY系高温超電導線材を適用することを想定して、電流密度=1.6〜2.0×108A/m2で検討を行なう。
【0123】
Y系高温超電導線材は、ハステロイの基板にIBAD−MgOの中間層を備える構成で、幅4mm、厚さ0.1mm、超電導層の厚さ0.001mm、基板の厚さ0.05mm、銅安定化層の厚さ0.02mmである。また、膜構造は、20μmのCu層上に、50μmのHastelloy基板、〜10μmのIBAD MgO層、〜30μmのHomo−epiMgO層、〜30μmのLMO層、1μmのHTS層、2μmのAg層を積層して形成される。
【0124】
このY系高温超電導線材は、温度20K垂直磁界10T下での臨界電流は77Kの自己磁界下での臨界電流と同程度であるとされており、ここでは、臨界電流密度を2.0×108A/m2程度に設定する。
【0125】
図10に界磁巻線と電機子巻線の構成例を示す。図10において、スプリット構造とした界磁巻線5の内側界磁巻線5aと外側界磁巻線5bの半径をそれぞれ、Rfi [mm]及びRfo [mm]とする。機械的な支持やクライオスタット等のスペースを考慮して、界磁巻線間のギャップを300mm以上としている。電機子巻線6を配置する電機子巻線スロットの中心位置の半径をRa [mm]とする。各界磁巻線の断面寸法は、内側界磁巻線5aをWfi [mm]×dfi [mm]とし,外側界磁巻線5bをWfo [mm]×dfo [mm]とする。
【0126】
はじめに、界磁巻線の中心部分に集中電流が流れていると仮定して簡単な解析的計算によりギャップ中心位置に3Tの磁束密度が発生できるように、Wfi [mm]×dfi [mm]およびWfo [mm]×dfo [mm]の値を見積もる。
【0127】
これにより得られた界磁巻線の諸元を以下の表1に示す。
【表1】
【0128】
表1に示すCase I〜IIIについてFEM解析を行うことで以下の結果が得られた。
Case IとIIの比較から極数を大きくしても1極当りの断面積はあまり小さくならず、超電導線材量は16極の場合には大きくなる。
【0129】
巻線部分の最大磁界は、Case Iでは約12T、Case IIIでは約10Tとなる。したがって、極数が小さい場合は高電流密度で設計を行うよりも,電流密度を若干抑えて巻線断面積を増やす設計の方が有効である。
【0130】
図11は、ギャップ磁束密度の分布を示している。r=2050mmはギャップ中心線(すなわち,電機子スロット中央)を表し、r=2110mmは電機子スロット外端付近を表し、r=1990mmは電機子スロット内端付近を表している。図11から明らかなように、rの平均値として考えても、ギャップにおいて磁束密度は3Tを確保することができる。
【0131】
高電流密度、高磁界、直流での無損失という超電導の特徴を十分に生かすには、界磁巻線のみを超電導化して少なくとも3T以上の高磁界化を図ることが望ましい。
【0132】
空心機では、界磁巻線外部に大きな磁束を飛散させることが難しいため、界磁磁束を有効に電機子巻線に鎖交させるために界磁巻線を半径方向に2分割したスプリット構造とし、その界磁巻線のギャップ間に電機子巻線を配置する。
【0133】
ここでは、大規模風力発電の容量として10MW/電圧3.3kVを想定する。
【0134】
以下の表2に定格容量,定格電圧,極数,定格回転数等回転機の基本仕様を示し、図3に、Y系高温超電導線材を適用した10MW級風力発電用カップ型回転機の界磁巻線の寸法設計例を示す。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
前記した図10から平均値として考えてもギャップ磁束密度は3Tを確保することができるため、以下の電機子寸法の設計においては,ギャップ磁束密度を3Tとして設計を行なう。
【0138】
電機子巻線は、短節・分布巻の2層巻構成とする。毎相・毎極のスロット数をq=3.5とする。1相当たりのスロット数はQ=P・q=28、全スロット数は3Q=84となる。
【0139】
まず、電機子巻線の直列導線数を見積もる。相電圧は、
Ea=3300/√3=1905[V] …(2)
となる。
【0140】
一方、ギャップ磁束分布を正弦波と仮定した場合の1相当りの誘導起電力から相電圧を計算すると、
E0=(1/√2)・vBl・n0・Q
=(1/√2)・2τf・Bl・n0・Q …(3)
と書ける。
【0141】
ここで、n0: 1スロット当りの導体数、τ: 極ピッチ,f : 周波数,l : 有効長である。
【0142】
また、
v=2πra・N/60
N=120f/P
τ=2πra/P …(4)
の関係を用いた。
【0143】
この式に、ra=2.05[m]、P=8,B=3[T]、l=1.5[m]、Q=28を代入すると、
E0=286.8・n0・f …(5)
【0144】
N=10rpmの場合、f=0.667Hzなので、
n0=1905/(286.8×0.667)≒10[本] …(6)
となるが、電機子巻線を2層巻にすることを考えてn0=12 [本]とすると、
E0=286.8×12×0.667=2295[V] …(7)
となる。この値は、目標値である1905[V](3300[V])よりも大きいが、増加分は目標値に対するマージン分とする。
【0145】
次に、電機子導体/スロットの寸法を見積もる。
電機子電流(線電流)は、
Ia=(10×106/3300)/√3=1750[A] …(8)
となるので、銅線の電流密度を5 [A/mm2]として、1スロット当りの銅線の必要断面積は、
Scu=1750/5=350[mm2] …(9)
となる。
【0146】
スロット内の占積率を0.5、スロットの深さを120 [mm]とすると、必要なスロット断面積は、
Sslot=350[mm2]×12[本]/0.5
=8400[mm2]
=120[mm]×70[mm] …(10)
となる。
【0147】
また、導体断面寸法は、
dc=120[mm]/6[本]×√0.5=14.14[mm]
Wc=70[mm] /2[列]×√0.5=24.75[mm] …(11)
となる。
【0148】
図12は、電機子導体/スロットの寸法を説明するための図であり、式(10)、(11)で示したスロットの断面寸法、および電機子導体の断面寸法を示している。
【0149】
スロットピッチは、1極当りのスロット数が3q=10.5であるので、
τ/3q=2πra/P・3q=149.6[mm]
π/4.3q=0.0748[rad.]=4.2857[deg.] …(12)
となる。
【0150】
図13は、上記で求めた界磁巻線、電機子巻線の配置および寸法を説明するための図であり、外側界磁巻線半径2210[mm]、内側界磁巻線半径1760[mm]、界磁巻線のギャップ間中心半径(電機子巻線のスロット半径)2050[mm]、式(12)で示したスロットピッチ4.2857[deg.]、各はスロットの断面寸法、スロットサイズ120[mm]×70 [mm]、外側巻線幅165[mm]、外側巻線厚さ160[mm]、内側巻線幅160[mm]、内側巻線厚さ130[mm]の各寸法を示している。
【0151】
なお、電機子巻線は、U相巻線を黒地で示し、V相巻線を斜線で示し、W相巻線を白地で示して、界磁巻線は、界磁電流の方向を×印と点印で示している。
【0152】
電機子導体全長は、3Q・n0・l=84×12×1.5=1.512[km]
である。以上の設計数値を表4に示す。
【0153】
【表4】
【0154】
次に、上記した設計例についてのFEM解析を示す。
はじめに、無負荷時の誘導起電力(相電圧)をFEM解析を示す。誘導起電力の瞬時波形を図14に示す。図14により、基本波成分(f=0.667Hz)に対する誘導起電力(相電圧)の実効値は2721[V]であり、設計値の2295[V]よりも大きな値となった。これは、ギャップ磁束の分布が矩形波に近いためと考えられる。
【0155】
振幅±Aの矩形波の基本正弦波成分のフーリエ係数が4A/πであり、A=vBl・n0・Q=3170[V]と考えると、4A/π=4036[V]なので、実効値は4036/√2=2857[V]となる。つまり、ギャップ磁束分布が矩形波に近くなると、ギャップ磁束分布を正弦波として見積もった電圧値よりも大きくなる。
【0156】
DCリンク方式の風力回転機を想定した場合には、電圧波形は正弦波にこだわる必要は無く、むしろ、コンバータによって全波整流することを考えると、矩形波に近い程効率的であると考えられる。
【0157】
次に、線電流の基本波成分が定格電流値(1750 [Arms])になるような抵抗負荷を接続した場合の負荷解析を示す。
【0158】
図15は負荷解析に用いた回路を示している。図15に示す回路は、本発明の超電導回転機を発電機として出力した三相出力を、スター結線してなる抵抗負荷に供給した場合の等価回路を示している。ここでは、抵抗としてR=1.55Ωとしている。
【0159】
ここでは、回転機部分のFEM解析と外部回路の電気回路解析を連成させて解き、得られた線電流・相電圧波形の解析結果を図16に示す。図16(a)はU相を示し、図16(b)はV相を示し、図16(c)はW相を示している。
【0160】
図16に示す解析結果のデータをフーリエ解析し、相電圧・相電流の基本波成分の実効値を求めると、それぞれ2710 [V]および1750 [A]となる。
【0161】
これより、負荷に供給される電力は14.2 [MW]となる。このことから、前記したCase IIIの寸法から約8%程度体格を小さくした場合であっても10 [MW]は確保できることを示している。
【0162】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の超電導回転機は、発電機に限らず、電動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1A 超電導回転機
1B 超電導回転機
1C 超電導回転機
1D 超電導回転機
1E 超電導回転機
1F 超電導回転機
1G 超電導回転機
1H 超電導回転機
2 ステータ
2a ステータ内周部
2b ステータ外周部
2c 連結部
2d ギャップ
3 ローター
3a 軸部
3b ローター外周部
3c 連結部
3d ギャップ
3e 回転軸
3f 支持部
4 低温容器
4a 円筒状部
4b 環状部
4c 連通部
4d 導出入部
4e 磁性流体シール
5 界磁巻線
5a 内側界磁巻線
5b 外側界磁巻線
6 電機子巻線
6a 内側電機子巻線
6b 外側電機子巻線
7 バックヨーク
101 超電導電気機器
102 ステータ
103 ローター
104a 低温真空容器
105a 界磁巻線
106 電機子巻線
107 回転軸
108 ベアリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータとローターを備え、
前記ローターは、軸部と、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部とを、互いに半径方向にギャップを有して備え、
前記ステータは、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のステータ内周部およびステータ外周部を、互いに半径方向にギャップを有して備え、
前記ステータ内周部は、前記ローターの軸部とローター外周部との間で形成されるギャップ内に非接触で配置し、
前記ローター外周部は、軸方向の一端を前記ローターの軸部と半径方向で連接し、軸方向の他端を前記ステータに対して回転自在に支持することによって両持ち機構とし、
前記両持ち機構は、前記ローター外周部の他端において、当該端部とローターの軸部との間に前記ステータの一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受けを備え、
前記ステータ又はローターは超電導線材を用いた巻線を備えることを特徴とする、超電導回転機。
【請求項2】
前記2重のラジアル軸受けにおいて、
内側のラジアル軸受けと外側のラジアル軸受けとの間に、ステータ外周部とステータ内周部とを連結する連結部を通し、
前記ローター外周部の端部は、半径方向の加重を、内側ラジアル軸受け、連結部、および外側ラジアル軸受けを介して、軸部に支持させることを特徴とする、請求項1に記載の超電導回転機。
【請求項3】
前記2重のラジアル軸受けは、ベアリングによる機械的軸受け、又は、磁気力による非接触軸受けを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の超電導回転機。
【請求項4】
前記ローターは界磁磁束を形成する界磁巻線を備え、
前記ステータは前記界磁磁束と鎖交する電機子巻線を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項5】
前記ローターは、内部に冷媒を収容する低温容器を備え、
前記低温容器は、中心軸側の円筒状部と、外周側の半径方向の断面が環状の環状部と、前記円筒状部および前記環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを有し、
前記環状部の軸方向の他端は、前記2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによって前記ステータに対して回転自在に支持され、
前記低温容器は、少なくとも環状部内に超電導の界磁巻線を備え、
前記ステータは、少なくともステータ内周部に電機子巻線を備え、前記超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交することを特徴とする、請求項4に記載の超電導回転機。
【請求項6】
前記界磁巻線は、半径方向に2分割した2つの界磁巻線を備え、
分割した一方の界磁巻線を軸部に配置し、分割した他方の界磁巻線をローター外周部に配置することを特徴とする、請求項4又は5に記載の超電導回転機。
【請求項7】
前記電機子巻線は、半径方向に2分割した2つの電機子巻線を備え、
分割した一方の電機子巻線をステータ内周部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をステータ外周部内に配置することを特徴とする、請求項4又は5に記載の超電導回転機。
【請求項8】
前記ステータは界磁磁束を形成する界磁巻線を備え、
前記ローターは前記界磁磁束と鎖交する電機子巻線を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項9】
前記ステータは、内部に冷媒を収容する低温容器を備え、
前記低温容器は、中心軸側の半径方向の断面が環状の内周側環状部と、外周側の半径方向の断面が環状の外周側環状部と、前記内周側環状部および外周側環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを有し、
前記低温容器は、少なくとも何れか一方の環状部内に超電導の界磁巻線を備え、
前記ローターは、電機子巻線を備え、前記超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交することを特徴とする、請求項8に記載の超電導回転機。
【請求項10】
前記界磁巻線は、半径方向に2分割した2つの界磁巻線を備え、
分割した一方の界磁巻線をステータ内周部に配置し、分割した他方の界磁巻線をステータ外周部に配置することを特徴とする、請求項8又は9に記載の超電導回転機。
【請求項11】
前記電機子巻線は、半径方向に2分割した2つの電機子巻線を備え、
分割した一方の電機子巻線を軸部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をローター外周部内に配置することを特徴とする、請求項8又は9に記載の超電導回転機。
【請求項12】
前記ローターを回転駆動してローターをステータとを相対移動させ、
当該相対移動によって前記界磁巻線が形成する界磁磁束を変化させ、
当該界磁磁束の磁束変化を前記電機子巻線によって電流に変換して発電機を構成することを特徴とする、請求項1から11の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項13】
前記電機子巻線に電流を印加して磁界を形成し、
当該磁界と前記界磁巻線が形成する界磁磁束との鎖交によって、電流を回転力に変換して電動機を構成することを特徴とする、請求項1から11の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項1】
ステータとローターを備え、
前記ローターは、軸部と、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のローター外周部とを、互いに半径方向にギャップを有して備え、
前記ステータは、軸方向に延びると共に半径方向の断面が環状のステータ内周部およびステータ外周部を、互いに半径方向にギャップを有して備え、
前記ステータ内周部は、前記ローターの軸部とローター外周部との間で形成されるギャップ内に非接触で配置し、
前記ローター外周部は、軸方向の一端を前記ローターの軸部と半径方向で連接し、軸方向の他端を前記ステータに対して回転自在に支持することによって両持ち機構とし、
前記両持ち機構は、前記ローター外周部の他端において、当該端部とローターの軸部との間に前記ステータの一部を挟んで半径方向に2重に配置した2重ラジアル軸受けを備え、
前記ステータ又はローターは超電導線材を用いた巻線を備えることを特徴とする、超電導回転機。
【請求項2】
前記2重のラジアル軸受けにおいて、
内側のラジアル軸受けと外側のラジアル軸受けとの間に、ステータ外周部とステータ内周部とを連結する連結部を通し、
前記ローター外周部の端部は、半径方向の加重を、内側ラジアル軸受け、連結部、および外側ラジアル軸受けを介して、軸部に支持させることを特徴とする、請求項1に記載の超電導回転機。
【請求項3】
前記2重のラジアル軸受けは、ベアリングによる機械的軸受け、又は、磁気力による非接触軸受けを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の超電導回転機。
【請求項4】
前記ローターは界磁磁束を形成する界磁巻線を備え、
前記ステータは前記界磁磁束と鎖交する電機子巻線を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項5】
前記ローターは、内部に冷媒を収容する低温容器を備え、
前記低温容器は、中心軸側の円筒状部と、外周側の半径方向の断面が環状の環状部と、前記円筒状部および前記環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを有し、
前記環状部の軸方向の他端は、前記2重ラジアル軸受けの外側のラジアル軸受けによって前記ステータに対して回転自在に支持され、
前記低温容器は、少なくとも環状部内に超電導の界磁巻線を備え、
前記ステータは、少なくともステータ内周部に電機子巻線を備え、前記超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交することを特徴とする、請求項4に記載の超電導回転機。
【請求項6】
前記界磁巻線は、半径方向に2分割した2つの界磁巻線を備え、
分割した一方の界磁巻線を軸部に配置し、分割した他方の界磁巻線をローター外周部に配置することを特徴とする、請求項4又は5に記載の超電導回転機。
【請求項7】
前記電機子巻線は、半径方向に2分割した2つの電機子巻線を備え、
分割した一方の電機子巻線をステータ内周部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をステータ外周部内に配置することを特徴とする、請求項4又は5に記載の超電導回転機。
【請求項8】
前記ステータは界磁磁束を形成する界磁巻線を備え、
前記ローターは前記界磁磁束と鎖交する電機子巻線を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項9】
前記ステータは、内部に冷媒を収容する低温容器を備え、
前記低温容器は、中心軸側の半径方向の断面が環状の内周側環状部と、外周側の半径方向の断面が環状の外周側環状部と、前記内周側環状部および外周側環状部を軸方向の一端において半径方向で連通する連通部とを有し、
前記低温容器は、少なくとも何れか一方の環状部内に超電導の界磁巻線を備え、
前記ローターは、電機子巻線を備え、前記超電導の界磁巻線が形成する界磁磁束と鎖交することを特徴とする、請求項8に記載の超電導回転機。
【請求項10】
前記界磁巻線は、半径方向に2分割した2つの界磁巻線を備え、
分割した一方の界磁巻線をステータ内周部に配置し、分割した他方の界磁巻線をステータ外周部に配置することを特徴とする、請求項8又は9に記載の超電導回転機。
【請求項11】
前記電機子巻線は、半径方向に2分割した2つの電機子巻線を備え、
分割した一方の電機子巻線を軸部内に配置し、分割した他方の電機子巻線をローター外周部内に配置することを特徴とする、請求項8又は9に記載の超電導回転機。
【請求項12】
前記ローターを回転駆動してローターをステータとを相対移動させ、
当該相対移動によって前記界磁巻線が形成する界磁磁束を変化させ、
当該界磁磁束の磁束変化を前記電機子巻線によって電流に変換して発電機を構成することを特徴とする、請求項1から11の何れか一つに記載の超電導回転機。
【請求項13】
前記電機子巻線に電流を印加して磁界を形成し、
当該磁界と前記界磁巻線が形成する界磁磁束との鎖交によって、電流を回転力に変換して電動機を構成することを特徴とする、請求項1から11の何れか一つに記載の超電導回転機。
【図10】
【図13】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図13】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−103708(P2011−103708A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256661(P2009−256661)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]