超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法
【課題】高能率で絶縁被覆を形成することが可能な超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】超電導線材ラッピング装置は、サプライ部と、ラッピング機構部と、巻取部とを備える。ラッピング機構部は、絶縁テープリール38と、案内部材60と、巻付部材(第1〜第3ベース体35〜37と、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39をガイドするローラ53,54および位置可変ローラと、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体)、とを含む。絶縁テープリール38は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する。案内部材60は、絶縁テープリール38の開口部を貫通するように超電導線材を案内する。巻付部材としての上記回転体は、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を、超電導線材の周囲に巻付ける。
【解決手段】超電導線材ラッピング装置は、サプライ部と、ラッピング機構部と、巻取部とを備える。ラッピング機構部は、絶縁テープリール38と、案内部材60と、巻付部材(第1〜第3ベース体35〜37と、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39をガイドするローラ53,54および位置可変ローラと、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体)、とを含む。絶縁テープリール38は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する。案内部材60は、絶縁テープリール38の開口部を貫通するように超電導線材を案内する。巻付部材としての上記回転体は、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を、超電導線材の周囲に巻付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法に関し、より特定的には、高能率で絶縁被覆を行なうことができる超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導線材の一例である酸化物超電導線材をコイル状に成形してマグネットを形成する場合、酸化物超電導線材同士の短絡を防止するため、当該酸化物超電導線材を絶縁被覆することが知られている(たとえば、特開平6−234959号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)参照)。特許文献1では、超電導線材の外周に、絶縁テープをスパイラル状に巻付けることが開示されている。
【特許文献1】特開平6−234959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような絶縁テープを外周に巻付けた絶縁被覆付超電導線材を形成する工程としては、たとえば、絶縁テープを巻いたリールが超電導線材の周囲を周回しながら、当該リールから払出された絶縁テープが超電導線材の外周に巻付けられるという工程が考えられる。しかし、このような工程では、絶縁テープを巻いたリールが超電導線材の周囲を周回するため、絶縁テープの巻付け速度を上げることに限界があった。すなわち、絶縁テープを巻いたリールを高速で周回させると、遠心力により当該リールに大きな力が加わるため、リールや当該リールを支持する部材などの機械的強度の制約から、リールの周回速度には限界があった。このため、絶縁被覆付超電導線材を形成する工程の効率を向上させることには限界があった。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、高能率で絶縁被覆を形成することが可能な超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った超電導線材ラッピング装置は、サプライ部と、ラッピング部と、巻取部とを備える。サプライ部は超電導線材を払い出す。ラッピング部は、サプライ部から払出された超電導線材の外周に絶縁テープを巻付ける。巻取部は、ラッピング部において絶縁テープを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付超電導線材を巻取る。ラッピング部は、絶縁テープ保持部材と、案内部材と、巻付部材とを含む。絶縁テープ保持部材は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する。案内部材は、絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように線材を案内する。巻付部材は、絶縁テープ保持部材から払出された絶縁テープを、線材の周囲に巻付ける。
【0006】
このようにすれば、超電導線材は絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように配置されているので、超電導線材に絶縁テープを巻付ける場合に、当該絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回するといったことはない。つまり、絶縁テープ保持部材の配置は、当該絶縁テープ保持部材の開口部を超電導線材が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープ保持部材の機械的強度などにより絶縁テープの超電導線材への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合より、超電導線材への絶縁テープの巻付け速度を向上させることができる。この結果、超電導線材への絶縁テープの巻付け工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材として酸化物超電導線材を用いる場合には、当該酸化物超電導線材の周囲に絶縁テープを巻付けて絶縁被覆付酸化物超電導線材を形成する工程を高能率で実施することができる。
【0007】
この発明に従った絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、超電導線材を準備する工程を実施する。そして、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材を準備する工程を実施する。絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように、超電導線材を配置するとともに、超電導線材の周囲に、絶縁テープ保持部材から払出された絶縁テープを巻付ける工程を実施する。
【0008】
このようにすれば、超電導線材は絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように配置されているので、絶縁テープを巻付ける工程において、当該絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回することはない。つまり、絶縁テープ保持部材の配置は、当該絶縁テープ保持部材の開口部を超電導線材が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープ保持部材の機械的強度などにより絶縁テープの超電導線材への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合より、超電導線材への絶縁テープの巻付け速度を向上させることができる。この結果、絶縁テープを巻付ける工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材の周囲に絶縁テープを巻付けた絶縁被覆付超電導線材を高能率で製造できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化物超電導線材への絶縁テープの巻き付けを高能率で実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0011】
図1は、本発明に従ったラッピング装置を示す模式図である。図2は、図1に示したラッピング装置の第1ラッピング部の構成を示す斜視模式図である。図3は、図2に示した第1ラッピング部の部分拡大模式図である。図4は、図2に示した第1ラッピング部の構成を簡単に説明するための模式図である。図1〜図4を参照して本発明によるラッピング装置1を説明する。
【0012】
図1〜図4に示すように、本発明によるラッピング装置1は、サプライ部2と、ラッピング機構部3と、計測部4と、スパークテスタ5と、制御部6と、キャプスタン7と、幅・厚み計測部8と、計尺計9と、高さセンサ10と、巻取部11とを備える。サプライ部2には、絶縁テープを被覆する対象である超電導線材をラッピング機構部3へと供給するための線材テープリール21が複数個(図1においては5個)設置されている。
【0013】
ラッピング機構部3には、ベース材の上に第1ラッピング部31が配置されている。そして、第1ラッピング部31の下流側には、第2ラッピング部32が配置されている。この第1および第2ラッピング部31、32の構成は後述する。
【0014】
そして、第1ラッピング部31の下流側には超電導線材の表面に被覆された絶縁テープのピッチやギャップを計測するためのカメラを含む第1計測部41が設置されている。また、ラッピング機構部3に隣接して第2計測部42が配置されている。第2計測部42は、第1計測部41と同様に超電導線材の表面に被覆された絶縁テープのピッチやギャップを計測するためのカメラを含んでいる。この第1計測部41および第2計測部42から計測部4が構成される。この計測部4により、超電導線材の全長に渡って絶縁テープのピッチやギャップの計測を行なうことができる。
【0015】
第2計測部42に隣接して(下流側に)スパークテスタ5が配置されている。このスパークテスタ5は、絶縁テープが被覆された超電導線材について、絶縁破壊検査を行なうためのものである。このスパークテスタ5により、絶縁テープが被覆された超電導線材の全長に渡って絶縁破壊検査を行なうことができる。なお、スパークテスタ5の構成としては、絶縁破壊検査を行なうことが可能な任意の検査装置を用いることができる。
【0016】
スパークテスタ5と隣接してキャプスタン7が配置されている。キャプスタン7は、超電導線材20の搬送速度や張力を調整するためのものである。キャプスタン7の構成としては、超電導線材20の搬送速度や張力を調整することができれば、任意の構成を用いることができる。たとえば、キャプスタン7の構造として、モータなどの駆動源に接続された回転可能なローラで超電導線材20を挟むような構成としてもよい。
【0017】
キャプスタン7の下流側には、キャプスタン7に隣接して幅・厚み計測部8が配置されている。この幅・厚み計測部8では、絶縁テープが被覆された超電導線材の幅および厚みを計測している。幅・厚み計測部8の構成としては、超電導線材の幅および厚みを測定できれば任意の構成を採用することができる。
【0018】
この幅・厚み計測部8の下流側には、計尺計9が配置されている。この計尺計9は、処理された超電導線材の長さを計測している。計尺計9の構成としては、超電導線材の長さを測定できれば任意の構成を用いることができる。
【0019】
この計尺計9の下流側には、高さセンサ10が配置されている。高さセンサ10は、超電導線材20の位置(高さ)を計測している。高さセンサ10の構成としては、超電導線材20の位置が検出できれば任意の構成を作用することができる。たとえば、超電導線材20の位置の設定範囲を囲むようにガイド部材などが配置され、当該ガイド部材に超電導線材20が接触したことにより超電導線材20の高さが所定の高さになった(設定範囲の上限または下限に位置している)ことを検出するような構成としてもよい。
【0020】
そして、この高さセンサ10の下流側には巻取部11が配置されている。巻取部11では、絶縁テープが被覆された超電導線材を巻取るための巻取りリールが配置されている。当該巻取りリールは高さセンサ10の出力に応じて、油圧シリンダなどの移動部材により上下方向に移動可能になっている。
【0021】
また、ラッピング装置1には制御部6が設置されている。制御部6においては、ラッピング装置1の動作を制御するとともに、ラッピング装置1の動作に伴うプロセス条件を記憶している。具体的には、制御部6は、ラッピングされる超電導線材の条件や絶縁テープのラッピングに関する情報(データ)を記録する記録部と、ラッピング装置1の全体の動作を制御する動作制御部とを含む。記録部において記録するデータとしては、たとえば計測部4において測定される絶縁テープのピッチ、絶縁テープの間に隙間を形成するように当該絶縁テープを巻付ける場合には当該絶縁テープ間のギャップ、スパークテスタ5における検査結果、幅・厚み計測部8において測定した超電導線材20の幅および厚み、さらには計尺計9において測定された超電導線材20の長さなどのデータが記録される。なお、制御部6では、計測部4、スパークテスタ5などでの測定結果から、絶縁テープのピッチやギャップが乱れたり、絶縁テープを被覆した超電導線材20の絶縁破壊が検知されたりした場合には、ラッピング装置1の動作を停止するように制御する。
【0022】
次に、第1および第2ラッピング部31、32の構成を説明する。なお、第1および第2ラッピング部31、32は、それぞれ同様の構造を備えているため、第1ラッピング部31を代表としてその構成を説明する。
【0023】
図2〜図4に示すように、第1ラッピング部31はその中心部を超電導線材20が貫通するように超電導線材20の搬送路が設定されている。そして、この超電導線材20の搬送路を規定する案内部材60を中心軸として、第1〜第3ベース体35〜37と、これらの第1〜第3ベース体35〜37を貫通して互いに接続する支柱と、第2ベース体36に接続され、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けるためにガイドするローラ52〜54および位置可変ローラ55と、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体が設置されている。この回転体は第1ラッピング部31の側壁34に対して回転可能に支持されている。当該回転体は、たとえば側壁34の外側に配置されたモータなどの駆動部材により、回転可能になっている。
【0024】
絶縁テープリール38は、その中心部に形成された開口の中を超電導線材20が貫通するように配置されている。絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39はローラ52、絶縁テープガイド50、ローラ53、絶縁テープガイド51、ローラ54、および位置可変ローラ55を介して超電導線材20の外周へと巻付けられる。なお、位置可変ローラ55は、その位置を矢印58(図4参照)に示す方向に変化させることが可能なローラである。
【0025】
この絶縁テープ39の巻付けは、上述した回転体が超電導線材20の経路(搬送路)を中心軸として回転することにより行なわれる。なお、絶縁テープリール38の固定部にはパウダーブレーキが設置されている。このパウダーブレーキにより、絶縁テープリール38から巻戻される絶縁テープ39に加えられる張力を一定に保つことができる。具体的には、絶縁テープリール38における絶縁テープ39の径に応じて、当該絶縁テープリール38に加えられるトルクを調整することにより、絶縁テープ39の張力が一定に保たれる。また、位置可変ローラ55の超電導線材20に対する相対的な位置を変更する(たとえば図4の矢印58に示す方向に位置可変ローラ55の位置を変更する)ことにより、絶縁テープ39が超電導線材20に巻付く際の巻付き角度θ(図3参照)を変更可能になっている。具体的には、位置可変ローラ55の位置を変更することにより、超電導線材20に対する絶縁テープ39の巻付き角度θ(図3参照)をたとえば20°以上80°以下の範囲で調整することができる。
【0026】
また上述した回転体の回転方向は、図2に示す矢印57のように超電導線材20を中心として右回りおよび左回りのいずれの方向にも回転可能になっている。また、この第1ラッピング部31には、側壁に静電気除去装置33(図1参照)が設置されている。この静電気除去装置33では、超電導線材20および絶縁テープ39などの第1ラッピング部31内の部材における帯電量を検出する。そして、当該部材の帯電を打ち消すために反対の導電型のイオンを当該部材に吹付けることにより、当該部材の静電気を除去する。このようにして、静電気により絶縁テープ39が第1ラッピング部31の他の部材に吸着されることにより絶縁テープ39の張力が変動する、といった問題の発生を抑制できる。また、静電気除去装置33によって絶縁テープ39自体の静電気の帯電も抑制できるので、当該静電気に起因して絶縁テープ39に異物が吸着するといった問題の発生も抑制できる。
【0027】
図1に示したラッピング装置1においては、第2ラッピング部32の構成は基本的には第2ラッピング部31の構成と同様である。また、図1に示したラッピング装置1では、図2〜図4に示したような構成のラッピング部を3つ以上備えるようにしてもよい。また、この場合、図2〜図4に示したようなラッピング部と、当該ラッピング部の下流側に配置される第1計測部41との組を3組以上備えるようにしてもよい。
【0028】
なお、超電導線材20としては、たとえば線幅が2mm以上5mm以下、厚みが0.1mm以上2.0mm以下のテープ状線材を用いることができる。また、超電導線材20として、酸化物超電導体を含む酸化物超電導線材を用いることができる。また、図3に示すように、第1ラッピング部31において絶縁テープ39を超電導線材20へと巻付ける部分(超電導線材20が案内部材60から露出した部分)にて超電導線材20をガイドするためのダイス56、59の間の距離は、たとえば0mm越え100mm以下の範囲で調整可能になっている。なお、ダイス56、59には、超電導線材20の断面の寸法より若干大きな貫通穴が形成されており、当該貫通穴を超電導線材20が通って搬送されている。たとえば、ダイス56、59に形成される貫通穴の断面形状の寸法(高さおよび幅)は、超電導線材の断面の寸法(高さおよび幅)の1.1倍以上2.5倍以下に設定されている。また、絶縁テープリール38から巻戻される絶縁テープ39の張力はたとえば50gf以上300gf以下の範囲で調整可能になっている。
【0029】
次に、図1〜図4に示したラッピング装置1を用いた絶縁被覆付超電導線材の製造方法を説明する。図5は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。図5を参照して、絶縁被覆付の超電導線材の製造方法では、まず超電導線材準備工程(S10)を実施する。具体的には、サプライ部2において、超電導線材が巻かれた線材テープリール21を所定の位置に配置する。このとき、複数の超電導線材を積層した上で、当該積層された超電導線材の集合体(積層体)の外周を覆うように絶縁テープを被覆する場合には、サプライ部2において複数の線材テープリール21を配置する。
【0030】
次に絶縁テープ準備工程(S20)を実施する。具体的には、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32の所定の位置に図2および図4に示すように絶縁テープリール38を設置する。そして、当該絶縁テープリール38から絶縁テープ39を払出し図4に示すようにローラ52〜54、位置可変ローラ55、絶縁テープガイド50、51を介して絶縁テープ39を所定の位置にセットする。そして、サプライ部2の線材テープリール21から払出した超電導線材20の先端を、ラッピング装置1の超電導線材20の搬送路(流通パス)を通して巻取部11における巻取リールに巻付ける。そして、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32において、絶縁テープ39の先端を超電導線材20の表面に固定する。このようにしてラッピング工程を実施する準備が整う。
【0031】
次に、ラッピング工程(S30)を実施する。具体的には、巻取部11の巻取リールを回転させるとともにサプライ部2の線材テープリール21を回転させることにより、ラッピング装置1の内部を超電導線材20が通過するようにする。同時に、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32において、図2に示した第1〜第3ベース体35〜37などからなる回転体が超電導線材20の流通パスを中心軸として回転する。この結果、当該超電導線材20の外周に絶縁テープ39が巻付けられる。
【0032】
そして、このように絶縁テープ39の巻付けを行なうと同時に、計測部4では超電導線材20に巻付けられた絶縁テープ39のピッチやギャップの計測を行なう。また、絶縁テープ39が超電導線材20の表面を完全に覆うように巻付けられる場合には、スパークテスタ5において絶縁破壊試験を実施する。また、静電気の発生に伴う絶縁テープ39の張力の変動を抑制するため、ラッピング機構部3においては静電気除去装置33を動作させる。また、キャプスタン7の作用によって超電導線材20の走行速度は一定に保たれる。また同時に、幅・厚み計測部8により、絶縁テープが巻付けられた超電導線材(絶縁被覆付超電導線材)の幅および厚みが計測される。さらに、計尺計9により、絶縁テープ39が巻付けられた超電導線材20(絶縁被覆付超電導線材)の長さが測定される。これらの測定結果は、制御部6に送信され当該制御部6の記憶装置内に記録される。
【0033】
そして、巻取部11の巻取リールに絶縁被覆付超電導線材が巻取られることにより、巻取リールでの絶縁被覆付超電導線材の巻取後の直径が大きくなる。この場合、高さセンサ10の出力に応じて当該絶縁被覆付超電導線材(または超電導線材20)のラッピング装置1中での高さ(搬送路の位置)がほぼ一定になるように、巻取リールの中心位置は徐々に下方へと下げられるように制御される。このようにして、超電導線材20の外周に絶縁テープ39を巻付けた絶縁被覆付超電導線材を得ることができる。
【0034】
図6は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材を示す断面模式図である。図7は、図6の線分VII−VIIにおける断面模式図である。図6および図7を参照して、図1に示したラッピング装置1を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材30を説明する。
【0035】
図6および図7に示すように、絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置を用いて製造され、テープ状の超電導線材20の外周を覆うように絶縁テープ39が螺旋状に巻付けられた構造となっている。図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30では、螺旋状に巻かれた絶縁テープ39が、互いにその端部が重なることなくかつ当該端部が突き合わされた状態で超電導線材20の外周を覆うように配置されている。また、図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30では、1枚の絶縁テープ39が螺旋状に(超電導線材20の外周面を露出させることなく)超電導線材20の外周を覆っている。このような構成は、図1に示したラッピング機構部3における第1ラッピング部31または第2ラッピング部32のいずれか一方のみを用いて超電導線材20の外周に絶縁テープ39を巻付けることにより実現できる。なお、図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30においては、絶縁テープ39の巻付けピッチをより狭めることで、隣接する絶縁テープ39の端部が重なった状態としてもよい。この場合、絶縁テープ39により超電導線材20の外周面を確実に被覆することができる。
【0036】
図8は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す断面模式図である。図8は図7に対応する。図8を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を説明する。
【0037】
図8に示した絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置を用いて製造されており、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、複数の(具体的には5枚の)超電導線材20を積層した積層体の外周を囲むように絶縁テープ39が配置されている点が異なる。このような構成は、図1に示したラッピング装置1において、サプライ部2に複数の(具体的には5つの)線材テープリール21を配置し、それぞれの線材テープリール21から超電導線材20を払出して積層した状態でラッピング装置1を通過させ、ラッピングを行なうことによる得ることができる。
【0038】
図9は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図9を参照して、絶縁被覆付超電導線材30の他の例を説明する。
【0039】
図9に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、超電導線材20の外周を覆う絶縁テープが二重に巻かれている点が異なる。具体的には、超電導線材20(図7参照)の外周に、まず1層目の絶縁テープ39aが螺旋状に巻付けられている。そして、さらに絶縁テープ39aの外周を覆うように、もう1つの絶縁テープ39bが同様に螺旋状に巻付けられている。このようにすれば、絶縁テープ39a、39bによって二重に絶縁被覆を形成しているので、絶縁被覆の絶縁性能をより向上させることができる。なお、このような二重の絶縁被覆は、図1に示したラッピング装置1において、第1および第2のラッピング部31、32のそれぞれで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20に巻付けることにより実現できる。
【0040】
図10は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図10を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材30の他の例を説明する。
【0041】
図10に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、絶縁テープ39の間に開口部40が形成されるように絶縁テープ39が超電導線材20へと巻付けられている点が異なる。すなわち、開口部40では、超電導線材20の表面が露出した状態となっている。このようにすれば、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた絶縁被覆付超電導線材の配置を接着剤で固定する際に、確実に絶縁被覆付超電導線材30を固定できる。すなわち、絶縁テープを巻付けられた超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を絶縁テープ39と超電導線材20との間に容易に浸透させることができる。
【0042】
なお、このような絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31での絶縁テープ39の巻付けピッチを、当該絶縁テープ39の幅より十分大きくすることにより製造できる。
【0043】
図11は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図11を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材の他の例を説明する。
【0044】
図11に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図9に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、1層目の絶縁テープ39aの螺旋状に巻付けられた方向と、当該絶縁テープ39aの外周上に2層目として巻付けられた絶縁テープ39bの巻付け方向とが交差するように配置されている点が異なっている。このような構成は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31と第2ラッピング部32とで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20へ巻付けるとともに、超電導線材20に対する回転体の回転方向を逆向きにすることで実現できる。
【0045】
なお、絶縁テープ39a、39bは、それぞれ隣接する絶縁テープ同士が一部重なるように巻付けられていてもよいし、図11に示すように端面同士が突き合わされた状態となるように巻付けられていてもよい。また、絶縁テープ39aおよび絶縁テープ39bの一方のみが、超電導線材20の外周面を覆うように(開口部を形成しないように)超電導線材20に巻付けられていてもよい。この場合、絶縁テープ39aおよび絶縁テープ39bの他方は、たとえば図10に示すように開口部40を形成するように、十分大きなピッチで超電導線材20に巻付けられていてもよい。
【0046】
図12は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図12を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材の他の例を説明する。
【0047】
図12に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図11に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、絶縁テープ39a、39bのそれぞれが、隣接する部分の間に開口部40が形成されるように超電導線材20へ巻付けられている点が異なっている。すなわち、図12に示した絶縁被覆付超電導線材30では、当該絶縁被覆付超電導線材30の主表面のほぼ中央部に開口部40が複数形成された状態となっている。このようにしても、図10に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、図12に示した絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31と第2ラッピング部32とで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20へ巻付けるとともに、超電導線材20に対する回転体の回転方向を逆向きにし、かつ、絶縁テープ39a、39bの巻付けピッチを、当該絶縁テープ39a、39bの幅より十分大きくすることで実現できる。
【0049】
また、上述した図6〜図12に示した絶縁被覆付超電導線材30においては、絶縁テープ39、39a、39bの超電導線材20側の面に接着剤層を配置しておいてもよい。当該接着剤層としては、たとえば熱可塑性接着剤の層を形成してもよい。
【0050】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0051】
この発明に従ったラッピング装置1は、超電導線材ラッピング装置であって、サプライ部2と、ラッピング部としてのラッピング機構部3と、巻取部11とを備える。サプライ部2は超電導線材20を払い出す。ラッピング機構部3は、サプライ部2から払出された超電導線材20の外周に絶縁テープ39、39a、39bを巻付ける。巻取部11は、ラッピング機構部3において絶縁テープ39、39a、39bを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付線材(絶縁被覆付超電導線材30)を巻取る。ラッピング機構部3は、絶縁テープ保持部材(絶縁テープリール38)と、案内部材60と、巻付部材(図2〜図4に示した第1〜第3ベース体35〜37と、これらの第1〜第3ベース体35〜37を貫通して互いに接続する支柱と、第2ベース体36に接続され、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けるためにガイドするローラ52〜54および位置可変ローラ55と、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体)、とを含む。絶縁テープリール38は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する。案内部材60は、絶縁テープリール38の開口部を貫通するように超電導線材20を案内する。巻付部材としての上記回転体は、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を、超電導線材20の周囲に巻付ける。
【0052】
このようにすれば、超電導線材20は絶縁テープリール38の開口部を貫通するように配置されているので、超電導線材20に絶縁テープ39を巻付ける場合に、当該絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回するといったことはない。つまり、絶縁テープリール38の配置は、当該絶縁テープリール38の開口部を超電導線材20が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープリール38の機械的強度などにより絶縁テープ39の超電導線材20への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合より、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け速度を向上させることができる。この結果、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材20として酸化物超電導線材を用いる場合には、当該酸化物超電導線材の周囲に絶縁テープ39を巻付けて絶縁被覆付酸化物超電導線材を形成する工程を高能率で実施することができる。
【0053】
上記ラッピング装置1において、ラッピング機構部3は、絶縁テープリール38から払出される絶縁テープ39の張力を調整する張力調整部材(パウダーブレーキ)を含んでいてもよい。この場合、絶縁テープ39の張力を所定の範囲に入るように制御することが可能となる。このため、絶縁テープ39を超電導線材20に巻付ける場合に、当該絶縁テープ39の張力が過大になって超電導線材20に過剰な応力が加わることを抑制できる。この結果、当該過剰な応力に起因して超電導線材20の特性が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
【0054】
上記ラッピング装置1において、ラッピング機構部3は、図2〜図4に示すように超電導線材20に対する絶縁テープ39の巻付け角度θを変更する巻付け角度変更部材(位置可変ローラ55)を含んでいてもよい。位置可変ローラ55は、絶縁テープ39を案内するローラであって、上記超電導線材20の延在方向に沿って超電導線材20に対する相対的な位置を変更可能なローラであってもよい。この場合、超電導線材20に巻付ける絶縁テープ39の巻付け角度θを任意に変更することができるため、絶縁テープ39の巻付け状態を任意に変更することができる。
【0055】
上記ラッピング装置1では、超電導線材20として酸化物超電導線材に絶縁テープ39を巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付酸化物超電導線材を高能率で製造することができる。また、上記ラッピング装置1においては、ラッピング機構部3が複数形成されていてもよい。この場合、超電導線材20に複数の絶縁テープ39a、39bが積層した積層構造の絶縁被覆を形成することができる。
【0056】
上記ラッピング装置1において、案内部材60には、超電導線材20の表面を露出させる露出部(図3のダイス56とダイス59との間で超電導線材20が露出している部分)が形成されていてもよい。上記回転体は、露出部において露出している超電導線材20の部分において絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。超電導線材20の延在方向における露出部の幅は変更可能になっていてもよい。この場合、絶縁テープ39を巻付けるための超電導線材20の露出部の幅を任意に変更することができるので、露出部における超電導線材20の振動などを抑制して絶縁テープ39の巻付け状態を良好に保つように、当該幅を設定することができる。
【0057】
この発明に従った絶縁被覆付酸化物超電導線材の製造方法は、絶縁被覆つき超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導線材を準備する工程(超電導線材準備工程(S10))を実施する。そして、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材(絶縁テープリール38)を準備する工程(絶縁テープ準備工程(S20))を実施する。絶縁テープリール38の開口部を貫通するように、超電導線材20を配置するとともに、超電導線材20の周囲に、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を巻付ける工程(ラッピング工程(S30))を実施する。
【0058】
このようにすれば、酸化物超電導線材(超電導線材20)は絶縁テープリール38の開口部を貫通するように配置されているので、絶縁テープ39を巻付けるラッピング工程(S30)において、当該絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回することはない。つまり、絶縁テープリール38の配置は、当該絶縁テープリール38の開口部を超電導線材20が貫通する状態で維持される。したがって、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープリール38の機械的強度などにより絶縁テープ39の超電導線材20への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合より、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け速度を向上させることができる。この結果、絶縁テープ39を巻付けるラッピング工程(S30)を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材20の周囲に絶縁テープ39を巻付けた絶縁被覆付超電導線材30を高能率で製造できる。
【0059】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、超電導線材20の延在方向において、絶縁テープリール38に対する超電導線材20の相対的な位置を変更しながら絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に螺旋状に巻付ける。この場合、超電導線材20を絶縁テープリール38に対して相対的に移動させながら、連続的に絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けることができる。このため、絶縁被覆付超電導線材30の製造効率をより向上させることができる。
【0060】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39が一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた絶縁テープ39の隣接する端面同士が接触する形態となるように、絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。この場合、超電導線材20の外周を絶縁テープ39で確実に覆うことができる。
【0061】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、超電導線材20の表面の一部が露出するように、絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた(積層された)絶縁被覆付超電導線材30の配置を接着剤で固定する際に、超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を絶縁テープ39と超電導線材20との間に容易に浸透させることができる。このため、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を用いて形成されたコイルにおいて、接着剤を用いてその形状を確実に維持することができる。
【0062】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、図1のラッピング装置1における第2ラッピング部32において、他の開口部を有し、当該他の開口部を囲むように他の絶縁テープ39bを円周状に巻付けて保持する他の絶縁テープ保持部材(他の絶縁テープリール)を準備する工程(絶縁テープ準備工程(S20))を実施してもよい。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)の後、他の絶縁テープリールの他の開口部を貫通するように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20を配置するとともに、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲を囲むように螺旋状に、他の絶縁テープリールから払出された他の絶縁テープ39bを巻付ける工程を実施してもよい。
【0063】
この場合、図9などに示すように、絶縁テープ39aと他の絶縁テープ39bとの2つの絶縁テープを用いて、超電導線材20の絶縁被覆を構成することができる。例えば、超電導線材20の外周を1層目の絶縁被覆として絶縁テープ39aで覆い、その後、さらに他の絶縁テープ39bにより2層目の絶縁被覆を形成することができる。
【0064】
また、異なる方法として、以下のような方法を採用することもできる。すなわち、1回目の被覆工程としての絶縁テープ39aを巻付ける工程において、超電導線材20の外周に螺旋状に絶縁テープ39aを巻付ける。このとき、螺旋状に巻かれた絶縁テープ39aの巻きのピッチを当該絶縁テープ39aの幅より十分大きく(好ましくは絶縁テープの幅の2倍に)しておき、巻かれた絶縁テープ39aの間から超電導線材20の表面が露出した状態とする。そして、2回目の被覆工程としての他の絶縁テープ39bを巻付ける工程において、上記超電導線材20の表面が露出した部分を他の絶縁テープ39bで覆うように、当該他の絶縁テープ39bを巻付ける。このようにすれば、絶縁テープ39a、39bの巻付け速度が一定であると仮定した場合、1回目の被覆工程のみで超電導線材20の外周全体を絶縁テープ39aで覆う場合より、最大2倍のスピードで絶縁被覆付超電導線材30を製造することができる。
【0065】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39aを巻付けるラッピング工程(S30)における絶縁テープ39aの超電導線材20に対する巻付け方向と、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)における他の絶縁テープ39bの超電導線材20に対する巻付け方向とが同じ方向であってもよい。この場合、絶縁テープ39aを超電導線材20に巻付けた場合に、当該絶縁テープ39aの間において超電導線材20の表面が露出した領域を形成しておき、当該表面が露出した領域を覆うように他の絶縁テープ39bを(先に巻付けた絶縁テープ39aに沿って)巻付けることで、1本の絶縁テープ39aのみで超電導線材20を被覆する場合より速いスピードで絶縁被覆付超電導線材30を製造することができる。
【0066】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39aを巻付けるラッピング工程(S30)における絶縁テープ39aの超電導線材20に対する巻付け方向と、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)における他の絶縁テープ39bの超電導線材20に対する巻付け方向とが異なる方向であってもよい。この場合、絶縁テープ39aと他の絶縁テープ39bとが交差(クロス)した状態で超電導線材20に巻付けられるので、絶縁テープ39aおよび他の絶縁テープ39bの巻付け時のピッチを調整することで、超電導線材20の表面における任意の位置に、当該超電導線材20の表面が露出した部分(開口部40)を形成することができる。
【0067】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、他の絶縁テープ39bが一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた他の絶縁テープ39bの隣接する端面同士が接触する形態となるように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲に他の絶縁テープ39bを巻付けてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bによって、先に絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面を確実に覆うことができる。
【0068】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面の一部が露出するように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲に他の絶縁テープ39bを巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた(積層された)絶縁被覆付超電導線材30の配置を接着剤で固定する際に、絶縁テープ39aを先に巻付けられた超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を他の絶縁テープ39bと超電導線材20(または絶縁テープ39a)との間に容易に浸透させることができる。このため、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を用いて形成されたコイルにおいて、接着剤を用いてその形状を確実に維持することができる。
【0069】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材20の幅は10mm以下であってもよい。この場合、通常入手できる超電導線材20の幅は10mm以下であることから、一般的な超電導線材を用いて絶縁被覆付超電導線材を得ることができる。
【0070】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材を準備する工程(S10)では、複数の超電導線材20を準備してもよい。具体的には、図1のラッピング装置1においてサプライ部2に複数の線材テープリール21を配置する。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、複数の超電導線材20を積層した積層体の周囲に絶縁テープ39、39a、39bを巻付けてもよい。このようにすれば、複数の超電導線材20を積層した積層体を用いた絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。
【0071】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材20として、基材中に酸化物超電導体からなる複数の芯線が配置された線材、酸化物超電導体を含む超電導線材を複数本束ねた線材、および酸化物超電導体を含む超電導線材に補強部材を接続した線材からなる群から選択される1つを用いてもよい。この場合、上述のような様々な線材に絶縁被覆を付加した絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。
【0072】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの幅は10mm以下であってもよい。また、異なる観点から言えば、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの幅は超電導線材20の幅以下であってもよい。この場合、超電導線材20に絶縁テープ39、39aを螺旋状に巻付けるときに、巻付け角度θ(図3に示す超電導線材20の側面と絶縁テープ39の延在方向とのなす角度)を変更することで、絶縁テープ39が超電導線材20の外周を完全に覆う状態から、絶縁テープ39の間において超電導線材20の表面が露出した状態まで、比較的簡単に絶縁テープ39の被覆状況を制御することができる。なお、絶縁テープ39の幅は3mm以上、より好ましくは4mm以上としてもよい。
【0073】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの幅は10mm以下であってもよい。また、異なる観点から言えば、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの幅は超電導線材20の幅以下であってもよい。この場合、超電導線材20に他の絶縁テープ39bを螺旋状に巻付けるときに、図3に示した巻付け角度θを変更することで、先に絶縁テープ39aが巻付けられた超電導線材20の外周を他の絶縁テープ39bが完全に覆う状態から、他の絶縁テープ39bの間において、先に絶縁テープ39aが巻付けられた超電導線材20の表面が露出した状態まで、比較的簡単に他の絶縁テープ39bの被覆状況を制御することができる。なお、他の絶縁テープ39bの幅は3mm以上、より好ましくは4mm以上としてもよい。
【0074】
なお、上記のように絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅の上限の値を決定したのは、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅が上記上限値より広くなりすぎると、螺旋巻きができなくなるという理由による。また、上記のように絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅の下限の値を決定したのは、当該絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bは幅が広い母材としてのテープ(原反)を目的の幅にスリットすることにより製造されるが、当該絶縁テープ39、39a、および他の絶縁テープ39bの幅が狭すぎるとスリットができなくなるという理由による。
【0075】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープの体積抵抗率は1×1016Ωcm以上であってもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30の絶縁破壊電圧を十分高くすることができる。
【0076】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの体積抵抗率は1×1016Ωcm以上であってもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30の絶縁破壊電圧を十分高くすることができる。ここで、上記絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bを構成する材料としては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルなどの樹脂を用いることができる。なお、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの体積抵抗率の下限を上記のような数値としたのは、絶縁被覆付超電導線材30をコイル化して応用する際、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの体積抵抗率が上記下限値を下回ると当該テープにおいて絶縁破壊が起こり、コイルにダメージが発生する可能性が高くなる、という理由による。
【0077】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの一方の表面には接着剤層が形成されていてもよい。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、接着剤層を介して絶縁テープ39、39aが超電導線材20に接続されてもよい。この場合、絶縁テープ39、39aを超電導線材20に確実に固定することができるので、絶縁被覆付超電導線材30を取扱う際に、超電導線材20に対する絶縁テープ39、39aの位置がずれて当該超電導線材20の表面が露出する(絶縁被覆の絶縁性が劣化する)といった問題の発生を抑制できる。
【0078】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの一方の表面には他の接着剤層が形成されていてもよい。他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面に、他の接着剤層を介して他の絶縁テープ39bが接続されていてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bを超電導線材20(または先に巻付けられた絶縁テープ39a)に確実に固定することができるので、絶縁被覆付超電導線材30を取扱う際に、超電導線材20に対する他の絶縁テープ39bの位置がずれて絶縁被覆の絶縁性が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
【0079】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)において、超電導線材20の表面を露出させる露出部(図3のダイス56とダイス59との間で超電導線材20が露出している部分)が形成された案内部材60により超電導線材20は案内されてもよい。超電導線材20の延在方向における露出部の幅は10mm以上50mm以下であってもよい。この場合、露出部における超電導線材20の揺れを抑制しつつ、絶縁テープ39、39aの巻付けを行なうことができる。
【0080】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)において、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面を露出させる他の露出部が形成された他の案内部材(第2ラッピング部32における案内部材60)により、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20は案内されていてもよい。絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の延在方向における他の露出部の幅は10mm以上50mm以下であってもよい。この場合、露出部における超電導線材20の揺れを抑制しつつ、他の絶縁テープ39bの巻付けを行なうことができる。
【0081】
なお、露出部の幅の下限を上記のような値としたのは、絶縁テープ39a(他の絶縁テープ39b)の幅が最大で10mm程度であり、案内部材60と絶縁テープ39a(他の絶縁テープ39b)との接触を確実に防止するためである。また、露出部の幅の上限を上記のような値としたのは、これ以上露出部の幅を広くすると超電導線材20の揺れが大きくなり、超電導線材20に当該揺れに起因する過大な応力が加わることに起因して当該超電導線材20の特性の劣化が起きる恐れがあるためである。
【0082】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)において、絶縁テープ39、39aの張力が50gf以上300gf以下に設定されていてもよい。この場合、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)により超電導線材20に過大な応力が加わることを避けることができる。このため、当該応力に起因して超電導線材20の特性が劣化する可能性を低減できる。
【0083】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)において、他の絶縁テープ39bの張力が50gf以上300gf以下に設定されていてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bを巻付ける工程により超電導線材20に過大な応力が加わることを避けることができる。このため、当該応力に起因して超電導線材20の特性が劣化する可能性を低減できる。
【0084】
なお、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力の下限値を上述のように規定したのは、上述した下限値以下に張力を設定すると、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bにおいて巻付け時にたるみなどが発生し、トラブルの原因となるためである。また、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力の上限値を上述のように規定したのは、上述した上限値以上に張力を設定すると、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの巻付け時に超電導線材20に加えられる応力が過大になり、当該超電導線材20の特性の劣化の原因となるためである。また、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力は、好ましくは80gf以上200gf以下である。
【0085】
この発明に従った絶縁被覆付超電導線材30は、絶縁被覆付酸化物超電導線材であって、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造される。この場合、超電導線材20の特性の劣化を起こすこと無く、絶縁被覆を形成できるので、良好な超電導特性の絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。また、上記絶縁被覆付超電導線材30は、絶縁破壊電圧が0.1kV以上であってもよい。
【0086】
(実施例)
本発明による絶縁被覆付超電導線材の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0087】
(試料)
超電導線材として、幅4.2mm、厚みが0.22mmであり、超電導体からなる芯線の数が55、銀比が1.7のビスマス系超電導線材を準備した。また、被覆材として用いる絶縁テープとしては、ポリイミドフィルムを用いた。当該ポリイミドフィルムの厚みは12.5μm、幅は4mmとした。なお、このポリイミドフィルムにおいては、熱可塑性の接着剤は特に表面に配置しなかった。そして、当該ポリイミドフィルムからなる絶縁テープを図1に示したラッピング装置1の第1ラッピング部31および第2ラッピング部32のそれぞれに配置した。絶縁テープの巻付け方法としては、それぞれ同じ方向に斜めに巻付けるようにした。そして、図9に示すような絶縁被覆付超電導線材を製造した。
【0088】
(製造条件)
上述した超電導線材を7本準備し、実施例1〜実施例6と比較例の試料とした。そして、各試料について、以下の表1に示すように第1ラッピング部31における絶縁テープのフィルムの張力および第2ラッピング部32における2枚目のフィルムの張力をそれぞれ変更した上で、ラッピング前における超電導線材の臨界電流(Ic)に対する、ラッピング後の線材の臨界電流(Ic)の比率を測定した。なお、図3に示したダイス56、59の間の間隔は25mmとした。
【0089】
(結果)
実験の結果を以下の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1からもわかるように、本発明の実施例の試料においては、ラッピング前後においてIcの変化はなく、ラッピングによってIcが劣化するという問題は発生しなかった。一方、比較例のように、絶縁テープの張力を350gfとした場合には、ラッピング後にIcが低下していた。
【0092】
表1からもわかるように、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法のように絶縁テープの巻付け時の張力を適正に制御することができれば、ラッピングによる超電導線材の特性の劣化を避けることができた。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、酸化物超電導線材に絶縁被覆を形成する工程に有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に従ったラッピング装置を示す模式図である。
【図2】図1に示したラッピング装置の第1ラッピング部の構成を示す斜視模式図である。
【図3】図2に示した第1ラッピング部の部分拡大模式図である。
【図4】図2に示した第1ラッピング部の構成を簡単に説明するための模式図である。
【図5】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材を示す断面模式図である。
【図7】図6の線分VII−VIIにおける断面模式図である。
【図8】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す断面模式図である。
【図9】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図10】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図11】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図12】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0096】
1 ラッピング装置、2 サプライ部、3 ラッピング機構部、4 計測部、5 スパークテスタ、6 制御部、7 キャプスタン、8 計測部、9 計尺計、10 高さセンサ、11 巻取部、20 超電導線材、21 線材テープリール、30 絶縁被覆付超電導線材、31 第1ラッピング部、32 第2ラッピング部、33 静電気除去装置、34 側壁、35〜37 第1〜第3ベース体、38 絶縁テープリール、39,39a,39b 絶縁テープ、40 開口部、41 第1計測部、42 第2計測部、50,51 絶縁テープガイド、52〜54 ローラ、55 位置可変ローラ、56,59 ダイス、57,58 矢印、60 案内部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法に関し、より特定的には、高能率で絶縁被覆を行なうことができる超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導線材の一例である酸化物超電導線材をコイル状に成形してマグネットを形成する場合、酸化物超電導線材同士の短絡を防止するため、当該酸化物超電導線材を絶縁被覆することが知られている(たとえば、特開平6−234959号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)参照)。特許文献1では、超電導線材の外周に、絶縁テープをスパイラル状に巻付けることが開示されている。
【特許文献1】特開平6−234959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような絶縁テープを外周に巻付けた絶縁被覆付超電導線材を形成する工程としては、たとえば、絶縁テープを巻いたリールが超電導線材の周囲を周回しながら、当該リールから払出された絶縁テープが超電導線材の外周に巻付けられるという工程が考えられる。しかし、このような工程では、絶縁テープを巻いたリールが超電導線材の周囲を周回するため、絶縁テープの巻付け速度を上げることに限界があった。すなわち、絶縁テープを巻いたリールを高速で周回させると、遠心力により当該リールに大きな力が加わるため、リールや当該リールを支持する部材などの機械的強度の制約から、リールの周回速度には限界があった。このため、絶縁被覆付超電導線材を形成する工程の効率を向上させることには限界があった。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、高能率で絶縁被覆を形成することが可能な超電導線材ラッピング装置および絶縁被覆付超電導線材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った超電導線材ラッピング装置は、サプライ部と、ラッピング部と、巻取部とを備える。サプライ部は超電導線材を払い出す。ラッピング部は、サプライ部から払出された超電導線材の外周に絶縁テープを巻付ける。巻取部は、ラッピング部において絶縁テープを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付超電導線材を巻取る。ラッピング部は、絶縁テープ保持部材と、案内部材と、巻付部材とを含む。絶縁テープ保持部材は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する。案内部材は、絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように線材を案内する。巻付部材は、絶縁テープ保持部材から払出された絶縁テープを、線材の周囲に巻付ける。
【0006】
このようにすれば、超電導線材は絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように配置されているので、超電導線材に絶縁テープを巻付ける場合に、当該絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回するといったことはない。つまり、絶縁テープ保持部材の配置は、当該絶縁テープ保持部材の開口部を超電導線材が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープ保持部材の機械的強度などにより絶縁テープの超電導線材への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合より、超電導線材への絶縁テープの巻付け速度を向上させることができる。この結果、超電導線材への絶縁テープの巻付け工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材として酸化物超電導線材を用いる場合には、当該酸化物超電導線材の周囲に絶縁テープを巻付けて絶縁被覆付酸化物超電導線材を形成する工程を高能率で実施することができる。
【0007】
この発明に従った絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、超電導線材を準備する工程を実施する。そして、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材を準備する工程を実施する。絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように、超電導線材を配置するとともに、超電導線材の周囲に、絶縁テープ保持部材から払出された絶縁テープを巻付ける工程を実施する。
【0008】
このようにすれば、超電導線材は絶縁テープ保持部材の開口部を貫通するように配置されているので、絶縁テープを巻付ける工程において、当該絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回することはない。つまり、絶縁テープ保持部材の配置は、当該絶縁テープ保持部材の開口部を超電導線材が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープ保持部材の機械的強度などにより絶縁テープの超電導線材への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープ保持部材が超電導線材の周囲を周回する場合より、超電導線材への絶縁テープの巻付け速度を向上させることができる。この結果、絶縁テープを巻付ける工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材の周囲に絶縁テープを巻付けた絶縁被覆付超電導線材を高能率で製造できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化物超電導線材への絶縁テープの巻き付けを高能率で実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0011】
図1は、本発明に従ったラッピング装置を示す模式図である。図2は、図1に示したラッピング装置の第1ラッピング部の構成を示す斜視模式図である。図3は、図2に示した第1ラッピング部の部分拡大模式図である。図4は、図2に示した第1ラッピング部の構成を簡単に説明するための模式図である。図1〜図4を参照して本発明によるラッピング装置1を説明する。
【0012】
図1〜図4に示すように、本発明によるラッピング装置1は、サプライ部2と、ラッピング機構部3と、計測部4と、スパークテスタ5と、制御部6と、キャプスタン7と、幅・厚み計測部8と、計尺計9と、高さセンサ10と、巻取部11とを備える。サプライ部2には、絶縁テープを被覆する対象である超電導線材をラッピング機構部3へと供給するための線材テープリール21が複数個(図1においては5個)設置されている。
【0013】
ラッピング機構部3には、ベース材の上に第1ラッピング部31が配置されている。そして、第1ラッピング部31の下流側には、第2ラッピング部32が配置されている。この第1および第2ラッピング部31、32の構成は後述する。
【0014】
そして、第1ラッピング部31の下流側には超電導線材の表面に被覆された絶縁テープのピッチやギャップを計測するためのカメラを含む第1計測部41が設置されている。また、ラッピング機構部3に隣接して第2計測部42が配置されている。第2計測部42は、第1計測部41と同様に超電導線材の表面に被覆された絶縁テープのピッチやギャップを計測するためのカメラを含んでいる。この第1計測部41および第2計測部42から計測部4が構成される。この計測部4により、超電導線材の全長に渡って絶縁テープのピッチやギャップの計測を行なうことができる。
【0015】
第2計測部42に隣接して(下流側に)スパークテスタ5が配置されている。このスパークテスタ5は、絶縁テープが被覆された超電導線材について、絶縁破壊検査を行なうためのものである。このスパークテスタ5により、絶縁テープが被覆された超電導線材の全長に渡って絶縁破壊検査を行なうことができる。なお、スパークテスタ5の構成としては、絶縁破壊検査を行なうことが可能な任意の検査装置を用いることができる。
【0016】
スパークテスタ5と隣接してキャプスタン7が配置されている。キャプスタン7は、超電導線材20の搬送速度や張力を調整するためのものである。キャプスタン7の構成としては、超電導線材20の搬送速度や張力を調整することができれば、任意の構成を用いることができる。たとえば、キャプスタン7の構造として、モータなどの駆動源に接続された回転可能なローラで超電導線材20を挟むような構成としてもよい。
【0017】
キャプスタン7の下流側には、キャプスタン7に隣接して幅・厚み計測部8が配置されている。この幅・厚み計測部8では、絶縁テープが被覆された超電導線材の幅および厚みを計測している。幅・厚み計測部8の構成としては、超電導線材の幅および厚みを測定できれば任意の構成を採用することができる。
【0018】
この幅・厚み計測部8の下流側には、計尺計9が配置されている。この計尺計9は、処理された超電導線材の長さを計測している。計尺計9の構成としては、超電導線材の長さを測定できれば任意の構成を用いることができる。
【0019】
この計尺計9の下流側には、高さセンサ10が配置されている。高さセンサ10は、超電導線材20の位置(高さ)を計測している。高さセンサ10の構成としては、超電導線材20の位置が検出できれば任意の構成を作用することができる。たとえば、超電導線材20の位置の設定範囲を囲むようにガイド部材などが配置され、当該ガイド部材に超電導線材20が接触したことにより超電導線材20の高さが所定の高さになった(設定範囲の上限または下限に位置している)ことを検出するような構成としてもよい。
【0020】
そして、この高さセンサ10の下流側には巻取部11が配置されている。巻取部11では、絶縁テープが被覆された超電導線材を巻取るための巻取りリールが配置されている。当該巻取りリールは高さセンサ10の出力に応じて、油圧シリンダなどの移動部材により上下方向に移動可能になっている。
【0021】
また、ラッピング装置1には制御部6が設置されている。制御部6においては、ラッピング装置1の動作を制御するとともに、ラッピング装置1の動作に伴うプロセス条件を記憶している。具体的には、制御部6は、ラッピングされる超電導線材の条件や絶縁テープのラッピングに関する情報(データ)を記録する記録部と、ラッピング装置1の全体の動作を制御する動作制御部とを含む。記録部において記録するデータとしては、たとえば計測部4において測定される絶縁テープのピッチ、絶縁テープの間に隙間を形成するように当該絶縁テープを巻付ける場合には当該絶縁テープ間のギャップ、スパークテスタ5における検査結果、幅・厚み計測部8において測定した超電導線材20の幅および厚み、さらには計尺計9において測定された超電導線材20の長さなどのデータが記録される。なお、制御部6では、計測部4、スパークテスタ5などでの測定結果から、絶縁テープのピッチやギャップが乱れたり、絶縁テープを被覆した超電導線材20の絶縁破壊が検知されたりした場合には、ラッピング装置1の動作を停止するように制御する。
【0022】
次に、第1および第2ラッピング部31、32の構成を説明する。なお、第1および第2ラッピング部31、32は、それぞれ同様の構造を備えているため、第1ラッピング部31を代表としてその構成を説明する。
【0023】
図2〜図4に示すように、第1ラッピング部31はその中心部を超電導線材20が貫通するように超電導線材20の搬送路が設定されている。そして、この超電導線材20の搬送路を規定する案内部材60を中心軸として、第1〜第3ベース体35〜37と、これらの第1〜第3ベース体35〜37を貫通して互いに接続する支柱と、第2ベース体36に接続され、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けるためにガイドするローラ52〜54および位置可変ローラ55と、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体が設置されている。この回転体は第1ラッピング部31の側壁34に対して回転可能に支持されている。当該回転体は、たとえば側壁34の外側に配置されたモータなどの駆動部材により、回転可能になっている。
【0024】
絶縁テープリール38は、その中心部に形成された開口の中を超電導線材20が貫通するように配置されている。絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39はローラ52、絶縁テープガイド50、ローラ53、絶縁テープガイド51、ローラ54、および位置可変ローラ55を介して超電導線材20の外周へと巻付けられる。なお、位置可変ローラ55は、その位置を矢印58(図4参照)に示す方向に変化させることが可能なローラである。
【0025】
この絶縁テープ39の巻付けは、上述した回転体が超電導線材20の経路(搬送路)を中心軸として回転することにより行なわれる。なお、絶縁テープリール38の固定部にはパウダーブレーキが設置されている。このパウダーブレーキにより、絶縁テープリール38から巻戻される絶縁テープ39に加えられる張力を一定に保つことができる。具体的には、絶縁テープリール38における絶縁テープ39の径に応じて、当該絶縁テープリール38に加えられるトルクを調整することにより、絶縁テープ39の張力が一定に保たれる。また、位置可変ローラ55の超電導線材20に対する相対的な位置を変更する(たとえば図4の矢印58に示す方向に位置可変ローラ55の位置を変更する)ことにより、絶縁テープ39が超電導線材20に巻付く際の巻付き角度θ(図3参照)を変更可能になっている。具体的には、位置可変ローラ55の位置を変更することにより、超電導線材20に対する絶縁テープ39の巻付き角度θ(図3参照)をたとえば20°以上80°以下の範囲で調整することができる。
【0026】
また上述した回転体の回転方向は、図2に示す矢印57のように超電導線材20を中心として右回りおよび左回りのいずれの方向にも回転可能になっている。また、この第1ラッピング部31には、側壁に静電気除去装置33(図1参照)が設置されている。この静電気除去装置33では、超電導線材20および絶縁テープ39などの第1ラッピング部31内の部材における帯電量を検出する。そして、当該部材の帯電を打ち消すために反対の導電型のイオンを当該部材に吹付けることにより、当該部材の静電気を除去する。このようにして、静電気により絶縁テープ39が第1ラッピング部31の他の部材に吸着されることにより絶縁テープ39の張力が変動する、といった問題の発生を抑制できる。また、静電気除去装置33によって絶縁テープ39自体の静電気の帯電も抑制できるので、当該静電気に起因して絶縁テープ39に異物が吸着するといった問題の発生も抑制できる。
【0027】
図1に示したラッピング装置1においては、第2ラッピング部32の構成は基本的には第2ラッピング部31の構成と同様である。また、図1に示したラッピング装置1では、図2〜図4に示したような構成のラッピング部を3つ以上備えるようにしてもよい。また、この場合、図2〜図4に示したようなラッピング部と、当該ラッピング部の下流側に配置される第1計測部41との組を3組以上備えるようにしてもよい。
【0028】
なお、超電導線材20としては、たとえば線幅が2mm以上5mm以下、厚みが0.1mm以上2.0mm以下のテープ状線材を用いることができる。また、超電導線材20として、酸化物超電導体を含む酸化物超電導線材を用いることができる。また、図3に示すように、第1ラッピング部31において絶縁テープ39を超電導線材20へと巻付ける部分(超電導線材20が案内部材60から露出した部分)にて超電導線材20をガイドするためのダイス56、59の間の距離は、たとえば0mm越え100mm以下の範囲で調整可能になっている。なお、ダイス56、59には、超電導線材20の断面の寸法より若干大きな貫通穴が形成されており、当該貫通穴を超電導線材20が通って搬送されている。たとえば、ダイス56、59に形成される貫通穴の断面形状の寸法(高さおよび幅)は、超電導線材の断面の寸法(高さおよび幅)の1.1倍以上2.5倍以下に設定されている。また、絶縁テープリール38から巻戻される絶縁テープ39の張力はたとえば50gf以上300gf以下の範囲で調整可能になっている。
【0029】
次に、図1〜図4に示したラッピング装置1を用いた絶縁被覆付超電導線材の製造方法を説明する。図5は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。図5を参照して、絶縁被覆付の超電導線材の製造方法では、まず超電導線材準備工程(S10)を実施する。具体的には、サプライ部2において、超電導線材が巻かれた線材テープリール21を所定の位置に配置する。このとき、複数の超電導線材を積層した上で、当該積層された超電導線材の集合体(積層体)の外周を覆うように絶縁テープを被覆する場合には、サプライ部2において複数の線材テープリール21を配置する。
【0030】
次に絶縁テープ準備工程(S20)を実施する。具体的には、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32の所定の位置に図2および図4に示すように絶縁テープリール38を設置する。そして、当該絶縁テープリール38から絶縁テープ39を払出し図4に示すようにローラ52〜54、位置可変ローラ55、絶縁テープガイド50、51を介して絶縁テープ39を所定の位置にセットする。そして、サプライ部2の線材テープリール21から払出した超電導線材20の先端を、ラッピング装置1の超電導線材20の搬送路(流通パス)を通して巻取部11における巻取リールに巻付ける。そして、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32において、絶縁テープ39の先端を超電導線材20の表面に固定する。このようにしてラッピング工程を実施する準備が整う。
【0031】
次に、ラッピング工程(S30)を実施する。具体的には、巻取部11の巻取リールを回転させるとともにサプライ部2の線材テープリール21を回転させることにより、ラッピング装置1の内部を超電導線材20が通過するようにする。同時に、第1ラッピング部31および/または第2ラッピング部32において、図2に示した第1〜第3ベース体35〜37などからなる回転体が超電導線材20の流通パスを中心軸として回転する。この結果、当該超電導線材20の外周に絶縁テープ39が巻付けられる。
【0032】
そして、このように絶縁テープ39の巻付けを行なうと同時に、計測部4では超電導線材20に巻付けられた絶縁テープ39のピッチやギャップの計測を行なう。また、絶縁テープ39が超電導線材20の表面を完全に覆うように巻付けられる場合には、スパークテスタ5において絶縁破壊試験を実施する。また、静電気の発生に伴う絶縁テープ39の張力の変動を抑制するため、ラッピング機構部3においては静電気除去装置33を動作させる。また、キャプスタン7の作用によって超電導線材20の走行速度は一定に保たれる。また同時に、幅・厚み計測部8により、絶縁テープが巻付けられた超電導線材(絶縁被覆付超電導線材)の幅および厚みが計測される。さらに、計尺計9により、絶縁テープ39が巻付けられた超電導線材20(絶縁被覆付超電導線材)の長さが測定される。これらの測定結果は、制御部6に送信され当該制御部6の記憶装置内に記録される。
【0033】
そして、巻取部11の巻取リールに絶縁被覆付超電導線材が巻取られることにより、巻取リールでの絶縁被覆付超電導線材の巻取後の直径が大きくなる。この場合、高さセンサ10の出力に応じて当該絶縁被覆付超電導線材(または超電導線材20)のラッピング装置1中での高さ(搬送路の位置)がほぼ一定になるように、巻取リールの中心位置は徐々に下方へと下げられるように制御される。このようにして、超電導線材20の外周に絶縁テープ39を巻付けた絶縁被覆付超電導線材を得ることができる。
【0034】
図6は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材を示す断面模式図である。図7は、図6の線分VII−VIIにおける断面模式図である。図6および図7を参照して、図1に示したラッピング装置1を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材30を説明する。
【0035】
図6および図7に示すように、絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置を用いて製造され、テープ状の超電導線材20の外周を覆うように絶縁テープ39が螺旋状に巻付けられた構造となっている。図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30では、螺旋状に巻かれた絶縁テープ39が、互いにその端部が重なることなくかつ当該端部が突き合わされた状態で超電導線材20の外周を覆うように配置されている。また、図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30では、1枚の絶縁テープ39が螺旋状に(超電導線材20の外周面を露出させることなく)超電導線材20の外周を覆っている。このような構成は、図1に示したラッピング機構部3における第1ラッピング部31または第2ラッピング部32のいずれか一方のみを用いて超電導線材20の外周に絶縁テープ39を巻付けることにより実現できる。なお、図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30においては、絶縁テープ39の巻付けピッチをより狭めることで、隣接する絶縁テープ39の端部が重なった状態としてもよい。この場合、絶縁テープ39により超電導線材20の外周面を確実に被覆することができる。
【0036】
図8は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す断面模式図である。図8は図7に対応する。図8を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を説明する。
【0037】
図8に示した絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置を用いて製造されており、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、複数の(具体的には5枚の)超電導線材20を積層した積層体の外周を囲むように絶縁テープ39が配置されている点が異なる。このような構成は、図1に示したラッピング装置1において、サプライ部2に複数の(具体的には5つの)線材テープリール21を配置し、それぞれの線材テープリール21から超電導線材20を払出して積層した状態でラッピング装置1を通過させ、ラッピングを行なうことによる得ることができる。
【0038】
図9は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図9を参照して、絶縁被覆付超電導線材30の他の例を説明する。
【0039】
図9に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、超電導線材20の外周を覆う絶縁テープが二重に巻かれている点が異なる。具体的には、超電導線材20(図7参照)の外周に、まず1層目の絶縁テープ39aが螺旋状に巻付けられている。そして、さらに絶縁テープ39aの外周を覆うように、もう1つの絶縁テープ39bが同様に螺旋状に巻付けられている。このようにすれば、絶縁テープ39a、39bによって二重に絶縁被覆を形成しているので、絶縁被覆の絶縁性能をより向上させることができる。なお、このような二重の絶縁被覆は、図1に示したラッピング装置1において、第1および第2のラッピング部31、32のそれぞれで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20に巻付けることにより実現できる。
【0040】
図10は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図10を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材30の他の例を説明する。
【0041】
図10に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図6および図7に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、絶縁テープ39の間に開口部40が形成されるように絶縁テープ39が超電導線材20へと巻付けられている点が異なる。すなわち、開口部40では、超電導線材20の表面が露出した状態となっている。このようにすれば、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた絶縁被覆付超電導線材の配置を接着剤で固定する際に、確実に絶縁被覆付超電導線材30を固定できる。すなわち、絶縁テープを巻付けられた超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を絶縁テープ39と超電導線材20との間に容易に浸透させることができる。
【0042】
なお、このような絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31での絶縁テープ39の巻付けピッチを、当該絶縁テープ39の幅より十分大きくすることにより製造できる。
【0043】
図11は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図11を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材の他の例を説明する。
【0044】
図11に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図9に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、1層目の絶縁テープ39aの螺旋状に巻付けられた方向と、当該絶縁テープ39aの外周上に2層目として巻付けられた絶縁テープ39bの巻付け方向とが交差するように配置されている点が異なっている。このような構成は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31と第2ラッピング部32とで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20へ巻付けるとともに、超電導線材20に対する回転体の回転方向を逆向きにすることで実現できる。
【0045】
なお、絶縁テープ39a、39bは、それぞれ隣接する絶縁テープ同士が一部重なるように巻付けられていてもよいし、図11に示すように端面同士が突き合わされた状態となるように巻付けられていてもよい。また、絶縁テープ39aおよび絶縁テープ39bの一方のみが、超電導線材20の外周面を覆うように(開口部を形成しないように)超電導線材20に巻付けられていてもよい。この場合、絶縁テープ39aおよび絶縁テープ39bの他方は、たとえば図10に示すように開口部40を形成するように、十分大きなピッチで超電導線材20に巻付けられていてもよい。
【0046】
図12は、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。図12を参照して、本発明による絶縁被覆付超電導線材の他の例を説明する。
【0047】
図12に示した絶縁被覆付超電導線材30は、基本的には図11に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の構造を備えるが、絶縁テープ39a、39bのそれぞれが、隣接する部分の間に開口部40が形成されるように超電導線材20へ巻付けられている点が異なっている。すなわち、図12に示した絶縁被覆付超電導線材30では、当該絶縁被覆付超電導線材30の主表面のほぼ中央部に開口部40が複数形成された状態となっている。このようにしても、図10に示した絶縁被覆付超電導線材30と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、図12に示した絶縁被覆付超電導線材30は、図1に示したラッピング装置1において、第1ラッピング部31と第2ラッピング部32とで絶縁テープ39a、39bを超電導線材20へ巻付けるとともに、超電導線材20に対する回転体の回転方向を逆向きにし、かつ、絶縁テープ39a、39bの巻付けピッチを、当該絶縁テープ39a、39bの幅より十分大きくすることで実現できる。
【0049】
また、上述した図6〜図12に示した絶縁被覆付超電導線材30においては、絶縁テープ39、39a、39bの超電導線材20側の面に接着剤層を配置しておいてもよい。当該接着剤層としては、たとえば熱可塑性接着剤の層を形成してもよい。
【0050】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0051】
この発明に従ったラッピング装置1は、超電導線材ラッピング装置であって、サプライ部2と、ラッピング部としてのラッピング機構部3と、巻取部11とを備える。サプライ部2は超電導線材20を払い出す。ラッピング機構部3は、サプライ部2から払出された超電導線材20の外周に絶縁テープ39、39a、39bを巻付ける。巻取部11は、ラッピング機構部3において絶縁テープ39、39a、39bを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付線材(絶縁被覆付超電導線材30)を巻取る。ラッピング機構部3は、絶縁テープ保持部材(絶縁テープリール38)と、案内部材60と、巻付部材(図2〜図4に示した第1〜第3ベース体35〜37と、これらの第1〜第3ベース体35〜37を貫通して互いに接続する支柱と、第2ベース体36に接続され、絶縁テープリール38を保持する保持部と、絶縁テープリール38から巻戻された絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けるためにガイドするローラ52〜54および位置可変ローラ55と、絶縁テープガイド50、51とからなる回転体)、とを含む。絶縁テープリール38は、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する。案内部材60は、絶縁テープリール38の開口部を貫通するように超電導線材20を案内する。巻付部材としての上記回転体は、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を、超電導線材20の周囲に巻付ける。
【0052】
このようにすれば、超電導線材20は絶縁テープリール38の開口部を貫通するように配置されているので、超電導線材20に絶縁テープ39を巻付ける場合に、当該絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回するといったことはない。つまり、絶縁テープリール38の配置は、当該絶縁テープリール38の開口部を超電導線材20が貫通する状態で維持されるので、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープリール38の機械的強度などにより絶縁テープ39の超電導線材20への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合より、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け速度を向上させることができる。この結果、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け工程を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材20として酸化物超電導線材を用いる場合には、当該酸化物超電導線材の周囲に絶縁テープ39を巻付けて絶縁被覆付酸化物超電導線材を形成する工程を高能率で実施することができる。
【0053】
上記ラッピング装置1において、ラッピング機構部3は、絶縁テープリール38から払出される絶縁テープ39の張力を調整する張力調整部材(パウダーブレーキ)を含んでいてもよい。この場合、絶縁テープ39の張力を所定の範囲に入るように制御することが可能となる。このため、絶縁テープ39を超電導線材20に巻付ける場合に、当該絶縁テープ39の張力が過大になって超電導線材20に過剰な応力が加わることを抑制できる。この結果、当該過剰な応力に起因して超電導線材20の特性が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
【0054】
上記ラッピング装置1において、ラッピング機構部3は、図2〜図4に示すように超電導線材20に対する絶縁テープ39の巻付け角度θを変更する巻付け角度変更部材(位置可変ローラ55)を含んでいてもよい。位置可変ローラ55は、絶縁テープ39を案内するローラであって、上記超電導線材20の延在方向に沿って超電導線材20に対する相対的な位置を変更可能なローラであってもよい。この場合、超電導線材20に巻付ける絶縁テープ39の巻付け角度θを任意に変更することができるため、絶縁テープ39の巻付け状態を任意に変更することができる。
【0055】
上記ラッピング装置1では、超電導線材20として酸化物超電導線材に絶縁テープ39を巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付酸化物超電導線材を高能率で製造することができる。また、上記ラッピング装置1においては、ラッピング機構部3が複数形成されていてもよい。この場合、超電導線材20に複数の絶縁テープ39a、39bが積層した積層構造の絶縁被覆を形成することができる。
【0056】
上記ラッピング装置1において、案内部材60には、超電導線材20の表面を露出させる露出部(図3のダイス56とダイス59との間で超電導線材20が露出している部分)が形成されていてもよい。上記回転体は、露出部において露出している超電導線材20の部分において絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。超電導線材20の延在方向における露出部の幅は変更可能になっていてもよい。この場合、絶縁テープ39を巻付けるための超電導線材20の露出部の幅を任意に変更することができるので、露出部における超電導線材20の振動などを抑制して絶縁テープ39の巻付け状態を良好に保つように、当該幅を設定することができる。
【0057】
この発明に従った絶縁被覆付酸化物超電導線材の製造方法は、絶縁被覆つき超電導線材の製造方法であって、酸化物超電導線材を準備する工程(超電導線材準備工程(S10))を実施する。そして、開口部を有し、当該開口部を囲むように絶縁テープ39を円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材(絶縁テープリール38)を準備する工程(絶縁テープ準備工程(S20))を実施する。絶縁テープリール38の開口部を貫通するように、超電導線材20を配置するとともに、超電導線材20の周囲に、絶縁テープリール38から払出された絶縁テープ39を巻付ける工程(ラッピング工程(S30))を実施する。
【0058】
このようにすれば、酸化物超電導線材(超電導線材20)は絶縁テープリール38の開口部を貫通するように配置されているので、絶縁テープ39を巻付けるラッピング工程(S30)において、当該絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回することはない。つまり、絶縁テープリール38の配置は、当該絶縁テープリール38の開口部を超電導線材20が貫通する状態で維持される。したがって、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合のように、当該絶縁テープリール38の機械的強度などにより絶縁テープ39の超電導線材20への巻付け速度が制限を受けることは無い。このため、絶縁テープリール38が超電導線材20の周囲を周回する場合より、超電導線材20への絶縁テープ39の巻付け速度を向上させることができる。この結果、絶縁テープ39を巻付けるラッピング工程(S30)を高能率で実施することができる。したがって、超電導線材20の周囲に絶縁テープ39を巻付けた絶縁被覆付超電導線材30を高能率で製造できる。
【0059】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、超電導線材20の延在方向において、絶縁テープリール38に対する超電導線材20の相対的な位置を変更しながら絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に螺旋状に巻付ける。この場合、超電導線材20を絶縁テープリール38に対して相対的に移動させながら、連続的に絶縁テープ39を超電導線材20に巻付けることができる。このため、絶縁被覆付超電導線材30の製造効率をより向上させることができる。
【0060】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39が一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた絶縁テープ39の隣接する端面同士が接触する形態となるように、絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。この場合、超電導線材20の外周を絶縁テープ39で確実に覆うことができる。
【0061】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、超電導線材20の表面の一部が露出するように、絶縁テープ39を超電導線材20の周囲に巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた(積層された)絶縁被覆付超電導線材30の配置を接着剤で固定する際に、超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を絶縁テープ39と超電導線材20との間に容易に浸透させることができる。このため、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を用いて形成されたコイルにおいて、接着剤を用いてその形状を確実に維持することができる。
【0062】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、図1のラッピング装置1における第2ラッピング部32において、他の開口部を有し、当該他の開口部を囲むように他の絶縁テープ39bを円周状に巻付けて保持する他の絶縁テープ保持部材(他の絶縁テープリール)を準備する工程(絶縁テープ準備工程(S20))を実施してもよい。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)の後、他の絶縁テープリールの他の開口部を貫通するように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20を配置するとともに、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲を囲むように螺旋状に、他の絶縁テープリールから払出された他の絶縁テープ39bを巻付ける工程を実施してもよい。
【0063】
この場合、図9などに示すように、絶縁テープ39aと他の絶縁テープ39bとの2つの絶縁テープを用いて、超電導線材20の絶縁被覆を構成することができる。例えば、超電導線材20の外周を1層目の絶縁被覆として絶縁テープ39aで覆い、その後、さらに他の絶縁テープ39bにより2層目の絶縁被覆を形成することができる。
【0064】
また、異なる方法として、以下のような方法を採用することもできる。すなわち、1回目の被覆工程としての絶縁テープ39aを巻付ける工程において、超電導線材20の外周に螺旋状に絶縁テープ39aを巻付ける。このとき、螺旋状に巻かれた絶縁テープ39aの巻きのピッチを当該絶縁テープ39aの幅より十分大きく(好ましくは絶縁テープの幅の2倍に)しておき、巻かれた絶縁テープ39aの間から超電導線材20の表面が露出した状態とする。そして、2回目の被覆工程としての他の絶縁テープ39bを巻付ける工程において、上記超電導線材20の表面が露出した部分を他の絶縁テープ39bで覆うように、当該他の絶縁テープ39bを巻付ける。このようにすれば、絶縁テープ39a、39bの巻付け速度が一定であると仮定した場合、1回目の被覆工程のみで超電導線材20の外周全体を絶縁テープ39aで覆う場合より、最大2倍のスピードで絶縁被覆付超電導線材30を製造することができる。
【0065】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39aを巻付けるラッピング工程(S30)における絶縁テープ39aの超電導線材20に対する巻付け方向と、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)における他の絶縁テープ39bの超電導線材20に対する巻付け方向とが同じ方向であってもよい。この場合、絶縁テープ39aを超電導線材20に巻付けた場合に、当該絶縁テープ39aの間において超電導線材20の表面が露出した領域を形成しておき、当該表面が露出した領域を覆うように他の絶縁テープ39bを(先に巻付けた絶縁テープ39aに沿って)巻付けることで、1本の絶縁テープ39aのみで超電導線材20を被覆する場合より速いスピードで絶縁被覆付超電導線材30を製造することができる。
【0066】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39aを巻付けるラッピング工程(S30)における絶縁テープ39aの超電導線材20に対する巻付け方向と、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)における他の絶縁テープ39bの超電導線材20に対する巻付け方向とが異なる方向であってもよい。この場合、絶縁テープ39aと他の絶縁テープ39bとが交差(クロス)した状態で超電導線材20に巻付けられるので、絶縁テープ39aおよび他の絶縁テープ39bの巻付け時のピッチを調整することで、超電導線材20の表面における任意の位置に、当該超電導線材20の表面が露出した部分(開口部40)を形成することができる。
【0067】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、他の絶縁テープ39bが一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた他の絶縁テープ39bの隣接する端面同士が接触する形態となるように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲に他の絶縁テープ39bを巻付けてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bによって、先に絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面を確実に覆うことができる。
【0068】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面の一部が露出するように、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の周囲に他の絶縁テープ39bを巻付けてもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30をコイル状に巻く場合であって、巻かれた(積層された)絶縁被覆付超電導線材30の配置を接着剤で固定する際に、絶縁テープ39aを先に巻付けられた超電導線材20の表面が露出した部分から、当該接着剤を他の絶縁テープ39bと超電導線材20(または絶縁テープ39a)との間に容易に浸透させることができる。このため、本発明による絶縁被覆付超電導線材30を用いて形成されたコイルにおいて、接着剤を用いてその形状を確実に維持することができる。
【0069】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材20の幅は10mm以下であってもよい。この場合、通常入手できる超電導線材20の幅は10mm以下であることから、一般的な超電導線材を用いて絶縁被覆付超電導線材を得ることができる。
【0070】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材を準備する工程(S10)では、複数の超電導線材20を準備してもよい。具体的には、図1のラッピング装置1においてサプライ部2に複数の線材テープリール21を配置する。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、複数の超電導線材20を積層した積層体の周囲に絶縁テープ39、39a、39bを巻付けてもよい。このようにすれば、複数の超電導線材20を積層した積層体を用いた絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。
【0071】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、超電導線材20として、基材中に酸化物超電導体からなる複数の芯線が配置された線材、酸化物超電導体を含む超電導線材を複数本束ねた線材、および酸化物超電導体を含む超電導線材に補強部材を接続した線材からなる群から選択される1つを用いてもよい。この場合、上述のような様々な線材に絶縁被覆を付加した絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。
【0072】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの幅は10mm以下であってもよい。また、異なる観点から言えば、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの幅は超電導線材20の幅以下であってもよい。この場合、超電導線材20に絶縁テープ39、39aを螺旋状に巻付けるときに、巻付け角度θ(図3に示す超電導線材20の側面と絶縁テープ39の延在方向とのなす角度)を変更することで、絶縁テープ39が超電導線材20の外周を完全に覆う状態から、絶縁テープ39の間において超電導線材20の表面が露出した状態まで、比較的簡単に絶縁テープ39の被覆状況を制御することができる。なお、絶縁テープ39の幅は3mm以上、より好ましくは4mm以上としてもよい。
【0073】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの幅は10mm以下であってもよい。また、異なる観点から言えば、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの幅は超電導線材20の幅以下であってもよい。この場合、超電導線材20に他の絶縁テープ39bを螺旋状に巻付けるときに、図3に示した巻付け角度θを変更することで、先に絶縁テープ39aが巻付けられた超電導線材20の外周を他の絶縁テープ39bが完全に覆う状態から、他の絶縁テープ39bの間において、先に絶縁テープ39aが巻付けられた超電導線材20の表面が露出した状態まで、比較的簡単に他の絶縁テープ39bの被覆状況を制御することができる。なお、他の絶縁テープ39bの幅は3mm以上、より好ましくは4mm以上としてもよい。
【0074】
なお、上記のように絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅の上限の値を決定したのは、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅が上記上限値より広くなりすぎると、螺旋巻きができなくなるという理由による。また、上記のように絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの幅の下限の値を決定したのは、当該絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bは幅が広い母材としてのテープ(原反)を目的の幅にスリットすることにより製造されるが、当該絶縁テープ39、39a、および他の絶縁テープ39bの幅が狭すぎるとスリットができなくなるという理由による。
【0075】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープの体積抵抗率は1×1016Ωcm以上であってもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30の絶縁破壊電圧を十分高くすることができる。
【0076】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの体積抵抗率は1×1016Ωcm以上であってもよい。この場合、絶縁被覆付超電導線材30の絶縁破壊電圧を十分高くすることができる。ここで、上記絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bを構成する材料としては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルなどの樹脂を用いることができる。なお、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの体積抵抗率の下限を上記のような数値としたのは、絶縁被覆付超電導線材30をコイル化して応用する際、絶縁テープ39、39aおよび他の絶縁テープ39bの体積抵抗率が上記下限値を下回ると当該テープにおいて絶縁破壊が起こり、コイルにダメージが発生する可能性が高くなる、という理由による。
【0077】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、絶縁テープ39、39aの一方の表面には接着剤層が形成されていてもよい。絶縁テープを巻付けるラッピング工程(S30)では、接着剤層を介して絶縁テープ39、39aが超電導線材20に接続されてもよい。この場合、絶縁テープ39、39aを超電導線材20に確実に固定することができるので、絶縁被覆付超電導線材30を取扱う際に、超電導線材20に対する絶縁テープ39、39aの位置がずれて当該超電導線材20の表面が露出する(絶縁被覆の絶縁性が劣化する)といった問題の発生を抑制できる。
【0078】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法において、他の絶縁テープ39bの一方の表面には他の接着剤層が形成されていてもよい。他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)では、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面に、他の接着剤層を介して他の絶縁テープ39bが接続されていてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bを超電導線材20(または先に巻付けられた絶縁テープ39a)に確実に固定することができるので、絶縁被覆付超電導線材30を取扱う際に、超電導線材20に対する他の絶縁テープ39bの位置がずれて絶縁被覆の絶縁性が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
【0079】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)において、超電導線材20の表面を露出させる露出部(図3のダイス56とダイス59との間で超電導線材20が露出している部分)が形成された案内部材60により超電導線材20は案内されてもよい。超電導線材20の延在方向における露出部の幅は10mm以上50mm以下であってもよい。この場合、露出部における超電導線材20の揺れを抑制しつつ、絶縁テープ39、39aの巻付けを行なうことができる。
【0080】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)において、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の表面を露出させる他の露出部が形成された他の案内部材(第2ラッピング部32における案内部材60)により、絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20は案内されていてもよい。絶縁テープ39aを周囲に巻付けられた超電導線材20の延在方向における他の露出部の幅は10mm以上50mm以下であってもよい。この場合、露出部における超電導線材20の揺れを抑制しつつ、他の絶縁テープ39bの巻付けを行なうことができる。
【0081】
なお、露出部の幅の下限を上記のような値としたのは、絶縁テープ39a(他の絶縁テープ39b)の幅が最大で10mm程度であり、案内部材60と絶縁テープ39a(他の絶縁テープ39b)との接触を確実に防止するためである。また、露出部の幅の上限を上記のような値としたのは、これ以上露出部の幅を広くすると超電導線材20の揺れが大きくなり、超電導線材20に当該揺れに起因する過大な応力が加わることに起因して当該超電導線材20の特性の劣化が起きる恐れがあるためである。
【0082】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)において、絶縁テープ39、39aの張力が50gf以上300gf以下に設定されていてもよい。この場合、絶縁テープ39、39aを巻付けるラッピング工程(S30)により超電導線材20に過大な応力が加わることを避けることができる。このため、当該応力に起因して超電導線材20の特性が劣化する可能性を低減できる。
【0083】
上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法では、他の絶縁テープ39bを巻付けるラッピング工程(S30)において、他の絶縁テープ39bの張力が50gf以上300gf以下に設定されていてもよい。この場合、他の絶縁テープ39bを巻付ける工程により超電導線材20に過大な応力が加わることを避けることができる。このため、当該応力に起因して超電導線材20の特性が劣化する可能性を低減できる。
【0084】
なお、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力の下限値を上述のように規定したのは、上述した下限値以下に張力を設定すると、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bにおいて巻付け時にたるみなどが発生し、トラブルの原因となるためである。また、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力の上限値を上述のように規定したのは、上述した上限値以上に張力を設定すると、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの巻付け時に超電導線材20に加えられる応力が過大になり、当該超電導線材20の特性の劣化の原因となるためである。また、絶縁テープ39、39aまたは他の絶縁テープ39bの張力は、好ましくは80gf以上200gf以下である。
【0085】
この発明に従った絶縁被覆付超電導線材30は、絶縁被覆付酸化物超電導線材であって、上記絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造される。この場合、超電導線材20の特性の劣化を起こすこと無く、絶縁被覆を形成できるので、良好な超電導特性の絶縁被覆付超電導線材30を得ることができる。また、上記絶縁被覆付超電導線材30は、絶縁破壊電圧が0.1kV以上であってもよい。
【0086】
(実施例)
本発明による絶縁被覆付超電導線材の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0087】
(試料)
超電導線材として、幅4.2mm、厚みが0.22mmであり、超電導体からなる芯線の数が55、銀比が1.7のビスマス系超電導線材を準備した。また、被覆材として用いる絶縁テープとしては、ポリイミドフィルムを用いた。当該ポリイミドフィルムの厚みは12.5μm、幅は4mmとした。なお、このポリイミドフィルムにおいては、熱可塑性の接着剤は特に表面に配置しなかった。そして、当該ポリイミドフィルムからなる絶縁テープを図1に示したラッピング装置1の第1ラッピング部31および第2ラッピング部32のそれぞれに配置した。絶縁テープの巻付け方法としては、それぞれ同じ方向に斜めに巻付けるようにした。そして、図9に示すような絶縁被覆付超電導線材を製造した。
【0088】
(製造条件)
上述した超電導線材を7本準備し、実施例1〜実施例6と比較例の試料とした。そして、各試料について、以下の表1に示すように第1ラッピング部31における絶縁テープのフィルムの張力および第2ラッピング部32における2枚目のフィルムの張力をそれぞれ変更した上で、ラッピング前における超電導線材の臨界電流(Ic)に対する、ラッピング後の線材の臨界電流(Ic)の比率を測定した。なお、図3に示したダイス56、59の間の間隔は25mmとした。
【0089】
(結果)
実験の結果を以下の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1からもわかるように、本発明の実施例の試料においては、ラッピング前後においてIcの変化はなく、ラッピングによってIcが劣化するという問題は発生しなかった。一方、比較例のように、絶縁テープの張力を350gfとした場合には、ラッピング後にIcが低下していた。
【0092】
表1からもわかるように、本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法のように絶縁テープの巻付け時の張力を適正に制御することができれば、ラッピングによる超電導線材の特性の劣化を避けることができた。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、酸化物超電導線材に絶縁被覆を形成する工程に有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に従ったラッピング装置を示す模式図である。
【図2】図1に示したラッピング装置の第1ラッピング部の構成を示す斜視模式図である。
【図3】図2に示した第1ラッピング部の部分拡大模式図である。
【図4】図2に示した第1ラッピング部の構成を簡単に説明するための模式図である。
【図5】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材を示す断面模式図である。
【図7】図6の線分VII−VIIにおける断面模式図である。
【図8】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す断面模式図である。
【図9】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図10】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図11】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【図12】本発明による絶縁被覆付超電導線材の製造方法を用いて製造された絶縁被覆付超電導線材の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0096】
1 ラッピング装置、2 サプライ部、3 ラッピング機構部、4 計測部、5 スパークテスタ、6 制御部、7 キャプスタン、8 計測部、9 計尺計、10 高さセンサ、11 巻取部、20 超電導線材、21 線材テープリール、30 絶縁被覆付超電導線材、31 第1ラッピング部、32 第2ラッピング部、33 静電気除去装置、34 側壁、35〜37 第1〜第3ベース体、38 絶縁テープリール、39,39a,39b 絶縁テープ、40 開口部、41 第1計測部、42 第2計測部、50,51 絶縁テープガイド、52〜54 ローラ、55 位置可変ローラ、56,59 ダイス、57,58 矢印、60 案内部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材を払い出すサプライ部と、
前記サプライ部から払出された前記超電導線材の外周に絶縁テープを巻付けるラッピング部と、
前記ラッピング部において絶縁テープを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付超電導線材を巻取る巻取部とを備え、
前記ラッピング部は、
開口部を有し、前記開口部を囲むように前記絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材と、
前記絶縁テープ保持部材の前記開口部を貫通するように前記超電導線材を案内する案内部材と、
前記絶縁テープ保持部材から払出された前記絶縁テープを、前記超電導線材の周囲に巻付ける巻付部材とを含む、超電導線材ラッピング装置。
【請求項2】
前記ラッピング部は、前記絶縁テープ保持部材から払出される前記絶縁テープの張力を調整する張力調整部材を含む、請求項1に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項3】
前記ラッピング部は、前記超電導線材に対する前記絶縁テープの巻付け角度を変更する巻付け角度変更部材を含む、請求項1または2に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項4】
前記案内部材には、前記超電導線材の表面を露出させる露出部が形成され、
前記巻付部材は、前記露出部において露出している前記超電導線材の部分において前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付け、
前記超電導線材の延在方向における前記露出部の幅は変更可能になっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項5】
超電導線材を準備する工程と、
開口部を有し、前記開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材を準備する工程と、
前記絶縁テープ保持部材の前記開口部を貫通するように、前記超電導線材を配置するとともに、前記超電導線材の周囲に、前記絶縁テープ保持部材から払出された前記絶縁テープを巻付ける工程とを備える、絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記超電導線材の延在方向において、前記絶縁テープ保持部材に対する前記超電導線材の相対的な位置を変更しながら前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に螺旋状に巻付ける、請求項5に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記絶縁テープが一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた前記絶縁テープの隣接する端面同士が接触する形態となるように、前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付ける、請求項6に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記超電導線材の表面の一部が露出するように、前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付ける、請求項6に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項9】
他の開口部を有し、前記他の開口部を囲むように他の絶縁テープを円周状に巻付けて保持する他の絶縁テープ保持部材を準備する工程と、
前記絶縁テープを巻付ける工程の後、前記他の絶縁テープ保持部材の前記他の開口部を貫通するように、前記絶縁テープを周囲に巻付けられた前記超電導線材を配置するとともに、前記絶縁テープを周囲に巻付けられた前記超電導線材の周囲を囲むように螺旋状に、前記他の絶縁テープ保持部材から払出された前記他の絶縁テープを巻付ける工程とを更に備える、請求項5〜8のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁テープを巻付ける工程における前記絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向と、前記他の絶縁テープを巻付ける工程における前記他の絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向とが同じ方向である、請求項9に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁テープを巻付ける工程における前記絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向と、前記他の絶縁テープを巻付ける工程における前記他の絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向とが異なる方向である、請求項9に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項12】
前記超電導線材を準備する工程では、複数の超電導線材を準備し、
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記複数の超電導線材を積層した積層体の周囲に前記絶縁テープを巻付ける、請求項5〜11のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁テープの一方の表面には、接着剤層が形成されており、
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記接着剤層を介して前記絶縁テープが前記超電導線材に接続される、請求項5〜12のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁テープを巻付ける工程において、前記絶縁テープの張力が50gf以上300gf以下に設定されている、請求項5〜13のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項1】
超電導線材を払い出すサプライ部と、
前記サプライ部から払出された前記超電導線材の外周に絶縁テープを巻付けるラッピング部と、
前記ラッピング部において絶縁テープを巻付けられることにより形成された絶縁被覆付超電導線材を巻取る巻取部とを備え、
前記ラッピング部は、
開口部を有し、前記開口部を囲むように前記絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材と、
前記絶縁テープ保持部材の前記開口部を貫通するように前記超電導線材を案内する案内部材と、
前記絶縁テープ保持部材から払出された前記絶縁テープを、前記超電導線材の周囲に巻付ける巻付部材とを含む、超電導線材ラッピング装置。
【請求項2】
前記ラッピング部は、前記絶縁テープ保持部材から払出される前記絶縁テープの張力を調整する張力調整部材を含む、請求項1に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項3】
前記ラッピング部は、前記超電導線材に対する前記絶縁テープの巻付け角度を変更する巻付け角度変更部材を含む、請求項1または2に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項4】
前記案内部材には、前記超電導線材の表面を露出させる露出部が形成され、
前記巻付部材は、前記露出部において露出している前記超電導線材の部分において前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付け、
前記超電導線材の延在方向における前記露出部の幅は変更可能になっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材ラッピング装置。
【請求項5】
超電導線材を準備する工程と、
開口部を有し、前記開口部を囲むように絶縁テープを円周状に巻付けて保持する絶縁テープ保持部材を準備する工程と、
前記絶縁テープ保持部材の前記開口部を貫通するように、前記超電導線材を配置するとともに、前記超電導線材の周囲に、前記絶縁テープ保持部材から払出された前記絶縁テープを巻付ける工程とを備える、絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記超電導線材の延在方向において、前記絶縁テープ保持部材に対する前記超電導線材の相対的な位置を変更しながら前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に螺旋状に巻付ける、請求項5に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記絶縁テープが一部重なる形態または螺旋状に巻き付けられた前記絶縁テープの隣接する端面同士が接触する形態となるように、前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付ける、請求項6に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記超電導線材の表面の一部が露出するように、前記絶縁テープを前記超電導線材の周囲に巻付ける、請求項6に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項9】
他の開口部を有し、前記他の開口部を囲むように他の絶縁テープを円周状に巻付けて保持する他の絶縁テープ保持部材を準備する工程と、
前記絶縁テープを巻付ける工程の後、前記他の絶縁テープ保持部材の前記他の開口部を貫通するように、前記絶縁テープを周囲に巻付けられた前記超電導線材を配置するとともに、前記絶縁テープを周囲に巻付けられた前記超電導線材の周囲を囲むように螺旋状に、前記他の絶縁テープ保持部材から払出された前記他の絶縁テープを巻付ける工程とを更に備える、請求項5〜8のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁テープを巻付ける工程における前記絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向と、前記他の絶縁テープを巻付ける工程における前記他の絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向とが同じ方向である、請求項9に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁テープを巻付ける工程における前記絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向と、前記他の絶縁テープを巻付ける工程における前記他の絶縁テープの前記超電導線材に対する巻付け方向とが異なる方向である、請求項9に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項12】
前記超電導線材を準備する工程では、複数の超電導線材を準備し、
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記複数の超電導線材を積層した積層体の周囲に前記絶縁テープを巻付ける、請求項5〜11のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁テープの一方の表面には、接着剤層が形成されており、
前記絶縁テープを巻付ける工程では、前記接着剤層を介して前記絶縁テープが前記超電導線材に接続される、請求項5〜12のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁テープを巻付ける工程において、前記絶縁テープの張力が50gf以上300gf以下に設定されている、請求項5〜13のいずれか1項に記載の絶縁被覆付超電導線材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−295292(P2009−295292A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144598(P2008−144598)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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