説明

超電導線用の端子および該端子が取り付けられた超電導コイル

【課題】端子の超電導線への取付強度を高め、電気接続の信頼性を向上させる。
【解決手段】帯状の超電導線の端末部に常電導線との接続用として取り付けられる端子であって、前記端子はT字形状とされ、該T字の横方向部が前記超電導線の端末部の広幅面に長さ方向に重ねて取り付けられる超電導線接続部とする一方、前記T字の横方向部から突出する縦方向部を前記広幅面の幅方向の一端縁より突出させて常電導線接続部としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線用の端子および該端子が取り付けられた超電導コイルに関し、詳しくは、超電導コイルの端末部に取り付けられて、超電導線と常電導線とを接続する端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導線同士あるいは超電導線と他の配線材とを接続するため、超電導線の端末部に端子を取り付け、該端子を介してこれらを接続している場合がある。
例えば、超電導線同士を端末部に取り付けた端子により接続する構造が、特開平5−326248号公報(特許文献1)において提供されている。
また、超電導線と銅線等からなる常電導線を接続する場合には、例えば、図11に示すようなL字形状の端子1が用いられている。該端子1は、L字の横方向部1aを帯状の超電導線2の端末部の広幅面に半田付けすると共に、横方向部1aの端部から直交方向に突出する縦方向部1bに常電導線3を半田付け等により接続し、該端子1を介して超電導線2と常電導線3とを接続している。
なお、端子1と超電導線2との接続面積が小さすぎると端子1と超電導線2間での通電が阻害されてしまうため、端子1の横方向部1aを超電導線2の長さ方向に延在させて通電に十分な接続面積を確保している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−326248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記L字形状の端子1では、縦方向部1bに対して一方にのみ設けた横方向部1aを超電導線2に半田付け接続しているだけであるため、振動等により縦方向部1bに引っ張りが生じると、横方向部1aの縦方向部1bを設けた一端側から他端側へ順次引っ張り力が伝わって、端子1が超電導線2から剥がれやすい問題がある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、超電導線の端末部に取り付ける端子の形状を改良することにより、端子の超電導線への取付強度を高め、電気接続の信頼性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、帯状の超電導線の端末部に常電導線との接続用として取り付けられる端子であって、
前記端子はT字形状とされ、該T字の横方向部を前記超電導線の端末部の広幅面に長さ方向に重ねて取り付けられる超電導線接続部とする一方、前記T字の横方向部から突出する縦方向部を前記広幅面の幅方向の一端縁より突出させて常電導線接続部としていることを特徴とする超電導線用の端子を提供している。
【0007】
前記構成からなる超電導線用の端子によれば、端子形状をT字形状として、常電導線接続部から両側に延在する超電導線接続部を超電導線の広幅面に接続しているため、端子と超電導線との接続面積を大きくでき、かつ、常電導線接続部に生じた引っ張り力を常電導線接続部の両側に設けた超電導線接続部に分散させることができ、端子の超電導線への取付強度を高めることができる。これにより、常電導線が接続される常電導線接続部に引っ張りが生じても、端子が超電導線から剥がれてしまうことがなく、電気接続の信頼性を向上させることができる。
なお、前記端子の超電導線接続部の幅は、超電導線と広幅面の幅と略同一幅として、超電導線の広幅面の全面に接続出来るようにして接触面積を大きくしている。
【0008】
前記超電導線接続部の長さを、前記常電導線接続部の長さよりも大としていることが好ましい。なお、前記端子の超電導線接続部の長さ方向と直交方向の幅は、超電導線と広幅面の幅と略同一幅として、超電導線の広幅面の全面に接続出来るようにして接触面積を大きくしている。
前記構成によれば、超電導線の端縁から突出する常電導線接続部よりも超電導線に接続される超電導線接続部を大としているため、端子を安定した状態で超電導線に取り付けることができる。
【0009】
詳細には、超電導線接続部の長さを、前記常電導線接続部の長さの2〜4倍としていることが好ましい。
超電導線接続部の長さが常電導線接続部の長さの2倍より小さいと、超電導線の端縁から突出する常電導線接続部に対して超電導線接続部と超電導線の接続面積が小さく取付強度が十分でないからであり、4倍より大きいと、超電導線接続部と超電導線の接続面積が必要以上に大きくなって超電導線と端子に無駄が生じるからである。
【0010】
また、超電導線接続部の長さ方向の中心位置より常電導線接続部を突出させ、該常電導線接続部に対して超電導線接続部を対称形状とした端子としていることが好ましい。
前記構成によれば、常電導線接続部に生じた引っ張り力が対称に設けた超電導線接続部に均等に分散されるため、常電導線接続部からいずれか一方側に延在させて設けた超電導線接続部に大きな引っ張り力がかかるのを防止することができる。
【0011】
前記超電導線接続部は、前記常電導線接続部の基端部の両側に端縁より切り込んだ折り曲げ用の切欠を設け、前記常電導線接続部を超電導線接続部に対して屈曲可能としていることが好ましい。
前記構成によれば、超電導線接続部に対する常電導線接続部の突出方向を自由に設定でき、端子の汎用性を高めることができる。
また、常電導線接続部の基端部の両側の超電導線接続部に折り曲げ用の切欠を設けているため、常電導線接続部をより超電導線接続部に近い位置で屈曲させることができるため、屈曲させた常電導線接続部が超電導線接続部の幅方向端縁から大きく突出するのを防止することができる。
【0012】
前記超電導線接続部の両端部のうち、少なくとも電流が通電される側の端部に、前記超電導線接続部の他の部位よりも細幅とした細幅部を設けていることが好ましい。
【0013】
前記端子の超電導線接続部の端部に細幅部を設けることにより、超電導線の端子を接続している部位において、超電導線接続部の中央側から端部にかけて徐々に強度を低下させていき、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の強度差を小さくしている。これにより、超電導線の巻き線時や通電時に端子または超電導線に外部から負荷がかかっても、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の境界位置に応力が集中せず、この部位における超電導線の破損を防止することができる。特に、高温超電導線はセラミックからなり、局所的な応力に弱く、応力が集中しているところで大きな性能低下を起こすおそれがあるため前記構成が好適である。
【0014】
具体的には、超電導線接続部の幅方向の一端、あるいは両端を斜めに切り欠いて細幅部を切り欠いたり、中央をV字状に切り欠いて細幅部を形成していることが好ましい。
さらには、細幅部の先端を鋭角状の尖形形状としていることが好ましい。該構成によれば、前記境界位置で連続的に強度を低下させることができ、応力が集中するのを確実に防止することができる。
【0015】
超電導線接続部の長さ方向に対応する細幅部の長さは、超電導線の幅よりも長くしていることが好ましい。該構成によれば、超電導線接続部の中央側から端部にかけて緩やかに強度を低下させていくことができ、より確実に超電導線への応力の集中を防止することができる。
また、前記細幅部は超電導線接続部の電流が通電される側のみに設けておけばよいが、超電導線接続部の両端に細幅部を設けておくと、通電方向を考慮せずに超電導線に端子を取り付けることができ、端子の取付作業を容易にすることができる。
【0016】
また、前記超電導線接続部の両端部のうち、少なくとも電流が通電される側の端部に、前記超電導線接続部の他の部位よりも薄肉とした薄肉部を設けてもよい。
前記構成としても、超電導線接続部の中央側から端部にかけて強度を低下させていき、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の境界位置に応力が集中するのを防止して、この部位における超電導線の破損を防止することができる。
また、前記薄肉部は超電導線接続部の中央側から端部にかけて徐々に厚さを薄くしていることが好ましい。
さらに、薄肉部は、前記細幅部と同様、超電導線接続部の長さ方向に対応する長さを超電導線の幅よりも長くしていることが好ましく、超電導線接続部の両端に設けていることが好ましい。
さらにまた、前記細幅部の肉厚を薄くして、細幅部と薄肉部の両方を備えた構成としてもよい。
【0017】
前記超電導線接続部は、前記超電導線の端末部の絶縁被覆を剥離して露出させた導体部に半田付け、超音波溶接、抵抗溶接又は導電性接着剤、銀蝋付け又は電子ビーム溶接により電気接続される一方、
前記常電導線接続部は、常電導線の端末部に半田付け、又は該常電導線の端末に接続された常電導線用端子がネジ止めされて電気接続されることが好ましい。
前記超電導線接続部と超電導線の接続方法は、超電導線接続部と超電導線が電気的に接続されていればよいが、高い導電性および十分な接続強度を得られる点および接続作業が簡単に行える点より、半田付けが好ましい。
【0018】
前記端子は銅、金、白金、銀またはこれらを少なくとも1種含む合金から形成される。
【0019】
また、前記超電導線がシングルパンケーキ型あるいはダブルパンケーキ型の超電導コイルとされている場合、前記シングルパンケーキ型の超電導コイルでは外周端と内周端に接続される外側電極と内側電極として取り付けられ、ダブルパンケーキ型の超電導コイルでは両端の外側電極として取り付けられる。
本発明の端子が内側電極として取り付けられる場合には、常電導線接続部を超電導線接続部に対して屈曲させず、外側電極として取り付けられる場合には、外部のスペースに応じて常電導線接続部を超電導線接続部に対して屈曲させてもよいし、屈曲させなくてもよい。
また、シングルパンケーキ型あるいはダブルパンケーキ型の超電導コイルを軸線方向に積層して1つのコイルとする場合には、常電導線接続部を超電導線接続部に対して屈曲させることにより、常電導線接続部が隣接する超電導コイル側に突出しないように配置することができる。
このように、本発明の端子は超電導コイルの内側電極と外側電極のいずれとしても用いることができ、また、単体の超電導コイルや複数の超電導コイルを積層した積層コイルにも幅広く用いることができる。
【0020】
また、本発明は、帯状の超電導線が巻回されて形成された超電導コイルであって、前記超電導線用の端子が超電導線の端末部に取り付けられていることを特徴とする超電導コイルを提供している。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明によれば、端子形状をT字形状として、常電導線接続部から両側に延在する超電導線接続部を超電導線の広幅面に接続しているため、端子と超電導線との接続面積を大きくでき、かつ、常電導線接続部に生じた引っ張り力を常電導線接続部の両側に設けた超電導線接続部に分散させることができ、端子の超電導線への取付強度を高めることができる。これにより、常電導線が接続される常電導線接続部に引っ張りが生じても、端子が超電導線から剥がれてしまうことがなく、電気接続の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の超電導線用の端子10は、常電導線との接続用として用いられるものであり、シングルパンケーキ型の超電導コイル20を形成する超電導線21の外周端と内周端に外側電極と内側電極としてそれぞれ取り付けられ、該端子10に常電導線30を接続して、端子10を介して超電導線21と常電導線30を接続している。
【0023】
前記端子10は厚さ0.5mmの銅板を打ち抜いて形成し、図2に示すように、T字形状としている。該T字の横方向部を超電導線21の端末部に取り付けられる超電導線接続部10aとする一方、該超電導線接続部10aの長さ方向の中心位置から突出する縦方向部を常電導線接続部10bとしている。
常電導線接続部10bは、超電導線接続部10aの長さ方向に直交する幅方向の一端縁から、超電導線接続部10aの長さ方向に対して直交方向に突出させ、常電導線接続部10bに対して超電導線接続部10aを対称としている。
【0024】
超電導線接続部10aから突出する常電導線接続部10bの基端部10cの両側に端縁より切り込んだ折り曲げ用の切欠10dを設け、常電導線接続部10bを超電導線接続部10aに対して屈曲可能としている。
なお、本実施形態では、常電導線接続部10bを超電導線接続部10aに対して屈曲させないため、折り曲げ用の切欠10dを設けなくてもよい。
【0025】
また、超電導線接続部10aの長さL1を、常電導線接続部10bの長さL2よりも大としており、超電導線接続部10aの長さL1を40〜60mm、常電導線接続部10bの長さL2を10〜20mmとしている。本実施形態では、超電導線接続部10aの長さL1を50mm、常電導線接続部10bの長さL2を15mmとして、長さL1をL2のおよそ3倍としている。
超電導線接続部10aの幅L3は、該超電導線接続部10aが取り付けられる超電導線21の長さ方向に直交する幅と略同一としており、本実施形態では、幅L3を超電導線21の広幅面21xの幅と同一の4mmとしている。また、常電導線接続部10bの幅L4を10mmとしている。
なお、本実施形態では、端子10を銅により形成しているが、銅に替えて、金、白金、銀により形成してもよく、または銅、金、白金、銀のうち少なくとも1種含む合金から形成してもよい。
【0026】
前記端子10は、図1に示すように、円筒状の巻枠22に超電導線21を内周側から順次巻回して形成したシングルパンケーキ型の超電導コイル20の外周端21aと内周端21bにそれぞれ取り付けられる。
本実施形態では、超電導線21を導体部が絶縁被覆された厚さ0.2mmのビスマス系超電導線としており、超電導線21の外周端21aと内周端21bとなる端末部の絶縁被覆を剥離して導体部を露出させている。この露出させた導体部の広幅面に長さ方向に端子10の超電導線接続部10aを重ねて半田付け接続し、常電導線接続部10bを超電導線21の広幅面の幅方向の一端よりコイル軸線方向に突出させている。
【0027】
前記コイルの内周端21bに接続した端子10Bの超電導線接続部10aは超電導線21と巻枠22により挟持されてさらに強固に保持されている。また、超電導コイル20は、その外周面に粘着テープ(図示せず)を巻き付けて超電導線21の巻回状態を保持するため、超電導線21の外周端21aに接続した端子10Aの超電導線接続部10aの外面にも粘着テープが巻き付けられて、該粘着テープにより端子10Aがさらに強固に保持される。
前記のように端子10を超電導線21の両端末部に取り付け、超電導線21の外周端21aと内周端21bにそれぞれ接続した端子10A、10Bを外側電極と内側電極としている。
【0028】
図3に示すように、前記超電導線21の幅方向の一端より突出した常電導線接続部10bに、銅線の編素線からなる常電導線30の一端末を半田Hにより接続している。これにより、端子10を介して超電導線21に常電導線30を接続している。
常電導線30の他端末には電源に接続される圧着端子31を圧着接続し、端子10の常電導線接続部10bに半田付け接続された一端から圧着端子31が接続された他端側にかけて、常電導線30に保護用の熱収縮チューブ32を被せ、該熱収縮チューブ32を加熱して収縮させて常電導線30の外周面に密着させている。
【0029】
前記構成によれば、超電導線用の端子10をT字形状として、常電導線接続部10bから両側に延在する超電導線接続部10aを超電導線21の広幅面に接続しているため、端子10と超電導線21との接続面積を大きくでき、かつ、常電導線接続部10bに生じた引っ張り力を常電導線接続部10bの両側に設けた超電導線接続部10aに分散させることができる。これにより、端子10の超電導線21への取付強度を高めることができ、常電導線30が接続される常電導線接続部10bに引っ張りが生じても、端子10の超電導線接続部10aが超電導線21から剥がれてしまうことがなく、電気接続の信頼性を向上させることができる。
また、超電導線21の幅方向の端縁から突出する常電導線接続部10bよりも超電導線21に半田付け接続される超電導線接続部10aを大幅に長くすると共に、常電導線接続部10bに対して超電導線接続部10aを対称に設けているため、端子10を安定した状態で超電導線21に取り付けることができる。
【0030】
図4および図5に、第1実施形態の変形例を示す。
本実施形態では、端子10の常電導線接続部10bと常電導線30との接続方法を第1実施形態と相違させており、常電導線30の端末に圧着接続された常電導線用端子33を常電導線接続部10bにネジ止めにより電気接続している。
【0031】
詳細には、端子10の常電導線接続部10bに貫通穴10eを設ける一方、圧着バレル33aを常電導線30の端末に圧着して接続した常電導線用端子33の端子接続部33bにも貫通穴33cを設けている。これら端子10の常電導線接続部10bと常電導線用端子33の端子接続部33bを重ね合わせて貫通穴10eと33cを連通させ、これら貫通穴10eと33cにボルトBを挿通して、端子10の常電導線接続部10bと常電導線用端子33の端子接続部33bをボルトBとナットNによりネジ止めして電気接続している。
なお、図5では熱収縮チューブの図示を省略しているが、端子10の常電導線接続部10bと常電導線用端子33の端子接続部33bをネジ止めした後、このネジ止め部分にも熱収縮チューブを被せて加熱収縮している。
また、本変形例においても、第1実施形態と同様、ネジ止め部分に半田を流し込んで半田接続してもよい。該構成によれば、ネジ止めと半田付けによってより強固に端子10と常電導線用端子33を接続することができる。
他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
図6及び図7に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、超電導線用の端子10を、最内周ターンの渡り部で2層のコイル部が連続するダブルパンケーキ型の超電導コイル40に取り付けている。
【0033】
本実施形態では、第1実施形態と同様の端子10を用いているが、図6に示すように、常電導線接続部10bを切欠10dで挟まれた基端部10cで90度屈曲させている。超電導線接続部10aには、常電導線接続部10bの基端部10cの両側に折り曲げ用の切欠10dを設けているため、図7(B)に示すように、常電導線接続部10bを超電導線接続部10aの幅方向の端縁より突出させることなく屈曲させることができる。
【0034】
図7(A)に示すように、常電導線接続部10bを屈曲させた前記端子10A、10Bの超電導線接続部10aを、超電導コイル40の上層のコイル部40aの外周端21cと下層のコイル部40bの外周端21dにそれぞれ第1実施形態と同様に半田付けにより接続して、端子10A、10Bを外側電極としている。
本実施形態では、屈曲させた常電導線接続部10bを超電導線21の広幅面の幅方向の一端縁よりコイル径方向の外方へ突出させており、該常電導線接続部10bに第1実施形態と同様に常電導線を接続している。
【0035】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、T形状の端子10を超電導線21に強固に取り付けることができ、かつ、常電導線接続部10bを折り曲げているため、超電導コイル40の軸線方向に常電導線接続部10bが突出せず、コイル径方向の外方へ常電導線接続部10bを突出させることができる。
なお、本実施形態のようにダブルパンケーキ型の超電導コイル40に端子10を取り付ける場合にも、第1実施形態の常電導線接続部10bを折り曲げていない端子を接続してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、単体のダブルパンケーキ型超電導コイルに端子10を取り付けているが、常電導線接続部10bを屈曲させた端子10であれば、常電導線接続部10bがコイル軸線方向に突出しないため、複数のダブルパンケーキ型超電導コイルを軸線方向に積層した積層コイルの各端末部にも端子10を取り付けることができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図8に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、端子10の超電導線接続部10aの電流が通電される側の端部に、超電導線接続部10aの他の部位よりも細幅とした細幅部10fを設けている。該細幅部10fは、超電導線接続部10aの常電導線接続部10bを突出させた側と反対側の幅方向端部を斜め直線状に切断して設けている。細幅部10fは、超電導線接続部10aの中央側から端部にかけて徐々に細幅としていき、先端を鋭角状の尖形形状としている。
また、超電導線接続部10aの長さ方向に対応する細幅部10fの長さL5を5mmとして、超電導線接続部10aの幅L3(4mm)よりも大としている。
【0038】
前記構成によれば、超電導線接続部10aの端部に細幅部10fを設けることにより、超電導線の端子を接続している部位において、超電導線接続部10aの中央側から端部にかけて徐々に強度を低下させていき、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の強度差を小さくすることができる。これにより、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の境界位置に応力が集中せず、この部位における超電導線の破損を防止することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図9に、第3実施形態の変形例を示す。
図9(A)に示す第1変形例では、超電導線接続部10aの端部の幅方向両側を斜め直線状に切断して、先端がV字状に尖った細幅部10fを設けている。
図9(B)に示す第2変形例では、超電導線接続部10aの常電導接続部10bを突出させた側と反対側の幅方向端部を斜め円弧状に切断して細幅部10fを設けている。
図9(C)に示す第3変形例では、超電導線接続部10aの幅方向中央をV字状に切り欠いて、幅方向の両側に分岐する細幅部10fを設けている。
図9(D)に示す第4変形例では、第3実施形態と同様の細幅部10fを超電導線接続部10aの両端に設けている。
なお、第1〜第3変形例の細幅部10fも第4変形例のように超電導線接続部10aの両端に設けてもよい。
他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図10に、本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態では、端子10の超電導線接続部10aの電流が通電される側の端部に、超電導線接続部10aの他の部位よりも薄肉とした薄肉部10gを設けている。該薄肉部10gは、超電導線接続部10aの中央側から端部にかけて徐々に薄肉としている。
また、超電導線接続部10aの長さ方向に対応する薄肉部10gの長さL6を5mmとして、超電導線接続部10aの幅4mmよりも大としている。
【0041】
前記構成によれば、超電導線接続部10aの端部に薄肉部10gを設けることにより、超電導線の端子を接続している部位において、超電導線接続部10aの中央側から端部にかけて徐々に強度を低下させていき、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の強度差を小さくすることができる。これにより、超電導線の端子が接続されている部位と接続されていない部位の境界位置に応力が集中せず、この部位における超電導線の破損を防止することができる。
なお、薄肉部10gは超電導線接続部10aの両端に設けてもよい。
他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
さらに、前記第1、第2実施形態では超電導コイルを形成する超電導線に超電導線用の端子を接続しているが、超電導コイル以外の用途で用いられる超電導線に本発明の端子を接続することもできる。
なお、前記実施の形態はすべての点で例示であって、これら実施形態に限定されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の超電導線用の端子は、自動車等の駆動用モータや、その他発電機、変圧器、超電導電力貯蔵装置(SMES)等の超電導機器に用いられる超電導コイルに取り付けられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の端子を取り付けたシングルパンケーキ型の超電導コイルを示す図面である。
【図2】前記端子を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図である。
【図3】端子を介して超電導線と常電導線を接続した状態を示す図面である。
【図4】第1実施形態の変形例の端子の斜視図である。
【図5】第1実施形態の変形例の端子を常電導線用の端子と接続した状態を示す断面図である。
【図6】第2実施形態を示し、常電導線接続部を折り曲げた端子を示す図面である。
【図7】(A)は端子を取り付けたダブルパンケーキ型の超電導コイルを示す図面、(B)は超電導線に接続した端子の側面図である。
【図8】第3実施形態を示す図面である。
【図9】(A)〜(D)は第3実施形態の変形例を示す図面である。
【図10】第4実施形態の端子を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【図11】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0045】
10 超電導線用の端子
10a 超電導線接続部
10b 常電導線接続部
10c 基端部
10d 折り曲げ用の切欠
10f 細幅部
10g 薄肉部
20 シングルパンケーキ型の超電導コイル
21 超電導線
21a、21c、21d 外周端
21b 内周端
21x 広幅面
30 常電導線
40 ダブルパンケーキ型の超電導コイル
H 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の超電導線の端末部に常電導線との接続用として取り付けられる端子であって、
前記端子はT字形状とされ、該T字の横方向部を前記超電導線の端末部の広幅面に長さ方向に重ねて取り付けられる超電導線接続部とする一方、前記T字の横方向部から突出する縦方向部を前記広幅面の幅方向の一端縁より突出させて常電導線接続部としていることを特徴とする超電導線用の端子。
【請求項2】
前記超電導線接続部の長さを、前記常電導線接続部の長さよりも大としている請求項1に記載の超電導線用の端子。
【請求項3】
前記超電導線接続部は、前記常電導線接続部の基端部の両側に端縁より切り込んだ折り曲げ用の切欠を設け、前記常電導線接続部を超電導線接続部に対して屈曲可能としている請求項1または請求項2に記載の超電導線用の端子。
【請求項4】
前記超電導線接続部の両端部のうち、少なくとも電流が通電される側の端部に、前記超電導線接続部の他の部位よりも細幅とした細幅部を設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の超電導線用の端子。
【請求項5】
前記超電導線接続部の両端部のうち、少なくとも電流が通電される側の端部に、前記超電導線接続部の他の部位よりも薄肉とした薄肉部を設けている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の超電導線用の端子。
【請求項6】
帯状の超電導線が巻回されて形成された超電導コイルであって、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の超電導線用の端子が超電導線の端末部に取り付けられていることを特徴とする超電導コイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−49036(P2009−49036A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210838(P2007−210838)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)