説明

超音波モータ及びそれを用いた駆動装置

【課題】振動子への押圧力を変更可能にする超音波モータを提供する。
【解決手段】超音波モータは、電気信号の印加により振動を励起する振動子10と、弾性部12を介して振動子10と一体化された超音波モータ本体13と、振動子10と一体化された駆動部12a、12bと、電気信号の印加により一軸方向に伸縮する圧電素子15とを備え、圧電素子15の伸縮に応じた押圧力により、弾性部12を介して振動子10が押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータ及びそれを用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可動体を可動させる駆動装置のアクチュエータとして超音波モータを用いる場合、超音波モータの振動子(振動子における接触部)を可動体に接触させた上で、振動子と可動体とを圧接させる押圧力を付与することが必要である、ことが一般的に知られている。このような技術に関し、例えば特許文献1及び2には、次のような提案が為されている。
【0003】
特許文献1には、振動部材の振動節部を支持すると共に、振動部材と可動体とを圧接させる押圧力を付与する加圧部材を備えた超音波駆動装置が提案されている。この装置では、加圧部材により振動部材を加圧し、振動部材と可動体との間に摩擦力を生じさせることによって、超音波モータにより可動体を可動させることができるものである。
【0004】
特許文献2には、振動体および接触部材を磁力によって互いに圧接させる磁気部材を、振動体の第1面と接触部材との間に配置した振動型駆動装置が提案されている。この装置では、振動体が、金属材等の弾性体である振動板と圧電素子板とが接合されて構成されており、接触部材の少なくとも一部が、強磁性材料により形成されていることから、振動体(振動板)と磁気部材との間、及び、接触部材と磁気部材との間に、磁気力を発生させることができ、この磁気力によって、振動体と接触部材とが圧接され、振動体と接触部材との間に摩擦力を生じさせることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−292584号公報
【特許文献2】特開2007−312519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、超音波モータを用いた駆動装置では、振動子と可動体とを常に接触させ、振動子と可動体との間に、必要な摩擦力を生じさせることが必要である。可動体の可動に必要な摩擦力は、可動体の重さだけでなく、可動体に載せる荷重によっても変わってくる。また、駆動装置が斜めに傾いた状態で設置される可能性がある場合には、更に、可動体の自然落下を防止するための摩擦力も加味する必要がある。
【0007】
一方、超音波モータを用いた駆動装置では、磨耗、摩擦が伴っており、振動子と可動体との間に生じさせる摩擦力が大きいほど、磨耗、摩擦が大きくなる。従って、その摩擦力が大きくなると、振動子と可動体との間の接触状態が変化し、駆動特性に影響を与える虞があり、駆動装置としての製品寿命に影響を与える虞もある。
【0008】
摩擦力による振動子と可動体との接触面への影響を最大限に低減するためには、可動体の重さ、可動体に載せる荷重、駆動装置の設置状態(駆動装置を斜めに傾けた状態で設置等)、及び振動子と可動体との間の接触状態に応じて、駆動に必要な摩擦力、又は振動子と可動体とを圧接させる押圧力を変更可能であることが望ましい。
【0009】
しかしながら、上記の2つの特許文献に記載の装置では、振動子(振動部材,振動体)と可動体(接触部材)とを圧接させる押圧力が一定である。
本発明は、上記実情に鑑み、振動子への押圧力を変更可能な超音波モータと、駆動特性を維持することができると共に装置寿命を長くすることができる、超音波モータを用いた駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る超音波モータは、電気信号の印加により振動を励起する振動子と、弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、前記振動子と一体化された接触部と、前記振動子を押圧する押圧手段と、を備え、前記押圧手段による押圧力は可変である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様に係る超音波モータは、電気信号の印加により振動を励起する振動子と、弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、前記振動子と一体化された接触部と、電気信号の印加により一軸方向に伸縮する圧電素子と、を備え、前記圧電素子の伸縮に応じた押圧力により、前記弾性部を介して前記振動子が押圧される、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様に係る超音波モータは、上記第2の態様において、前記弾性部と前記圧電素子との間に弾性体が配置される、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様に係る超音波モータは、電気信号の印加により振動を励起する振動子と、弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、前記振動子と一体化された接触部と、前記弾性部に結合され、電気信号の印加により一軸方向に伸縮する圧電素子と、を備え、前記圧電素子の伸縮に伴う前記弾性部の変形に応じた押圧力により、前記弾性部を介して前記振動子が押圧される、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係る超音波モータを用いた駆動装置は、ベース部と、前記ベース部に対して平行移動可能に配置されるテーブルと、前記ベース部と前記テーブルとの間に配置される案内部材と、前記ベース部に配置される、上記第1の態様の超音波モータと、前記テーブルに固定されるスケールと前記ベース部に固定されるセンサとを有する位置検出手段と、前記超音波モータに電気信号を印加し、前記位置検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記テーブルの位置を制御すると共に前記超音波モータの押圧手段による押圧力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様に係る超音波モータを用いた駆動装置は、ベース部と、前記ベース部に対して平行移動可能に配置されるテーブルと、前記ベース部と前記テーブルとの間に配置される案内部材と、前記ベース部に配置される、上記第2乃至4の態様の何れか一つの超音波モータと、前記テーブルに固定されるスケールと前記ベース部に固定されるセンサとを有する位置検出手段と、前記超音波モータの振動子と圧電素子に電気信号を印加し、前記位置検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記テーブルの位置を制御すると共に前記振動子が押圧される際の押圧力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動子への押圧力を変更可能な超音波モータと、駆動特性を維持することができると共に装置寿命を長くすることができる、超音波モータを用いた駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る超音波モータの構成例を示す上面図である。
【図2】図1に示した超音波モータの水平断面を示すと共に、その超音波モータと制御ユニットとの電気的接続を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施例1の変形例1に係る超音波モータを示す図である。
【図4】本発明の実施例1の変形例2に係る超音波モータを示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る、超音波モータを用いた駆動装置の構成例を示す上面図である。
【図6】図5に示した駆動装置のA−A´断面図である。
【図7】図5に示した駆動装置の右側面図であって、当該駆動装置が傾いて設置された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1は、超音波モータに関する。
図1は、本実施例に係る超音波モータの構成例を示す上面図である。図2は、図1に示した超音波モータの水平断面を示すと共に、その超音波モータと制御ユニットとの電気的接続を模式的に示す図である。
【0019】
図1及び図2に示した超音波モータにおいて、振動子10は、制御ユニット11による電気信号の印加により、振動を励起する振動子である。この振動子10は、その固定側面10aの中央部で弾性部(図1の斜線で示す部分)12を介して超音波モータ本体13(以下単に「本体13」という)と一体化されて構成されている。また、その固定側面10aの反対側面10bには、振動子10の長手方向に沿って同一の2つの駆動部(接触部の一例)14a、14bが設けられ、その2つの駆動部14a、14bとも一体化されて構成されている。そして、制御ユニット11による電気信号の印加により振動子10が振動することによって、その2つの駆動部14a、14bが楕円軌跡運動を行うようになっている。
【0020】
なお、本実施例において、弾性部12と本体13は、例えばアルミニウム等の単一の金属材料からワイヤ放電加工等によって形成されたものである。また、弾性部12は、弾性体として作用する部分と、弾性体として作用しない中央部分の厚肉部12aとを含み、厚肉部12aと振動子10とが例えばセラミック接着材等の硬度の高い接着剤で接着されている。また、2つの駆動部14a、14bは、例えば強化繊維を含むポリアセタールやセラミック等の、摩擦係数の比較的小さな樹脂を母材とした材料で形成されている。
【0021】
圧電素子15は、制御ユニット11による電気信号の印加により一軸方向(ここでは、図2(又は図1)の紙面上下方向)に伸縮する圧電素子であって、振動子10を押圧する押圧手段の一例である。この圧電素子15は、接着等によって、取付け座16と一体化されて構成され、その取付け座16を介して本体13に取り付けられている。また、圧電素子15と弾性部(厚肉部12a)12との間には、コイルバネ(弾性体の一例)17が配置されている。
【0022】
制御ユニット11は、振動子10と圧電素子15を駆動するユニットである。この制御ユニット11は、振動子10と圧電素子15のそれぞれに電気的に接続され、上述のとおり、振動子10に電気信号を印加することにより振動子10に振動を励起させ、圧電素子15に電気信号を印加することにより圧電素子15を伸縮させるものである。
【0023】
以上のような構成によれば、制御ユニット11から圧電素子15に電気信号が印加されると、圧電素子15が図2(又は図1)の紙面上下方向に伸縮し、その伸縮に応じた押圧力が、コイルバネ17及び弾性部(厚肉部12a)12を介して、振動子10に付与されるようになる。従って、圧電素子15に印加する電気信号(例えば電圧)を変化させて圧電素子15の伸縮量を変化させることによって、振動子10に付与する押圧力を変更することが可能となる。
【0024】
また、制御ユニット11から振動子10に電気信号が印加されて振動子10に振動が励起されているときには、振動子10の振動により、振動子10と取付け座16との間の距離が微小に変動するが、上記の構成では、コイルバネ17を介して振動子10に押圧力が付与されていることから、その微小な距離変動をコイルバネ17により吸収することができ、その微小な距離変動によって生じ得る押圧力の変動を抑えることができる。
【0025】
なお、本実施例では詳しい説明を省略するが、本実施例に係る超音波モータによって可動体を可動させる場合には、その可動体を2つの駆動部14a、14bに当接させた上で、制御ユニット11が圧電素子15と振動子10のそれぞれに電気信号を印加して、振動子10に押圧力を付与する(振動子10と可動体とを圧接させる押圧力を付与する)と共に2つの駆動部14a、14bに楕円軌跡運動を行わせることによって、その可動体を可動させることが可能になる。
【0026】
以上、本実施例に係る超音波モータによれば、必要に応じて、圧電素子15に印加する電気信号(例えば電圧)を変化させることによって、振動子10に付与する押圧力を変更することが可能になる。
【0027】
なお、本実施例に係る超音波モータは、次のように変形することも可能である。
図3は、本実施例の変形例1に係る超音波モータを示す図である。なお、同図は上記の図2に対応する図である。
【0028】
図3に示したように、本変形例に係る超音波モータは、コイルバネを設けずに、圧電素子15´が直接に弾性部(厚肉部12a)12に接するように構成されている。なお、圧電素子15´は、図2に示した圧電素子15と同様に、制御ユニット11に電気的に接続されており、制御ユニット11による電気信号の印加により一軸方向(ここでは、図3の紙面上下方向)に伸縮する圧電素子であり、振動子10を押圧する押圧手段の一例である。また、この圧電素子15´も、接着等によって、取付け座16と一体化されて構成され、その取付け座16を介して本体13に取り付けられている。
【0029】
このような構成によっても、必要に応じて、圧電素子15´に印加する電気信号(例えば電圧)を変化させることによって、振動子10に付与する押圧力を変更することが可能となる。
【0030】
但し、本構成では、コイルバネを設けていないことから、振動子10に振動が励起されているときに生じ得る上記の微小な距離変動をコイルバネにより吸収することができない。そこで、その微小な距離変動によって振動子10への押圧力が変動しないように、その微小な距離変動に応じて、圧電素子15´の伸縮を変動させる(圧電素子15´を伸縮方向に振動させる)必要がある。その微小な距離変動の程度は、制御ユニット11が振動子10に印加する電気信号によって予測することが可能である。従って、本構成では、その予測に基づいて、圧電素子15´に印加する電気信号(例えば電圧)を変動させて圧電素子15´の伸縮を変動させることによって、その微小な距離変動により振動子10への押圧力が変動しないように構成している。
【0031】
図4は、本実施例の変形例2に係る超音波モータを示す図である。なお、同図も上記の図2に対応する図である。
図4に示したように、本変形例に係る超音波モータは、弾性部12の振動子側の面上であって厚肉部12aを挟む対称な位置に、同一の2つの圧電素子18a、18bが面で結合され、それらが一体化されて構成されている。この2つの圧電素子18a、18bは、それぞれが、制御ユニット11に電気的に接続されており、制御ユニット11による電気信号の印加により弾性部12との接合面方向(ここでは、図4の紙面左右方向)に伸縮する圧電素子であって、振動子10を押圧する押圧手段の一例である。なお、圧電素子の形状は、18a、18bの2つではなく、リング状の一体構造であってもよい。
【0032】
このような構成によれば、制御ユニット11から2つの圧電素子18a、18bに電気信号が印加されて2つの圧電素子18a、18bが伸縮すると、その伸縮に伴って厚肉部12aが同図紙面上下方向に移動するように弾性部12が変形し、その変形に応じた押圧力が弾性部(厚肉部12a)12を介して振動子10に付与されるようになる。従って、必要に応じて、圧電素子18a、18bに印加する電気信号(例えば電圧)を変化させて圧電素子18a、18bの伸縮量を変化させることによって、振動子10に付与する押圧力を変更することが可能となる。例えば、電気信号の印加により2つの圧電素子18a、18の両方が縮められた場合には、厚肉部12aが同図紙面上方向に移動するような変形が弾性部12に生じ、振動子10への押圧力が増加することとなる。この場合、印加する電気信号(例えば電圧)を変化させて2つの圧電素子18a、18bの両方の縮み具合を変化させることによって、弾性部12の変形により生じる振動子10への押圧力を変更することが可能となる。
【0033】
なお、本構成では、図2に示したような圧電素子15が取付け座16を介して本体13に取り付けられる構成を含まないので、図4に示したように、本体(超音波モータ本体)13´には、それらを収納するためのスペースが設けられていない。
【実施例2】
【0034】
本発明の実施例2は、超音波モータを用いた駆動装置に関する。
図5は、本実施例に係る駆動装置の構成例を示す上面図である。図6は、図5に示した駆動装置のA−A´断面図である。図7は、図5に示した駆動装置の右側面図であって、当該駆動装置が傾いて設置された状態を示す図である。
【0035】
なお、説明の便宜上、図5は、一部に透視図及び断面図を含む。また、図5及び図7では、制御ユニットの記載を省略している。また、図6では、制御ユニット及びそれとの電気的接続を模式的に示している。
【0036】
図5及び図6において、ベース部20と、可動体となるテーブル21との間には、例えばリニアガイドのような案内部材22a、22bが配置されている。案内部材22a、22bは、いずれも、片方がベース部20に固定され、もう一方がテーブル21に固定されている。これによって、ベース部20に対してテーブル21が平行移動できるようになっている。また、テーブル21の側面にはスケール23が固定され、ベース部20の上面にはスケール23と対面するようにセンサ24が固定されており、スケール23とセンサ24によってテーブル21の位置を検出できるようになっている。なお、スケール23及びセンサ24は、位置検出手段の一例である。図5では、スケール23の一部を透視図として示している。
【0037】
超音波モータ25は、図1及び図2を用いて説明した実施例1に係る超音波モータと同一構成を有するものであって、ベース部20に配置されている。なお、超音波モータ25として、図3や図4を用いて説明した実施例1の変形例に係る超音波モータと同一構成を有するものを適用することも勿論可能である。図5では、超音波モータ25の弾性部12、超音波モータ本体13、圧電素子15、取付け座16、及びコイルバネ17を断面図として示している。超音波モータ25の2つの駆動部14a、14bは、それぞれの駆動面がテーブル21と当接しており、圧電素子15の伸縮に応じた押圧力がコイルバネ17及び厚肉部12aを介して振動子10に付与されることにより、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に摩擦力を生じさせることが可能になっている。また、このときに、振動子10に振動が励起されて2つの駆動部14a、14bの楕円軌跡運動が行われることによって、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に生じた摩擦力によりテーブル21を駆動(移動)させることが可能になっている。
【0038】
制御ユニット26は、振動子10、圧電素子15、及びセンサ24のそれぞれに電気的に接続されている。この制御ユニット26は、振動子10と圧電素子15のそれぞれに電気信号を印加し、その時にセンサ24から得られた信号(検出信号)に基づいてテーブル21の位置を制御する機能を有する。
【0039】
また、制御ユニット26は、所定のタイミングで、実際の駆動特性を検出し、その検出結果に応じて、圧電素子15へ印加する電気信号(例えば電圧)を変化させる機能も有する。例えば、一定の電気信号を圧電素子15に印加すると共に周期的な電気信号を振動子10に印加してテーブル21を駆動した場合、この機能は、次のようにして動作する。まず、センサ24から得られる信号(検出信号)から、上記の実際の駆動特性として、所定信号周期におけるテーブル移動量を測定し、閾値と比較する。ここで、閾値とは、予め制御ユニット26に記憶されている駆動特性の閾値であって、上記のようにしてテーブル21を駆動した場合の所定信号周期におけるテーブル移動量を示している。なお、閾値は、許容される範囲のテーブル移動量等というように、範囲として定めることも可能である。閾値との比較の結果、測定値が閾値よりも小さい場合には、圧電素子15が現状よりも伸びるように、すなわち振動子10への押圧力が現状よりも大きくなるように、振動子10へ印加する電気信号を変化させる(例えば振動子10へ印加する電圧を現状よりも大きくする)。これにより、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間の摩擦力が現状よりも大きくなり、所定信号周期当たりのテーブル移動量を現状よりも大きくすることができる。反対に、測定値が閾値よりも大きい場合には、圧電素子15が現状よりも縮むように、すなわち振動子10への押圧力が現状よりも小さくなるように、振動子10へ印加する電気信号を変化させる(例えば振動子10へ印加する電圧を現状よりも小さくする)。これにより、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間の摩擦力が現状よりも小さくなり、所定信号周期当たりのテーブル移動量を現状よりも小さくすることができる。
【0040】
このように、制御ユニット26が、所定信号周期におけるテーブル移動量を測定し、そのテーブル移動量に応じて、圧電素子15に印加する電気信号(例えば電圧)を変化させることによって、振動子10に付与する押圧力を変更することができるので、結果として、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に生じる摩擦力を変更することができる。従って、テーブル21を駆動するための最小限の摩擦力を2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に生じさせることができ、駆動装置の駆動特性を維持することができる。例えば、テーブル21に載せられた荷重が大きいために、測定したテーブル移動量が閾値よりも小さい場合には、振動子10への押圧力が増されるようになるので、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に生じる摩擦力が大きくなり、駆動装置の駆動特性を維持することができる。また、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間の接触状態の変化により摩擦係数が変化した場合であっても、測定したテーブル移動量と閾値との比較結果に応じて振動子10への押圧力が変更されるようになるので、駆動装置の駆動特性を維持することができる。さらに、例えば図7に示すように、駆動装置が傾いた状態で設置された場合であっても、測定したテーブル移動量と閾値との比較結果に応じて振動子10への押圧力が変更されるようになるので、駆動装置の駆動特性を維持することができる。また、この場合に、テーブル21の自然落下を防止することができることは勿論のことである。
【0041】
以上、本実施例に係る駆動装置によれば、測定したテーブル移動量と閾値との比較結果に応じて振動子10に付与する押圧力が変更されるようになるので、テーブル21に載せる荷重、駆動装置の設置状態、2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間の接触状態等に応じて、その2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間の摩擦力を変更することができる。従って、常に、駆動に必要な最小限の摩擦力を2つの駆動部14a、14bとテーブル21との間に生じさせることができるので、駆動装置の駆動特性を維持することができると共に、摩擦、磨耗が減少するので装置寿命が長くなり、駆動装置を長期間に亘って使用することができる。
【0042】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行っても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0043】
10 振動子
11 制御ユニット
12 弾性部
13 超音波モータ本体
14a、14b 駆動部
15 圧電素子
16 取付け座
17 コイルバネ
18a、18b 圧電素子
20 ベース部
21 テーブル
22a、22b 案内部材
23 スケール
24 センサ
25 超音波モータ
26 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の印加により振動を励起する振動子と、
弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、
前記振動子と一体化された接触部と、
前記振動子を押圧する押圧手段と、
を備え、
前記押圧手段による押圧力は可変である、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
電気信号の印加により振動を励起する振動子と、
弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、
前記振動子と一体化された接触部と、
電気信号の印加により一軸方向に伸縮する圧電素子と、
を備え、
前記圧電素子の伸縮に応じた押圧力により、前記弾性部を介して前記振動子が押圧される、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項3】
前記弾性部と前記圧電素子との間に弾性体が配置される、
ことを特徴とする請求項2記載の超音波モータ。
【請求項4】
電気信号の印加により振動を励起する振動子と、
弾性部を介して前記振動子と一体化された超音波モータ本体と、
前記振動子と一体化された接触部と、
前記弾性部に結合され、電気信号の印加により一軸方向に伸縮する圧電素子と、
を備え、
前記圧電素子の伸縮に伴う前記弾性部の変形に応じた押圧力により、前記弾性部を介して前記振動子が押圧される、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項5】
ベース部と、
前記ベース部に対して平行移動可能に配置されるテーブルと、
前記ベース部と前記テーブルとの間に配置される案内部材と、
前記ベース部に配置される、請求項1記載の超音波モータと、
前記テーブルに固定されるスケールと前記ベース部に固定されるセンサとを有する位置検出手段と、
前記超音波モータに電気信号を印加し、前記位置検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記テーブルの位置を制御すると共に前記超音波モータの押圧手段による押圧力を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする超音波モータを用いた駆動装置。
【請求項6】
ベース部と、
前記ベース部に対して平行移動可能に配置されるテーブルと、
前記ベース部と前記テーブルとの間に配置される案内部材と、
前記ベース部に配置される、請求項2乃至4の何れか一項に記載の超音波モータと、
前記テーブルに固定されるスケールと前記ベース部に固定されるセンサとを有する位置検出手段と、
前記超音波モータの振動子と圧電素子に電気信号を印加し、前記位置検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記テーブルの位置を制御すると共に前記振動子が押圧される際の押圧力を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする超音波モータを用いた駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−283906(P2010−283906A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132677(P2009−132677)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】