説明

超音波モータ

【目的】本発明は電歪公転子形の超音波モータに関し、特に低コストで安定して高トルクが得られる方法を提供することにある。
【構成】2相のパルス電圧駆動により偏心回転運転を起こす圧電セラミック円板のステータ1の外側に嵌合され、摩擦接触により偏心回転運動から回転トルクを伝達されるロータ2を硬質プラスチック材を用いて射出成形で作成したロータを用いることによりばらつきの少ない安定した接触が得られ、目的が達成される。
【効果】プラスチックの射出成形により安価に製作できる。また寸法ばらつきが少なく、セラミック材のステータとプラスチック材のロータ間の摩擦接触が良好になり安定なので、安定に高トルクが得られる。さらに、ロータは非金属なので、電界や磁界の影響を受けない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は超音波モータ及びそれを用いたCRT表示装置に係り、特に超音波モータとして改良されたロータ機構を有する電歪公転子形超音波モータに関する。
【0002】
【従来の技術】超音波モータは、減速ギヤ等を介さずに非常に細かな動作が可能で、無電圧時の保持トルクが大きいため、精密調整機構のサーボモータとして有用である。とりわけ、特開昭63−257474号,特公昭63−181676号で開示されている超音波による励振で重心がすりこぎ偏心運動をする圧電素子(セラミック)の円板をステータとして利用する、いわゆる電歪公転子形の超音波モータは、構造が比較的簡単で、小形,低コスト化に適している。
【0003】図8は、従来の電歪公転子超音波モータの構造図を示している。図8の構造は、予め分極処理された強誘電体のPZT等の圧電素子で作られている円板状のステータ1と、その外周に嵌合されているりん青銅板をシャーレ状に絞り加工したロータ2、およびステータ表面の電極を金属製のロータ2で短絡することを防止するためのマイラシート製の絶縁スペーサ6等で構成されている。ロータ2には絞り加工によって3個の突起部が設けられており、ロータ2はこの突起部3を介して適当な接触圧でステータ1の外周に接している。
【0004】ステータ1の両面には4分割した扇形の電極11〜14がスパッタされており、表面の電極の一つと180°対向した側の裏面電極とが互いに接続されて2組(2相分)の電極を構成している。2組の電極にはステータ1の機械的な共振を妨げないようにコイルバネ(図示せず)を介して周波数が共振周波数に合致した2相のパルス電圧を加える構成である(ステータ駆動の詳細は上記で掲げた特許の明細書中に記載しており、ここでは省略する)。
【0005】以上のような構成によって図8の超音波モータは、印加パルス電圧の極性に対応してステータ1の一方の電極側は僅かに伸び(通常1μm弱)、180°異なる他方は縮む結果、ステータ1の重心が偏心していわゆる「すりこぎ」偏心運動を起こす。この運動が摩擦接触を介してロータの突起部3に伝わり、ロータ2に回転トルクが生じて回転する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来例の構成では、発生する回転トルクが小さく、発生するトルクのばらつきも大きくて、個々に突起部バネ圧力の複雑微妙な調整が不可欠であった。また、回転トルクが生じてもステータ接触面の損傷等による経時的なトルク変化が大きい、等の問題があり、この構造の超音波モータは今日に至るも量産可能な工業製品として実用化するに至っていない。また、従来例ではロータ材質が金属であるため、電界や磁界に対する相互作用(干渉)等が問題になる応用、例えば強力な電磁界が発生するCRT表示装置内でのフライバック電圧調整(フォーカス調整)、或いは微弱な電磁界の乱れが問題になる医用電子計測器など、の応用には適さなかった。
【0007】発明者の実験的検討によれば、従来例の問題点の発生は、りん青銅板の絞り加工法によるロータにあることが明らかになった。りん青銅板のような薄い金属バネ材にあっては、量産向の成形加工法として絞り加工法はほとんど唯一の手段であるが、絞り加工法の寸法精度のばらつきは±50μm程度あることが分った。これは電歪公転子形超音波モータのこの場合におけるロータの接触時の撓み量の許容ばらつき約±15μmを越え、大き過ぎることが分った。加えて絞り加工による延,展時の応力による硬度変化も接触圧力ばらつきの原因になることも明らかになった。さらに、金属バネ材で構成したロータ接触部の硬度が高いため接触回転時にステータの接触面を経時的に傷つけ易く、接触摩擦力に大きなばらつきと経時変化をもたらすことが分った。
【0008】本発明の目的は、回転トルクばらつきの少ないロータを構成して安定で高トルクが得られると共に低コストの超音波モータを提供するにある。さらに他の目的は、電界,磁界等の影響を受け難い、或いは与え難い対環境性の良い非金属ロータを用いた超音波モータを提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、電歪公転子形超音波モータにおいて、超音波振動子によるステータに、バネ構成が内接する円筒形状を基本としたロータを射出成形により形成することにより達成される。さらにロータの成形材としてステータ材よりも低硬度でかつ、ヤング率の高い材質、例えばプラスチック材、具体的にはポリカーボネートやアクリルを主体とした材料(強化材を含む)を用いることで達成される。
【0010】
【作用】本発明の手段によれば、ロータを射出成形法で形成するため、寸法ばらつき,加工歪とも少なくなり、その結果、ステータに対するロータの接触圧力が予め所望したほぼ一定な範囲に収めることができ、ばらつきの少ない安定した回転トルクが得られる。
【0011】また、射出成形するロータ材として比較的ヤング率の高いプラスチック材を用いることにより生産性良く低コスト化でき、硬質の金属材料に比較して柔らかなロータは誘電体セラミック材によるステータの接触面に対する接触圧力を大きくしても損傷なく安定な摩擦力が得られる結果、超音波モータの回転トルク,静止保持トルクとも大きくなり、かつ安定になる。さらに、ロータに金属を用いないことにより、電界,磁界の影響を受けず、電気的に耐環境性の高い応用、例えばTV受像機のフライバック回路におけるフォーカス電圧調整サーボ等に適用可能となる。
【0012】
【実施例】図1に本発明の超音波モータの一実施例構成を示す。図1において、圧電セラミックによる円板状のステータ1には外接して円筒状のロータ2が組み込まれている。円筒状のロータ2には120度毎の等間隔で円筒の一部を直線化してステータ1に接触させるロータの接触部3が設けられている。また、円筒状のリングロータ2には、外部の負荷(図示せず)に回転トルクを取り出すための円板状のロータ側板4が各接触部3の中間に設けられている側板支持部5を介して取付けられている。
【0013】ここで、リングロータ2,ロータ接触部3,ロータ側板4,側板支持部5は、ポリカーボネート若しくはアクリル樹脂のような弾性に富む、比較的ヤング率の高いプラスチック材料(必要に応じてフィラーを含む)を用い、射出成形法により一体形成されている。
【0014】ステータ1の表裏には、先の従来例で説明したように4分割した扇形のスパッタ蒸着した電極(図示せず)が設けられており、金属スプリング線を介してセラミックステータの共振周波数の2相パルス電圧が加えられる。
【0015】図1の実施例におけるステータの寸法は、一例として20mmφ,厚みは1.5mm,ロータ2の円筒内径は23mmφ,円筒部の幅は3mm,厚みは1mm強である。このロータ2にステータ1が嵌合された状態では、ロータ2の接触部3はステータ1によって約50μm程撓んで150gfcm程の保持トルクを有する。
【0016】以上のような構成において、ステータ1を共振周波数約100kHz,5VP−Pの2相パルス電圧で励振すると、分極に対して同極性の電圧印加部は圧縮されて径方向に伸び反対部は縮む結果、ステータは共振周波数で1μm弱の偏心すりこぎ運動を起こし、その運動は摩擦接触によって外側のロータ2に伝えられ、ロータ2は回転する。
【0017】ロータの回転数は負荷によって異なるが、無負荷で100rpm 程度、最大起動トルクは70gf−cmが得られた。このトルクは従来の絞り加工によるりん青銅のロータを用いた同じ寸法のモータの最大トルクに比較し2倍以上であり、かつ接触部の不安定性によるばらつきも大幅に減少した。その原因は射出成形により寸法ばらつきが±10μm以下と従来比1/5以下になり加工歪も少ないこと、プラスチックのリング状ロータはバネ材に用いる硬質金属の場合のようにセラミックのステータ接触面を損傷することがなくなった。したがって、接触圧力を高めても接触摩擦は経時的に安定し、接触面積の広い構造と相俟って、安定で高トルクが得られるようになった。
【0018】さらに、比較的安価な材料による射出成形法は、無調整化と併せて低コスト化できる。
【0019】図2は本発明の超音波モータの他の実施例を示す。図2においても既述の図1と同等部は同一符号で示している。
【0020】図2の構成は、圧電セラミックによるステータ1と外接するリングロータ2,ロータの突起部31,ロータ側板4,側板支持部5から成る。ここで、ロータの突起部31,ロータ側板4、及び側板支持部5はロータ2と同一材質で、射出成形法でロータ2と同時に一体形成されている。
【0021】なお、ステータ1の電極構成等については、既に図8,図1で説明したものと同様であり、基本動作として、高周波の2相パルス電圧の印加によりステータ1が偏心運動を起こし、ロータ2を回転させる点もまた同様である。
【0022】図2の実施例においては、ロータ2とステータ1の接触が、簡単な形状の突起部31に依っているため、比較的作り易く、ロータ2の最大径も幾分小さくできる利点がある。反面、既述の図1のロータ構造に比較すると、接触部の経時摩耗によるトルク変動が幾分大きくなる。
【0023】図3は本発明の超音波モータの他の実施例を示す。図3の実施例におけるロータ2は、他の実施例よりも多い4個所のロータ接触部を有している。このため図3の構成の超音波モータは、接触摩擦伝達による回転トルクを幾分大きくすることができる。
【0024】本方式モータは接触摩擦により回転トルクを発生するので摩擦接触個所が増えればトルクも順次増加すると考えられるが、他方、接触個所が増すにつれて寸法ばらつき(特に真円からのひずみ)等の影響により各接触点の接触圧を均一にすることが難しくなり、接触圧力の不均一は回転ムラの原因となる。したがって、ロータの接触個所は3個所ないし4個所が望ましく、最大でも6個所位である。図4は本発明の超音波モータの他の実施例を示す。図4の実施例においては、超音波振動子によるステータ1の外側にあるリング状のロータ2にはステータ1と接触するカンチレバー32が設けてある。また、ロータ2の側板4は、他の実施例と異なりリング状ロータ2と隙間なく一体になっている。
【0025】このような構造においては、ロータのリング部が側板によって拘束され撓むことができなくともカンチレバー部の撓みによってロータとステータは安定な摩擦接触が得られるため、ロータのリング2と側板4は隙間なく一体化することができる。したがって、隙間が無い分ステータ側と負荷側(ロータ側板の外側)は大きな縁面距離が得られ、高電圧の負荷駆動に適している。この利点を最大に享受しうる応用には、CRT表示装置のフォーカス高電圧調整用のサーボモータがある。この応用例は図8に示しており、後程詳述する。
【0026】プラスチックロータにおいて、接触圧力を総てカンチレバーより与える構成によって、リング部の撓みによるバネを省略することができる。
【0027】図5は、本発明の超音波モータの他の実施例を示す。図5においては、超音波モータはステータ1とロータの側板2と、接触部32が一体成形されたロータから構成されている。接触部32はカンチレバーを構成し、ロータ1に接触圧力を与えている。
【0028】図5の実施例で示した構成では、ロータのリング部を省略できるので、ロータが軽量化され、その分ロータの慣性が小さくなり、起動,停止応答時間(10〜20ms程度)がより速められるとともに、簡単な形状なので低コスト化できる利点がある。
【0029】しかしながら図5の実施例の構造では、カンチレバーの実効的な長さが短かくて、ステータの厚みが相対的に無視できず、ステータの厚み方向に対する接触圧が等しく見做せないため、最適摩擦力(或いは保持トルク)の設計が幾分面倒である。そのため、次にカンチレバーの実効長をより長くする構造が示される。
【0030】図6は本発明の超音波モータの他の実施例を示す。図6の実施例においては、ステータ1に接触するロータの接触部32のカンチレバーをコの字形にすることによりカンチレバーの長さをステータの厚みに対して十分長く設定し、ステータの厚み方向に対して一定の接触圧が得られるようにしている。
【0031】これまでの実施例においては、ロータからステータへの接触圧をロータ自体の剛性によって保持したが、ロータの剛性に加えて他の力を接触圧の保持に利用することも可能であり、そのような実施例を次に開示する。
【0032】図7は本発明の他の一実施例を示す。図7における構造の特徴は、正面図(略図)に見る如く、圧電体の円板状ステータ1にリング状ロータ2が直線部3を介して接触していること、また側面図に示すように、ステータ1とロータ2は共に斜角度の接触面を有していることである。
【0033】さらに、図7の側面図により本実施例の構成を示すと、ステータ1の電極面は給電と保持を兼ねた金属コイル10及び端子板21を介して保持筐体22に沿って基板7の給電導体23へ導いている。他方、ロータ2には負荷へ回転トルクを伝達するための(手動回転用シャフト41付の)側板4が嵌合してあり、側板4には負荷となるポテンショメータの金属レバー形の刷子9が取付けてある。刷子9の先端は、基板7に予め厚膜印刷してあるポテンショメータの抵抗体パターン8及び集電用の共通導体パターン81に接触している。
【0034】以上のような図7の構成における動作は次のようになる。給電パターン23より高周波電圧がステータ1に印加されるとステータ1の公転振動は円錐状の接触面を介してロータ2に回転トルクとして伝えられ、ロータ2及び側板4が回転する。したがって、ポテンショメータの刷子9が回転して、小形で精密動作の電動ポテンショメータが実現できる。
【0035】図7の実施例においては、ステータ1とロータ2の接触面の接触圧は、ロータ2の剛性のみに依らず、主としてステータ側の金属コイル10と負荷側ポテンショメータの刷子9との推力によっても調整可能なので、ロータ2の材質はより広い範囲の剛性のものを使用することができ、設計の自由度が増す利点がある。また、第2の利点は、負荷側からの推力を接触面で保持しているので、推力を必要とする負荷に対して推力軸受が不要にできることである。
【0036】ロータとステータ間の接触面を斜角度にして軸受を不要にする従来例は特開昭63−181677号に開示されているが、従来例は、従来例に述べられている如く接触面がステータ,ロータの全周に亘る円周接触のため、ステータ,ロータとも極めて高い真円度と平滑度(例えば共に±数μm程度)を必要とし、製造及び寿命の点で難しかった。その点開示した図7の実施例では全周でなく3点接触であり、真円度,平滑度とも制限は大幅に許容される。
【0037】以上、本発明の射出成形ロータを用いた超音波モータの実施例構成を示したが、ロータの形状は実施例に限定されたものでなく、必要に応じ適宜変更できる。プラスチック材質についても同様である。
【0038】ロータのプラスチック材料には、通常、目的に応じて各種の強化材料(フィラー)が適宜混入される。例えば、より小形にするために弾性率(ヤング率)を向上するには、シリカ,アルミナ等の酸化物微粒子,炭酸カルシウムの如き炭酸塩やガラス等の珪酸塩が用いられる。また、次の応用例で述べるような、高電圧フォーカス調整用サーボモータとして高電圧フライバック回路部と一体化するには、難燃化と温度特性向上(線膨張係数低減)が必要であり、前者のためには水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウムなどの水酸化物、後者にはシリカ,アルミナ等の酸化物,炭酸カルシウムのような炭酸塩,ガラス類の珪酸塩が混入される。また、ロータ側の摩擦接触面に少なくとも数μmの耐摩耗性の高いフィラーを含む塗料を塗布することは長寿命化の点で有効である。
【0039】次に本発明における超音波モータの代表的な応用例について示す。
【0040】図7に本発明をCRT表示装置のフォーカス電圧調整及びスクリーン電圧調整に適用した実施例を示す。図7において、高電圧発生回路100は、フライバックトランス110及び自動調整装置120、その他で構成されており、可動部を除き高電圧部が露出しないよう一体に樹脂モールドしてある。フライバックトランス110の1次巻線131は、抵抗512を介して水平偏向コイル511に並列に接続されており、端子513に供給される+B電源と水平偏向駆動回路300により駆動され、より具体的にはその水平帰線期間に発生するパルス電圧により駆動される。なお端子310には水平同期パルスが入力される。
【0041】一方、フライバックトランス110の2次側巻線132,133の出力は整流ダイオード136,137により整流され、コンデンサ138で平滑されて、高電圧出力端子153を介し、CRT200のアノード電圧として供給される。アノード電圧の一例は25kVないし30kV程度の範囲である。フライバックトランス110の2次側巻線133の他端は抵抗527,コンデンサ526の並列回路からなる過電流検出回路520を介して接地されている。
【0042】フライバックトランス110のアノード出力電圧は高抵抗141,142からなる分圧回路を介して検出し、高電圧制御回路400を介してアノード電圧が所定の一定値になるよう水平偏向駆動回路300のパルス電圧を制御するように構成されている。
【0043】アノード出力端子153への高電圧は、高抵抗143,高抵抗値のポテンショメータ121a,121bとその超音波モータ111a,111bからなる自動調整装置120で分圧され、その分圧出力は、端子154からCRT200のフォーカス電極へ与えられている(通常、高精細CRT表示装置や大形TVでは2個のフォーカス電極を有するが、図7の実施例では図面の簡略化のため、1個しか示していない)。同様にして、端子155からはCRT200のスクリーン電極へ与えられている。これらの必要とする分圧電圧は、通常、フォーカス電極では6〜8kV、スクリーン電極では500〜800Vの範囲である。
【0044】フォーカス電圧を調整するポテンショメータ121aの抵抗値は数〜10MΩである。ポテンショメータ124aとその超音波モータ111aは機械的に一体化してあり、その駆動用モータには、フライバックトランスと一体化モールドするに適した、小形で比較的磁気的な影響が少ない、本発明の電歪公転子形の小形超音波モータが用いられている。
【0045】CRT200の管面側には、光学的な拡大レンズ系と受光センサを備える工業的な撮像装置(ITV)600が配置されており、その出力610は、マイクロコンピュータ内蔵のコントローラ700へ接続されている。コントローラ700の駆動出力710,720は、それぞれフォーカス電圧調整用の超音波モータ111aの入力線116a、及びスクリーン電圧調整用の超音波モータ111bの入力線116bへ接続されている。
【0046】以上のように構成された図7において同期入力端子310に同期入力を受けて水平偏向駆動回路300は偏向コイル511と共にフライバックトランスの1次コイル131を駆動し、フライバックトランス2次側アノード出力端子153に30kV程度の電圧を発生する。この電圧は、高抵抗141,142の分圧回路で検出され、高圧制御回路400で一定電圧となるよう負帰還制御され、定電圧となり、CRT200は表示可能な状態にある。
【0047】この状態から図7の構成のフォーカス自動調整は、次のようにして行われる。まず、CRT200の管面上の焦点を調節すべき位置に最細の線分によるクロスハッチ(十字パターン、図示せず)を写し出し、撮像装置600により焦点調節すべき個所のクロスハッチに焦点を合わせてクロスハッチ線分を図7に示すような線幅に比例した時間幅の電気信号に変換する。すなわち、図7の波形は、クロスハッチの線分を撮像装置600によって走査した場合の電気信号出力で、ここでは線幅(太さ)として振幅A/2における走査時間幅tW をもって定義する。すなわち、tW を一定クロックのカウンタで計数した値Wをフォーカス情報として用い、Wが最小になるようにフォーカス電圧を調整し、その状態をベストフォーカスと見做す。
【0048】このフォーカス調整における制御と状態判断は、マイクロコンピュータを用いた図7のコントローラ700によって行われる。すなわち、図7において、コントローラ700の出力710から歩進的な駆動電圧を自動調整装置120の超音波モータ111aに与え、それによってフォーカス用ポテンショメータ121aの分圧電圧を微調し、前記の線幅の信号tW を最小とするよう調整する。
【0049】なお、スクリーン電圧の調整に関しても上記と同様に、ITVより管面の輝度を測定し、規定の輝度になるようにスクリーン用ポテンショメータ121bを駆動する。
【0050】図7に示したフォーカス電圧(及びスクリーン電圧)の自動調整システムの構成においては、電動ポテンショメータの機能で示してある自動調整装置120が、調整精度や信頼性の点で特に重要である。
【0051】フォーカス及びスクリーン電圧の調整精度は出力電圧の1%程度が必要なので、1ステップ当りの調整の刻みはその1/4(0.25% )程度に選ぶのが適当である。また、自動調整装置120は、動作の信頼性の点で、フライバックトランスと一体化モールドして動作し得ることが望ましい。したがって、自動調整装置の駆動用モータとしては、以下のような要件を満足することが望ましい。
【0052】(1)強磁界中でも支障なく動作すること。
【0053】(2)定常時の発熱が少ないこと。
【0054】(3)微少角の歩進性があり静止トルクが大きいこと。
【0055】以上のような要件を満足せしめるため、本発明の実施例では、駆動用モータとして、本明細書で詳述した超音波モータを使用している。
【0056】なお、図7の応用実施例では、ポテンショメータと超音波モータを予め一体化して高圧側のフライバック回路筺体内に収納した例で示したが、他の実装方法としては、ポテンショメータ側のみを高圧側筺体内に収納してポテンショメータのシャフトを外部に出しておき、超音波モータは後から外部シャフトに嵌合して駆動する構成としてもよい。このような実装においては、シャフトの回転機構により負荷トルクは増加するが、高電圧のポテンショメータ側と低電圧の超音波モータ側は筺体によって隔離されるため、必要な絶縁距離の制約は実際上受けない利点がある。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、電歪公転子形超音波モータのロータに射出成形法で製作したロータを用いることにより低コストで接触圧ばらつきの少ない、安定した高トルクの超音波モータが実現できる。さらに、ロータ材としてヤング率の高いプラスチック材を用いることにより、上記の利点はさらに増進される。また、プラスチックロータ化により、磁界や電界の影響を最小にし、強電界や強磁界中での応用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す超音波モータの構造図である。
【図7】本発明の他の実施例を示すポテンショメータ駆動超音波モータの構成図である。
【図8】本発明になるCRT表示装置の自動調整を示す構成図である。
【図9】従来の超音波モータの構造図である。
【符号の説明】
1…ステータ、2…ロータ、3…突起部(ロータの接触部)、4…ロータの側板、5…側板支持部、7…基板、8…抵抗体パターン、9…刷子、10…金属コイル、41…シャフト、81…導体パターン、100…高電圧発生回路、110…フライバックトランス、111a,111b…超音波モータ、120…自動調整装置、121a,121b…ポテンショメータ、200…CRT、300…水平偏向駆動回路、400…高圧制御回路、600…撮像装置、700…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】超音波の共振周波数信号で励振されて偏心公転する円板状のステータと該ステータに摩擦接触するバネ機構を有するロータから構成される超音波モータにおいて、前記ロータは射出成形品で一体形成されてなることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】請求項1において、前記ロータ部の硬度をステータ部の硬度よりも低くしたことを特徴とする超音波モータ。
【請求項3】請求項1において、前記ロータがプラスチック材で構成されていることを特徴とする超音波モータ。
【請求項4】請求項1において、前記ロータのバネ機構として、前記ステータに内接する等間隔の接触部を設けた円筒を用いることを特徴とする超音波モータ。
【請求項5】請求項4において、前記ステータに内接する前記ロータ部の接触部を等間隔に3個所又は4個所設けたことを特徴とする超音波モータ。
【請求項6】請求項1において、前記ロータのバネ機構として、前記ステータに接するカンチレバーを用いたことを特徴とする超音波モータ。
【請求項7】請求項4において、前記ロータのバネ機構として、前記円筒とカンチレバーを併用したことを特徴とする超音波モータ。
【請求項8】ポテンショメータによりCRTの焦点あるいは輝度の調整を行う調整装置を備えたCRT表示装置において、前記調整装置は外部からの調整信号に基づいて前記ポテンショメータを駆動するモータを含み、該モータは前記ポテンショメータと機械的に一体化構成してなり、該モータは請求項1乃至請求項7記載のいずれかより構成されることを特徴とするCRT表示装置。
【請求項9】請求項8において、前記焦点調整あるいは輝度調整を行うポテンショメータとそれを駆動する前記モータを同一基板上に一体に形成してなることを特徴とするCRT表示装置。
【請求項10】請求項9において、前記ポテンショメータの抵抗体は前記基板に厚膜印刷され、該抵抗体に接触する可動子を前記モータで駆動するように構成することを特徴とするCRT表示装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate