説明

超音波探触子

【目的】 高周波領域での、圧電素子と音響レンズとの間の不整合を是正したい。
【構成】 圧電素子の下部電極と音響レンズとの間に、音響整合層を設けた。この場合、厚みは、音波の波長の4分の1の大きさ、音響インピーダンスZは、圧電素子と音響レンズの音響インピーダンスをZ1、Z2とした時、Z=(Z1・Z21/2とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波顕微鏡の探触子、特に高周波用に好適な超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】図2は、従来の超音波顕微鏡の探触子を示す図である。圧電素子2の上部電極1が接着され、下部には下部電極3を介して音響レンズ5が接着されている。音響レンズ5の先端部は凹面部6aとなっており、この凹面部6aには、音響整合層6を接着させている。音響整合層6の厚みはこの材質中を通過する音波の波長の1/4の厚みとする。探触子として使用する場合には、被検体8との間に水滴7を付加して、この水滴7を介して超音波の送波及び受波を行う。
【0003】圧電素子2、音響レンズ5、音響整合層6の材料としては以下のものがある。
圧電素子2……Zn0音響レンズ5……サファイア音響整合層6……カルコゲナイト系の材料この他の材料もある。いずれにしろ、各材料は、それぞれの目的によって選ばれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例は、種々の材料を選択しても、超音波の周波数が大きくなった場合、圧電素子2と音響レンズ5との間での音響上の整合が問題になる。これは、高周波の超音波を使った場合、音響レンズとの音響インピーダンスの差が減衰に対しより大きな影響を与えるためである。音響レンズ5と水滴(媒質)7との間では、音響レンズ5の音響インピーダンスとの差は整合層6の材料選択によって解決可能である。しかし、圧電素子2と音響レンズ5との間では、両材料の選択によっての整合の可能性もあるが、現実には、圧電素子2の材料は限られたものであり、両材料の選択による整合は困難である。
【0005】本発明の目的は、高周波の超音波でも、圧電素子と音響レンズとの整合を可能にしてなる超音波探触子を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、圧電素子の下部電極と音響レンズとの間に音響整合層を設けた(請求項1)。更に、音響整合層の音響インピーダンスZは、Z=(Z1・Z21/2とし、厚みはλ/4とした(ここで、Z1、Z2とは圧電素子2、音響レンズ5の音響インピーダンス、λは音響整合層の厚さである)(請求項2)。
【0007】
【作用】本発明によれば、音響整合層によって、圧電素子と音響レンズとの音響的整合がとられる(請求項1、2)。
【0008】
【実施例】図1は本発明の探触子の実施例図である。本実施例は、下部電極と音響レンズ5との間に、音響整合層4を設けた点が特徴である。音響整合層4の厚みは、λ/4とした。ここで、λとはこの材質を通過する音波の波長である。更に、整合層4の音響インピーダンスZは、Z=(Z1・Z21/2とした。ここで、Z1は圧電素子2の音響インピーダンス、Z2は音響レンズ5の音響インピーダンスである。具体例としては、圧電素子2をZn0、音響レンズ5をサファイアで形成した場合、音響整合層4はPZTで形成すればよい。
【0009】以上の音響インピーダンス4を設けたことによって、圧電素子2と音響レンズ5とは、音響的マッチングをはかることができた。これによって、圧電素子2と音響レンズ5との間では超音波の送波及び受波が最大パワーで実現できた。
【0010】
【発明の効果】本発明によれば、圧電素子と音響レンズとの間に、両者を整合させるための音響整合層を設けたので、両者のミスマッチはなくなる。特に高周波領域でのミスマッチ是正に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波探触子の実施例図である。
【図2】従来の超音波探触子を示す図である。
【符号の説明】
1 上部電極
2 圧電素子
3 下部電極
4 音響整合層
5 音響レンズ
6 音響整合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下に電極を有する圧電素子と、下部電極側に設けた音響レンズと、より成る超音波探触子において、上記下部電極と音響レンズとの間に音響整合層を設けてなる超音波探触子。
【請求項2】 上記音響整合層は、圧電素子の音響インピーダンスをZ1、音響レンズの音響インピーダンスをZ2とした時、その音響インピーダンスZをZ=(Z1・Z21/2とし、その厚さをλ/4(λは音響整合層を通過する音波の波長)としてなる請求項1の超音波探触子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−203633
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−35597
【出願日】平成4年(1992)1月27日
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)