説明

超音波検査方法および超音波検査装置

入口を備えた穴部を具備する部品を検査する方法に関する。この方法は、超音波を液体のカップリング媒体を介して部品内に向ける工程と、超音波を液体のカップリング媒体を介して部品から受信する工程と、部品の特性を測定すべく受信された超音波を処理する工程とを含む。穴部の入口は、液体のカップリング媒体が穴部の入口の中に流れ込むのを防ぐべくテープでシールされる。テープは液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの40%以内の音響インピーダンスを有する。液体のカップリング媒体(ほとんどの場合は水であるだろう)の音響インピーダンスと相対的に近い音響インピーダンスを有するテープを選択することによって、テープは、超音波に対して比較的透明であり、それ故に少なくとも穴部の壁中の欠陥部の有無が測定されることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて部品を検査するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、穴部2を備えた複合材部品1を検査する従来の方法を示す。部品1は、水4を含む槽3内に浸される。超音波エネルギーが水4を通してトランスデューサー6から部品1内に放射される。超音波エネルギーは、部品1を通過後、反射板から離れるように向けられ、部品を通してトランスデューサー6に戻される。受信された超音波エネルギーは、部品の内部構造の画像を作成すべく超音波計測システム(図示せず)によって処理される。
【0003】
層間剥離欠陥部5が穴部2から発生する。部品1が槽3内に設置されたとき、水4は穴部2内に流れ込み且つ層間剥離欠陥部5を満たす。結果として、欠陥部5を超音波計測システムによって検出することが困難になる。従って、従来の超音波の水侵法は、斯かる欠陥部を検出するのに信頼できない場合がある。
【0004】
この問題に対する従来の一つの解決法は、トランスデューサーを直接パネルと接触させて設置することであり、その結果、液体のカップリング(coupling)媒体の必要性を除去する。しかしながら、この解決法は多大な労力および時間を必要としうる。従来の別の解決法は、位相配列の超音波装置を先の解決法と同様に直接パネルと接触させて使用することであり、その結果、液体のカップリング媒体の必要性を除去する。しかしながら、この解決法は高コストとなる可能性があり且つ特別に訓練された作業者を必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第一の態様では、入口を備えた穴部を具備する部品を検査する方法において、超音波を液体のカップリング媒体を介して部品内に向ける工程と、超音波を液体のカップリング媒体を介して部品から受信する工程と、部品の特性を測定すべく受信された超音波を処理する工程と、液体のカップリング媒体が穴部の入口の中に流れ込むのを防ぐべく穴部の入口をテープでシールする工程とを含み、テープが液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの40%以内の音響インピーダンスを有する、方法が提供される。
【0006】
本発明の第二の態様では、入口を備えた穴部を具備する部品を検査するための装置において、超音波計測装置と、穴部の入口をシールするためのテープであって、水の音響インピーダンスの40%以内の音響インピーダンスを有するテープ(すなわち、テープは1.49×106kg・s-1・m-2の40%以内の音響インピーダンスを有する)とを具備する、装置が提供される。
【0007】
液体のカップリング媒体(ほとんどの場合は水であるだろう)の音響インピーダンスと相対的に近い音響インピーダンスを有するテープを選択することによって、テープは、超音波に対して比較的透明であり、それ故に少なくとも穴部の壁中の欠陥部の有無が測定されることを可能とする。
【0008】
典型的には、テープは液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの30%以内の音響インピーダンスを有する。更に好ましくは、テープは液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの20%以内の音響インピーダンスを有する。
【0009】
典型的には、テープは、液体のカップリング媒体の縦波速度の40%以内の縦波速度を有し、好ましくは30%以内の縦波速度を有し、最も好ましくは20%以内の縦波速度を有する。
【0010】
典型的には、テープは、部品内に向けられた超音波を6dB未満だけ減衰させ、好ましくは4dB未満だけ減衰させる。
【0011】
典型的には、部品は繊維強化複合材料のような積層材料から製造される。このとき、本方法は、部品内の層間剥離欠陥部の有無を検出するのに使用され、特に穴部の壁中の層間剥離欠陥部の有無を検出するのに使用されうる。
【0012】
穴部は、二つの入口を備えた貫通穴であってもよく、或いは一つの入口のみを備えた止まり穴であってもよい。貫通穴の場合、典型的には、両方の入口がテープでシールされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来の超音波水侵試験の配置における、穴部を備えた部品を示す。
【図2】図2は、テープでシールされた穴部を備えた部品を示す。
【図3】図3は、図2の部品を検査する方法を示す。
【図4】図4は、図2の部品を検査する代替的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図2は、部品10を垂直に貫通するドリル穴部11を具備する複合材部品10を示し、ドリル穴部11は上入口および下入口を作るべく複合材部品10の上面14および下面15の両面を貫く。部品10は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)複合材料から製造され、このとき複合材料の積層が穴部11で終了する。層間剥離欠陥部18が穴部11の側面から発生することが示される。
【0015】
テープ19が穴部11の上入口および下入口の両方をシールすべく貼り付けられる。テープ19は、耐水性接着剤の薄い層(図示せず)を用いて、複合材部品10の上面14および下面15に取り付けられる。部品10にテープ19を取り付けるのに使用される接着剤は室温で硬化し、このことはテープ19を貼り付けることを容易にする。テープ19が貼り付けられた後、図2に示されるように、スクレーパー16が気泡を除去すべくテープ19を横切って擦り付けられる。スクレーパー16は、気泡が作業者によって見られることができるように透明である。
【0016】
次に、部品10は図3に示されるように水槽12内に浸され、テープ19は水13が上入口または下入口を通して穴部11に入るのを防ぐ。
【0017】
超音波エネルギー22が超音波トランスデューサー20から放射され且つ水13を介して部品10内に向けられる。超音波エネルギーは、部品10を通過後、ガラス反射板21によって反射され、部品10および水13を通って超音波トランスデューサー20に戻される。その後、受信された超音波23は、部品10の特性を測定すべく計測システム24によって処理される。
【0018】
トランスデューサー20は、超音波エネルギーの短パルスを送信し、且つa)部品の前面からの反射、b)部品内の欠陥部からの反射、c)部品の後面からの反射、およびd)反射板21からの反射に起因する一連の反射パルスを受信する。計測システム24は、複数の方法でこれらパルスを分析しうる。例として、計測システム24は、部品内の欠陥部からのパルスb)の到着時間を計測しうる。この計測は部品内の欠陥部の有無および欠陥部の深さに関する情報を与える。或いは、パルスd)の振幅が計測されてもよい。このパルスは部品を二度通過しているので、このパルスの振幅は、部品を通しての部品全体の減衰損失の指標、すなわち欠陥部の有無の指標を与える。トランスデューサーは、部品の二次元画像を作成すべくラスターパターンで部品と平行に走査される。典型的には、データはカラー画像として表示され、ここで各ピクセルのカラーは、欠陥部の深さ、または部品を通しての減衰損失を示す。
【0019】
槽12内の水13は、超音波エネルギーが比較的低く且つ均一な減衰で進むことができるカップリング媒体として作用する。テープ19が、水13が穴部11の中に流れるのを防ぐので、層間剥離欠陥部18は空気で満たされる。空気はカップリング媒体の水および部品10の複合材料の両方よりも実質的に大きい音響インピーダンスを有す。その結果、超音波が欠陥部18を通過するとき、超音波はより大きく減衰される。このことは、欠陥部18が計測システム24によって欠陥部18の周辺部と区別されることを可能とする。
【0020】
接着剤層とテープ19との結合部は、部品内に向けられる超音波22を各方向に6dB未満(好ましくは4dB未満)だけ減衰させる。このことは、十分な量の超音波エネルギーがトランスデューサー20に戻されることを可能とし、それによりテープ領域内の部品の内部構造の検査が可能となる。
【0021】
テープ19および接着剤は、(1.49×106rayl=1.49×106kg・s-1・m-2の音響インピーダンスを有する)水の音響インピーダンスと同等の音響インピーダンスを有する材料から製造される。このことは、計測システムによって作り出される超音波画像の解釈において、テープ19または接着剤を考慮するための余分な作業が、ほとんど必要とされない、または全く必要とされないので有益である。
【0022】
テープとしては、NUWC XP−1ポリウレタン尿素、PRC−Desoto社のPR−1547またはPR−1592、或いはCytech社のコナセイン(Conathane:登録商標)EN−7のような材料が適切である。これら材料は、約1.71×106kg・s-1・m-2(rayl)、すなわち水の音響インピーダンスよりも約15%高い音響インピーダンスを有する。このテープ材料は、各方向において3dBよりも低い減衰損失を与えるであろうことが期待される。
【0023】
このテープは、単純な押出加工によって、またはカレンダー加工によって製造される。
【0024】
接着剤はスプレーまたは浸し塗り(dipping)によってテープに塗布される。接着剤として、エポキシ接着剤DP−190のような材料が適切である。テープを部品に固着するのに接着剤の薄い層のみが必要とされるので、接着剤の音響インピーダンスは決定的に重要ではない。
【0025】
また好ましくは、テープ19は水の縦波速度(1430m/s)と同等の縦波速度を有する。このことは、計測システムが追加の計測補償を導入する必要なしに受信された超音波信号を処理するための(パルス−エコー技術のような)タイム・オブ・フライト法を用いることを可能とする。
【0026】
NUWC XP−1ポリウレタン尿素、PRC−Desoto社のPR−1547およびPR−1592、ならびにCytech社のコナセイン(Conathane:登録商標)EN−7は、室温の純水の密度と完全に同等の密度を有する(例えば、PR−1547は、1g/cm3である水と比較して1.05g/cm3の密度を有する)。音響インピーダンスが(密度×速度)として計算されるので、このとき、これら材料が水の縦波速度と同等の縦波速度を有することが理解できる。
【0027】
ダブルパス透過超音波伝送計測システムが図3に示されるが、シングルパス透過技術を含む他の計測モードが採用されてもよい。
【0028】
更に、超音波トランスデューサー20と部品10との間のカップリングを提供する水路は、部品を水中に完全に浸す代わりに、ジェット水流を部品上に浴びせることによって提供されてもよい。例が図4に示され、図4において、送信機30が、上方から部品上に噴出するジェット水流31を介して超音波を部品内に向け、且つ受信機32が、下方から部品上に噴出するジェット水流33を介して部品から超音波を受信する。
【0029】
記載例では水のカップリング媒体が使用されるが、その他適切な液体のカップリング媒体が使用されてもよい。この場合、好ましくは、テープおよび接着剤は、水の代替のカップリング媒体の音響インピーダンスおよび縦波速度と同等の音響インピーダンスおよび縦波速度を有すべく選択される。
【0030】
本発明が、一つ以上の好ましい実施形態に関して上述されたが、添付の特許請求の範囲において定義された発明の範囲を逸脱することなく種々の変更または修正がなされうることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口を備えた穴部を具備する部品を検査する方法において、
a. 超音波を液体のカップリング媒体を介して前記部品内に向ける工程と、
b. 超音波を前記液体のカップリング媒体を介して前記部品から受信する工程と、
c. 前記部品の特性を測定すべく前記受信された超音波を処理する工程と、
d. 前記液体のカップリング媒体が前記穴部の入口の中に流れ込むのを防ぐべく前記穴部の入口をテープでシールする工程とを含み、
前記テープが前記液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの40%以内の音響インピーダンスを有する、方法。
【請求項2】
前記テープが前記液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの30%以内の音響インピーダンスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テープが前記液体のカップリング媒体の音響インピーダンスの20%以内の音響インピーダンスを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記テープが前記液体のカップリング媒体の縦波速度の40%以内の縦波速度を有する、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記テープが前記液体のカップリング媒体の縦波速度の30%以内の縦波速度を有する、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記テープが前記液体のカップリング媒体の縦波速度の20%以内の縦波速度を有する、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
前記テープが、前記部品内に向けられる前記超音波を6dB未満だけ減衰させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記テープが接着剤を用いて前記部品の表面に接着される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤が室温で硬化するエポキシ樹脂である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部品が積層材料から製造される、請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記受信された超音波が前記穴部の壁中の欠陥部の有無を測定すべく処理される、請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
入口を備えた穴部を具備する部品を検査するための装置であって、
a. 超音波計測装置と、
b. 前記穴部の入口をシールするためのテープであって、水の音響インピーダンス(1.49×106kg・s-1・m-2)の40%以内の音響インピーダンスを有するテープと
を具備する、装置。
【請求項13】
前記テープが水の音響インピーダンス(1.49×106kg・s-1・m-2)の30%以内の音響インピーダンスを有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記テープが水の音響インピーダンス(1.49×106kg・s-1・m-2)の20%以内の音響インピーダンスを有する、請求項13に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−519046(P2011−519046A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506775(P2011−506775)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050390
【国際公開番号】WO2009/133384
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508305926)エアバス オペレーションズ リミティド (38)
【Fターム(参考)】