説明

超音波画像処理装置およびプログラム

【課題】サフィックスマークを伴う複数の計測ラインを表示する場合に、サフィックスマークの視認性を向上させることを目的とする。
【解決手段】超音波診断装置は、超音波画像データが示す超音波画像と、超音波画像上に重ねられる計測ラインおよび計測量とをディスプレイに表示する。この表示処理は、複数の計測用図形を順次表示し、さらに、既に表示された計測用図形をユーザの操作に応じて移動して表示するものである。この処理においては、複数の計測用図形を表示する場合において、複数の計測用図形のサフィックスマークが互いに視認性を阻害することとなる場合には、いずれかの計測用図形のサフィックスマークが規定位置から変位した代替位置に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置およびプログラムに関し、特に、一方側の端部にサフィックスマークを伴う計測ラインを超音波画像上に表示する装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波の送受信により生体組織の超音波画像データを取得し、超音波画像を表示する装置が広く用いられている。このような超音波診断装置は、表示された画像上の距離を計測する機能を備えている。この機能では、ユーザの操作によって表示画像上に2つの計測点が指定され、その2つの計測点間の距離が求められる。例えば、超音波画像がBモードにおける画像であれば、2つの計測点間の距離が生体組織上の2点間の距離として求められ、超音波画像がMモードにおける画像であれば、時間軸方向に並ぶ2つの計測点間の距離がMモード画像上での時間長として求められる。
【0003】
一般に、超音波診断装置は、表示画像上における計測対象をユーザに示すため、計測点を示すキャリパマークおよび2つの計測点間を結ぶ計測ラインの他、キャリパマークおよび計測ラインを識別するためのサフィックスマークを計測ラインの一方側端部の近傍に表示する。
【0004】
なお、引用文献1および2には、超音波観測画像上における2つの計測点をマークによって表示すると共に、2つの計測点間の距離を求める超音波診断装置が記載されている。これらの引用文献には、2つの計測点およびこれらを結ぶ計測ラインを識別するサフィックスマークの視認性を向上させる技術についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−82541号公報
【特許文献2】特開2009−297072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波診断装置において複数の計測ラインを表示する場合、計測ラインの位置関係によっては複数のサフィックスマークが近接または重畳し、サフィックスマークが見難くなることがある。
【0007】
本発明は、サフィックスマークを伴う複数の計測ラインを表示する場合に、サフィックスマークの視認性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、超音波画像上においてユーザーにより指定された位置に生体組織計測用の第1計測ラインおよび第2計測ラインを表示する計測ライン表示処理手段と、前記超音波画像上において前記第1計測ラインおよび前記第2計測ラインを識別するための第1サフィックスマークおよび第2サフィックスマークを表示するサフィックスマーク表示処理手段と、を含み、前記サフィックスマーク表示処理手段は、前記第1計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第1サフィックスマークを表示する第1サフィックスマーク表示処理手段と、前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示した場合において当該第2サフィックスマークと前記第1サフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する判定手段を含み、前記視認性阻害関係が成立しない場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示し、前記視認性阻害関係が成立する場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置から変位した代替位置に第2サフィックスマークを表示する第2サフィックスマーク表示処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において、視認性阻害関係とは、2つのサフィックスマークが近接または重畳し、それぞれを視認することが困難となる関係をいう。視認性阻害関係は、例えば、サフィックスマークが表示される位置の間の距離が、予め定められた距離未満となる関係として定義される。また、各サフィックスマークが占有する領域が重なるような関係を視認性阻害関係として定義してもよい。判定手段は、例えば、第1サフィックスマークおよび第2サフィックスマークを表示するためのデータを用い、仮想平面上での幾何学的演算に基づいて視認性阻害関係が成立するか否かを判定する。第1サフィックスマークと第2サフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立する場合、第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置から変位した代替位置に第2サフィックスマークが表示され、視認性阻害関係が解消される。
【0010】
本発明に係る超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記代替位置は、前記第2計測ラインの他方側端部の近傍に設定される。
【0011】
本発明に係る超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記規定位置および前記代替位置は、前記第2計測ラインの一方側端部の周りに設定される。
【0012】
また、本発明は、超音波画像上においてユーザーにより指定された位置に生体組織計測用の第1計測ラインおよび第2計測ラインを表示する計測ライン表示処理と、前記超音波画像上において前記第1計測ラインおよび前記第2計測ラインを識別するための第1サフィックスマークおよび第2サフィックスマークを表示するサフィックスマーク表示処理と、を演算処理装置に実行させ、前記サフィックスマーク表示処理は、前記第1計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第1サフィックスマークを表示する第1サフィックスマーク表示処理と、前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示した場合において当該第2サフィックスマークと前記第1サフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する処理を含み、前記視認性阻害関係が成立しない場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示し、前記視認性阻害関係が成立する場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置から変位した代替位置に第2サフィックスマークを表示する第2サフィックスマーク表示処理と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サフィックスマークを伴う複数の計測ラインを表示する場合に、サフィックスマークの視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】ディスプレイに表示された計測用図形、計測量および超音波画像を示す図である。
【図3】第1番目の計測用図形、第2番目の計測用図形、計測量および超音波画像を示す図である。
【図4】画像表示処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】第2番目の計測用図形のサフィックスマークが計測始点側の代替位置に表示された場合における、第1番目の計測用図形、第2番目の計測用図形、各計測量および超音波画像を示す図である。
【図6】計測ライン、終点キャリパマーク、およびサフィックスマークを仮想平面上に示した図である。
【図7】計測ライン、終点キャリパマーク、およびサフィックスマークを仮想平面上に示した図である。
【図8】画像表示処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】第2番目の計測用図形のサフィックスマークが、キャリパマークの左上の代替位置に表示された場合における、第1番目の計測用図形、第2番目の計測用図形、各計測量および超音波画像を示す図である。
【図10】キャリパマークとサフィックスマークの位置関係を示す図形の表示例を示す図である。
【図11】キャリパマーク、キャリパ領域、およびサフィックスの例を示す図である。
【図12】キャリパマーク、キャリパ領域、およびサフィックスマークの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には本発明の実施形態に係る超音波診断装置10の構成が示されている。この超音波診断装置10は、超音波プローブ14から生体組織に超音波を送信し、生体組織において反射し超音波プローブ14で受信された超音波に基づいて超音波画像データを生成する。超音波診断装置10は、超音波画像データに基づく超音波画像をディスプレイ22に表示する。
【0016】
超音波診断装置10が実行する処理について具体的に説明する。送受信部16は、システム制御部12の制御に従い超音波プローブ14に超音波を送信させる。超音波プローブ14は、生体組織で反射した超音波を受信し、受信した超音波を受信信号としての電気信号に変換する。送受信部16は、超音波プローブ14から出力された受信信号に応じたエコーデータを超音波画像データ生成部18に出力する。
【0017】
超音波画像データ生成部18は、システム制御部12の制御に従い、Bモード、Mモード等の動作モードに応じた超音波画像データをエコーデータに基づいて生成する。超音波画像データ生成部18は、超音波画像データを画像表示処理部20に出力する。
【0018】
超音波診断装置10は、ユーザの機能設定により、表示された超音波画像を用いた計測を行う計測モードで動作する。計測モードにおけるディスプレイ表示処理は、システム制御部12に読み込まれたプログラムによって実行することができる。システム制御部12および画像表示処理部20は演算処理装置によって構成され、プログラムを実行することにより、後述のフローチャートの各ステップを実行する構成要素を構成する。
【0019】
計測モードにおける超音波診断装置10の動作について説明する。操作部24は、ディスプレイ22に表示された画像上で計測点を指定するトラッグボール、ジョイスティック、マウス等のデバイスによって構成される。操作部24は、ユーザの操作によって、ディスプレイ22に表示された超音波画像上において計測始点および計測終点が指定されると、計測始点および計測終点のそれぞれの位置情報をシステム制御部12に出力する。この位置情報は、ディスプレイ22の画面上で定義された二次元座標を以て表される。システム制御部12は、操作部24から出力された計測始点および計測終点のそれぞれの位置情報を画像表示処理部20に出力する。システム制御部12は、さらに、計測始点と計測終点との間の距離に基づく計測量を画像表示処理部20に出力する。
【0020】
図2には画像表示処理部20がディスプレイ22に表示する画像の例が示されている。この画像は、ユーザが計測始点および計測終点を指定する操作に伴い、計測用図形が超音波画像に重ねられたものである。計測用図形は、先に指定される計測始点を示す始点キャリパマーク28、その後に指定される計測終点を示す終点キャリパマーク30、計測始点と計測終点との間を結ぶ計測ライン26、および計測用図形を識別するためのサフィックスマーク32を構成要素とする一組の図形である。図2では、始点キャリパマーク28および終点キャリパマーク30として「+」印が表示され、サフィックスマーク32として「A」が表示されている。始点キャリパマーク28、終点キャリパマーク30、およびサフィックスマーク32には、その他の数字、符号等が用いられてもよい。
【0021】
超音波診断装置10は、ユーザの操作に応じたこのような処理によって、複数の計測用図形をディスプレイ22に表示することができる。図3は、超音波画像上に2つの計測用図形を表示した場合を示す。この図に示すように、2つの計測用図形のサフィックスマークが近接した場合、一方のサフィックスマークが2つの計測用図形のうちいずれを識別するのかをユーザが把握することが困難となる。本実施形態に係る超音波診断装置10は、複数のサフィックスマークが近接または重畳することによって互いに視認性が阻害されることを回避し、計測用図形の識別を容易にする。
【0022】
画像表示処理部20が実行する具体的な処理について説明する。この処理は、複数の計測用図形を順次表示し、さらに、既に表示された計測用図形をユーザの操作に応じて移動させて表示するものである。この処理においては、複数の計測用図形を表示する場合において、複数の計測用図形のサフィックスマークが互いに視認性を阻害することとなる場合には、いずれかの計測用図形のサフィックスマークがその位置が変更された上で表示される。サフックスマークを表示する位置としては、計測用図形の計測終点側の端部の近傍に規定位置が設定され、計測用図形の計測始点側の端部の近傍に代替位置が設定されている。
【0023】
図4には、画像表示処理部20が実行する処理のフローチャートが示されている。このフローチャートは、計測用図形を順次追加して表示すると共に、表示された計測用図形をユーザの操作に応じて移動させて表示する処理を示す。ここでは、第1番目の計測用図形に続いて第2番目の計測用図形を表示する処理について説明した後、第3番目以降の計測用図形を表示する処理、および表示された計測用図形を移動させて表示する処理について説明する。
【0024】
画像表示処理部20は、第1番目の計測用図形についてシステム制御部12から出力された計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量に基づいて、第1番目の計測用図形および計測量を表示する計測画像データを生成する(S101)。画像表示処理部20は、その計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S102)。これによって、図2に示すように、第1番目の計測用図形が超音波画像上に重ねられてディスプレイ22に表示され、さらに、計測量表示欄34に第1番目の計測用図形に対応する計測量が表示される。この図においてサフィックスマークは終点キャリパマークの右下の規定位置に表示されている。
【0025】
次に、第2番目の計測用図形について、計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量がシステム制御部12から出力されると、画像表示処理部20は、ステップS101で生成された計測画像データを更新し、第2番目の計測用図形および計測量を追加表示する計測画像データを生成する(S103)。ここで、第2番目の計測用図形のサフィックスマークには、第1番目の計測用図形のサフィックスマークより順序が後であることを示す符号を用いることが好ましい。例えば、第1番目の計測用図形のサフィックスマークが「A」であれば、第2番目の計測用図形のサフィックスマークには「B」を用い、第1番目の計測用図形のサフィックスマークが「1」であれば、第2番目の計測用図形のサフィックスマークには「2」を用いる。
【0026】
画像表示処理部20は、ステップS103で生成された計測画像データに基づいて、第1番目の計測用図形のサフィックスマークと第2番目の計測用図形のサフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する(S104)。ここで視認性阻害関係とは、複数の計測用図形を表示した場合において、複数のサフィックスマークが近接または重畳し、それぞれを視認することが困難となる関係をいう。幾何学的には、例えば、サフィックスマークが表示される規定位置の間の距離が、予め定められた距離未満となる関係をいう。
【0027】
画像表示処理部20は、ステップS104において視認性阻害関係が成立する旨の判定をしたときは、ステップS103で生成された計測画像データを更新し、第2番目の計測用図形のサフィックスマークを計測始点側に設定された代替位置に表示する計測画像データを生成する(S106)。画像表示処理部20は、その計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S107)。これによって、図5に示すように、第2番目の計測用図形のサフィックスマークは、計測始点側に設定された代替位置に表示される。他方、画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立しない旨の判定をしたときは、ステップS103で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S105)。これによって、第2番目の計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0028】
なお、視認性阻害関係が成立するか否かの判定は、幾何学的な解析に基づいて行われる。図6は、計測用図形を構成する計測ライン26、終点キャリパマーク30、およびサフィックスマーク32をディスプレイ22の画面に対応する仮想平面上に示したものである。図6の破線、一点鎖線および点は、説明の便宜上のものであり、必ずしもディスプレイ22に表示されなくてもよい。終点キャリパマーク30は、計測終点を重心とするキャリパ領域36に表示される。図6においては、一点鎖線で囲まれた長方形の領域がキャリパ領域36として示されている。
【0029】
サフィックスマーク32の規定位置38は、計測終点から予め定められた方向に予め定められた距離だけ離れた位置に設定され、この位置を重心とするサフィックス領域40にサフィックスマーク32が表示される。図6においては、計測終点の右下に規定位置38が設定され、この規定位置38を重心とする長方形の領域がサフィックス領域40として示されている。
【0030】
計測用図形の計測始点側には、計測終点側と同様に、計測始点から予め定められた方向に予め定められた距離だけ離れた位置に代替位置が設定され、代替位置を重心とするサフィックス領域が設定されている。ここでは、計測終点側と同様に、計測始点の右下に代替位置およびサフィックス領域が設定されているものとする。
【0031】
画像表示処理部20は、第1番目の計測用図形の規定位置と、第2番目の計測用図形の規定位置との間の距離をサフィックス間距離として求める。画像表示処理部20は、サフィックス間距離が予め定められた閾値未満である場合には、視認性阻害関係が成立する旨の判定をする。他方、画像表示処理部20は、サフィックス間距離が予め定められた閾値以上である場合には、視認性阻害関係が成立しない旨の判定をする。なお、画像表示処理部20は、サフィックス間距離に基づいて視認性阻害関係が成立するか否かを判定する代わりに、2つのサフィックス領域に重なりがあるか否かに基づいて視認性阻害関係が成立するか否かを判定してもよい。
【0032】
図4に示す処理によれば、ディスプレイ22には、第1番目の計測用図形および第2番目の計測用図形が超音波画像上に順次表示される。そして、2つのサフィックスマークの間に視認性阻害関係が成立するときは、第2番目の計測用図形のサフィックスマークが代替位置に表示される。これによって、サフィックスマークの視認性阻害関係が解消され、サフィックスマークの視認性が向上し、さらに、計測用図形の識別が容易になる。
【0033】
なお、上記では、計測終点側に規定位置を設定し、計測始点側に代替位置を設定した場合について説明したが、計測始点側に規定位置が設定され、計測終点側に代替位置が設定されてもよい。また、上記では、視認性阻害関係が成立する場合において、第2番目の計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理について説明したが、第1番目の計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理が実行されてもよい。
【0034】
3番目以降(n番目)の計測用図形を表示する処理について、引き続き図3を参照して説明する。画像表示処理部20は、第n番目の計測用図形について、計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量がシステム制御部12から出力された場合、次のような処理を実行する。画像表示処理部20は、第1〜第n−1番目の計測用図形を表示するものとして先に生成された計測画像データを更新し、第n番目の計測用図形および計測量を追加表示する計測画像データを生成する(S103)。ここで、第n番目の計測用図形のサフィックスマークには、第n−1番目の計測用図形のサフィックスマークより順序が後であることを示す符号を用いることが好ましい。
【0035】
画像表示処理部20は、第2番目の計測用図形を表示する処理と同様に、ステップS104〜S107に従い第n番目の計測用図形を表示する。ただし、視認性阻害関係が成立するか否かの判定は、先に表示されたn−1個のサフィックスマークのそれぞれと第n番目の計測用図形のサフィックスマークとの関係において行われる。
【0036】
なお、この処理に従えば、視認性阻害関係が成立する場合には、第n番目の計測用図形のサフィックスマークが代替位置に表示される。このような処理に代えて、第n番目の計測用図形との間で視認性阻害関係が成立する計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理が実行されてもよい。
【0037】
このような処理によれば、第1番目および第2番目の計測用図形を表示する場合と同様の原理により、サフィックスマークの視認性が向上し、ひいては、計測用図形の識別が容易となる。
【0038】
次に、既に表示された計測用図形を移動させて表示する処理について説明する。図1において操作部24は、ディスプレイ22に表示された超音波画像上において計測用図形を移動させる操作がユーザによってなされると、それに伴って変化する計測始点および計測終点のそれぞれの位置情報をシステム制御部12に出力する。システム制御部12は、操作部24から出力された計測始点および計測終点のそれぞれの位置情報を画像表示処理部20に出力する。システム制御部12は、さらに、計測始点と計測終点との間の距離に基づく計測量を画像表示処理部20に出力する。画像表示処理部20は、既に表示されている計測用図形について、計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量が変化した場合、次のような処理を実行する。
【0039】
画像表示処理部20は、先に生成された計測画像データを更新し、移動した計測用図形およびその計測量を表示する計測画像データを生成する(S103)。画像表示処理部20は、ステップS103で生成された計測画像データに基づいて、先に表示されたサフィックスマークと移動した計測用図形のサフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する(S104)。
【0040】
画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立する旨の判定をしたときは、ステップS103で生成された計測画像データを更新し、移動した計測用図形のサフィックスマークを計測始点側に設定された代替位置に表示する計測画像データを生成する(S106)。画像表示処理部20は、ステップS106で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S107)。
【0041】
他方、画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立しない旨の判定をしたときは、ステップS103で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S105)。これによって、移動した計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0042】
このような処理によれば、計測用図形の移動によって視認性阻害関係が解消された場合には、移動した計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。他方、計測用図形の移動によって視認性阻害関係が成立することとなった場合には、移動した計測用図形のサフィックスマークは代替位置に表示される。したがって、サフィックスマークの視認性が向上し、ひいては、計測用図形の識別が容易となる。
【0043】
なお、ここでは、ステップS106に示すように、移動した計測用図形のサフィックスマークの位置を変更して表示する処理について説明した。このような処理に代えて、移動した計測用図形より先に表示されていた計測用図形(サフィックスマークによって示される順位が先の計測用図形)のサフィックスマークの位置を変更する処理が実行されてもよい。
【0044】
次に、画像表示処理部20が実行する別の処理について説明する。この処理においては、2つの計測用図形を表示する場合において、複数の計測用図形のサフィックスマークが近接または重畳し、互いに視認性を阻害することとなる場合には、いずれかの計測用図形のサフィックスマークが計測終点の周りに設定された代替位置に表示される。
【0045】
図7は、計測用図形を構成する計測ライン26、終点キャリパマーク30、およびサフィックスマーク32を仮想平面上に示したものである。終点キャリパマーク30は、計測終点を重心として定義されたキャリパ領域36に表示される。サフィックスマーク32の規定位置38は、計測終点の右下の方向に予め定められた距離だけ離れた位置に設定されている。また、計測終点から右上、左上および左下のそれぞれの方向に予め定められた距離だけ離れた位置には、それぞれ、代替位置42−1、42−2および42−3が設定されている。規定位置38および代替位置42−1〜42−3には、これらを重心としたサフィックス領域40が設定されている。
【0046】
図8には、画像表示処理部20が実行する処理のフローチャートが示されている。このフローチャートは、計測用図形を順次追加して表示すると共に、表示された計測用図形をユーザの操作に応じて移動させて表示する処理を示す。ここでは、第1番目の計測用図形に続いて第2番目の計測用図形を表示する処理について説明した後、第3番目以降の計測用図形を表示する処理、および表示された計測用図形を移動させて表示する処理について説明する。
【0047】
ステップS201〜ステップS204は、それぞれ、図4のステップS101〜S104と同様の処理である。画像表示処理部20は、ステップS201〜S203を実行した後、ステップS203で生成された計測画像データに基づいて、第1番目の計測用図形のサフィックスマークと第2番目の計測用図形のサフィックスマークとの間に視認性阻害関係か成立する否かを判定する(S204)。画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立しない旨の判定をしたときは、ステップS203で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S205)。これによって、第2番目の計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0048】
画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立する旨の判定をしたときは、第2番目の計測用図形における3つの代替位置の中に退避位置があるか否かを判定する(S206)。ここで、退避位置とは、サフィックスマークを表示した場合に他のサフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立しない代替位置をいう。
【0049】
画像表示処理部20は、代替位置がある旨の判定をしたときは、3つの代替位置のうち退避位置であるいずれか1つを第2サフィックスマークを表示する代替位置として選択する(S207)。この処理において、退避位置となる代替位置が複数ある場合には、例えば、第1サフィックスマークが表示されている規定位置からの距離が最も大きい代替位置が選択される。
【0050】
画像表示処理部20は、ステップS203で生成された計測画像データを更新し、ステップS207で選択された退避位置に第2サフィックスマークを表示する計測画像データを生成する(S208)。画像表示処理部20は、その計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S209)。他方、画像表示処理部20は、退避位置がない旨の判定をしたときは、ステップS203で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S205)。これによって、第2番目の計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0051】
このような処理によれば、ディスプレイ22には、第1番目の計測用図形および第2番目の計測用図形が超音波画像上に順次表示される。そして、2つのサフィックスマークの間に視認性阻害関係が成立し、退避位置となる代替位置があるときは、第2サフィックスマークはその代替位置に表示される。これによって、サフィックスマークの視認性阻害関係が解消され、サフィックスマークの視認性が向上し、ひいては、計測用図形の識別が容易となる。図9は、図3の表示について視認性阻害関係が成立するものと判断され、第2番目の計測用図形のサフィックスマークを、キャリパマークの左上の代替位置に表示した例を示す。
【0052】
なお、ここでは、視認性阻害関係が成立する場合において、第2番目の計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理について説明したが、第1番目の計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理が実行されてもよい。また、計測用図形の計測終点側に規定位置および代替位置を設定する代わりに、計測用図形の計測終点側に規定位置および代替位置を設定してもよい。
【0053】
3番目以降(n番目)の計測用図形を表示する処理について引き続き図8を参照して説明する。画像表示処理部20は、第n番目の計測用図形について、計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量がシステム制御部12から出力された場合、次のような処理を実行する。画像表示処理部20は、第1〜第n−1番目の計測用図形を表示するものとして先に生成された計測画像データを更新し、第n番目の計測用図形および計測量を追加表示する計測画像データを生成する(S203)。ここで、第n番目の計測用図形のサフィックスマークには、第n−1番目の計測用図形のサフィックスマークより順序が後であることを示す符号を用いることが好ましい。
【0054】
画像表示処理部20は、第2番目の計測用図形を表示する処理と同様に、S204〜S209に従い第n番目の計測用図形を表示する。ただし、視認性阻害関係が成立するか否かの判定は、先に表示されたn−1個のサフィックスマークのそれぞれと第n番目の計測用図形のサフィックスマークとの関係において行われる。
【0055】
なお、この処理に従えば、視認性阻害関係が成立する場合には、第n番目の計測用図形のサフィックスマークが代替位置に表示される。このような処理に代えて、第n番目の計測用図形との間で視認性阻害関係が成立する計測用図形のサフィックスマークを代替位置に表示する処理が実行されてもよい。
【0056】
このような処理によれば、第1番目および第2番目の計測用図形を表示する場合と同様の原理により、サフィックスマークの視認性が向上し、ひいては、計測用図形の識別が容易となる。
【0057】
次に、既に表示された計測用図形を移動させて表示する処理について引き続き図8を参照して説明する。画像表示処理部20は、計測用図形を移動させるユーザの操作に伴い、既に表示されている計測用図形について、計測始点の位置情報、計測終点の位置情報および計測量が変化した場合、次のような処理を実行する。
【0058】
画像表示処理部20は、先に生成された計測画像データを更新し、移動した計測用図形およびその計測量を表示する計測画像データを生成する(S203)。画像表示処理部20は、ステップS203で生成された計測画像データに基づいて、先に表示されたサフィックスマークと移動した計測用図形のサフィックスマーク(移動サフィックスマーク)との間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する(S204)。画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立しない旨の判定をしたときは、ステップS203で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S205)。これによって、移動した計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0059】
画像表示処理部20は、視認性阻害関係が成立する旨の判定をしたときは、移動した計測用図形における3つの代替位置の中に退避位置があるか否かを判定する(S206)。画像表示処理部20は、退避位置がある旨の判定をしたときは、3つの代替位置のうち退避位置であるいずれか1つを移動サフィックスマークを表示する代替位置として選択する(S207)。
【0060】
画像表示処理部20は、ステップS207で選択された退避位置に移動サフィックスマークを表示する計測画像データを生成する(S208)。画像表示処理部20は、ステップS208で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S209)。
【0061】
他方、画像表示処理部20は、退避位置がない旨の判定をしたときは、ステップS203で生成された計測画像データと超音波画像データとを合成して映像信号を生成し、ディスプレイ22に出力する(S205)。これによって、移動した計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。
【0062】
このような処理によれば、計測用図形の移動によって視認性阻害関係が解消された場合には、移動した計測用図形のサフィックスマークは規定位置に表示される。他方、計測用図形の移動によって視認性阻害関係が成立することとなった場合には、移動した計測用図形のサフィックスマークは代替位置に表示される。したがって、サフィックスマークの視認性が向上し、ひいては、計測用図形の識別が容易となる。
【0063】
なお、ここでは、ステップS208に示すように、移動した計測用図形のサフィックスマークの位置を変更して表示する処理について説明した。このような処理に代えて、移動した計測用図形より先に表示されていた計測用図形(サフィックスマークによって示される順位が先の計測用図形)のサフィックスマークの位置を変更する処理が実行されてもよい。
【0064】
次に、計測量表示欄34の表示例について説明する。計測量表示欄34には、図9に示すようにサフィックスマークと、そのサフィックスマークに対応する計測量とが対応付けられて表示される。図9では、サフィックスマーク「A」には計測量として距離「7.2cm」が、サフィックスマーク「B」には計測量として距離「6.5cm」が対応付けて表示されている。
【0065】
このような表示に加えて、図10に示すように、キャリパマークとサフィックスマークの位置関係を示す図形を表示してもよい。すなわち、サフィックスマーク「A」については、「+」のキャリパマーク44の右下に丸印の位置表示マーク46が付された図形が対応付けて表示されており、この図形がキャリパマーク「+」の右下にサフィックスマーク「A」が表示されていることを示す。また、サフィックスマーク「B」については、キャリパマーク44の左上に位置表示マーク46が付された図形が対応付けて表示されており、この図形がキャリパマーク「+」の左上にサフィックスマーク「B」が表示されていることを示す。このような表示によれば、計測量と超音波画像上に表示された計測用図形との対応関係の把握がユーザにとって容易となる。
【0066】
上述の実施形態では、キャリパマークとして「+」印を表示するものとし、計測終点の右下の方向に予め定められた距離だけ離れた位置に規定位置が設定され、計測終点から右上、左上および左下のそれぞれの方向に予め定められた距離だけ離れた位置に、それぞれ、代替位置42−1、42−2および42−3が設定されている。これによって、「+」印の中心に入り込んだ角の領域にサフィックスマークが表示される。このような例の他、規定位置および代替位置は、図11に示すように一点鎖線で示されたキャリパ領域36の外周に沿って配列してもよい。すなわち、図11の例では、キャリパ領域36の外周に沿って配列された12個の長方形の領域の重心のうちいずれかの位置が規定位置とされ、残りの位置が代替位置とされる。キャリパ領域36の外周に沿って配列された12個の長方形の領域は、サフィックスマークが表示されるサフィックス領域とされる。
【0067】
また、星形状、「X」、「Y」、「*」等、中心に入り込んだ形状を有するキャリパマークを用いる場合には、中心に入り込んだ領域にサフィックスマークが表示されるよう規定位置および代替位置を設定することでコンパクトな表示が可能となる。例えば、図12に示すようにキャリパマークとして「*」印を表示する場合には、計測始点または計測終点で交わる3本の分割直線48によって、キャリパ領域36を6つの領域に分割し、分割されて形成された複数の領域のうち1つの領域内に規定位置が設定され、残りの領域内に代替位置が設定される。
【0068】
このように規定位置および代替位置が設定された場合、図8のステップS207は、総ての代替位置のうち退避位置であるいずれか1つを選択する処理とすればよい。
【符号の説明】
【0069】
10 超音波診断装置、12 システム制御部、14 超音波プローブ、16 送受信部、18 超音波画像データ生成部、20 画像表示処理部、22 ディスプレイ、24 操作部、26 計測ライン、28 始点キャリパマーク、30 終点キャリパマーク、32 サフィックスマーク、34 計測量表示欄、36 キャリパ領域、38 規定位置、40 サフィックス領域、42−1〜42−3 代替位置、44 キャリパマーク、46 位置表示マーク、48 分割直線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像上においてユーザーにより指定された位置に生体組織計測用の第1計測ラインおよび第2計測ラインを表示する計測ライン表示処理手段と、
前記超音波画像上において前記第1計測ラインおよび前記第2計測ラインを識別するための第1サフィックスマークおよび第2サフィックスマークを表示するサフィックスマーク表示処理手段と、
を含み、
前記サフィックスマーク表示処理手段は、
前記第1計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第1サフィックスマークを表示する第1サフィックスマーク表示処理手段と、
前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示した場合において当該第2サフィックスマークと前記第1サフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する判定手段を含み、前記視認性阻害関係が成立しない場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示し、前記視認性阻害関係が成立する場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置から変位した代替位置に第2サフィックスマークを表示する第2サフィックスマーク表示処理手段と、
を含むことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記代替位置は、前記第2計測ラインの他方側端部の近傍に設定されていることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記規定位置および前記代替位置は、前記第2計測ラインの一方側端部の周りに設定されていることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
超音波画像上においてユーザーにより指定された位置に生体組織計測用の第1計測ラインおよび第2計測ラインを表示する計測ライン表示処理と、
前記超音波画像上において前記第1計測ラインおよび前記第2計測ラインを識別するための第1サフィックスマークおよび第2サフィックスマークを表示するサフィックスマーク表示処理と、
を演算処理装置に実行させ、
前記サフィックスマーク表示処理は、
前記第1計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第1サフィックスマークを表示する第1サフィックスマーク表示処理と、
前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示した場合において当該第2サフィックスマークと前記第1サフィックスマークとの間に視認性阻害関係が成立するか否かを判定する処理を含み、前記視認性阻害関係が成立しない場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置に第2サフィックスマークを表示し、前記視認性阻害関係が成立する場合には前記第2計測ラインの一方側端部の近傍に設定された規定位置から変位した代替位置に第2サフィックスマークを表示する第2サフィックスマーク表示処理と、
を含むことを特徴とする超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−95691(P2012−95691A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243435(P2010−243435)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】