説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】カメラ27が表示部18の近傍に配置されて操作者Sを撮影し、撮影された映像から認識部28が操作者Sの顔を認識すると認識信号を出力し、制御部に認識部28から認識信号が出力されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように送信駆動部7および受信信号処理部4を制御し、制御部に認識部28から所定時間以上認識信号が出力されなくなると超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して通常モードより測定深度および分解能のうち少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように送信駆動部7および受信信号処理部4を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置の超音波プローブ内における発熱量の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、振動子アレイから超音波を送信することで、振動子アレイから発熱が生じる。
ところが、通常、操作者が片手で超音波プローブを把持して振動子アレイの超音波送受信面を被検体の表面に当接しつつ診断を行うので、超音波プローブは操作者が片手で容易に把持し得る程度の小さな筺体内に収容されることが多い。このため、振動子アレイからの発熱により超音波プローブの筺体内が温度上昇することがある。
【0004】
また、近年、超音波プローブに信号処理のための回路基板を内蔵し、振動子アレイから出力された受信信号をデジタル処理した上で無線通信あるいは有線通信により装置本体に伝送することにより、ノイズの影響を低減して高画質の超音波画像を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
この種のデジタル処理を行う超音波プローブでは、受信信号の処理時においても回路基板からの発熱が生じ、回路基板の各回路の安定した動作を保証するために筺体内の温度上昇を抑制する必要がある。
【0005】
超音波プローブの温度上昇対策については、例えば特許文献1に、超音波プローブの表面温度に応じて振動子アレイを駆動する条件を自動的に変化させる超音波診断装置が開示されている。表面温度が高くなるほど、超音波の送信時における振動子アレイの各トランスデューサの駆動電圧、送信開口数、送信パルスの繰り返し周波数、フレームレート等を低減することにより、超音波プローブの表面温度が適切な温度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−253776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、送信時の振動子アレイの駆動条件を変化させる特許文献1の装置では、上述したようなデジタル処理を行う超音波プローブにおける受信時の発熱に対処することができない。
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る超音波診断装置は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理することで得られる受信データに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、前記表示部の近傍に配置されて操作者を撮影するためのカメラと、前記カメラにより撮影された映像から操作者の顔または瞳を認識すると認識信号を出力する認識部と、前記認識部から認識信号が出力されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御し、前記認識部から所定時間以上認識信号が出力されなくなると超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して前記通常モードより測定深度および分解能のうち少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する制御部とを備えたものである。
【0009】
ここで、前記カメラの撮影範囲を照明する照明ランプをさらに備え、前記制御部は、前記カメラによる撮影時に前記照明ランプを点灯するのが好ましい。
また、予め所定の操作者の顔を登録して格納する顔認識メモリをさらに備え、前記認識部は、認識された操作者の顔が前記顔認識メモリに登録されている所定の操作者の顔と一致する場合に認識信号を出力し、一致しない場合には認識信号を出力しないことが好ましい。
また、前記超音波プローブは、前記受信信号処理部と、前記受信信号処理部で得られたパラレルの受信データをシリアルの受信データに変換するパラレル/シリアル変換部と、前記パラレル/シリアル変換部で変換されたシリアルの受信データを前記超音波画像の生成を行う診断装置本体に無線通信により送信する無線通信部とを有することが好ましい。
【0010】
この発明に係る超音波画像生成方法は、送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理することで得られる受信データに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、前記表示部の近傍から操作者を撮影し、撮影された映像から操作者の顔または瞳を認識し、操作者の顔または瞳が認識されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御し、操作者の顔または瞳が所定時間以上認識されなくなると超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して前記通常モードより測定深度および分解能のうち少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、操作者の顔が認識された場合にのみ通常モードで動作されるため、超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1における検査モードを示すフローチャートである。
【図4】表示部の近傍に配置されたカメラを示す正面図である。
【図5】実施の形態2で用いられた診断装置本体の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態3で用いられた診断装置本体の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態4における検査モードを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線通信により接続された診断装置本体2とを備えている。
【0014】
超音波プローブ1は、1次元又は2次元の振動子アレイの複数チャンネルを構成する複数の超音波トランスデューサ3を有し、これらトランスデューサ3にそれぞれ対応して受信信号処理部4が接続され、さらに受信信号処理部4にパラレル/シリアル変換部5を介して無線通信部6が接続されている。また、複数のトランスデューサ3に送信駆動部7を介して送信制御部8が接続され、複数の受信信号処理部4に受信制御部9が接続され、無線通信部6に通信制御部10が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部5、送信制御部8、受信制御部9および通信制御部10にプローブ制御部11が接続されている。
【0015】
複数のトランスデューサ3は、それぞれ送信駆動部7から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ3は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0016】
送信駆動部7は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部8によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ3から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ3に供給する。
【0017】
各チャンネルの受信信号処理部4は、受信制御部9の制御の下で、対応するトランスデューサ3から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部5に供給する。受信信号処理部4は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部5は、複数チャンネルの受信信号処理部4によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0018】
無線通信部6は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部6は、診断装置本体2との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体2に送信すると共に、診断装置本体2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部10に出力する。通信制御部10は、プローブ制御部11によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部6を制御すると共に、無線通信部6が受信した各種の制御信号をプローブ制御部11に出力する。
【0019】
プローブ制御部11は、診断装置本体2から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
超音波プローブ1には、図示しないバッテリが内蔵され、このバッテリから超音波プローブ1内の各回路に電源供給が行われる。
なお、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0020】
一方、診断装置本体2は、無線通信部13を有し、この無線通信部13にシリアル/パラレル変換部14を介してデータ格納部15が接続され、データ格納部15に画像生成部16が接続されている。さらに、画像生成部16に表示制御部17を介して表示部18が接続されている。また、無線通信部13に通信制御部19が接続され、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17および通信制御部19に本体制御部20が接続されている。さらに、本体制御部20には、操作者が入力操作を行うための操作部22と、動作プログラムを格納する格納部23と、操作者の操作状況を確認するカメラ制御部26がそれぞれ接続されている。カメラ制御部26には、カメラ27と認識部28とがそれぞれ接続されている。
【0021】
無線通信部13は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部13は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部19は、本体制御部20によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部13を制御する。
シリアル/パラレル変換部14は、無線通信部13から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部15は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部14によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0022】
画像生成部16は、データ格納部15から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部16は、整相加算部24と画像処理部25とを含んでいる。
整相加算部24は、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)を生成する。各音線信号は、本体制御部20において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行うことで生成される。
【0023】
画像処理部25は、整相加算部24によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部25は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0024】
表示制御部17は、画像生成部16によって生成される画像信号に基づいて、表示部18に超音波診断画像を表示させる。表示部18は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部17の制御の下で、超音波診断画像や警告画面を表示する。
【0025】
カメラ27は、表示部18の近傍に配置され、カメラ制御部26の制御の下で、超音波診断装置を操作する操作者を撮影する。カメラ27は、例えば、デジタルカメラやビデオカメラなどを利用することができる。
認識部28は、カメラ27により撮影された映像をカメラ制御部26を介して入力し、その入力された映像から人物の顔を抽出する。この抽出により操作者の顔が認識されると、認識部28はカメラ制御部26を介して本体制御部20に認識信号を出力する。
本体制御部20は、認識部28から認識信号が出力されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して、所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように送信駆動部および受信処理部を制御する。また、認識部28から所定時間以上認識信号が出力されなくなると、本体制御部20は、超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して、通常モードより測定深度および分解能の少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように送信駆動部および受信処理部を制御する。
ここで、測定深度は、受信する超音波エコーの深度(走査深度)により変化するものである。また、分解能には時間分解能と空間分解能があり、時間分解能はフレームレートにより変化され、空間分解能は1フレーム当たりの音線数または同時開口チャンネル数により変化されるものである。
【0026】
このような診断装置本体2において、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17、通信制御部19、カメラ制御部26、認識部28、および本体制御部20は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部23に格納される。格納部23における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
【0027】
次に、図2のフローチャートを参照して、実施の形態1の動作について説明する。
まず、ステップS1の検査情報入力モードで、診断装置本体2の操作部22から、患者情報および検査オーダーを含む検査情報が入力されると、診断装置本体2の本体制御部20は、ステップS2で、操作者による検査開始の指示を待つ。検査開始の指示が入力されると、本体制御部20は、ステップS3に進んで検査モードを実行した後、ステップS4で、操作者による検査終了の指示を待つ。検査を終了する旨の指示が入力されると、そのまま一連の検査処理を終了し、一方、検査を終了しないで続行する旨の指示が入力されると、ステップS1に戻って、再び検査情報の入力を受け付ける。
【0028】
なお、ステップS3の検査モードにおいては、例えば、図3に示すように、Bモード、CFモード、PWモード、Mモード等の予め設定された複数の検査モードのうちのいずれか1つ、あるいは2つ以上のモードを選択して超音波診断を実行することができる。すなわち、診断装置本体2の本体制御部20は、ステップS1で入力された検査情報によりいずれの検査モードが指定されたかを確認し、ステップS11で、Bモードが指定されたことを確認すると、ステップS12に進んでBモードの検査を実施し、ステップS13で、CFモードが指定されたことを確認すると、ステップS14に進んでCFモードの検査を実施し、ステップS15で、PWモードが指定されたことを確認すると、ステップS16に進んでPWモードを実施し、ステップS17で、Mモードが指定されたことを確認すると、ステップS18に進んでMモードの検査を実施し、ステップS19で、これらの超音波診断による超音波画像をライブ表示するか否かの指示を待つ。
そして、ライブ表示しない旨の指示が入力されると、ステップS20に進んで超音波画像がフリーズされ、ステップS21で、今回の検査情報に基づく検査の終了を確認したところで、図2のステップS4へ進む。また、ステップS21で、検査の終了が確認されなければ、再度超音波診断が実行される。
【0029】
なお、ステップS19で、超音波画像をライブ表示する旨の指示が入力されると、ステップS22に進んでカメラ27により撮影された映像から操作者の顔が認識部28で認識される。すなわち、図4に示すように、カメラ27で表示部18の前方領域が撮影され、その映像から認識部28が人物の顔を抽出する。例えば、操作者Sが超音波診断を実施することで表示部18をみている場合にはその顔が検出され、操作者Sの顔が認識されたとして認識部28がカメラ制御部26を介して本体制御部20に認識信号を出力する。認識信号が本体制御部20に入力されると、ステップS23に進んで通常モードが設定され、ステップS21で検査終了するか否かが確認される。
このように、カメラ27の撮影領域に操作者Sの顔が認識された時にのみ、通常モードによる超音波診断が実施される。
【0030】
一方、ステップS22で、例えば操作者Sが超音波診断とは別の作業をして表示部18をみていない場合には認識部28で操作者Sの顔が認識されず、ステップS24に進んで予め操作者Sにより設定された所定時間が経過したか否かが判断される。すなわち、本体制御部20に認識信号が入力されない状態のまま所定時間が経過したか否かが判断され、所定時間が経過したと判断された場合には、ステップS25に進んで温度上昇抑制モードが設定され、ステップS21で検査終了するか否かが確認される。
このように、超音波画像をフリーズさせることなくライブ表示させたまま温度上昇抑制モードで超音波診断を待機することができる。
なお、所定時間が経過していないと判断された場合には、ステップS22に戻り、再度操作者Sの顔が認識されたか否かが判断される。また、ステップS25で温度上昇抑制モードが設定されて、ステップS11〜S19、S22、S24、S25およびS21の処理が繰り返される間にステップS22で操作者Sの顔が再び認識された場合には、ステップS23に進んで通常モードが設定され、ステップS11〜S19、S22、S23およびS21の処理が繰り返される。
【0031】
通常モードおよび温度上昇抑制モードによる超音波診断は、例えば次のようにして実施される。
通常モードでは、超音波プローブ1の送信駆動部7および受信信号処理部4から超音波画像の全域にわたって超音波ビームの送受信が行われることで所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成される。
一方、温度上昇抑制モードでは、通常モードよりも測定深度および分解能の少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように超音波ビームの送受信が行われる。測定深度を低下させる場合には、超音波プローブ1の受信信号処理部4を停止する時刻を通常モードよりも早めることで浅部からの超音波エコーのみを受信する。また、時間分解能を低下させる場合には、送信駆動部7および受信信号処理部4における超音波の送受信間隔を通常モードよりも長く設定することでフレームレートを低下させる。さらに、空間分解能を低下させる場合には、複数の受信信号処理部4の一部を停止することで、通常モードよりも同時開口チャンネル数を低下させ、または、通常モードよりも1フレーム当たりの音線数を低下させる。
【0032】
このように、超音波診断が実施されている場合には操作者Sの顔が認識されて通常モードで動作され、超音波診断が実施されていない場合には操作者Sの顔が認識されず、温度上昇抑制モードで動作されるため、診断で必要な画質を低下することなく超音波プローブ1の内部温度の上昇を抑制することができる。また、操作者Sの顔が認識されない場合に、超音波画像をフリーズさせて超音波プローブ1の内部温度上昇抑制を図ると操作者Sが超音波画像を確認した際に故障などの誤解を与えるおそれがあるが、超音波画像をライブ表示させたまま超音波プローブ1の内部温度上昇を抑制することでそのような誤解が生じずに超音波診断が実施される。
【0033】
なお、温度上昇抑制モードでは、超音波画像の一部について測定深度および分解能の少なくとも一方を通常モードより低下させることもできる。例えば、超音波画像に関心領域を設定し、関心領域については通常モードと同様に超音波ビームの送受信を行い、関心領域以外の領域について上記のように受信信号処理部4の停止時間を長く設けることができる。
このように、温度上昇抑制モードに設定された際に超音波画像の一部の画質を低下させることで、超音波画像の全体の画質が低下した場合と比較し、操作者Sが超音波画像を確認した際に現在のモードが温度上昇抑制モードであることを確実に認識することができる。
【0034】
実施の形態2
図5に、実施の形態2に係る超音波診断装置で用いられた診断装置本体31の構成を示す。この診断装置本体31は、図1に示した実施の形態1における診断装置本体2において、カメラ制御部26に照明ランプ29を接続したものである。照明ランプ29は、カメラ27の撮影範囲を照明するためのもので、カメラ制御部26による制御の下でカメラ27の撮影時に点灯される。照明ランプ29は、例えば、遠赤外光や可視光などの人体に影響の少ない光を照射するものが利用される。
【0035】
このように、照明ランプ29でカメラ27の撮影範囲を照明することで明確な映像が得られ、操作者Sの顔を確実に認識することができる。
【0036】
実施の形態3
図6に、実施の形態3に係る超音波診断装置で用いられた診断装置本体41の構成を示す。この診断装置本体41は、図5に示した実施の形態2における診断装置本体31において、認識部28に顔認識メモリ30を接続したものである。顔認識メモリ30は、予め所定の操作者Sの顔を登録して格納するものである。認識部28は、カメラ27により撮影された映像から抽出された人物の顔が顔認識メモリ30に登録されている所定の操作者Sの顔と一致する場合に操作者Sの顔を認識したとして本体制御部20に認識信号を出力する。また、映像から抽出された人物の顔と顔認識メモリ30に登録されている所定の操作者Sの顔が一致しない場合には認識信号は出力されない。
【0037】
このように、所定の操作者Sの顔を認識した時にのみ認識信号を出力することで、所定の操作者S以外の者がカメラ27の撮影範囲に入った場合など、通常モードに移行する必要のない時に認識信号を出力するのを抑制し、診断で必要な画質を低下することなく超音波プローブ1の内部温度の上昇をより確実に抑制することができる。
【0038】
実施の形態4
実施の形態1から実施の形態3では、操作者Sの顔が認識されたか否かにより通常モードまたは温度上昇抑制モードに移行したが、これに限るものではなく、カメラ27で撮影された映像から操作者Sが超音波診断を実施しているか否かを認識できればそのモードの移行を判断できる。
例えば、図7に示すように、認識部28が操作者Sの瞳を認識することで判断することができる。実施の形態1と同様にして、ステップS19で、超音波画像をライブ表示する旨の指示が入力され、ステップS31に進んでカメラ27により撮影された映像から操作者Sの瞳が認識部28で認識されると、ステップS23で通常モードが設定される。なお、撮影された映像からの瞳の検出は、例えば、特開2010−233896に記載の方法により行うことができる。一方、ステップS31で、操作者Sの瞳が認識されない場合には、ステップS24に進んで所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過した場合にはステップS25で温度上昇抑制モードが設定される。
【0039】
このように、操作者Sの瞳を認識することで操作者Sによる超音波診断が実施されているか否かを判断し、診断で必要な画質を低下することなく超音波プローブ1の内部温度の上昇を抑制することができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態1から実施の形態4では、超音波プローブ1と診断装置本体とが互いに無線通信により接続されていたが、これに限るものではなく、接続ケーブルを介して超音波プローブ1が診断装置本体に接続されていてもよい。この場合には、超音波プローブ1の無線通信部6および通信制御部10、診断装置本体の無線通信部13および通信制御部19等は不要となる。
【符号の説明】
【0041】
1 超音波プローブ、2,31,41 診断装置本体、3 トランスデューサ、4 受信信号処理部、5 パラレル/シリアル変換部、6 無線通信部、7 送信駆動部、8 送信制御部、9 受信制御部、10 通信制御部、11 プローブ制御部、13 無線通信部、14 シリアル/パラレル変換部、15 データ格納部、16 画像生成部、17 表示制御部、18 表示部、19 通信制御部、20 本体制御部、22 操作部、23 格納部、24 整相加算部、25 画像処理部、26 カメラ制御部、27 カメラ、28 認識部、29 照明ランプ、30 顔認識メモリ、S 操作者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理することで得られる受信データに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、
前記表示部の近傍に配置されて操作者を撮影するためのカメラと、
前記カメラにより撮影された映像から操作者の顔または瞳を認識すると認識信号を出力する認識部と、
前記認識部から認識信号が出力されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御し、前記認識部から所定時間以上認識信号が出力されなくなると超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して前記通常モードより測定深度および分解能のうち少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記カメラの撮影範囲を照明する照明ランプをさらに備え、
前記制御部は、前記カメラによる撮影時に前記照明ランプを点灯する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
予め所定の操作者の顔を登録して格納する顔認識メモリをさらに備え、
前記認識部は、認識された操作者の顔が前記顔認識メモリに登録されている所定の操作者の顔と一致する場合に認識信号を出力し、一致しない場合には認識信号を出力しない請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブは、前記受信信号処理部と、前記受信信号処理部で得られたパラレルの受信データをシリアルの受信データに変換するパラレル/シリアル変換部と、前記パラレル/シリアル変換部で変換されたシリアルの受信データを前記超音波画像の生成を行う診断装置本体に無線通信により送信する無線通信部とを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
送信駆動部から供給された駆動信号に基づいて超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を受信信号処理部で処理することで得られる受信データに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、
前記表示部の近傍から操作者を撮影し、
撮影された映像から操作者の顔または瞳を認識し、
操作者の顔または瞳が認識されている場合に超音波ビームの送受信を通常モードで動作して所定の測定深度および分解能の超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御し、操作者の顔または瞳が所定時間以上認識されなくなると超音波ビームの送受信を温度上昇抑制モードで動作して前記通常モードより測定深度および分解能のうち少なくとも一方の低下した超音波画像が生成されるように前記送信駆動部および前記受信信号処理部を制御する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176205(P2012−176205A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41815(P2011−41815)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】