説明

超音波診断装置及び超音波強度指標情報提示プログラム

【課題】 表示されるMI値等の超音波強度指標がどの様に決定されたものであるのかを判定可能な情報を提示することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】 送信条件の入力に応答して、現在の送信条件に対応するMI値等と母集団特性情報(例えば、サンプル母集団の平均値、統計的に計算される上限値、統計的な信頼区間)とを含むMI値等情報を表示する。ユーザは、表示されたMI値等情報により、現在の送信条件を設定した場合サンプル母集団で最も多く実現されたMI値等(すなわち平均値)、提示されている現在のMI値等は、安全性の観点からどの程度のマージンを取って採用されているのか等を容易に認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置におけるMI(Mechanical Index:機械的指数)やTI(Thermal Index:温度的指数)の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の超音波画像を取得し表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被爆が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。係る特性から、超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、脳血管などの診断に利用されている。
【0003】
この様な超音波診断装置おいて、超音波が生体に及ぼす影響を示す指標として、510(k)ガイドやIEC規格で定義されるMI又はTIがある。MIとは、超音波が生体に及ぼす機械的衝撃に対する指標であり、負のピーク音圧を中心周波数の平方根で割った値で定義される。このMIにより、体液内に溶け込んでいる気体が超音波による圧力変化で気泡となり、生体組織に影響を及ぼすキャビテーションの発生程度を表すことができる。また、TIとは、超音波が生体に及ぼす発熱作用に対する指標であり、超音波の吸収減衰による生体組織の温度を1度上昇させる超音波の出力を1として、超音波出力の強さをその比率で表すことができる。従来の超音波診断装置では、この様なMIの値(MI値)やTIの値(TI値)は、製品検査のサンプルの母集団に関する統計量(例えば上限値や平均値)を利用して取得し、その値のみをモニターに所定の形態で表示している。ユーザは、表示されたMI値等を視認することで、現在設定されている超音波の強さが適切であるか否かを判断することができ、また、過去のMI値と同一にするための送信条件の再現に利用することができる。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特表2004−514461号公報
【特許文献2】特開平7−51268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のMI値やTI値のユーザへの提示には、例えば次のような問題がある。
【0006】
すなわち、超音波診断装置に適用される規格の改訂等により、過去と同一のMI値等を再現するための送信条件を設定することが困難になる場合がある。例えばMI値を得るための定義式に新たなパラメータが追加される等の規格の変更がなされる場合がある。係る場合には、同じ送信条件を設定したとしても、規格の変更前後で提示されるMI値は異なってしまい、現在のMI値を過去のMI値と同一にするための送信条件の再現は、困難なものとなる。また、特に規格が表示されるMI値を低下させる方向に変更される場合には、例えば低音響出力条件での走査では不安全になる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、表示されるMI値等の超音波強度指標がどの様に決定されたものであるのかを判定可能な情報を提示することができる超音波診断装置、超音波強度指標情報提示プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の視点は、被検体に対し超音波を送信し、前記被検体から超音波を受信する超音波プローブと、前記被検体に送信する超音波に関する送信条件を入力するめの入力手段と、前記入力された送信条件に対応する超音波強度指数と当該超音波強度指数を決定するための基準を示す情報とを含む超音波強度指数情報を、前記入力された送信条件に基づいて生成する情報生成手段と、前記超音波強度指数情報を所定の形態で表示する表示手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
本発明の第2の視点は、超音波プローブを用いて被検体に対し超音波を送信し当該被検体から得られる反射波を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置において用いられるプログラムであって、前記超音波診断装置の制御手段に、入力された送信条件に対応する超音波強度指数と当該超音波強度指数を決定するための基準を示す情報とを含む超音波強度指数情報を、前記入力された送信条件に基づいて生成する情報生成機能と、前記超音波強度指数情報を提示手段に所定の形態で提示させる提示機能と、を実現させることを特徴とする超音波強度指標情報提示プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
以上本発明によれば、表示されるMI値等の超音波強度指標がどの様に決定されたものであるのかを判定可能な情報を提示することができる超音波診断装置、超音波強度指標情報提示プログラムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置10は、装置本体11、超音波プローブ12、装置本体11に接続されオペレータからの各種指示・命令・情報を装置本体11に取り込むための外部入力装置13、モニター14とから構成される。入力装置13には、送信条件の入力、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチ・ボタン、マウス、キーボードが設けられる。また、装置本体11には、超音波送信部21、超音波受信部22、Bモード処理部23、ドプラ処理部24、画像生成部25、表示制御部27、制御プロセッサ(CPU)28、インタフェース部29、MI値等情報生成部30、記憶部32が設けられる。
【0014】
超音波プローブ12は、圧電セラミック等の音響/電気可逆的変換素子としての圧電振動子を有する。複数の圧電振動子は並列され、プローブ12の先端に装備される。
【0015】
超音波送信部21は、制御プロセッサ27により記憶部32に記憶されている送受信条件を読み込み、送受信条件に従ってレートパルスを発生する。各レートパルスには、本超音波送信部21において、超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が与えられ、プローブ12にチャンネル毎に電圧パルスを印加される。これにより、プローブ12から超音波ビームが被検体に送信される。
【0016】
画像生成用に被検体内に照射された超音波ビームは、被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射し、その反射波がプローブ12で受信される。プローブ12からチャンネル毎に出力されるエコー信号は、超音波受信部22に取り込まれる。
【0017】
超音波受信部22は、エコー信号を内でチャンネル毎に増幅し、受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えた後、加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性特性が決定される(この指向性特性は、一般に「走査線」と呼ばれるパラメータの基本特性である。)。加算後のエコー信号は、Bモード処理部23と、ドプラ処理部24に送られる。
【0018】
Bモード処理部23は、図示しないが、対数変換器、包絡線検波回路、アナログディジタルコンバータ(A/D)から構成される。対数変換器は、エコー信号を対数変換する。包絡線検波回路は対数変換器からの出力信号の包絡線を検波する。この検波信号はアナログディジタルコンバータを介してディジタル化され、検波データとして出力される。
【0019】
ドプラ処理部24は、周波数解析によりその解析結果や、フィルタを用いて血流成分を抽出し平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0020】
画像生成部25は、Bモード処理部23から入力した走査線信号列で構成される検波データを用いてフレーム相関処理等を実行した後、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換することでBモード画像を生成する。また、画像生成部25は、ドプラ処理部24から入力した血流情報を用いて、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像を作成する。
【0021】
表示制御部27は、画像生成部25から受け取った超音波画像とMI値等情報生成部30において生成されたMI値等情報(後述)とを合成し、モニター14に送り出す。また、表示制御部27は、現在のMI値等情報と過去のMI値等情報とを所定の形態で(例えば、選択的、並列的、重畳的に)表示する。
【0022】
制御プロセッサ28は、ユーザの入力装置13またはその他インタフェースから入力されたモード選択、ROI設定、送信開始・終了等の各種指示に基づき、記憶部32に記憶された送受信条件、装置制御プログラム等を読み出し、これらに従って、当該超音波診断装置を静的又は動的に制御する。また、制御プロセッサ28は、記憶部32に記憶された専用プログラムを読み出し、これに従って、MI値等情報生成機能(後述)を実現するように、MI値等情報生成部30、表示制御部27、モニター14等を制御する。
【0023】
MI値等情報生成部30は、入力される送信条件に対応するMI値等を取得する。ここで、送信条件とは、超音波送信において設定され送信超音波の特性に影響を与える条件(パラメータ)を意味し、送信電圧、フォーカス位置、レート周波数、バースト波数、中心周波数、送信口径のうちの少なくとも一つを含むものである。なお、このMI値等の取得は、入力される送信条件と記憶部32に記憶されたMI値等テーブル(送信条件の各パターンとMI値等とを対応付けたテーブル)とに基づいて実行される。しかしながら、これに限定する趣旨ではなく、例えば、入力される送信条件と所定の規格に従って定義された計算式とに基づいて計算することで、送信条件毎のMI値等を取得するようにしてもよい。
【0024】
また、MI値等情報生成部30は、入力された送信条件に対応する母集団特性情報を記憶部32から取得する。ここで母集団特性情報とは、超音波プローブ12の製品検査のサンプル母集団に関する統計的特性を示すために事前に送信条件毎に取得される情報であり、例えば、当該超音波プローブ12の送信条件毎のMI値等の分布、平均値(means)、規格に従って定義されるカバレージファクター(包含係数)のうちの少なくとも一つを含むものである(図2等参照)。なお、本実施形態では、統計的に計算される上限値(上限値)をK・SD(SDは標準偏差値。Kはカバレージファクター。)統計的な信頼区間CIで定義するものとする。
【0025】
さらに、MI値等情報生成部30は、入力された送信条件に対応するMI値等及び母集団特性情報に基づいてMI値等情報を生成する。ここで、MI値等情報とは、入力された送信条件に対応するMI値等と、当該MI値等を決定するための基準を示す情報を含むものである。本実施形態では、説明を具体的にするため、MI値等を決定するための基準を示す情報として、母集団特性情報を採用するものとする。
【0026】
記憶部32は、制御プロセッサ28の制御のもと、Bモード処理部23やドプラ処理部24から受け取った信号データ(生データ)、画像生成部25から受け取った画像データ(静止画像、動画像)を記録する。また、記憶部32は、当該装置の制御プログラム、診断プロトコルや送受信条件等の各種データ群等を記憶する。さらに、記憶部32は、MI値等情報生成機能を実現するための専用プログラム、送信条件毎の母集団特性情報、送信条件毎のMI値等テーブル、過去のMI値等情報を記憶する。なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、過去のMI値等情報は、そのMI値等情報を用いて取得された各画像の付帯情報として管理されているものとする。しかしながら、これに拘泥されず、画像に対応付けられた過去のMI値等情報を個別に管理する構成であってもよい。
【0027】
モニター14は、表示制御部27からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を静止画像又は動画像として表示する。また、モニター14は、表示制御部27の制御のもと、MI値等情報を所定の形態で表示する。
【0028】
(MI値等情報提示機能)
次に、本超音波診断装置10が有する、MI値等情報提示機能について説明する。この機能は、入力される送信条件毎にMI値等情報を生成しユーザに提示する(例えば、モニター14に表示する)ことで、母集団特性情報との関係からMI値等がどの様な基準に基づいて決定されたものであるのかを容易に判定ならしめるものである。以下、各実施例に従って説明する。なお、説明を具体的にするため、各実施例においては、「MI値等の分布において統計的な信頼区間CI=95%である値をMI値等として表示する。」という内容であると仮定する。
【0029】
次に、MI値等を例とした実施例について説明する。しかしながら、これに拘泥されず、TI値を利用する場合においても、同様の形態にて実施可能である。
【0030】
(実施例1)
図2は、本機能によってモニター14に表示されるMI値情報の一例を示した図である。同図においては、現在のMI値(図2では1.4)、母集団特性情報としての現在の送信条件に関するMI値の分布、平均値(図2では0.9)、K・SD(図2では1.4)とを含むMI値情報が示されている。なお、MI値の分布においては、認識し易いように、平均値、上限値を境界として領域毎に色分けしている。
【0031】
この様に構成されたMI値情報を提示されることで、ユーザは、現在の送信条件を設定した場合サンプル母集団ではMI値=0.9となるプローブが最も多数であったこと、提示されている現在のMI値は、安全性の観点からマージンを取って上限値K・SD=1.4の位置の値を採用していること等を容易に認識することができる。
【0032】
なお、MI値情報の表示形態は、図2の例に拘泥されない。例えば、MI値の分布の代わりに、例えば図3に示す様に帯グラフを平均値、上限値を境界として領域毎に色分けすることでも、ユーザは同様の情報を認識することができる。また、色分けした各領域を明滅させ、さらに認識しやすくするようにしてもよい。
【0033】
(実施例2)
本実施例では、過去の送信条件を参照しながら現在の送信条件の設定する場合について説明する。係る場合において、例えば過去のMI値表示規格と現在のMI値表示規格とが同じである場合には、同じ送信条件を設定すれば同じMI値が表示されるため、ユーザは、混乱せず容易に同一条件での超音波画像取得を実現することができる。
【0034】
しかしながら、過去の撮影におけるMI値表示規格と現在のMI値表示規格とが異なる場合には、同じ送信条件を設定しているにも関わらず、過去とは異なるMI値が表示されることになる。すなわち、例えば過去の撮影時には「統計的な信頼区間CI=90%となる値をMI値として表示する。」という表示規格であったとする。係る場合、同じ超音波診断装置で同一の送信条件を設定したとしても、過去の撮影時では例えば「MI値=1.3」と表示され、現在の撮影時には「MI値=1.4」と表示されることになり、ユーザ側の混乱を招く可能性がある。その結果、例えば、安全性を示す指標であるMI値の一致を優先させるために送信条件を変更してしまい、同一条件での撮影が達成されない可能性もある。
【0035】
本MI値情報提示機能によれば、例えば図4に示すような過去のMI値情報と、図5に示す現在のMI値情報とがモニター14に表示される。これにより、ユーザは、MI値情報に含まれる母集団特性情報を比較することで、統計的な信頼区間CIが過去と現在とで異なっている(図4、図5の例では、CIが90%の位置から95%の位置に移動している。)ことを判定することができる。従って、同一の送信条件を設定したにも関わらず過去と現在とで提示されるMI値自体が異なる場合であっても、ユーザは混乱せずに過去と同一の送信条件で安全な撮影を実行することが可能となる。
【0036】
(動作)
次に、本超音波診断装置10のMI値等情報提示機能に基づく処理(MI値等情報提示処理)について説明する。
【0037】
図6は、本MI値等情報提示機能に従って実現される、送信条件の入力に応答してMI値等情報を提示する処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、入力装置13を介して患者情報等の入力を受けた後(ステップS1)、送信条件の入力を受ける(ステップS2)。なお、送信条件は、入力装置13を介して数値等を直接入力又は選択するもの、所定のスキャンシーケンスを選択することで記憶部32からプリセットされた値を自動的に取得するもの、ネットワークを介して他の装置からプリセットされた値を自動的に取得するもの、等のいずれの形態で入力されてもよい。
【0038】
次に、MI値等情報生成部30は、MI値等テーブルを参照して入力された送信条件に関するMI値等を取得し、また、入力された送信条件に対応する母集団特性情報を取得する(ステップS3)。さらに、MI値等情報生成部30は、取得したMI値等と母集団特性情報とからMI値等情報を生成する(ステップS4)。生成されたMI値等情報は、表示制御部27において所定の色彩が割り当てられ、モニター14に所定の位置・形態で表示される(ステップS5)。
【0039】
表示されたMI値等情報をユーザが観察した結果、さらに送信条件を変更する場合には、送信条件の再入力に伴ってステップS2〜ステップS5までの各処理を再度実行され、MI値等情報生成部30によって生成された新たなMI値等情報が表示される。このとき、例えば、表示制御部27は、表示されている現在のMI値等を新たなMI値等情報に基づいて変更すると共に、例えば図7、図8に示すように母集団特性情報をMI値等軸に沿って移動させることで、MI値等情報の表示変更を行うようにしてもよい。一方、現在の送信条件で問題ない場合には、当該送信条件に従って超音波画像を取得しMI値等情報と共に表示する(ステップS6、ステップS7)。
【0040】
また、図9は、本MI値等情報提示機能に従って実現される、過去のMI値等情報と現在のMI値等情報とを提示する処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、患者情報の入力を受けた後(ステップS11)、MI値等情報生成部30は、所定の指示に応答して参照される過去の超音波画像の付帯情報から過去のMI値等情報を取得する(ステップS12)。
【0041】
次に、送信条件の入力を受けて、MI値等情報生成部30は、MI値等テーブルを参照して入力された送信条件に関するMI値等を取得し、また、入力された送信条件に対応する母集団特性情報を取得する(ステップS13、ステップS14)。さらに、MI値等情報生成部30は、取得したMI値等と母集団特性情報とからMI値等情報を生成する(ステップS15)。生成されたMI値等情報は、表示制御部27において所定の色彩が割り当てられ、過去のMI値等情報と共にモニター14に所定の位置・形態で表示される(ステップS16)。
【0042】
表示されたMI値等情報をユーザが観察した結果、さらに送信条件を変更する場合には、送信条件の再入力に伴ってステップS13〜ステップS16までの各処理を再度実行され、MI値等情報生成部30によって生成された新たなMI値等情報が表示される。一方、現在の送信条件で問題ない場合には、当該送信条件に従って超音波画像を取得しMI値等情報と共に表示する(ステップS17、ステップS18)。
【0043】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0044】
本超音波診断装置によれば、送信条件の入力に応答して、現在の送信条件に対応するMI値等と母集団特性情報とを含むMI値等情報を表示することができる。従って、ユーザは、表示されたMI値等情報により、現在の送信条件を設定した場合サンプル母集団で最も多く実現されたMI値等(すなわち平均値)、提示されている現在のMI値等は、安全性の観点からどの程度のマージンを取って採用されているのか等を容易に認識することができる。
【0045】
また、過去の送信条件を参照しながら現在の送信条件の設定する際、過去のMI値等表示規格と現在のMI値等表示規格とが同じである場合には、同じ送信条件を設定すれば同じMI値等が表示されるため、ユーザは、混乱せず容易に同一条件での超音波画像取得を実現することができる。さらに、過去の撮影におけるMI値等表示規格と現在のMI値等表示規格とが異なるであっても、提示される過去のMI値等情報と現在のMI値等情報とを比較することで、MI値等表示基準が過去と現在とで異なっていることを容易に判定することができる。その結果、ユーザは混乱せずに過去と同一の送信条件で安全な撮影を実行することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0047】
(1)すなわち、本実施形態に係る機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0048】
(2)上記実施形態では、超音波強度を示す指標としてMI値を用いた場合を例とした。しかしながら、本発明の技術的思想はこれに限定されず、例えば超音波強度を示す指標としてTI値その他の指標を用いる場合にも適用可能である。
【0049】
(3)上記実施形態では、サンプル母集団の分布、平均値、統計的に計算される上限値、統計的な信頼区間の全てを含む母集団特性情報を例に説明した。しかしながら、これに拘泥されず、例えばサンプル母集団の分布及び平均値を示すことでも、現在の送信条件に対応するMI値等の分布上の位置、平均値との相対的位置関係を判定することができる。また、上限値を表示するのみでも、現在の送信条件に対応するMI値等がどの様な基準で決定されているのかを把握することができる。母集団特性情報にいずれの情報を含ませるかは、入力装置13からの設定によって変更可能であることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上本発明によれば、表示されるMI値等の超音波強度指標がどの様に決定されたものであるのかを判定可能な情報を提示することができる超音波診断装置、超音波強度指標情報提示プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、MI値等情報提示機能によってモニター14に表示されるMI値等情報の一例を示した図である。
【図3】図3は、MI値等情報提示機能によってモニター14に表示されるMI値等情報の他の例を示した図である。
【図4】図4は、過去のMI値情報の一例を示した図である。
【図5】図5は、現在のMI値情報の一例を示した図である。
【図6】図6は、MI値等情報提示機能に従って実現される、送信条件の入力に応答してMI値等情報を提示する処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、MI値等情報の表示変更の一例を示した図である。
【図8】図8は、MI値等情報の表示変更の一例を示した図である。
【図9】図9は、本MI値等情報提示機能に従って実現される、過去のMI値等情報と現在のMI値等情報とを提示する処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信部、22…超音波受信部、23…Bモード処理部、24…ドプラ処理部、25…画像生成部、27…表示制御部、28…制御プロセッサ(CPU)、29…インターフェース部、30…MI値等情報生成部、32…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対し超音波を送信し、前記被検体から超音波を受信する超音波プローブと、
前記被検体に送信する超音波に関する送信条件を入力するめの入力手段と、
前記入力された送信条件に対応する超音波強度指数と当該超音波強度指数を決定するための基準を示す情報とを含む超音波強度指数情報を、前記入力された送信条件に基づいて生成する情報生成手段と、
前記超音波強度指数情報を所定の形態で表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波強度指数を決定するための基準を示す情報は、前記超音波プローブのサンプル母集団に関する前記送信条件の平均値及びサンプル母集団の分布、又は前記サンプル母集団を用いて決定される上限値又は統計的な信頼区間を含むことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波強度指数は、機械的指数又は温度的指数であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブを用いて被検体に対し超音波を送信し当該被検体から得られる反射波を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置において用いられるプログラムであって、
前記超音波診断装置の制御手段に、
入力された送信条件に対応する超音波強度指数と当該超音波強度指数を決定するための基準を示す情報とを含む超音波強度指数情報を、前記入力された送信条件に基づいて生成する情報生成機能と、
前記超音波強度指数情報を提示手段に所定の形態で提示させる提示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波強度指標情報提示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−67856(P2008−67856A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248532(P2006−248532)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】