説明

超音波診断装置

【課題】スイッチング電源のスイッチング動作に起因する画像ノイズを抑制すること。
【解決手段】超音波診断装置は、超音波プローブと、被検体へ超音波を送信する送信部と、受信信号を発生する受信部と、受信信号に基づいて超音波画像を発生する画像発生部と、超音波画像を表示する表示部と、表示部と画像発生部と受信部と送信部との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生するスイッチング電源と、スイッチング電源のスイッチング動作のためのクロック信号を発生するクロック信号発生部と、超音波の中心周波数を含む所定の周波数帯域の外部に、スイッチング電源のスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させるように、中心周波数に基づいて、スイッチング周波数を決定するスイッチング周波数決定部と、決定されたスイッチング周波数に従ってクロック信号発生部を制御するクロック制御部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源を備える超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波診断装置においては、基板等の電源としてノイズの少ないドロッパやシリーズレギェレータなどのリニア型電源を使用する場合が多い。しかし、リニア型電源の変換効率は悪い。また、リニア型電源は、発熱や実装面積が大きくなり、コスト高となることがある。そこで、近年超音波診断装置の電源として、高い変換効率で低コストなスイッチング電源が使用されることがある。スイッチング電源は、トランジスタをスイッチングすることにより、所望の電圧を発生させる電源である。一秒間に当該トランジスタのスイッチングを行う回数をスイッチング周波数と呼ぶ。
【0003】
しかしながらスイッチング電源は、スイッチング動作により高調波ノイズを発生させる。発生された高調波ノイズは、超音波診断装置のアナログ回路等における信号に混入し、超音波画像上に画像ノイズを発生させる(例えば図8、図9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−130992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スイッチング電源のスイッチング動作に起因する画像ノイズを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体へ超音波を送信する送信部と、前記送信された超音波に対応する反射波を前記被検体から前記超音波プローブを介して受信し、受信信号を発生する受信部と、前記受信信号に基づいて、超音波画像を発生する画像発生部と、前記発生された超音波画像を表示する表示部と、前記表示部と前記画像発生部と前記受信部と前記送信部との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生するスイッチング電源と、前記スイッチング電源のスイッチング動作のためのクロック信号を発生するクロック信号発生部と、前記超音波の中心周波数を含む所定の周波数帯域の外部に、前記スイッチング電源のスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させるように、前記中心周波数に基づいて、前記スイッチング周波数を決定するスイッチング周波数決定部と、前記決定されたスイッチング周波数に従って前記クロック信号発生部を制御するクロック制御部と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体へ超音波を送信する送信部と、前記送信された超音波に対応する反射波を前記被検体から前記超音波プローブを介して受信し、受信信号を発生する受信部と、前記受信信号に基づいて、超音波画像を発生する画像発生部と、前記発生された超音波画像を表示する表示部と、前記表示部と前記画像発生部と前記受信部と前記送信部との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生するスイッチング電源と、前記スイッチング電源のスイッチング動作のためのクロック信号を発生するクロック信号発生部と、前記クロック信号発生部を制御するクロック制御部とを具備し、前記超音波プローブは、前記超音波プローブに固有の周波数を含む所定の周波数帯域の外部に、前記スイッチング電源のスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させた前記スイッチング周波数を記憶するメモリを有し、前記クロック制御部は、前記メモリに記憶されたスイッチング周波数に従ってクロック信号発生部を制御すること、を特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング電源のスイッチング動作に起因する画像ノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1のクロック信号発生部の詳細な構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、図2の2次クロック発生部で発生される2次クロック信号の一例を示す図である。
【図4】図4は、図3で発生された2次クロック信号の周波数を段階的に変化させる一例を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態において、中心周波数を中心とする画像表示帯域を、変更されたスイッチング周波数の高調波とともに示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、図6のクロック信号発生部の詳細な構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、従来の超音波診断装置において、中心周波数を中心とする画像表示帯域に、スイッチング周波数の高調波に起因するノイズが混入する一例を示す図である。
【図9】図9は、従来の超音波診断装置において、スイッチング周波数の高調波に起因するノイズが混入したドプラ波形の表示画像を、所定の時刻における流速に対する頻度分布とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、入力部3、超音波プローブ5、表示部7、装置本体9を備える。
【0012】
入力部3は、ユーザによる各種指示・命令・情報・選択・設定を装置本体9に取り込む。入力部3は、図示しないが、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の入力デバイスを備える。入力デバイスは、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を装置本体9の図示していない制御部へ出力する。なお、入力デバイスは、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。また、ユーザが入力部3の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、本超音波診断装置1は一時停止状態となる。入力部3は、ユーザによって設定された送信条件を、後述する送信制御部13へ出力する。送信条件とは、例えば超音波プロ−ブ5を介して被検体へ送信される超音波の中心周波数(以下中心周波数と呼ぶ)などである。中心周波数は、走査方式(リニア、コンベックス、セクタなど)、被検体の診断対象部位、超音波診断のモード(Bモード、ドプラモード、カラードプラモードなど)、被検体表面から診断対象部位までの距離などによってそれぞれ異なる。
【0013】
超音波プローブ5は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての圧電振動子を備える。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ5の先端に装備される。以下、1つの圧電振動子が1チャンネルを構成するものとして説明する。圧電振動子の厚みに反比例して、被検体に送信される超音波の中心周波数は決定される。以下の説明において超音波プローブ5は、一つの中心周波数を有するものとする。なお、一つの超音波プローブ5は、複数の中心周波数を有していてもよい。
【0014】
表示部7は、装置本体9から出力されるビデオ信号に基づいて、超音波画像を表示する。なお、超音波画像とは、BモードによるBモード画像、ドプラモードによるドプラ波形、カラードプラモードによる血流画像などである。
【0015】
装置本体9は、コネクタ11、送信制御部13、送信部15、受信部17、画像発生部19、ディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下DSCと呼ぶ)21、スイッチング電源23、読み出し専用メモリ(Read-Only Memory:以下ROMと呼ぶ)25、スイッチング周波数決定部27、クロック制御部29、クロック信号発生部31を備える。
【0016】
コネクタ11は、装置本体9と超音波プローブ5とを接続する。
【0017】
送信制御部13は、入力部3を介してユーザによって設定された送信条件に基づいて、被検体に送信する超音波の中心周波数を決定する。具体的には、送信制御部13は、例えば超音波プローブ5の交換により中心周波数が変更されたとき、変更される中心周波数に対応する任意波形のパルスを、後述する波形発生器155のメモリから増幅器157へ出力させる。また、被検体表面から診断対象までの距離や診断対象部位の血流の流速に対応して中心周波数が変更されたとき、送信制御部13は、変更された中心周波数に対応する任意波形のパルスを、後述する波形発生器155のメモリから増幅器157へ出力させる。なお、送信制御部13は、上記中心周波数に対応する任意波形のパルスを発生させるように、波形発生器155を制御することも可能である。送信制御部13は、決定された中心周波数を、スイッチング周波数決定部27へ出力する。
【0018】
送信部15は、レートパルス発生器151、送信遅延回路153、波形発生器155、増幅器157、パルサ159を備える。レートパルス発生器151は、所定のレート周波数で送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路153は、チャンネル毎に超音波をビーム状に収束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を各レートパルスに与える。波形発生器155は、超音波の中心周波数に関する任意波形のパルスを記憶したメモリを有する。波形発生器155は、送信制御部13からの制御信号に従って、中心周波数に対応する任意波形のパルスを上記メモリから読み出して、読み出されたパルスを増幅器157へ出力する。増幅器157は、波形発生器155から出力される波形のパルスを増幅する。パルサ159は、増幅器157の出力に基づいて、所定のスキャンラインに向けて超音波ビームが形成されるように、上記レートパルスによるタイミングで圧電振動子毎に駆動パルスを印加する。
【0019】
受信部17は、図示していないプリアンプとアナログディジタルコンバータ(Analog to Digital Converter:以下ADCと呼ぶ)とディジタルビームフォーマとを備える。プリアンプは、超音波プローブ5を介して取り込まれた被検体からのエコー信号をチャンネル毎に増幅する。ADCは、各圧電振動子から得られたエコー信号をそれぞれディジタル信号に変換する。ディジタルビームフォーマは、ディジタル信号に変換されたエコー信号それぞれに対して、細いビーム幅を得るために所定の深さからの受信超音波を集束するための遅延時間と、所定方向からの受信超音波に対して強い受信指向性を設定するための遅延時間とを与える。複数の振動子に対する遅延時間のセットを受信遅延パターンという。ディジタルビームフォーマは、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターンを記憶している図示していない制御部からの受信遅延パターンに従って、複数のエコー信号を加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。送信部15における送信指向性と受信部17における受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される。この指向性により、いわゆる超音波走査線が決まる。なお、ディジタルビームフォーマの替わりに送信遅延回路と加算器とから構成されるアナログ式のビームフォーマを用いてもよい。以下、受信部17から出力される信号を受信信号と呼ぶ。
【0020】
画像発生部19は、図示していないBモード処理部とドプラ処理部とから構成される。Bモード処理部は、受信部17から受信信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモードデータを発生する。発生されたBモードデータは、DSC21に出力される。
【0021】
ドプラ処理部は、受信部17から出力される受信信号に基づいてドプラ処理を行う。ドプラ処理とは、受信信号を周波数解析する処理、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出する処理、平均速度、分散、パワー等の血流情報を計算する処理などである。ドプラ処理されたデータ(以下ドプラデータと呼ぶ)は、DSC21に出力される。
【0022】
DSC21は、画像発生部19において走査方向単位で生成されたBモードデータ、ドプラデータを、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波画像を発生する。発生された超音波画像は、ビデオ信号として表示部7に出力される。以下説明を簡単にするため本実施形態における説明は、Bモード画像およびBモードデータに関するものとする。なお、ドプラ波形、血流画像およびドプラデータに関しても、DSC21についての説明は同様なものとなる。
【0023】
スイッチング電源23は、クロック信号に基づいて当該スイッチング電源23のトランジスタなどのスイッチング素子をスイッチングすること(以下スイッチング動作と呼ぶ)により、所望の電圧を発生させる電源である。1秒間に当該トランジスタをスイッチングする回数をスイッチング周波数と呼ぶ。スイッチング素子は、クロック信号に従って、ON状態とOFF状態とを交互に繰り返す。ON状態の周期の逆数をスイッチング周波数という。スイッチング電源23は、表示部7と送信部15と受信部17と画像発生部19とDSC21との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生する。なお、表示部7、送信部15、受信部17、画像発生部19それぞれに対して、それぞれ異なる駆動電圧を発生するスイッチング電源23が接続されてもよい。また、スイッチング電源23は、超音波診断装置1の構成要素各部における基板に実装されてもよい。
【0024】
ROM25は、複数の中心周波数に対して複数のスイッチング周波数をそれぞれ対応付けた表(以下対応表と呼ぶ)を記憶する。以下、ROM25に記憶されたスイッチング周波数と中心周波数との対応関係について説明する。スイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数が、中心周波数を中心とする所定の周波数帯域の外部に位置するように、かつ上記所定の周波数帯域近傍に予め決定される。所定の周波数帯域とは、画像表示帯域のことである。画像表示帯域とは、中心周波数を中心として、典型的には±100kHzの周波数帯域において、検波及びフィルタリング等を経て画像化に寄与する周波数成分を含む周波数帯域のことをいう。決定されたスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数に基づいて、当該スイッチング周波数が決定される。決定されたスイッチング周波数と画像表示帯域の中心周波数とが対応付けられる。上記中心周波数と対応付けられたスイッチング周波数を用いてスイッチング動作を行うことにより、スイッチング周波数の基本波又は2次以上の高調波ノイズがエコー信号に混入したとしても、超音波画像は、スイッチング周波数の基本波又は2次以上の高調波ノイズの影響を受けない。
【0025】
スイッチング周波数決定部27は、中心周波数を中心とする画像表示帯域の外部に、スイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させるように当該スイッチング周波数を決定する。具体的には、スイッチング周波数決定部27は、送信制御部13から入力された中心周波数とROM25に記憶された対応表とに基づいて、スイッチング周波数を決定する。スイッチング周波数決定部27は、決定されたスイッチング周波数を、クロック制御部29へ出力する。なお、スイッチング周波数決定部27は、送信制御部13から入力された中心周波数を中心とする画像表示帯域の外部に、スイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させるプログラムにより、当該スイッチング周波数を決定してもよい。上記プログラムへの入力は、送信制御部13から入力される中心周波数と、当該中心周波数を中心とした画像表示帯域とである。上記プログラムによる出力は、スイッチング周波数である。なお、上記プログラムは、スイッチング周波数決定部27のメモリまたは装置本体9の図示していない内部記憶装置などに記憶される。
【0026】
クロック制御部29は、スイッチング周波数決定部27で決定されたスイッチング周波数と同じ周波数を有するクロック信号を発生するために、クロック信号発生部31を制御する。以下、スイッチング周波数と同じ周波数を有するクロック信号を2次クロック信号と呼ぶ。具体的には、クロック制御部29は、上記決定されたスイッチング周波数に基づく周期(以下スイッチング周期と呼ぶ)と所定のデューティ比とに基づいて、2次クロック信号のパルス幅(以下Highパルス幅と呼ぶ)を決定する。クロック制御部29は、決定されたHighパルス幅を、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力する。クロック制御部29は、スイッチング周期からHighパルス幅を引いた時間(以下Lowパルス幅と呼ぶ)を計算する。クロック制御部29は、計算されたLowパルス幅を、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力する。
【0027】
クロック信号発生部31は、クロック制御部29による制御のもとで、2次クロック信号を発生する。なお、発生される2次クロック信号のデューティ比は一定である。クロック信号発生部31は、発生された2次クロック信号をスイッチング電源23へ出力する。
【0028】
図2は、クロック信号発生部31の詳細な構成の一例を示す図である。図2において、クロック信号発生部31は、1次クロック(基準クロック)発生部311と、Highパルスカウント数設定部313と、Lowパルスカウント数設定部315と、Highパルスカウンタ317と、Lowパルスカウンタ319と、2次クロック発生部321とを備える。
【0029】
1次クロック(基準クロック)発生部311は、2次クロック信号の基準となる1次クロック信号(以下基準クロック信号と呼ぶ)を発生する。
【0030】
Highパルスカウント数設定部313は、クロック制御部29より出力されたHighパルス幅に対応する基準クロック信号のパルスのカウント数(以下Highパルスカウント数と呼ぶ)を、Highパルスカウンタ317に設定する。
【0031】
Lowパルスカウント数設定部313は、クロック制御部29より出力されたLowパルス幅に対応する基準クロック信号のパルスのカウント数(以下Lowパルスカウント数と呼ぶ)を、Lowパルスカウンタ317に設定する。
【0032】
Highパルスカウンタ317は、基準クロック信号に対して、Highパルスカウント数をカウントする。Highパルスカウンタ317は、Highパルスカウント数に対応したHighパルスを、2次クロック発生部321へ出力する。Highパルスとは、Highパルスカウント数のカウント開始時における基準クロック信号のパルスの立ち上がり時刻と、Highパルスカウント数のカウント終了時における基準クロック信号のパルスの立下り時刻との間のHighパルス幅に対応するパルスのことをいう。Highパルスカウント数のカウントが終了したとき、Highパルスカウンタ317は、基準クロック信号に対してLowパルスカウント数をカウントするようにLowパルスカウンタ319を作動させる。
【0033】
Lowパルスカウンタ319は、基準クロック信号に対して、Lowパルスカウント数をカウントする。Lowパルスカウンタ319は、Lowパルスカウント数に対応したLowパルスを、2次クロック発生部321へ出力する。Lowパルスとは、Lowパルスカウント数のカウント開始時における基準クロック信号のパルスの立下り時刻と、Lowパルスカウント数のカウント終了時における基準クロック信号のパルスの立ち上がり時刻との間のLowパルス幅に対応するパルスのことをいう。Lowパルスカウント数のカウントが終了したとき、Lowパルスカウンタ319は、基準クロック信号に対してHighパルスカウント数をカウントするようにHighパルスカウンタ317を作動させる。
【0034】
Highパルスカウント数設定部313により新たなHighパルスカウント数がHighパルスカウンタ317に設定されるとき、Highパルスカウンタ317におけるカウント数は、0にリセットされる。Lowパルスカウント数設定部315により新たなLowパルスカウント数が設定されるとき、Lowパルスカウンタ319におけるカウント数は、0にリセットされる。これらカウンタを0にリセットすることによりヒゲ状パルスの発生を防ぐことができる。さらに、発生される2次クロック信号のデューティ比は、一定となる。
【0035】
2次クロック発生部321は、Highパルスカウンタ317により出力されたHighパルスと、Lowパルスカウンタ319により出力されたLowパルスとに基づいて、2次クロック信号を発生する。発生された2次クロック信号は、スイッチング電源23に出力される。このときスイッチング電源23は、出力された2次クロック信号に基づいて、スイッチング動作を行う。
【0036】
図3は、2次クロック発生部321で発生される2次クロック信号の一例を示す図である。Δthは、Highパルス幅を示している。Δthに対応するHighパルスカウント数は、4である。Δtlは、Lowパルス幅を示している。Δtlに対応するLowパルスカウント数は、3である。taおよびtcは、基準クロック信号の立ち上がり時刻と同期させた2次クロック信号の立ち上がり時刻を示している。tbは、基準クロック信号の立ち下がり時刻と同期させた2次クロック信号の立ち下がり時刻を示している。HPは、2次クロック信号のHighパルスを示している。LPは、2次クロック信号のLowパルスを示している。
【0037】
(第1の変形例)
第1の実施形態との相違は、スイッチング動作のための2次クロック信号の周波数を段階的に変化させることである。
【0038】
クロック制御部29は、スイッチング動作に使われている2次クロック信号の周波数(以下動作周波数と呼ぶ)からスイッチング周波数決定部27により決定されたスイッチング周波数(以下決定周波数と呼ぶ)へ段階的に周波数を変化させるように、クロック信号発生部31を制御する。
【0039】
具体的には、クロック制御部29は、決定周波数と動作周波数との差分値を計算する。クロック制御部29は、計算された差分値を予め設定された段階の数で割った値(以下段階変化幅と呼ぶ)を計算する。クロック制御部29は、動作周波数に段階変化幅を加えた値又は、動作周波数から段階変化幅を減じた値を計算する。以下、上記計算結果である加えた値又は減じた値を第1変化周波数と呼ぶ。クロック制御部29は、第1変化周波数に対応する周期と所定のデューティ比とに基づいて、第1変化周波数を有する2次クロック信号のパルス幅(以下第1変化Highパルス幅と呼ぶ)を決定する。クロック制御部29は、決定された第1変化Highパルス幅を、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力する。クロック制御部29は、第1変化周波数に対応する周期から第1変化Highパルス幅を引いた時間(以下第1変化Lowパルス幅と呼ぶ)を計算する。クロック制御部29は、決定された第1変化Lowパルス幅を、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力する。クロック信号発生部31は、これらの出力に基づいて、2次クロック信号おける動作周波数を、第1変化周波数に変化させる。
【0040】
クロック制御部29は、所定の時間の経過にあわせて、2段階目の周波数の変化として以下の処理を行う。所定の時間とは、例えば、2次クロック発生部321から出力される2次クロック信号の周期の定数倍である。クロック制御部29は、第1変化周波数に段階変化幅を加えた値又は、第1変化周波数から段階変化幅を減じた値を計算する。以下、上記計算結果である加えた値又は減じた値を第2変化周波数と呼ぶ。クロック制御部29は、第2変化周波数に対応する周期と所定のデューティ比とに基づいて、第2変化周波数を有する2次クロック信号のパルス幅(以下第2変化Highパルス幅と呼ぶ)を決定する。クロック制御部29は、決定された第2変化Highパルス幅を、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力する。クロック制御部29は、第2変化周波数に対応する周期から第2変化Highパルス幅を引いた時間(以下第2変化Lowパルス幅と呼ぶ)を計算する。クロック制御部29は、決定された第2変化Lowパルス幅を、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力する。クロック信号発生部31は、これらの出力に基づいて、2次クロック信号の第1変化周波数を、第2変化周波数に変化させる。クロック制御部29は、周波数の変化段階の数より1少ない回数について、本段落における処理を繰り返す。
【0041】
以下、2次クロック信号の周波数の段階的な変化について、具体的な数値を用いて詳細な説明を行う。周波数の変化の段階は、3段階であるものとする。なお、周波数の変化の段階は、3段階に限定されない。周波数の変化段階の各段階における周波数の変化幅は、等しい変化幅とする。なお、周波数の変化幅は、デューティ比の変化を一定に保った変化幅や不規則な変化幅でもよい。また、所定の時間は、2次クロック発生部321から出力される2次クロック信号の任意の周期であるとする。所定のデューティ比は50%とする。
【0042】
動作周波数は0.52MHzであり、決定周波数は0.58MHzであるとする。このとき、周波数の変化幅は、0.58−0.52=0.06となる。0.06MHzの周波数の変化幅に対して、周波数の変化を3段階で行うとき、段階変化幅は、0.06÷3=0.02となる。これらのことから、動作周波数である0.52MHzは、0.02MHzごとに3段階で、決定周波数である0.58MHzへ変化される。1段階目の周波数の変化は、0.52MHzから0.54MHzへの変化である。上述した第1変化周波数は、0.54MHzである。この第1変化周波数に対応する周期は、1.85μsである。デューティ比は50%であるので、第1変化Highパルス幅は0.925μsとなる。第1変化Highパルス幅(0.925μs)は、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力される。第1変化Lowパルス幅は1.85−0.925=0.925となる。第1変化Lowパルス幅(0.925μs)は、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力される。クロック信号発生部31は、これらの出力に基づいて、2次クロック信号の動作周波数(0.52MHz)を、第1変化周波数(0.54MHz)に変化させる。
【0043】
2段階目の周波数の変化は、0.54MHzから0.56MHzへの変化である。上述した第2変化周波数は0.56MHzである。この第2変化周波数に対応する周期は、1.79μsである。デューティ比は50%であるので、第2変化Highパルス幅は0.895μsとなる。第2変化Highパルス幅(0.895μs)は、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力される。第2変化Lowパルス幅は1.79−0.895=0.895となる。第2変化Lowパルス幅(0.895μs)は、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力される。クロック信号発生部31は、これらの出力に基づいて、2次クロック信号の第1変化周波数(0.54MHz)を、第2変化周波数(0.56MHz)に変化させる。
【0044】
3段階目の周波数の変化は、0.56MHzから0.58MHzへの変化である。今の場合、周波数を変化する段階の数は3なので、第3変化周波数は、決定周波数と同じ0.58MHzである。この第3変化周波数に対応する周期は、1.72μsである。デューティ比は50%であるので、第3変化Highパルス幅は0.86μsとなる。第3変化Highパルス幅(0.86μs)は、クロック信号発生部31のHighパルスカウント数設定部313へ出力される。第3変化Lowパルス幅は1.72−0.86=0.86となる。第3変化Lowパルス幅(0.86μs)は、クロック信号発生部31のLowパルスカウント数設定部315へ出力される。クロック信号発生部31は、これらの出力に基づいて、2次クロック信号の第2変化周波数(0.56MHz)を、第3変化周波数(0.58MHz)に変化させる。
【0045】
図4は、2次クロック信号の周波数の段階的な変化に関する上記説明を補足する図である。図4(a)は、動作周波数(0.52MHz)を示している。図4(d)は、決定周波数(0.58MHz)を示している。図4(b)および図4(c)は、動作周波数から決定周波数へ、0.02MHzごとに3段階で周波数を変化させる一例を示している。図4(e)は、2次クロック信号の周波数の変化時刻と2次クロック信号の周波数とを示している。t=t1において、クロック信号発生部31が、2次クロック信号の周波数を、0.52MHzから0.54MHzに変化させる。t=t2において、クロック信号発生部31が、2次クロック信号の周波数を、0.54MHzから0.56MHzに変化させる。t=t3において、クロック信号発生部31が、2次クロック信号の周波数を、0.56MHzから0.58MHzに変化させる。
【0046】
図5は、中心周波数を中心とした画像表示帯域を、変更されたスイッチング周波数の高調波とともに示す図の一例である。画像表示帯域は、1.9MHzから2.1MHzまでの周波数帯域である。今、所望の電圧を得るためのスイッチング周波数の範囲は、0.4MHzから0.6MHzまでの範囲である。中心周波数は、2MHzである。動作周波数が0.52MHzであるとすると、このスイッチング周波数の4次高調波は、2.08MHzとなる。この4次高調波2.08MHzは、画像表示帯域に含まれる。例えば図4のようにスイッチング電源23に関するスイッチング周波数を0.58MHzへ段階的に変化させると、0.58MHzの4次高調波は2.32MHzとなり、画像表示帯域の外部に位置する。また、0.58MHzの3次高調波は1.74MHzとなり、画像表示帯域の外部に位置する。以上のことから、スイッチング周波数とスイッチング周波数の高調波とが画像表示帯域に混入しないように、スイッチング周波数を決定することができる。
【0047】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置によれば、超音波の中心周波数を含む画像表示帯域にスイッチング周波数と当該スイッチング周波数の高調波とが混入しないように、スイッチング周波数を設定することができる。これにより、スイッチング電源のスイッチング動作に起因する画像ノイズを抑制することができる。また、スイッチング周波数を段階的に変化させることで、スイッチング周波数を変化させる時におけるデューティ比の変化を低減させることができる。これにより、スイッチング周波数を変化させる時におけるスイッチング電源の出力を安定させることができる。以上のことから本超音波診断装置は、小型、低コスト、低消費電力であるスイッチング電源を、超音波画像に影響させずに実装することができる。加えて、本超音波診断装置は、スイッチング電源を実装することにより、装置本体の小型化、低コスト化、低消費電力化が可能となる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。
図6は本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、入力部3、超音波プローブ5、表示部7、装置本体9を備える。
【0049】
超音波プローブ5は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての圧電振動子と、スイッチング周波数を記憶させたメモリ51とを有する。メモリ51に記憶されたスイッチング周波数は、超音波プローブ5に固有の周波数である中心周波数を中心とする画像表示帯域の外部に、当該スイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させる周波数である。
【0050】
図7は、クロック信号発生部31の詳細な構成の一例を示す図である。
超音波プローブ5が装置本体9のコネクタ11に接続されると、メモリ51に記憶されたスイッチング周波数は、コネクタ11を介してクロック制御部29に出力される。
【0051】
クロック制御部29は、メモリ51に記憶されたスイッチング周波数と同じ周波数を有するクロック信号を発生するために、クロック信号発生部31を制御する。
【0052】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本超音波診断装置によれば、超音波プローブに内蔵されたメモリに記憶されたスイッチング周波数に基づいて、スイッチング動作に関する2次クロック信号を発生することができる。記憶されたスイッチング周波数は、当該超音波プローブに固有の周波数である中心周波数を中心とする画像表示帯域の外部に、当該スイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させる周波数である。これにより、超音波画像上にスイッチング電源に起因する画像ノイズを抑制することができる。また、超音波プローブに固有の周波数に対応したスイッチング周波数を当該超音波プロ−ブのメモリに記憶させることにより、当該超音波プローブを装置本体に追加するとき、入力部3を介したユーザによる送信条件等の設定なしにスイッチング周波数が設定される。これにより、ユーザの操作性が改善される。加えて、スイッチング電源に起因する画像ノイズが抑制される。以上のことから本超音波診断装置は、小型、低コスト、低消費電力であるスイッチング電源を、超音波画像に影響させずに実装することができる。加えて、本超音波診断装置は、スイッチング電源を実装することにより、装置本体の小型化、低コスト化、低消費電力化が可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、小型、低コスト、低電力であるスイッチング電源を実装する超音波診断装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0055】
1…超音波診断装置、3…入力部、5…超音波プローブ、7…表示部、9…装置本体、11…コネクタ、13…送信制御部、15…送信部、17…受信部、19…画像発生部、21…ディジタルスキャンコンバータ(DSC)、23…スイッチング電源、25…読み出し専用メモリ(Read-Only Memory:ROM)、27…スイッチング周波数決定部、29…クロック制御部、31…クロック信号発生部、51…メモリ、151…レートパルス発生器、153…送信遅延回路、155…波形発生器、157…増幅器、159…パルサ、311…1次クロック発生部、313…Highパルスカウント数設定部、315…Lowパルスカウント数設定部、317…Highパルスカウンタ、319…Lowパルスカウンタ、321…2次クロック発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体へ超音波を送信する送信部と、
前記送信された超音波に対応する反射波を前記被検体から前記超音波プローブを介して受信し、受信信号を発生する受信部と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を発生する画像発生部と、
前記発生された超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部と前記画像発生部と前記受信部と前記送信部との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生するスイッチング電源と、
前記スイッチング電源のスイッチング動作のためのクロック信号を発生するクロック信号発生部と、
前記超音波の中心周波数を含む所定の周波数帯域の外部に、前記スイッチング電源のスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させるように、前記中心周波数に基づいて、前記スイッチング周波数を決定するスイッチング周波数決定部と、
前記決定されたスイッチング周波数に従って前記クロック信号発生部を制御するクロック制御部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記スイッチング周波数決定部は、複数の中心周波数に対して複数のスイッチング周波数をそれぞれ対応付けた表に基づいて、スイッチング周波数を決定すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記クロック制御部は、前記クロック信号の周波数を段階的に変化させるように、前記クロック信号発生部を制御し、変化のタイミングを任意時間または、送信レートに同期すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記クロック信号は一定のデューティ比を有すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体へ超音波を送信する送信部と、
前記送信された超音波に対応する反射波を前記被検体から前記超音波プローブを介して受信し、受信信号を発生する受信部と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を発生する画像発生部と、
前記発生された超音波画像を表示する表示部と、
前記表示部と前記画像発生部と前記受信部と前記送信部との少なくとも一つに対する駆動電圧を発生するスイッチング電源と、
前記スイッチング電源のスイッチング動作のためのクロック信号を発生するクロック信号発生部と、
前記クロック信号発生部を制御するクロック制御部とを具備し、
前記超音波プローブは、
前記超音波プローブに固有の周波数を含む所定の周波数帯域の外部に、前記スイッチング電源のスイッチング周波数に1以上の整数を乗じた全ての周波数を位置させた前記スイッチング周波数を記憶するメモリを有し、
前記クロック制御部は、
前記メモリに記憶されたスイッチング周波数に従ってクロック信号発生部を制御すること、
を特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−217842(P2011−217842A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88052(P2010−88052)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】