説明

超音波診断装置

【課題】運搬者や操作者の負担を軽減することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体Pに対して超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して被検体Pに超音波走査を行うことにより画像データを生成する装置本体20と、装置本体20の傾斜角を検出する傾斜角検出部40と、警報を発する警報部70とを備え、警報部70は、傾斜角検出部40により検出された傾斜角に基づいて装置本体20が予め設定された警報角度以上傾斜しているとき、警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波により被検体の体内を画像化し診断を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを被検体の体表に接触させるだけの簡単な操作で、被検体に対して超音波を送波し、被検体内組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波の受信信号に基づいて生成される画像データをモニタにリアルタイムに表示することができるため、心臓、血管、腹部、泌尿器、産婦人科等の検査に広く用いられている。
【0003】
この超音波診断装置は、超音波を送受波する超音波プローブ、この超音波プローブを駆動して画像データを生成する装置本体、及び容易に運搬できるように装置本体の底部に設けられたキャスタを備え、IEC60601の規格により10°傾斜地でも転倒しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−269068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、装置本体の小型化の要求により左右及び前後のキャスタ間隔が狭くなる一方で、可動範囲や画面の拡大の要求によりモニタを備えた装置本体の重心が上方へ移動する傾向にあり、転倒角度に対する余裕が少なくなっている。このため、超音波診断装置を運搬する運搬者や操作する操作者は運搬や設置場所に注意を払う必要があるため、運搬者や操作者に負担を与えている。
【0006】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、運搬者や操作者の負担を軽減することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、実施形態の超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波走査を行うことにより画像データを生成する装置本体と、前記装置本体の傾斜角を検出する傾斜角検出部と、前記装置本体の傾斜角が予め設定された警報角度以上であるとき、警報を発する警報部とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る超音波診断装置の外観を示す図。
【図3】実施形態に係る第1の検出部の構成の一例を示す図。
【図4】実施形態に係る第2の検出部の構成の一例を示す図。
【図5】実施形態に係る装置本体が左下がりに警報角度傾斜しているときの第1の検出部を示す図。
【図6】実施形態に係る装置本体が右下がりに警報角度傾斜しているときの第1の検出部を示す図。
【図7】実施形態に係る装置本体が前下がりに警報角度傾斜しているときの第2の検出部を示す図。
【図8】実施形態に係る装置本体が後下がりに警報角度傾斜しているときの第2の検出部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成を示したブロック図である。この超音波診断装置100は、被検体Pに対して超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して被検体Pに超音波走査を行うことにより画像データを生成する装置本体20と、装置本体20を移動可能に支持する4個のキャスタ30と、装置本体20の傾斜角を検出する傾斜角検出部40とを備えている。
【0011】
また、超音波診断装置100は、傾斜角検出部40で検出された傾斜角に基づいて装置本体20の傾斜角が予め設定された警報傾斜角以上であるときに警報を発する警報部70と、装置本体20、傾斜角検出部40、及び警報部70に外部電源200からの電力を供給する電力供給部80とを備えている。
【0012】
超音波プローブ10は一端部に複数の振動子を有し、他端部が装置本体20に接続されている。そして、装置本体20から供給される駆動信号により超音波を被検体P内に送波する。また、被検体P内で反射した超音波を受波して受信信号に変換し、変換した受信信号を装置本体20に出力する。
【0013】
装置本体20は、被検体Pに超音波を走査する送受信部21と、送受信部21からの受信信号を処理してBモードデータ等を生成する信号処理部22と、信号処理部22で生成されたBモードデータ等に基づいて画像データを生成する画像データ生成部23と、画像データ生成部23で生成された画像データを表示する表示部24と、各コマンド信号の入力等を行う操作部25と、送受信部21、信号処理部22、画像データ生成部23、及び表示部24の各ユニット、並びに電力供給部80を制御するシステム制御部26とを備えている。
【0014】
送受信部21は、超音波プローブ10を駆動する駆動信号を生成する送信部211及び超音波プローブ10から得られる受信信号に対して整相加算を行なう受信部212を備え、システム制御部26から供給されるゲイン、ダイナミックレンジ、送信周波数、パルス繰り返し周波数、視野深度、視野角、フレームレート等の撮像条件に基づいて超音波を走査する。
【0015】
送信部211は、被検体Pに放射する超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを発生する。次いで、被検体P内の各深さ方向への所定の深さで超音波ビームを集束させる集束用遅延時間と各深さ方向への送波により超音波を走査する偏向用遅延時間をレートパルスに与える。そのレートパルスから駆動パルスを生成して超音波プローブ10に出力する。
【0016】
受信部212は、超音波プローブ10から出力された微小な受信信号を増幅して十分なS/Nを確保する。次いで、被検体P内における各深さ方向の所定の深さからの超音波を集束させる集束用遅延時間と深さ方向に超音波ビームの指向性を設定するための偏向用遅延時間と受信信号に与える。その受信信号を整相加算して1つに纏め、信号処理部22に出力する。
【0017】
信号処理部22は、送受信部21の受信部212からの整相加算された受信信号に対して包絡線検波を行った後に対数変換し、変換した信号をデジタル信号に変換してBモードデータを生成する。また、受信部212からの受信信号に対してドプラ偏移周波数を検出して血流や心臓壁の移動情報に関する信号を抽出し、その抽出したドプラ信号に対して自己相関処理を行う。次いで、自己相関処理に基づいて血流や心臓壁等の速度を表すドプラデータを生成する。そして、生成したBモードデータやドプラデータを画像データ生成部23に出力する。
【0018】
画像データ生成部23は、信号処理部22から出力されるBモードデータを画像表示のための走査変換を行ない、被検体P内の超音波走査により2次元の撮像領域を画像化したBモード画像データを生成する。また、信号処理部22から出力されるドプラデータに走査変換を行い、血流や心臓壁等の速度が経時的に表されるドプラ画像データを生成する。そして、生成したBモード画像データやドプラ画像データを表示部24に出力する。
【0019】
図2は、超音波診断装置100の外観を示した図である。そして、図2(a)は超音波診断装置の正面図を示し、図2(b)は超音波診断装置の側面図を示している。
表示部24は、装置本体20の上部に配置される。そして、画像データ生成部23で生成されたBモード画像データやドプラ画像データを表示するCRTや液晶パネル等のモニタ241と、モニタ241を上下方向、左右方向、及び前後方向等の様々な方向へ広範囲に移動自在に支持する複数のアームからなる支持部242とを備えている。
【0020】
図1に示した操作部25は、キーボード、トラックボール、マウス、タッチスクリーン等の入力デバイスを備え、被検体Pを識別する例えばIDを入力する。また、ゲイン、ダイナミックレンジ、送信周波数、パルス繰り返し周波数、視野深度、視野角、フレームレート等の撮像条件を入力する。
【0021】
システム制御部26は、CPUと記憶回路を備え、操作部25から入力された入力情報に基づいて、送受信部21、信号処理部22、画像データ生成部23、及び表示部24の各ユニット、並びに電力供給部80の制御やシステム全体の制御を行なう。
【0022】
各キャスタ30は、装置本体20の底面に対する垂直線を回転軸として回転自在に装置本体20に取り付けられた支持部材と、この支持部材に前記垂直線に垂直な軸を回転軸として回転自在に支持されたローラと、このローラを手又は足による操作で圧接して停止可能に設けられた前記支持部材に保持されるブレーキ部材により構成される。そして、図2に示すように、装置本体20底面における四隅近傍に設けられ、左右方向に第1の間隔L1を空けて設けられている。また、左右方向に対して垂直な前後方向に第1の間隔L1よりも広い第2の間隔L2を空けて設けられている。
【0023】
傾斜角検出部40は、装置本体20が水平面に対して左右方向に傾斜したときの傾斜角を検出する第1の検出部50及び装置本体20が水平面に対して前後方向に傾斜したときの傾斜角を検出する第2の検出部60を備えている。
【0024】
図3は、第1の検出部50の構成の一例を示した図である。この第1の検出部50は、円弧状の第1のガイドレール52、この第1のガイドレール52に案内されて自在に揺動する第1の揺動体51、及び第1の揺動体51の揺動に基づいて左右方向へ傾斜した装置本体20の傾斜角を検出する2つの第1の検出器53,54を備えている。
【0025】
第1のガイドレール52は、左右方向に向けて装置本体20に固定配置され、第1の揺動体51を貫通して揺動自在に保持する。また、第1の揺動体51は、貫通孔及びこの貫通孔に回転自在に配置された複数のローラを有し、仮想の点C1を中心とする円弧状の軌道を描いて矢印R1方向及び矢印R2方向へ自在に揺動する。更に、第1の検出器53,54は、第1のガイドレール52の両端部に固定され、第1のガイドレール52に対して相対的に揺動して接触した第1の揺動体51を検出する。
【0026】
そして、第1の検出部50は、装置本体20が左方向又は右方向へ傾斜して転倒する角度よりも小さい角度であり、その転倒角度に対して余裕の少ない角度である予め設定された第1の警報角度θ1に達したとき、第1の検出器53又は第1の検出器54と第1の揺動体51とが接触することにより、装置本体20が左方向又は右方向へ傾斜している第1の警報角度θ1を検出し、その検出信号を装置本体20のシステム制御部26及び警報部70に出力する。
【0027】
図4は、第2の検出部60の構成の一例を示した図である。この第2の検出部60は、円弧状の第2のガイドレール62、この第2のガイドレール62に案内されて自在に揺動する第2の揺動体61、及び第2の揺動体61の揺動に基づいて前後方向へ傾斜した装置本体20の傾斜角を検出する2つの第2の検出器63,64を備えている。
【0028】
第2のガイドレール62は、前後方向に向けて装置本体20に固定配置され、第2の揺動体61を貫通して揺動自在に保持する。また、第2の揺動体61は、貫通孔及びこの貫通孔に回転自在に配置された複数のローラを有し、仮想の点C2を中心とする円弧状の軌道を描いて矢印R3方向及び矢印R4方向へ自在に揺動する。更に、第2の検出器63,64は、第2のガイドレール62の両端部に固定され、第2のガイドレール62に対して相対的に揺動して接触した第2の揺動体61を検出する。
【0029】
そして、第2の検出部60は、装置本体20が前方向又は後方向へ傾斜して転倒する角度よりも小さい角度であり、その転倒角度に対して余裕の少ない角度である予め設定された第2の警報角度θ2に達したとき、第2の検出器63又は第2の検出器64と第2の揺動体61とが接触することにより、装置本体20が前方向又は後方向へ傾斜している第2の警報角度θ2を検出し、その検出信号を装置本体20のシステム制御部26及び警報部70に出力する。ここでは、前後のキャスタ30間隔が左右のキャスタ30間隔よりも広いので、装置本体20は左右方向よりも前後方向へ転倒し難い。このため、第2の警報角度θ2は、第1の警報角度θ1よりも大きい角度である。
【0030】
なお、装置本体20が転倒しやすい左右方向における傾斜角のみを検出するように実施してもよい。
【0031】
図1に示した警報部70は警報を発する例えばブザー等を備え、装置本体20が左右方向に第1の警報角度θ1以上傾斜しているとき、傾斜角検出部40の第1の検出部50が第1の警報角度θ1を検出することにより警報を発する。また、装置本体20が前後方向に第2の警報角度θ2以上傾斜しているとき、傾斜角検出部40の第2の検出部60が第2の警報角度θ2を検出することにより警報を発する。そして、第1の検出部50の第1の揺動体51が第1の検出器53若しくは第1の検出器54に接触している間、又は第2の検出部60の第2の揺動体61が第2の検出器63若しくは第2の検出器64に接触している間、警報を発し続ける。
【0032】
電力供給部80は装置本体20内に配置され、外部電源200からの電力の供給により装置本体20の各ユニットに電力を供給する電源部81と、傾斜角検出部40及び警報部70等に電力を供給するバッテリ82と、外部電源200からの電力の供給によりバッテリ82を充電する充電器83と、装置本体20のシステム制御部26により制御され、電源部81と装置本体20間の電源回路を接続及び遮断するスイッチ84とを備えている。
【0033】
バッテリ82は、電源部81が外部電源200に接続され、スイッチ84により電源部81と装置本体20間の電源回路が接続されていると、傾斜角検出部40及び警報部70に電力を供給する。また、スイッチ84により電源部81と装置本体20間の電源回路が遮断されていると、装置本体20のシステム制御部26、スイッチ84、傾斜角検出部40及び警報部70に電力を供給する。
【0034】
充電部83は、外部電源200からの電力の供給によりバッテリ82を充電する。また、外部電源200に接続されているか否かを検出し、外部電源200に接続されているときの検出信号を装置本体20のシステム制御部26に出力する。
【0035】
スイッチ84は、電源部81が外部電源200に接続され、電源部81と装置本体20間の電源回路の接続により装置本体20が電力の供給を受けている場合、傾斜角検出部40における第1の検出部50の第1の検出器53若しくは第1の検出器54により第1の揺動体51が検出されたとき、又は第2の検出部60の第2の検出器63若しくは第2の検出器64により第2の揺動体61が検出されたとき、電源回路を遮断して装置本体20への電力の供給を停止する。
【0036】
以下、図1乃至図8を参照して、超音波診断装置100の動作の一例を説明する。図5は、装置本体20が左下がりに第1の警報角度θ1傾斜しているときの第1の検出部50を示す図である。また、図6は、装置本体20が右下がりに第1の警報角度θ1傾斜しているときの第1の検出部50を示す図である。また、図7は、装置本体20が前下がりに第2の警報角度θ2傾斜しているときの第2の検出部60を示す図である。また、図8は、装置本体20が後下がりに第2の警報角度θ2傾斜しているときの第2の検出部60を示す図である。
【0037】
超音波診断装置100の装置本体20が水平面上に静止しているとき、傾斜角検出部40における第1の検出部50の第1の揺動体51は、図3に示すように、第1の検出器53,54から離間し、第1のガイドレール52の重力方向における最も低い位置である中央の位置P10で停止している。また、第2の検出部60の第2の揺動体61は、図4に示すように、第2の検出器63,64から離間し、第2のガイドレール62の重力方向における最も低い位置である中央の位置P20で停止している。
【0038】
先ず、図5及び図6を参照して、装置本体20が左右方向へ傾斜している場合の動作を説明する。
装置本体20が左下がりに第1の警報角度θ1傾斜している傾斜面上に位置しているとき、第1の揺動体51は、図5に示すように、第1のガイドレール52に対して位置P10からR1方向に第1の警報角度θ1揺動して第1の検出器53と接触した重力方向の最も低い位置P1Lにある。
【0039】
このとき、第1の検出部50は装置本体20が左下がりに傾斜している第1の警報角度θ1を検出し、その検出信号を装置本体20のシステム制御部26及び警報部70へ出力する。そして、警報部70は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、第1の揺動体51が第1の検出器53と接触している間、即ち装置本体20が第1の警報角度θ1で傾斜している間、警報を発し続ける。また、システム制御部26は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0040】
また、装置本体20が右下がりに第1の警報角度θ1傾斜している傾斜面上に位置しているとき、第1の揺動体51は、図6に示すように、第1のガイドレール52に対して位置P10からR2方向に第1の警報角度θ1揺動して第1の検出器54と接触した重力方向の最も低い位置P1Rにある。
【0041】
このとき、第1の検出部50は装置本体20が右下がりに傾斜している第1の警報角度θ1を検出し、その検出信号をシステム制御部26及び警報部70へ出力する。そして、警報部70は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、第1の揺動体51が第1の検出器54と接触している間、即ち装置本体20が第1の警報角度θ1で傾斜している間、警報を発し続ける。また、システム制御部26は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0042】
このように、装置本体20が左下がり又は右下がりに傾斜して第1の警報角度θ1に達しているとき、第1の警報角度θ1を検出して警報を発することにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜していることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0043】
また、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が左下がり又は右下がりに傾斜して第1の警報角度θ1に達しているとき、その第1の警報角度θ1を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることにより、装置本体20の転倒に備えて電気的安全の向上を図ることができる。
【0044】
更に、装置本体20が左下がり又は右下がりに第1の警報角度θ1未満の傾斜角で傾斜しているとき、例えば地震等により装置本体20が揺れて第1の揺動体51が揺動し、第1の検出器53又は第1の検出器54と接触すると、第1の検出部50は装置本体20の揺れによる第1の警報角度θ1を検出する。そして、その検出信号をシステム制御部26及び警報部70へ出力する。警報部70は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、装置本体20の揺れにより第1の揺動体51が揺動して第1の検出器53又は第1の検出器54と接触する度に警報を発する。また、システム制御部26は、第1の検出部50からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0045】
このように、装置本体20が左下がり又は右下がりに第1の警報角度θ1未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第1の警報角度θ1を検出して警報を発することにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜する恐れがあることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0046】
また、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が左下がり又は右下がりに第1の警報角度θ1未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第1の警報角度θ1を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることができる。これにより、装置本体20の転倒に備えて電気的安全の向上を図ることができる。
【0047】
なお、装置本体20の転倒角度が小さくなる位置にモニタ241を移動した表示部24の支持部242を固定する固定具と支持部242に取り付けた固定具を検出する固定具検出器とを設け、装置本体20が電力の供給を受けていない場合に固定具検出器が固定具を検出することができないとき、警報を発するように実施してもよい。これにより、運搬中にモニタ241が移動して装置本体20が転倒する恐れがあることを、運搬者に知らせることができる。また、キャスタ30にブレーキ部材を駆動してローラの回転を停止させる駆動機構を設け、装置本体20が電力の供給を受けている場合に第1の検出器53又は第1の検出器54が第1の揺動体51と接触したとき、前記駆動機構を作動させてローラを停止させるように実施してもよい。
【0048】
次に、図7及び図8を参照して、装置本体20が前後方向へ傾斜している傾斜面上に位置している場合の動作を説明する。
装置本体20が前下がりに第2の警報角度θ2傾斜している傾斜面上に位置しているとき、第2の揺動体61は、図7に示すように、第2のガイドレール62に対して位置P20からR3方向に第2の警報角度θ2揺動して第2の検出器63と接触した重力方向の最も低い位置P2Lにある。
【0049】
このとき、第2の検出部60は装置本体20が前下がりに傾斜している第2の警報角度θ2を検出し、その検出信号をシステム制御部26及び警報部70へ出力する。そして、警報部70は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、第2の揺動体61が第2の検出器63と接触している間、即ち装置本体20が第2の警報角度θ2で傾斜している間、警報を発し続ける。また、システム制御部26は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0050】
また、装置本体20が後下がりに第2の警報角度θ2傾斜している傾斜面上に位置しているとき、第2の揺動体61は、図8に示すように、第2のガイドレール62に対して位置P20からR4方向に第2の警報角度θ2揺動して第2の検出器64と接触した重力方向の最も低い位置P2Rにある。
【0051】
このとき、第2の検出部60は装置本体20が後下がりに傾斜している第2の警報角度θ2を検出し、その検出信号をシステム制御部26及び警報部70へ出力する。そして、警報部70は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、第2の揺動体61が第2の検出器64と接触している間、即ち装置本体20が第2の警報角度θ2で傾斜している間、警報を発し続ける。また、システム制御部26は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0052】
このように、装置本体20が前下がり又は後下がりに傾斜して第2の警報角度θ2に達しているとき、第2の警報角度θ2を検出して警報を発することにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜していることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0053】
また、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が前下がり又は後下がりに傾斜して第2の警報角度θ2に達しているとき、第2の警報角度θ2を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることにより、装置本体20の転倒に備えて電気的安全の向上を図ることができる。
【0054】
更に、装置本体20が前下がり又は後下がりに第2の警報角度θ2未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20が揺れて第2の揺動体61が揺動し、第2の検出器63又は第2の検出器64と接触すると、第2の検出部60は、装置本体20の揺れによる第2の警報角度θ2を検出する。そして、その検出信号をシステム制御部26及び警報部70へ出力する。警報部70は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、装置本体20の揺れにより第2の揺動体61が揺動して第2の検出器63又は第2の検出器64と接触する度に警報を発する。また、システム制御部26は、第2の検出部60からの検出信号に基づいて、装置本体20が電力の供給を受けている場合、スイッチ84を制御して装置本体20への電力の供給を停止させる。
【0055】
このように、装置本体20が前下がり又は後下がりに第2の警報角度θ2未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第2の警報角度θ2を検出して警報を発することにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜する恐れがあることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0056】
また、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が前下がり又は後下がりに第2の警報角度θ2未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第2の警報角度θ2を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることにより、装置本体20の転倒に備えて電気的安全の向上を図ることができる。
【0057】
以上述べた実施形態によれば、傾斜角検出部40及び警報部70を設け、装置本体20が左下がり若しくは右下がりに傾斜して第1の警報角度θ1に達しているとき、又は前下がり若しくは後下がりに傾斜して第2の警報角度θ2に達しているとき、第1の警報角度θ1又は第2の警報角度θ2を検出して警報を発することができる。これにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜していることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0058】
また、装置本体20が左下がり若しくは右下がりに第1の警報角度θ1未満の傾斜角で傾斜しているとき、又は前下がり若しくは後下がりに第2の警報角度θ2未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第1の警報角度θ1又は第2の警報角度θ2を検出して警報を発することができる。これにより、装置本体20が転倒角度に対して余裕の少ない角度に傾斜する恐れがあることを、運搬者や操作者が察知することができる。
【0059】
更に、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が左下がり若しくは右下がりに傾斜して第1の警報角度θ1に達しているとき、又は装置本体20に電力が供給されている場合に前下がり若しくは後下がりに傾斜して第2の警報角度θ2に達しているとき、第1の警報角度θ1又は第2の警報角度θ2を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることができる。また、装置本体20が電力の供給を受けている場合に装置本体20が左下がり若しくは右下がりに第1の警報角度θ1未満の傾斜角で傾斜しているとき、又は装置本体20が電力の供給を受けている場合に前下がり若しくは後下がりに第2の警報角度θ2未満の傾斜角で傾斜しているとき、装置本体20の揺れにより第1の警報角度θ1又は第2の警報角度θ2を検出して装置本体20への電力の供給を停止させることができる。これにより、装置本体20の転倒に備えて電気的安全の向上を図ることができる。
【0060】
以上により、運搬者や操作者に与える負担を軽減することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
P 被検体
10 超音波プローブ
20 装置本体
21 送受信部
22 信号処理部
23 画像データ生成部
24 表示部
25 操作部
26 システム制御部
30 キャスタ
40 傾斜角検出部
50 第1の検出部
60 第2の検出部
70 警報部
80 電力供給部
81 電源部
82 バッテリ
83 充電器
84 スイッチ
100 超音波診断装置
200 外部電源
211 送信部
212 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波走査を行うことにより画像データを生成する装置本体と、
前記装置本体の傾斜角を検出する傾斜角検出部と、
前記装置本体の傾斜角が予め設定された警報角度以上であるとき、警報を発する警報部とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記装置本体に外部電源からの電力を供給する電力供給部を有し、
前記電力供給部は、前記装置本体が電力の供給を受けている場合に前記装置本体の傾斜角が前記警報角度以上であるとき、前記装置本体への電力の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記電力供給部は、前記警報部へ電力を供給する内部電源を有することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記装置本体の底面における四隅近傍の左右方向に第1の間隔を空けて設けられ、前記左右方向に対して垂直な前後方向に前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を空けて設けられた4つのキャスタを有し、
前記傾斜角検出部は、前記左右方向へ傾斜した前記装置本体の傾斜角を検出する第1の検出部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1の検出部は、円弧状の第1のガイドレール、この第1のガイドレールに案内されて自在に揺動する第1の揺動体、及び前記第1の揺動体の揺動に基づいて前記左右方向へ傾斜した前記装置本体の傾斜角を検出する第1の検出器を有することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記傾斜角検出部は、前記前後方向へ傾斜した前記装置本体の傾斜角を検出する第2の検出部を有し、
前記第2の検出部は、円弧状の第2のガイドレール、この第2のガイドレールに案内されて自在に揺動する第2の揺動体、及び前記第2の揺動体の揺動に基づいて前記前後方向へ傾斜した前記装置本体の傾斜角を検出する第2の検出器を有することを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記警報部は、前記第1の検出部により検出された傾斜角が第1の警報角度以上であるときに警報を発し、前記第2の検出部により検出された傾斜角が前記第1の警報角度よりも大きい第2の警報角度以上であるときに警報を発することを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217646(P2012−217646A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86708(P2011−86708)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】