説明

超音波診断装置

【課題】穿刺針の描出力を向上させるために、超音波プローブから離れた位置から、浅い刺入角度で刺入を行なう場合であっても、確実に穿刺針を目的部位まで到達させることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】穿刺を行なう際のターゲットの位置を指定する位置指定手段と、前記位置指定手段によって指定したターゲットの位置の情報と所定の刺入角度とから刺入位置を算出する刺入位置算出手段と、前記刺入位置算出手段が算出した刺入位置を表示する刺入位置表示手段とを有することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置に係り、特に、穿刺術を行なう際に用いられる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
また、超音波診断装置は、細胞組織診断のため、医師が穿刺器具(例えば穿刺針)を所望の部位に穿刺して組織サンプルを採取する穿刺術を行う場合にも用いられている。
穿刺術においては、医師は、確実に目的物や目的部位まで穿刺針を到達させるため、超音波画像を見ながら予め決めた刺入経路(穿刺針が被検者中を刺入される経路)通りに穿刺針を刺入させる。
【0004】
このような穿刺術を行なう場合には、モニタ(超音波画像)上で穿刺針を確認できること、及び目的物や目的部位まで穿刺針を到達させることが重要である。
そのため、特許文献1では、超音波プローブの側面に穿刺針を案内する溝を設けて、安定して刺入経路通りに穿刺針を刺入させること、また、超音波プローブの側面に、上下方向に複数のレーザ光源を設けて、このレーザ光源から照射されるレーザ光によって、穿刺針の向きを決められるようにすることによって、穿刺針を超音波の照射面(スキャン面)に合わせて、穿刺針が超音波画像上に表示されるようにすることが行なわれている。
【0005】
また、特許文献2では、被検体と超音波プローブとの間にポリマーゲルを介在させ、このポリマーゲル部分での穿刺針の像に基づいて、穿刺針の刺入方向を示すガイドラインを表示することにより、穿刺針が目的部位に到達するかどうか、つまり、穿刺針の照準が合っているかどうかを確認することができるようにすることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−115246号公報
【特許文献2】特開2000−166918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、穿刺術は、針が細くなればなるほど患者への負担軽減や侵襲性低減となるため、リスク等に合わせて可能な限り細い穿刺針が選択される。しかし、針が細くなるに従って、超音波画像上への描出力も低下してしまい、針が途切れ途切れに描出されてしまい、穿刺針の位置または形状は明確に表示できないという問題がある。
【0008】
超音波画像においては、穿刺針の被検体に対する刺入角度が浅いほど、すなわち、超音波プローブが超音波を送信する方向となす角度が大きいほど、穿刺針に反射される超音波が、超音波プローブの方向に戻ってくるので、超音波画像上での描出力は高くなり、穿刺針が見やすくなる。
そのため、医師は、穿刺針の刺入角度が小さくなるように、超音波プローブから離れた位置から穿刺針を刺入したり、画像中での目的部位の位置をずらしたりして、超音波画像上で穿刺針が見やすくなるようにして、穿刺術を行なう場合もある。
画像中での目的部位の位置をずらす場合は、限界があるので、それほど刺入角度を浅くすることはできない。そのため、より浅い刺入角度で穿刺針を刺入するためには、超音波プローブから離れた位置から穿刺針を刺入する必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、超音波プローブの側面に溝を設けて穿刺針を案内する場合は、穿刺針を超音波プローブに接触させる必要があるため、超音波プローブから離れた位置で穿刺針を刺入する場合には、穿刺針を予め決めた刺入経路に案内することはできない。
また、特許文献2のように、ポリマーゲル部分での穿刺針の像に基づいて、穿刺針の刺入方向を示すガイドラインを表示する場合も、ポリマーゲル部分での穿刺針が超音波画像上に表示される必要があるので、超音波プローブから離れた位置で穿刺針を刺入する場合には、穿刺針の刺入方向を示すガイドラインを表示することはできない。
そのため、超音波プローブから離れた位置から正確に目的部位に到達するように刺入を行なうのは、高度な手技が必要で、穿刺術を行なう医師の技量が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、浅い刺入角度で穿刺を行なうために、超音波プローブから離れた位置から刺入を行なう場合であっても、確実に穿刺針を目的部位まで到達させることができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波探触子と、前記超音波探触子から出力される受信信号に基づいて、被検体の超音波画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段が生成した前記超音波画像を表示する画像表示手段とを有する超音波診断装置であって、穿刺を行なう際のターゲットの位置を指定する位置指定手段と、前記位置指定手段によって指定したターゲットの位置の情報と所定の刺入角度とから刺入位置を算出する刺入位置算出手段と、前記刺入位置算出手段が算出した刺入位置を表示する刺入位置表示手段とを有することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0012】
ここで、前記刺入位置表示手段が、前記刺入位置に光を照射して前記刺入位置を表示することが好ましい。
また、前記刺入位置表示手段が、レーザ光を照射して前記刺入位置を表示することが好ましい。
あるいは、前記刺入位置表示手段が、前記超音波探触子から前記刺入位置までの距離を数値で、前記画像表示手段に表示することにより、前記刺入位置を表示することが好ましい。
【0013】
また、前記超音波探触子に固定される板状の位置案内部材を有することが好ましい。
あるいは、前記超音波探触子に固定される板状の位置案内部材と、前記位置案内部材に移動可能に取り付けられ、穿刺を行なう際の刺入角度を表示する角度案内部材とを備える補助具を有し、前記刺入位置表示手段が前記位置案内部材上に光を照射して前記刺入位置を表示することが好ましい。
【0014】
また、前記画像表示手段において、前記超音波画像を表示すると共に、前記位置指定手段が指定したターゲットの位置の情報と所定の刺入角度とから、穿刺を行なう際の穿刺針の刺入経路を算出して、ガイドラインを表示することが好ましい。
また、前記所定の刺入角度を変更する角度調整手段を有することが好ましい。
また、前記所定の刺入角度を10〜20°の範囲で適宜決定した角度とすることが好ましい。
【0015】
また、前記位置指定手段が、入力指示に応じて、前記画像表示手段において表示された超音波画像上で、ターゲットの位置を指定するものであることが好ましい。
あるいは、前記位置指定手段が、前記超音波画像を解析して、ターゲットの位置を算出するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を有する本発明の超音波診断装置によれば、穿刺を行なう際のターゲットの位置を、超音波画像上で指定する位置指定手段と、指定したターゲットの位置の情報および所定の刺入角度から刺入位置を算出する刺入位置算出手段と、刺入位置算出手段が算出した刺入位置を表示する刺入位置表示手段とを有するので、超音波プローブから離れた位置から刺入を行なう場合であっても、確実に穿刺針を目的部位まで到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の超音波診断装置の一例を概念的に示す図である。
【図2】(A)は、図1に示す超音波診断装置に用いられる超音波プローブの一例を概念的に示す図であり、(B)は、(A)に示す超音波プローブと穿刺針および目的部位を概念的に示す図であり、(C)は、(A)に示す超音波プローブの角度案内部材を概念的に示す図である。
【図3】図1に示す超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図4】(A)〜(C)は、図1に示す超音波診断装置が、刺入位置を算出する際の作用について説明するための、超音波画像の概略図である。
【図5】穿刺針のガイドラインを表示した超音波画像の概略図である。
【図6】刺入位置表示手段の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の超音波診断装置の一例を概念的に示す図である。
なお、図示例の超音波診断装置10は、生成された超音波画像を参照して入力されたターゲットの位置と、予め設定されている刺入角度とから、刺入位置を算出し、この刺入位置を表示する構成を有する以外は、基本的に、公知の超音波診断装置である。
本発明の超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、この超音波プローブ12が通信ケーブル18を介して接続される診断装置本体14とを備えている。
【0020】
図2(A)に超音波プローブ12の概略図を示す。また、図2(B)には、穿刺術を行なう際の、超音波プローブ12と穿刺針および目的部位の概略図を示す。
超音波プローブ12は、プローブ本体16と、通信ケーブル18と、刺入位置表示手段20と、補助具22とを有する。
プローブ本体16は、基本的に、公知の超音波プローブであり、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等いずれの方式の超音波プローブであってもよい。
【0021】
プローブ本体16は、超音波の送信および受信を行なうための超音波送受信面16aを有する。また、プローブ本体16の超音波送受信面16aの、超音波送受信面16aから送信される超音波のスキャン面Mの面方向側の側面の一方には、刺入位置表示手段20と補助具22とが配置されている。
【0022】
刺入位置表示手段20は、プローブ本体16の超音波送受信面16aの、スキャン面Mの面方向側の側面に配置され、超音波診断装置10を用いて穿刺術を行なう際に、刺入位置に、レーザ光を照射して、穿刺針の適正な刺入位置を表示するためのものである。刺入位置表示手段20は、レーザ光を出射するレーザ光源24を、光源駆動部26により、スキャン面Mに垂直な方向を軸として回転させることにより、レーザ光の照射位置を変更し、レーザ光を刺入位置に照射する(図3参照)。この点に関しては、後に詳述する。
なお、所定の刺入角度で刺入を行なうことができる刺入位置は、診断装置本体14の刺入位置算出部64により、設定されている所定の刺入角度と指定されたターゲットの位置とから算出される。この点に関しても、後に詳述する。
【0023】
なお、図示例においては、好ましい態様として、補助具22を有しているので、刺入位置表示手段20から照射されたレーザ光は、この補助具22の位置案内部材30上の、刺入位置近傍に照射される(図2(B)参照)。
また、所定の刺入角度は、10〜20°の範囲で適宜決定した角度とすることが好ましい。刺入角度をこの範囲とすることで、穿刺針に反射される超音波が、超音波プローブの方向に戻ってくるので、超音波画像上での描出力は高くなり、超音波画像上で穿刺針が見やすくなる。
【0024】
このように、刺入位置算出部64が算出した刺入位置に、刺入位置表示手段20がレーザ光を照射して、この刺入位置を表示することにより、医師が穿刺術を行なう際に、所定の浅い刺入角度で刺入するために、超音波プローブから離れた位置から刺入を行なう場合でも、レーザ光が照射された位置から刺入することで、確実に穿刺針を目的部位まで到達させることができる。
【0025】
図示例の超音波診断装置10は、好ましい態様として、補助具22を有する。
補助具22は、穿刺術を行なう際に、刺入位置を案内するための位置案内部材30と、刺入角度を案内するための角度案内部材32とを有する。
【0026】
位置案内部材30は、その最大面がスキャン面Mと直行するようにプローブ本体16に固定される、長尺な板状の部材で、幅方向(短手方向)の中心に、スキャン面Mの延長面が通過、もしくは、壁面と一致するように形成された、長尺なスリット状の貫通溝30aを有する。
また、貫通溝30aは、好ましくは、スキャン面Mの延長が、貫通溝30aの延在方向の壁面のいずれかと一致するように、もしくは、スキャン面Mの延長が、貫通溝30aの中心を通過するように形成される。
刺入位置表示手段20が刺入位置を表示する際には、刺入位置表示手段20が照射したレーザ光は、位置案内部材30の板面に照射され、刺入位置が表示される。
【0027】
このように、プローブ本体16の側面に位置案内部材30を設けて、この位置案内部材30上にレーザ光が照射され刺入位置が表示されるようにすることで、被検体の体表が湾曲している場合であっても、適切な刺入位置を表示することができる。
また、位置案内部材30の貫通溝30aは、穿刺術を行なう際に、この貫通溝30aを通過して刺入を行なうことにより、スキャン面Mに垂直な方向の位置の案内とすることができる。
【0028】
なお、位置案内部材30をプローブ本体16に固定する方法には、特に限定はなく、ネジ等の種々の公知の固定方法を用いることができる。あるいは、位置案内部材30をプローブ本体16のハウジングと一体的に設けてもよい。
【0029】
図2(C)に、図2(A)に示す超音波プローブ12の角度案内部材32の概略図を示す。
角度案内部材32は、位置案内部材30に、その長手方向に移動可能に取り付けられ、位置案内部材30の表面に対する角度が表示された角度表示板32aを有する部材である。
図示例においては、角度案内部材32は、位置案内部材30に固定するためのクリップ部32bを有しており、これにより、位置案内部材30に移動可能に取り付けることができる。また、角度案内部材32は、角度表示板32aがスキャン面Mに平行となるように位置案内部材28に取り付けられる。
【0030】
刺入位置表示手段20が、位置案内部材30上にレーザ光を照射し、刺入位置を表示した際に、角度案内部材32を、この刺入位置に合わせて固定する。角度表示板32aは、表示された刺入位置から刺入を行なう場合の刺入角度を表示する。
角度表示板32aには、例えば、図示例にように、10°、20°、30°、60°等のいくつかの角度の目盛が表示されている。また、角度表示板32aには、デフォルトで設定されている1以上の角度の目盛が表示されることが好ましい。
【0031】
このように、位置案内部材30に移動可能に取り付けられる角度案内部材32を有する構成とすることで、穿刺術を行なう際に、刺入位置表示手段20が位置案内部材30上にレーザ光を照射して表示した刺入位置に、角度案内部材32を合わせて固定して、穿刺針の刺入角度を、角度表示板32aに表示された角度に合わせて刺入を行なうことにより、医師の技量に関係なく、容易に所定の刺入角度で刺入を行なうことができる。
【0032】
なお、図示例においては、角度案内部材32を位置案内部材30に固定する方法は、クリップ部32bにより把持する構成としたが、これに限定はされず、例えば、ネジによる固定や、スキャン面Mの面方向にスライド可能に固定する方法等、種々の公知の方法を用いることができる。
【0033】
また、図示例においては、角度案内部材32は、角度の目盛が表示された角度表示板32aを有する構成としたが、これに限定はされず、設定されている所定角度と同じ角度で穿刺針を案内する溝を有する構成としてもよい。
【0034】
次に、超音波診断装置10の内部構成を図3に示す。
プローブ本体16は、1次元又は2次元の振動子アレイを構成する複数の超音波トランスデューサ34を有し、これらトランスデューサ34にそれぞれ対応して受信信号処理部36が接続されている。また、複数のトランスデューサ34に送信駆動部38を介して送信制御部40が接続され、複数の受信信号処理部36に受信制御部42が接続され、これら送信制御部40および受信制御部42にプローブ制御部44が接続されている。
また、受信信号処理部36は診断装置本体14のデータ格納部46に、プローブ制御部44は本体制御部54に、通信ケーブルを介して、それぞれ接続されている。
【0035】
複数のトランスデューサ34は、それぞれ送信駆動部38から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ34は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0036】
送信駆動部38は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部40によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ34から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ34に供給する。
【0037】
各チャンネルの受信信号処理部36は、受信制御部42の制御の下で、対応するトランスデューサ34から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成する。受信信号処理部36は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
【0038】
プローブ制御部44は、診断装置本体14から伝送される各種の制御信号に基づいて、プローブ本体16の各部の制御を行う。
【0039】
診断装置本体14は、データ格納部46を有し、データ格納部46に画像生成部48が接続されている。さらに、画像生成部48に表示制御部50を介して表示部52が接続されている。画像生成部48および表示制御部50に本体制御部54が接続されている。さらに、本体制御部54には、オペレータが入力操作を行うための操作部56と、動作プログラムを格納する格納部58と、刺入位置を算出する刺入位置算出部64と、設定された刺入角度を記憶するための角度記憶部66とがそれぞれ接続されている。
【0040】
操作部56は、撮影メニュー、撮影条件などを設定し、被検体の撮像を指示する部位である。操作部56には、撮影メニュー、撮影条件などを設定するための入力キー、ダイヤルボタン、トラックボール、タッチパネル等の入力手段が設けられる。
【0041】
ここで、本発明の超音波診断装置10は、生成された超音波画像を参照して入力/設定されたターゲット(目的部位)の位置と、予め設定されている刺入角度とから、刺入位置を算出し、この刺入位置を表示するものである。
操作部56は、この刺入位置の算出/表示の指示を入力する機能も有する。また、操作部56は、ターゲットの位置の入力/設定、および、刺入角度の設定の指示を入力するための機能も有する。
操作部56は、入力された刺入位置の算出/表示の指示、ターゲットの位置の設定の指示、および、刺入角度の設定の指示を本体制御部54に供給する。
【0042】
データ格納部46は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、通信ケーブル16を介して超音波プローブ12の受信信号処理部36から伝送された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
画像生成部48は、データ格納部46から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部48は、整相加算部60と画像処理部62とを含んでいる。
【0043】
整相加算部60は、本体制御部54において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0044】
画像処理部62は、整相加算部60によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部34は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
表示制御部50は、画像生成部48によって生成される画像信号に基づいて、表示部52に超音波診断画像を表示させる。表示部52は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部50の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0045】
角度記憶部66は、刺入位置算出部64が刺入位置を算出する際に用いる刺入角度の値を記憶する部位である。
角度記憶部66が記憶する刺入角度の値は、予め設定された値であってもよいし、10〜20°の範囲で適宜決定した角度であってもよいし、操作部56から入力された値であってもよい。
【0046】
刺入位置算出部64は、操作部56から入力されたターゲットの位置の情報と、角度記憶部66に記憶されている刺入角度の値とから刺入位置を算出する。プローブ本体16からターゲットまでの深さをd、刺入角度をθとすると、ターゲットから刺入位置までの距離xは、x=d/tanθで求めることができる。
【0047】
ここで、刺入位置算出部64が刺入位置を算出する際の作用について、図4の超音波画像の概略図を用いてより詳細に説明する。
図4(A)は、生成された超音波画像の概略図である。また、この超音波画像に対応するプローブ本体16の位置を、便宜的に示す。
図4(A)に示されるように、生成された超音波画像は、プローブ本体16の下方の領域の断面図である。
【0048】
刺入位置を表示する旨の指示が操作部56に入力されると、表示部52に表示された超音波画像上にカーソルを表示し、このカーソルをターゲット(目的部位)に合わせるように促す画面を表示する。
操作者が、操作部56のトラックボール等を用いて、超音波画像上でカーソルをターゲットに合わせ、ターゲットの位置を指定する指示を入力する(図4(B))。
【0049】
ターゲットの位置が指定されると、ターゲットの位置情報が刺入位置算出部64に供給される。刺入位置算出部64は、供給されたターゲットの位置情報(ターゲットの深さd)と、角度記憶部66から読み出した刺入角度θとから、プローブ本体16から刺入位置までの距離xを算出する(図4(C))。
刺入位置算出部64は、算出した刺入位置までの距離xを光源制御部28に供給する。
【0050】
本体制御部54は、診断装置本体14内の各部の制御を行うものである。本体制御部54は、通信ケーブル18を介してプローブ本体16のプローブ制御部44と接続されており、プローブ本体16の動作を制御する制御信号をプローブ制御部44に供給する。また、本体制御部54は、通信ケーブル16を介して刺入位置表示部20の光源制御部28と接続されており、刺入位置表示部20の動作を制御する制御信号を光源制御部28に供給する。
【0051】
このような診断装置本体14において、画像生成部48、表示制御部50、本体制御部54および刺入位置算出部64は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部58に格納される。
【0052】
刺入位置表示手段20は、レーザ光を出射するレーザ光源24、モータ等の駆動源を用いて、レーザ光源24をスキャン面Mに垂直な方向を軸として回転させることにより、レーザ光の照射位置を変更して、レーザ光によって刺入位置を示させる光源駆動部26、および、光源駆動部26を制御する光源制御部28を有する。
【0053】
図示例のように位置案内部材30を用いる場合は、前記光源駆動部26は、位置案内部材30上(好ましくは。貫通穴30aの直近)を、レーザ光がスキャン面Mの延長面に平行に移動するように、レーザ光源24を回転させることが好ましい。また、後述するように、位置案内部材30を用いない場合は、光源駆動部26は、レーザ光がスキャン面Mの延長面内を移動するように、レーザ光源を回転させることが好ましい。
【0054】
光源制御部28は、通信ケーブル18を介して、診断装置本体14の本体制御部54および刺入位置算出部64と接続されている。光源制御部28は、刺入位置算出部64が算出した刺入位置を取得し、レーザ光源24が出射するレーザ光が、この刺入位置に照射するように、光源駆動部26を制御する。また、光源制御部28は、本体制御部54からの指示により、レーザ光源24のオンオフを制御する。
【0055】
次に、超音波診断装置10の動作について説明する。
まず、通常の超音波診断を行う。操作者は、超音波プローブ12の超音波送受信面16aを被検体の表面に当接する。この状態で、プローブ本体16の送信駆動部38から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ34から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ34から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部36に供給されてサンプルデータが生成され、通信ケーブル18を介して診断装置本体14へ伝送されてデータ格納部46に格納される。さらに、データ格納部46から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部48で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部50により超音波診断画像が表示部52に表示される。
【0056】
ここで、表示された超音波画像を用いて穿刺術を行なうために、刺入位置を表示する旨の指示が操作部56に入力されると、表示部52に表示された超音波画像上にカーソルが表示され、カーソルをターゲットに合わせるように促す画面が表示される。
操作者が、操作部56からターゲットの位置を指定すると、ターゲットの位置情報が刺入位置算出部64に供給される。刺入位置算出部64は、このターゲットの位置情報と、角度記憶部66から読み出した刺入角度とから刺入位置を算出し、刺入位置の情報を刺入位置表示手段20の光源制御部28に供給する。
【0057】
刺入位置表示手段20の光源制御部28は、供給された刺入位置の情報を基に、光源駆動部26を制御して、レーザ光源24を回転させて、レーザ光源から出射されるレーザ光を刺入位置に照射し、所定の刺入角度で刺入を行なう際の、適正な刺入位置を表示する。
【0058】
このように、所定の刺入角度で刺入を行なう際の、刺入位置が刺入位置表示手段20により表示されるので、医師が穿刺術を行なう際に、所定の浅い刺入角度で刺入するために、超音波プローブから離れた位置から刺入を行なう場合でも、レーザ光が照射された位置から刺入することで、確実に穿刺針を目的部位まで到達させることができる。
【0059】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0060】
例えば、刺入位置算出部64が算出した刺入位置の情報と、角度記憶部66が記憶している所定の刺入角度とから、穿刺針の刺入経路を算出し、図5に示す超音波画像の概略図のように、穿刺針の刺入経路をガイドラインとして、表示部52に表示されている超音波画像上に重ねて表示するようにしてもよい。
【0061】
また、医師が、超音波プローブ12の、超音波画像が画像化される方向とは逆側から穿刺術を行なう場合がある。そのため、操作部56からの指示に応じて、超音波画像を左右反転させてもよい。また、その際に、穿刺針のガイドラインを表示している場合には、このガイドラインも左右反転させればよい。
【0062】
また、図示例の超音波診断装置10においては、操作者が操作部56を操作して、超音波画像上で、カーソルを目的部位の位置に合わせて、ターゲットの位置を指示することにより、ターゲットの位置情報を取得する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、例えば、超音波画像を解析して、腫瘍等のターゲットの位置を算出する構成としてもよい。また、その際には、必要に応じて、操作者が操作部からターゲットの位置を修正できる構成とすることが好ましい。
【0063】
また、図示例の超音波診断装置10においては、超音波プローブ12には、補助具22が設けられ、補助具22(位置案内部材28)の表面に刺入位置表示手段20が出射するレーザ光が照射される構成としたが、本発明はこれに限定はされない。すなわち、補助具22を有さず、刺入位置表示手段20が出射するレーザ光を被検体の体表面に照射する構成としてもよい。
【0064】
また、刺入位置表示手段20が刺入位置を表示する方法は、レーザ光を刺入位置に照射して表示する方法に限定はされず、LED等のレーザ以外の光源を用いて刺入位置を表示してもよい。
【0065】
図6は、本発明の超音波診断装置に用いられる刺入位置表示手段の他の一例を示す概念図である。
図6に示す刺入位置表示手段100は、光源102と、スリット104と、反射ミラー106とを有している。
光源102は、LED等の公知の光源である。光源102の光出射方向には、スリット104および反射ミラー106が配置されており、光源102は、スリット104および反射ミラー106の方向に光を出射する。
【0066】
スリット104は、中央に十字型の光透過窓を有する板状部材で、光源102から出射された光の一部を透過するものである。スリット104に照射された光は、光透過窓の形状に対応した一部の光のみが、反射ミラー106に入射する。
【0067】
反射ミラー106は、光源102から出射され、スリット104を透過した光を反射して、刺入位置に照射するためのものである。
反射ミラー106は、モータ等の駆動源(図示せず)により、スキャン面Mに垂直な方向を軸として回転可能に設けられている。反射ミラー106は、刺入位置算出部64の刺入位置の算出結果に応じて、回転して、光を刺入位置に照射する。
このように、LED等のレーザ光以外の光源を用いてもよく、特に、指向性のない光源を用いる場合には、図6に示す刺入位置表示手段100のように、スリットと反射ミラーとを用いて、光を刺入位置に照射するようにすればよい。
【0068】
また、刺入位置を表示する方法は、刺入位置に光(レーザ光)を照射する方法に限定はされず、例えば、プローブ本体から刺入位置までの距離を、表示部52に数値で表示するようにしてもよい。また、その際には、補助具の位置案内部材30の表面に距離を表す目盛を表示することが好ましい。
【0069】
また、図示例の超音波診断装置10は、プローブ本体16と診断装置本体14とを通信ケーブル18を介して有線で接続し、各種データの送受信を行なう構成としたが、本発明はこれに限定はされず、プローブ本体16と診断装置本体14とが無線でデータの送受信を行なう構成としてもよい。
【0070】
以上、本発明の超音波診断装置について説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【符号の説明】
【0071】
10 超音波診断装置
12 超音波プローブ
14 診断装置本体
16 プローブ本体
16a 超音波送受信面
18 通信ケーブル
20、100 刺入位置表示手段
22 補助具
24 レーザ光源
26 光源駆動部
28 光源制御部
30 位置案内部材
30a 貫通溝
32 角度案内部材
32a 角度表示板
32b クリップ部
34 超音波トランスデューサ
36 受信信号処理部
38 送信駆動部
40 送信制御部
42 受信制御部
44 プローブ制御部
46 データ格納部
48 画像生成部
50 表示制御部
52 表示部
54 本体制御部
56 操作部
58 格納部
60 整相加算部
62 画像処理部
64 刺入位置算出部
66 角度記憶部
102 光源
104 スリット
106 反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波探触子と、
前記超音波探触子から出力される受信信号に基づいて、被検体の超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段が生成した前記超音波画像を表示する画像表示手段とを有する超音波診断装置であって、
穿刺を行なう際のターゲットの位置を指定する位置指定手段と、
前記位置指定手段によって指定したターゲットの位置の情報と所定の刺入角度とから刺入位置を算出する刺入位置算出手段と、
前記刺入位置算出手段が算出した刺入位置を表示する刺入位置表示手段とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記刺入位置表示手段が、前記刺入位置に光を照射して前記刺入位置を表示する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記刺入位置表示手段が、レーザ光を照射して前記刺入位置を表示する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記刺入位置表示手段が、前記超音波探触子から前記刺入位置までの距離を数値で、前記画像表示手段に表示することにより、前記刺入位置を表示する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波探触子に固定される板状の位置案内部材を有する請求項1〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波探触子に固定される板状の位置案内部材と、前記位置案内部材に移動可能に取り付けられ、穿刺を行なう際の刺入角度を表示する角度案内部材とを備える補助具を有し、前記刺入位置表示手段が前記位置案内部材上に光を照射して前記刺入位置を表示する請求項2または3に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記画像表示手段において、前記超音波画像を表示すると共に、前記位置指定手段が指定したターゲットの位置の情報と所定の刺入角度とから、穿刺を行なう際の穿刺針の刺入経路を算出して、ガイドラインを表示する請求項1〜6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記所定の刺入角度を変更する角度調整手段を有する請求項1〜7のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記所定の刺入角度を10〜20°の範囲で適宜決定した角度とする請求項1〜8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記位置指定手段が、入力指示に応じて、前記画像表示手段において表示された超音波画像上で、ターゲットの位置を指定するものである請求項1〜9のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記位置指定手段が、前記超音波画像を解析して、ターゲットの位置を算出するものである請求項1〜9のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81134(P2012−81134A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230784(P2010−230784)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】