説明

超音波診断装置

【目的】本発明は、超音波診断装置に関し、拍動や吸吸の影響で動いている被検体内部の深さ方向の変位を高精度に計測する機能を備える。
【構成】走査方向(深さ方向(z方向)とほぼ直角なx,y方向)の位相パターンを求め、この位相パターンの走査方向(x、y方向)の変位Δx(Δx、Δy)を求めて、従来と同様に例えばパルスドップラ法等を用いて求めた深さ方向(z方向)の見掛け上の位相Δθzを、上記変位Δx(Δx、Δy)と上記位相パターンに基づいて補正する。または、受信信号に基づいて走査方向(x,y方向)の変位Δx(Δx、Δy)を求め、また走査方向(x,y方向)の位相パターンを求め、これらの変位Δx(Δx、Δy)および位相パターンに基づいて深さ方向(z方向)の見掛け上の位相Δθzを補正する。または、走査方向(x,y方向)の位相パターンを求め、この位相パターンに基づいて走査方向(x,y方向)の変位Δx(Δx、Δy)と深さ方向(z方向)の変位Δzを求める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波診断装置に関し、詳細には拍動や呼吸の影響で動いている被検体内部の深さ方向の変位を高精度に計測する機能を備えた超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】医療診断分野において超音波を用いた生体内部のイメージングが盛んに行われており、超音波を用いた被検体内部の組織の変位量の測定も行われている。従来、組織の深さ方向の変位量を計測する技術としてパルスドプラ法を用いた技術が知られている(「パルスドプラ法を用いた組織変位速度断層法の基礎検討」 新木他 第55回日本超音波医学会論文集 P689−690 1989年10月4日発行 参照)。この手法は、演算量が少くて済むためリアルタイム性に優れているという長所を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記手法は、組織が深さ方向と直交する横方向に移動しても深さ方向に移動したかのように誤検出されてしまうという問題点がある。本発明は、この問題点を解決し、深さ方向の変位量を正確に検出することのできる機能を備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明のうち、第1の超音波診断装置は、(1)被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、被検体内を、深さ方向と交わる走査方向に走査することにより、被検体内の断層面内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段(2)互いに隣接する複数の走査線に対応する受信信号に基づいて、被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し算出された位相差を走査方向に積分することにより走査方向の位相パターンを算出する走査方向位相パターン算出手段(3)各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の受信信号に基づいて、各走査線上の所定の深さにおける深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段(4)上記走査方向位相パターン算出手段で求められた複数の時刻における複数の位相パターンに基づいて、所定の深さにおける複数の時刻の間の走査方向の変位を算出する走査方向変位算出手段(5)上記走査方向の変位と上記位相パターンとに基づいて、深さ方向位相差算出手段で求められた深さ方向の位相差を補正することにより深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段(6)算出された深さ方向の変位、あるいは深さ方向の変位および走査方向の変位を表示する表示手段の各手段を備えたことを特徴とするものである。
【0005】ここで、上記第1の超音波診断装置の上記(4)の走査方向変位算出手段における、走査方向の変位を算出するための演算方法としては、複数の時刻における複数の位相パターンの、走査方向に対する例えば相互相関演算が採用される。また、本発明の第2の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置における上記(4)の走査方向変位算出手段に代えて、(7)多数の走査線に対応する、複数の時刻に得られた複数の受信信号に基づいて所定の深さにおける走査方向の変位を算出する第2の走査方向変位算出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0006】この(7)の第2の走査方向変位算出手段における走査方向の変位を算出するための演算方法としては、複数の時刻に得られた複数の受信信号の、走査方向に対する例えば相互相関演算が採用される。さらに、本発明の第3の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置における上記(3)の深さ方向位相差算出手段と上記(4)の走査方向変位算出手段とに代えて、(8)上記走査方向位相パターン算出手段で求められた複数の時刻における複数の位相パターンに基づいて、所定の深さにおける複数の時刻の間の走査方向の変位と深さ方向の変位とを算出する二次元変位算出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0007】この(8)の二次元変位算出手段における走査方向の変位を算出するための演算方法としては、複数の時刻に得られた複数の位相パターンの、走査方向および深さ方向に対する例えば二次元相互相関演算が採用される。また、本発明の第4の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置における二次元的な演算を三次元的な演算に拡張したものであり、(9)被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、被検体内を、深さ方向と交わるとともに互いに交わるX方向およびY方向に走査することにより、被検体内の三次元空間内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段(10)互いに隣接する複数の走査線に対応する受信信号に基づいて、被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し算出された位相差をX方向およびY方向に積分することにより二次元位相パターンを算出する二次元位相パターン算出手段(11)各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の受信信号に基づいて、各走査線上の所定の深さにおける深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段(12)上記二次元位相パターン算出手段で求められた複数の時刻における複数の二次元位相パターンに基づいて、所定の深さにおける複数の時刻の間のX方向およびY方向の変位を算出するX,Y方向変位算出手段(13)前記X方向および前記Y方向の変位と前記二次元位相パターンとに基づいて、前記深さ方向位相差算出手段で求められた前記深さ方向の位相差を補正することにより深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段(14)算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記X方向と前記Y方向の変位を表示する表示手段の各手段を備えたことを特徴とするものである。
【0008】ここで、上記第4の超音波診断装置の(12)のX,Y方向変位算出手段における、X方向およびY方向の変位を算出するための演算方法としては、複数の時刻における複数の二次元位相パターンの、X方向およびY方向に対する例えば二次元相互相関演算が採用される。また、本発明の第5の超音波診断装置は、上記第4の超音波診断装置における上記(12)のX,Y方向変位算出手段に代えて、(15)多数の走査線に対応する複数の時刻に得られた複数の受信信号に基づいて所定の深さにおけるX方向およびY方向の変位を算出する第2のX,Y方向変位算出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0009】ここで、この(15)の第2のX,Y方向変位算出手段におけるX方向およびY方向の変位を算出するための演算方法としては、複数の時刻に得られた複数の受信信号の、X方向およびY方向に対する例えば二次元相互相関演算が採用される。さらに、本発明の第6の超音波診断装置は、上記第4の超音波診断装置における上記(11)の深さ方向位相差算出手段と上記(12)のX,Y方向変位算出手段とに代えて、(16)二次元位相パターン算出手段で求められた複数の時刻における複数の二次元位相パターンに基づいて、所定の深さにおける複数の時刻の間のX方向およびY方向の変位と深さ方向の変位を算出する三次元変位算出手段を備えたことを特徴とするものである。
【0010】この(16)の三次元変位算出手段におけるX方向およびY方向の変位と深さ方向の変位を算出するための演算方法としては、X方向、Y方向および深さ方向に対する例えば三次元相互相関演算が採用される。尚、上記第1〜第6の超音波診断装置において、上記(1),(9)の超音波送受信手段が、同時に複数本の走査線が形成されるように複数の受信ビームフォーマを備えたものであることが好ましい。
【0011】
【作用】本発明の第1の超音波診断装置は、走査方向の位相パターンを算出し(上記(2)、複数の各時刻における位相パターンに基づいて走査方向の変位を算出し(上記(4))、これとは別に、従来と同様な例えばパルスドプラ法等により、深さ方向の位相差を求めておき(上記(3))、この深さ方向の位相差を上記走査方向の変位と上記位相パターンとに基づいて補正することにより深さ方向の変位を算出する(上記(5))ものであるため、走査方向への変位が深さ方向の変位として求められてしまう分が補正され、したがって深さ方向の変位が高精度に求められる。また走査方向の変位も求められるため、被検体内の組織の二次元的な変位を表示することもできることとなる。
【0012】また、本発明の第2の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置では走査方向の変位を求めるにあたり複数の時刻における位相パターンに基づいてこの走査方向の変位が求められる(上記(4))のに対し、複数の各時刻に得られた複数の受信信号に基づいて走査方向の変位を求めるもの(上記(7))であり、上記第1の超音波診断装置と同様に、深さ方向の変位が高精度に求められ、また組織の二次元的な変位を表示することもできる。
【0013】さらに、本発明の第3の超音波診断装置は、上記第1の超音波診断装置では走査方向の変位と深さ方向の位相差を別々に求めておいて深さ方向の位相差を補正するように構成したものであるが、これに代えて、複数の時刻における複数の位相パターンに基づいて走査方向の変位と深さ方向の変位との双方を求めるようにしたものであり、これにより、上記第1、第2の超音波診断装置と同様に、深さ方向の変位が高精度に求められ、また組織の二次元的な変位を表示することもできる。
【0014】また、本発明の第4、第5、第6の超音波診断装置は、それぞれ本発明の第1、第2、第3の超音波診断装置における「走査方向」に関する演算を互いに交叉するX方向とY方向についての二次元的な演算に拡張したものである。即ち、本発明の第4の超音波診断装置は、X方向およびY方向の二次元位相パターンを算出し(上記(10))、複数の各時刻における二次元位相パターンに基づいてX方向およびY方向の変位を算出し(上記(12))、これとは別に、従来と同様な例えばパルスドプラ法等により深さ方向の位相差を求めておき(上記(11))、この深さ方向の位相差を上記X方向およびY方向の変位と上記二次元位相パターンとに基づいて補正することにより深さ方向の変位を算出する(上記(13))ものであるため、X方向の変位、Y方向の変位の、上記(11)で求めた深さ方向の位相差への影響分が取り除かれ、したがって深さ方向の変位が高精度に求められる。また、X方向、Y方向の変位も求められるため、被検体内の組織の三次元的な変位を表示することも可能となる。
【0015】また、本発明の第5の超音波診断装置は、複数の時刻に得られた複数の受信信号に基づいてX方向およびY方向の変位を求めるもの(上記(15))であり、上記第4の超音波診断装置と同様に、深さ方向の変位が高精度に求められ、また組織の三次元的な変位を表示することもできる。さらに、本発明の第6の超音波診断装置は、複数の時刻における複数の二次元位相パターンに基づいてX方向、Y方向の変位及び深さ方向の変位を求めるようにしたものであり、これにより上記第4、第5の超音波診断装置を同様に、深さ方向の変位が高精度に求められ、また組織の三次元的な変位を表示することもできる。
【0016】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の第1の超音波診断装置の一実施例のブロック図、図2は図1に示す送受信回路50の詳細ブロック図、図3は図1に示す実施例の動作説明の際に用いられる信号名を説明するための図、図4は図1に示す実施例の動作フローを示した図、図5は図1に示す実施例の動作フローを直観的に示した模式図である。
【0017】先ず、送受信回路50を構成する送信回路2から所定方向に多数並ぶ超音波探触子1に向けて超音波送信のための各パルス信号が出力され、超音波探触子1ではこのパルス信号が超音波パルスビームに変換され、この超音波パルスビーム7が図示しない被検体の内部に向けて送信される。被検体の内部の各組織で反射された超音波は超音波探触子1により受信され、受信回路3に入力される。この受信回路3には、図2に示すように、複数(ここでは5つ)の受信ビームフォーマBF(i−2)、BF(i−1)、BF(i)、BF(i+1)、BF(i+2)が備えられており、各受信ビームフォーマ(i−2)、BF(i−1)、BF(i)、BF(i+1)、BF(i+2)では、走査線iに対応する送信超音波パルスビーム7に対し、複数本(ここでは5本)の走査線i−2、i−1、i、i+1、i+2がそれぞれ形成されるように遅延加算され、各受信信号Sが生成される。
【0018】この各受信信号Sは、断層像生成手段6(図1参照)に入力され、この断層像生成手段6においてこの各受信信号Sに基づいて断層像が形成され、その断層像が例えばCRTディスプレイ等の表示手段14に入力され、その表示画面上に可視画像としての断層像が表示される。また、受信回路3で生成された各受信信号Sは直交検波手段4に入力されて直交検波される。
【0019】この直交検波手段4も、図2に示すように、各受信ビームフォーマBF(i−2),BF(i−1),BF(i),BF(i+1),BF(i+2)に対応して複数(ここでは5つ)の直交検波回路QD(i−2),QD(i−1),QD(i),QD(i+1),QD(i+2)が備えられており、これらの直交検波回路QD(i−2),QD(i−1),QD(i),QD(i+1),QD(i+2)において、各受信ビームフォーマBF(i−2)、BF(i−1)、BF(i)、BF(i+1)、BF(i+2)で得られた各受信信号Sに対し互いに同時に直交検波が行なわれ、各直交検波出力R,Iが生成される。これにより生成された直交検波出力R,Iが一旦メモリ5に格納され、その後その直交検波出力R,Iがメモリ5から読出されて本実施例の特徴部分30Aを構成する走査方向位相パターン算出手段8と深さ方向位相差算出手段11に入力される。
【0020】ここでは、図3(a)に示すように、時刻t1 に得られた各走査線x1 ,x2,x3 ,…に対応する各受信信号SをS(x1 ,z,t1 )、S(x2 ,z,t1 )、S(x3 ,z,t3 ),…と表わす。ここで、zは深さ方向の距離を表わしている。また、ここでは理解を容易にするために、同時刻t1 に、複数の走査線x1 ,x2 ,x3 ,…にそれぞれ対応する複数の受信信号S(x1 ,z,t1)、S(x2 ,z,t1 )、(x3 ,z,t1 )、…が得られるものとする。これらの各受信信号S(x1 ,z,t1 )、S(x2 ,z,t1 )、S(x3 ,z,t1 )、…の直検波出力R,Iを、それぞれ図3(a)に示すように{R(x1 ,z,t1 )、I(x1 ,z,t1 )}、{R(x2 ,z,t1 )、I(x2,z,t1 )}、{R(x3 ,z,t1 )、I(x3 ,z,t1 )}、…と表わすこととする。またこれらと同様に、図2(b)に示すように、時刻t2 において得られた各走査線x1 ,x2 ,x3 ,…に対応する各受信信号SをS(x1 ,z,t2 )、S(x2 ,z,t2 )、S(x3 ,z,t2 )、…と表わし、これらの各受信信号の直交検波出力をそれぞれ{R(x1 ,z,t2 )、I(x1 ,z,t2 )}、{R(x2 ,z,t2 )、I(x2 ,z,t2 )}、{R(x3,z,t2 )、I(x3 ,z,t2 )}、…と表わすこととする。
【0021】このとき、深さ方向位相差算出手段11では、図1に示すメモリ5から読出され深さ方向位相差算出手段11に入力された直交検波出力R,Iに基づいて、図4のステップ60に示すように、従来のパルスペア法として知られている方法により深さ方向の位相差Δθzが求められる。ここでは、図5(a)に示すように、Z方向(深さ方向)には位相差Δθ0 (深さ方向への変位量Δz=Δθ0 ・C/2ω;ここで、Cは被検体内の超音波の音速、ωは直交検波手段4におけるミキシング角周波数を表わす)だけ一様に変位したものとする。
【0022】しかしながら、実際に求められる位相差Δθzは、図5(a)に示すように、組織の横方向への動きの影響による大きな誤差を含んだものとなる。ここでは、この大きな誤差を含んだ位相差Δθzを、見掛上の位相差Δθzと呼ぶ。深さ方向位相差算出手段11において、このようにして求められた深さ方向の見掛上の位相差Δθzは、メモリ12に一旦記憶される。
【0023】また、メモリ5から読出された直交検波出力R,Iは、走査方向位相パターン算出手段8にも入力され、この走査方向位相差パターン算出手段8では、図4R>4のステップ61〜63の演算が行われる。即ち、先ず、ステップ61に示すように、入力された時刻t1 における直交検波出力R,Iを用いて、互いに隣接する走査線i,i+1間の位相差ΔΨi,i+1 (t1 )が、式
【0024】
【数1】


【0025】により算出される。あるいは、深さZ近傍の、複数の深さZk(k=1,2,…)における受信信号を用いて、式
【0026】
【数2】


【0027】を用いて算出してもよい。また、ステップ62に示すように、入力された時刻t2 における直交検波出力R,Iを用いて、式(1)又は式(2)と同様な演算により、互いに隣接する走査線間の位相差ΔΨi,i+1 (t2 )が求められる。このようにして求めた各時刻t1 、t2 における隣接走査線間の位相差ΔΨi,i+1 (t1 ),ΔΨi,i+1 (t2 )がそれぞれ所定の走査線i=0を基準として多数の走査線に跨がって走査方向に積分され、これにより、各時刻t1 、t2 における走査方向の位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )が求められる(ステップ63)。
【0028】
【数3】


【0029】
【数4】


【0030】図5(b)は、上記(3)式,(4)式を概念的に示したものであり、ここでは時間間隔Δt=t2 −t1 の間に、被検体内組織が走査方向にΔX、深さ方向にΔz=Δθ0 ・C/2ω)だけ変位した場合が仮定されている。ここで、図5(a)に示す深さ方向の見掛け上の位相差Δθzは、上記(3)式と(4)式との差{Ψ(t2 )−Ψ(t1 )}として近似される。すなわち、図1に示す深さ方向位相差算出手段11で求められた深さ方向の見掛け上の位相差Δθzは、走査方向の位相パターン((3)式、(4)式)の変動によって生じると考えられる。図1に示す走査方向位相パターン算出手段8において、上記のようにして求められた走査方向の位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )はメモリ9に入力され一旦記憶される。
【0031】メモリ9に一旦記憶された走査方向の位相パターンΨ(t1),Ψ(t2 )は、このメモリ9から読出されて走査方向変位算出手段10に入力される。この走査方向変位算出手段10では、図4のステップ64に示すように、入力された2つの位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )の走査方向についての相互相関関数C(τ)
【0032】
【数5】


【0033】が求められ、その最大ピークの位置を求めることにより時間間隔Δt=t2 −t1 の間の走査方向への変位量Δxが求められる。なお、相互相関演算に代えて、差の絶対値総和関数A(τ)
【0034】
【数6】


【0035】を演算してその最小ピークの位置を求めることにより変位量Δxを求めてもよい。尚、上述のC(τ)或いはA(τ)を算出する場合において、τの算出精度を上げるために、2つの位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )を予め多項式補間(例えば、3次のスプライン補間)したものについて、(5)式或いは(6)式を計算しても良い。また、2つの位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )から、(5)式或いは(6)式を計算した後、ピーク位置を算出する段階において、多項式補間(例えば、3次のスプライン補間)を行っても良い。
【0036】このようにして求められた走査方向の変位量Δxは、深さ方向変位補正手段13に入力される。この深さ方向変位補正手段13には、メモリ9から読出された走査方向の位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )も入力され、さらにメモリ12から読み出された深さ方向の見掛け上の位相差Δθzも入力される。この深さ方向変位補正手段13では先ず図5(c)に示すように、時刻t1 に対応する位相パターンΨ(t1 )が走査方向(x方向)にΔxだけ移動され、これにより移動された位相パターンΨ(Δx,t1 )が求められ、次にこの移動された位相パターンΨ(Δx,t1 )と移動前の位相パターンΨ(t1 )とを用いて、深さ方向の補正量ΔΨzが、 ΔΨz=Ψ(t1 )−Ψ(Δx,t1 ) …(7)
として求められる(図4のステップ65)。図5(d)には、このようにして求められた深さ方向の補正量ΔΨzが概念的に示されている。
【0037】この深さ方向変位補正手段13では、上記(7)式に従って深さ方向の補正量ΔΨzが求められた後、深さ方向の補正された位相差Δθz’が、式 Δθz’=Δθz+ΔΨz …(8)
に従って求められる(図4のステップ66)。このように補正された位相差Δθz’は、図5(e)に示すように、深さ方向の真の位相差Δθ0 に非常に近似したものとなる。この補正された位相差Δθz’から、深さ方向の変位Δzが、式 Δz=Δθz’・C/2ω …(9)
にしたがって算出される。このようにして、図1に示す深さ方向変位補正手段13で求められた深さ方向の変位Δzは、表示手段14に入力される。
【0038】この表示手段14では、従来と同様に、電気音響変換素子1に近付く方向の変位が赤、電気音響変換素子から遠ざかる方の変位が青で表示される。もしくはこの表示手段14に、走査方向変位算出手段10で算出された走査方向(x方向)の変位Δxも入力され、例えば以下のような表示がなされる。図6はこの表示方法の例を示した図である。
【0039】図6に示すように、電気音響変換素子1(図1参照)に近づく方向の変位は赤ないし橙、遠ざかる方向の変位は青ないし緑で表示されるが、さらに走査方向について右方向に変位しているか左方向に変位しているかに応じてそれぞれ橙、緑;赤,青で表示される。これにより、例えばいわゆるセクタ走査の場合は、図5(b)に示すように表示される。
【0040】ここで、上記実施例では、図2に示すように、1回の超音波の送信に対して複数本(図2に示す例では5本)の走査線が得られるように複数(5つ)の受信フォーマBF(i−2),BF(i−1),BF(i),BF(i+1),BF(i+2)と複数(5つ)の直交検波回路QD(i−2),QD(i−1),QD(i),QD(i+1),QD(i+2)が備えられているが、本発明では、上記実施例のように複数の受信ビームフォーマBF(i−2),BF(i−1),BF(i),BF(i+1),BF(i+2)や複数の直交検波回路QD(i−2),QD(i−1),QD(i),QD(i+1),QD(i+2)を備えることは必ずしも必要ではない。
【0041】図7は受信ビームフォーマ及び直交検波回路をそれぞれ1つだけ備えた場合のシーケンスの例を示したタイミングチャートである。ドライブストローブDSのパルス1つ毎に1回ずつ超音波の送受信が行われるが、このとき図7(a)に示すように、先ず走査線i−2が形成されるように超音波を送受信し、次に走査線i−1が形成されるように超音波を送受信し、このようにして順次各走査線i−2,i−1,i,i+1,i+2が形成されると、次に再度順次各走査線i−2,i−1,i,i+1,i+2が形成されるように超音波を順次送受信し、このようにして形成された2組の走査線群のうち先に形成された走査線i−2,i−1,i,i+1,i+2及び後に形成されたi−2,i−1,i,i+1,i+2を上記実施例におけるそれぞれ時刻t1 ,t2 における走査線として用いてもよい。
【0042】また、図7(b)は被検体内の組織の動きが遅い場合に用い得る例であり、N本の走査線で1フレームが形成される場合において、ドライブストローブDSの各パルス毎に走査線0,1,…、N−1,0,1…の順に走査線が形成され、隣接する2つのフレームのうち先に得られたフレームに対応する各走査線に対応する各受信信号Sを時刻t1 に得られた受信信号、後に得られたフレームに対応する各走査線に対応する受信信号Sを時刻t2 に得られた受信信号とみなして前述した実施例と同様の演算を行ってもよい。
【0043】図8は、本発明の第2の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。図1に示す特徴部分30Aに代えてこの図8に示す特徴部分30Bを備えたものが本発明の第2の超音波診断装置の一実施例となる。メモリ5(図1参照)から読出された直交検波出力R,Iは、走査方向位相パターン算出手段8及び深さ方向位相差算出手段11に入力されるとともに、走査方向変位算出手段31にも入力される。ここで、走査方向位相パターン算出手段8及び深さ方向位相差算出手段11は、図1に示す実施例における走査方向位相パターン算出手段8及び深さ方向位相差算出手段11と同一であり、ここでは説明は省略する。
【0044】走査方向変位算出手段31では、入力された直交検波出力R,Iの走査方向についての複素相互相関が演算され、この複素相互相関数のエンベローブが求められこのエンベローブのピークの位置から走査方向の変位Δxが求められ、メモリ32に入力される。その後、深さ方向変位補正手段13に、メモリ9から読出された位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t1 )が入力され、またメモリ12から読出された深さ方向の見掛上の位相差Δθzが入力され、さらにメモリ32に記憶された走査方向の変位Δxが読出されて入力される。この深さ方向変位補正手段13では、前述した(7)〜(9)式に示す演算により深さ方向の補正された変位Δzが求められる。
【0045】なお、この実施例では、直交検波出力R,Iに基づいて走査方向の変位Δxを求めているが、直交検波を行う前の受信信号Sに基づいて走査方向の変位Δxを求めてもよく、したがって本発明の第2の超音波診断装置の第2の走査方向変位算出手段における「受信信号」は、直交検波の前後の受信信号の双方を含むものと観念される。
【0046】図9は本発明の第3の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置との相違点のみを示したブロック図である。図1に示す特徴部分30Aに代えてこの図8に示す特徴部分30Cを備えたものが本発明の第3の超音波診断装置の一実施例となる。メモリ5(図1参照)から読出された直交検波出力R,Iは、走査方向位相パターン算出手段8に入力される。この走査方向位相パターン算出手段8は、図1,図8に示す走査方向位相パターン算出手段8と同一であり、走査方向位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2)が求められて、メモリ9に一旦記憶される。このメモリ9に記憶された走査方向位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )はこのメモリ9から読出されて二次元変位算出手段33に入力される。この二次元変位算出手段33では走査方向(x方向)と深さ方向(z方向)についての二次元相互相関演算が行われ、これにより、走査方向の変位Δxと深さ方向の変位Δzとの双方が求められる。このように、図1,図8に示す深さ方向位相差算出手段11を備えることなく、位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )に基づいて二次元相互相関演算を行うことにより、直接Δx,Δzの双方を求めることもできる。
【0047】図10は、本発明の第4の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。なお、この実施例以降、図1に示す電気音響変換素子1は互いに直交するX方向とY方向に二次元的に配列されているものとされる。また図11は、図10に示す実施例の動作説明の際に用いられる信号名を説明するための図、図1212は図10に示す実施例の動作フローを直観的に示した模式図である。
【0048】メモリ5(図1参照)から読出された直交検波出力R,Iは、x−y面位相パターン算出手段34とz方向位相差算出手段37に入力される。ここで、図1111に示すように、時刻t1 ,t2 に得られた走査線(xi ,yj )に対応する受信信号SをそれぞれS(xi ,yj ,z,t1 ),S(xi ,yj ,z,t2 )と表わし、それらの直交検波出力R,Iをそれぞれ{R(xi ,yj ,z,t1 ),I(xi ,yj ,z,t1 )},{R(xi ,yj ,z,t2 ),I(xi ,yj ,z,t2 )}と表わす。ここで、zは深さ方向の距離を表わしている。
【0049】ここで、x−y面位相パターン算出手段34では、入力された直交検波出力R,Iを用いて、図12R>2(a)に示すように、時刻t1 におけるx方向、y方向の二次元位相パターンが以下のようにして求められる。先ず全てのy=yj におけるx方向の位相差ΔΨi,i+1 (t1 ,yj )が式 ΔΨi,i+1 (t1 ,yj
=tan-1{I(xi ,yj ,z,t1 )R(xi+1 ,yj ,z,t1
−R(xi ,yj ,z,t1 )I(xi+1 ,yj ,z,t1 )}/ {R(xi ,yj ,z,t1 )R(xi+1 ,yj ,z,t1
+I(xi ,yj ,z,t1 )I(xi+1 ,yj ,z,t1 )}
…(10)
により算出される。
【0050】あるいは深さz近傍の、複数の深さzk (k=1,2,…)における受信信号を用いて、式
【0051】
【数7】


【0052】を用いて算出してもよい。このようにして上記(10)式又は(11)式に従って求めた各yj におけるx方向の位相差ΔΨi,i+1 (t1 ,yj )が所定の1本の走査線を基準として多数の走査線に跨ってx方向,y方向に積分され、位相パターンΨ(t1 )が、
【0053】
【数8】


【0054】に従って求められる。またこれと同様に時刻t2 についても位相差ΔΨi,i+1 (t2 ,yj )が求められ、これを用いて位相パターンΨ(t2 )が、式
【0055】
【数9】


【0056】に従って求められる。図12(a),(b)は、それぞれ時刻t12 における二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )を概念的に図示したものであり、図1に示す実施例における図5(b)に相当する図である。この二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )は、図10に示すメモリ35に入力され一旦記憶される。
【0057】また図10に示すz方向位相差算出手段37は、図1に示す深さ方向位相差算出手段11に相当するものであり、z方向位相差算出手段37では、入力された直交検波出力R,Iに基づいてパルスペア法により、図12(C)に示すようなz方向(深さ方向)の位相差Δθzが求められる(図5(a)参照)。ここでも図5(a)に示すように、z方向(深さ方向)に位相差Δθz(深さ方向への変位量Δz=Δθ0 ・C/2ω)だけ一様に変位したものとする。このz方向の位相差Δθzは、メモリ38に入力され一旦記憶される。メモリ35に一旦記憶されたx,y方向の二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )はこのメモリ35から読出されてx,y方向変位算出手段36に入力される。このx,y方向変位算出手段36では、入力された2つの二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )のx方向およびy方向についての二次元相互相関関数C(τ1 ,τ2
【0058】
【数10】


【0059】が演算され、その最大ピークの位置が求められ、これにより時間間隔Δt=t2−t1 の間のx方向,y方向の各変位量Δx,Δyが求められる。なお、二次元相互相関関数演算に代えて、二次元の差の絶対値総和関数A(τ1 ,τ2
【0060】
【数11】


【0061】を演算して、その最小ピークの位置を求めることにより変位量Δxを求めても良い。上述のC(τ1 ,τ2 )或いはA(τ1 ,τ2 )を算出する場合において、τ1 ,τ2 の算出精度を上げるために、2つの二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )を予め多項式補間(例えば、3次のスプライン補間)したものについて、(14)式或いは(15)式を計算しても良い。また、2つの二次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )から(14)式或いは(15)式を計算した後、ピーク位置を算出する段階において、多項式補間(例えば、3次のスプライン補間)を行っても良い。
【0062】このようにして求められたx,y方向の変位量Δx,Δyは、z方向変位補正手段39に入力される。このz方向変位補正手段39は、図1に示す深さ方向変位補正手段13に相当するものであり、このz方向変位補正手段39にはメモリ35から読出された2次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )に入力され、さらにメモリ38から読出されたz方向の見掛け上の位相差Δθzも入力される。
【0063】このz方向変位補正手段39では、時刻t1 に対応する2次元位相パターンΨ(t1 )がx方向、y方向にそれぞれΔx,Δyだけ移動され、これにより移動された位相パターンΨ(Δx,Δy,t1 )が求められ、次にこの移動された位相パターンΨ(Δx,Δy,t1 )と移動前の2次元位相パターンとを用いて、深さ方向の補正量ΔΨzが、式 ΔΨz=Ψ(t1 )−Ψ(Δx,Δy,t1 ) …(16)
として求められ、この補正量ΔΨzを用いてz方向の補正されて位相差Δθz’が、式Δθz’=Δθz+ΔΨz …(17)
に従って求められる。図12(d)にはこの補正された位相差が概念的に示されており、この補正された位相差Δθz’はz方向の真の位相差Δθ0 に非常に近時したものとなる。この補正された位相差Δθz’から、z方向の変位Δzが、式Δz=Δθz’・C/2ω …(18)
に従って算出される。
【0064】図13は、本発明の第5の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第の超音波診断装置との相違点のみを示したブロック図である。図1に示す特徴部分30Aに代えてこの図13に示す特徴部分30Eを備えたものが本発明の第5の超音波診断装置となる。メモリ5(図1参照)から読出された直交検波出力R,Iはx−y面位相パターン算出手段34およびz方向位相差算出手段37に入力されるとともにx,y方向変位算出手段40にも入力される。ここで、x−y面位相パターン算出手段34およびz方向位相差算出手段37は、図10R>0に示す実施例におけるx−y面位相パターン算出手段34およびz方向位相差算出手段37と同一であり、ここでは説明は省略する。
【0065】x,y方向変位算出手段40では、入力された直交検波出力R,Iのx方向およびy方向についての2次元複素相互相関が演算され、この2次元複素相互相関関数のエンベローブが求められ、このエンベローブのピークの位置からx方向,y方向の変位Δx,Δyが求められる。これらx方向,y方向の変位Δx,Δyは、メモリ41に入力され一旦記憶される。
【0066】その後z方向変位補正手段39に、メモリ35から読出された2次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )が入力され、またメモリ38から読出されz方向の見掛け上の位相差Δθzが入力され、さらにメモリ41に記憶されたx方向,y方向の変位Δx,Δyが読出されて入力される。このz方向変位補正手段39では、前述した(16)〜(18)式に示す演算によりz方向の補正された変位Δzが求められる。
【0067】尚、この実施例では、直交検波出力R,Iに基づいてx方向,y方向の変位Δx,Δyを求めているが、前述した図8に示す本発明の第2の超音波診断装置の実施例の場合と同様に直交検波を行う前の受信信号Sに基づいてx方向,y方向の変位Δx,Δyを求めてもよく、したがって本発明の第5の超音波診断装置における「受信信号」は、直交検波の前後の受信信号の双方を含むものと観念される。
【0068】図14は、本発明の第6の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。図1に示す特徴部部30Aに代えてこの図14に示す特徴部分30Fを備えたものが本発明の第6の超音波診断装置の一実施例となる。メモリ5(図1参照)から読出された直交検波出力R,Iは、x−y面位相パターン算出手段34に入力される。このx−y面位相パターン算出手段34は、図10、図13に示すx−y面位相パターン算出手段34と同一であり、x−y面位相パターン算出手段34においてx,y方向の2次元位相パターンΨ(t1),Ψ(t2 )が求められてメモリ35に一旦記憶される。
【0069】このメモリ35に記憶された2次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )は、このメモリ35から読出されて三次元変位算出手段42に入力される。この3次元変位算出手段42では、x方向,y方向およびz方向についての3次元相互相関演算が行われ、これにより、x方向,y方向,z方向の各変位Δx,Δy,Δzが求められる。このように、図10,図13に示すz方向位相差算出手段37を備えることなく、2次元位相パターンΨ(t1 ),Ψ(t2 )に基づいて直接各変位Δx,Δy,Δzを求めることもできる。
【0070】上記のように、本発明においては種々の態様が可能である。
【0071】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の第1(第4)超音波診断装置は、走査方向(もしくはx、y方向)の位相パターンを求め、この位相パターンの走査方向(x、y方向)の変位Δx(Δx、Δy)を求めて、従来と同様に例えばパルスドップラ法等を用いて求めた深さ方向(z方向)の見掛け上の位相Δθzをこの変位Δx(Δx、Δy)と上記位相パターンとに基づいて補正するようにしたものであるため、深さ方向(z方向)の変位Δzが高精度に求められ、また、2次元(3次元)的な変位も求められ、これを表示することもできる。
【0072】また、本発明の第2(第5)の超音波診断装置は、受信信号に基づいて走査方向(x,y方向)の変位Δx(Δx、Δy)を求め、また走査方向(x,y方向)の位相パターンを求め、これらの変位Δx(Δx、Δy)および位相パターンに基づいて深さ方向(z方向)の見掛け上の位相Δθzを補正するようにしたため、第1(第4)の超音波診断装置と同様に、深さ方向(z方向)の変位Δzが高精度に求められ、また、2次元(3次元)的な変位も求められる。
【0073】さらに、本発明の第3(第6)の超音波診断装置は、走査方向(x,y方向)の位相パターンを求め、この位相パターンに基づいて走査方向(x,y方向)の変位Δx(Δx、Δy)と深さ方向(z方向)の変位Δzを求めるものであるため、上記第1(第4)、第2(第5)の超音波診断装置と同様に、深さ方向(z方向)の変位Δzが高精度に求められ、また、2次元(3次元)的な変位も求められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の超音波診断装置の一実施例のブロック図である。
【図2】図1に示す送受信側回路の詳細ブロック図である。
【図3】図1に示す実施例の動作説明の際に用いられる信号名を説明するための図である。
【図4】図1に示す実施例の動作フローを示した図である。
【図5】図1に示す実施例の動作フローを直観的に示した模式図である。
【図6】表示方法の例を示した図である。
【図7】受信ビームフォーマおよび直交検波回路を1つだけ備えた場合のシーケンスの例を示したタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。
【図9】本発明の第3の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。
【図10】本発明の第4の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。
【図11】図10に示す実施例の動作説明の際に用いられる信号名を説明するための図である。
【図12】図10に示す実施例の動作フローを直観的に示した模式図である。
【図13】本発明の第5の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。
【図14】本発明の第6の超音波診断装置の一実施例の、図1に示す第1の超音波診断装置の一実施例との相違点のみを示したブロック図である。
【符号の説明】
1 電気音響変換素子
2 送信回路
3 受信回路
4 直交検波手段
6 断層像生成手段
8 走査方向位相パターン算出手段
10 走査方向変位算出手段
11 深さ方向位相差算出手段
13 深さ方向変位補正手段
14 表示手段
31 走査方向変位算出手段
33 二次元変位算出手段
34 x−y面位相パターン算出手段
36 x,y方向変位算出手段
37 z方向位相差算出手段
39 z方向変位補正手段
40 x,y方向変位算出手段
42 三次元変位算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わる走査方向に走査することにより、該被検体内の断層面内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記走査方向に積分することにより該走査方向の位相パターンを算出する走査方向位相パターン算出手段と、各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて、各走査線上の前記所定の深さにおける前記深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段と、前記走査方向位相パターン算出手段で求められた前記複数の時刻における複数の前記位相パターンに基づいて、前記所定の深さにおける前記複数の時刻の間の前記走査方向の変位を算出する走査方向変位算出手段と、前記走査方向の変位と前記位相パターンとに基づいて、前記深さ方向位相差算出手段で求められた前記深さ方向の位相差を補正することにより前記深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記走査方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わる走査方向に走査することにより、該被検体内の断層面内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記走査方向に積分することにより該走査方向の位相パターンを算出する走査方向位相パターン算出手段と、各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて、各走査線上の前記所定の深さにおける前記深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段と、多数の走査線に対応する、前記複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて前記所定の深さにおける前記走査方向の変位を算出する第2の走査方向変位算出手段と、前記走査方向の変位と前記位相パターンとに基づいて、前記深さ方向位相差算出手段で求められた前記深さ方向の位相差を補正することにより深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記走査方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わる走査方向に走査することにより、該被検体内の断層面内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記走査方向に積分することにより該走査方向の位相パターンを算出する走査方向位相パターン算出手段と、前記走査方向位相パターン算出手段で求められた前記複数の時刻における複数の前記位相パターンに基づいて、前記所定の深さにおける前記複数の時刻の間の前記走査方向の変位と前記深さ方向の変位とを算出する二次元変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記走査方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わるとともに互いに交わるX方向およびY方向に走査することにより、該被検体内の三次元空間内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記X方向および前記Y方向に積分することにより二次元位相パターンを算出する二次元位相パターン算出手段と、各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて、各走査線上の前記所定の深さにおける前記深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段と、前記二次元位相パターン算出手段で求められた前記複数の時刻における複数の前記二次元位相パターンに基づいて、前記所定の深さにおける前記複数の時刻の間の前記X方向および前記Y方向の変位を算出するX,Y方向変位算出手段と、前記X方向および前記Y方向の変位と前記二次元位相パターンとに基づいて、前記深さ方向位相差算出手段で求められた前記深さ方向の位相差を補正することにより深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記X方向と前記Y方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わるとともに互いに交わるX方向およびY方向に走査することにより、該被検体内の三次元空間内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記X方向および前記Y方向に積分することにより二次元位相パターンを算出する二次元位相パターン算出手段と、各走査線に対応する、互いに異なる複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて、各走査線上の前記所定の深さにおける前記深さ方向の位相差を算出する深さ方向位相差算出手段と、多数の走査線に対応する前記複数の時刻に得られた複数の前記受信信号に基づいて前記所定の深さにおける前記X方向および前記Y方向の変位を算出する第2のX,Y方向変位算出手段と、前記X方向および前記Y方向の変位と前記二次元位相パターンとに基づいて、前記深さ方向位相差算出手段で求められた前記深さ方向の位相差を補正することにより深さ方向の変位を算出する深さ方向変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記X方向と前記Y方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】 被検体内の深さ方向に延びる超音波走査線で、該被検体内を、前記深さ方向と交わるとともに互いに交わるX方向およびY方向に走査することにより、該被検体内の三次元空間内の各点で反射された超音波の強度を表わす受信信号を得る超音波送受信手段と、互いに隣接する複数の走査線に対応する前記受信信号に基づいて、前記被検体内の所定の深さにおける、互いに隣接する複数の走査線間の位相差を算出し該算出された位相差を前記X方向および前記Y方向に積分することにより二次元位相パターンを算出する二次元位相パターン算出手段と、前記二次元位相パターン算出手段で求められた前記複数の時刻における複数の前記二次元位相パターンに基づいて、前記所定の深さにおける前記複数の時刻の間の前記X方向および前記Y方向の変位と前記深さ方向の変位を算出する三次元変位算出手段と、算出された前記深さ方向の変位、あるいは該深さ方向の変位および前記X方向と前記Y方向の変位を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】 前記超音波送受信手段が、同時に複数の走査線が形成されるように、複数の受信ビームフォーマを備えたことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項8】 前記走査方向変位算出手段が、走査方向に相互相関或いは差の絶対値総和を演算することにより前記走査方向の変位を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】 前記第2の走査方向変位算出手段が、前記複数の時刻に得られた複数の前記受信信号の、走査方向に対する相互相関或いは差の絶対値総和を演算することにより前記走査方向の変位を算出するものであることを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項10】 前記二次元変位算出手段が、前記複数の時刻における複数の前記位相パターンの、前記走査方向および前記深さ方向に対する二次元相互相関或いは二次元の差の絶対値総和を演算することにより前記走査方向の変位と前記深さ方向の変位とを算出するものであることを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項11】 前記X,Y方向変位算出手段が、前記複数の時刻における複数の前記二次元位相パターンの、前記X方向および前記Y方向に対する二次元相互相関或いは二次元の差の絶対値総和を演算することにより前記X方向および前記Y方向の変位を算出するものであることを特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項12】 前記第2のX,Y方向変位算出手段が、前記複数の時刻に得られた複数の前記受信信号の、前記X方向および前記Y方向に対する二次元相互相関或いは二次元の差の絶対値総和を演算することにより前記X方向および前記Y方向の変位を算出するものであることを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項13】 前記三次元変位算出手段が、前記複数の時刻における複数の前記二次元位相パターンの、前記X方向、前記Y方向および前記深さ方向に対する三次元相互相関或いは三次元の差の絶対値総和を演算することにより前記X方向および前記Y方向の変位と前記深さ方向の変位とを算出するものであることを特徴とする請求項6記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図3】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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