超音波診断装置
【目的】 超音波診断装置において、被検体内の運動部位について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察可能とする。
【構成】 生体信号検出部6からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部12を設け、全体の制御部9は、上記検出された不整脈発生信号S4を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御するものとする。これにより、被検体について不整脈の発生を自動的に検出すると共に、その不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。
【構成】 生体信号検出部6からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部12を設け、全体の制御部9は、上記検出された不整脈発生信号S4を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御するものとする。これにより、被検体について不整脈の発生を自動的に検出すると共に、その不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得る超音波診断装置に関し、特に被検体内の血管や心臓等の運動部位について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の超音波診断装置は、図10R>0に示すように、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段(1,2)と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次記録するシネメモリ部(3,4)と、このシネメモリ部からのディジタル信号を超音波ビームの1走査線又は複数の走査線ごとに書き込んで画像データを形成するスキャンコンバータ(5)と、上記被検体の生体波を検出して生体信号を生成すると共に上記シネメモリ部へ送出する生体信号検出部(6)と、上記スキャンコンバータから出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段(7,8)と、上記各構成要素の動作を制御する制御部(9)とを有して成っていた。なお、図10においては、上記生体信号検出部6の後段に、該生体信号検出部6から出力される生体信号を記録すると共にスキャンコンバータ5へ送出する生体情報メモリ10が設けられている。
【0003】そして、被検体の手や足などに接触された心電電極11を介して、上記生体信号検出部6で心電波形や心音波形、或いは脈波信号などを検出し、生体情報メモリ10及びスキャンコンバータ5の処理により、上記波形や信号の情報をリアルタイムで画像表示器8の画面に表示するようになっていた。ここで、例えば心電波形について見ると、図11に示すように、正常な心収縮の心拍波形W1,W2,W3,…が略等間隔tで順次発生し、途中で異常な心室性期外収縮による不整脈の波形Zが発生することがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の超音波診断装置においては、図11に示すような心電波形を検出し、それをリアルタイムで画像表示することはできても、それらの波形のうちいずれが異常な心室性期外収縮の不整脈の波形Zであるかを検出する機能は有していなかった。従って、従来は、常に画像表示器8の画面に表示される心電波形を監視しながら、不整脈の波形Zと思われる波形を発見したら適当な時相で画像をフリーズし、その後シネ再生を行って再び心電波形を観察するという一連の手動ルーチンを行わなければならなかった。この場合、上記不整脈の波形Zのような異常な心室性期外収縮の動態を観察するには、経験を積んだ医師等が長時間図11に示すような心電波形を監視しつつ超音波画像を撮りつづける必要があり、診断効率が低下するものであった。また、被検体の体位、呼吸性変動等によっては、得られた超音波画像が不明瞭であることがあるので、正確な診断を行うためには上記の一連の手動ルーチンを何度も繰り返さなければならないことがあった。
【0005】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、被検体内の血管や心臓等の運動部位について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による超音波診断装置は、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次複数画像分記録するメモリ部と、上記被検体の生体波信号を上記断層像データと対応付けて検出する生体信号検出部と、上記メモリ部から出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段と、上記各構成要素の動作を制御する制御部とを有する超音波診断装置において、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部と、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する画像再生手段を設けたものである。
【0007】また、上記画像再生手段は、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを前記画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出し、スローモーション表示をするように制御するものとしてもよい。
【0008】さらに、上記画像再生手段は、前記不整脈を検出したときには、断層像の表示をフリーズし、その後上記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡って画像データを読み出し、この画像データをスローモーションで画像表示し、さらに上記画像のフリーズを解除するという一連の動作を繰り返し行うように制御するものとしてもよい。
【0009】
【作用】このように構成された超音波診断装置は、生体信号検出部に接続された不整脈検出部により、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出し、画像再生手段により、不整脈発生信号が入力すると、その不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する。これにより、被検体の心臓等について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。
【0010】また、上記画像再生手段により、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出すように制御することにより、上記不整脈の発生の前後の動態をスローモーションで表示することができる。従って、不整脈の動態をより詳しく観察することができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得るもので、図に示すように、探触子1と、超音波送受信回路2と、A/D変換器3と、シネメモリ4と、スキャンコンバータ5と、生体信号検出部6と、生体情報メモリ10と、D/A変換器7と、画像表示器8と、制御部9とを有し、さらに不整脈検出部12を備えて成る。
【0012】上記探触子1は、機械的または電子的にビーム走査を行って被検体に超音波を送信及び受信するもので、図示省略したがその中には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する複数の振動子が内蔵されている。超音波送受信回路2は、上記探触子1に対して駆動パルスを送出して超音波を発生させると共に受信した反射エコーの信号を処理するもので、図示省略したがその中には、探触子1から被検体へ送波する超音波ビームを形成するための公知の送波パルサ及び送波遅延回路と、上記探触子1の各振動子で受信した反射エコー信号を増幅する受波増幅器と、上記受信した各反射エコー信号の位相を揃えて加算し受波の超音波ビームを形成する受波遅延回路及び加算器等から成る整相回路とが内蔵されている。そして、これら探触子1と超音波送受信回路2とで超音波送受信手段を構成しており、上記探触子1で超音波ビームを被検体の体内で一定方向に走査させることにより、1枚の断層像を得るようになっている。
【0013】前記A/D変換器3は、上記超音波送受信回路2からの反射エコー信号を入力してディジタル信号に変換するものである。シネメモリ4は、上記A/D変換器3から出力されるディジタル信号を入力し、運動組織を含む被検体内の生の断層像データを時系列に複数枚順次記録するもので、例えば半導体メモリから成る。そして、これらA/D変換器3とシネメモリ4とでシネメモリ部を構成している。
【0014】前記スキャンコンバータ5は、上記シネメモリ4から出力されたディジタル信号を超音波ビームの1走査線又は複数の走査線ごとにラインメモリに書き込んで画像データを形成し、後述のD/A変換器7へ送出するものである。
【0015】前記生体信号検出部6は、被検体の例えば心電波形などの生体波を検出して生体信号を生成するもので、その内部構成は図2に示すようになっている。すなわち、被検体の手や足などに接触された心電電極11でとらえた心拍信号を入力して増幅する増幅器13と、この増幅器13からの出力信号を入力して図11に示す心拍波形W1,W2,W3,…のR波頂点の信号を検出するR波検出回路14と、一定時間間隔のクロック信号を発生するクロック発生器15と、上記R波検出回路14からのR波信号を入力すると共にクロック発生器15からのクロック信号を入力して上記R波信号の発生間隔を計測する計数回路16とから成る。そして、この生体信号検出部6からの生体信号は、図1においては、生体情報メモリ10へ送出され、例えば図11に示すような心電波形として記録されるようになっている。
【0016】また、D/A変換器7は、前記スキャンコンバータ5から出力された画像データをアナログビデオ信号に変換するものであある。さらに、画像表示器8は、上記D/A変換器7からのアナログビデオ信号を入力してテレビ表示方式により画像として表示するもので、例えばテレビモニタから成る。そして、これらD/A変換器7と画像表示器8とで、前記スキャンコンバータ5から出力された画像データを表示する画像表示手段を構成している。なお、制御部9は、上記の各構成要素の動作を制御するもので、例えば中央処理装置(CPU)から成る。
【0017】ここで、本発明においては、上記生体信号検出部6と制御部9との間に、不整脈検出部12が設けられている。この不整脈検出部12は、上記生体信号検出部6から出力される生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出するもので、その内部構成は図2に示すようになっている。すなわち、前記計数回路16から出力される現在のR波信号の発生間隔(すなわち心拍間隔)を示す信号S1及び後述の平均値演算器18から出力される過去の平均値を示す信号S2を記録する記録回路17と、上記計数回路16から出力された今までのR波信号の発生間隔のデータを入力し平均値を演算して上記記録回路17へ出力する平均値演算器18と、上記記録回路17から出力される現在の心拍間隔のデータD1及び過去の心拍間隔の平均値データD2を入力して比較し両者が異なっているときは比較信号S3を発生する比較器19と、この比較器19からの比較信号S3を入力することにより不整脈の発生を認知して不整脈発生信号S4を出力する制御回路20とから成る。
【0018】また、上記制御部9は、上記検出された不整脈発生信号S4を入力して所定時間後に画像をフリーズし、その不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相から上記フリーズした時相までの間画像データを再生するように制御する画像再生手段とされている。
【0019】次に、上記のように構成された不整脈検出部12における不整脈発生の検出動作について説明する。まず、図11に示すように、一般に、正常収縮による心拍は、波形W1,W2,W3,…のように略等間隔tで発生し、多くても±10%程度しか変動が無いとされている。ところが、心室性期外収縮による不整脈の波形Zは、上記正常な心拍の間に発生し、その間隔t′はtとは大幅に異なっている。そこで、本発明による不整脈検出部12は、心拍間隔が略一定の場合は正常心拍と判断し、心拍間隔が大幅に変動したときは不整脈が発生したと検出するものである。
【0020】以下に、図3に示すフローチャートを参照して一連の動作を説明する。まず、図2において、生体信号検出部6内の計数回路16から出力される現在の心拍間隔の信号S1を入力し、不整脈検出部12内の記録回路17に記録する(図3のステップA)。このとき、上記記録回路17には、過去に入力した心拍間隔の信号S1から演算した心拍間隔の平均値の信号S2が記録されている。次に、上記記録回路17から現在の心拍間隔のデータD1と過去の心拍間隔の平均値データD2とを読み出し、比較器19へ入力して両者を比較し、心拍間隔の平均値と同じか否か判定する(ステップB)。ここで、現在の心拍間隔(例えば図11に示すt′)が過去の心拍間隔の平均値と異なるときは、不整脈が発生している場合であり、ステップBは“NO”側へ進む。すると、上記比較器19は比較信号S3を出力し、この比較信号S3は制御回路20へ入力する。これにより、上記制御回路20は、不整脈が発生したことを認知し、不整脈発生信号S4を出力し(ステップC)、図1に示す制御部9へ送出する。
【0021】一方、現在の心拍間隔(例えば図11に示すt)が過去の心拍間隔の平均値と同じときは、正常心拍の場合であり、上記ステップBは“YES”側へ進む。このときは、上記比較器19からは比較信号S3は出力されない。そして、平均値演算器18で今回の心拍間隔の信号S1を入力して加算し、最新の平均値を算出する(ステップD)。次に、この求めた心拍間隔の平均値の信号S2を上記記録回路17へ送出し、記録する(ステップE)。そして、上記ステップAに戻り、次なるタイミングの心拍間隔の信号を入力する。以下、上記の手順を繰り返せばよい。
【0022】次に、本発明における制御部9の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、図1に示す生体情報メモリ10に順次記録されて行く心電波形(同図(a)参照)と、この心電波形の各心時相に対応して断層像データが記録されて行くシネメモリ4の状態(同図(b)〜(f)参照)とを示している。また、図5は、上記シネメモリ4及び生体情報メモリ10からそれぞれのデータを読み出して、断層像Iと心電波形とを画像表示器8に同時に表示している状態を示している。実際には、図4(a)に示す心電波形には、画像の1フレームについての心電波形上の位置、すなわち心時相を示す情報が含まれている。この場合、フレーム開始信号は、シネ再生を行うときの1フレーム毎の画像を1フレーム完成させるための時間毎で区切っている。
【0023】まず、図4(a)に示す心電波形において、ある正常な心拍波形W1の後に不整脈波形Zが発生したとすると、図1に示す不整脈検出部12から基準となる不整脈発生信号S4が出力され、制御部9を介して生体情報メモリ10に記録されると共に、シネメモリ4にも入力して図4(c)に示すように不整脈発生の番地Ad0、例えば“52”が指定される。この状態では、上記シネメモリ4は引き続いて断層像データを記録し、図4(d)に示すように、予め設定された所定時間t1後に相当する番地Ad1、例えば“59”で画像をフリーズする。すなわち、図4(b)に示すシネメモリにおいて、不整脈発生の後、メモリ書込みアドレスを“52”から“59”まで進める。なお、上記不整脈発生後から画像をフリーズするまでの時間t1は任意に設定すればよい。
【0024】次に、図4(e)に示すように、上記の不整脈発生より前へ予め設定された所定時間t2に相当する番地Ad2、例えば“48”まで遡って画像再生の開始を指定する。このときの不整脈発生より前へ遡る時間t2の指定は、次のようにして行えばよい。例えば図5に示すように、不整脈波形Zが発生した心電波形を一旦生体情報メモリ10に取り込んでフリーズした後、図示省略のトラックボール、ジョイスティック等の入力装置の操作により、画像再生を開始する時相を示すトリガマーカMを心電波形上で適宜移動して、上記心電波形上にて不整脈波形Zの位置より例えば100ms前の時相に対応する位置を指定すればよい。或いは、キーボード又はその他のスイッチ等により、上記遡る時間t2を示す数値“100”を直接入力して指定してもよい。さらに、図1に示す制御部9内のメモリに記録されている不整脈波形と比較することにより、自動的に不整脈発生から遡って画像を再生する時相を算出して指定するようにしてもよい。
【0025】次に、上記のように指定された画像再生の開始の番地Ad2と前記のように指定されたデータ記録後の画像フリーズの番地Ad1との間で、図4(f)に示すように、時間t3の間だけ画像を例えばスローモーションで再生する。従って、シネメモリ4の例えば番地“48”から“59”までが画像再生される。これにより、不整脈の発生の前後の動態を例えばスローモーション表示で観察することができる。このようにして、図4(d)において不整脈の発生後に引き続き断層像データを記録した最終番地Ad1まで再生すると、図4(f)に示すように、上記の番地を画像再生の終了番地Ad3とし、この終了番地Ad3において画像のフリーズを解除して元の表示状態に戻る。
【0026】次に、上記の不整脈発生の場合の画像表示の全体動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図1に示す制御部9に対して、図4(e)に示す不整脈発生から所定時相t2だけ遡って画像再生をさせる番地Ad2を指定する(図6のステップ■)。次に、この状態で、前回の画像診断等において実行されたフリーズを解除し(ステップ■)、今回の被検体について例えば心臓の拍動状態を観察する。このとき、図1に示す探触子1及び超音波送受信回路2で収集した超音波信号は、A/D変換器3を介してシネメモリ4に断層像データとして順次記録され(ステップ■)、一定時間後に新データに更新されて行く。これと併行して、図3に示す不整脈検出部12における不整脈発生の検出動作が進行しており、上記不整脈検出部12からの信号を入力して制御部9は、不整脈が発生したか否かを判定する(ステップ■)。
【0027】上記制御部9に対して不整脈検出部12から不整脈発生信号S4が入力すると、不整脈が発生したと判定し、ステップ■は“YES”側へ進む。すると、上記不整脈が発生した時相から引き続き断層像データを記録し、予め設定した所定時相後に画像をフリーズする(ステップ■)。次に、この画像をフリーズした時相からステップ■で指定した不整脈発生から遡った時相までの間で、画像を例えばスローモーションで再生する(ステップ■)。そして、この画像再生が進行して上記ステップ■でフリーズした時相まで至ると画像再生は終了し、前記ステップ■へ戻り、そのフリーズ状態を解除して元の表示状態に戻る。
【0028】一方、上記制御部9に対して不整脈検出部12から不整脈発生信号S4が入力しないときは、不整脈が発生していないと判定し、ステップ■は“NO”側へ進む。そして、前記ステップ■へ戻り、そのまま引き続いてシネメモリ4に断層像データを順次記録して行く。以下、上記の手順を繰り返せばよい。
【0029】以上の不整脈発生時の画像再生の動作を、画像表示器8の画面上でスローモーション表示をする場合について説明する。まず、図4(a)に示す心電波形において不整脈が発生するまでは、図1に示す画像表示器8にはリアルタイム画像が表示されているとする。そして、不整脈が発生したら、その不整脈による心収縮が完了する程度の時間、例えば400msの後に一旦画面はフリーズ状態になる。このとき、図1に示すシネメモリ4の中には、上記不整脈による心収縮の画像が総て記録されている。そして、画像診断に必要な画像は、上記不整脈が発生する例えば100ms前からその不整脈による心収縮が完了するまでである。従って、不整脈が発生する約100ms前からその不整脈の発生後約400msを経過するまでの心時相の区間を、総てスローモーション画像で表示すれば不整脈の動態を詳しく観察することができる。
【0030】そこで、例えば元の画像のフレームレイトが180フレーム/秒、すなわち毎秒180コマの超音波画像のデータがシネメモリ4に格納されているのであれば、テレビモニタから成る画像表示器8のフレームレイトは30フレーム/秒であるので、上記のようにして得た画像データを総て再生するためには、6倍のスローモーション表示である必要がある。従って、上記の場合は、不整脈の発生の前後約500msにわたる区間の画像データを、6倍の時間すなわち約3秒間かけてスローモーション表示することとなる。このようにして、例えば180フレーム/秒の元の画像データを約3秒間かけてスローモーション表示で再生した後、画面のフリーズ状態を解除する。すると、上記シネメモリ4は再び画像データの記録を続行し、画像表示器8にはリアルタイムの画像が再び表示される。
【0031】図7は本発明における不整脈検出部の第二の実施例を示す内部構成のブロック図である。この実施例による不整脈検出部12′は、次のような場合に適用するものである。すなわち、心電波形の不整脈には、図1111に示すような心拍間隔の変動が有るか無いかだけでは検出できないものがある。例えば、図8に示すように、正常心拍と不整脈とが略同時に発生している異常波形Z′が出現することがある。この場合は、心電波形上では正常心拍W1から異常波形Z′までの心拍間隔tは正常であるが、その波形は大幅に異なっている。このときは、前述の図2に示す実施例では、上記異常波形Z′を正常心拍として誤判定してしまう。また、図8において、その次の心拍W3は正常心拍であるが、上記の異常状態の影響により心拍間隔がt″と変動しており、前述の図2に示す実施例では、不整脈として誤判定してしまう。このような誤判定を無くすために、図7に示す第二の実施例を適用するのである。
【0032】図7において、第二の実施例による不整脈検出部12′は、生体信号検出部6内の増幅器13から出力される心電信号を記録する第一の生体信号メモリ21及び第二の生体信号メモリ22と、上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22に対して書込みアドレス又は読出しアドレスを設定するアドレス回路23と、このアドレス回路23のアドレス指定により上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22からそれぞれ読み出した心電信号の波形を比較する波形信号比較回路24と、これらの構成要素の動作を制御する制御回路20とから成る。
【0033】次に、このように構成された不整脈検出部12′における不整脈(図8に示す異常波形Z′)発生の検出動作について説明する。まず、生体信号検出部6内の増幅器13から出力される心電信号は、R波検出回路14に入力してその心電波形上のR波時相が検出されると共に、第一及び第二の生体信号メモリ21,22に入力して各心拍の収縮時相ごとに交互に記録される。このとき、上記R波検出回路14からの信号により、上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22におけるアドレスが制御回路20に記録される。
【0034】次に、上記第一の生体信号メモリ21に記録されたある時相の心電波形と、第二の生体信号メモリ22に記録されたその次の時相の心電波形とを、制御回路20によりR波時相を合致させた状態で順次読み出し、波形信号比較回路24へ入力する。すると、上記波形信号比較回路24は、相前後する二つの波形を比較し、両波形データが略同様である場合は正常心拍であると判定し、その旨の信号を制御回路20に送出する。制御回路20は、その後通常のデータ収集を続行する。一方、上記の比較により、両波形データが大幅に異なっている場合は不整脈の発生であると判定し、不整脈発生信号S4を出力し、図1に示す制御部9へ送出する。
【0035】以下に、図9に示すフローチャートを参照して一連の動作を説明する。まず、図7において、不整脈検出部12′内の第一及び第二の生体信号メモリ21,22には、心電波形が交互に記録されている。ここで、あるタイミングにおいて、第二の生体信号メモリ22へある時相の心電波形を記録する(図9のステップA)。これと同時に、第一の生体信号メモリ21からはその1心拍前の心電波形を読み出し(ステップB)、波形信号比較回路24へ入力する。次に、上記第二の生体信号メモリ22から上記記録した現在の心電波形を読み出して波形信号比較回路24へ入力し、1心拍前の心電波形と現在の心電波形とを比較する(ステップC)。次に、上記二つの心電波形が異なるか否か判定する(ステップD)。ここで、二つの心電波形が略同様である場合は、“NO”側へ進み、正常心拍として処理する(ステップE)。
【0036】一方、上記二つの心電波形が大幅に異なる場合は、ステップDは“YES”側へ進み、次のステップFに入る。このステップFでは、今度は1心拍前の心電波形と現在の心電波形との間の心拍間隔が平均値と異なるか否か判定する。ここで、上記心拍間隔が平均値と略同じ場合は、“NO”側へ進み、正常心拍と不整脈との重複として処理する(ステップG)。一方、上記心拍間隔が平均値と異なる場合は、“YES”側へ進み、不整脈発生信号S4を出力し(ステップH)、図1に示す制御部9へ送出する。そして、この制御部9の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示の全体動作は、図6に示すフローチャートの手順によって流れる。
【0037】なお、図1においては、シネメモリ4以外に生体情報メモリ10を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、生体情報メモリ10を設けずに、生体信号検出部6からの生体信号をシネメモリ4の一部に記録するようにしてもよい。また、画像表示器8の画面には、その領域を二分割して一方にリアルタイム表示の画像を、他方にスローモーション表示の画像を並列して表示してもよい。さらに、本発明は、時系列に複数枚収集した断層像において、時相の異なる二つの画像間で差分演算し、被検体の運動部位等についてその動きの成分を抽出して表示する方式の超音波診断装置にも適用することができる。
【0038】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、生体信号検出部に接続された不整脈検出部により、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出し、画像再生手段により、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生することができる。これにより、被検体の心臓等について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。従って、従来のように経験を積んだ医師等が長時間監視し続けることを要さず、診断効率を向上することができる。
【0039】また、上記画像再生手段により、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出すように制御することにより、上記不整脈の発生の前後の動態をスローモーションで表示することができる。従って、不整脈の動態をより詳しく観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図、
【図2】 生体信号検出部及び不整脈検出部の内部構成を示すブロック図、
【図3】 上記不整脈検出部における不整脈発生の検出動作を説明するためのフローチャート、
【図4】 制御部の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示の動作を説明するためのタイミング線図、
【図5】 不整脈発生から前へ遡る時間を指定する状態を示す説明図、
【図6】 不整脈発生の場合の画像表示の全体動作を説明するためのフローチャート、
【図7】 不整脈検出部の第二の実施例を示す内部構成のブロック図、
【図8】 正常心拍と不整脈とが略同時に発生している異常波形の発生状態を示す波形図、
【図9】 上記第二の実施例による不整脈検出部における不整脈発生の検出動作を説明するためのフローチャート、
【図10】 従来の超音波診断装置を示すブロック図、
【図11】 心電波形における正常心拍と不整脈の発生状態を示す波形図。
【符号の説明】
1…探触子、 2…超音波送受信回路、 3…A/D変換器、 4…シネメモリ、 5…スキャンコンバータ、 6…生体信号検出部、 7…D/A変換器、 8…画像表示器、 9…制御部、 12,12′…不整脈検出部、 S1…心拍間隔を示す信号、 S4…不整脈発生信号。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得る超音波診断装置に関し、特に被検体内の血管や心臓等の運動部位について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の超音波診断装置は、図10R>0に示すように、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段(1,2)と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次記録するシネメモリ部(3,4)と、このシネメモリ部からのディジタル信号を超音波ビームの1走査線又は複数の走査線ごとに書き込んで画像データを形成するスキャンコンバータ(5)と、上記被検体の生体波を検出して生体信号を生成すると共に上記シネメモリ部へ送出する生体信号検出部(6)と、上記スキャンコンバータから出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段(7,8)と、上記各構成要素の動作を制御する制御部(9)とを有して成っていた。なお、図10においては、上記生体信号検出部6の後段に、該生体信号検出部6から出力される生体信号を記録すると共にスキャンコンバータ5へ送出する生体情報メモリ10が設けられている。
【0003】そして、被検体の手や足などに接触された心電電極11を介して、上記生体信号検出部6で心電波形や心音波形、或いは脈波信号などを検出し、生体情報メモリ10及びスキャンコンバータ5の処理により、上記波形や信号の情報をリアルタイムで画像表示器8の画面に表示するようになっていた。ここで、例えば心電波形について見ると、図11に示すように、正常な心収縮の心拍波形W1,W2,W3,…が略等間隔tで順次発生し、途中で異常な心室性期外収縮による不整脈の波形Zが発生することがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の超音波診断装置においては、図11に示すような心電波形を検出し、それをリアルタイムで画像表示することはできても、それらの波形のうちいずれが異常な心室性期外収縮の不整脈の波形Zであるかを検出する機能は有していなかった。従って、従来は、常に画像表示器8の画面に表示される心電波形を監視しながら、不整脈の波形Zと思われる波形を発見したら適当な時相で画像をフリーズし、その後シネ再生を行って再び心電波形を観察するという一連の手動ルーチンを行わなければならなかった。この場合、上記不整脈の波形Zのような異常な心室性期外収縮の動態を観察するには、経験を積んだ医師等が長時間図11に示すような心電波形を監視しつつ超音波画像を撮りつづける必要があり、診断効率が低下するものであった。また、被検体の体位、呼吸性変動等によっては、得られた超音波画像が不明瞭であることがあるので、正確な診断を行うためには上記の一連の手動ルーチンを何度も繰り返さなければならないことがあった。
【0005】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、被検体内の血管や心臓等の運動部位について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による超音波診断装置は、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次複数画像分記録するメモリ部と、上記被検体の生体波信号を上記断層像データと対応付けて検出する生体信号検出部と、上記メモリ部から出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段と、上記各構成要素の動作を制御する制御部とを有する超音波診断装置において、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部と、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する画像再生手段を設けたものである。
【0007】また、上記画像再生手段は、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを前記画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出し、スローモーション表示をするように制御するものとしてもよい。
【0008】さらに、上記画像再生手段は、前記不整脈を検出したときには、断層像の表示をフリーズし、その後上記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡って画像データを読み出し、この画像データをスローモーションで画像表示し、さらに上記画像のフリーズを解除するという一連の動作を繰り返し行うように制御するものとしてもよい。
【0009】
【作用】このように構成された超音波診断装置は、生体信号検出部に接続された不整脈検出部により、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出し、画像再生手段により、不整脈発生信号が入力すると、その不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する。これにより、被検体の心臓等について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。
【0010】また、上記画像再生手段により、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出すように制御することにより、上記不整脈の発生の前後の動態をスローモーションで表示することができる。従って、不整脈の動態をより詳しく観察することができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得るもので、図に示すように、探触子1と、超音波送受信回路2と、A/D変換器3と、シネメモリ4と、スキャンコンバータ5と、生体信号検出部6と、生体情報メモリ10と、D/A変換器7と、画像表示器8と、制御部9とを有し、さらに不整脈検出部12を備えて成る。
【0012】上記探触子1は、機械的または電子的にビーム走査を行って被検体に超音波を送信及び受信するもので、図示省略したがその中には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する複数の振動子が内蔵されている。超音波送受信回路2は、上記探触子1に対して駆動パルスを送出して超音波を発生させると共に受信した反射エコーの信号を処理するもので、図示省略したがその中には、探触子1から被検体へ送波する超音波ビームを形成するための公知の送波パルサ及び送波遅延回路と、上記探触子1の各振動子で受信した反射エコー信号を増幅する受波増幅器と、上記受信した各反射エコー信号の位相を揃えて加算し受波の超音波ビームを形成する受波遅延回路及び加算器等から成る整相回路とが内蔵されている。そして、これら探触子1と超音波送受信回路2とで超音波送受信手段を構成しており、上記探触子1で超音波ビームを被検体の体内で一定方向に走査させることにより、1枚の断層像を得るようになっている。
【0013】前記A/D変換器3は、上記超音波送受信回路2からの反射エコー信号を入力してディジタル信号に変換するものである。シネメモリ4は、上記A/D変換器3から出力されるディジタル信号を入力し、運動組織を含む被検体内の生の断層像データを時系列に複数枚順次記録するもので、例えば半導体メモリから成る。そして、これらA/D変換器3とシネメモリ4とでシネメモリ部を構成している。
【0014】前記スキャンコンバータ5は、上記シネメモリ4から出力されたディジタル信号を超音波ビームの1走査線又は複数の走査線ごとにラインメモリに書き込んで画像データを形成し、後述のD/A変換器7へ送出するものである。
【0015】前記生体信号検出部6は、被検体の例えば心電波形などの生体波を検出して生体信号を生成するもので、その内部構成は図2に示すようになっている。すなわち、被検体の手や足などに接触された心電電極11でとらえた心拍信号を入力して増幅する増幅器13と、この増幅器13からの出力信号を入力して図11に示す心拍波形W1,W2,W3,…のR波頂点の信号を検出するR波検出回路14と、一定時間間隔のクロック信号を発生するクロック発生器15と、上記R波検出回路14からのR波信号を入力すると共にクロック発生器15からのクロック信号を入力して上記R波信号の発生間隔を計測する計数回路16とから成る。そして、この生体信号検出部6からの生体信号は、図1においては、生体情報メモリ10へ送出され、例えば図11に示すような心電波形として記録されるようになっている。
【0016】また、D/A変換器7は、前記スキャンコンバータ5から出力された画像データをアナログビデオ信号に変換するものであある。さらに、画像表示器8は、上記D/A変換器7からのアナログビデオ信号を入力してテレビ表示方式により画像として表示するもので、例えばテレビモニタから成る。そして、これらD/A変換器7と画像表示器8とで、前記スキャンコンバータ5から出力された画像データを表示する画像表示手段を構成している。なお、制御部9は、上記の各構成要素の動作を制御するもので、例えば中央処理装置(CPU)から成る。
【0017】ここで、本発明においては、上記生体信号検出部6と制御部9との間に、不整脈検出部12が設けられている。この不整脈検出部12は、上記生体信号検出部6から出力される生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出するもので、その内部構成は図2に示すようになっている。すなわち、前記計数回路16から出力される現在のR波信号の発生間隔(すなわち心拍間隔)を示す信号S1及び後述の平均値演算器18から出力される過去の平均値を示す信号S2を記録する記録回路17と、上記計数回路16から出力された今までのR波信号の発生間隔のデータを入力し平均値を演算して上記記録回路17へ出力する平均値演算器18と、上記記録回路17から出力される現在の心拍間隔のデータD1及び過去の心拍間隔の平均値データD2を入力して比較し両者が異なっているときは比較信号S3を発生する比較器19と、この比較器19からの比較信号S3を入力することにより不整脈の発生を認知して不整脈発生信号S4を出力する制御回路20とから成る。
【0018】また、上記制御部9は、上記検出された不整脈発生信号S4を入力して所定時間後に画像をフリーズし、その不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相から上記フリーズした時相までの間画像データを再生するように制御する画像再生手段とされている。
【0019】次に、上記のように構成された不整脈検出部12における不整脈発生の検出動作について説明する。まず、図11に示すように、一般に、正常収縮による心拍は、波形W1,W2,W3,…のように略等間隔tで発生し、多くても±10%程度しか変動が無いとされている。ところが、心室性期外収縮による不整脈の波形Zは、上記正常な心拍の間に発生し、その間隔t′はtとは大幅に異なっている。そこで、本発明による不整脈検出部12は、心拍間隔が略一定の場合は正常心拍と判断し、心拍間隔が大幅に変動したときは不整脈が発生したと検出するものである。
【0020】以下に、図3に示すフローチャートを参照して一連の動作を説明する。まず、図2において、生体信号検出部6内の計数回路16から出力される現在の心拍間隔の信号S1を入力し、不整脈検出部12内の記録回路17に記録する(図3のステップA)。このとき、上記記録回路17には、過去に入力した心拍間隔の信号S1から演算した心拍間隔の平均値の信号S2が記録されている。次に、上記記録回路17から現在の心拍間隔のデータD1と過去の心拍間隔の平均値データD2とを読み出し、比較器19へ入力して両者を比較し、心拍間隔の平均値と同じか否か判定する(ステップB)。ここで、現在の心拍間隔(例えば図11に示すt′)が過去の心拍間隔の平均値と異なるときは、不整脈が発生している場合であり、ステップBは“NO”側へ進む。すると、上記比較器19は比較信号S3を出力し、この比較信号S3は制御回路20へ入力する。これにより、上記制御回路20は、不整脈が発生したことを認知し、不整脈発生信号S4を出力し(ステップC)、図1に示す制御部9へ送出する。
【0021】一方、現在の心拍間隔(例えば図11に示すt)が過去の心拍間隔の平均値と同じときは、正常心拍の場合であり、上記ステップBは“YES”側へ進む。このときは、上記比較器19からは比較信号S3は出力されない。そして、平均値演算器18で今回の心拍間隔の信号S1を入力して加算し、最新の平均値を算出する(ステップD)。次に、この求めた心拍間隔の平均値の信号S2を上記記録回路17へ送出し、記録する(ステップE)。そして、上記ステップAに戻り、次なるタイミングの心拍間隔の信号を入力する。以下、上記の手順を繰り返せばよい。
【0022】次に、本発明における制御部9の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、図1に示す生体情報メモリ10に順次記録されて行く心電波形(同図(a)参照)と、この心電波形の各心時相に対応して断層像データが記録されて行くシネメモリ4の状態(同図(b)〜(f)参照)とを示している。また、図5は、上記シネメモリ4及び生体情報メモリ10からそれぞれのデータを読み出して、断層像Iと心電波形とを画像表示器8に同時に表示している状態を示している。実際には、図4(a)に示す心電波形には、画像の1フレームについての心電波形上の位置、すなわち心時相を示す情報が含まれている。この場合、フレーム開始信号は、シネ再生を行うときの1フレーム毎の画像を1フレーム完成させるための時間毎で区切っている。
【0023】まず、図4(a)に示す心電波形において、ある正常な心拍波形W1の後に不整脈波形Zが発生したとすると、図1に示す不整脈検出部12から基準となる不整脈発生信号S4が出力され、制御部9を介して生体情報メモリ10に記録されると共に、シネメモリ4にも入力して図4(c)に示すように不整脈発生の番地Ad0、例えば“52”が指定される。この状態では、上記シネメモリ4は引き続いて断層像データを記録し、図4(d)に示すように、予め設定された所定時間t1後に相当する番地Ad1、例えば“59”で画像をフリーズする。すなわち、図4(b)に示すシネメモリにおいて、不整脈発生の後、メモリ書込みアドレスを“52”から“59”まで進める。なお、上記不整脈発生後から画像をフリーズするまでの時間t1は任意に設定すればよい。
【0024】次に、図4(e)に示すように、上記の不整脈発生より前へ予め設定された所定時間t2に相当する番地Ad2、例えば“48”まで遡って画像再生の開始を指定する。このときの不整脈発生より前へ遡る時間t2の指定は、次のようにして行えばよい。例えば図5に示すように、不整脈波形Zが発生した心電波形を一旦生体情報メモリ10に取り込んでフリーズした後、図示省略のトラックボール、ジョイスティック等の入力装置の操作により、画像再生を開始する時相を示すトリガマーカMを心電波形上で適宜移動して、上記心電波形上にて不整脈波形Zの位置より例えば100ms前の時相に対応する位置を指定すればよい。或いは、キーボード又はその他のスイッチ等により、上記遡る時間t2を示す数値“100”を直接入力して指定してもよい。さらに、図1に示す制御部9内のメモリに記録されている不整脈波形と比較することにより、自動的に不整脈発生から遡って画像を再生する時相を算出して指定するようにしてもよい。
【0025】次に、上記のように指定された画像再生の開始の番地Ad2と前記のように指定されたデータ記録後の画像フリーズの番地Ad1との間で、図4(f)に示すように、時間t3の間だけ画像を例えばスローモーションで再生する。従って、シネメモリ4の例えば番地“48”から“59”までが画像再生される。これにより、不整脈の発生の前後の動態を例えばスローモーション表示で観察することができる。このようにして、図4(d)において不整脈の発生後に引き続き断層像データを記録した最終番地Ad1まで再生すると、図4(f)に示すように、上記の番地を画像再生の終了番地Ad3とし、この終了番地Ad3において画像のフリーズを解除して元の表示状態に戻る。
【0026】次に、上記の不整脈発生の場合の画像表示の全体動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図1に示す制御部9に対して、図4(e)に示す不整脈発生から所定時相t2だけ遡って画像再生をさせる番地Ad2を指定する(図6のステップ
【0027】上記制御部9に対して不整脈検出部12から不整脈発生信号S4が入力すると、不整脈が発生したと判定し、ステップ
【0028】一方、上記制御部9に対して不整脈検出部12から不整脈発生信号S4が入力しないときは、不整脈が発生していないと判定し、ステップ
【0029】以上の不整脈発生時の画像再生の動作を、画像表示器8の画面上でスローモーション表示をする場合について説明する。まず、図4(a)に示す心電波形において不整脈が発生するまでは、図1に示す画像表示器8にはリアルタイム画像が表示されているとする。そして、不整脈が発生したら、その不整脈による心収縮が完了する程度の時間、例えば400msの後に一旦画面はフリーズ状態になる。このとき、図1に示すシネメモリ4の中には、上記不整脈による心収縮の画像が総て記録されている。そして、画像診断に必要な画像は、上記不整脈が発生する例えば100ms前からその不整脈による心収縮が完了するまでである。従って、不整脈が発生する約100ms前からその不整脈の発生後約400msを経過するまでの心時相の区間を、総てスローモーション画像で表示すれば不整脈の動態を詳しく観察することができる。
【0030】そこで、例えば元の画像のフレームレイトが180フレーム/秒、すなわち毎秒180コマの超音波画像のデータがシネメモリ4に格納されているのであれば、テレビモニタから成る画像表示器8のフレームレイトは30フレーム/秒であるので、上記のようにして得た画像データを総て再生するためには、6倍のスローモーション表示である必要がある。従って、上記の場合は、不整脈の発生の前後約500msにわたる区間の画像データを、6倍の時間すなわち約3秒間かけてスローモーション表示することとなる。このようにして、例えば180フレーム/秒の元の画像データを約3秒間かけてスローモーション表示で再生した後、画面のフリーズ状態を解除する。すると、上記シネメモリ4は再び画像データの記録を続行し、画像表示器8にはリアルタイムの画像が再び表示される。
【0031】図7は本発明における不整脈検出部の第二の実施例を示す内部構成のブロック図である。この実施例による不整脈検出部12′は、次のような場合に適用するものである。すなわち、心電波形の不整脈には、図1111に示すような心拍間隔の変動が有るか無いかだけでは検出できないものがある。例えば、図8に示すように、正常心拍と不整脈とが略同時に発生している異常波形Z′が出現することがある。この場合は、心電波形上では正常心拍W1から異常波形Z′までの心拍間隔tは正常であるが、その波形は大幅に異なっている。このときは、前述の図2に示す実施例では、上記異常波形Z′を正常心拍として誤判定してしまう。また、図8において、その次の心拍W3は正常心拍であるが、上記の異常状態の影響により心拍間隔がt″と変動しており、前述の図2に示す実施例では、不整脈として誤判定してしまう。このような誤判定を無くすために、図7に示す第二の実施例を適用するのである。
【0032】図7において、第二の実施例による不整脈検出部12′は、生体信号検出部6内の増幅器13から出力される心電信号を記録する第一の生体信号メモリ21及び第二の生体信号メモリ22と、上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22に対して書込みアドレス又は読出しアドレスを設定するアドレス回路23と、このアドレス回路23のアドレス指定により上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22からそれぞれ読み出した心電信号の波形を比較する波形信号比較回路24と、これらの構成要素の動作を制御する制御回路20とから成る。
【0033】次に、このように構成された不整脈検出部12′における不整脈(図8に示す異常波形Z′)発生の検出動作について説明する。まず、生体信号検出部6内の増幅器13から出力される心電信号は、R波検出回路14に入力してその心電波形上のR波時相が検出されると共に、第一及び第二の生体信号メモリ21,22に入力して各心拍の収縮時相ごとに交互に記録される。このとき、上記R波検出回路14からの信号により、上記第一及び第二の生体信号メモリ21,22におけるアドレスが制御回路20に記録される。
【0034】次に、上記第一の生体信号メモリ21に記録されたある時相の心電波形と、第二の生体信号メモリ22に記録されたその次の時相の心電波形とを、制御回路20によりR波時相を合致させた状態で順次読み出し、波形信号比較回路24へ入力する。すると、上記波形信号比較回路24は、相前後する二つの波形を比較し、両波形データが略同様である場合は正常心拍であると判定し、その旨の信号を制御回路20に送出する。制御回路20は、その後通常のデータ収集を続行する。一方、上記の比較により、両波形データが大幅に異なっている場合は不整脈の発生であると判定し、不整脈発生信号S4を出力し、図1に示す制御部9へ送出する。
【0035】以下に、図9に示すフローチャートを参照して一連の動作を説明する。まず、図7において、不整脈検出部12′内の第一及び第二の生体信号メモリ21,22には、心電波形が交互に記録されている。ここで、あるタイミングにおいて、第二の生体信号メモリ22へある時相の心電波形を記録する(図9のステップA)。これと同時に、第一の生体信号メモリ21からはその1心拍前の心電波形を読み出し(ステップB)、波形信号比較回路24へ入力する。次に、上記第二の生体信号メモリ22から上記記録した現在の心電波形を読み出して波形信号比較回路24へ入力し、1心拍前の心電波形と現在の心電波形とを比較する(ステップC)。次に、上記二つの心電波形が異なるか否か判定する(ステップD)。ここで、二つの心電波形が略同様である場合は、“NO”側へ進み、正常心拍として処理する(ステップE)。
【0036】一方、上記二つの心電波形が大幅に異なる場合は、ステップDは“YES”側へ進み、次のステップFに入る。このステップFでは、今度は1心拍前の心電波形と現在の心電波形との間の心拍間隔が平均値と異なるか否か判定する。ここで、上記心拍間隔が平均値と略同じ場合は、“NO”側へ進み、正常心拍と不整脈との重複として処理する(ステップG)。一方、上記心拍間隔が平均値と異なる場合は、“YES”側へ進み、不整脈発生信号S4を出力し(ステップH)、図1に示す制御部9へ送出する。そして、この制御部9の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示の全体動作は、図6に示すフローチャートの手順によって流れる。
【0037】なお、図1においては、シネメモリ4以外に生体情報メモリ10を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、生体情報メモリ10を設けずに、生体信号検出部6からの生体信号をシネメモリ4の一部に記録するようにしてもよい。また、画像表示器8の画面には、その領域を二分割して一方にリアルタイム表示の画像を、他方にスローモーション表示の画像を並列して表示してもよい。さらに、本発明は、時系列に複数枚収集した断層像において、時相の異なる二つの画像間で差分演算し、被検体の運動部位等についてその動きの成分を抽出して表示する方式の超音波診断装置にも適用することができる。
【0038】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、生体信号検出部に接続された不整脈検出部により、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出し、画像再生手段により、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生することができる。これにより、被検体の心臓等について不整脈の発生を自動的に検出すると共にその不整脈の発生の前後の動態を直ちに観察することができる。従って、従来のように経験を積んだ医師等が長時間監視し続けることを要さず、診断効率を向上することができる。
【0039】また、上記画像再生手段により、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出すように制御することにより、上記不整脈の発生の前後の動態をスローモーションで表示することができる。従って、不整脈の動態をより詳しく観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図、
【図2】 生体信号検出部及び不整脈検出部の内部構成を示すブロック図、
【図3】 上記不整脈検出部における不整脈発生の検出動作を説明するためのフローチャート、
【図4】 制御部の動作制御による不整脈発生の場合の画像表示の動作を説明するためのタイミング線図、
【図5】 不整脈発生から前へ遡る時間を指定する状態を示す説明図、
【図6】 不整脈発生の場合の画像表示の全体動作を説明するためのフローチャート、
【図7】 不整脈検出部の第二の実施例を示す内部構成のブロック図、
【図8】 正常心拍と不整脈とが略同時に発生している異常波形の発生状態を示す波形図、
【図9】 上記第二の実施例による不整脈検出部における不整脈発生の検出動作を説明するためのフローチャート、
【図10】 従来の超音波診断装置を示すブロック図、
【図11】 心電波形における正常心拍と不整脈の発生状態を示す波形図。
【符号の説明】
1…探触子、 2…超音波送受信回路、 3…A/D変換器、 4…シネメモリ、 5…スキャンコンバータ、 6…生体信号検出部、 7…D/A変換器、 8…画像表示器、 9…制御部、 12,12′…不整脈検出部、 S1…心拍間隔を示す信号、 S4…不整脈発生信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次複数画像分記録するメモリ部と、上記被検体の生体波信号を上記断層像データと対応付けて検出する生体信号検出部と、上記メモリ部から出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段と、上記各構成要素の動作を制御する制御部とを有する超音波診断装置において、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部と、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する画像再生手段を設けたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 上記画像再生手段は、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを前記画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出し、スローモーション表示をするように制御するものとしたことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】 上記画像再生手段は、前記不整脈を検出したときには、断層像の表示をフリーズし、その後上記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡って画像データを読み出し、この画像データをスローモーションで画像表示し、さらに上記画像のフリーズを解除するという一連の動作を繰り返し行うように制御するものとしたことを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項1】 被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号をディジタル化し運動組織を含む被検体内の断層像データを時系列に順次複数画像分記録するメモリ部と、上記被検体の生体波信号を上記断層像データと対応付けて検出する生体信号検出部と、上記メモリ部から出力された画像データを取り込んでアナログ変換し断層像として表示する画像表示手段と、上記各構成要素の動作を制御する制御部とを有する超音波診断装置において、上記生体信号検出部からの生体信号を入力して被検体における不整脈の発生を検出する不整脈検出部と、上記検出された不整脈発生信号を入力してその不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを再生するように制御する画像再生手段を設けたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 上記画像再生手段は、前記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡った時相からの画像データを前記画像表示手段の表示周期に同期させてその表示周期のn回(nは正の整数)に1回の割合で画像データを順次読み出し、スローモーション表示をするように制御するものとしたことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】 上記画像再生手段は、前記不整脈を検出したときには、断層像の表示をフリーズし、その後上記不整脈の発生時相より所定時相だけ遡って画像データを読み出し、この画像データをスローモーションで画像表示し、さらに上記画像のフリーズを解除するという一連の動作を繰り返し行うように制御するものとしたことを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【図1】
【図8】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図9】
【図11】
【図8】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開平5−184578
【公開日】平成5年(1993)7月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−23436
【出願日】平成4年(1992)1月14日
【出願人】(590004604)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【公開日】平成5年(1993)7月27日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)1月14日
【出願人】(590004604)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
[ Back to top ]