説明

超音波送受波器

【課題】従来の有底筒状ケースを用いた超音波送受波器において、外部応力により超音波送受波器が破損し、センサ特性の低下が懸念される恐れがある。
【解決手段】超音波送受波器において、有底筒状樹脂ケースの振動面に施す被膜のうち、ポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)を少なくとも1層設け、振動面に施す膜の総厚でも1.6mm以下とすることで超音波送受信性を確保した上で、外部応力を緩和し、センサ特性の低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波周波数帯の送信、受信により障害物等の検出を行う超音波送受波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の実施の形態に関わる超音波送受波器において、超音波送受波器を車のバンパー等に埋め込み設置し、車周辺の障害物を検出しようとした場合、超音波送受波器にパルスバースト電気信号を入力することにより、超音波送受波器からその入力パルスバースト電気信号に応じた超音波信号が発振され、発振された超音波信号は障害物に到達し、障害物に当たった超音波信号は、その障害物で反射され、その反射された超音波信号の一部が同じ超音波送受波器に戻ってくる。超音波送受波器はその反射信号を受信することによって障害物を検出するバックセンサシステムに使用されている。
図4は、従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略断面図を表す。(a)は超音波振動子の正面図、(b)は右側面図、(c)は裏面図である。この超音波送受波器は、中空上のハウジングの中に充填物が充填されて構成されており、この充填物を取り除いた状態の側面断面図を図4(d)に示す。超音波送受波器10は、アルミニウムからなる導電性のハウジング11の中に圧電素子12を有して構成されている。ハウジング11の内部には、図1(b)に示すように、内部空間13が形成されており、ハウジング11における振動面11aの内側表面に圧電素子12が貼り付けられている。そして、この振動面11aの外側表面には、この振動面11aの表面全体を覆うように、樹脂製のフィルム14が貼り付けられている。樹脂製のフィルム14は、ポリウレタンからなる透明なフィルムであり、円形状に形成されているとともに、裏面に粘着材が塗布されている。また、ハウジング11の表面全体は所定の色(車両のバンパーと同色)に塗装されている。そのため、振動面11aの表面は、透明のフィルム14を解して、車両のバンパーと同色に見える。圧電素子12には、リード15の一端が半田付けされている。また、ハウジング11の内部側面には、リード15の他端が半田付けされている。これにより、ハウジング11を介して圧電素子12の両端に振動面11aを振動させる。尚、ハウジング11の内部空間13には、リード15の半田付けが行われた後、シリコン等の充填物が充填される。
【特許文献1】特許公報 特開2005−308639
【非特許文献1】谷腰欣司著 「超音波とその使い方−超音波送受波器・超音波モータ」 日刊工業新聞 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超音波送受波器により障害物の検出する装置においてバックセンサシステムとして車等に備え付けた際に、小石の接触等の外部応力により超音波送受波器が破損し、超音波の送信出力効率の低下、残響時間延長及び励振応答悪化の原因となっていた。また、公開特許公報特開2005−308639では、樹脂製のフィルムを接着剤を用いて貼り付けて、腐食し難い構造にしているが、経年変化によりフィルムが剥がれてしまうという問題点がある。さらに、フィルム厚について規定されていないが、フィルム厚が厚くなると、超音波振動特性に影響を及ぼし、送受信ができなるなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を構成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器の振動面に施す被膜のうち、ポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)を少なくとも1層設けるが、振動面に施す被膜の総厚は1.6mm以下とすることにより、超音波の送受信特性を確保した上で、外部応力を緩和させる。弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)はポアッソン比0.45〜0.49の範囲のものが振動の抑制が少なく、機械的な防傷効果が高いが、厚さ0.1mm未満では防傷効果が小さく、また振動面に施す被膜の総厚が1.6mmより厚くなると、超音波振動特性への影響が大きく、送受信が困難になる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は超音波送受波器に対する外部応力を緩和し、耐久性を高めるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明の実施の形態の関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図1において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に接着剤3で圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面と圧電素子1から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付けして取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、圧電素子1と入出力リード5a及び5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に発泡シリコン等から成る吸音材6を載置して、その上からシリコン材等から成る封止剤4を有底筒状ケース2内部に充填する。有底樹脂ケース2の振動面にポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)からなる被覆材7で被覆し構成する。
図2に本発明の別の実施の形態の関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図2において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に接着剤3で圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面と圧電素子1から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付けして取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、圧電素子1と入出力リード5a及び5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に発泡シリコン等から成る吸音材6を載置して、その上からシリコン材等から成る封止剤4を有底筒状ケース2内部に充填する。有底樹脂ケース2の振動面に下地塗装として電着塗装などの被覆材8で被覆し、その上からポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)からなる被覆材7で被覆し構成する。被覆材7と被覆材8の膜厚の合計は1.6mm以下とする。
図3に本発明の別の実施の形態の関わる超音波送受波器の概略縦断面図を表す。図3において、アルミニウム材等から成る有底筒状ケース2の底面内部に接着剤3で圧電素子1を貼り合わせ、ユニモルフ振動子を構成する。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側の反対面と圧電素子1から入出力リード5a、又、有底筒状ケース2から入出力リード5bを半田付けして取り出す。圧電素子1の有底筒状ケース2との接着面側と有底筒状ケース2とは電気的に接続されており、圧電素子1と入出力リード5a及び5bとは電気的に接続されている。圧電素子1の上面に発泡シリコン等から成る吸音材6を載置して、その上からシリコン材等から成る封止剤4を有底筒状ケース2内部に充填する。有底樹脂ケース2の振動面に下地塗装として電着塗装などの被覆材8で被覆し、その上からポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)からなる被覆材7で被覆し、さらに意匠性を確保するためのアクリル樹脂等で構成された被覆材9を被覆し構成する。被覆材7と被覆材8と被覆材9の膜厚の合計は1.6mm以下とする。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明は、車のバックセンサシステムのみならず、防滴型超音波送受波器が利用されている様々な分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図2】本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図3】本発明の別の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略縦断面図
【図4】従来の実施の形態に関わる超音波送受波器の概略断面図
【符号の説明】
【0009】
1 圧電素子
2 有底筒状ケース
3 接着剤
4 封止材
5a 入出力リード
5b 入出力リード
6 吸音材
7 被覆材
8 被覆材
9 被覆材
10 超音波送受信器
11 ハウジング
11a 振動面
12 圧電素子
13 内部空間
14 フィルム
15 リード
16 充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状ケースの底面内部に圧電素子を貼り合わせてユニモルフ振動子を構成し、この振動体のケース外側面にて超音波の送信、受信を行う超音波送受波器において、振動面に施す被膜のうち、ポアッソン比0.45〜0.49、厚さ0.1mm以上1.5mm以下の弾力性のある高分子系物質(シリコン、ウレタン、合成ゴム等)を少なくとも1層設けるが、振動面に施す被膜の総厚は1.6mm以下とし、外部応力を緩和する被膜を構成することを特徴とする超音波送受波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306315(P2008−306315A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149769(P2007−149769)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】