説明

超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法。

【課題】超高圧洗浄による、コンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層の剥離・剥落の防止を目的とした下地処理工法の施工管理法は、超高圧洗浄機のノズルの操作法についての管理基準や超高圧洗浄機によるコンクリート躯体面への切削疵の程度に対する管理基準を基にした施工管理法が一般的だが、この基準では、作業者の技量に左右されることが多く、切削疵の状態(深さや幅)を明確に把握した基準とは言いがたい。特に運行速度の基準においては作業者が切削疵具合で判断しながら作業しているのが実情で、的確な認定基準にはなりにくく、品質ミスを発生させる可能性が指摘されている。そこで本発明は、品質ミスをできるだけ排除する施工管理法を提供することを課題とする。
【解決手段】光沢度試験方法に基づいて製作された品質合格仕上げサンプルを作業者と施工者と発注者のそれぞれ3者が所持し、当該サンプルに基づいて同心円的な重複管理をすることにより、従来の施工管理法に比べて、はるかに客観的かつ可視的な判定基準を提供でき、品質ミスの発生の可能性を大幅に低減できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁面の下地処理の管理法に係わり、超高圧洗浄によってコンクリート躯体表面に粗面を形成させコンクリート躯体と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層との圧着力を高めることによって、コンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル張付けモルタル層の剥離・剥落を防止することを目的とする施工管理法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層が剥離・剥落するのは、コンクリート躯体表面と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層の界面がほとんどである。そこで、耐震対策等に係わるコンクリート躯体におけるモルタル層の剥離・剥落の防止策のひとつとして、コンクリート打設後のコンクリート躯体表面に超高圧水を利用して粗面を形成させ躯体とモルタル層との圧着力を高める工法が提供されているが、現在その施工に対する管理法としては、超高圧洗浄機のノズルの操作法についての管理基準、そして超高圧洗浄機によるコンクリート躯体面への切削疵の程度に対する管理基準を基にした施工管理法が提案されている。例えば、コンクリート躯体面へのノズルの運行速度の基準や、超高圧水の圧力の基準、そしてコンクリート躯体面への切削疵本数の基準といった管理法によって、コンクリート躯体表面とモルタル層との剥離・剥落の防止を図るなど、様々な工法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在行われている超高圧洗浄管理法における基準の多くは、ノズルの運行速度は2〜3分/m、超高圧力は150Mpa以上、そして切削疵本数は1〜2本/cm、といった方式を採用している。しかしながら、この基準は、作業方法に関する施工基準であって、作業者の技量に左右されることが多く、切削疵の状態(深さや幅)を明確に把握した基準とは言いがたい。特に運行速度の基準においては作業者が切削疵具合で判断しながら作業しているのが実情で、的確な認定基準にはなりにくく、品質ミスを発生させる可能性が指摘されている。そこで本発明は、客観的で可視的な方式を採用し品質ミスをできるだけ排除する施工管理法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、超高圧洗浄機による下地処理工事の品質を一連のシステム化された管理方法で確保することを提供した。すなわち従来の施工管理法では、作業方法の施工基準が提供されているだけであって、客観的および可視的な施工基準が示されていなかった。そこで、本発明は、これらの基準を一連のシステム化された管理方法で確保することで、品質ミスをできるだけ排除する施工管理法を提供した。
請求項2の発明は、作業者と施工者と発注者の3者が同心円的な重複管理により、品質ミスを未然に防ぐことを目的とした管理方法を提供した。すなわち、従来の施工管理法では、作業者、管理者、そして発注者それぞれが、経験則や目視・触診に頼った判断を行ってきたのが実情で、品質判断ミスの可能性は排除できなかった。本発明は、客観的で可視的な基準を用いた同心円的な重複管理により、品質ミスを未然に防ぐことを目的とした管理方法を提供した。
請求項3の発明は、あらかじめ製作された品質合格仕上げサンプルという可視的かつ客観的な基準を作業者と施工者と発注者のそれぞれ3者が所持し、当該サンプルに基づいて同心円的な重複管理によりそれぞれ同様の検査をするという管理方法を提供した。すなわち、ノズルの運行速度は2〜3分/m、超高圧水圧力は150Mpa以上、そして切削疵本数は1〜2本/cm、といった従来の管理方式だけでなく、合格サンプルの目視・触診と検査対象サンプルの目視・触診との比較を加えることによって、合否の判定を下すことで、より客観的な判断を下す管理方法を提供した。
請求項4の発明は、光沢度試験方法に基づいて製作された品質合格仕上げサンプルを検査基準として採用することによって、客観的で可視的な基準を確立し、品質ミスを未然に防ぐ管理法を提供した。光沢度試験法とは、タイル張りの剥離防止指標であるひずみ追従性試験後の接着界面破壊率と光沢度の関係から、下地処理後の光沢度を設定したものである。すなわち、コンクリート表面の凸凹をアルミ箔に型押しして写し取り、その光沢度を測定し、タイル下地の目あらし状態を定量化することによって、合否判断を可能な限り客観化かつ可視的化しようとするものである。当該試験方法に基づいて製作された品質合格仕上げサンプルを採用することにより、切削状態を当該サンプルと照合することによって、従来の目視・触診のみによる判断のブレをできるだけ防ぐことができる。
【発明の効果】
【0005】
以上の通り本発明によると、光沢度試験方法に基づいて製作された品質合格仕上げサンプルを作業者と施工者と発注者のそれぞれ3者が所持し、当該サンプルに基づいて同心円的な重複管理によりそれぞれ同様の検査をするという超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法は、従来の管理方法である、超高圧洗浄機のノズルの操作法についての管理基準、そして超高圧洗浄機によるコンクリート躯体面への切削疵の程度に対する管理基準を基にした施工管理法に比べて、はるかに客観的かつ可視的な判定基準を提供でき、品質ミスの発生の可能性を大幅に低減できた。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の実地の形態について説明する。
本発明の、超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法は、超高圧洗浄機、光沢度試験機、合格仕上げコンクリートサンプルから構成される。
まず、超高圧洗浄機を用いて、持ち運びが可能な適度な大きさのコンクリート片に多数の切削疵をつける。このコンクリート片の光沢度を、光沢度試験機を用いて計測する。光沢度の数値は、タイル張りの剥離防止指標であるひずみ追従性試験後の接着界面破壊率と光沢度の関係から設定されたものを用い、当該数値以下のコンクリート片を、品質合格仕上げサンプルとする。当該サンプルを限度見本とし、作業者と施工者と発注者のそれぞれ3者が同心円的な重複管理をする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高圧洗浄機によるタイル剥落もしくは剥離防止のためのコンクリート下地処理工事において、当該下地処理工事の品質を一連のシステム化された管理方法で確保することを特徴とした、超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法
【請求項2】
前記一連のシステム化された管理方法は、作業者と施工者と発注者の3者が同心円的な重複管理により、品質ミスを未然に防ぐことを目的とした管理方法で、当該管理方法により、前記下地処理工事の品質を確保することを特徴とした、請求項1にあるような超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法
【請求項3】
前記同心円的な重複管理は、あらかじめ製作された品質合格仕上げサンプルを作業者と施工者と発注者のそれぞれ3者が所持し、当該サンプルに基づいてそれぞれ同様の検査をするという重複検査をすることによって品質ミスを未然に防ぐという一連のシステム化された管理方法で、当該管理方法により前記下地処理工事の品質を確保することを特徴とした、請求項1にあるような超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法
【請求項4】
前記品質合格仕上げサンプルは、客観的管理が可能な光沢度試験方法に基づいて製作されたもので、当該サンプルを用いた前記管理方法によって品質ミスを未然に防ぐという前記下地処理工事の品質を確保することを特徴とした、請求項1にあるような超高圧洗浄によるコンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工事の施工管理法

【公開番号】特開2011−102519(P2011−102519A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273921(P2009−273921)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(505216771)
【出願人】(509171450)両備商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】