説明

足場用幅木

【課題】 H型建枠を使用した枠組足場に取り付けて作業安全性を高める足場用幅木を提供する。
【解決手段】 幅木本体2の両端側面2aの下端部に足場板Bの係止クランプBaへ上方より差し込んで係止させる略逆U字形状の係止金具3を軸着する。また、幅木本体の両端の上端部にはH型建枠に取り付けた筋交いCを挟持する一対の挟持体7、7’を有する挟持金具4を備える。そして、幅木1の係止金具3を足場板Bの係止クランプBaへ上方より差し込んだ後、挟持金具4の挟持体7、7’を起立状態としてH型建枠Aに取り付けた筋交いCを挟持することで幅木本体2を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築などの工事現場において、建築物の外壁などに沿って設置する枠組足場の足場板の周囲に取り付ける足場用幅木に関し、特にH型建枠から成る枠組足場に取り付けられる足場用幅木に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建枠及び足場板を組み上げて構築する枠組足場の足場板の両側面には、作業者の墜落防止などの作業安全を確保するために足場用幅木が取り付けられている。本出願人は前記幅木として、幅木本体の両端側面の下端部に略逆U字形状の係止金具を備え、該係止金具を足場板の係止クランプへ上方より差し込んで係止させると共に、幅木本体の両端の上端部に備えたフック金具を建枠の脚柱に引っ掛けて固定することで、足場板が横へずれ動いても足場板と幅木が一体となって動くことで足場板の側縁に隙間を生じさせない作業安全性の高い幅木を特許出願している。
【特許文献1】特開2006−22601号
【特許文献2】特開2006−161458号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の幅木は、幅木本体の両端の上端部に備えたフック金具を建枠の脚柱に引っ掛けて固定するようにしており、枠組足場用の建枠として広く使用されている鳥居形状をした建枠には取り付け可能である。しかしながら、鳥居形状をした建枠と異なる脚柱の中央部付近を横架材で接合して略H形状としたH型建枠に従来の幅木を取り付けようとすると、H型建枠では中央部付近の横架材に掛け渡した足場板を境として上下位置に筋交いをそれぞれ取り付ける構造となっており、従来幅木のフック金具の脚柱への引っ掛け位置に筋交い取付用の係止ピンが位置し、係止ピンや筋交いが邪魔になって取り付けができないものとなっている。
【0004】
本発明は上記の点に鑑み、H型建枠を使用した枠組足場に取り付けて作業安全性を高める足場用幅木を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の足場用幅木にあっては、H型建枠及び足場板を組み上げてなる枠組足場の足場板の周囲に取り付ける足場用幅木であって、幅木本体の両端側面の下端部に足場板の係止クランプへ上方より差し込んで係止させる略逆U字形状の係止金具を軸着すると共に、幅木本体の両端の上端部にはH型建枠に取り付けた筋交いを挟持して幅木本体を固定する挟持金具を備えたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る請求項2記載の足場用幅木にあっては、前記挟持金具は、幅木本体の両端の上端部に一対の挟持体をH型建枠に取り付けた筋交いに向けて起伏自在に軸着し、該挟持体を起立させた状態とすると前記筋交いを一対の挟持体にて挟持して幅木本体を固定する一方、挟持体を伏せた状態とすると固定を解除できる構成としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る請求項1記載の足場用幅木によれば、H型建枠及び足場板を組み上げてなる枠組足場の足場板の周囲に取り付ける足場用幅木であって、幅木本体の両端側面の下端部に足場板の係止クランプへ上方より差し込んで係止させる略逆U字形状の係止金具を軸着すると共に、幅木本体の両端の上端部にはH型建枠に取り付けた筋交いを挟持して幅木本体を固定する挟持金具を備えたので、H型建枠に取り付けた筋交いを利用して幅木本体を固定できると共に、この幅木を足場板に取り付ければ足場板と幅木との間に隙間が生じることはなく、高い作業安全性を確保できる。
【0008】
本発明に係る請求項2記載の足場用幅木によれば、挟持金具は、幅木本体の両端の上端部に一対の挟持体をH型建枠に取り付けた筋交いに向けて起伏自在に軸着し、該挟持体を起立させた状態とすると前記筋交いを一対の挟持体にて挟持して幅木本体を固定する一方、挟持体を伏せた状態とすると固定を解除できる構成としたので、一対の挟持体を起立させて筋交いを挟持することで幅木上部の横移動防止と幅木の上方向への抜け止め防止を行え、高い作業安全性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る足場用幅木によれば、幅木の下端部を足場板の係止クランプに係止して幅木と足場板とを一体化するために、幅木本体の両端側面の下端部に足場板の係止クランプへ上方より差し込んで係止させる略逆U字形状の係止金具を備える。また、幅木本体の両端の上端部にはH型建枠に取り付けた筋交いを挟持して固定する挟持金具を備える。該挟持金具は、幅木本体の両端の上端部に一対の挟持体をH型建枠に取り付けた筋交いに向けて起伏自在に軸着し、該挟持体を回動させて起立させた状態とするとH型建枠に取り付けた筋交いを一対の挟持体にて挟持して幅木本体を固定する一方、挟持体を回動させて伏せた状態とすると解除できる構成とする。
【0010】
そして、幅木を取り付けるときには、前記略逆U字形状の係止金具を足場板の係止クランプへ上方から差し込んで係止させて幅木本体の下端縁を足場板上面と近接または当接させて幅木と足場板の一体化を図る。次いで、幅木本体の上端部の挟持金具の一対の挟持体をH型建枠に取り付けた筋交い側に回動させて起立状態として筋交いを挟持させることで、幅木の設置を完了する。
【0011】
このように、上記幅木は、H型建枠間に掛け渡された筋交いを利用して取り付けるもので、幅木の下端部を足場板の係止クランプに係止させて足場板の側縁に立設して幅木と足場板を一体化すると共に、幅木の上端部を挟持金具にてH型建枠に取り付けた筋交いに挟持させるようにしたので、H型建枠を使用した枠組足場にも取り付け可能となり、また何かの拍子で足場板が左右にずれ動いたとしても足場と幅木が一体となって動くので足場板の側縁に隙間を生じることはなく、作業安全性が確保される。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の足場用幅木1の正面図及び側面図、図2は幅木1の一側部の斜視図、図3は図1のX−X矢視の一部切り欠き拡大図である。枠組足場は、図1のように、H型建枠Aを所定間隔にて立設し、隣接するH型建枠Aの横架材Aa間に足場板Bを掛け止めし、また隣接するH型建枠Aの脚柱Ab間に筋交いCを取り付けた構成としており、前記足場板Bに幅木1が取り付けられている。
【0014】
幅木1は、足場板Bと略同一長さの幅木本体2を主体とし、該幅木本体2の両端側面2aの下端部に足場板Bの係止クランプBaへ係止させる係止金具3を備えると共に、幅木本体2の両側の上端部にはH型建枠Aに取り付けた筋交いCを挟持する挟持金具4を備えている。
【0015】
前記係止金具3は、所定幅のスリット5を有する略逆U字形状の板状金具であり、幅木本体2の両端側面2aの下端部に軸体6にて揺動自在に軸着している。前記スリット5は足場板Bの係止クランプBaの厚みよりも若干幅広に形成しており、図1及び図2に示すように、このスリット5を係止クランプBaの基端部に上方より差し込んで係止できるようにしている。
【0016】
また、前記挟持金具4は、一対の挟持体7、7’を幅木本体2の上端縁2bの幅長さよりやや間隔を設けて平行に保ちながら連結体8で連結して一体化し、幅木本体2の上端縁2bに跨がせると共に、略J字形状に折曲形成した棒状金具9の棒状部9aを挟持体7、7’の透孔10a及びそれに合致する幅木本体2の透孔に貫通させて取り付け、棒状部9aを支点として一対の挟持体7、7’を図1及び図2の矢印で示すように、筋交いCに向けて起伏自在としている。なお、挟持金具4は一対の起立した挟持体7、7’にて筋交いCを挟持するようにしているが、挟持体7、7’の長さを適宜に設定することで、筋交いCの長さによって筋交いの取り付け勾配が多少変化しても挟持できるように対応しておくと良い。
【0017】
前記棒状金具9は、図3のように、棒状部9aにバネ体11を装着しながら止めピン12で係止し、バネ体11の復元力によって棒状金具9の係止部9bを内方に引き込むように付勢させている。そして、棒状金具9を掴んでバネ体11の復元力に抗して引っ張りながら係止部9bの係止を解除した状態で、図1及び図3のように、挟持体7、7’を起立方向に回動させると連結体8の側縁部が幅木本体2の上端縁2bに当接して起立状態を保ち、ここで係止部9bを挟持体7の透孔10b及びそれに合致する幅木本体2の透孔に挿入して係止することで挟持体7、7’が筋交いCを挟持した状態で固定される。
【0018】
また、挟持状態を解除するには、棒状金具9をバネ体11の復元力に抗して引っ張りながら係止部9bの係止を解除した状態で、挟持体7、7’を伏せる方向に回動させると連結体8が幅木本体2の上端縁2bに当接して図1(a)の二点鎖線で示すように伏せた状態となり、ここで係止部9bを挟持体7の透孔10c及びそれに合致するに幅木本体2の透孔に挿入して係止すれば伏せた状態で固定される。
【0019】
そして、上記幅木1を取り付けるときには、足場板B両端の係止クランプBaの基端部に幅木1両端の係止金具3のスリット5を上方よりそれぞれ差し込んで係止させる。次に、挟持金具4の棒状部9を掴んでバネ体11の復元力に抗して引っ張りながら、挟持体7、7’を回動して起立した状態とした後、棒状部9の係止部9bを挟持体7の透孔10b及びそれに合致する幅木本体2の透孔に挿入して係止すれば、挟持体7、7’にて筋交いCを挟持した状態となる。これによって、幅木1は、下方が足場板Bに、上方が筋交いCに挟まれた状態となって脱落することはない。
【0020】
また、幅木1を取り外すときには、前記取り付けとは逆に、挟持金具4の棒状部9を掴んでバネ体11の復元力に抗して引っ張りながら挟持体7、7’を伏せる方向に回動して幅木本体2の上端縁2bに伏した状態とした後、棒状部9の係止部9bを挟持体7の透孔10c及びそれに合致するに幅木本体2の透孔に挿入して係止すれば、幅木本体2の上端部の固定が解除できる。そして、そのままの状態で幅木1を持ち上げれば取り外すことができる。
【0021】
このように、幅木1は、H型建枠間に掛け渡された筋交いを利用して取り付けるもので、その下端部を足場板Bの係止クランプBaに係止して足場板Bの側縁に立設すると共に、幅木本体2の上端部に起伏自在に軸着した一対の挟持体7、7’にてH型建枠Aに取り付けた筋交いCを挟持して幅木本体2を固定するので、H型建枠Aを使用した枠組足場にも使用でき、高い作業安全性を確保できる。
【0022】
なお、本実施例では、挟持金具4として起伏自在に軸着した一対の挟持体7、7’を備えてH型建枠Aに取り付けた筋交いCを挟持するようにしたが、筋交いCを挟持する挟持金具4は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る足場用幅木の正面図(a)、側面図(b)である。
【図2】図1の一端部の斜視図である。
【図3】図1のX−X矢視の一部切り欠きした拡大図である。
【符号の説明】
【0024】
1…幅木 2…幅木本体
3…係止金具 4…挟持金具
5…スリット 7、7’…挟持体
8…連結体 9…棒状金具
9a…棒状部 9b…係止部
10a、10b、10c…透孔 11…バネ体
A…H型建枠 Aa…横架材
Ab…脚柱 B…足場板
Ba…係止クランプ C…筋交い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型建枠及び足場板を組み上げてなる枠組足場の足場板の周囲に取り付ける足場用幅木であって、幅木本体の両端側面の下端部に足場板の係止クランプへ上方より差し込んで係止させる略逆U字形状の係止金具を軸着すると共に、幅木本体の両端の上端部にはH型建枠に取り付けた筋交いを挟持して幅木本体を固定する挟持金具を備えたことを特徴とする足場用幅木。
【請求項2】
前記挟持金具は、幅木本体の両端の上端部に一対の挟持体をH型建枠に取り付けた筋交いに向けて起伏自在に軸着し、該挟持体を起立させた状態とすると前記筋交いを一対の挟持体にて挟持して幅木本体を固定する一方、挟持体を伏せた状態とすると固定を解除できる構成としたことを特徴とする請求項1記載の足場用幅木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−106437(P2008−106437A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287376(P2006−287376)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【出願人】(598104436)日工セック株式会社 (18)