足関節装具
【課題】装着が簡単で扱い易く、特に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有する足関節装具を提供する。
【解決手段】足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材1と、前記筒状部材の足底部7または側部から左右に延び、足甲部9上から下腿前部10上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段(例えば、スリット11)とを備えるものとする。
【解決手段】足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材1と、前記筒状部材の足底部7または側部から左右に延び、足甲部9上から下腿前部10上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段(例えば、スリット11)とを備えるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の各種疾患の予防または治療のために足関節に装着する医療用またはスポーツ用軟性装具に関する。
特に、麻痺によって足部が垂れ下がり不安定歩行になった容態で、いわゆる脳卒中片麻痺者を対象とし、躓きや捻りの予防、歩行時の床面からつま先までの高さ(トウクリアランス)確保補助のために足首に固定して用いられる医療用の軟性装具に関する。
【背景技術】
【0002】
足関節の疾患、障害には数々のものがある。外力による捻挫などの外傷、他の疾患(脳血管障害等)による麻痺等により足関節が不安定になってしまうことがある。このようなことの予防、治療のために多くの装具が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、足関節に簡便に装着でき、特に片手で装着できるような装具はなかった。
足関節に麻痺が発生してしまったケースでは、受傷した麻痺が比較的軽い場合、経時により麻痺度合いが回復基調やプラトーになるにつれて、硬性装具から軟性装具へ移行する。
【0004】
このときに使用される今までの軟性装具は、一般に足関節周囲をより強固に固定するため複数のベルトを使用し、2重、3重に患部を締め付けることが行われるが、片麻痺の患者が装着する場合、基本的に片手健側での操作となるため操作が煩雑になったり、不適切な位置にベルトを固定してしまう等の不具合が発生する。また、上記以外の疾患、捻挫などの治療、予防に使用される装具でも片手で装着するのは困難であった(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
また、装具装着の困難さというQOL面からの問題によって装具をつけなくなるため、床面から爪先までの高さが不良なままで不安定歩行が続くというリスクを伴うといった問題点があった(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−236811号公報(第1〜6頁、図3、図4)
【特許文献2】特開2006−305208号公報(第1〜3頁、図1)
【特許文献3】特開平11−9754号公報(第2〜3頁、図1、図2)
【特許文献4】特開平11−056940号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献5】特開昭61−113446号公報(第1頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、装着が簡単で扱い易く、特に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有する足関節用軟性装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段と、を備えることを特徴とする。
なお、前記クロスベルトは、2本の独立したベルトがそれぞれ筒状部材に固定されている構造であってもよいし、また足底部では連続している1本のベルトの一部が筒状部材の例えば足底部に固定されて、そこから足部の両側にそれぞれのベルトが延びている構造であってもよい。
【0009】
また、前記発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、前記挿通手段が、前記クロスベルトに設けられた貫通孔であることを特徴とする。さらに、前記挿通手段が、前記クロスベルト表面に設置された挿通部材であることを特徴とする。さらにまた、前記挿通手段が、前記筒状部材表面に設置された挿通部材であることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材で繋がっている構造を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記各発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材に固定できることが好ましい。
【0012】
さらに、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方に接続されていることが好ましい。
【0013】
さらに本発明の足関節装具は、伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材と、該筒状部材の足底部または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルトとを備えた足関節装具において、前記クロスベルトの少なくとも一方の部分にクロスベルトの長さ方向に沿ったスリットが設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分が通っており、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトを、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカンを通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方に接続されて、該クロスベルトと下腿ベルトが同時に引っ張れるようになっていることを特徴とする。
【0014】
また、前記各発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、クロスベルトおよび下腿ベルトの着脱する部分とそれに対応する筒状部材または/および下腿ベルトの接合する面同士に同色の材料を用いた、または着色を施したものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
クロスベルトが常に交差状態を保持してばらばらになることがなく、筒状部材から脱落することがないので容易に片手で装着することができる。また、クロスベルトは左右で張力のコントロールが可能であるため、症状の種類やその回復の段階に的確に対応することができる。さらに、クロスベルトがばらばらにならずに交差している構造がガイドの役割を果たすので、クロスベルト片が捩れや、曲がることなく片手で適度な締め付け感を下腿に加えて装着することができる。
従って、装着が簡単で扱い易く、特に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有する足関節用軟性装具が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1(a)〜図8に基づき、本発明の実施形態に関し、足関節装具の実施形態1〜7、足関節装具の装着方法の実施形態、足関節装具各部材の実施形態等について以下に述べる。各実施形態の共通部分には、同じ番号を用いて説明する。
【0017】
〔実施形態1〕
図1(a)〜図1(c)は、実施形態1に係るそれぞれ異なった構成の足関節装具の斜視図を示し、足関節を被覆する筒状部材1と、前記筒状部材の足底部7または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記ベルト2a,2bの前記交差部分においてベルト2a,2bが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段とを備える実施形態を示す。
前記ベルトを纏める挿通手段として、図1(a)ではスリット11を用いた例、図1(b)においては、分割ベルト16の間に設けられたスリット11を用いた例、図1(c)においは、孔15を用いた例を示す。なお、図1(a)〜図1(c)において、5はクロスベルト固定部、6a〜6cは面ファスナ、8は踵部、9は足甲部、10は下腿前部部分、12は下腿、13は足先を示す。
【0018】
図1(a)の実施形態によれば、足底部から左右に延びた2本のクロスベルトが分離しないように、少なくとも一方のクロスベルトにスリット11を設けガイドとし、そこに他方のクロスベルトを通して交差させる。このスリット11はクロスベルトの流れ方向に、もう一方のクロスベルトが交差して通せる十分な長さをもつ。なお、スリットは複数設けて、クロスベルトを複数のスリットに通してもよい。
【0019】
図1(b)の実施形態によれば、少なくとも一方のクロスベルトの一部に、該クロスベルトよりも幅の狭い複数の分割ベルト16,16を設け、もう一方のクロスベルトを複数の分割ベルトの間のスリット11を通して交差させる。分割ベルト同士は重なっていても、間隔があいていてもよい。
【0020】
図1(c)の実施形態によれば、一方のクロスベルト上にもう一方のクロスベルトが通るような孔15を少なくとも一か所以上設け、そこにもう一方のクロスベルトを通して交差させる。
【0021】
上記のような構造とすることにより、クロスベルトが常に8の字状にしやすい状態を保持してばらけることがなく、クロスベルトが脱落せずにつかみやすく、スリットや孔部を通るクロスベルトの捩れや、折れを防止することができるので容易に片手で装着することができる。即ち、片手装着可能の効果が得られる。
【0022】
また、装着時にスリットや孔が設けられたクロスベルトを下腿後部部分に至る方向に張力を与えるように筒状部材に巻き付け固定する際に、容易に片手で装着することができる。特に対象者が軽度片麻痺者や高齢者といった手先が不自由な人の場合は、取り扱う上で本装具の構造が有効である。
【0023】
さらに、クロスベルトとして、弾性変形が可能な部材を用いる(詳細は後述)ことにより、歩行支援機能が得られる。具体的には、歩行中の接地時には足関節の底屈を許し、離床時から次の接地時までは、足関節の背屈が補助されて、トウクリアランスの確保に寄与する。つまり、足の底背屈の動きを過度に制限することなく、本人の下肢機能を十分に発現させた歩行が可能となる。また、ある程度の足の動きが許容されるため、足関節の背屈が僅かにでも可能な人にとっては、その機能が許容される形で歩行が行えるため、損なわれた下肢の機能回復を促すリハビリにも繋がり、自然な歩行に近づくことをサポートする。
【0024】
更に、クロスベルトは左右で張力のコントロールが可能な構造であるため、症状の種類やその回復の段階に的確に対応することができる。強固な固定が必要な場合は、伸びにくいクロスベルトにすることも可能である。また、筒状部材にクロスベルトを仮止め可能にするよう、筒状部材、クロスベルトに面ファスナを設けると便利である。
【0025】
さらにまた、前述のように、それぞれのクロスベルト先端の面ファスナに異なる色を用い、クロスベルトを固定する部分にクロスベルトの面ファスナと同色の材料を用いれば、足背部に巻き付け固定する順序と、対応する接着部材とが明確になる。また、クロスベルト先端の面ファスナとクロスベルトを固定する部分に、同じ記号やマークを施したり、番号を表示することで、クロスベルトを下腿部に巻き付け固定する順序と、対応する接着部材とを明確にすることも可能である。
【0026】
さらに、装着した際、足底部に該当する部分の表面に滑り止め性を付与させるとよい。靴を履いても靴の中で装具がずれ難く、適切な支持、固定を保つことができる。また、靴を脱いだ状態では床面やスリッパとも滑り難くなり、不意の転倒を予防することができる。
【0027】
〔実施形態2〕
図2は、本発明に係る足関節装具の実施形態2の模式的斜視図であり、前記挿通手段が、クロスベルト表面に設置された挿通部材とした実施形態を示す。図2において、前記挿通部材は、ベルト通し14である。
【0028】
図2の実施形態によれば、一方のクロスベルト2b上にもう一方のクロスベルト2aが通るようなベルト通し14を設けてガイドとし、そこにもう一方のクロスベルト2aを通して交差させる。ベルト通しは単独でも複数あってもよい。
【0029】
〔実施形態3〕
図3は、本発明に係る足関節装具の実施形態3の模式的斜視図であり、前記挿通手段が、前記足甲部9から下腿前部部分10の表面に設置された挿通部材とした実施形態を示す。図3において、前記挿通部材は、筒状部材表面に設けたベルト通し14である。
【0030】
図3の実施形態によれば、筒状部材上の足甲部9から下腿前部部分10にクロスベルト2a,2bが通るようなベルト通し14を設けてガイドとし、そこに双方のクロスベルトを交差させて通す。このベルト通しは単独でも複数あってもよく、複数のベルト通しにそれぞれのクロスベルトが別々に通されてもよい。また、筒状部材にスリットを設けることによりベルト通しとしてもよい。
【0031】
〔実施形態4〕
図4は、本発明に係る足関節装具の実施形態4の模式的斜視図であり、前述のように、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材19,19で繋がっている構造を備える足関節装具の実施形態を示す。
【0032】
図4の実施形態によれば、クロスベルト2aと筒状部材における下腿後部部分18とを帯状または紐状の連結部材19でつなぎ、クロスベルト2bと筒状部材における下腿前上部18aとを帯状または紐状の連結部材19でつなぐ例を示す。なお、クロスベルトとつなぐ筒状部材は足甲部9、下腿前部部分10であってもよい。また、クロスベルト同士が同様に繋がれていてもよい。
【0033】
上記図2〜4の実施形態によれば、図1(a)〜図1(c)の実施形態の足関節装具と同様に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有するものが得られる。
【0034】
〔実施形態5〕
図5は、本発明に係る足関節装具の実施形態5の模式的斜視図であり、前述のように、筒状部材の下腿後部部分18に一方の端部が固定された下腿ベルト4をさらに備え、前記下腿ベルト4は固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材(図5では下腿後部部分18)に固定できるようにした足関節装具の実施形態を示す。
【0035】
上記図5の実施形態によれば、下腿ベルト4は伸縮性の基材を用いたベルト(詳細後述)で、筒状部材の下腿周径方向が固定される。下腿ベルト4は一方の端部が下腿後部部分18に固定され、下腿周径方向に一定距離離れた位置にカン3が設けられ、下腿ベルト4はカン3を通り、そのまま、固定された端部とは逆の方向に延びるか、または、カン3で折り返して、固定されている端部の方向に延ばされ、その自由端は下腿後部部分18または下腿ベルト4に固定される。なお、図5において、カン3は、下腿前上部18aにおいて、カン接合部17により接続されている。また、下腿ベルトの折り返し部分は筒状部材に設けた孔、筒状部材上に設けた帯状または紐状部材などを用いてもよい。
【0036】
下腿ベルトはクロスベルトよりも弱い力で伸縮できる基材を用いると、下腿により的確にフィットするので有利である。また、下腿ベルトが、カン等に通されていることで、カン等がガイドの役割を果たすので、ベルト片が捩れや、曲がることなく片手で適度な締め付け感を下腿に加えて装着することができる。特に本装具の対象者は、軽度片麻痺者や高齢者といった手先が不自由な方が多いため、この構造は有効である。
【0037】
〔実施形態6〕
図6は、本発明に係る足関節装具の実施形態6の模式的斜視図であり、前述のように、筒状部材の下腿後部部分に一方の端部が固定された下腿ベルト4をさらに備え、前記下腿ベルト4は固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方2aに接続されている足関節装具の実施形態を示す。
【0038】
下腿ベルト4の一端をクロスベルトの片方2aに固定することで、下腿ベルト4とクロスベルトの片方2aは、一緒に固定できるため、装着手順の簡略化につながる。
【0039】
〔実施形態7〕
本発明に係る足関節装具の実施形態7の模式的斜視図を図7(a)に示す。また、図7(a)の足関節装具を90°異なる方向から観た模式的斜視図を図7(b)に示す。図7(a)および図7(b)は、前述のように、伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材1と、該筒状部材の足底部7または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルト2a,2bとを備えた足関節装具において、前記クロスベルト2a,2bの一方2bにクロスベルトの長さ方向に沿ったスリット11が設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分2aが通っており、筒状部材の下腿後部部分18に一方の端部が固定された下腿ベルト4を、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカン3を通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方2aに接続されて、該クロスベルトと下腿ベルト4とが同時に引っ張れるようになっている足関節装具の実施形態を示す。
【0040】
なお、図7(a)に示す実施形態は、図6に示した実施形態と殆ど同じであるが、図7(a)の場合、下腿ベルト4に面ファスナ6dがある点で異なる。これにより、後述するように、クロスベルト2aの面ファスナ6aを下腿ベルト4の面ファスナ6dに仮止めすることにより、装着がより容易となる利点がある。
【0041】
ここで、図7(a)に基づいて、各種面ファスナ6a〜6dについて、その構成や接続関係等について述べる。6a,6bの面ファスナは、それぞれ、クロスベルト2a,2bの裏面にオス状に形成される。6cの面ファスナは、クロスベルト2aの表面にメス状に形成される。6dの面ファスナは、下腿ベルト4の表面にメス状に形成される。
上記により、クロスベルト2aの面ファスナ6aは下腿ベルト4の面ファスナ6dに接続可能となる。また、クロスベルト2bの面ファスナ6bは、クロスベルト2bを筒状部材上部後面20を回して、クロスベルト2aの面ファスナ6cに接続可能となる。なお、下腿後部部分18の生地をメス状としておくことにより、クロスベルト2aの面ファスナ6aは、下腿後部部分18に接続可能となる。
【0042】
〔装着方法の実施形態〕
次に、図7(a)および図7(b)に示した足関節装具を例として、足関節装具の装着方法について、以下に述べる(図7(a)〜図7(e)参照)。
【0043】
図7(a)および図7(b)に示した足関節装具では、踵部8を多方向に伸びる伸縮性生地、足甲部9から下腿前部部分10、ならびに下腿後部部分を一方向が伸縮性で直交する方向が難伸縮性生地、足底部7を難伸縮性生地で構成した筒状部材1に、クロスベルト2a,2bの一部が足底部7の内側で筒状部材1とクロスベルト固定部5で固定され、足底部7を通り足部の外側に設けられたベルト通し14a(図7(b)参照)を通り、一方のクロスベルト2bに設けられた該クロスベルトの長さ方向に沿ったスリット11を通り、双方のクロスベルトが足甲部9から下腿前部部分10で交差ししている。筒状部材1の下腿前部部分10には、一方の端部が固定された下腿ベルト4が、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカン3を通して折り返され、もう一方の端部が下腿ベルト4が固定されている側に延びているクロスベルト2aに接続されて、該クロスベルトと下腿ベルト4とが同時に引っ張れるようになっている。
【0044】
これを用いた装着方法は、以下のとおりである。
(1)全ての面ファスナを接着されていない状態にする(図7(a)、図7(b))。但し、下腿ベルト4が接続されている側のクロスベルト2aの面ファスナ6aは、下腿ベルト4の面ファスナ6dに仮止めをしておくと装着し易くなる。
(2)次に、図7(b)、図7(c)に示すように、ループ状の部材21を持ち、足関節装具に足を挿入する。
(3)次に、図7(d)に示すように、下腿ベルト4が接続されている側のクロスベルト2aを、下腿後部部分18に至る方向に張力を与えるように筒状部材1に巻き付けて面ファスナを接続する。
(4)最後に、図7(e)に示すように、スリット11が設けられている側のクロスベルト2bを、下腿後部部分18に至る方向に張力を与えるように筒状部材1に巻き付けて、クロスベルト2aの面ファスナ6cに、クロスベルト2bの面ファスナ6bを接続する。
【0045】
〔筒状部材の実施形態〕
次に、筒状部材の実施形態に関し、図8に基づいて述べる。図8は、図5もしくは図7(a)に係る足関節装具の筒状部材を示し、カン3を取り付けた状態を示す。
【0046】
筒状部材は、まっすぐな筒状でもよいが、L字型になっていると好ましい。踵部、足関節前面部など一部に開いている部分があってもよい。
【0047】
筒状部材は、天然繊維、化学繊維よりなる織布、編布、不織布、パイル生地や、フォーム材料などを単独または任意に選択組み合わせて形成することができる。その具体的な素材としては、例えば、綿、毛、ウール、レーヨン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の繊維を適宜組み合わせてなる、経編みまたは緯編み布のジャージ生地、パワーネットのような弾性糸混紡編物、ダブルラッシェル生地の立体編物等がある。さらに、これらの生地とゴム発泡体(クロロプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム 、イソプレンゴム等)、ウレタン発泡体(圧縮ウレタン)等のフォーム材料を積層した複合材料を用いることができる。
【0048】
また、表面生地がポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン等の素材でパイル状にしたものは面ファスナとして利用でき、筒状部材同士または筒状部材と他の部材間での着脱やそれらの位置調節に有利である。
【0049】
筒状部材は上述のような素材を連続した1枚の生地から形成することができるが、適当な大きさに裁断したものを縫製や接着によりつなぎ合わせて形成することもできる。
【0050】
特に、足関節は凹凸の多い部位であるため、体表面との追従性が必要であり、適度な圧迫性や操作性を向上させるために、伸縮性生地、難伸縮性生地を、部位の特徴や用途に合わせて適宜組み合わせて用いるのが好ましい。伸縮性生地は、一方向に伸びるものや、多方向に伸びるものが使用できる。難伸縮性生地は、何れの方向にも伸びにくい生地である。
【0051】
踵部8は、凹凸が多い部位で体表面との追従性が必要であることから、伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、多方向に伸びる伸縮性生地が、ズレや浮きの発生を抑制することができるため好適である。また、強い固定性が要求される場合には、一方向だけに伸縮性である生地、難伸縮性生地などを用いる。踵部8には、開口部を設けてもよい。
【0052】
足甲部9から下腿前部部分10は、対象者の身体的特性に対して柔軟に適応可能にするため、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、足甲部9から下腿前部部分10の周径方向に伸縮性がある方向を、タテ方向に難伸縮性の方向を持ってくる。
また、上記構成に代えて、周径方向にもタテ方向にも伸縮性がある生地を用いるが、周径方向よりタテ方向の方が伸び難いものを用いるようにしてもよい。
前記のような構成を用いることで、さまざまな足甲や下腿の周径に対して柔軟に適応可能であり、サイズ展開を最小限にとどめることができる。更に、靴下を履く如く容易に筒状部材に足を通すことができるといったメリットもある。
【0053】
下腿後部部分18は、足甲部9から下腿前部部分10と同様に、対象者の身体的特性に対して柔軟に適応可能にするため、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、下腿後部部分10の周径方向に伸縮性がある方向を、タテ方向に難伸縮性の方向を持ってくるとよい。
また、上記構成に代えて、周径方向にもタテ方向にも伸縮性がある生地を用いるが、周径方向よりタテ方向の方が伸び難いものを用いるようにしてもよい。
前記のような構成を用いることで、さまざまな下腿の周径に対して柔軟に適応可能であり、サイズ展開を最小限にとどめることができる。更に、タテ方向が伸びにくいので、挫屈せずに装着が可能となる。また、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性または相対的に伸縮しにくい生地を、装着時に手で持った際に筒状形態が保持される程度の剛軟性を有した生地にする、筒状部材の上端部またはその近傍に、周径方向に沿って、補助部材を付加するなどを行うと、筒状部材の上部に開口部分が保持され、足先が入り易くなって好適である。
上記の補助部材としては、種々の基材、プラスチックや金属のシートまたは線状物、樹脂(塗布または含浸)、流体を入れたチューブまたはパック、などを用いることができる。
【0054】
足底部7は、トウクリアランス確保をサポートする目的から、難伸縮性生地を用いるとよい。トウクリアランス確保は主にクロスベルトが担っているが、難伸縮性生地を用いることで、比較的重い足重量を支えながら、トウクリアランス確保をサポートするといった効果を発揮し得る。好ましくは、非伸縮性生地であり、トウクリアランス確保のサポートにより効果的である。
【0055】
筒状部材1の上部後面の上方には、ベロのような凸部、ループ状の部材、孔などを設けると、装着するときに指で掴んだり、指を引っ掛けたりしやすい。ループ状の部材、孔を設けた場合には、直接指を掛けられない場合でも、フック、紐などを掛けて引っ張ることができる。また、一般の靴が履けることも考慮すると用いる生地の最厚は5mm以下が好ましい。さらに、筒状部材を構成する上で、装着快適性を考慮すると通気性部材の生地を選択することが好ましい。さらにまた、足底部7の表面に滑り止め性を付与させるとよい。靴を履いても靴の中で装具がずれ難く、適切な支持、固定を保つことができる。また、靴を脱いだ状態では床面やスリッパとも滑り難くなり、不意の転倒を予防することができる。
【0056】
〔クロスベルト及び下腿ベルトの実施形態〕
クロスベルト、下腿ベルトは、弾性糸を入れた織物で伸縮性織りベルト、ポリウレタン、SIS等の不織布、ポリウレタン、合成ゴム(SBR、IR、アクリルゴム、シリコンゴム等)、天然ゴム等のゴム状弾性体等を使用した帯状、シート状、糸状のもので形成することができる。特に好ましくは、帯状のベルト部材を設置する方法で、ベルト部材の先端に面ファスナ等の係合手段を取り付け筒状部材と着脱自在にすることで、圧迫や固定の力を調節ができるようになる。
クロスベルトの、足関節部へのフィット性をよくするために、クロスベルトの設置を以下のようにすると好ましい。
(1)クロスベルト固定部において、筒状部材の足部の周径方向に対してクロスベルトの延ばす方向(下腿部分への方向)に角度をつけて設置する。または、筒状部材の足部の周径方向に対してクロスベルトを平行に延ばし、クロスベルト固定部の固定ラインをベルト幅方向に対して角度をつけてV字状とし、クロスベルトの伸縮する部分の幅方向に対して外側が長くなるようにする。即ち、V字の閉じた方を外側、開いた方を内側とする。
また、(2)クロスベルト端部に難伸縮性の部材を設ける、または、難伸縮性になるような加工を施し、クロスベルトの幅方向に対して外側の伸縮部分が長くなるようにしてもよい。さらに、(3)上記(1)と(2)を組み合わせて用いてもよい。
装着する足関節部の状態などにより、上記のうち適する手段を用いることができる。
また、クロスベルトの先端部にループ状の部材、孔などを設けると、装着するときに指を引っ掛けることで操作しやすくなる。また、直接指を掛けられない場合でも、フック、紐などを掛けて引っ張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1(a)】本発明に係る足関節装具の実施形態1の模式的斜視図。
【図1(b)】図1(a)とは異なる構成の実施形態1に係る足関節装具の模式的斜視図。
【図1(c)】図1(a)とはさらに異なる構成の実施形態1に係る足関節装具の模式的斜視図。
【図2】本発明に係る足関節装具の実施形態2の模式的斜視図。
【図3】本発明に係る足関節装具の実施形態3の模式的斜視図。
【図4】本発明に係る足関節装具の実施形態4の模式的斜視図。
【図5】本発明に係る足関節装具の実施形態5の模式的斜視図。
【図6】本発明に係る足関節装具の実施形態6の模式的斜視図。
【図7(a)】本発明に係る足関節装具の実施形態7の模式的斜視図。
【図7(b)】図7(a)の足関節装具を90°異なる方向から観た模式的斜視図。
【図7(c)】図7(a)および図7(b)に示した足関節装具を例として、足関節装具の装着手順を説明する図。
【図7(d)】図7(c)の次の装着手順を説明する図。
【図7(e)】図7(d)の次の装着手順を説明する図。
【図8】本発明に係る足関節装具の筒状部材の実施形態の模式的斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1:筒状部材、2a,2b:クロスベルト、3:カン、4:下腿ベルト、5:クロスベルト固定部、6a〜6d:面ファスナ、7:足底部、8:踵部、9:足甲部、10:下腿前部部分、11:スリット、12:下腿、13:足先、14,14a:ベルト通し、15:孔、16:分割ベルト、17:カン接合部、18:下腿後部部分、18a:下腿前上部、19:連結部材、20:筒状部材上部後面、21:ループ状の部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の各種疾患の予防または治療のために足関節に装着する医療用またはスポーツ用軟性装具に関する。
特に、麻痺によって足部が垂れ下がり不安定歩行になった容態で、いわゆる脳卒中片麻痺者を対象とし、躓きや捻りの予防、歩行時の床面からつま先までの高さ(トウクリアランス)確保補助のために足首に固定して用いられる医療用の軟性装具に関する。
【背景技術】
【0002】
足関節の疾患、障害には数々のものがある。外力による捻挫などの外傷、他の疾患(脳血管障害等)による麻痺等により足関節が不安定になってしまうことがある。このようなことの予防、治療のために多くの装具が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、足関節に簡便に装着でき、特に片手で装着できるような装具はなかった。
足関節に麻痺が発生してしまったケースでは、受傷した麻痺が比較的軽い場合、経時により麻痺度合いが回復基調やプラトーになるにつれて、硬性装具から軟性装具へ移行する。
【0004】
このときに使用される今までの軟性装具は、一般に足関節周囲をより強固に固定するため複数のベルトを使用し、2重、3重に患部を締め付けることが行われるが、片麻痺の患者が装着する場合、基本的に片手健側での操作となるため操作が煩雑になったり、不適切な位置にベルトを固定してしまう等の不具合が発生する。また、上記以外の疾患、捻挫などの治療、予防に使用される装具でも片手で装着するのは困難であった(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
また、装具装着の困難さというQOL面からの問題によって装具をつけなくなるため、床面から爪先までの高さが不良なままで不安定歩行が続くというリスクを伴うといった問題点があった(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−236811号公報(第1〜6頁、図3、図4)
【特許文献2】特開2006−305208号公報(第1〜3頁、図1)
【特許文献3】特開平11−9754号公報(第2〜3頁、図1、図2)
【特許文献4】特開平11−056940号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献5】特開昭61−113446号公報(第1頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、装着が簡単で扱い易く、特に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有する足関節用軟性装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段と、を備えることを特徴とする。
なお、前記クロスベルトは、2本の独立したベルトがそれぞれ筒状部材に固定されている構造であってもよいし、また足底部では連続している1本のベルトの一部が筒状部材の例えば足底部に固定されて、そこから足部の両側にそれぞれのベルトが延びている構造であってもよい。
【0009】
また、前記発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、前記挿通手段が、前記クロスベルトに設けられた貫通孔であることを特徴とする。さらに、前記挿通手段が、前記クロスベルト表面に設置された挿通部材であることを特徴とする。さらにまた、前記挿通手段が、前記筒状部材表面に設置された挿通部材であることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の足関節装具は、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材で繋がっている構造を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記各発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材に固定できることが好ましい。
【0012】
さらに、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方に接続されていることが好ましい。
【0013】
さらに本発明の足関節装具は、伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材と、該筒状部材の足底部または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルトとを備えた足関節装具において、前記クロスベルトの少なくとも一方の部分にクロスベルトの長さ方向に沿ったスリットが設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分が通っており、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトを、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカンを通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方に接続されて、該クロスベルトと下腿ベルトが同時に引っ張れるようになっていることを特徴とする。
【0014】
また、前記各発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、クロスベルトおよび下腿ベルトの着脱する部分とそれに対応する筒状部材または/および下腿ベルトの接合する面同士に同色の材料を用いた、または着色を施したものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
クロスベルトが常に交差状態を保持してばらばらになることがなく、筒状部材から脱落することがないので容易に片手で装着することができる。また、クロスベルトは左右で張力のコントロールが可能であるため、症状の種類やその回復の段階に的確に対応することができる。さらに、クロスベルトがばらばらにならずに交差している構造がガイドの役割を果たすので、クロスベルト片が捩れや、曲がることなく片手で適度な締め付け感を下腿に加えて装着することができる。
従って、装着が簡単で扱い易く、特に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有する足関節用軟性装具が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1(a)〜図8に基づき、本発明の実施形態に関し、足関節装具の実施形態1〜7、足関節装具の装着方法の実施形態、足関節装具各部材の実施形態等について以下に述べる。各実施形態の共通部分には、同じ番号を用いて説明する。
【0017】
〔実施形態1〕
図1(a)〜図1(c)は、実施形態1に係るそれぞれ異なった構成の足関節装具の斜視図を示し、足関節を被覆する筒状部材1と、前記筒状部材の足底部7または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記ベルト2a,2bの前記交差部分においてベルト2a,2bが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段とを備える実施形態を示す。
前記ベルトを纏める挿通手段として、図1(a)ではスリット11を用いた例、図1(b)においては、分割ベルト16の間に設けられたスリット11を用いた例、図1(c)においは、孔15を用いた例を示す。なお、図1(a)〜図1(c)において、5はクロスベルト固定部、6a〜6cは面ファスナ、8は踵部、9は足甲部、10は下腿前部部分、12は下腿、13は足先を示す。
【0018】
図1(a)の実施形態によれば、足底部から左右に延びた2本のクロスベルトが分離しないように、少なくとも一方のクロスベルトにスリット11を設けガイドとし、そこに他方のクロスベルトを通して交差させる。このスリット11はクロスベルトの流れ方向に、もう一方のクロスベルトが交差して通せる十分な長さをもつ。なお、スリットは複数設けて、クロスベルトを複数のスリットに通してもよい。
【0019】
図1(b)の実施形態によれば、少なくとも一方のクロスベルトの一部に、該クロスベルトよりも幅の狭い複数の分割ベルト16,16を設け、もう一方のクロスベルトを複数の分割ベルトの間のスリット11を通して交差させる。分割ベルト同士は重なっていても、間隔があいていてもよい。
【0020】
図1(c)の実施形態によれば、一方のクロスベルト上にもう一方のクロスベルトが通るような孔15を少なくとも一か所以上設け、そこにもう一方のクロスベルトを通して交差させる。
【0021】
上記のような構造とすることにより、クロスベルトが常に8の字状にしやすい状態を保持してばらけることがなく、クロスベルトが脱落せずにつかみやすく、スリットや孔部を通るクロスベルトの捩れや、折れを防止することができるので容易に片手で装着することができる。即ち、片手装着可能の効果が得られる。
【0022】
また、装着時にスリットや孔が設けられたクロスベルトを下腿後部部分に至る方向に張力を与えるように筒状部材に巻き付け固定する際に、容易に片手で装着することができる。特に対象者が軽度片麻痺者や高齢者といった手先が不自由な人の場合は、取り扱う上で本装具の構造が有効である。
【0023】
さらに、クロスベルトとして、弾性変形が可能な部材を用いる(詳細は後述)ことにより、歩行支援機能が得られる。具体的には、歩行中の接地時には足関節の底屈を許し、離床時から次の接地時までは、足関節の背屈が補助されて、トウクリアランスの確保に寄与する。つまり、足の底背屈の動きを過度に制限することなく、本人の下肢機能を十分に発現させた歩行が可能となる。また、ある程度の足の動きが許容されるため、足関節の背屈が僅かにでも可能な人にとっては、その機能が許容される形で歩行が行えるため、損なわれた下肢の機能回復を促すリハビリにも繋がり、自然な歩行に近づくことをサポートする。
【0024】
更に、クロスベルトは左右で張力のコントロールが可能な構造であるため、症状の種類やその回復の段階に的確に対応することができる。強固な固定が必要な場合は、伸びにくいクロスベルトにすることも可能である。また、筒状部材にクロスベルトを仮止め可能にするよう、筒状部材、クロスベルトに面ファスナを設けると便利である。
【0025】
さらにまた、前述のように、それぞれのクロスベルト先端の面ファスナに異なる色を用い、クロスベルトを固定する部分にクロスベルトの面ファスナと同色の材料を用いれば、足背部に巻き付け固定する順序と、対応する接着部材とが明確になる。また、クロスベルト先端の面ファスナとクロスベルトを固定する部分に、同じ記号やマークを施したり、番号を表示することで、クロスベルトを下腿部に巻き付け固定する順序と、対応する接着部材とを明確にすることも可能である。
【0026】
さらに、装着した際、足底部に該当する部分の表面に滑り止め性を付与させるとよい。靴を履いても靴の中で装具がずれ難く、適切な支持、固定を保つことができる。また、靴を脱いだ状態では床面やスリッパとも滑り難くなり、不意の転倒を予防することができる。
【0027】
〔実施形態2〕
図2は、本発明に係る足関節装具の実施形態2の模式的斜視図であり、前記挿通手段が、クロスベルト表面に設置された挿通部材とした実施形態を示す。図2において、前記挿通部材は、ベルト通し14である。
【0028】
図2の実施形態によれば、一方のクロスベルト2b上にもう一方のクロスベルト2aが通るようなベルト通し14を設けてガイドとし、そこにもう一方のクロスベルト2aを通して交差させる。ベルト通しは単独でも複数あってもよい。
【0029】
〔実施形態3〕
図3は、本発明に係る足関節装具の実施形態3の模式的斜視図であり、前記挿通手段が、前記足甲部9から下腿前部部分10の表面に設置された挿通部材とした実施形態を示す。図3において、前記挿通部材は、筒状部材表面に設けたベルト通し14である。
【0030】
図3の実施形態によれば、筒状部材上の足甲部9から下腿前部部分10にクロスベルト2a,2bが通るようなベルト通し14を設けてガイドとし、そこに双方のクロスベルトを交差させて通す。このベルト通しは単独でも複数あってもよく、複数のベルト通しにそれぞれのクロスベルトが別々に通されてもよい。また、筒状部材にスリットを設けることによりベルト通しとしてもよい。
【0031】
〔実施形態4〕
図4は、本発明に係る足関節装具の実施形態4の模式的斜視図であり、前述のように、少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルト2a,2bと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材19,19で繋がっている構造を備える足関節装具の実施形態を示す。
【0032】
図4の実施形態によれば、クロスベルト2aと筒状部材における下腿後部部分18とを帯状または紐状の連結部材19でつなぎ、クロスベルト2bと筒状部材における下腿前上部18aとを帯状または紐状の連結部材19でつなぐ例を示す。なお、クロスベルトとつなぐ筒状部材は足甲部9、下腿前部部分10であってもよい。また、クロスベルト同士が同様に繋がれていてもよい。
【0033】
上記図2〜4の実施形態によれば、図1(a)〜図1(c)の実施形態の足関節装具と同様に、片手で操作可能で、然も足関節にフィットしてしっかりと固定でき、かつ安定した歩行支援機能を有するものが得られる。
【0034】
〔実施形態5〕
図5は、本発明に係る足関節装具の実施形態5の模式的斜視図であり、前述のように、筒状部材の下腿後部部分18に一方の端部が固定された下腿ベルト4をさらに備え、前記下腿ベルト4は固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材(図5では下腿後部部分18)に固定できるようにした足関節装具の実施形態を示す。
【0035】
上記図5の実施形態によれば、下腿ベルト4は伸縮性の基材を用いたベルト(詳細後述)で、筒状部材の下腿周径方向が固定される。下腿ベルト4は一方の端部が下腿後部部分18に固定され、下腿周径方向に一定距離離れた位置にカン3が設けられ、下腿ベルト4はカン3を通り、そのまま、固定された端部とは逆の方向に延びるか、または、カン3で折り返して、固定されている端部の方向に延ばされ、その自由端は下腿後部部分18または下腿ベルト4に固定される。なお、図5において、カン3は、下腿前上部18aにおいて、カン接合部17により接続されている。また、下腿ベルトの折り返し部分は筒状部材に設けた孔、筒状部材上に設けた帯状または紐状部材などを用いてもよい。
【0036】
下腿ベルトはクロスベルトよりも弱い力で伸縮できる基材を用いると、下腿により的確にフィットするので有利である。また、下腿ベルトが、カン等に通されていることで、カン等がガイドの役割を果たすので、ベルト片が捩れや、曲がることなく片手で適度な締め付け感を下腿に加えて装着することができる。特に本装具の対象者は、軽度片麻痺者や高齢者といった手先が不自由な方が多いため、この構造は有効である。
【0037】
〔実施形態6〕
図6は、本発明に係る足関節装具の実施形態6の模式的斜視図であり、前述のように、筒状部材の下腿後部部分に一方の端部が固定された下腿ベルト4をさらに備え、前記下腿ベルト4は固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方2aに接続されている足関節装具の実施形態を示す。
【0038】
下腿ベルト4の一端をクロスベルトの片方2aに固定することで、下腿ベルト4とクロスベルトの片方2aは、一緒に固定できるため、装着手順の簡略化につながる。
【0039】
〔実施形態7〕
本発明に係る足関節装具の実施形態7の模式的斜視図を図7(a)に示す。また、図7(a)の足関節装具を90°異なる方向から観た模式的斜視図を図7(b)に示す。図7(a)および図7(b)は、前述のように、伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材1と、該筒状部材の足底部7または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルト2a,2bとを備えた足関節装具において、前記クロスベルト2a,2bの一方2bにクロスベルトの長さ方向に沿ったスリット11が設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分2aが通っており、筒状部材の下腿後部部分18に一方の端部が固定された下腿ベルト4を、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカン3を通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方2aに接続されて、該クロスベルトと下腿ベルト4とが同時に引っ張れるようになっている足関節装具の実施形態を示す。
【0040】
なお、図7(a)に示す実施形態は、図6に示した実施形態と殆ど同じであるが、図7(a)の場合、下腿ベルト4に面ファスナ6dがある点で異なる。これにより、後述するように、クロスベルト2aの面ファスナ6aを下腿ベルト4の面ファスナ6dに仮止めすることにより、装着がより容易となる利点がある。
【0041】
ここで、図7(a)に基づいて、各種面ファスナ6a〜6dについて、その構成や接続関係等について述べる。6a,6bの面ファスナは、それぞれ、クロスベルト2a,2bの裏面にオス状に形成される。6cの面ファスナは、クロスベルト2aの表面にメス状に形成される。6dの面ファスナは、下腿ベルト4の表面にメス状に形成される。
上記により、クロスベルト2aの面ファスナ6aは下腿ベルト4の面ファスナ6dに接続可能となる。また、クロスベルト2bの面ファスナ6bは、クロスベルト2bを筒状部材上部後面20を回して、クロスベルト2aの面ファスナ6cに接続可能となる。なお、下腿後部部分18の生地をメス状としておくことにより、クロスベルト2aの面ファスナ6aは、下腿後部部分18に接続可能となる。
【0042】
〔装着方法の実施形態〕
次に、図7(a)および図7(b)に示した足関節装具を例として、足関節装具の装着方法について、以下に述べる(図7(a)〜図7(e)参照)。
【0043】
図7(a)および図7(b)に示した足関節装具では、踵部8を多方向に伸びる伸縮性生地、足甲部9から下腿前部部分10、ならびに下腿後部部分を一方向が伸縮性で直交する方向が難伸縮性生地、足底部7を難伸縮性生地で構成した筒状部材1に、クロスベルト2a,2bの一部が足底部7の内側で筒状部材1とクロスベルト固定部5で固定され、足底部7を通り足部の外側に設けられたベルト通し14a(図7(b)参照)を通り、一方のクロスベルト2bに設けられた該クロスベルトの長さ方向に沿ったスリット11を通り、双方のクロスベルトが足甲部9から下腿前部部分10で交差ししている。筒状部材1の下腿前部部分10には、一方の端部が固定された下腿ベルト4が、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカン3を通して折り返され、もう一方の端部が下腿ベルト4が固定されている側に延びているクロスベルト2aに接続されて、該クロスベルトと下腿ベルト4とが同時に引っ張れるようになっている。
【0044】
これを用いた装着方法は、以下のとおりである。
(1)全ての面ファスナを接着されていない状態にする(図7(a)、図7(b))。但し、下腿ベルト4が接続されている側のクロスベルト2aの面ファスナ6aは、下腿ベルト4の面ファスナ6dに仮止めをしておくと装着し易くなる。
(2)次に、図7(b)、図7(c)に示すように、ループ状の部材21を持ち、足関節装具に足を挿入する。
(3)次に、図7(d)に示すように、下腿ベルト4が接続されている側のクロスベルト2aを、下腿後部部分18に至る方向に張力を与えるように筒状部材1に巻き付けて面ファスナを接続する。
(4)最後に、図7(e)に示すように、スリット11が設けられている側のクロスベルト2bを、下腿後部部分18に至る方向に張力を与えるように筒状部材1に巻き付けて、クロスベルト2aの面ファスナ6cに、クロスベルト2bの面ファスナ6bを接続する。
【0045】
〔筒状部材の実施形態〕
次に、筒状部材の実施形態に関し、図8に基づいて述べる。図8は、図5もしくは図7(a)に係る足関節装具の筒状部材を示し、カン3を取り付けた状態を示す。
【0046】
筒状部材は、まっすぐな筒状でもよいが、L字型になっていると好ましい。踵部、足関節前面部など一部に開いている部分があってもよい。
【0047】
筒状部材は、天然繊維、化学繊維よりなる織布、編布、不織布、パイル生地や、フォーム材料などを単独または任意に選択組み合わせて形成することができる。その具体的な素材としては、例えば、綿、毛、ウール、レーヨン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の繊維を適宜組み合わせてなる、経編みまたは緯編み布のジャージ生地、パワーネットのような弾性糸混紡編物、ダブルラッシェル生地の立体編物等がある。さらに、これらの生地とゴム発泡体(クロロプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム 、イソプレンゴム等)、ウレタン発泡体(圧縮ウレタン)等のフォーム材料を積層した複合材料を用いることができる。
【0048】
また、表面生地がポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン等の素材でパイル状にしたものは面ファスナとして利用でき、筒状部材同士または筒状部材と他の部材間での着脱やそれらの位置調節に有利である。
【0049】
筒状部材は上述のような素材を連続した1枚の生地から形成することができるが、適当な大きさに裁断したものを縫製や接着によりつなぎ合わせて形成することもできる。
【0050】
特に、足関節は凹凸の多い部位であるため、体表面との追従性が必要であり、適度な圧迫性や操作性を向上させるために、伸縮性生地、難伸縮性生地を、部位の特徴や用途に合わせて適宜組み合わせて用いるのが好ましい。伸縮性生地は、一方向に伸びるものや、多方向に伸びるものが使用できる。難伸縮性生地は、何れの方向にも伸びにくい生地である。
【0051】
踵部8は、凹凸が多い部位で体表面との追従性が必要であることから、伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、多方向に伸びる伸縮性生地が、ズレや浮きの発生を抑制することができるため好適である。また、強い固定性が要求される場合には、一方向だけに伸縮性である生地、難伸縮性生地などを用いる。踵部8には、開口部を設けてもよい。
【0052】
足甲部9から下腿前部部分10は、対象者の身体的特性に対して柔軟に適応可能にするため、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、足甲部9から下腿前部部分10の周径方向に伸縮性がある方向を、タテ方向に難伸縮性の方向を持ってくる。
また、上記構成に代えて、周径方向にもタテ方向にも伸縮性がある生地を用いるが、周径方向よりタテ方向の方が伸び難いものを用いるようにしてもよい。
前記のような構成を用いることで、さまざまな足甲や下腿の周径に対して柔軟に適応可能であり、サイズ展開を最小限にとどめることができる。更に、靴下を履く如く容易に筒状部材に足を通すことができるといったメリットもある。
【0053】
下腿後部部分18は、足甲部9から下腿前部部分10と同様に、対象者の身体的特性に対して柔軟に適応可能にするため、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性生地を用いるとよい。好ましくは、下腿後部部分10の周径方向に伸縮性がある方向を、タテ方向に難伸縮性の方向を持ってくるとよい。
また、上記構成に代えて、周径方向にもタテ方向にも伸縮性がある生地を用いるが、周径方向よりタテ方向の方が伸び難いものを用いるようにしてもよい。
前記のような構成を用いることで、さまざまな下腿の周径に対して柔軟に適応可能であり、サイズ展開を最小限にとどめることができる。更に、タテ方向が伸びにくいので、挫屈せずに装着が可能となる。また、一方向が伸縮性で、直交する方向が難伸縮性または相対的に伸縮しにくい生地を、装着時に手で持った際に筒状形態が保持される程度の剛軟性を有した生地にする、筒状部材の上端部またはその近傍に、周径方向に沿って、補助部材を付加するなどを行うと、筒状部材の上部に開口部分が保持され、足先が入り易くなって好適である。
上記の補助部材としては、種々の基材、プラスチックや金属のシートまたは線状物、樹脂(塗布または含浸)、流体を入れたチューブまたはパック、などを用いることができる。
【0054】
足底部7は、トウクリアランス確保をサポートする目的から、難伸縮性生地を用いるとよい。トウクリアランス確保は主にクロスベルトが担っているが、難伸縮性生地を用いることで、比較的重い足重量を支えながら、トウクリアランス確保をサポートするといった効果を発揮し得る。好ましくは、非伸縮性生地であり、トウクリアランス確保のサポートにより効果的である。
【0055】
筒状部材1の上部後面の上方には、ベロのような凸部、ループ状の部材、孔などを設けると、装着するときに指で掴んだり、指を引っ掛けたりしやすい。ループ状の部材、孔を設けた場合には、直接指を掛けられない場合でも、フック、紐などを掛けて引っ張ることができる。また、一般の靴が履けることも考慮すると用いる生地の最厚は5mm以下が好ましい。さらに、筒状部材を構成する上で、装着快適性を考慮すると通気性部材の生地を選択することが好ましい。さらにまた、足底部7の表面に滑り止め性を付与させるとよい。靴を履いても靴の中で装具がずれ難く、適切な支持、固定を保つことができる。また、靴を脱いだ状態では床面やスリッパとも滑り難くなり、不意の転倒を予防することができる。
【0056】
〔クロスベルト及び下腿ベルトの実施形態〕
クロスベルト、下腿ベルトは、弾性糸を入れた織物で伸縮性織りベルト、ポリウレタン、SIS等の不織布、ポリウレタン、合成ゴム(SBR、IR、アクリルゴム、シリコンゴム等)、天然ゴム等のゴム状弾性体等を使用した帯状、シート状、糸状のもので形成することができる。特に好ましくは、帯状のベルト部材を設置する方法で、ベルト部材の先端に面ファスナ等の係合手段を取り付け筒状部材と着脱自在にすることで、圧迫や固定の力を調節ができるようになる。
クロスベルトの、足関節部へのフィット性をよくするために、クロスベルトの設置を以下のようにすると好ましい。
(1)クロスベルト固定部において、筒状部材の足部の周径方向に対してクロスベルトの延ばす方向(下腿部分への方向)に角度をつけて設置する。または、筒状部材の足部の周径方向に対してクロスベルトを平行に延ばし、クロスベルト固定部の固定ラインをベルト幅方向に対して角度をつけてV字状とし、クロスベルトの伸縮する部分の幅方向に対して外側が長くなるようにする。即ち、V字の閉じた方を外側、開いた方を内側とする。
また、(2)クロスベルト端部に難伸縮性の部材を設ける、または、難伸縮性になるような加工を施し、クロスベルトの幅方向に対して外側の伸縮部分が長くなるようにしてもよい。さらに、(3)上記(1)と(2)を組み合わせて用いてもよい。
装着する足関節部の状態などにより、上記のうち適する手段を用いることができる。
また、クロスベルトの先端部にループ状の部材、孔などを設けると、装着するときに指を引っ掛けることで操作しやすくなる。また、直接指を掛けられない場合でも、フック、紐などを掛けて引っ張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1(a)】本発明に係る足関節装具の実施形態1の模式的斜視図。
【図1(b)】図1(a)とは異なる構成の実施形態1に係る足関節装具の模式的斜視図。
【図1(c)】図1(a)とはさらに異なる構成の実施形態1に係る足関節装具の模式的斜視図。
【図2】本発明に係る足関節装具の実施形態2の模式的斜視図。
【図3】本発明に係る足関節装具の実施形態3の模式的斜視図。
【図4】本発明に係る足関節装具の実施形態4の模式的斜視図。
【図5】本発明に係る足関節装具の実施形態5の模式的斜視図。
【図6】本発明に係る足関節装具の実施形態6の模式的斜視図。
【図7(a)】本発明に係る足関節装具の実施形態7の模式的斜視図。
【図7(b)】図7(a)の足関節装具を90°異なる方向から観た模式的斜視図。
【図7(c)】図7(a)および図7(b)に示した足関節装具を例として、足関節装具の装着手順を説明する図。
【図7(d)】図7(c)の次の装着手順を説明する図。
【図7(e)】図7(d)の次の装着手順を説明する図。
【図8】本発明に係る足関節装具の筒状部材の実施形態の模式的斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1:筒状部材、2a,2b:クロスベルト、3:カン、4:下腿ベルト、5:クロスベルト固定部、6a〜6d:面ファスナ、7:足底部、8:踵部、9:足甲部、10:下腿前部部分、11:スリット、12:下腿、13:足先、14,14a:ベルト通し、15:孔、16:分割ベルト、17:カン接合部、18:下腿後部部分、18a:下腿前上部、19:連結部材、20:筒状部材上部後面、21:ループ状の部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、
前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、
前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段と、
を備える足関節装具。
【請求項2】
前記挿通手段が、前記クロスベルトに設けられた貫通孔である請求項1記載の足関節装具。
【請求項3】
前記挿通手段が、前記クロスベルト表面に設置された挿通部材である請求項1記載の足関節装具。
【請求項4】
前記挿通手段が、前記筒状部材表面に設置された挿通部材である請求項1記載の足関節装具。
【請求項5】
少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材で繋がっている構造を備える足関節装具。
【請求項6】
筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材に固定できる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項7】
筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方に接続されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項8】
伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材と、該筒状部材の足底部または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルトとを備えた足関節装具において、前記クロスベルトの少なくとも一方の部分にクロスベルトの長さ方向に沿ったスリットが設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分が通っており、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトを、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカンを通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方に接続されて、該クロスベルトと下腿ベルトが同時に引っ張れるようになっている足関節装具。
【請求項9】
クロスベルトおよび下腿ベルトの着脱する部分とそれに対応する筒状部材または/および下腿ベルトの接合する面同士に同色の材料を用いた、または着色を施した請求項1乃至8のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項1】
少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、
前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、
前記ベルトの前記交差部分において前記ベルトが隣接して保持されるよう、前記ベルトを纏める挿通手段と、
を備える足関節装具。
【請求項2】
前記挿通手段が、前記クロスベルトに設けられた貫通孔である請求項1記載の足関節装具。
【請求項3】
前記挿通手段が、前記クロスベルト表面に設置された挿通部材である請求項1記載の足関節装具。
【請求項4】
前記挿通手段が、前記筒状部材表面に設置された挿通部材である請求項1記載の足関節装具。
【請求項5】
少なくとも足関節を被覆する筒状部材と、前記筒状部材の足底部または側部から左右に延び、足甲部上から下腿前部上で交差して下腿部分に巻き付け固定し得る2本のクロスベルトと、前記クロスベルトが隣接して保持されるよう、少なくとも前記クロスベルトの一方が筒状部材の足底部および側部以外の部分と帯状または紐状の連結部材で繋がっている構造を備える足関節装具。
【請求項6】
筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が下腿ベルトまたは筒状部材に固定できる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項7】
筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトをさらに備え、前記下腿ベルトは固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置で折り返して、もう一方の端部が、クロスベルトの一方に接続されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の足関節装具。
【請求項8】
伸縮性部分および難伸縮性部分を持つ筒状部材と、該筒状部材の足底部または側部に固定され、自由端の端部に面ファスナが設けられ、足甲部から下腿前部部分で交差して巻きつけられる2本のクロスベルトとを備えた足関節装具において、前記クロスベルトの少なくとも一方の部分にクロスベルトの長さ方向に沿ったスリットが設けられ、該スリットにもう一方のクロスベルト部分が通っており、筒状部材の下腿後部部分または下腿前部部分に一方の端部が固定された下腿ベルトを、固定された端部から下腿周径方向に一定距離離れた位置に設けられたカンを通して折り返し、もう一方の端部がクロスベルトの一方に接続されて、該クロスベルトと下腿ベルトが同時に引っ張れるようになっている足関節装具。
【請求項9】
クロスベルトおよび下腿ベルトの着脱する部分とそれに対応する筒状部材または/および下腿ベルトの接合する面同士に同色の材料を用いた、または着色を施した請求項1乃至8のいずれか1項に記載の足関節装具。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【公開番号】特開2010−57852(P2010−57852A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229316(P2008−229316)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
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