説明

路面摩擦係数の測定方法

【課題】路面の広い範囲に対して、容易に連続してその摩擦係数を測定することができる路面摩擦係数の測定方法を提供すること。
【解決手段】試験用車両10に、路面摩擦係数測定用のタイヤ2を取り付けるタイヤ装着ステップと、この測定用タイヤ2に、スリップ角及びキャンバー角のうちの少なくとも一方である傾斜角を設定するタイヤ傾斜ステップと、上記測定用タイヤ2を測定対象の路面Rに当接させて、鉛直下方に荷重を加える荷重負荷ステップと、測定対象の路面R上を走行する走行ステップと、路面Rから測定用タイヤ2に加わる反力を測定する反力測定ステップと、路面からの水平方向の反力と上記荷重とから、路面Rの摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行しうる路面の摩擦係数を測定する方法、及び、この測定方法に用いられる摩擦係数測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の摩擦係数を測定する方法として、ASTM(米国試験及び材料規格)のE1337に規定された路面摩擦係数測定方法、ASTMのE303に規定された、BPN試験機(英国式振り子型滑り試験機)を用いた路面摩擦係数測定方法等が知られている。
【0003】
ASTM E1337に規定された路面摩擦係数測定方法は、所定仕様(P195/75R14 E1136)のタイヤが装着されたトラクション試験車両を用いて実施される。このタイヤを装着した試験車両が路面上を走行する。測定対象の位置において、上記タイヤを装着した車輪に制動力が加えられる。このとき、路面から上記タイヤに加わった前後力を、路面からの垂直反力によって除した値の最大値を用いて摩擦係数を求める。
【0004】
ASTMのE303に規定された路面摩擦係数測定方法では、所定のゴム試験片が、マス(錘)の付いた振り子の先端に装着される。この振り子が測定対象路面に向かって振り下ろされる。路面に衝突して反対側に飛び上がった高さから、路面の摩擦係数が算出される。
【0005】
上記のいずれの測定方法も、路面上における選択された一点での測定を行うものである。従って、路面の広い範囲について摩擦係数を測定するには、測定点が膨大な数となり、大変な作業となる。ASTM E1337による路面摩擦係数測定では、タイヤに制動力を負荷する。この制動力の解除が遅れた場合、上記試験タイヤがロック状態となる。その結果、この試験タイヤが局所的に摩耗することがあり、その後の試験精度に悪い影響を与える。
【0006】
特開2003−182476公報には、走行中の車両のホイールの振動を検出し、この振動の周波数から路面の摩擦係数を推定する方法が開示されている。この方法においては、予め測定した路面の摩擦係数とそのときのホイールの振動数との関係を示すグラフ(Gテーブル)を作成しておく。そして、測定対象の路面を走行して得られた振動数から、その路面の摩擦係数を推定する。しかし、この公報には、路面摩擦係数の実際の測定方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−182476公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、路面の広い範囲に対しても、容易にその摩擦係数を測定することができる路面摩擦係数の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る路面摩擦係数の測定方法は、
試験用車両に、路面摩擦係数測定用のタイヤを取り付けるタイヤ装着ステップと、
この測定用タイヤに、スリップ角及びキャンバー角のうちの少なくとも一方である傾斜角を設定するタイヤ傾斜ステップと、
上記測定用タイヤを測定対象の路面に当接させて、鉛直下方に荷重を加える荷重負荷ステップと、
測定対象の路面上を走行する走行ステップと、
路面から測定用タイヤに加わる反力を測定する反力測定ステップと、
路面からの水平方向の反力と上記荷重とから、路面の摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップとを含んでいる。
【0010】
好ましくは、上記走行ステップにおいて、測定用タイヤが押圧される路面上に水を散布する。
【0011】
好ましくは、上記タイヤ傾斜ステップにおける傾斜角が、0.5°以上2.0°以下である。
【0012】
好ましくは、上記走行ステップにおいて、反力の測定及び摩擦係数の算出を連続して行い、且つ、試験用車両の走行速度から走行距離を算出することによって測定位置の特定を行う。
【0013】
好ましくは、上記摩擦係数算出ステップにおいて、反力測定ステップにおいて測定された、車両進行方向に垂直な水平方向反力である横力を、上記荷重によって除することにより、横摩擦係数を算出する。
【0014】
好ましくは、上記摩擦係数算出ステップにおいて、反力測定ステップにおいて測定された、車両進行方向に垂直な水平方向反力である横力と、車両進行方向の反力である前後力と、上記荷重とから、算式 ((横力)+(前後力)1/2 /荷重
を用いて、総合の摩擦係数を求める。
【0015】
本発明に係る路面摩擦係数の測定装置は、
試験用車両に搭載される、路面摩擦係数の測定装置であって、
路面摩擦係数測定用のタイヤと、
この測定用タイヤを路面に垂直に押圧する荷重負荷装置と、
測定用タイヤを、スリップ角及びキャンバー角のうちの少なくとも一方を設定するために傾斜させるタイヤ傾斜装置と、
路面から測定用タイヤに加わる反力を測定する反力測定装置と、
路面からの水平方向の反力と上記荷重とから、路面の摩擦係数を算出する摩擦係数演算装置とを備えている。
【0016】
好ましくは、路面に対して水を散布する水噴射装置をさらに備えている。
【0017】
好ましくは、上記試験用車両の走行速度を測定する車速測定装置をさらに備えており、この車速測定装置が、路面に当接して転動しうる車速測定用タイヤを有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る路面摩擦係数の測定方法によれば、路面の広い範囲に対しても、容易に連続してその摩擦係数を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る路面摩擦係数測定装置の一例が搭載された試験用車両に示す正面図である。
【図2】図2は、図1の試験用車両に搭載された路面摩擦係数測定装置を示す正面図である。
【図3】図3は、図2の路面摩擦係数測定装置の平面図である。
【図4】図4は、路面から路面摩擦係数測定用のタイヤに加わる反力の一部を概略的に示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1には試験用車両(以下、単に車両ともいう)10が示されている。この車両10は、路面摩擦係数測定装置(以下、摩擦係数測定装置という)1を搭載している(図2及び図3参照)。試験用車両として、いわゆるトラクション計測車が用いられている。トラクション計測車は、供試タイヤに対して制動力及び駆動力を負荷することができ、スリップ角及びキャンバー角を設定することができる車両である。しかし、ここでは、供試タイヤに制動力及び駆動力を負荷することによって摩擦係数を測定するのではない。
【0022】
図1に示すごとく、この試験用車両10から路面Rに向かって、路面摩擦係数測定用のタイヤ(以下、単に測定用タイヤという)2、及び、車速測定用のタイヤ(以下、単に車速用タイヤという)3が延びている。後述するように、測定用タイヤ2には、路面に向けて押圧させられる荷重が負荷されるので、この試験用車両10の重量は、上記荷重の2倍以上であるのが好ましい。
【0023】
図2及び図3には上記摩擦係数測定装置1が示されている。図2が摩擦係数測定装置1の正面図であり、図3が平面図である。この摩擦係数測定装置1は、試験用車両10の走行に伴い、路面Rから測定用タイヤ2に加わる水平方向の反力と、測定用タイヤ2を介して路面に垂直に加えられる荷重とから、路面Rの摩擦係数を求めるものである。
【0024】
摩擦係数測定装置1は、上記測定用タイヤ2と、この測定用タイヤ2を路面Rに垂直に押圧する荷重負荷装置4と、測定用タイヤ2を傾斜させるためのタイヤ傾斜装置5と、路面Rから測定用タイヤ2に加わる反力を測定する反力測定装置6と、試験用車両10の走行速度を測定する車速測定装置7と、路面に対して水を散布する水噴射装置8と、図示しない摩擦係数演算装置とを備えている。この車速測定装置7は上記車速用タイヤ3を含んでいる。上記摩擦係数演算装置は、例えば、路面Rから測定用タイヤ2への水平方向反力と、上記荷重負荷装置4から測定用タイヤ2へ負荷される荷重とから、路面の摩擦係数を算出する。本実施形態では、上記タイヤ傾斜装置5は測定用タイヤ2を傾斜させてスリップ角を設定する作用を奏するので、スリップ角設定装置5ともいう。
【0025】
測定用タイヤ2は、支持部材9の下端に回転可能に支持されている。支持部材9は、試験用車両10の荷台11から鉛直下方に延びている。支持部材9における、荷台11より上の部位には、上記荷重負荷装置4と、スリップ角設定装置5と、反力測定装置6とが取り付けられている。
【0026】
本実施形態では、荷重負荷装置4としてエアシリンダが採用されている。しかし、エアシリンダには限定されない。エアシリンダ4は、支持フレーム12によって荷台11に固定されている。エアシリンダ4の出力軸が支持部材9に接続されている。測定走行が行われない時には、エアシリンダ4の出力軸が縮短して測定用タイヤ2を持ち上げ、路面Rから離間させている。測定時に、エアシリンダ4の出力軸が伸長して測定用タイヤ2を路面Rに押圧する。こうすることにより、測定用タイヤ2に対して任意の荷重を負荷することができる。本実施形態では、5000Nの荷重が加えられる。
【0027】
スリップ角設定装置5も、支持フレーム12によって荷台11に固定されている。スリップ角設定装置5の出力部が支持部材9に接続されている。スリップ角設定装置5は、支持部材9をその鉛直方向の中心軸回りに回転させることにより、測定用タイヤ2を試験用車両10の進行方向に対して水平面内に任意角度傾斜させることができる。このようにして、スリップ角設定装置5は、測定用タイヤ2にスリップ角SAを設定する。本実施形態では、スリップ角設定装置5として電動モータが採用されている。しかし、電動モータには限定されず、油圧モータ等も採用可能である。
【0028】
本実施形態では、タイヤ傾斜装置5としてスリップ角設定装置5を例示したが、スリップ角設定装置には限定されない。タイヤ傾斜装置5は、測定用タイヤ2にキャンバー角CAを設定するものであってもよい。この場合のタイヤ傾斜装置(キャンバー角設定装置)5は、測定用タイヤ2を、車両の進行方向に対して垂直な鉛直面内に任意角度傾斜させることになる。具体的には、上記支持部材9を車両の進行方向に対して垂直な鉛直面内に任意角度傾斜させることになる。このキャンバー角設定装置としては、電動モータ、油圧モータ等が採用可能である。また、タイヤ傾斜装置5に、上記スリップ角設定装置及びキャンバー角設定装置の両方の機能を備えることも可能である。この場合、タイヤ傾斜装置5は、支持部材9をその中心軸回りに回転させる上記駆動装置と、この駆動装置が装着された支持部材9を車両の進行方向に対して垂直な鉛直面内に傾斜させる駆動装置とを備えることになる。
【0029】
上記反力測定装置6としては、ホイール型の6分力計(6分力ロードセル)が用いられる。この6分力計は、測定用タイヤ2が装着されているホイール2hに備えられている。この反力測定装置6は、試験用車両10の走行に伴って路面Rから測定用タイヤ2に加わる反力を検出する。この反力は、上下力、前後力(コーナリング抵抗)、左右の横力(コーナリングフォース)の三種類(三成分)に分類される。上下力は、荷重負荷装置4から測定用タイヤ2に加えられる鉛直方向の荷重である。測定用タイヤ2は、制動力が加えられないので、試験用車両10の走行に伴って自由転動する。従って、測定用タイヤ2の摩耗は抑制される。しかし、測定用タイヤ2にはスリップ角が設定されているので、転動に伴って路面Rから上記前後力及び横力が加わる。
【0030】
前述したスリップ角SAは、0.5°(以下、単位をdegとも表す)以上2.0°以下が好ましい。0.5°未満であると、発生する横力(コーナリングフォース)が小さすぎ、正確な摩擦係数を測定することが難しくなる。2.0°を超えると、測定用タイヤ2の摩耗が早くなる。また、キャンバー角も、0.5°以上2.0°以下が好ましい。0.5°未満であると、発生する横力(キャンバースラスト)が小さすぎ、正確な摩擦係数を測定することが難しくなる。2.0°を超えると、測定用タイヤ2の摩耗が早くなる。
【0031】
上記車速測定装置7は、前述のとおり、車速用タイヤ3を備えている。車速用タイヤ3は、エアシリンダ等からなる昇降装置13により、路面Rに当接する位置と、路面から離間した位置との間を昇降させられる。車速用タイヤ3は、路面Rに当接する位置において、試験用車両10の走行に伴って自由転動する。車速測定装置7は、図示しない回転速度計を備えている。この回転速度計の検出値から車速が算出される。測定時の試験用車両10の走行速度は、5km/h以上50km/h以下が好ましい。5km/h未満であると、測定に時間がかかりすぎる。50km/hを超えると、路面Rのアンジュレーション(凹凸、うねり等)により、試験用車両が上下動する。その結果、測定用タイヤ2に負荷されている荷重の変動が大きくなり、測定精度が低下する。車速測定装置7は、このときの車速用タイヤ3の回転速度から、積分することによって走行距離を算出する。試験用車両10が直線走行することにより、走行の基点からの距離が算出される。これにより、連続測定している際の、任意の測定位置が特定されうる。
【0032】
上記水噴射装置8は、水噴射ノズル14、貯水タンク15、及び、貯水タンク15から水噴射ノズル14に接続された給水配管16を備えている。この給水配管16には、給水ポンプ17、止め弁18、流量制御弁19等が設置されている。水噴射ノズル14は、エアシリンダ等の昇降装置20により、上下に傾斜させられる。測定時には、水噴射ノズル14は、車速用タイヤ3の前方の路面Rに水を散布することが可能である。この水噴射装置8により、ウエットの状態の路面Rの摩擦係数も測定することができる。その結果、測定用タイヤ2の摩耗が抑制される。なお、水噴射ノズル14は、上下の傾斜のみならず、水平方向にも旋回させられるように構成することは容易である。
【0033】
以上説明された摩擦係数測定装置1により、路面Rの摩擦係数が広範囲にわたって、連続して測定される。
【0034】
図4に示されるのは、路面R上を転動中の測定用タイヤ2の底面図である。この測定用タイヤ2にはスリップ角SAが設定されている。このため、測定用タイヤ2には路面からの反力として水平方向の前後力FF及び横力(コーナリングフォース)CFが加わる。もちろん、荷重負荷装置4からの荷重に対する反力(垂直反力)VFも加わる。この垂直反力VFの値は上記荷重に等しい。前後力FFは、試験用車両10の進行方向Aに沿って生じる反力である(図4)。コーナリングフォースCFは、試験用車両10の進行方向Aに垂直な方向の反力であり、測定用タイヤ2の傾斜した方向に向いて作用する(図4)。
【0035】
前述の摩擦係数演算装置(図示せず)では、コーナリングフォースCFを荷重(垂直反力VF)で除することにより、横方向摩擦係数(横摩擦係数という)μcを算出する。試験用車両10の走行に伴って、測定用タイヤ2は常時転動し、反力測定装置6及び摩擦係数演算装置は連続して作動している。従って、路面Rにおける測定用タイヤ2が転動した線上の横摩擦係数μcが、連続して測定される。前述したごとく、試験用車両10が、所定間隔をおいて平行な複数の直線上を走行すれば、路面Rの広範囲について概ね面として横摩擦係数μcが測定される。さらに、前述したごとく、車速測定装置7により、測定した任意の位置が特定されうる。これらにより、路面Rの管理や補修が容易となる。このようにして測定された横摩擦係数μcと、路面R上の同一位置において、ASTM E1337、ASTM E303等によって測定された摩擦係数μとの相関性を把握しておくことにより、測定値の信頼性が向上する。
【0036】
また、前後力FF、コーナリングフォースCF及び荷重VFから、路面Rの摩擦円が得られる。摩擦円とは、静止状態を中心として、縦軸に前後力をとり、横軸に横力をとり、路面からの総合された摩擦力(水平方向の反力)の方向と大きさとを表したものである。この総合された摩擦力TFは、反力測定装置6によって検出された前後力FF、横力CF及び荷重VFから、下記の算式によって算出される。
総合摩擦力TF = ((横力CF)+(前後力FF)1/2
【0037】
また、上記総合摩擦力TFを荷重VFで除することにより、総合摩擦係数μtを得ることができる。算式は以下のとおりである。
総合摩擦係数μt = ((横力CF)+(前後力FF)1/2 /荷重VF
【0038】
前述したスリップ角に代えて、キャンバー角が設定された場合は、上記算式中のコーナリングフォースCFを、キャンバースラストに置き換えればよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0040】
[実施例1]
実施例1として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。以下の、測定条件及び測定過程の状況が、表1に示されている。測定中に試験車両には制動力は加えられなかった。試験車両の走行速度は30km/hである。測定用タイヤ2へ加えられた荷重(VF)値は5000Nである。路面Rには水が散布され、ウエットの状態で測定がなされた。測定用タイヤ2には0.5degのスリップ角が設定された。以上の条件で測定用の走行が行われた。検出された横力(コーナリングフォース)は550Nであった。このコーナリングフォースのバラツキ、すなわち、測定データの標準偏差は、4%であった。このバラツキの原因としては、路面のうねりによる荷重変動が考えられる。測定用タイヤ2の1000m走行当たりの摩耗の速さは比較的遅かった。100m当たりの測定時間は12秒であった。
【0041】
[実施例2]
実施例2として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。走行速度、設定スリップ角、発生したコーナリングフォース、コーナリングフォースのバラツキ、測定用タイヤ2の摩耗の速さ、100m当たりの測定時間は表1に記載のとおりである。その他の条件、及び、測定過程の状況は、実施例1と同一であった。
【0042】
[実施例3]
実施例3として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。設定スリップ角、発生したコーナリングフォース、コーナリングフォースのバラツキ、測定用タイヤ2の摩耗の速さは表1に記載のとおりである。その他の条件、及び、測定過程の状況は、実施例1と同一であった。
【0043】
[実施例4]
実施例4として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。走行速度、設定スリップ角、発生したコーナリングフォース、コーナリングフォースのバラツキ、測定用タイヤ2の摩耗の速さ、100m当たりの測定時間は表1に記載のとおりである。その他の条件、及び、測定過程の状況は、実施例1と同一であった。
【0044】
[実施例5]
実施例5として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。設定スリップ角、発生したコーナリングフォース、コーナリングフォースのバラツキ、測定用タイヤ2の摩耗の速さは表1に記載のとおりである。その他の条件、及び、測定過程の状況は、実施例1と同一であった。
【0045】
[実施例6]
実施例として、以上説明された試験方法により、指定された路面の横摩擦係数μcが測定された。設定スリップ角、発生したコーナリングフォース、コーナリングフォースのバラツキ、測定用タイヤ2の摩耗の速さは表1に記載のとおりである。その他の条件、及び、測定過程の状況は、実施例1と同一であった。
【0046】
[比較例1]
比較例1として、ASTM E1337に規定された路面摩擦係数測定方法により、路面の摩擦係数μが測定された。以下の測定条件、及び、測定過程の状況が、表1に示されている。走行速度は65km/hである。65km/hの速度で走行中に、測定用タイヤに対して5000Nの制動力が加えられた。測定用タイヤへの荷重(VF)は5000Nである。路面Rには水が散布され、ウエットの状態で測定がなされた。測定用タイヤにはスリップ角は設定されなかった。コーナリングフォースは発生しなかった。測定用タイヤには局所的な摩耗が発生した。多数箇所に対して、逐一測定するので、100mにつき10箇所の測定に約1時間を要した。
【0047】
【表1】

【0048】
[評価]
表1には、実施例1から6、及び、比較例1の試験結果が示されている。比較例1では、測定用タイヤに局所的な摩耗が発生した。これは、測定用タイヤの継続使用を困難にする。その後の試験精度に悪い影響を与えるからである。また、測定に時間がかかりすぎる。さらに、連続測定が不可能であるため、測定密度が粗くなる。これらを総合的に評価した結果が、「評価」の欄に示されている。点数が高いほど優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る路面摩擦係数の測定方法は、車両走行用の路面のあらゆる範囲についての摩擦係数測定に適用されうる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・摩擦係数測定装置
2・・・測定用タイヤ
3・・・車速用タイヤ
4・・・荷重負荷装置
5・・・タイヤ傾斜装置(スリップ角設定装置)
6・・・反力測定装置
7・・・車速測定装置
8・・・水噴射装置
9・・・支持部材
10・・・試験用車両
11・・・荷台
12・・・支持フレーム
13・・・昇降装置
14・・・水噴射ノズル
15・・・貯水タンク
16・・・給水配管
17・・・給水ポンプ
18・・・止め弁
19・・・流量制御弁
20・・・昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験用車両に、路面摩擦係数測定用のタイヤを取り付けるタイヤ装着ステップと、
この測定用タイヤに、スリップ角及びキャンバー角のうちの少なくとも一方である傾斜角を設定するタイヤ傾斜ステップと、
上記測定用タイヤを測定対象の路面に当接させて、鉛直下方に荷重を加える荷重負荷ステップと、
測定対象の路面上を走行する走行ステップと、
路面から測定用タイヤに加わる反力を測定する反力測定ステップと、
路面からの水平方向の反力と上記荷重とから、路面の摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップとを含んでいる路面摩擦係数の測定方法。
【請求項2】
上記走行ステップにおいて、測定用タイヤが押圧される路面上に水を散布する請求項1に記載の路面摩擦係数の測定方法。
【請求項3】
上記タイヤ傾斜ステップにおける傾斜角が、0.5°以上2.0°以下である請求項1又は2に記載の路面摩擦係数の測定方法。
【請求項4】
上記走行ステップにおいて、反力の測定及び摩擦係数の算出を連続して行い、且つ、試験用車両の走行速度から走行距離を算出することによって測定位置の特定を行う請求項1から3のうちのいずれかに記載の路面摩擦係数の測定方法。
【請求項5】
上記摩擦係数算出ステップにおいて、反力測定ステップにおいて測定された、車両進行方向に垂直な水平方向反力である横力を、上記荷重によって除することにより、横摩擦係数を算出する請求項1から4のうちのいずれかに記載の路面摩擦係数の測定方法。
【請求項6】
上記摩擦係数算出ステップにおいて、反力測定ステップにおいて測定された、車両進行方向に垂直な水平方向反力である横力と、車両進行方向の反力である前後力と、上記荷重とから、算式 ((横力)+(前後力)1/2 /荷重
を用いて、総合摩擦係数を求める請求項1から5のうちのいずれかに記載の路面摩擦係数の測定方法。
【請求項7】
試験用車両に搭載される、路面摩擦係数の測定装置であって、
路面摩擦係数測定用のタイヤと、
この測定用タイヤを路面に垂直に押圧する荷重負荷装置と、
測定用タイヤを、スリップ角及びキャンバー角のうちの少なくとも一方を設定するために傾斜させるタイヤ傾斜装置と、
路面から測定用タイヤに加わる反力を測定する反力測定装置と、
路面からの水平方向の反力と上記荷重とから、路面の摩擦係数を算出する摩擦係数演算装置とを備えている路面摩擦係数の測定装置。
【請求項8】
路面に対して水を散布する水噴射装置をさらに備えている請求項7に記載の路面摩擦係数の測定装置。
【請求項9】
上記試験用車両の走行速度を測定する車速測定装置をさらに備えており、この車速測定装置が、路面に当接して転動しうる車速測定用タイヤを有している請求項7又は8に記載の路面摩擦係数の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95322(P2013−95322A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241256(P2011−241256)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)