説明

路面状態判別装置および路面状態判別方法

【課題】現実の路面上の路面状態を高精度に判別する装置を提供すること。
【解決手段】路面に対して所定の周波数範囲の電波を照射し、前記路面からの反射電波を受信してその強度を検知し、前記検知した反射電波の強度に基づいて複数の周波数における反射電波の特性に対応した反射電波特性値を取得し、前記反射電波特性値をニューラルネットワークに入力し、路面状態を示す情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や滑走路などの路面に散布した凍結防止剤や融雪剤として機能し得る無機または有機の化合物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムや酢酸マグネシウムナトリウム等。)の状態を判別する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面に向けて照射した電波の減衰量について基準値を予め求めておき、実測した減衰量と基準値とを比較したり、電波の反射率のピーク値に対する周波数を基に凍結防止剤の有無または凍結防止剤の濃度などを計測する技術が知られている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2004−101521号
【特許文献2】特開2006−250634号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現実の路面上の路面状態を高精度に判別する装置が望まれていた。
すなわち、上述の従来技術によれば、凍結防止剤や融雪剤の有無や濃度を計測することができるものの、凍結防止剤や融雪剤の濃度、厚みが複雑に変動し得る現実の系の全てにおいて高精度に計測することは困難であった。特に、実際の路面において、ある周波数における電波の反射率が特定の値となるような路面状態は一つではなく、複数の状態において同様の反射率となり得る。従って、ある周波数における電波の反射率と特定の路面状態とを対応付けるのみでは、現実系の路面状態を高精度に判定することができない。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、複雑に変動し得る路面状態を正確に判別することが可能な路面状態判別装置および路面状態判別方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明では路面からの反射電波を取得し、複数の周波数における反射電波の特性に対応した反射電波特性値を取得する。そして、当該反射電波特性値をニューラルネットワークに入力して路面状態を示す状態を取得する。すなわち、一般には、ある特定の周波数における反射電波の反射特性に対応した路面状態は複数個存在し得る。従って、ある特定の周波数における反射特性のみに着目しても、実際の路面状態を高精度に特定することはできない。
【0005】
ところが、本発明においては、複数の周波数における電波の反射特性を取得し、これらの特性を反映した反射電波特性値に基づいて路面状態を示す情報を特定している。すなわち、複数の周波数における反射電波特性値を利用すれば、複雑な路面状態を反映した情報を取得することができる。従って、本発明によれば、路面上の被覆塩水の膜厚や濃度などが複雑に変動し得る路面状態を正確に判別することができる。
【0006】
さらに、本発明においては、反射電波特性値をニューラルネットワークに入力し、路面状態を示す情報を取得している。すなわち、複数の周波数における反射電波特性値は確かに複雑な路面状態を反映しているが、複数の周波数における反射電波特性値と路面状態との関係を定性的に説明することは極めて困難である。また、予めこのような対応関係を取得しようとしてもその対応関係を示す情報は非線形の関係を有し、極めて膨大な量の組み合わせとなるため、テーブル参照によって解を求める特許文献2の手法を採用することは現実的には不可能である。そこで、学習によって判定精度を高められるニューラルネットワークを利用することとしており、この構成によれば、複数の周波数における反射電波特性値と路面状態との定性的な関係が未知であったとしても高精度に路面状態を判別することができる。
【0007】
ここで、電波送信手段は、所定の範囲で周波数を変動させて電波を照射することができればよく、電波受信手段においては、その周波数毎に反射電波の強度を特定することができればよい。すなわち、周波数毎に反射特性を特定できるように構成し、その中の所望の周波数を複数個選択し、反射電波特性値を特定することができればよい。また、周波数は複数個選択できればよく、複雑な路面状態の特徴を捉えられる周波数を選択することが好ましい。
【0008】
そこで、複雑な路面状態の特徴を的確に捉えられる複数の周波数の例として、反射電波の強度に対応した値が極値となる周波数を前記複数の周波数とする構成を採用可能である。すなわち、所定の周波数範囲の電波を路面に照射し、周波数毎に反射電波の強度を特定したとき、周波数に対する当該強度に対応した値の変化には極値が存在し、当該極値における周波数や強度等は複雑な路面状態の特徴を反映した組み合わせとなっていることが判明した。そこで、前記極値をとる周波数を複数個選択して反射電波特性値を取得すれば、複雑に変動し得る路面状態を正確に判別することが可能である。なお、反射電波の強度に対応した値としては種々の値を採用可能であり、反射率、減衰率等を当該反射電波の強度に対応した値とすることができる。
【0009】
また、前記反射電波特性値は、反射電波の特性に対応した値であり周波数毎に定義することができる値であればよい。この値の例として、周波数の値とその周波数における電波の反射率の値との組を採用可能である。すなわち、電波の反射率は反射電波の特性を反映した値であり、反射率は周波数毎に定義することができる。そこで、これらの値の組を複数組取得し、ニューラルネットワークに入力すれば、複雑に変動し得る路面状態を正確に判別することが可能になる。
【0010】
さらに、反射電波特性値として採用し得る他の例として、前記複数の周波数の相対関係と各周波数における反射率の相対関係とを示す情報を採用可能である。ここで、周波数の相対関係とは少なくとも二つの周波数の差分や比等であり、反射率の相対関係とは少なくとも二つの反射率の差分や比等である。すなわち、路面状態の特徴が現れる複数の周波数においてその周波数値や反射率の値自体が上述のように反射電波の特性を反映しているが、これらの値の相対関係も路面状態を反映しており、当該相対関係をニューラルネットワークに入力する構成であっても、複雑に変動し得る路面状態を正確に判別することが可能である。
【0011】
さらに、路面状態特定手段においては、ニューラルネットワークに基づいて路面状態を示す情報を取得することができればよい。すなわち、反射電波特性値を入力して路面状態を示す情報を出力するニューラルネットワークを予め構成しておき、また、予め決められた複数の路面状態に対応した複数の反射電波特性値について学習を実施しておく。この構成によれば、複数の周波数における反射電波特性値と路面状態との定性的な関係が未知であったとしても高精度に路面状態を判別することが可能になる。なお、予め実施される学習においては、現実の路面にて生じる確率が高い路面状態についての情報を多く用意して学習を実施しても良い。
【0012】
また、当該ニューラルネットワークにおいては、前記極値に関するパラメータのみを入力パラメータとしても良いし、他の値を入力パラメータとして含んでいても良い。例えば、路面温度を示す温度情報を反射電波特性値に含めることとしても良い。この構成によれば、路面の温度に応じて路面状態を判別することができ、より精度の高い判別を実施可能である。むろん、反射電波特性値としては、路面温度以外にも反射電波の特性に影響を与え得る種々のパラメータを追加可能であり、路面上の気温や天候、時刻等をパラメータとしても良い。
【0013】
さらに、ニューラルネットワークによる出力は路面状態を示す情報であればよく、路面状態の分類を示す値であっても良いし、路面に関する物理量を示す値であっても良い。前者としては、例えば、路面上の水分の状態が予め規定したカテゴリに分類されるか否かを示す情報が該当し、後者としては、例えば、路面上の水分に含まれる凍結防止剤や融雪剤として機能し得る無機または有機の化合物の濃度が該当する。
【0014】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法としても発明は実現可能である。また、以上のような路面状態判別装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)路面状態判別装置の構成:
(2)ニューラルネットワークの構成:
(3)路面状態判別処理:
(4)他の実施形態:
【0016】
(1)路面状態判別装置の構成:
以下、本発明の一実施形態にかかる路面状態判別装置を説明する。1は電波の電波送信手段にして、数GHzの範囲(本実施例においては、1GHz〜5GHz)の発振周波数の電界を生成する発振器11と、入力された信号を増幅し数GHz以下の電波として照射する送信アンテナ12とから構成される。
【0017】
2は電波受信手段にして、路面Rから反射した電波を受信する受信アンテナ22と受信した電波を検波する検波器21とから構成される。なお、送信アンテナ12と受信アンテナ22は、梁柱などの支持手段によって支持され、路面に電波が略垂直に照射され、反射するように並べて配置される。
【0018】
3は電波送信手段1の送信強度に対する電波受信手段2の受信強度の比を電波の反射率として算出する反射率算出部、4は路面Rに照射した電波の反射率について周波数に対する変化を取得し、反射率が極値となる複数の周波数を特定する複数極値特定部、5はニューラルネットワークに対して前記極値における複数組の周波数と反射率および路面温度を入力し、路面状態を示す情報を取得する路面状態判別部である。6は路面状態を示す情報を教師信号とし、その教師信号に対応する複数組の周波数と反射率および路面温度を入力して学習を実施する際にそのパラメータを入力するための入力部である。13は、路面に埋設された図示しない路面温度センサから路面温度を示す情報を取得する路面温度取得部である。
【0019】
7は通信手段を備え、路面状態判別部5で判別された路面状態を図示しない中央の観測装置に配信する出力部、8は湿潤などの路面状態や凍結防止剤などの濃度を検出するためのプログラムを記憶した制御プログラム記憶部、9は制御プログラム記憶部8のプログラムと予め設定されたサンプリング周期や発振周波数などの設定値に従い前記の1〜7および13を制御し路面状態を判別するCPUである。なお、路面内には、より精度の高い検出結果を得るためにカーボンファイバークロス等からなる電波反射体10を埋設してもよい。
【0020】
(2)ニューラルネットワークの構成:
次に、路面状態判別部5のニューラルネットワークについて説明する。本実施形態においては、3個の極値のそれぞれにおける反射電波の反射率と周波数、および路面温度からなる7個のパラメータを反射電波特性値とし、この反射電波特性値をニューラルネットワークの入力値とする構成を採用している。図2は、塩水中の凍結防止剤あるいは融雪剤の濃度が5重量%で、平均膜厚が0.4mmの場合の反射率を周波数1〜5GHzのそれぞれについて実測した場合の一例で、横軸を周波数、縦軸を反射率として示したグラフである。
【0021】
同図2に示すように、周波数1〜5GHzの範囲において反射率は3個の極値を持つ。出願人の実測結果によれば、路面上の水分に含まれる凍結防止剤あるいは融雪剤の濃度、水分量、水分の分布状態によって極値の位置(周波数と反射率)は変動するが、極値の数は図2に示すように概ね3個であることが判明している。また、路面温度に依存してこれらの極値の位置が変動し得ることが判明している。従って、3個の極値の位置は路面状態に対応して変動している。
【0022】
ところが、その変動の様子と路面状態との対応関係を定性的に説明することは極めて困難である。そこで、本実施形態においては、3個の極値のそれぞれの周波数と反射率および路面温度の計7個をニューラルネットワークの入力パラメータとしている。なお、本実施形態においては、最も周波数の低い極値を第1の極値、最も周波数の高い極値を第2の極値、第1および第2の極値の間にある極値を第3の極値としており、第1〜第3の極値の周波数をそれぞれf1,f2,f3とし、反射率をそれぞれR1,R2,R3としている。また、路面温度をTとしている。
【0023】
一方、本実施形態においては、路面上の水分と当該水分の状態とに基づいて路面状態を予め5個のカテゴリに分類し、このカテゴリを示す情報を出力パラメータとしたニューラルネットワーク(以降、第1のニューラルネットワークNN1と呼ぶ)を構成しており、5個のカテゴリのいずれかに該当することを示すフラグをS1〜S5と定義している。
【0024】
より具体的には、路面状態を乾燥(水分がない状態)、湿潤(液体の水分が存在する状態)、雪氷あり(液体と固体の水分が混在する状態)、乾圧雪(固体の水分が存在し、その水分含有量が既定値以下の状態)、湿圧雪(固体の水分が存在し、その水分含有量が既定値以上の状態)に予め分類している。なお、本実施形態においては、フラグS1〜S5が”10000”,”01000”,”00100”,”00010”,”00001”であるときに、それぞれ乾燥状態、湿潤状態、雪氷あり状態、乾圧雪状態、湿圧雪状態であることを示すこととしてある。
【0025】
さらに、本実施形態においては、路面上の水分に含まれる凍結防止剤や融雪剤の濃度を示す情報を出力パラメータとしたニューラルネットワーク(以降、第2のニューラルネットワークNN2と呼ぶ)を予め構成する。本実施形態においては、当該第2のニューラルネットワークNN2の出力パラメータは、路面上の水分に含まれる凍結防止剤や融雪剤の濃度C(重量%濃度)である。
【0026】
図3は、第1のニューラルネットワークNN1および第2のニューラルネットワークNN2の構成を示す図であり、本実施形態においては、入力層、中間層、出力層の3層からなるニューラルネットワークを構成している。また、同図において、各層の丸はノードを示しており、第1および第2のニューラルネットワークにおいて入力パラメータは7個であるため入力層のノードは7個である。一方、第1のニューラルネットワークNN1において出力パラメータは5個であるため出力層のノードは5個であり、第2のニューラルネットワークNN2において出力パラメータは1個であるため出力層のノードは1個である。
【0027】
中間層のノード数は任意であり、学習効率、出力パラメータの精度等が所望の状態になるように設定すればよい。以上のような3層の構成において、本実施形態においては、入力層の各ノードから中間層の各ノードへ信号が伝搬し、中間層の各ノードから出力層の各ノードへ信号が伝搬するモデルとしている。また、各ノードから他のノードへの信号伝搬に対しては、図示しないバックプロパゲーションによって教師信号との誤差を最少にするように、各ノードに入力する入力信号に対して重み付けを行う重み付け係数が自動修正されるようになっている。各ノードの値を決定する際の応答関数は、中間層についてシグモイド関数、出力層について極値の求め易いリニア関数を用いる。
【0028】
すなわち、第1のニューラルネットワークNN1においては、図1に示す入力部によって、予め決められたフラグS1〜S5の値を教師信号として入力し、この教師信号に対応する極値のパラメータ(f1〜f3,R1〜R3)および路面温度Tを入力パラメータとして入力して複数のパラメータについて学習を実施しておく。第2のニューラルネットワークNN2においては、図1に示す入力部によって、予め決められた濃度Cの値を教師信号として入力し、この教師信号に対応する極値のパラメータ(f1〜f3,R1〜R3)および路面温度Tを入力パラメータとして入力して複数のパラメータについて学習を実施しておく。本実施形態においては、以上のようにして構成した学習済のニューラルネットワークNN1,NN2を利用して路面状態の判別を行う。
【0029】
(3)路面状態判別処理:
次に、以上のニューラルネットワークNN1,NN2を利用した路面状態の判別処理を説明する。図4は、当該判別処理を示すフローチャートであり、この判別処理を開始すると、CPU9が制御主体となって電波送信手段1における発振器11の周波数を所定範囲(例えば、1〜5GHz)で変化させつつ、その際の反射率を反射率算出部3から取得する(ステップS100)。
【0030】
より具体的には、周波数を変化させる範囲において所定の周波数間隔を設けて発振器11に発振周波数を設定し、発振器11が同発振周波数で発振すると送信アンテナ12を介して路面Rに送信する。送信された電波は路面Rの状況に応じた電波反射体10によって反射電波となり、受信アンテナ22と検波器21を介して電波受信手段2にて受信される。その受信結果を得て反射率算出部3が反射率を求め、CPU9は先に設定した発振周波数と反射率との対応関係を得る。
【0031】
その後、発振周波数を所定の周波数間隔で変化させながら各発振周波数に対応する反射率を得て所定の記憶領域に記憶していく。予定している周波数の全範囲で反射率を求めたら、CPU9が複数極値特定部4を制御し、反射率が極値となる周波数を取得する(ステップS200)。ここでは、周波数の変化に対して反射率の変化が略0となるときの周波数および反射率を特定することができればよく、この処理によって前記3個の極値について周波数と反射率とを特定する。極値を特定するための手法は、公知の手法を利用可能である。
【0032】
次に、CPU9は路面温度取得部13を制御し、路面温度Tを取得する(ステップS300)。以上のようにして極値のパラメータ(f1〜f3,R1〜R3)および路面温度Tの測定値を取得したら、CPU9は路面状態判別部5を制御し、路面状態を取得する(ステップS400)。すなわち、極値のパラメータ(f1〜f3,R1〜R3)および路面温度TをニューラルネットワークNN1,NN2に入力し、それぞれの出力値(フラグS1〜S5および濃度C)を取得する。そして、フラグS1〜S5に基づいて前記カテゴリおよび凍結防止剤や融雪剤の濃度を特定することで路面状態を取得する。路面状態を取得したらCPU9は出力部7を制御し、当該路面状態を示す情報を図示しない中央の観測装置に配信する。
【0033】
以上のように、本実施形態においては、反射電波の特性に対応した反射電波特性値を入力パラメータとしたニューラルネットワークを構成し、測定した入力パラメータを当該ニューラルネットワークに入力して路面状態を示す情報を取得する。従って、反射電波特性値と路面状態との対応関係について定性的な知見を得なくても路面状態を特定することができる。また、ニューラルネットワークは、学習によってその判定精度を上げることができるので、前記知見が得られていなくても正確に路面状態を判別することができる。
【0034】
図5は、上述のNN1による判定結果の例を示す表であり、各路面状態について表に示すサンプル数の判定を行い、NN1による判定結果と実際の路面状態とが合致している場合に正解とし、その正解数、正解率、判定結果を示している。同図5に示すように、正解率はいずれの路面状態についても90%程度あるいはそれ以上であり、3個の極値の周波数と反射率および路面温度をニューラルネットワークに入力した結果、不均一な路面状態を非常に高い精度で判別することができた。
【0035】
(4)他の実施形態:
本発明においては、反射電波等の測定に基づいて反射電波特性値を特定し、ニューラルネットワークに基づいて路面状態を判定することができればよく、上述の実施形態のほか種々の実施形態を採用可能である。例えば、入力パラメータとして、極値の周波数および反射率の値自体を採用する構成の他、複数の極値における周波数や反射率の相対関係を入力パラメータとして採用しても良い。すなわち、複数の極値同士の関係も反射電波の特性に対応しているので、極値同士の関係を入力パラメータとして路面状態を判別するニューラルネットワークとすることも可能である。
【0036】
より具体的には、図2に示す第3の極値の周波数f3と第1の極値の周波数f1との差分D1、第2の極値の周波数f2と第3の極値の周波数f3との差分D2、第2の極値の反射率R2と第1の極値の反射率R1との差分D3、第2の極値の反射率R2と第3の極値の反射率R3との差分D4および路面温度Tを入力パラメータとするニューラルネットワークを構成してもよい。むろん、第1の極値と第2の極値との相対関係を入力パラメータとしても良い。
【0037】
さらに、他の反射電波特性値を入力パラメータとする構成を採用しても良い。例えば、図2に示すような反射率のグラフの形状を示す情報を定義し、この情報を入力パラメータとしても良い。さらに、反射電波が路面温度に大きく依存しない場合には、入力パラメータとして路面温度を採用しない構成であっても良い。さらに、上述の実施形態においては、2つのニューラルネットワークNN1,NN2によって路面状態を判別していたが、むろん、1つのニューラルネットワークによって、路面状態を示すカテゴリのみ、あるいは凍結防止剤や融雪剤の濃度のみを取得する構成を採用することも可能であるし、他の路面状態を含めて判別するため、3以上のニューラルネットワークを構成してもよい。
【0038】
さらに、上述のニューラルネットワークNN1,NN2の構成は一例であり、ネットワークを構成する層の数が3に限定されることはないし、ある層の全てのノードが次の層の全てのノードとリンクしていないようなネットワーク構成を採用しても良い。さらに、ニューラルネットワークの学習は実測結果に限るものではなく、理論計算を基に得られた周波数と反射率を基に予め実施できればよいので、路面状態判別装置の製造段階でニューラルネットワークの構成を確定しておけば、入力部6を備えない路面状態判別装置を構成することも可能である。さらに、ニューラルネットワークの学習は、入力部6によらず図示しない通信部を利用して行っても良い。例えば、通信部によって外部から教師信号と入力パラメータとを配信する構成を採用すれば、所望のタイミングで学習を行うことができ、路面状態判別装置の運用開始後であってもその判別精度を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかる路面状態判別装置のブロック図である。
【図2】反射率と周波数との関係を示す図である。
【図3】ニューラルネットワークの構成を示す図である。
【図4】判別処理を示すフローチャートである。
【図5】路面状態判別結果を示す表である。
【符号の説明】
【0040】
NN1,NN2…ニューラルネットワーク
1…電波送信手段
2…電波受信手段
3…反射率算出部
4…複数極値特定部
5…路面状態判別部
6…入力部
7…出力部
8…制御プログラム記憶部
9…CPU
10…電波反射体
11…発振器
12…送信アンテナ
13…路面温度取得部
21…検波器
22…受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に対して所定の周波数範囲の電波を照射する電波送信手段と、
前記路面からの反射電波を受信してその強度を検知する電波受信手段と、
前記検知した反射電波の強度に基づいて複数の周波数における反射電波の特性に対応した反射電波特性値を取得する反射電波特性値取得手段と、
前記反射電波特性値をニューラルネットワークに入力し、路面状態を示す情報を取得する路面状態特定手段とを具備することを特徴とする路面状態判別装置。
【請求項2】
前記複数の周波数は、前記反射電波の強度に対応した値が極値となる周波数であることを特徴とする請求項1に記載の路面状態判別装置。
【請求項3】
前記反射電波特性値は、前記複数の周波数の値と各周波数における反射率の値とを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の路面状態判別装置。
【請求項4】
前記反射電波特性値は、前記複数の周波数の相対関係と各周波数における反射率の相対関係とを示す情報を含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の路面状態判別装置。
【請求項5】
前記路面の温度を示す温度情報を取得する温度情報取得手段を備え、
前記反射電波特性値取得手段は、前記温度情報を前記反射電波特性値として取得することを特徴とする前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の路面状態判別装置。
【請求項6】
前記路面状態を示す情報は、前記路面上の水分の状態が予め規定したカテゴリに分類されるか否かを示す情報であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の路面状態判別装置。
【請求項7】
前記路面状態を示す情報は、前記路面上の水分に含まれる凍結防止剤や融雪剤として機能し得る無機または有機の化合物の濃度であることを特徴とする前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態判別装置。
【請求項8】
路面に対して所定の周波数範囲の電波を照射する電波送信工程と、
前記路面からの反射電波を受信してその強度を検知する電波受信工程と、
前記検知した反射電波の強度に基づいて複数の周波数における反射電波の特性に対応した反射電波特性値を取得する反射電波特性値取得工程と、
前記反射電波特性値をニューラルネットワークに入力し、路面状態を示す情報を取得する路面状態特定工程とを含むことを特徴とする路面状態判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−180623(P2008−180623A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14696(P2007−14696)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告」Vol.106,No.259、2006年9月19日発行
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)