説明

車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム

【課題】 車両上にはパルス管冷凍機の低温生成部のみを搭載することにより、パルス管冷凍機の車両搭載部の軽量化、省エネルギー化を図ることができる車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムを提供する。
【解決手段】 車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、クライオスタット2内に配置される高温超電導コイル3A〜3Dと、蓄冷器5及びパルス管6からなる低温生成部4と冷端熱交換部7とからなる、車両の走行時に前記高温超電導コイル3A〜3Dの伝導冷却を行う、パルス管冷凍機1の車両搭載部と、圧縮機12、ガス位相制御機構及びバルブユニット11からなる、前記車両の停車時に前記車両搭載部に接続して前記低温生成部4における低温生成を行う、前記パルス管冷凍機1の地上設備10とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導応用機器の冷却システムに係り、特に、車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄冷式冷凍機は、一般的に、1台の冷凍機に対して1台の圧縮機及び1組の制御機構で構成される(下記特許文献1,2参照)。
超電導応用機器を長時間運用するには、浸漬冷却として冷却用冷媒を途切れなく補給するか、伝導冷却で冷却システムを運転し続ける場合がほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−207633号公報
【特許文献2】特開2008−241090公報
【特許文献3】特開2008−283803号公報
【特許文献4】特開2008−283027号公報
【特許文献5】特開2008−279917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
約20K以下の温度域で超電導応用機器の超電導状態を長時間維持するためには、冷凍システム(圧縮機、冷凍機、制御機構、配管等々)を常時運転しなければならない(上記特許文献3〜5参照)。しかし、50K以上の温度域で超電導を維持できる高温超電導体で超電導応用機器を構成できるようになると、超電導体の母材となる金属(銅、アルミニウム等)の比熱が桁違いに大きくなることから、一旦冷却すると、常電導転移するまで十分な時間がとれるようになる。本発明は、かかる知見に基づいて、50Kレベルで超電導状態を維持できる高温超電導応用機器を想定している。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、車両上にはパルス管冷凍機の低温生成部のみを搭載することにより、パルス管冷凍機の車両搭載部の軽量化、省エネルギー化を図ることができる車両に搭載される高温超電導磁石冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、クライオスタット内に配置される高温超電導コイルと、蓄冷器及びパルス管からなる低温生成部と冷端熱交換部とからなる、車両の走行時に前記高温超電導コイルの伝導冷却を行う、パルス管冷凍機の車両搭載部と、圧縮機、ガス位相制御機構及びバルブユニットからなる、前記車両の停車時に前記車両搭載部に接続して前記低温生成部における低温生成を行う、前記パルス管冷凍機の地上設備とを具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記車両が磁気浮上式鉄道車両であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記高温超電導コイルが50Kレベルの超電導状態を維持できるRE系超電導コイルであることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔3〕記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記車両に搭載された高温超電導コイルが50Kレベルの超電導状態となる温度まで冷却することを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕から〔4〕記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管の外周に密着させてFRP円筒を嵌め込むことを特徴とする。
【0009】
〔6〕上記〔5〕記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記FRP円筒を接触状態で嵌め込んだ前記パルス管の上部を前記クライオスタットの常温部フランジに接触させ、前記パルス管の下部を前記低温生成部の冷端熱交換部に接触させることにより、前記FRP円筒を上下方向荷重支持材として用いることを特徴とする。
【0010】
〔7〕上記〔6〕記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管と前記FRP円筒との熱接触をとることを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕から〔7〕記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管冷凍機の2つ以上の車両搭載部を1台の圧縮機で運転して、この圧縮機の圧力を平滑化させることを特徴とする。
【0011】
〔9〕上記〔1〕から〔7〕記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管冷凍機の地上設備のバルブ制御を逆位相で行うことにより、前記パルス管冷凍機の冷凍能力を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)車両へ搭載する極低温を保持するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの軽量化を図ることができる。
(2)メンテナンスの簡略化を図ることができる。
(3)高圧ガス保安法の対象外となり、法の規制を受けないで済む可能性がある。
【0013】
(4)パルス管冷凍機のバルブ制御を逆位相で行うことにより、パルス管冷凍機の冷凍能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示す車両へ搭載するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの全体構成図である。
【図2】本発明の車両へ搭載するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの基礎特性試験装置の内部〔2台のPTR(パルス管冷凍機)〕を示す図面代用写真である。
【図3】本発明の車両へ搭載するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの基礎特性試験装置をトップフランジの上方から見た図面代用写真である。
【図4】本発明のFRP円筒外観とアルミニウムブロックとを示す図面代用写真である。
【図5】本発明の基礎特性試験装置におけるパルス管とFRP円筒の非接触取付け状態を示す図面代用写真である。
【図6】本発明の基礎特性試験装置におけるパルス管とFRP円筒の接触取付け状態を示す図面代用写真である。
【図7】本発明の基礎特性試験装置においてパルス管とFRP円筒が非接触状態となるように構成した場合のパルス管及びFRP円筒の温度を示す特性図である。
【図8】本発明の基礎特性試験装置においてパルス管とFRP円筒が接触状態となるように構成した場合のFRP円筒の温度を示す特性図である。
【図9】本発明の基礎特性試験装置のパルス管へのFRP円筒の取付け態様による冷凍能力を示す特性図である。
【図10】本発明の実施例を示すガス位相制御機構及びバルブユニットの構成図である。
【図11】本発明の実施例を示すバルブ開閉シーケンスを示す図である。
【図12】本発明の冷凍システムの性能評価試験における、冷端熱交換部への金鉄−クロメル熱電対取付箇所を示す図である。
【図13】本発明の冷凍システムの性能評価試験における、パルス管への熱電対取付箇所を示す図である。
【図14】本発明の冷凍システムの冷凍能力とCOP(エネルギー消費効率)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の車両に搭載される高温超電導磁石冷却システムは、クライオスタット内に配置される高温超電導コイルと、蓄冷器及びパルス管からなる低温生成部と冷端熱交換部とからなる、車両の走行時に前記高温超電導コイルの伝導冷却を行う、パルス管冷凍機の車両搭載部と、圧縮機、ガス位相制御機構及びバルブユニットからなる、前記車両の停車時に前記車両搭載部に接続して前記低温生成部における低温生成を行う、前記パルス管冷凍機の地上設備とを具備する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す車両へ搭載するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの全体構成図である。
この図において、1は蓄冷器5、パルス管6、冷端熱交換部(冷却部)7、ガス位相制御機構及びバルブユニット11、圧縮機12、磁気浮上式の鉄道車両を車庫にて冷却する際にガス位相制御機構及びバルブユニット11とパルス管5とを接続する配管13、ガス位相制御機構及びバルブユニット11と圧縮機12とを接続する配管14とからなるパルス管冷凍機、2は磁気浮上式の鉄道車両(図示なし)に搭載されるクライオスタット、3A〜3Dは高温(RE系)超電導コイル、4は蓄冷器5とパルス管6からなるパルス管冷凍機1の低温生成部、8はFRP円筒、10は地上設備である。ここで、高温超電導コイル3A〜3Dは、例えば、50Kレベルの超電導状態を維持できるRE系超電導コイルを用いることができる。
【0017】
本発明では、図1に示すように、例えば超電導リニアモーターカーの超電導磁石(超電導コイル)3A〜3Dにパルス管冷凍機1の低温生成部4を組み込み、超電導磁石3A〜3Dを冷却するときだけ、地上設備10の大型大容量圧縮機12と配管を介して接続し、運転を行う冷却システムを構成する。このように構成することにより、圧縮機12及び制御機構としてのガス位相制御機構及びバルブユニット11を台車、車両に搭載する必要がなくなり、超電導リニアモーターカーの大幅な軽量化が可能となる。車両の軽量化は走行に要するエネルギーにとっての省エネルギー化にもなる。また、車両走行中は、低温生成部4としての蓄冷器5とパルス管6が「管」として存在するだけとなり、高圧ガス保安法の対象外となり得るといった利点もある。さらに、超電導磁石3A〜3Dに低温生成部4を組み込み一体化することで、メンテナンスの簡略化も図ることができる。
【0018】
上記したように、低温生成部4を鉄道車両に搭載する時、パルス管6は薄肉円筒状であるため、そのままで超電導磁石3A〜3Dの荷重を負担することができない。そこで本発明では、パルス管6の外周にFRP円筒8を取り付けることにより、超電導磁石3A〜3Dの上下方向荷重支持材とした。
以下、本発明においてパルス管にFRP円筒を取り付けた場合の基礎特性試験について説明する。
【0019】
図2は本発明の車両へ搭載するパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの基礎特性試験装置の内部を示す図面代用写真、図3はその基礎特性試験装置をトップフランジの上方から見た図面代用写真、図4はFRP円筒外観とアルミニウムブロックとを示す図面代用写真である。
これらの図において、21はパルス管冷凍機の冷端熱交換部(冷却部)、22は蓄冷器、23はパルス管、24は2分割に形成されたFRP円筒、25は常温部フランジ(トップフランジ)、26はアルミニウムブロック固定部、26Aはアルミニウムブロック固定部26に形成された固定用孔、27は2分割に形成されたアルミニウムブロック、27Aはアルミニウムブロック27に形成された固定用孔である。
【0020】
本発明では、荷重支持のために、2分割に形成したアルミニウムブロック27を上部に固定した2分割に形成したFRP円筒24でパルス管23を包み、その上部は常温部フランジ25に、下部は冷端熱交換部21に接触するように構成している。
ここでは、例えば、FRP円筒24の長さは200mm、内径は55mm、厚さは3mm、アルミニウムブロック27の長さは50mm、厚さは最大13mmとし、アルミニウムブロック27とFRP円筒24はエポキシ接着剤で接続するようにしている。
【0021】
この基礎特性試験装置において、パルス管へのFRP円筒の取付け態様による冷凍能力特性を検討するため、以下のような取付け態様を採用する。
図5は基礎特性試験装置におけるパルス管とFRP円筒の非接触取付け状態を示す図面代用写真、図6はその接触取付け状態を示す図面代用写真である。
(1)図5では、パルス管23とFRP円筒24との間に隙間(空間)を設けて、パルス管23とFRP円筒24が非接触状態になるように構成している。なお、アルミニウムブロック27の直下に第1の温度センサ28Aと、続いてその下部に各々50mmの間隔を空けて、第2の温度センサ28Bと、第3の温度センサ28Cと、第4の温度センサ28Dとを取付けるようにした。
【0022】
(2)図6では、パルス管23とFRP円筒24とをアピエゾングリスを介して密着させるようにした。その後、図5と同様に、第1〜第4の温度センサ(図示なし)を取付けるようにした。
図7は本発明の基礎特性試験装置においてパルス管とFRP円筒が非接触状態となるように構成した場合のパルス管及びFRP円筒の温度を示す特性図であり、aはパルス管とFRP円筒とが非接触状態の場合のパルス管の温度、bはその場合のFRP円筒の温度を示している。図8は本発明の基礎特性試験装置においてパルス管とFRP円筒が接触状態となるように構成した場合のFRP円筒の温度を示す特性図であり、cはパルス管とFRP円筒とが接触状態の場合のFRP円筒の温度を示している。
【0023】
これらの図から明らかなように、パルス管とFRP円筒が非接触状態の場合のパルス管の温度(図7のa)と、パルス管とFRP円筒が接触状態の場合のFRP円筒の温度(図8のc)がほぼ等しいことから、FRP円筒とパルス管の接触具合は十分であると考えられる。
図9は本発明の基礎特性試験装置のパルス管へのFRP円筒の取付け態様による冷凍能力を示す特性図であり、横軸に温度〔K〕、縦軸に冷凍能力〔W〕が示されている。
【0024】
この図において、dはパルス管とFRP円筒が接触状態の場合、eはパルス管とFRP円筒が非接触状態の場合、fはFRP円筒を配置しない場合を示している。
例えば、温度50Kにおいて、FRP円筒とパルス管が非接触の場合の冷凍能力は60Wであり、同じく温度50Kにおいて、FRP円筒とパルス管が接触している場合の冷凍能力は略70Wであり、FRP円筒とパルス管が密着している方が冷凍能力が高いことが分かる。
【0025】
なお、パルス管に密着させてFRP円筒を配置した場合の常温域から侵入してくる熱は高温端に吸収され冷凍能力にほとんど影響を与えない。
また、FRP円筒とパルス管が非接触の場合のFRP円筒とパルス管表面の間には温度差ができ、非接触状態では、その温度差による輻射熱の影響によって熱負荷が増えていると考えられる。
【0026】
図10は本発明の実施例を示す地上設備としてのガス位相制御機構及びバルブユニットの構成図、図11はそのバルブ開閉シーケンスを示す図である。
図1とこれらの図10及び図11を参照しながら、本発明のパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムの全体構成について説明する。
図10において、Aは車載部である第1のパルス管冷凍機本体(PTR)、Bは車載部である第2のパルス管冷凍機本体(PTR)、35は高圧側バッファタンク、36は低圧側バッファタンクである。また、HB1,HB2は高圧側バッファタンク35からの第1のPTR,第2のPTRへの供給ガスを制御する高圧側制御バルブ、LB1,LB2は第1のPTR,第2のPTRから低圧側バッファタンク36への戻りガスを制御する低圧側制御バルブ、HC1,HC2は圧縮機12から第1のPTR,第2のPTRへの供給ガスを制御する高圧側制御バルブ、LC1,LC2は第1のPTR,第2のPTRから圧縮機12への戻りガスを制御する低圧側制御バルブである。
【0027】
バルブ開閉シーケンスは、図11のように行われる。すなわち、本発明では、2つ以上のパルス管冷凍機本体を1台の圧縮機で運転する際、冷凍機制御のバルブ開閉操作を図11のようにすることで圧縮機の圧力を平滑化させている。
まず、高圧側制御バルブHB1,HC1 を開き、0〜t/2の間に第1のPTRに、高圧側バッファタンク35と圧縮機12からそれぞれ供給ガス(高圧)を入れる。この時、低圧側制御バルブLB2,LC2を開いているので、第2のPTRからは低圧側バッファタンク36と圧縮機12に戻りガス(低圧)が戻っていく。
【0028】
t/2〜tの間には上記と逆のバルブ開閉動作となる。すなわち、高圧側制御バルブHB2,HC2を開き、第2のPTRに高圧側バッファタンク35と圧縮機12からそれぞれ供給ガス(高圧)を入れる。また、この時、低圧側制御バルブLB1,LC1を開いているので、第1のPTRからは低圧側バッファタンク36と圧縮機12に戻りガス(低圧)が戻っていく。
【0029】
このように、第1のPTR1に高圧ガスが流入しているときには、第2のPTR2は必ず低圧(膨張過程)になるようにバルブ開閉を行う。同様に、第2のPTRに高圧ガスが流入しているときには、第1のPTRは必ず低圧(膨張過程)になるようにバルブ開閉を行う。
このような構成の本発明の冷凍システムについて、その性能評価試験を行った。
【0030】
図12は本発明の冷凍システムの性能評価試験における、冷端熱交換部への金鉄−クロメル熱電対取付箇所を示す図、図13はそのパルス管への熱電対取付箇所を示す図である。
図10に示す第1のパルス管冷凍機本体(PTR)Aの冷端熱交換部7Aの4箇所に、図12に示すように、第1の熱電対41,第2の熱電対42,第3の熱電対43,第4の熱電対44が配置され、それぞれ第1の温度,第2の温度,第3の温度,第4の温度が計測される。同様に、第2のパルス管冷凍機本体(PTR)Bの冷端熱交換部7Bの4箇所に第1の熱電対45,第2の熱電対46,第3の熱電対47,第4の熱電対48が配置され、それぞれ第1の温度,第2の温度,第3の温度,第4の温度が計測される。
【0031】
さらに、図10に示す第1のパルス管冷凍機本体(PTR)Aのパルス管6Aに、図13に示すように、冷凍機フランジ51から距離15mmの位置に第1の熱電対52、同じく80mmの位置に第2の熱電対53、160mmの位置に第3の熱電対54、255mmの位置に第4の熱電対55が配置され、それぞれ第1の温度,第2の温度,第3の温度,第4の温度が計測される。また、第2のパルス管冷凍機本体(PTR)Bのパルス管6Bに、冷凍機フランジ51から距離10mmの位置に第1の熱電対56、同じく80mmの位置に第2の熱電対57、160mmの位置に第3の熱電対58、245mmの位置に第4の熱電対59が配置され、それぞれ第1の温度,第2の温度,第3の温度,第4の温度が計測される。
【0032】
上記から、本発明の冷凍システムの冷凍能力とCOP(エネルギー消費効率)は、図14のように示すことができる。この図14において、gは逆位相の第1のPTRの冷凍能力を、hは逆位相の第2のPTRの冷凍能力を、iは同位相の第1のPTRの冷凍能力を、jは同位相の第2のPTRの冷凍能力を、kは逆位相の第1のPTRのCOP(エネルギー消費効率)、lは逆位相の第2のPTRのCOP(エネルギー消費効率)、mは同位相の第1のPTRのCOP(エネルギー消費効率)、nは同位相の第2のPTRのCOP(エネルギー消費効率)を示している。
【0033】
この図から明らかなように、温度50Kのとき、逆位相の場合は、第1のPTRの出力は57.2W,第2のPTRの出力は61.4Wであり、出力合計118.6Wであるのに対して、同位相の場合は、第1のPTRの出力は41.5W,第2のPTRの出力は34.5Wであり、出力合計76Wである。すなわち、逆位相の場合に、同位相の場合よりも、冷凍能力を高めることができる。
【0034】
なお、上記実施例では、車両に搭載されるものとして説明したが、バックアップシステムが整った船舶や航空機へも適用することができる。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムは、車両上にはパルス管冷凍機の低温生成部のみを搭載することにより、車両に搭載される高温超電導磁石をパルス管冷凍機により冷却するシステムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 パルス管冷凍機
2 クライオスタット
3A〜3D 高温(RE系)超電導コイル
4 低温生成部
5,22 蓄冷器
6,6A,6B,23 パルス管
7,7A,7B,21 冷端熱交換部
8 FRP円筒
10 地上設備
11 ガス位相制御機構及びバルブユニット
12 圧縮機
13,14 配管
24 2分割に形成されたFRP円筒
25 常温部フランジ(トップフランジ)
26 固定金具
26A,27A 固定用孔
27 2分割に形成されたアルミニウムブロック
28A〜28D 温度センサ
31〜34 流量調整弁
35 高圧側バッファタンク
36 低圧側バッファタンク
41,45,52,56 第1の熱電対
42,46,53,57 第2の熱電対
43,47,54,58 第3の熱電対
44,48,55,59 第4の熱電対
51 冷凍機フランジ
A 第1のパルス管冷凍機本体(PTR)
B 第2のパルス管冷凍機本体(PTR)
HB1,HB2,HC1,HC2 高圧側制御バルブ
LB1,LB2,LC1,LC2 低圧側制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クライオスタット内に配置される高温超電導コイルと、
(b)蓄冷器及びパルス管からなる低温生成部と冷端熱交換部とからなる、車両の走行時に前記高温超電導コイルの伝導冷却を行う、パルス管冷凍機の車両搭載部と、
(c)圧縮機、ガス位相制御機構及びバルブユニットからなる、前記車両の停車時に前記車両搭載部に接続して前記低温生成部における低温生成を行う、前記パルス管冷凍機の地上設備とを具備することを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記車両が磁気浮上式鉄道車両であることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記高温超電導コイルが50Kレベルの超電導状態を維持できるRE系超電導コイルであることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項4】
請求項3記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記車両に搭載された高温超電導コイルが50Kレベルの超電導状態となる温度まで冷却することを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項5】
請求項1から4記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管の外周に密着させてFRP円筒を嵌め込むことを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項6】
請求項5記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記FRP円筒を接触状態で嵌め込んだ前記パルス管の上部を前記クライオスタットの常温部フランジに接触させ、前記パルス管の下部を前記低温生成部の冷端熱交換部に接触させることにより、前記FRP円筒を上下方向荷重支持材として用いることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項7】
請求項6記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管と前記FRP円筒との熱接触をとることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項8】
請求項1から7記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管冷凍機の2つ以上の車両搭載部を1台の圧縮機で運転して、該圧縮機の圧力を平滑化させることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。
【請求項9】
請求項1から7記載の何れか一項記載の車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システムにおいて、前記パルス管冷凍機の地上設備のバルブ制御を逆位相で行うことにより、前記パルス管冷凍機の冷凍能力を高めることを特徴とする車両に搭載されるパルス管冷凍機による高温超電導磁石冷却システム。

【図1】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−104781(P2012−104781A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254534(P2010−254534)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】