説明

車両のラジエータグリル構造

【課題】意匠性を向上させるためだけでなく、機能面での向上も図ることができるようにした、車両のラジエータグリル構造を提供する。
【解決手段】ラジエータグリル12を、ラジエータグリル12の上部に配置され、通風口122Aを形成する桟部122Bを有するグリル本体122と、グリル本体122の下部から両側部に延在するパネルによって形成されたグリルパネル部121と、を有し、グリル本体122とグリルパネル部121とが結合されたラジエータグリルアセンブリとして、グリルパネル部12が、フロントバンパの直上に位置するように配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバトラックに用いて好適の車両のラジエータグリル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ前部には、ボディ前部の内方に装備したラジエータに走行風を導入するための通風口を有するラジエータグリルが設けられる。
キャブオーバトラックでは、図3に示すように、キャブ1の前面のフロントボディパネル2を、フロントウインド3の直下に設けられるフロントパネル11と、このフロントパネル11の直下に設けられラジエータグリル(フロントグリルとも言う)12と、フロントパネル11及びラジエータグリル12の左右両側方のフロントコーナー部に設けられるコーナーパネル13,14と、から構成したものがある。
【0003】
なお、ラジエータグリル12は、フロントパネル11に固定されフロントパネル11と共にキャブ本体に対して開閉する構造、若しくは、キャブ本体に固定され開閉しない構造となっている。
さらに、ラジエータグリル12の直下にはフロントバンパ4が設けられる。キャブオーバトラックでは、フロントウインド3の清掃時等に、このフロントバンパ4の上端面に足を掛けてフロントバンパ4に乗って行なう場合が多い。
【0004】
このようなフロントボディパネル2は、車両の商品性を高める意匠表現に関して重要な役割を果たしている。中でも、ラジエータグリル12は、その通風口を形成する桟部12aに機能性と意匠性との両面から工夫が施されたものが多い。また、桟部12aの意匠性を高めるために、桟部12aを他の部分と別色にすることもしばしば行なわれる。この場合、一般的には、ラジエータグリル12の桟部12a以外はフロントパネル11やコーナーパネル13,14と同色にし、桟部12aのみを別色とする。
【0005】
通常、ラジエータグリル12の桟部12aのみを別色とするには、ラジエータグリル12全体をフロントパネル11及びコーナーパネル13,14と同様のボディ色に塗装し、その後、ラジエータグリル12の桟部12a以外をマスキングして桟部12aをボディ色別の桟部設定色に塗装するか、或いは、ラジエータグリル12全体を桟部設定色に塗装し、その後、桟部12aをマスキングしてラジエータグリル12の桟部12a以外をフロントパネル11及びコーナーパネル13,14と同様のボディ色に塗装する。
【0006】
しかしながら、ラジエータグリル12を複数色にする際に必要となるマスキング工程を実施すると、マスキング用の治具費用等の設備コストやマスキングテープ等の消耗品コストによるコスト増を招く上、マスキング処置時間に応じて生産性も低下することになり好ましくない。
また、キャブオーバ車両などのボンネットを備えない車両においてラジエータグリル12の直下にフロントバンパ4が設けられる場合、上述のように、フロントバンパ4の上端面に足を掛けてフロントウインド3の清掃時等を行なうため、足を掛ける際に、ラジエータグリル12の下部が傷付けられるおそれが高く、ラジエータグリル12の下部が損傷するとラジエータグリル12全体を交換しなくてはならず、交換時の部品コスト増を招く。
【0007】
ところで、特許文献1には、乗用車のラジエータグリルに関し、ラジエータグリルを、枠体部とグリル部とに分割し、グリル部の下部を対応する枠体部の下部まで延長し、枠体部の下部とグリル部の下部とを合体させてホールド部を設け、このホールド部に中空部を形成した構造によって、ラジエータグリルを強化する技術が提案されている。
また、かかる構造によって、グリル部を黒色に塗装した後、別途所望の色に塗装された枠体部を組付けるようにして、グリル部をマスキングせずに塗装してもラジエータグリルを容易にツートンカラーにすることができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−58384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1の技術のように、グリル部を枠体部とグリル部とに分割することにより、グリル部をマスキングせずに塗装しながらラジエータグリルをツートンカラーにすることができ、意匠性を向上させることができるが、この場合、ラジエータグリルをどのように分割するかによっては、単に、意匠性を向上させるためだけでなく、機能面での向上も図りうるものと考える。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、意匠性を向上させるためだけでなく、機能面での向上も図ることができるようにした、車両のラジエータグリル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の車両のラジエータグリル構造は、ボンネットを備えない車両のフロントバンパの直上に配設されるラジエータグリルの構造であって、前記ラジエータグリルの上部に配置され、通風口を形成する桟部を有するグリル本体と、前記グリル本体の下部から前記グリル本体の両側部に延在するパネルによって形成されたグリルパネル部と、を有し、前記グリル本体と前記グリルパネル部とが結合されたラジエータグリルアセンブリとして構成され、前記グリルパネル部が、前記フロントバンパの直上に位置するように配設されることを特徴としている。
【0012】
前記グリル本体と、前記グリルパネル部とは、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両のラジエータグリル構造によれば、ラジエータグリルが、通風口を形成する桟部を有するグリル本体と、グリル本体の下部から両側部に延在するパネルによって形成されたグリルパネル部とに分割して形成されており、グリルパネル部が、フロントバンパの直上に位置するように配設されるので、例えば、車両の清掃等のために作業者がフロントバンパ上に乗って作業しようとして、フロントバンパの上に足を掛ける際に、ラジエータグリルの下部が傷付けられても、損傷するのはグリルパネル部のみとなり、グリル本体は交換せずにグリルパネル部のみを交換すればよく、部品交換時の部品コスト抑制を図ることができる。
【0014】
また、グリル本体と、グリルパネル部とを、個々に塗装した後、これらを結合することができ、塗装時にマスキングすることなく、ラジエータグリルを容易にツートンカラーにすることができる。
グリル本体とグリルパネル部とを、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成すれば、塗装も不要となり、ラジエータグリルをより容易にしかも安価にツートンカラーにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両のラジエータグリル構造を説明する分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両のラジエータグリル構造を説明する要部鉛直断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる車両のラジエータグリル構造の前提構成を説明するもので、背景技術にかかる車両のフロント部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかる車両のラジエータグリル構造を説明する。
なお、ここでは、図1の分解斜視図及び図2の断面図に加えて、背景技術として参照した図3を流用して説明する。なお、ここでは、図3の符号12を符号120に読み替えて説明する。
【0017】
本実施形態では、図3に示すように、背景技術に説明したものと同様なキャブオーバトラックに本ラジエータグリル構造を適用している。
まず、本実施形態にかかる車両をはじめに説明する。
つまり、本実施形態にかかるキャブオーバトラックは、図3に示すように、キャブ1の前面のフロントボディパネル2を、フロントウインド3の直下に設けられるフロントパネル11と、このフロントパネル11の直下に設けられラジエータグリル(フロントグリルとも言う)120と、フロントパネル11及びラジエータグリル120の左右両側方のフロントコーナー部に設けられるコーナーパネル13,14と、から構成されている。
【0018】
なお、ラジエータグリル120は、フロントパネル11に固定されフロントパネル11と共にキャブ本体に対して開閉する構造であっても、キャブ本体に固定され開閉しない構造であってもよい。
そして、ラジエータグリル120の直下にはフロントバンパ4が設けられる。キャブオーバトラックでは、フロントウインド3の清掃時等に、このフロントバンパ4の上端面に足を掛けてフロントバンパ4に乗って行なう場合が多い。
【0019】
次に、ラジエータグリル120について説明する。
本ラジエータグリル120は、図1に示すように、ラジエータグリル120の上部に位置するグリル本体122と、グリル本体122の下部からグリル本体122の両側部に延在するグリルパネル部121とを有しており、これらのグリル本体122とグリルパネル部121とが、結合されて構成される。
【0020】
グリル本体122は、通風口122Aが形成された桟部122Bを有し、桟部122Bの外周には、グリルパネル部121に取り付けられる取付片部122a〜122dが要所(ここでは、4隅)に突設されている。
グリルパネル部121は、通風口のような穴を有さないパネルによって形成され、グリルパネル部121の裏面には、グリル本体122の各取付片部122a〜122dに対応して、各取付片部122a〜122dが固定される取付受部121a〜121dが形成されている。
【0021】
取付片部122a〜122dの各取付受部121a〜121dへの固定は、ビス等のネジ止めであってもよく、嵌合であってもよく、また、ネジ止めと嵌合との組み合わせであってもよいが、これらの結合箇所がラジエータグリル120の外観として露出しないように、グリルパネル部121の裏面側に結合箇所が配置されている。
そして、グリル本体122とグリルパネル部121とが結合されラジエータグリルアセンブリとされた上で、図2,図3に示すように、グリルパネル部121がフロントバンパ4の直上に位置するように配設される。
【0022】
また、本実施形態の場合、グリル本体122と、グリルパネル部121とが、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成されている。
本発明の一実施形態にかかる車両のラジエータグリル構造は、上述のように構成されており、ラジエータグリル120が、グリル本体122と、グリルパネル部121とに分割して形成されており、特に、グリルパネル部121が、フロントバンパ4の直上に位置するように配設されるので、例えば、車両の清掃等のために作業者がフロントバンパ4の上面4aに乗って作業しようとして、フロントバンパ上面4aに足を掛ける際に、誤ってラジエータグリル120の下部を蹴って傷付けてしまっても、損傷するのはグリルパネル部121のみとなり、グリル本体122は交換せずにグリルパネル部121のみを交換すればよく、部品交換時の部品コスト抑制を図ることができる。
【0023】
また、グリル本体122とグリルパネル部121とが分離できるので、グリル本体122を様々な色や様々なデザインに構成し、これらを共通のグリルパネル部121と組み合わせることにより、比較的低コストに、様々なデザインのグリル本体122を有するラジエータグリル120を形成することができる。
また、グリル本体122のみをデザイン変更して、比較的低コストに商品性を高めることもできる。
【0024】
また、逆に、異なる車体色に対して、グリル本体122のみを共用させることも容易であり、低コスト化を図ることができる。
本実施形態の場合、グリル本体122とグリルパネル部121とを、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成しているので、塗装も不要となり、ラジエータグリル120をより容易にしかも安価にツートンカラーにすることができる。
【0025】
塗装を行なわないので、塗装コストを削減でき、例えば、グリルパネル部121は車体色と同色の白色等の淡色にし、グリル本体122は黒色等の濃色として、コントラストを付けて意匠性の向上を図ることも容易である。
もちろん、塗装を行なわないので従来塗装時用いたマスキングが不要となり、マスキング用の治具費用等の設備コストやマスキングテープ等の消耗品コストや、マスキング処置時間も不要となり、この面からも生産性の向上とコスト低減を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態を適宜変更して実施できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態の場合、グリル本体122とグリルパネル部121とを、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成しているが、グリル本体122とグリルパネル部121との何れか又は両方を塗装によって仕上げてもよい。
【0027】
この場合も、グリル本体とグリルパネル部とを個々に塗装した後、これらを結合することにより、塗装時にマスキングすることなく、ラジエータグリルを容易にツートンカラーにすることができる。
また、本発明にかかるラジエータグリル構造は、キャブオーバトラック等のキャブオーバ車両に限らずボンネットを備えない車両に広く適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 キャブ
2 フロントボディパネル
3 フロントウインド
11 フロントパネル
12,120 ラジエータグリル(フロントグリル)
13,14 コーナーパネル
121 グリルパネル部
122 グリル本体
122A 通風口
12a,122B 桟部
122a〜122d 取付片部
121a〜121d 取付受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブオーバ車両のフロントバンパの直上に配設されるラジエータグリルの構造であって、
前記ラジエータグリルの上部に配置され、通風口を形成する桟部を有するグリル本体と、
前記グリル本体の下部から前記グリル本体の両側部に延在するパネルによって形成されたグリルパネル部と、を有し、
前記グリル本体と前記グリルパネル部とが結合されたラジエータグリルアセンブリとして構成され、前記グリルパネル部が、前記フロントバンパの直上に位置するように配設される
ことを特徴とする、キャブオーバ車両のラジエータグリル構造。
【請求項2】
前記グリル本体と、前記グリルパネル部とは、それぞれの色に原料着色された樹脂材料によって形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載のキャブオーバ車両のラジエータグリル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126375(P2011−126375A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285291(P2009−285291)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)