説明

車両の周辺の物体を警告するための方法および走行支援システム

本発明は、車両(1)の周辺の物体(4)を警告するための方法に関する。この方法は、車両(1)の走行経路範囲(2)に隣接した車両(1)の周辺の範囲を検出範囲(3)とし、特に規定された時間内に車両(1)が走行する範囲を走行経路範囲(2)とした場合に、車両(1)の周辺の検出範囲(3)の物体(4)の位置を検出するステップと、物体(4)の複数の検出位置に基づいて物体(4)の移動を決定するステップ(200)と、物体(4)が検出範囲(3)で移動したことが突き止められた場合に信号発信するステップ(201)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺の物体を警告するための方法、適宜な方法を実施するためのコンピュータプログラムおよび警告するための方法を使用した走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺の物体を警告するための方法および走行運転支援システムが一般に従来技術により既知である。
【0003】
例えば、ドイツ国特許出願公開第102006002232号明細書により、運転手によって視認不能な領域を監視するための方法が既知である。この方法では、超音波センサが車両の停止時に視認不能な領域内で物体と車両との間隔を検出する。物体と車両との間隔は、車両が停止する度に新たに基準状態として記憶され、所定時間にわたって継続される。車両の停止時に記憶された基準状態に対して間隔が短縮した場合、運転手に信号が送信される。走行ペダル位置および/または動力伝達系の状態および/またはブレーキ装置の状態から車両の運転手の始動願望を導くことができる場合に、記憶された基準状態における適宜な間隔よりも間隔が小さい場合には、別の信号がトリガされる。したがって、この方法では、運転手の側で車両を始動したいといういう意図があり、物体と車両との間の間隔が短縮された場合にのみ信号が生成される。
【0004】
上述の方法では、車両の停止時に監視された範囲内に位置する物体のみが基準の形成に利用されることが欠点である。したがって、例えば、走行時に範囲内に進入した物体、または車両に対して並行に移動する物体は、従来技術に記載の方法では検出されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102006002232号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、走行時にも衝突に関連した物体を検出することができる、車両の周辺の物体を警告するための方法および装置を提供することである。本発明の別の課題は、衝突に関連しない物体を除外する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の車両の周辺の物体を警告するための方法ならびにその他の独立請求項に記載の、適宜な方法を実施するためのコンピュータプログラムおよび走行支援システムに関する。
【0008】
本発明の他の有利な構成が従属請求項に記載されている。
【0009】
第1の態様にしたがって、車両の周辺の物体を警告するための方法が設けられている。この方法は次のステップ:
車両の走行経路範囲に隣接した車両の周辺の範囲を検出範囲とし、特に規定された時間内に車両が走行する範囲を走行経路範囲とした場合に、車両の周辺における検出範囲内の物体の位置を検出するステップと;
物体の複数の検出位置に基づいて物体の移動を決定するステップと;
物体が検出範囲内で移動したことが突き止められた場合に信号発信するステップとを含む。
【0010】
上記方法の思想は、危険発生源となり得る物体の存在に関係して車両の周辺を分析し、必要に応じてこの物体を警告することにある。分析は、車両の絶対位置とは無関係に行われる。すなわち、車両は分析時に移動している場合もある。
【0011】
本方法によれば、物体はあらゆる可動の物体もしくは移動している物体であってもよいし、あらゆる不動の物体、例えば、通行人、建造物であってもよいし、または他の不動もしくは可動の障害物であってもよい。しかしながら、鳥、石およびその他の小さい対象物など極めて小さい物体は、上記方法では考慮されない。これは、これらの対象物が検出されないか、または代替的にこれらの対象物の検出時に検査を行い、所定の大きさよりも小さい物体は考慮に入れないか、または本発明では物体に数えないように検出精度が規定されていることによって得られる。
【0012】
物体を警告するためのこの方法によって、潜在的に衝突に関連している物体と衝突に関連していない物体との間の識別を行うことができる。このために、車両の周辺は2つの範囲、すなわち、走行経路範囲と、走行経路範囲によって制限された検出範囲とに分割されている。車両経路範囲とは、車両が走行および走行方向に基づいて所定時間内に走行する範囲である。車両経路範囲は車両に直接に隣接しており、規定された長さおよび幅を有する。したがって、車両の直進走行時には車両経路範囲は四辺形または長方形となり、カーブ走行時にはカーブ区画の形状となる。検出範囲は、長さおよび幅が制限されており、走行経路範囲に隣接している。検出範囲は、走行経路範囲を全体的に取り囲むか、または走行経路範囲に部分的に、例えば、走行方向に車両経路範囲の右側境界および/または左側境界に隣接していてもよい。
【0013】
検出範囲の物体の関連性を突き止めることができるように、物体の位置が所定時間にわたって、または複数の時点で検出される。検出された位置に基づいて物体の移動を決定することができる。物体の移動が決定された場合、運動方向および速度が検出される。これにより、検出範囲の物体が衝突に関連した物体に発展し得るか否かの推定を行うことができる。推定後、一方では衝突に関連した物体に選択的に反応し、必要に応じて信号をトリガすることができる。他方では、危険性が生じない物体は除外することができる。まず、検出範囲の可動の物体が衝突に関連していると推定される。
【0014】
一改良形態では、検出範囲の物体が走行経路範囲の方向に移動したことが突き止められた場合にのみ信号発信が行われるように設定してもよい。
【0015】
さらに、検出範囲の物体が所定時間内に走行経路範囲に移動することが突き止められた場合にのみ信号発信が行われれるように設定してもよい。
【0016】
さらに、物体が不動であり、所定時間内に検出範囲から走行経路範囲に進入することが突き止められた場合にのみ信号発信を行ってもよい。
【0017】
さらに、この方法はさらなるステップ:
走行経路範囲内の他の物体の位置を検出するステップと、
他の物体が走行経路範囲内に位置することが突き止められた場合に信号発信するステップとを含む。
【0018】
さらに、走行経路範囲および/または検出範囲は車両速度に関係して規定することができる。
【0019】
信号発信は、視覚的および/または聴覚的に行うことができる。
【0020】
他の一態様によれば、データ処理ユニットで実行された場合に本発明による方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラムが設けられている。
【0021】
他の一態様によれば、本発明は、車両の周辺の物体を警告するための走行支援システムを含む。走行支援システムは:
車両の走行経路範囲に隣接した車両の周辺の範囲を検出範囲とし、特に規定された時間内に車両が走行する範囲を走行経路範囲とした場合に、車両の周辺における検出範囲の物体の位置を検出するための少なくとも1つのセンサと、
物体の複数の検出位置に基づいて物体の移動を決定するためのデータ処理ユニットと、
物体が検出範囲内で移動したことが突き止められた場合に信号発信するための信号発信器とを備える。
【0022】
少なくとも1つのセンサは、車両の前方、側方および/または後方のセンサ範囲を監視するセンサであってもよい。
【0023】
次に添付の図面に基づいて好ましい実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両を走行経路範囲および検出範囲と共に示す概略図である。
【図2】車両の周辺の物体を警告するための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、走行支援システム10を有する車両1の概略図を示す。走行支援システム10は少なくとも1つのセンサ12を備え、センサ12は、車両1の周辺で走行経路範囲2、および走行経路範囲2によって限定された、走行経路範囲2とは別の検出範囲3の物体4の位置を検出することができる。走行経路範囲2は、車両1が所定の時間内、例えば2秒以内に走行する範囲として規定されている。すなわち、走行経路範囲2は、速度、走行方向もしくはステアリングホイール位置によって規定される。走行経路範囲2は、車両1に直接に隣接し、規定された長さ6および幅7を有する。したがって、車両1の直進時には走行経路範囲2は四辺形または長方形となり、カーブ走行時にはカーブ区画の形状となる。すなわち、走行経路範囲2は車両1の周辺の直接的に走行される範囲である。走行経路範囲2には検出範囲3が隣接している。検出範囲3は、拡大された走行範囲であり、走行経路範囲2とは異なる形式で監視されることが望ましい。
【0026】
走行経路範囲2および検出範囲2は、物体4の位置に関する情報を正確に検出できることを保障する座標系の形態の走行支援システム10によって提供されている。走行経路範囲2の寸法ならびに検出範囲3の寸法は、車両速度の関数として規定することもできる。検出範囲3は、走行経路範囲2を全体的に取り囲むか、または走行経路範囲2に部分的に、例えば、走行方向に走行経路範囲2の右側および/または左側境界に隣接していてもよい。したがって、例えば、走行経路範囲2は車両1の速度が100km/hの場合には約50mの長さ6および約3mの幅7を有する。検出範囲3は、例えば、対応した速度で、走行経路範囲2の側方でそれぞれ約50mの長さ8および約2mの幅9を有する。
【0027】
図1の走行支援システム10は4つのセンサ12を備える。しかしながら、走行支援システム10は、これよりも多数のセンサ12または少数のセンサを備えていてもよい。センサ12としては、超音波、ライダー、レーダーまたはその他の適宜なセンサ12を使用することができる。センサ12は、相互に重なるセンサ範囲14を有する楕円状の放射特性を有していてもよい。これにより、走行経路範囲2および/または検出範囲3の包括的な検出を確保することができる。すなわち、走行経路範囲2および検出範囲3は、センサ12によって規定されたセンサ範囲14の内部に位置する。センサ12は、車両1の任意の位置に配置することができ、例えば、車両1の前方、側方および/または後方のセンサ範囲14を監視する。したがって、センサ12は、走行経路範囲2および検出範囲3で物体4,5を検出し、これらの物体4,5の位置に関する情報を座標系で走行支援システム10のデータ処理ユニットに伝送する。
【0028】
データ処理ユニットは、物体4,5の運動を、少なくとも1つのセンサ12によって検出された位置に基づき決定することができる。このために、センサは、少なくとも2つの異なる時点で物体4,5の位置を検出し、これにより、データ処理ユニットは物体4,5の運動方向および速度を既知の形式で、例えばベクトルにより計算することができる。このようにして、検出範囲3および/または走行経路範囲2の物体4,5が不動の物体であるかまたは可動の物体であるか否かを突き止めることができる。さらにデータ処理ユニットは、検出範囲3の不動および/または可動の物体4が走行経路範囲2の方向に移動するか否か、または検出範囲3の不動および/または可動の物体4が所定の時間内に検出範囲3から走行経路範囲2に進入するか否かを突き止めることができる。
【0029】
危険状態を信号発信するために、走行支援システム10はさらに信号発生器を備え、信号発生器はデータ処理ユニットに接続されており、物体4,5の位置、運動方向および速度に関する情報をデータ処理ユニットから受信する。信号発生器は、危険状態において視覚的および/または聴覚的な警告信号を発信することができる。危険状態は、特に、例えば可動の物体4が検出範囲3に位置し、および/または検出範囲3の可動の物体4が走行経路の方向に移動した場合、および/または可動の物体4が所定時間内に検出範囲3から走行経路範囲2に進入する場合、および/または検出範囲3の物体4が不動の物体4であり、この不動の物体4が所定時間内に検出範囲3から走行経路範囲2に進入する場合に生じる。さらに危険状態は、不動および/または可動の物体5が走行経路範囲2に位置する場合に信号発信される。どのような危険状態が警告信号によって信号発信されるかについては可変に設定することができる。
【0030】
図2は、車両1の周辺で物体4,5を警告するための方法のフロー図を示す。この方法は、次のステップを含む:
まず、第1方法ステップ100で、物体5が走行経路範囲2に位置しているか否かを突き止める。物体5が走行経路範囲2に位置している場合、このことが適宜に信号発信される(ステップ101)。
【0031】
第1方法ステップ100で物体5が走行経路範囲2に位置してことが突き止められた場合、次の方法ステップ200で、物体4が検出範囲3に位置するか否か、この物体4の位置が、可動の物体4であると推定され得るように変化したか否かが突き止められる。可動の物体4が検出範囲3に位置する場合、このことがステップ201で信号発信される。
【0032】
しかしながら、方法ステップ200で、可動の物体4が検出範囲3に位置していないことが突き止められた場合、次の方法ステップ300で、車両1の固有運動に基づいて車両経路範囲2に移動する不動の物体4が検出範囲3に位置しているか否かが突き止められる。このことが突き止められた場合、ステップ301でこのことが信号発信される。
【0033】
個々の方法ステップ100,200,300は規定された順序に束縛されない。すなわち、個々の方法ステップは任意の順序で、または同時に進行してもよい。
【0034】
したがって、上述の方法によれば、ステップ101,201,301に応じて、車両1の走行時に緊急の危険状態が生じた場合には危険が信号発信される。この方法によって、車両1と物体4,5との間の絶対的な間隔変化の評価は行わない。むしろ、車両の移動に関係して物体4,5の位置、運動方向および速度の決定が行われる。これにより、車両1の走行時に、物体4,5が不動の物体4,5である否か、または物体4,5が可動の物体4,5であるか否かを識別することができる。物体4,5が例えば車両1と並行して移動しているために車両1との間隔を変化させない物体4,5も同様に衝突に関連しているものとして検出することができる。
【0035】
したがって、図2に示した方法では、信号発信は、物体5が走行経路範囲2に位置している場合および/または可動の物体4が検出範囲3に位置している場合および/または不動の物体4が車両1の固有運動に基づいて検出範囲3から走行経路範囲2に移動した場合に、ステップ101,201,301にしたがって行われる。しかしながら、車両1の固有運動に基づいて検出範囲3から走行経路範囲2に移動しない不動の物体4が検出範囲3に位置している場合には、衝突警告が抑制されるように設定してもよい。このような状況は、直接的な危険状態を示すものではなく、したがって信号発信されない。このように、車両1の運転手は、過剰な信号によって気をそらされることはない。
【0036】
車両経路範囲2および/または検出範囲3は、車両速度に関係して規定することができる。これにより、高速時に高まる危険性を考慮に入れることができる。したがって、例えば、車両1の速度が100km/hの場合には車両経路範囲2は50mの長さ6および3mの幅7を備えることができる。検出範囲3は、例えば、対応した速度では車両経路範囲2を2mの幅9で完全に包囲してもよい。
【0037】
ステップ101,201,301にしたがった信号発信は、視覚的および/または聴覚的/または触覚的な信号の形態で行ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の周辺の物体(4)を警告するための方法において、
前記車両(1)の走行経路範囲(2)に隣接した車両(1)の周辺の範囲を検出範囲(3)とし、特に規定された時間内に前記車両(1)が走行する範囲を走行経路範囲(2)とした場合に、前記車両(1)の周辺における前記検出範囲(3)の前記物体(4)の位置を検出するステップと、
前記物体(4)の複数の検出位置に基づいて物体(4)の移動を決定するステップ(200)と、
前記物体(4)が前記検出範囲(3)で移動したことが突き止められた場合に信号発信するステップ(201)とを含む方法。
【請求項2】
前記検出範囲(3)の前記物体(4)が前記走行経路範囲(2)の方向に移動したことが突き止められた場合にのみ前記信号発信するステップ(201)を行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出範囲(3)の前記物体(4)が所定時間内に前記走行経路範囲(2)に移動することが突き止められた場合にのみ信号発信を行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物体(4)が不動であり、所定時間内に前記検出範囲(3)から前記走行経路範囲(2)に進入することが突き止められた場合にのみ前記信号発信するステップ(301)を行う請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、
他の物体(5)の位置を検出するステップ(100)と、
他の物体(5)が前記走行経路範囲(2)に位置することが突き止められた場合に信号発信するステップ(101)と
をさらに含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
車両速度に関係して前記走行経路範囲(2)および/または前記検出範囲(3)の大きさおよび/または形状を規定する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記信号発信(101,201,301)を視覚的および/または聴覚的に行う請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
データ処理ユニットにより実行された場合に請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
車両(1)の周辺の物体(4)を警告するための走行支援システム(10)であって、
前記車両(1)の走行経路範囲(2)に隣接した車両(1)の周辺の範囲を検出範囲(3)とし、特に規定された時間内に前記車両(1)が走行する範囲を走行経路範囲(2)とした場合に、前記車両(1)の周辺における前記検出範囲(3)の前記物体(4)の位置を検出するための少なくとも1つのセンサ(12)と、
前記物体(4)の複数の検出位置に基づいて物体(4)の移動を決定するためのデータ処理ユニットと、
前記物体(4)が前記検出範囲(3)で移動したことが突き止められた場合に信号発信(201)するための信号発信器と
を備える走行支援システム(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサ(12)が、前記車両(1)の前方、側方および/または後方のセンサ範囲(14)を監視するセンサ(12)である請求項9に記載の走行支援システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511755(P2013−511755A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539249(P2012−539249)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065389
【国際公開番号】WO2011/064039
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】