説明

車両の操舵装置

【課題】車輪が転舵するときに、該車輪がホイールハウスに干渉することを回避し、最大転舵角を大きくする。
【解決手段】転舵輪1を回転自在に支持するアクスル部材2を、車両前後方向に延在する第1ロアリンク7の車幅方向変位可能な車幅方向外側端8に転舵可能に取り付ける。第1ロアリンク7の車幅方向内側端を車体側のブラケット11に取り付ける。ステアリングラック20からの操舵入力に応じて車幅方向に回動するプレート6とアクスル部材2とをタイロッド5でリンク結合し、プレート6と第1ロアリンク7とを第2ロアリンク13でリンク結合する。操舵操作により、プレート6が車幅方向に回動して、アクスル部材2を転舵すると同時にアクスル部材2を車幅外方へ押し出す。この結果、転舵輪1の大転舵時には、転舵輪1が車幅内方にあるホイールハウスから離間し、干渉を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵輪を転舵させる操舵装置につき、転舵輪がホイールハウスに干渉することなく最大転舵角を大きくする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キングピン軸を中心に、転舵輪を転舵させる車両の操舵装置としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の車両の操舵装置は、キングピン軸に沿って上下方向に延在するキングピンアームの下端に車輪を支持し、操舵時にはキングピン軸を中心としてキングピンアームを回転させることにより、車輪を大きく転舵するものである。
【特許文献1】特開平06-064556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、車輪が転舵すると、車輪の前部あるいは後部のいずれか一部が車幅内方に移動するとともに残る一部が車幅外方に移動するため、転舵角を大きくすると、車幅内方に移動した車輪の一部が、車体に取り付けられて車内空間と車輪が転舵する領域とを区画しているホイールハウスに干渉する。この干渉を回避するため、ホイールハウスを車幅内方に取り付けて車体および車輪間の隙間を拡幅すれば、車輪の最大転舵角を大きく取ることができるようになるものの、今度は車内空間を犠牲にすることとなる。
【0004】
本発明は、ホイールハウスを車幅内方に取り付けて、車体および車輪間の隙間を拡幅することや、車内空間を犠牲にすることなく、車輪の最大転舵角を大きく取ることができる車両の操舵装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため本発明による車両の操舵装置は、請求項1に記載のごとく、
転舵輪を回転自在に取り付けたアクスル部材を、車体に対し車幅方向揺動可能な第1リンクに転舵可能に取り付けるとともに、
前記アクスル部材と、車体に対し車幅方向揺動可能なプレートを、タイロッドを介してリンク結合し、
前記プレートの揺動による前記アクスル部材の転舵中、左右いずれ方向への転舵である場合も、該プレートの揺動が前記第1リンクを車幅方向外方へ揺動させて前記アクスル部材を車幅方向外方へ変位させるよう、前記第1リンクおよび前記プレート間に第2リンクを架設したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
かかる本発明の構成によれば、転舵時にアクスル部材が車幅外方に押し出されるため、転舵輪がホイールハウスから離れる。したがって、転舵輪を大きく転舵させることにより、転舵輪の前方部あるいは後方部が車幅内方に大きく移動しても、転舵輪がホイールハウスに干渉することを回避することができ、転舵輪の最大転舵角を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例になる操舵装置につき、左前方部の転舵輪を示す非転舵時の平面図である。図示せざる右前輪も車幅方向左右対称に同様の構成を具える。
アクスル部材2は車幅外方で、転舵輪1を回転自在に支持する。アクスル部材2はその前端部2fで車両前方に向けて突出したアーム部3を具える。アーム部3の先端4はボールジョイントでタイロッド5と連結し、アクスル部材2はタイロッド5を介して後述のプレート6と回動可能にリンク結合し、タイロッド5は操舵リンク機構を構成する。また、タイロッド5はプレート6とともにアクスル部材2の転舵操作系を構成する。
【0008】
また、アクスル部材2は車幅内方で、車両前後方向に延在する第1ロアリンク7の前端8に転舵可能に取り付けられる。すなわち前端8にキングピン軸が通る。前端8にはボールジョイントを用いる。第1ロアリンク7の後端9は、第1ロアリンク7からみて転舵輪1側とは反対側(車体側)にある車体側メンバ10に固定したブラケット11に、弾性ブッシュを用いて取り付けられる。第1ロアリンク7は、後端9を基端とし、前端8を遊端として上下方向揺動可能とする。
【0009】
また第1ロアリンク7の両端8,9は車両前後方向に延在することから、第1ロアリンク7は後端9を基端として、車両上下方向に延在する軸を中心として回動可能であり、遊端に相当する前端8が車体側メンバ10に対し車幅方向に揺動可能である。したがって、前端8に取り付けられたアクスル部材2は車幅方向に変位可能である。
前端8に近い第1ロアリンク8の車幅方向外側端部12と、車幅方向外側端部12よりも車幅内方にあるプレート6との間に、第2ロアリンク13を架設する。
【0010】
プレート6は、上下方向に厚みをもち、水平方向に広がる板状体で、車両前後方向に延在する。プレート6は、後端14で、車体側メンバ10に固定したブラケット15に、上下方向に延在する軸を中心として車幅方向揺動可能に取り付けられる。プレート6の後端14と前端17との間にある中間部が後端14よりも車幅内方になるようプレート6を円弧形状に形成する。
プレート6中間部にあって、取付部位14よりもやや前方にある部位16で、上記第2ロアリンク13の車幅方向内側端と回動可能に連結する。
以上より、連結部位16がプレート6の取付部位14よりも車幅内方になるよう、また、取付部位14が第2ロアリンク13の両端連結部位12,16を結ぶ直線よりも車両後方になるよう、これを配設する。これらの理由については後述する。
【0011】
第2ロアリンク13は、車幅方向内側端の連結部位16を基端とし、車幅方向外側端12を遊端として上下方向に揺動可能とし、バウンドおよびリバウンドする。このため外側端12にはボールジョイントを、内側端16には弾性ブッシュを用いる。あるいは、外側端12には弾性ブッシュを、内側端16にはボールジョイントを用いてもよい。
【0012】
プレート6の前端17は、略車両左右方向に延在するリンク18の一端と回動可能に連結する。またプレート6の前端部にある連結点19で、前述のタイロッド5と回動可能に連結する。
上記リンク18の他端は、車両左右方向に延在するステアリングラック20と回動可能に連結する。これにより、ステアリングラック20と、リンク18と、プレート6と、タイロッド5とを順次介してステアリングラック20からの操舵入力をアクスル部材2へ伝達して、アクスル部材2を転舵する。
【0013】
転舵輪1は、図1に示した上記第1ロアリンク7および第2ロアリンク13の他、図示せざるアッパーリンクや、ストラット部材等と合わせて支持されるところ、アッパーリンクにあっては、第1ロアリンク7および第2ロアリンク13と同様の構成であってもよく、ストラット部材にあっては、後述する押し出し作用を妨げないものであればよい。
【0014】
次に、操舵により転舵輪1が転舵する様子について説明する。
図2は転舵輪1が旋回内輪として左折方向に大転舵した状態を示す平面図である。
図示せざるステアリングホイールからの操舵入力によってステアリングラック20が図2中、矢αの方向(車幅方向左)に移動するに伴い、リンク18も車幅外方に移動する。リンク18はプレート6を図2中、矢βの方向(左回転)に回動させる。
これに伴い、プレート6はタイロッド5を車幅外方に押し出し、アクスル部材2を左転舵させる。よって、アクスル部材2に取り付けられた転舵輪1も左転舵する。
なお、第1ロアリンク7は両端8,9を結んだ直線に対し、車幅内方へ湾曲するよう形成されているため、図2に示すように転舵輪1が左へ大転舵しても、転舵輪1の後方部が第1ロアリンク7に衝突する等、干渉することはない。また、タイロッド5とリンク18との衝突を防止するため、タイロッド5とリンク18を上下方向に重ね合わせ可能となるよう連結点17,19の上下方向位置に段差を設ける。
【0015】
ここで付言すると、第1ロアリンク7と第2ロアリンク13との連結部位12は、第1ロアリンク7の両端8,9を結んだ軸線上(直線上)に配置される。連結部位12、両端8,9を一直線に配置することにより、連結部位12で不要なこじりが発生することを回避するためである。不要なこじりとは、第1ロアリンク7がその軸線中心で回動すること、つまり連結位置12と、両端8,9とを三角形配置とすれば、連結位置12を折れ曲がり点として第1ロアリンク7の軸線が第2ロアリンクの軸線に対し相対変位することである。
【0016】
プレート6と第2ロアリンク13との連結部位16は、取付部位14よりも車幅内方に配設されているため、プレート6の回動に伴い連結部位16は車幅外方へ移動し、第2ロアリンク13を図2中、矢γの方向に押し出し、第1ロアリンク7を図2中、矢δの方向(左回転)に回動させる。これに伴いアクスル部材2を車幅外方へ押し出す。よって、アクスル部材2に取り付けられた転舵輪1も車幅外方へ押し出される。
【0017】
上記の左転舵時には、転舵輪1を車幅外方へ押し出すことにより、転舵輪1が車体側メンバ10から離間する。したがって、大転舵した転舵輪1が、転舵輪1より車幅内方にあって車体側メンバ10に取り付けられたホイールハウス(図示せず)に衝突することを回避することができる。
【0018】
図3は転舵輪1が旋回外輪として右折方向に大転舵した状態を示す平面図である。
ステアリングラック20が図3中、矢Aの方向(車幅方向右)に移動するに伴い、リンク18も車幅内方に移動する。リンク18はプレート6を図3中、矢Bの方向(右回転)に回動させる。これに伴いプレート6はタイロッド5を車幅内方に引き込み、アクスル部材2を右転舵させる。よって、アクスル部材2に取り付けられた転舵輪1も右転舵する。
【0019】
同時にプレート6は、第2ロアリンク13をも図3中、矢Cの方向に押し出し、第1ロアリンク7を図3中、矢Dの方向(左回転)に回動させる。これに伴いアクスル部材2を車幅外方へ押し出す。よって、アクスル部材2に取り付けられた転舵輪1も車幅外方へ押し出される。
【0020】
上記の右転舵時にも、転舵輪1を車幅外方へ押し出すことにより、転舵輪1が車体側メンバ10から離間する。したがって、大転舵した転舵輪1が、転舵輪1より車幅内方にあって車体側メンバ10に取り付けられたホイールハウス(図示せず)に衝突することを回避することができる。
【0021】
ここで取付部位14を、非転舵時(直進時)に、第2ロアリンク13の両端連結部位12,16を結ぶ直線よりも車両後方になるよう、かつ、連結部位16を、プレート6の取付部位14よりも車幅内方になるよう配設することにより得られる効果につき、旋回外輪と旋回内輪とで分説する。
右折のため転舵輪1が右転舵する場合、転舵輪1は旋回外輪となる。この場合において、転舵輪1の転舵当初に相当し、プレート6の回動角度が右方向Bに僅かな微転舵時には、図4(a)に示すように第2ロアリンク13の連結部位16を、略車幅内方たるE方向に引き込む。このため、転舵輪1はアクスル部材2を介して若干車幅内方に引き込まれる。
【0022】
しかし、引き続きプレート6の回動角度が右方向Bに増加し続けると、図4(b)の小転舵時に示すように今度は第2ロアリンク13の連結部位16を、やや車幅外方たるF方向に押し出し始める。そして、引き続きプレート6の回動角度が右方向Bに増加し続け、転舵輪1の転舵角がかなり大きくなる大転舵時に至っては、図4(c)に示すように第2ロアリンク13の連結部位16を、略車幅外方たるG方向に押し出す。このため、転舵輪1はアクスル部材2を介して車幅外方に大きく押し出される。
【0023】
このように転舵時において旋回外輪は、転舵当初で一旦、車幅内方に引き込まれ、その後車幅外方に押し出される。
これに対し転舵時において旋回内輪は、転舵輪1と車幅方向左右対称の構成を有する図2に示す旋回内輪と同様に、転舵当初で一旦、車幅内方に引き込まれることなく、最初から大きく押し出される。
したがって取付部位14を、第2ロアリンク13の両端連結部位12,16を結ぶ直線よりも車両後方になるよう、かつ、連結部位16を、プレート6の取付部位14よりも車幅内方になるよう配設することにより得られる効果として、車両旋回時には、旋回外輪よりも大きく転舵する旋回内輪を、旋回外輪よりもより車幅外方へ押し出すことが可能となり、旋回外輪よりも大きく転舵する旋回内輪がホイールハウスに干渉することを効果的に回避できる。
【0024】
図5は本発明の他の実施例になる操舵装置につき、非転舵時の左前輪を示す平面図である。図示せざる右前輪も左右対称に同様の構成を具える。上記した一の実施例と同様の部品については同一符号を付して説明を省略し、異なる部品については新たに符号を付して説明する。
この実施例では、前述のプレート6とは異なる平面形状を有するプレート21を用いる。プレート21は車両前後方向に延在し、その後端を車幅方向に拡幅するよう形成する。この後端のうち車幅外方にある外側端22を、車体側メンバ10の一部をなすブラケット15に、上下方向に延在する軸を中心に回動可能に取り付ける。プレート21の後端のうち取付部位22より車幅内方にある内側端16は、第2ロアリンク13の車幅方向内側端と連結する。これにより、取付部位22は、第2ロアリンク13の両端12,16を結んだ直線上に略一致するよう配設される。
【0025】
このように取付部位22を、第2ロアリンク13の両端連結部位12,16を結ぶ直線上に配設する本実施例の場合、プレート21が回動すると、右回動または左回動のいずれであっても、回動角度が等しければ連結部位16が車幅外方へ同じ移動量で移動することから、車両旋回時には、旋回内輪を、旋回外輪と略同じ移動量で車幅外方へ押し出すことが可能となる。
【0026】
図6は本発明の別の実施例になる操舵装置につき、非転舵時の左前輪を示す平面図である。図示せざる右前輪も左右対称に同様の構成を具える。上記した各実施例と同様の部品については同一符号を付して説明を省略し、異なる部品については新たに符号を付して説明する。図6に示す別の実施例の特徴は、プレート31が、その前端32を回動中心としてブラケット15に取り付け、その後端29が車幅方向に移動するものである。
【0027】
アクスル部材2はその後端部2rで車両後方に向けて突出したアーム部27を具える。アーム部27の先端28はボールジョイントでタイロッド5の一端と連結し、アクスル部材2はタイロッド5を介してプレート31と回動可能にリンク結合する。
【0028】
プレート31は略車両前後方向に延在し、前端32で車体側メンバ10に固定したブラケット15に回動可能に支持され、車幅方向に揺動可能とする。またプレート31の前端部にある連結部位16で、第2ロアリンク13の車幅方向内側端と回動可能に連結する。
以上より、連結部位16がプレート31の取付部位32よりも車幅内方になるよう、また、取付部位32が第2ロアリンク13の両端連結部位12,16を結ぶ直線の近傍に位置するようこれを配設する。
【0029】
プレート31の後端29は、車幅方向に延在する上記タイロッド5の他端と回動可能に連結する。またプレート31の後端部にある連結点33で、リンク18を介して車幅方向に延在するステアリングラック20とリンク結合する。
【0030】
このように取付部位32をプレート31の前端に配設することにより、プレート31と連結するタイロッド5や、リンク18や、第2ロアリンク13を、車体後方へ配設することが可能になる。したがってステアリングラック20や、これに噛合する図示しない操舵入力装置を車体後方へ配設することができ、アクスル部材2のアクスル軸から車両前方へ車体が突出するオーバーハング量を減少させて、車体全長を短くすることができる。また、操舵入力装置をアクスル軸よりも後方へ配設して、車体前部の部品配置を不要にすることから、車体が前方の物体に衝突する際の衝撃吸収スペースを車体前部に確保することが可能となり、安全性能を向上することができる。
【0031】
なお、図1,5,6に示す上記実施例はいずれも、第1ロアリンク7の前端8を車幅外方へ押し出すものであるが、上記実施例とは逆に、第1ロアリンク7の前端を車体側メンバ10に取り付けて基端とし、後端を車幅方向に揺動可能としてもよいこともちろんである。
【0032】
ところで本発明になる上記実施例においては、図1,5,6に示すように転舵輪1を回転自在に支持するアクスル部材2を、車体側メンバ10に対し車幅方向揺動可能な第1ロアリンク7に転舵可能に支持して、転舵輪1を車体側メンバ10に対し転舵可能、且つ、車幅方向変位可能に取り付ける。
アクスル部材2の操舵リンク機構としてタイロッド5は、アーム部3(27)と、車体側メンバ10に対し車幅方向に揺動可能なプレート6(21,31)とをリンク結合する。そしてプレート6(21,31)およびタイロッド5は、ステアリングラック20およびリンク18からの操舵入力をアクスル部材2に伝達するアクスル部材2の転舵操作系を構成する。
そして、プレート6(21,31)の揺動によるアクスル部材2の転舵中、左転舵または右転舵いずれ方向への転舵である場合も、プレート6(21,31)の揺動が第1ロアリンク7を車幅方向外方へ揺動させてアクスル部材2を車幅方向外方へ変位させるよう、第1ロアリンク7およびプレート6(21,31)間に第2ロアリンク13を架設する。
この結果、図2に示す左旋回または図3に示す右旋回いずれの場合であっても転舵輪1の転舵角が大きいほど、アクスル部材2が車体側メンバ10に取り付けられた図示しないホイールハウスから離れて、転舵輪1がホイールハウスに干渉することを回避することが可能になる。したがって、転舵輪1の最大転舵角を大きくすることができ、車内空間を犠牲にすることなく、車両の旋回性能を向上させることができる。
【0033】
具体的には上記実施例において、図1,5,6に示すように第1ロアリンク7は車両前後方向に延在し、第1ロアリンク7の一端9を車体側メンバ10に取り付けて第1ロアリンク7の他端8を車幅方向揺動可能とし、この第1ロアリンク7の他端8にはアクスル部材2を転舵可能に取り付ける。
プレート6を車両前後方向に延在させ、一端14でプレート6(21,31)を車体側ブラケット15に取り付けることにより他端17側を操舵入力に応じて車幅方向に揺動可能とする。プレート6(21,31)の他端側部位19とタイロッド5を回動可能に連結し転舵操作系を構成する。
第2ロアリンク13は略車幅方向に延在し、第2ロアリンク13の車幅内方端16とプレート6の他端17側における部位16とを回動可能に連結し、第2ロアリンク13の車幅外方端12と第1ロアリンク7の両端8,9間における部位12とを回動可能に連結する。
そして、連結部位16を、取付部位14(22,32)よりも車幅内方に設ける。
この結果、転舵時にはプレート6(21,31)が回動し、右回動または左回動のいずれであっても、連結部位16が車幅外方へ押し出されて、転舵輪1を車体側メンバ10から離すことができる。
【0034】
また上記実施例においては、図1に示すようにプレート6の両端14,17を車両前後方向に延在させ、両端14,17のうちの後端14を車体側ブラケット15に取り付け、前端17側を操舵入力に応じて車幅方向揺動可能とする。
プレート6の中間部が取付部位14より車幅内方に位置するようプレート6を形成し、プレート6の中間部にプレート6と第2ロアリンク13との連結部位16を設ける。
この結果、連結部位16は取付部位14より前方に位置し、取付部位14は第2ロアリンク13の両端12,16を結ぶ直線よりも後方に位置し、図4(a)〜(c)に示すように旋回内輪が旋回外輪よりも大きく車幅外方へ押し出される。したがって、旋回外輪よりも大きく転舵する旋回内輪がホイールハウスに干渉することを回避できる。
【0035】
また上記実施例においては、図5に示すようにプレート21の両端を車両前後方向に延在させ、プレート21の後端を車幅方向に拡幅し、拡幅した後端のうちの車幅方向外側部を車体側ブラケット15に枢支して回転中心22とし、拡幅した後端のうち回転中心22より車幅内方にプレート21と第2ロアリンク13との連結部位16を設ける。
この結果、右転舵または左転舵のいずれであっても、転舵角が等しければ連結部位16が車幅外方へ同じ移動量で移動することから、車両旋回時には、旋回内輪を、旋回外輪と略同じ移動量で車幅外方へ押し出すことが可能となる。
【0036】
また上記実施例においては、図1,5,6に示すように第1ロアリンク7と第2ロアリンク13との連結部位12を、第1ロアリンク両端の各取付部位8,9同士を結ぶ直線上に設ける。
この結果、連結部位12で不要なこじりが発生することを回避することが可能になり、連結部位12の耐久性能が悪化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例になる操舵装置を示す平面図である。
【図2】同操舵装置が旋回内輪として転舵した状態を示す平面図である。
【図3】同操舵装置が旋回外輪として転舵した状態を示す平面図である。
【図4】同操舵装置が旋回外輪として転舵する場合に、プレートおよび第2ロアリンクが回動する様子を示した作用説明図であり、 (a)は、転舵角が微小な微転舵時を、 (b)は、転舵角が小さな小転舵時を、 (c)は、転舵角が大きな大転舵時を示す。
【図5】本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。
【図6】本発明の別の実施例になる操舵装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 転舵輪
2 アクスル部材
5 タイロッド
6 プレート
7 第1ロアリンク
13 第2ロアリンク
14 プレート取付部位(プレート回動中心)
20 ステアリングラック
21,31 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵輪を回転自在に取り付けたアクスル部材を、車体に対し車幅方向揺動可能な第1リンクに転舵可能に取り付けるとともに、
前記アクスル部材と、車体に対し車幅方向揺動可能なプレートを、タイロッドを介してリンク結合し、
前記プレートの揺動による前記アクスル部材の転舵中、左右いずれ方向への転舵である場合も、該プレートの揺動が前記第1リンクを車幅方向外方へ揺動させて前記アクスル部材を車幅方向外方へ変位させるよう、前記第1リンクおよび前記プレート間に第2リンクを架設したことを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の操舵装置において、前記第1リンクを車両前後方向に延在させ、該第1リンクの一端を車体に取り付けて他端を車幅方向揺動可能とし、前記アクスル部材を該他端に転舵可能に取り付け、
前記プレートを車両前後方向に延在させ、該プレートの一端を車体に取り付けて他端側を操舵入力に応じて車幅方向揺動可能とし、前記タイロッドと該他端側における部位を回動可能に連結し、
前記第2リンクを略車幅方向に延在させて、該第2リンクの車幅内方端と前記プレートの他端側における部位を回動可能に連結し、該第2リンクの車幅外方端と前記第1リンクの前記両端間における部位を回動可能に連結し、
前記プレートと前記第2リンクの前記連結部位を、前記プレートの前記車体取付部位よりも車幅内方に設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の操舵装置において、
前記プレートの後端を車体に取り付けて前端側を操舵入力に応じて車幅方向揺動可能とし、
該プレートの前後両端間にある中間部が該プレートの前記車体取付部位より車幅内方に位置するよう該プレートを形成し、該中間部に該プレートと前記第2リンクの前記連結部位を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両の操舵装置において、
前記プレートの一端を車幅方向に拡幅し、該拡幅した一端のうちの車幅方向外側部を車体に取り付け、該拡幅した一端にあって該車体取付部位より車幅内方の部位に該プレートと前記第2リンクの前記連結部位を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両の操舵装置において、
前記第1リンクと前記第2リンクの前記連結部位を、前記第1リンクの前記車体取付部位と前記アクスル取付部位を結ぶ直線上に設けたことを特徴とする車両の操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−151330(P2006−151330A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348881(P2004−348881)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】