説明

車両の車輪固定装置

【課題】駆動輪をローラに乗せて従動輪の位置が決定された後に、従動輪の前後を前後一対の車輪受けで挟着して従動輪を固定する。
【解決手段】車輪固定装置1は、ベースプレート4と、ベースプレートに設けられた一対の車輪受け2、2と、これら一対の車輪受けを車輪の前後方向に移動させる車輪受け駆動機構6と、を備えている。一対の車輪受けの間に、これら一対の車輪受けの先端側から車輪を導入可能な車輪導入空間部3を設け、該車輪導入空間部に、前記車輪の外面側から該車輪を挿入し、前記一対の車輪受けを車輪受け駆動機構6で前記車輪に向けて移動させることにより、該車輪の周面の前後を前記一対の車輪受けで挟着固定した。前記ベースプレートに床面上を走行させるキャスター等の走行補助具5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータにおいて被試験車両の従動輪を固定するのに使用して好適な車両の車輪固定装置に関するものであり、特に低床バス等の低床車両の従動輪を固定するのに使用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
シャシーダイナモメータの従動輪固定装置は、ピット内の配置したダイナモメータに連結された左右一対のローラに駆動輪を載置した被試験車両の従動輪を固定する。
【0003】
図13に示すように、従動輪固定装置101a〜101dは、ピット102内に配置されたダイナモメータ103に連結された左右一対のローラ104a,104bを開口部105から外部に臨ませているピットカバー106またはピットカバー106の外側のピット周縁部床面上に配置されている。
【0004】
前記4つの従動輪固定装置101a〜101dのうち2つの従動輪固定装置101a,101bは、被試験車両の前方側に位置する部分に配置され、他の2つの従動輪固定装置101c,101dは、被試験車両の後方側に位置する部分に配置されている。
【0005】
被試験車両の前方側に配置された従動輪固定装置101a,101bは、被試験車両がFR車の場合に、駆動輪である左右の後輪をローラ104a,104bに載置した被試験車両の従動輪である左右の前輪を固定する。また、被試験車両の後方側に配置された従動輪固定装置101c,101dは、被試験車両がFF車の場合に、駆動輪である左右の前輪をローラ104a,104bに載置した被試験車両の従動輪である左右の後輪を固定する。(以下、被試験車両の前方側に配置された従動輪固定装置101a,101bをFR車用の従動輪固定装置と称し、被試験車両の後方側に配置された従動輪固定装置101c,101dをFF車用の従動輪固定装置と称する。)
ところで、被試験車両の前輪から後輪までの間隔(以下、ホイール間隔と称する)は、車種によって異なる。その場合は、ホイール間隔に合わせて、ローラ104a,104bからFR車用の従動輪固定装置101a,101bまでの距離、またはローラ104a,104bからFF車用の従動輪固定装置101c,101dまでの距離を調整しなければならない。
【0006】
前記距離を調整する方法の一つとして、図14に示すように、シャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bを、ピット102内の床面に敷設したレール107に沿って被試験車両の移動方向(矢印A−B方向)に移動させる方法が採られている。108はシャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bをレール107に沿って走行させるための駆動機構である。該駆動機構108は、モータ109と、リードスクリュー110を備えていて、モータ109でリードスクリュー110を回転させることによりシャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bをレール107に沿って移動させて、ローラ104a,104bからFR車用の従動輪固定装置101a,101bまでの距離、或いはローラ104a,104bからFF車用の従動輪固定装置101c,101dまでの距離を調整する。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、前記距離を調整する方法を採用したシャシーダイナモメータであっても、ホイール間隔が極めて広い大型の車種には、シャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bをレール107に沿って移動させるだけでは、対応しきれない場合がある。また、シャシーダイナモメータの全てが、図14に示すような、シャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bを移動させることが可能なものではなく、シャシーダイナモメータ103および左右一対のローラ104a,104bの位置が固定されているタイプのシャシーダイナモメータも存在する。
【0008】
そこで、図15に示すように、従動輪固定装置を被試験車両の移動方向(矢印A−B方向)に移動させるための凹溝状のレール111をピットカバー106またはピットカバー106の外側のピット周縁部床面上に形成すると共に、前記従動輪固定装置の下面に設けた突起(図示省略)を凹溝状のレール111に嵌合して、該レール111に沿って従動輪固定装置を移動させて、ローラ104a,104bから従動輪固定装置までの距離を調整するようにしたシャシーダイナモメータも開発されている。
【0009】
図16は上記従来の従動輪固定装置101a〜101dの側面図である。従動輪固定装置101a〜101dは、被試験車両の移動方向(矢印A−B方向)の略中央部に従動輪112の下端を挿入する凹部113を設けたベースプレート114と、該ベースプレート114上に被試験車両の移動方向(矢印A−B方向)および車幅方向(矢印A−B方向と直交する方向つまりトレッド方向)にスライド可能に組み付けられた前後一対の車輪受け115と、車輪受け115を所望に位置にロックする車輪受けロック部116と、従動輪112の外周面に巻き付ける従動輪締付ベルト117と、従動輪締付ベルト117の締付を行なうラチェット機構118を備えている。
【0010】
上記従動輪固定装置101a〜101dは、従動輪112をベースプレート114上に乗り上げさせる際に、車輪受け115の存在が邪魔にならないように車輪受け115を被試験車両の車幅方向に逃がした状態で、従動輪112をベースプレート114上に乗り上げさせて、該従動輪112の下端を前記凹部113内に位置させた後に、前後一対の車輪受け115を従動輪112の外周面に接触する位置に戻してから、これら前後一対の車輪受け115で従動輪112の前後を挟着するとともに、従動輪締付ベルト117を従動輪112の外周面に巻き付けてラチェット機構118で締め付けることにより従動輪112を固定する構造になっている。(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
また、図17に示すように、被試験車両の移動方向に設けられた二対のレール121,122にベース123を移動可能に取り付けるとともに、ベース123に左右一対のトレッド調整用フレーム124を被試験車両の車幅方向に移動可能に取り付け、各トレッド調整用フレーム124にそれぞれ被試験車両の従動輪(図示省略)の前後に当接する一対のタイヤ受け125を設け、且つ前記ベース123を被試験車両の前後方向に移動させる駆動部(図示省略)を設けたシャシーダイナモメータの車輪固定装置も開発されている。(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−121503号公報
【特許文献2】特開2004−340699号公報
【特許文献3】特開2005−148031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記従来の従動輪固定装置は、いずれも従動輪が従動輪固定装置のベースプレート上に乗り上げる構成になっているため次に述べるような課題があった。
(1)従動輪が従動輪固定装置のベースプレート上に乗り上げた後は従動輪固定装置を移動させることが困難である。このため、駆動輪をローラに乗せる前に、従動輪が来る位置を予想して、その位置に従動輪固定装置を移動させておかなければならない。
(2)従動輪固定装置をレールから取り外して移動させることが困難である。
(3)従動輪固定装置は重量が大きく引用文献2のように、レールに沿って移動させるのも人力では容易でない。引用文献3のように、電動移動装置を使用してレールに沿って移動させる場合は電動移動装置の存在によって従動輪固定装置そのものが大型になりコストも高くなる。また、上述のように、レールから取り外すのが困難であるため、従動輪固定装置を使用しない車両試験、例えば風洞試験等を行なう場合に、従動輪固定装置の存在が邪魔になる。特に所謂低床車両の試験を行なう場合に障害になる。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決し、駆動輪をローラに乗せて従動輪の位置が決定された後にも使用することのできる従動輪固定装置を提供することを目的に成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ベースプレートと、該ベースプレートに設けられた一対の車輪受けと、これら一対の車輪受けを車輪の前後方向に移動させる車輪受け駆動機構と、を備え、前記一対の車輪受け間に車輪を挿入し、ベースプレートをベースプレート据付固定装置で床面上に据付固定した後に前記車輪受け駆動機構で前記一対の車輪受けを前記車輪に向けて移動させることによりこれら一対の車輪受けで前記車輪を挟着する車両の車輪固定装置において、
前記一対の車輪受けの間に、これら一対の車輪受けの先端側から前記車輪を導入可能な車輪導入空間部を設け、該車輪導入空間部に、前記車輪の外面側から該車輪を挿入し、前記一対の車輪受けを車輪受け駆動機構で、前記車輪の幅方向の中心に向け、かつ車輪の前後方向にて移動させることにより、該車輪の周面の前後を前記一対の車輪受けで挟着した。前記ベースプレートに、床面上を円滑に走行させるためのキャスター等の走行補助具を設けた。
【発明の効果】
【0016】
被試験車両の駆動輪をシャシーダイナモメータローラに乗せて従動輪の位置が決定された後に、前記従動輪の外側面側から従動輪を前記一対の車輪受け間に挿入して、ベースプレートをベースプレート据付固定装置で床面上に据付固定する。そして、前記一対の車輪受けを車輪受け駆動機構により従動輪に向けて移動させることにより従動輪を挟着して固定することができる。また、ベースプレートにキャスター等の走行補助具を設けたので、該走行補助具により、重量の重い車輪固定装置でも容易に所望の位置に走行移動させることができる。特に、従動輪固定装置を使用しない車両試験、例えば風洞試験等を行なう場合に、これら試験に支障を来たさない位置に車輪固定装置を退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の車輪固定装置の斜視図。
【図2】レール溝部分の断面図。
【図3】車輪固定装置に搬送治具を組み付けた状態の説明図。
【図4】回動レバー部分の拡大図。
【図5】回動レバー支持機構の説明図。
【図6】車輪固定装置への搬送治具の組付け工程を示す説明図。
【図7】車輪固定装置への搬送治具の組付け工程を示す説明図。
【図8】車輪固定装置への搬送治具の組付け工程を示す説明図。
【図9】搬送治具で車輪固定装置を搬送している状態の側面図。
【図10】車輪固定装置の使用状態の説明図。
【図11】レール溝にキャスターが落ち込むのを防止する落ち込み防止治具の説明図。
【図12】落ち込み防止治具の使用状態を示す説明図。
【図13】従来の車輪固定装置の説明図。
【図14】従来の車輪固定装置の説明図。
【図15】従来の車輪固定装置の説明図。
【図16】車輪固定装置で従動輪を固定している状態の説明図。
【図17】従来の車輪固定装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はシャシーダイナモメータの従動輪を固定する車輪固定装置1の斜視図である。車輪固定装置1は、ピット内の配置したダイナモメータに連結された左右一対のローラに駆動輪を載置した被試験車両の従動輪を挟着する前後一対の車輪受け2,2と、これら一対の車輪受け2,2を車輪導入空間部3の対向部に設けたベースプレート4と、該ベースプレート4に設けられた走行補助具5と、前記車輪受け2,2を被試験車両の車長方向および車幅方向(トレッド方向)に移動させる車輪受け駆動機構6と、ベースプレート4を床面上の所定の位置に据付固定するための据付固定機構7と、を備えている。前記走行補助具5にはキャスターが用いられている(以下、走行補助具をキャスターと称する)。
【0019】
前記車輪受け2,2は、矩形状の底面板11と、該底面板11の長手方向の両端部に立設された直角三角形状の左右の一対の側面板12,13と、これら一対の側面板12,13の傾斜辺に取り付けられた傾斜板14と、からなっていて、前記一対の車輪受け2,2の傾斜板14で従動輪の周面を挟着する。
【0020】
前記ベースプレート4は、一対のアーム部21,22と、これら一対のアーム部21,22の一端部を連結している連結部23と、によって、平面視略コ字状に形成されていて、前記一対のアーム部21,22間に前記車輪導入空間部3が形成されている。
【0021】
前記キャスター5は、前記一対のアーム部21,22の先端部に取り付けられている。
【0022】
前記車輪受け2,2は、前記一対のアーム部21,22間に配置されていて、前記車輪受け駆動機構6により被試験車両の車長方向および車幅方向にスライド可能に取り付けられている。
【0023】
前記車輪受け駆動機構6は、前記一対のアーム部21,22に沿って車幅方向にスライド可能な一対のスライド部材31,32と、これら一対のスライド部材31,32の一端部側を連結している連結部材33と、を備えている。
【0024】
前記一対のスライド部材31,32は、前記一対のアーム部21,22の内側(前記車輪導入空間部3側の側縁)に沿って形成したスライドガイド孔34に沿ってガイドされる。そして、前記一対のスライド部材31,32に螺合したボルト35を緩めるとスライド可能な状態になり、ボルト35を締め付けることにより、前記一対のスライド部材31,32は、所望の位置に位置決め固定される。
【0025】
また、前記連結部材33は、前記一対の車輪受け2,2を、互いに接近する方向および離間する方向、即ち被試験車両の車長方向にスライド可能に取り付けるためのスライドガイド孔36を備えている。
【0026】
前記一対の車輪受け2,2は、一方の側面板12がボルト37によって前記連結部材33に取り付けられている。そして、前記ボルト37を緩めることにより、前記一対の車輪受け2,2は、前記スライドガイド孔36に沿ってスライド可能になるとともに、前記ボルト37を締め付けて、前記一対の車輪受け2,2の一方の側面板12を前記連結部材33の内面に圧着させることにより前記一対の車輪受け2,2を前記連結部材33の所望の位置に位置決め固定可能になっている。
【0027】
前記一対の車輪受け2,2の底面板11の中央部は、該底面板11と前前記一対のスライド部材31,32を連繋する連繋杆38によって保持されている。前記連繋杆38は、前記一対のスライド部材31,32に設けられた連繋杆受け孔39に所定の遊び間隙をもって挿入されていて、前記一対の車輪受け2,2は、前記連繋杆38の長さの範囲内で車長方向に移動可能になっている。
【0028】
前記据付固定機構7は、前記一対のアーム部21,22の連結部23側の端部に設けられている。前記据付固定機構7は、前記一対のアーム部21,22に取り付けられた断面略コ字状のボルト取付金具41と、該ボルト取付金具41に回転可能に取り付けられた一対のボルト42と、これらボルト42の先端に螺着されるナット43と、からなっている。
【0029】
前記ボルト42の先端は、床面44に形成したレール溝45を介してその下部のナット収容部46に挿入されている。
【0030】
前記ナット収容部46には前記ナット43が回転不可能に、且つレール溝45に沿って移動可能に収容されている。
【0031】
前記据付固定機構7は、ボルト42の先端にナット43を螺合して、ボルト42を所謂締め方向に回転させることにより、ボルト取付金具41の下端とナット43の間で床面44を挟着して、車輪固定装置1を床面44上に固定する。
【0032】
図3は、前記車輪固定装置1を搬送するのに使用する搬送治具51を示す。搬送治具51は、車輪固定装置1を搬送する際に車輪固定装置1に連結して使用される。
【0033】
搬送治具51は、キャスター52と、前記車輪固定装置1のベースプレート4の連結部23に連結する連結機構53と、該連結機構53で連結した前記車輪固定装置1の連結部23を前記キャスター52の回転中心軸52aを支点にして持ち上げるための操作軸54と、前記キャスター52,連結機構53および操作軸54を設けたベースプレート部55と、を備えている。
【0034】
前記キャスター52は、前記ベースプレート部55の下面の一端側に設けられていると共に、前記連結機構53は、前記ベースプレート部55の下面の他端側に設けられている。
【0035】
前記操作軸54は、前記ベースプレート部55の上面の前記キャスター52と略対応する位置に、前記連結機構53と反対側に傾斜させた状態で立設されている。前記操作軸54の先端にはグリップ部56が設けられている。
【0036】
図4に示すように、前記連結機構53は、前記ベースプレート部55の下面に設けられていて前記連結部23の下面の一端側を支持する略逆L字状の固定レバー57と、該固定レバー57に対向して配置されていて前記連結部23の下面の他端側を支持する回動レバー58と、該回動レバー58の回動制御を行なうステー59と、を備えている。前記回動レバー58は、軸60によって回動可能に前記ベースプレート部55の下部に取り付けられている。
【0037】
前記回動レバー58は、図4に2点鎖線で示す状態において、上面58a側を足等で押圧すると、矢印A方向に回動して他端側の略L字状の係合部58bで前記連結部23の他端側を支持するとともに、前記ステー59により前記連結部23を支持した状態に維持される。
【0038】
前記ステー59は、2つのアーム59a,59bを軸59cにより折り曲げ可能に連結することにより形成されている。一方のアーム59aは、軸59dおよび軸受け59eを介して前記回動レバー58の上面58aに回動可能に連結されている。他方のアーム59bは、軸59fおよび軸受け59gを介して前記ベースプレート部55側に回動可能に連結されている。
【0039】
そして、上述したように、前記回動レバー58の上面58a側を足等で押圧すると、図4に実線で示すように、前記ステー59は、略一直線状に伸びて、前記回動レバー58を実線で示す状態に維持する。
【0040】
図5は、前記回動レバー58を図4に実線で示す状態又は2点鎖線で示す状態に支持する回動レバー支持機構61を示す。回動レバー支持機構61は、前記軸60を中心にして前記回動レバー58と一体的に回動する回転カム62と、該回転カム62の突出部62aに接触するカム係合部63aを一端側に備え、他端側がボルト64によって前記固定レバー57側に取り付けられた板バネ63と、からなっている。
【0041】
そして、図4に実線で示す位置に前記回動レバー58があるときは、図5に実線で示すように、前記回転カム62の突出部62aは、前記カム係合部63aの頂部よりも前記ボルト64からより離れた位置に接触していて、前記板バネ63のバネ力により、前記回動レバー58を図4に実線で示す位置に支持する。また、図4に実線で示す位置にある回動レバー58の下面58cを靴71の先端部で押し上げれば、回動レバー58と共に回転カム62が軸60を中心に時計方向に回動して前記回転カム62で前記板バネ63を撓ませる。そして、回転カム62の突出部62aが前記カム係合部63aの頂部を乗り越えると、回動レバー58は、前記板バネ63のバネ力により、図4に2点鎖線で示す位置に保持される。なお、図4において、72は、前記ステー59の一方のアーム59aに先端が着脱自在に取り付けられたロック解除チェーンであり、前記ステー59が伸びている状態で、前記ロック解除チェーン72を牽引すると前記ステー59が軸59cで折り曲げられて、回動レバー58の下面58cを靴71の先端部で押し上げたのと同じ効果を得ることができる。
【0042】
次に、搬送治具51を使用して車輪輪固定装置1を搬送する方法について説明する。車輪輪固定装置1を搬送する際には、先ず、図6に示すように、グリップ部56を矢印B方向に押し下げて、キャスター52の軸52aを中心にしてベースプレート部55を矢印C方向に回動させて、固定レバー57側を持ち上げて、該固定レバー57を、車輪固定装置1のベースプレート4の連結部23と、車輪受け駆動機構6の連結部材33と、の間の隙間65の上方に位置させる。
【0043】
次に、ベースプレート部55を反矢印B方向に回動させて、図7に示すように、連結機構53の固定レバー57の先端部を、前記隙間65から車輪固定装置1のベースプレート4の連結部23の下方に位置させる。
【0044】
次に、搬送治具51を矢印D方向に牽引すると、図8に示すように、固定レバー57の先端部57aが連結部23の一端側の下面に係合する。
【0045】
次に、前記回動レバー58の上面58a側を足等で押圧すると、回動レバー58は、軸60を中心に回動矢印A方向に回動して先端の係合部58bが連結部23の他端側の下面に係合して、図3に示すように、固定レバー57と回動レバー58の間で連結部23を挟着して支持する。
【0046】
上記固定レバー57と回動レバー58の間で連結部23を挟着した状態で、図9に示すように、グリップ部56を矢印B方向に引いてキャスター52の軸52aを中心に回動させると、車輪固定装置1のベースプレート4の下面は、キャスター5を除いた部分が床面から浮き上がった状態になり、この状態で搬送治具51を押すことにより車輪固定装置1を走行、移動させる。
【0047】
次に、上記車輪固定装置1の作用、効果について説明する。図10に示すように、車輪固定装置1は、ダイナモメータのローラ131に駆動輪132を乗せた被試験車両133の従動輪134の真横位置まで搬送治具51で運ばれる。そして、一対の車輪受け2,2間の車輪導入空間部3内に従動輪134を収納した状態で搬送治具51から下ろされる。
【0048】
車輪固定装置1を下ろす際には、図1に示すように、前記据付固定機構7のボルト42を、床面44に設けたレール溝45を介してナット収容部46に挿入して、該ナット収容部46に収容されているナット43に螺合する。そして、ボルト42を所謂締め方向に回転させることにより、ボルト取付金具41の下端とナット43の間で床面44を挟着して、車輪固定装置1を床面44上に固定する。
【0049】
次に、車輪固定装置1のボルト35を緩め、スライドガイド孔34に沿って車輪受け駆動機構6の一対のアーム部31,32および連結部材33を車幅方向にスライドさせて、車輪固定装置1の傾斜版14の中心を従動輪の幅方向の中心に合わせた後、前記ボルト35を締め付けて一対のアーム部31,32の位置を固定する。
【0050】
次に、車輪固定装置1のボルト37を緩め、スライドガイド孔36に沿って一対の車輪受け2,2を従動輪側にスライドさせ、これら一対の車輪受け2,2で従動輪の前後を挟んで従動輪を位置決め固定する。
【0051】
なお、図12,図13において、71は、車輪固定装置1のキャスター5がレール溝45に落ち込むのを防止するための落ち込み防止治具であり、該落ち込み防止治具71は、前記レール溝45に着脱可能に取り付けられて、該溝45を塞ぐようになっている。71aは落ち込み防止治具71の取手である。なお、上記実施の形態においては、走行補助具としてキャスターを使用した場合を示したが、走行補助具として金属ボール等を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
実施の形態においては、本発明の車両の車輪固定装置を、シャシーダイナモメータにおいて被試験車両の従動輪を固定するのに使用した場合を示したが、本発明の車両の車輪固定装置は、停車中の車両の車輪を固定する場合にも使用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…車輪固定装置
2…車輪輪受け
3…車輪導入空間部
4…ベースプレート
5…走行補助具(キャスター)
6…車輪受け駆動機構
7…据付固定機構
11…底面板
12、13…側面板
14…傾斜板
51…搬送治具
52…キャスター
53…連結機構
54…操作軸
55…ベースプレート部
56…グリップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、該ベースプレートに設けられた一対の車輪受けと、これら一対の車輪受けを車輪の前後方向に移動させる車輪受け駆動機構と、を備え、前記一対の車輪受け間に車輪を挿入した後に前記車輪受け駆動機構で前記一対の車輪受けを前記車輪に向けて移動させることによりこれら一対の車輪受けで前記車輪の前後を挟着、固定する車両の車輪固定装置において、
前記一対の車輪受けの間に、これら一対の車輪受けの先端側から前記車輪を導入可能な車輪導入空間部を設け、
前記車輪導入空間部に、前記車輪の外面側から該車輪を挿入し、前記一対の車輪受けを車輪受け駆動機構を前記車輪に向けて移動させることにより、該車輪の周面の前後を前記一対の車輪受けで挟着固定することを特徴とする車両の車輪固定装置。
【請求項2】
前記車輪導入空間部に導入する車両の車輪は、シャシーダイナモメータのローラに駆動輪を載置した被試験車両の従動輪であることを特徴とする請求項1に記載の車両の車輪固定装置。
【請求項3】
前記ベースプレートは、床面上を走行させるための走行補助具を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の車輪固定装置。
【請求項4】
前記ベースプレートは、一対のアーム部と、これら一対のアーム部の一端部を連結している連結部と、によって、平面視略コ字状に形成されていて、前記一対のアーム部の間に前記従動輪導入空間部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両の車輪固定装置。
【請求項5】
前記走行補助具は、キャスターであって、前記一対のアーム部の先端部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両の車輪固定装置。
【請求項6】
ベースプレート部の上面側に操作軸を備え、前記ベースプレート部の下面側にキャスターおよび前記車輪固定装置との連結機構を備え、該連結機構で前記車輪固定装置に連結して該車輪固定装置を搬送する搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−210532(P2010−210532A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58829(P2009−58829)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)